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Date: 2023/1130 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのオークヴィルにあるワイナリー「ダラ・ヴァレ(Dalla Valle)」のセミナーに参加してきました。かつてのカルト・ワインの一つと目されたフラッグシップの「マヤ(Maya)」が有名なワイナリーで、神戸生まれの日本人ナオコさんがオーナーであることも知られています。ナオコさんはあまり人前に出たがらない人で、以前は日本だけでなく米国でもインタビューなどに登場するのは稀でした。マヤさんがワインメーカーに就任してからは、メディアへの露出も増え、今回も初めての日本でのセミナーとなりました。

私自身も、4月にナパでマヤさんにお会いしていますが、ナオコさんにお目にかかるのは今回が初めてでした。

米国で育ったマヤさんはもちろん、ナオコさんも米国暮らしが長く英語の方が楽だとのことで、セミナーも大部分は英語でした。



ナオコさんが米国に渡ったのは1982年。それまではカリブ海のマスティク島というところにいました。なお、ナオコさんのご主人のグスタフ・ダラ・ヴァレはスキューバダイビング用品で知られるスキューバプロの創設者です(私もスキューバプロのBCジャケットを持っています)。ダラ・ヴァレのロゴはグスタフ氏が地中海のダイビングで発見したアンフォラ(ワイン醸造に使った古代の壺)を模しています。

米国に来たときにはワイナリーをするつもりはなく、レストランとホテルをすることを考えていたそうです。ただ、オークヴィルの東側に買った土地に2エーカーのブドウ畑があって人生が変わったとナオコさんは語ります。

当初ブドウは近隣のケイマスに売っていましたが、グスタフ氏は自分で作ることに決めました。ただ2エーカーのブドウ畑だけでは商売にならないので、畑をもっと増やすことになりました。増やした土地は、近隣の人から車との物々交換で得たそうで、「これまでの最良の取引だった」とナオコさん。

1986年に最初のカベルネ・ソーヴィニヨンを作りました。その後、この場所でカベルネ・フランのいいものができるのではないかということでカベルネ・フランを植えていきました。

そうして作るようになったのが、娘さんの名前を冠したマヤです。最初のヴィンテージは1988年でカベルネ・フランが45%という、当時としてはカベルネ・フランの比率が非常に高いワインでした。そのワインがロバート・パーカーに評価され、1992年のマヤが米国のワインとしては2本目の100点を得ました(1本目は1985年のGrothのカベルネ・ソーヴィニヨン・リザーブ)。ただ、グスタフ氏はこの発表の少し前に亡くなっており、この100点を知ることはありませんでした。ナオコさんに取っては夫を失って途方に暮れていたときに100点を取ったことはビジネスを続ける勇気になったそうです。

ダラ・ヴァレは代々すばらしいワインメーカーがワインを作ってきました。最初はジョー・カファーロ(Joe Cafaro、シャペレーなど)、2人目のハイジ・バレット(Heide Barrett)が100点のマヤを作りました。その後もトニー・ソーター(Tony Soter)とその弟子のミア・クライン(Mia Klein)が10年にわたってワインを作り、フィリップ・メルカ(Philipe Melka)、アンディ・エリクソン(Andy Ericson)とつながります。2004年からはミシェル・ロランもコンサルタントとしてチームに加わりました。

マヤさんはボルドー大学でワイン造りの修士を取り、ナパで2年間インターンをした後、イタリア・トスカーナのボルゲリでオルネライアやボルドーのペトリュス、ラトゥールといったそうそうたるワイナリーで修行。2017年にダラ・ヴァレに戻ってきました。ナオコさんに言わせると、最初から十分すぎるくらいの経験と資格を持っていました。2021年からワインメーカーになり、アンディ・エリクソンはコンサルタントとしてチームに残っています。

ここからの解説はマヤさんにバトンタッチです。

ダラ・ヴァレの畑があるのはオークヴィルの東側で西に向いた斜面です。標高は150mくらいあり、サンパブロ湾からの涼しい風も届きます。夏は涼しく冬は暖かい恵まれた環境です。土壌は火山性の鉄分の多いものが中心ですが、4億年前の地滑りでさまざまな土壌が混じりあっています。広さは20エーカー。2007年からオーガニック、2019年からはビオディナミ(バイオダイナミクス)で栽培しています。



このマップは地質の学者として注目を集めているブレナ・キグリー(「デカンター誌のライジング・スターに注目の地質学者が選ばれる」参照)によるものです。18個のブロックを4種類の土壌に分けています。カベルネ・フランは30%程度、プティ・ヴェルドは0.5エーカーだけあります。

4種類の土壌は次のようになっています。
Zone1 ダークでリッチなソイル。水はけ良く根が深く。カベルネ・フランのベスト、カベルネ・ソーヴィニヨンのベストでもあります。華やかでフォーカスがあり、カベルネ・ソーヴィニヨンは酸が高くなります。
Zone2 マヤのコアになることが多いゾーンです。粘土が多く、石もあります。保水力が比較的あるところです。
Zone3とZone4 ごろごろとした石が多く、タンニンとパワーがワインに出ます。Zone 3は赤がかったオレンジ色、Zone 4は黄色がかったオレンジ色です。

植えているクローンはマサルセレクションのものなど、さまざまで台木も多様、斜面の向きも一様ではないため、パラメーターは多種多様です。例えばZone2は南向き斜面、3と4は西向きです。そのためブロックごとに収穫して醸造しています。ワイン造りの決まった方程式はなく毎日様子を見ながら決めているとのことです。ワインは基本的に22カ月熟成で一部はアンフォラを使っています。


試飲に移ります。コメントはナパヴァレー・ベスト・ソムリエ・アンバサダーの山田琢馬君にお願いしました。

Pietre Rosse 2018
古いファンなら、以前ダラ・ヴァレがこの名前のサンジョヴェーゼを作っていたことをご存じかもしれません。サンジョヴェーゼの樹は病気で引き抜かれてしまい、作られなくなったワインですが、ラベルを気に入っていたマヤさんがこのヴィンテージから復活させました。外部から調達したカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フラン、プティ・ヴェルドのブレンドで、一部アンフォラを使って熟成させています。レストラン専用のワインとなっています。
【琢馬コメント】フレッシュ赤黒いフルーツのトーン、程よく感じる樽の香りと土っぽいトーン。高い酸味によるリフト感と瑞々しさ、質感のハッキリしたタンニンによるエッジ、を感じるフィニッシュ。
【アンディコメント】赤果実、ちょっと土っぽさ。酸きれい。軽めの飲み口だがタンニンもしっかりあってグリップが効いている。

Collina 2020
ナオコさんが2007年に始めたワインで若い木を使ったものです。2020年は8月と9月末に2回の大きな山火事があった年です。煙の影響でワインを作らなかったワイナリーも数多くあります。ダラ・ヴァレでは1回目の火事のあと、醸造してテストしました(煙の影響があるかどうかは醸造してみないとわからないそうです)。結果としては煙の影響は感じられていない。熟成中も何度も試飲してチェックしました。いろいろな困難があった年ですが自信をもって送り出せるものができたことに誇りを持っているとマヤさん。
【琢馬コメント】Pietre Rosseに比べるとより緻密で凝縮された印象。熟れたアメリカンチェリー、ヴァニラ、わずかに感じるフレッシュハーブのタッチ。なめらかなエントリー、メリハリのある酸味とコンパクトなタンニンのストラクチャーから飲み心地の良い印象。
【アンディコメント】ブルーベリーなど青い果実の印象。華やかな香りで酸高く飲みやすい。ストラクチャーもある。

Colina 2019
トラブルのない良年でゆっくりとした収穫でした。
【琢馬コメント】2019年の方がより余韻の詰まり方や奥行きを感じるテイスト。2020年の方がより軽やかで熟度を感じながらもデリケートな印象。
【アンディコメント】2019年の方が赤果実系の明るさを感じる。プティ・ヴェルドのようなストラクチャーがあってパワフル。とても美味しい。

カベルネ・ソーヴィニヨン 2019と2018
【琢馬コメント】赤黒いフルーツのトーン、ハーブや黒鉛のようなタッチ、樽からくる甘やかなアクセント。総じて突出した香りというよりはそれぞれの要素が溶け込んだ香りの印象ながら、ほどよく抑制も効いている。
2019はスムースなエントリー、緻密でシームレスなテクスチャーが印象的。バランスを取る質の高い酸味とやや丸みを帯びたタンニン、今飲んでも楽しめるスタイル。
2018年は香りの方向性は同じながら、ややミネラルドリブンな印象。味わいはスムースでいて酸がより強く、タンニンによるグリップ感を感じ、熟成のポテンシャルを感じるテイスト。
【アンディコメント】
2019は酸が豊かできれい。ハーブやフォレストフロアなどのニュアンスもある。
2018年は緻密でパワフル。カシスや黒鉛の印象。熟成させて飲みたい。

ちなみに2019年はバイオダイナミクスに変えた年なので、ヴィンテージの違いだけでなく、栽培の違いも影響しているとマヤさん。ワインの重みが変わった。エナジーのシフト。フルーツフォワードになるわけではなく、味わいがリッチになったとのこと。なお、2019年からは酵母も完全に天然酵母にしたそうです。

DVO 2019
ダラ・ヴァレがオルネライアと共同で作るワイン。2019年は2ヴィンテージ目です(最初のヴィンテージについては「ダラ・ヴァレとオルネライアの新プロジェクトが日本上陸、貴重なワインを試飲」参照)。
マウント・ヴィーダー(35%)、クームズヴィル(15%)、オークヴィル(50%)の畑のブドウを使っています。オークヴィルはヴァイン・ヒル・ランチ(VHR)とオークヴィル・ランチ。VHRはダラ・ヴァレと反対側のオークヴィル西側の沖積扇状地にある銘醸畑です。オールドワールドのスタイルだけどナパの自由さを持ったワインだとのこと。
【琢馬コメント】まさかのコメントし忘れてました。味わいと香りののボリューム感が他のワインとは明確に違いましたね!より凝縮していて力強い印象を受けました。
【アンディコメント】青から黒系果実の風味。洗練されたきめの細かいタンニン。モンダヴィのト・カロンなどオークヴィル西側の扇状地の畑らしい緻密さを持っている。ベイキングスパイスやフォレストフロアのニュアンスも。

Maya 2019
【琢馬コメント】デリケートながらコアの強さ、華やかさを奥に感じる香りの印象。フレッシュなダークチェリーやラベンダー、セージ、ココアパウダーのような樽のアクセント、岩っぽいミネラルのトーンなど、香りの立ち上がりかたに気品と強さを感じる。
タイトでまっすぐな味わいの印象。瑞々しい酸味としなやかなタンニン。抑制されつつもハッキリと主張する個性。
【アンディコメント】リッチで華やかな味わい。青~赤果実。シルキーなテクスチャ。

何人かの方にどれが一番美味しかったか聞かれましたが、難しいですね。Maya 2019はまだ熟成が必要な感じがします。今飲むならカベルネ・ソーヴィニヨン 2019がいいかなと思います。ピエトレ・ロッセも個性的でまた飲みたい味わい。

このほか、いくつかの質問への回答を最後に載せておきます。
Q. オプティカル・ソーターは使っていないのか?
A. 使っていない。手作業で選果している。もともとのブドウの品質がいいのと、オプティカル・ソーターを使うと全部が均一になってしまって面白くないと思う。ナオコさんが選果台のリーダーをしている。

Q. メルローは作らないのか?
A. メルローは1エーカー作っていたが1993年にやめた

Q. マヤはカベルネ・フラン比率が高いワインだが、それでもカベルネ・ソーヴィニヨンが半分を超えている。もっとカベルネ・フラン比率が高いものを作るつもりはないのか。
A. カベルネ・ソーヴィニヨンの方が熟成には向いていると思うので、カベルネ・フランがメインのものは作っていない(ナオコさん)。私はカベルネ・フラン・メインのもやってみたいと思っており、そこは母と意見が分かれている(マヤさん)。1989年のMayaはカベルネ・フランが55%でこれまでで一番比率が高い。ナパに帰ったらそれを飲んで相談しようかと思う(ナオコさん)。

Q. 栽培面でカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランの違いは?
A. カベルネ・ソーヴィニヨンはいろいろなところに植えられる。多様性がある。カベルネ・フランは土壌や気候の適性がある。収穫量を増やすとグリーンノートが出やすいので注意が必要だ。

Q. 気候変動への対応でやっていることはあるか?
A. 灌漑に使う水を最小限にしている。例えば葉を絞って圧力をかけてその数値で見たり、ソイルモイスチャーを見て、灌漑の必要性を判断している。栽培では日陰を作るようにしている。バイオダイナミクスでモイスチャーはより保持できる。このほかソーラーパネルや排水の活用もしている。

Q. 2023年のヴィンテージはどうか?
A. 2023年は2018年と19年の中間的な感じで非常にいい。

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お招きいただいたJALUXさん、ありがとうございました。
ダラ・ヴァレのワインを複数並べて飲むこと自体、初めての経験であり、大変勉強になりました。
Date: 2023/1128 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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すでにいろいろなところで記事になっていますが、私もちょっとだけ関係している話なので改めて書いておきます。

UCデーヴィスの研究で、赤ワインがなぜ頭痛を引き起こしやすいのか、その原因物質の可能性が高いものが判明しました。

この研究については2022年2月に記事を書いております(赤ワインが頭痛を引き起こす真の原因は何か? UCデーヴィスがクラウドファンディングを開始)。
Davis
研究費の調達が大変とのことで、クラウドファンディングをしていたのですが、結局約4000ドルと目標の6分の1程度しか集まらなかったようです。その中で、私はささやかな額ではありますが寄付をしており、今回の研究成果についてもDavisからメールでお知らせをもらっています。これだけ話題にする人が多いのなら、もうちょっと寄付する人も多くてもいいのでは、とは思うのですが…。なお、今回の研究発表のプレスリリースの最後には「この初期調査の資金は、2022クラウドファンディングUCデイヴィスを通じてプロジェクトを支援した人々から寄せられた」と記されております。

それはさておき、今回の研究成果を簡単に説明します。

まず、アルコールを摂取すると頭痛を起こしやすいことは知られていますが、大きく関係しているのがアセトアルデヒドです。体内に入ったアルコールは2段階のプロセスで分解されます。まず、アルコール脱水素酵素(ADH)によってアセトアルデヒドに変換されます。次に生成したアセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によってアセテートに変換されます。この中間生成物であるアセトアルデヒドが頭痛などの副作用を引き起こします。

様々なアルコール飲料の中でも赤ワインは頭痛を引き起こしやすいことが分かっています。赤ワイン頭痛(RWH)は、ワインを1~2杯飲んだだけでも、30分~3時間後に誘発されます。その主な誘因として明確に関与している化学成分はなく、頭痛を誘発するメカニズムも分かっていない。それが今回の研究で明らかにしたかったところです。

赤ワインにはフェノール類が多く含まれ、特にフラボノイドと呼ばれるポリフェノールが多く含まれます。さまざまなポリフェノールの中で、アセトアルデヒドを分解するためのアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)を生成しにくくするものがあるのではないかと考え、それを実験で調べた結果が次の表です。
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この結果からケルセチン-グルクロニドという物質が、アセトアルデヒドを分解するための酵素の生成を他のフラボノイドよりもかなり大きく阻害しているということがわかりました。ケルセチン-グルクロニドはケルセチンをアルコールと一緒に摂取したときにできる物質です。赤ワインを飲むとその中のケルセチンのせいでアセトアルデヒドが分解されにくくなって、その結果頭痛を起こしているという仮説が有力となりました。

今回は、試験管内の実験ですが、今後は人間の被験者を使ってケルセチンの含有量が違うワインで臨床試験を行っていくとのことです。

ちなみに、ワインに含まれるケルセチンの量は、太陽の光をよく浴びたブドウで多くなることが判明しています。ある研究では大量生産のカベルネ・ソーヴィニヨンと比べてウルトラプレミアムなカベルネ・ソーヴィニヨンは4倍ものフラボノイドを含んでいるそうです。ということは安ワインを飲む方が頭痛を起こしにくいのかもしれません。

クラウドファンディングは終了していますが、今後も寄付は受け付けるとのことですので、ご興味ある方はぜひ。
Date: 2023/1125 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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シックス・クローヴズ(Six Cloves)のブランドで、カリフォルニアでワインを作る平林園枝さん。4年ぶりに日本でのセミナーが開催されました。

前回はこちら
平林園枝さんの第2作を改めて試飲、やっぱりこれは美味しい



今回は、コロナ禍のころの話などをうかがい、最新ヴィンテージの2021年など4種のワインを試飲しました。
これまで、ニュージーランドのKusuda Wine。チリのMontsecano、カリフォルニアのLittoraiなどを含む様々なワイナリーで働いてきた園枝さん、今年はソノマのフリーマン(Freeman)で醸造を手伝いながら自分のワインも作ったそうです。フリーマンといえば、アキコさんがワインメーカーとして知られていますが、今年からはナパのシレノスなどで働いていた赤星さんもチームに加わりました(ちなみに赤星さんは「ブドウ王」と呼ばれた長沢鼎の弟の末裔です)。

2020年はコロナ禍もありましたが、ナパやソノマでは山火事の影響が大きかった年でもあります。園枝さんも赤ワインは全く作れず、スティーブ・マサイアソンのリンダ・ヴィスタの畑のシャルドネだけが作れました。
一方、2021年は山火事はなかったものの、干ばつ続きで収穫量が少なかった畑も多く、2020年とは逆にリンダ・ヴィスタのブドウは手に入らなかったそうです。
その代わりに、2021年はメンドシーノのアルダー・スプリングスのシャルドネとピノ・ノワールが手に入りました。
Alder Springs
メンドシーノというとアンダーソン・ヴァレーを思い浮かべる人が多いと思いますが、アルダー・スプリングスはアンダーソン・ヴァレーよりもはるかに北に位置しています。私の知る限り、周囲数十kmの範囲では著名なブドウ畑はないと思います。サンフランシスコから車で3時間はかかるという、たどり着くだけでも大変そうなところ。ちなみに一般の見学は受け入れていないのでワイナリー関係者だけがその畑を訪れることができます。ブドウの販売先にはパッツ&ホールやリース(Rhys)、アルノー・ロバーツ、ベッドロックなどそうそうたる名前が並んでいます。園枝さんは、日系人ワインメーカーのバイロン・コスゲさん(かつてセインツベリーでワインメーカーをしていた人です)の紹介で訪れることができたそうです。2020年にグルナッシュやシラー、ムールヴェードル(GSM)を欲しいと思っていたそうですが、火事による煙の被害で入手できなかったとのこと。

アルダー・スプリングスの最初からの顧客で、この畑の名前を世に知らしめたのがパッツ&ホールですが、私は以前パッツ&ホールのメーリングリストに入っており、そこでこの畑を知ったのでした。パッツ&ホールのワインの中でも長熟タイプで異彩を放っており、私が同ワイナリーの中で一番好きなワインがこの畑のものでした。そんなこともあり、個人的にはアルダー・スプリングスと聞くと、それだけでわくわくしてしまいます。


試飲は2020年のシャルドネ、リンダ・ヴィスタからです。ナパのオークノールにあるスティーブ・マサイアソンの畑でオーガニックで栽培されています。園枝さんは、現在はオーガニック栽培の畑のブドウだけを使いたいとしています。醸造中に酸化還元電位というPHの指標となる値を計測するのですが、この畑のワインはその数値が非常に安定しているそうです。この値が安定していることは熟成のポテンシャルの目安になるとのことでした。
ミネラル感強く、花梨やかんきつの香り。白い花。エレガントです。新樽を29%使っているのですが、かなりライトトーストなものを使っており樽感はあまり感じません(時間がたって温度が上がってきたらちょっとずつヴァニラの風味がでてきました)。ちなみにステンレスタンクの発酵は還元的な味になるので、樽発酵の方がなじみがいいとのことでした。

次は2021年のシャルドネ、アルダー・スプリングスです。クローンはシャンパーニュ由来だというクローン95と、コート・ドールから来たらしいクローン76の二つを使っています。
香りが華やかです。オレンジやヴァニラ、クリームブリュレも感じます。リンダ・ヴィスタと比べてパワフルでエネルギーを感じるワイン。こちらは旧樽しか使っていないのですが、意外にもリンダ・ヴィスタよりも樽感を感じました。ここは標高が高く霧がかからないため、ブドウの皮が厚く、それで味わいも強くなるようです。

次は2021年のピノ・ノワール、アルダー・スプリングス。クローン459というクローンを使っています。栽培が難しく、色づきがあまりよくないというなかなか気難しいクローンのようです。園枝さんは「フランスぽい」とおっしゃっていました。全房を50%使っています。
赤果実ですが、ザクロなど熟度の高さを感じます。一方で酸も強い。全房らしい複雑さがあり、全体的にはエレガントですが、うちに秘めたパワーがあるワインです。天ぷらとかに合わせてみたい。

パッツ&ホールのアルダー・スプリングスは、若いときはちょっと気難しく、4~5年経つとそのエネルギーが出てくるような印象でしたが、園枝さんのアルダー・スプリングスは気難しくなく、園枝さんらしいエレガントさがある一方で、秘めたエネルギーという点ではアルダー・スプリングスらしさが出ているような気がしました。ともかく、個人的には「萌える」畑の一つなので、こういった形で世に出るのはとてもうれしいです。

最後は2019年のマグノリア・レッド・ブレンド。このワインは以前も試飲したことがあります。
ソノマのカーネロスで作るカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローという非常にユニークなワイン。赤果実と黒果実がありトマトのような風味。血液や杉など少しだけ熟成感もでてきているようです。以前飲んだときはもっと堅さがありましたが、4年たってこなれた味になっています。会席料理など幅広い和食に合わせたい味わいです。

今回のワイン、園枝さんらしいエレガントさがあるのはいつも通りですが、それとアルダー・スプリングスのパワーとのぶつかり合いが特に面白いと思いました。単独で飲んでももちろん美味しいですが、アルダー・スプリングスの他のワインと飲み比べたりしてみるとさらに興味がわきそうです。

Wassy'sです。



Date: 2023/1124 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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クインテッサ(Quintessa)などの輸出担当ディレクターであるディエゴ・ギャーレイ氏が来日し、クインテッサとファヴィア(Favia)のディナー会が催されました。

クインテッサとファヴィア、一見関係なさそうな2つのワイナリーですが、実は深い関係にあります。
アンディ・エリクソン夫妻のファヴィア、オーパス・ワンの隣に畑を取得」という記事に詳しく書いていますが、ファヴィアは今年、オーパス・ワンの裏側にある元スワンソンの畑を入手しています。実はこの畑はクインテッサのオーナーであるフネイアス(チリのコンチャイトロなどのオーナー会社。正しい発音はフネウスだそうです)が所有している畑で、ファヴィアはフネイアスから独占使用権を得た形で使うことになっています。

また、ファヴィアは2022年からワインの一部をボルドーの流通システムであるラ・プラス・ド・ボルドーを使って輸出しています。クインテッサも2019年からラ・プラスを使っており、フネイアスがファヴィアの輸出も手伝う形になっています。

一方で、ワイナリーとしてはクインテッサとファヴィアはナパのワイナリーの中でも対照的なところにあります。クインテッサは少量のソーヴィニヨン・ブランを作っているほかは、「クインテッサ」のボルドー系ブレンドワインの一つだけを作っていて、セカンドワインに相当するものもありません。畑はラザフォードの自社畑だけを使っています(ソーヴィニヨン・ブランはソノマのブドウも使っています)。

なお、クインテッサの説明については「進化を遂げつつあるナパの隠れた自然派「クインテッサ」の魅力」をご覧ください。

一方で、ファヴィアは自社畑だけでなく、ブドウを購入している畑も含めて単一畑や単一AVAのワインを複数作るスタイルです。どちらかというとブルゴーニュのスタイルに近いといってもいいかもしれません。品種もボルドー系中心ですがカベルネ・フラン主体のものなどもあります。

今回は、赤坂の「ロウリーズ」でプライムリブをいただきながら、以下のワインを飲みました。
Illumination 2022
Quintessa 2020
Quintessa 2015
Favia Coombsville 2020
Favia Cerro Sur 2014

なお、日本ではイルミネーション(クインテッサのソーヴィニヨン・ブラン)だけはファインズが輸入しています。輸入量は80ケースとかなり限られています(イルミネーション全体の生産量は2000ケース程度)。

イルミネーションはソーヴィニヨン・ムスク(ソーヴィニヨン・ブランの中でも香りの豊かさで知られるクローン)が50%、ソーヴィニヨン・ブラン33%、セミヨン17%の構成。果実の風味がとてもきれいで、リッチだけどすっきりした味わい。

前菜のサーモンともいいペアリングでした。

クインテッサは2020年と2015年。2020年は山火事の影響で、生産量は例年の3分の1程度しかありませんでした。ワインを作らなかったワイナリーも多くありましたが、クインテッサではコンサルタントのミシェル・ロラン氏が、どんな年でもそれを経験することが大事だというアドバイスをしたことで、この年もワイン造りをしています。

やや温暖な年で、ワインからも暖かさを感じます。ブラックチェリーにプラム、バラ、コーヒー、トフィーなどの味わい。
なお、2022年のイルミネーションと2020年のクインテッサについては「災難の年2020、クインテッサのできはどうだったか?」でも試飲コメントを掲載しています。

クインテッサでは2020年の生産量が少ないため、ラ・プラスには2020年を300ケース出したほか、2015年と2014年を200ケースずつ出したそうです。今回はそのうちの一つである2015年も飲みました。熟成による腐葉土やマッシュルームの香りが出てきています。まだまだ果実味も豊かでリッチな味わい。今飲むならこちらが美味しいですね。

ファヴィアは2020年のクームズヴィル・カベルネ・ソーヴィニヨンから。こちらはクームズヴィルの3つの畑のブドウをブレンドしています。クームズヴィルはナパのAVAの中ではカーネロスに次いで海から近く冷涼ですが、盆地型の地形でカベルネ・ソーヴィニヨンも熟します。土壌はヴァカ山脈系の火山性の土壌と沖積土壌の混じったもので、気候と相まってタイトなスタイルのワインを生み出す注目の生産地です。

2020年は前述のように難しいヴィンテージでしたが、クームズヴィルは火事からある程度距離があったので、比較的無事にワインが作れたようです。

ワインは非常に緻密な味わい。果実のフレッシュさと緊張感ある味わいが素晴らしいバランスです。クラシックな複雑さを身上とするクインテッサとはだいぶ違ったスタイルで、これも美味しい。

最後は2014年のセロ・スール(Cerro Sur)。これはカベルネ・フランを主体としたブレンドでクームズヴィルの北東方面にあるランチョ・チミレスという、ネスティッドAVAには含まれていない地域の畑のブドウを使っています。

赤果実系の味わいにタイトで緻密なタンニン、スケールも大きく超絶美味しいです。個人的にはこの日のナンバーワン。素晴らしかったです。今年の7月にセミナーでセロ・スールの2018年を試飲しましたが、そのときはパワフルすぎるのと若すぎるので、まだ飲み頃は先の印象でした。やはり10年くらい経つとだいぶこなれてくるのでしょう。


ロウリーズのプライムリブは何度も食べていますが、いつ行っても美味しく楽しいレストランです。


なお、プライムリブ自体はペロッと食べられてしまいますが、付け合わせのコーンやマッシュポテトは生クリームたっぷりでかなりボリュームがあるので、こちらをたくさん食べてしまうとプライムリブが食べきらない人もいるかもしれません(僕はどちらも完食ですが)。


デザートまで堪能しました。

ところで、冒頭の話に戻って、ラ・プラス・ド・ボルドーを使うことのメリットとデメリットについてディエゴ氏にうかがいました。

クインテッサの場合はラ・プラスを使う前は米国外への輸出はごく少量でした(日本には入っていましたが)。それがこれまで全く輸出していなかった国でも飲まれるようになったことは大きなメリットだったといいます。一方で、これまで輸出されていた国では、インポーターがマーケティングをしていたわけですが、ラ・プラスを使うとそれが期待できなくなります(どのインポーターも輸入できるので)。そのリスクは認識しつつ、少しずつ進めていくようにしているとのことです。ファヴィアの場合は初年はマグダレーナとオークヴィルの二つのワイン、今年はそれにセロ・スールとクームズヴィルを追加します。

日本はしっかりしたインポーターが多いので、今のところデメリットの方が目立つ場合も多いように感じています。ラ・プラス利用が今後どうなっていくのかは気になるところです。
Date: 2023/1123 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ジェイソン・パルメイヤー(Jayson Pahlmeyer)がパルメイヤー・ワイナリーをE&J.ガロに売却したのが2019年のこと。同社のニコラス・パリスMWが来日し、オーナーが代わってからの初のセミナーを開催しました。

ニコラスさんは2014年に米国で34人目のマスター・オブ・ワインを取得した人。さらにマスター・ソムリエにも挑戦していて、あと一つの試験に受かればいいというところにまで来ているという才人です。ちなみに両方取得した人はこれまで4人いるとのこと。



創設者のジェイソン・パルメイヤーはもともと弁護士をしていた人。弁護士の友人とナパのクームズヴィルに55エーカーの畑を購入し、ワイン造りを始めます。ちなみにこの畑はその友人が所有者となり、現在はCaldwell Vineyardとなっています。

ジェイソンは、ナパでボルドーの1級ワインに匹敵するワインを作りたいと考えていました。そのためにはいいクローンを手に入れることが大事だと思い、ボルドーから各品種のクローンを持ち込んだそうです。今でいうスーツケース・クローンです。当時もそれは法に触れることでしたが、カナダ経由で輸入することでなんとか入手できたそうです。

1981年に入手した樹を植樹しました。するとハウエル・マウンテンの著名なヴィントナーであるランディ・ダンが来て、ブドウを買わせてほしいと来たそうです。そこでジェイソンは「自分の名前が付いたワインを作ってくれるのならいいよ」と返答し、彼が最初のワインメーカーになりました。1986年に作った最初のワインがワイン・アドヴォケイトで94点を取り、一躍注目されるようになりました。さらに1992年には映画『ディスクロージャー』でストーリーのキーになる小物としてパルメイヤーのシャルドネが使われ、一般の知名度も急上昇しました。実はジェイソンは最初は映画にワインが使われることをためらっていたそうです、

1993年には当時、数々の「カルト・ワイン「を作って注目を集めていたヘレン・ターリーがワインメーカーになりました。収穫したブドウの中で柔らかな味わいのものなどは、分けてセカンド・ラベルに使うことにしました。こうしてできたのが「Jayson」ブランドですが、現在はセカンドではなく別ブランドという位置づけに変わっています。

1998年にはアトラス・ピークにWaters Ranchという畑を作りました。David Abreuが植樹と栽培管理を担当しました。これが今もパルメイヤーの主要な畑となっています。このほか、アトラス・ピークのステージコーチ(Stagecoach)の畑も主要な畑をして使っています。ステージコーチも現在はガロの畑ですので、買収後も使い続けています。

パルメイヤーというとビッグでボールドなワインスタイルで知られており、なんとなくヴァレー・フロアのブドウを使っているイメージがありましたが、実は山のブドウにこだわりを持っているワイナリーです。

自社畑は標高400~700mくらい。アトラスピークの一番端にあります。シャルドネとメルローは西向きの標高高いところに植わっています。

山の畑は涼しい気候で、生育期間を長くのばせます。酸をキープするブドウが作れます。また、霧の高さよりも高いところにあるので、日照時間は長くなります。ただ、表土は浅く雨で流れてしまうという弱点もあります。ヴァレーフロアであれば1エーカーあたり5~6トン取れるところが山では1トンから2トンしか取れないそうです。山ではブドウの樹が生き延びるのが大変であり根を伸ばすのと同時にブドウの粒が小さくなります。ブドウの色は濃く。酸とのバランスが良いワインが作れます。さらにパルメイヤーでは樹勢があまり強くならないような台木を使っています。また、ワインにエレガンスさを持たせるためにブドウの実に強い日照をあてないように工夫しています。

現在のワインメーカーはケイティ・ヴォート(Katie Vogt)という人。ブドウ醸造の研究でUC Davisに並び立つCal Polyで学び、2016年からアシスタント・ワインメーカーになりました。2019年にガロが買収してからワインメーカーに就任しています。

テイスティングに移ります。
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2022 Jayson Sauvignon Blanc
ソーヴィニヨン・ブランはガロが買収してから始めたもの。2021年が最初のヴィンテージでこれが2回目のヴィンテージとなっています。パルメイヤー自身はソーヴィニヨン・ブランの畑を持っていないので、ワインメーカーがナパをいろいろ回ってブドウを調達しているとのこと。生産量は少なく日本にも未輸入です。醸造では100%樽発酵しています。
パッションフルーツやグアバなど熟度の高い果実。オイリーなニュアンスとハーブの風味もあります。ちょっと甘やかさがあり、一方で酸もきれいで強く、バランスが取れています。フレッシュな味わいで、果実の明るさとなめらかなテクスチャを感じます。ナパらしさを感じるソーヴィニヨン・ブランです。

2021 Pahlmeyer Chardonnay
2021年は乾燥して雨が少なく収量が少なかった年です。
色は濃いめです。香りにミネラル感があり、白桃やナシ、かんきつの風味。バターやヴァニラ、ナツメグなどの風味もありリッチな味わいです。クリーミーで柔らかなテクスチャーです。余韻も素晴らしく長い。
パルメイヤーでは房が小さく凝縮した味わいになるオールド・ウェンテのクローンを使っており、その良さがよく表れています。
ニコラスさんは「ナットシャイ(控えめではない)」ワインと表現されていましたが、パルメイヤーのイメージそのままのワイン。基本的にワインスタイルは買収後も変えていないそうです。

2013 Pahlmeyer Chardonnay
麦わらや穀物の香り。リッチでかんきつやバター、フルーツケーキ。熟成からくるマッシュルームやベイキングスパイス、ナッツの風味。10年熟成でしっかりと熟成感が表れてきています。これが悪いわけではないですが、個人的には果実味がストレートに伝わってくる若いヴィンテージの方がこのワイナリーらしさがより感じられるような気がしました。

2020Jayson Cabernet Sauvignon
2020年は山火事でナパの多くのワイナリーが苦労した年。パルメイヤーでは「パルメイヤー」ブランドでの赤ワインはあきらめ、赤はジェイソンのカベルネ・ソーヴィニヨンだけを作りました。
Pope ValleyやSilverado Bench(ガロ傘下のWilliam Hillの畑)を使っています。山のブドウにこだわるパルメイヤーブランドとは異なり、ベンチランドにある畑も使っています。100%カベルネ・ソーヴィニヨンは、このブランドでは珍しいです。
非常に濃い。杉、ハーブ、カシス、ブラックベリー、アメリカン・チェリー。濃いですがフレッシュさもありバランス良いです。タンニンもしっかり。テクスチャは柔らかく緻密な味わい。

最後のワインは
2008 Pahlmeyer Proprietary Red
2008年は春先に霜の被害があり夏にはヒートスパイクも起こりました。収穫はだいぶ減ったそうです。9月上旬に熱波が来たので、そのお前にメルローやカベルネ・フランは収穫しました。カベルネ・ソーヴィニヨンは熱波を越えてから収穫し、生育期間が長くなりました。
腐葉土、マッシュルーム、カシス、レッドチェリー、チョコレート、ココア、コーヒー、グラファイト。アルコール度数は高いですが、重さを感じず、素晴らしく長い余韻があります。
ちょっと低めの温度でサーブされたのも抑制が効いた味わいになり、素晴らしかったです。

さて、表題につけた「オーナーが代わって得たもの失ったもの」ですが、基本的には畑のソースも変わっておらず、ワインメーカーも交代はしていますがこれまでを引き継いでいます。逆に得たものとしては、ガロ傘下の畑からの調達が確実になったことがあります。また新たに作ったソーヴィニヨン・ブランもかなり美味しく、これも得たものと言っていいでしょう。いい意味で「変わらないこと」に安心しました。

現在インポーター在庫があるのは2020ジェイソン・カベルネだけだそうです。

Date: 2023/1119 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ilovecalwineの海老原さんが急死されたのが7月のこと。同社の扱いワイナリーのうち、ピゾーニ(Pisoni)とルシア(ルチア、Lucia)は中川ワインが引き継ぐことが明らかになっていましたが、新たに6ワイナリーをアイコニックワイン ジャパンが引き継ぐことが発表されました。

引き継ぐのは
オーガスト・ウェスト (August West Wine)
サンドラー ワインカンパニー(Sandler Wines Co.)
コブ ワインズ (Cobb Wines)
ロアー ワインズ (Roar Wines )
カーボニスト (Carboniste Wines)
ジョージ(George)
の6ワイナリー。入荷待ちのジョージ以外は11月21日から販売します。

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ilovecalwineのワインの中でも故人の思い入れが一番強かったのがオーガスト・ウェストだと思います。オーガスト・ウェスト(後にサンドラーも)のワインメーカーのエド・カーツマンさんに、インポーターを始めたいと話して、自分のワインを扱っていいよと言ってもらったのが開業のきっかけでしたから。
3月のカリフォルニアワインの試飲会(私はそのときが海老原さんにお会いした最後でした)のときもエド・カーツマンさんは来日してブースに立っておられました。

私もオーガスト・ウェストは思い出深いワイナリーであり(日本から注文したのは私が初めてでした)、どうなるか気になっていたのでよかったです。

ちなみにアイコニックワイン ジャパンとilovecalwineは、廃業してしまったソノマワイン商会と3社で一緒に試飲会をやっていた時期もある、仲の良いインポーターですので、海老原さんも安心していると思います。
Date: 2023/1118 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのダックホーンの親会社であるダックホーン・ポートフォリオは11月16日、ソノマの人気ワイナリー「ソノマ・カトラー(Sonoma-Cutrer)をブラウン・フォーマンから買収したと発表しました。買収金額は約4憶ドルで、株式と現金を組み合わせて支払います。
sonoma cutrer
ソノマ・カトラーは1973年に設立。1990年ごろにはシャルドネの人気ブランドとして一世を風靡しました。ちなみに、「広すぎる」と言われてきたソノマ・コーストAVAは、ソノマ・カトラーの自社畑を全部AVA内に入れるために、エリアを広くしたと言われています。畑はロシアン・リバー・ヴァレーとソノマ・コーストを合わせて1121エーカーに達します。

ブラウン・フォーマンは1999年にソノマ・カトラーを取得、ソノマ・カトラーを高級シャルドネで最大のブランドとして成長させてきました。

ダックホーン・ポートフォリオにはダックホーンやゴールデンアイなど、もともとのグループワイナリーに加え、カレラやコスタ・ブラウンなどを所有しています。シャルドネの高級ブランドはこれまで欠けていた分野であり、それが今回買収した理由のようです。


Date: 2023/1117 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパヴァレーのサステナビリティ認証プログラム「Napa Green」が合成除草剤の使用を完全に禁止する意向を発表しました。
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代表的な除草剤として広く使われているのがモンサント社の「ラウンドアップ」。その成分であるグリホサートはリンパ腫などの発がん性を持つという説があります。現状では、その確固たる証拠はなく、発がん性物質を含むといった表示なしに一般的に使用が許可されていますが、議論や訴訟などが続いているところです。

米国における調査によると、大人の80%、子どもの87%の尿からグリホサートの痕跡が検出されたとのことで、それだけ広く使われている薬剤です。

今回、Napa Greenはラウンドアップの使用を2026年までに、その他の合成除草剤の使用を2028年までに禁止することをプログラムに盛り込む予定です。

除草剤を使用しない場合、物理的に草を刈ったり、トラクターで耕したり、羊などに食べてもらうなど、別の対策が必要になりますが、騒音や二酸化炭素の排出増につながり、コストも増加します。40年以上前から除草剤の使用を止めているという著名な栽培家フィル・コトゥーリによると、除草剤を使用しないことによるコスト増は1エーカーあたり800ドル程度になるとのことです。

プログラムに除草剤禁止を盛り込むことで、認証から離れる生産者が出てくる可能性もありますが、ナパは世界をリードする立場であるとの認識から禁止に踏み込む意向です。
Date: 2023/1116 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ワインの偽造によって2012年に逮捕されたルディ・クルニアワン。彼が作った偽造ワインはいまだに数百憶円相当分が市場に出回っているとも言われています。

(彼の事件については「世界を揺るがす大ワイン偽造事件のまとめ」「3分でわかるルディ・クルニアワン「ワイン偽造」事件」をご覧ください)
偽造ワイン
2014年に10年の懲役の判決が出て、エルパソの刑務所に収監されていましたが、2020年11月に釈放されました。

その後、米国から故郷であるインドネシアに送還されたことは判明していますが、それ以降の行方は杳として知れませんでした。それが、最近になって再び活動を始めたという話が伝わってきています。Wine Fraudというサイトを主宰するモーリーン・ダウニーという人が、ルディ・クルニアワンに依頼して偽造ワインを作ってもらい、それを自身のワイン会において同じワインの本物と一緒に提供したというのです。

ゲストの多くは本物よりもルディによる偽造ワインを好んだとのことで、あるゲストは「我々はルディのワインに関する知識、イマジネーション、そして技巧のマジックを再び体験するためにここに来た」「ルディ・クルニアワン氏はワインの天才である」と書いていたそうです。

報じられているワイン会は2回あり、それぞれ1990年のロマネコンティとペトリュス、1990年のジャック・フレデリック・ミュニエ ミュジニィ、1982年のシュヴァルブランが偽造されたとのことです。

今回のワインについては法に触れる部分はないと考えられますが、また本格的にワイン偽造ビジネスに入っていくのではないかという見方も出ています。

ちなみに、クルニアワインがいない時代もワイン偽造はむしろ増えており、偽造防止用のシールでさえ偽造してしまうといったことが起こっています。また、高級ワインだけでなくイエローテイルの偽造ワインも見つかっているそうです。

ワインだけでなく蒸留酒でも偽造は増えており、今はむしろワインよりもそちらが中心になっているという見方もあります。
Date: 2023/1115 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ダリオッシュ(Darioush)のオーナーのダリオッシュ・ハレディ氏が8年ぶりに来日し、セミナー兼試飲会が開かれました。私は今回は通訳として参加させていただきました。


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ワインがずらっと並んでおります。1時間弱で11種類を試飲するというセミナー形式を3回行うという結構忙しいスケジュールです。

私は合間に試飲をしたので、詳しいメモは取っておらず、今回は一通り簡単に紹介します。

DARIOUSH SIGNATURE VIOGNIER NAPA VALLEY
ダリオッシュ シグネチャー ヴィオニエ ナパヴァレー 2022  
ナパでヴィオニエ自体がかなり珍しいです。ダリオッシュさんによるとナパ全体で100エーカーほどしかなく、ダリオッシュは約4エーカーのヴィオニエの畑をオークノールに持っています。すごくきれいで華やか、繊細さもあるいいヴィオニエ。ダリオッシュさんは、スパークリングの代わりに乾杯ワインとして使うとのこと。

DARIOUSH SIGNATURE CHARDONNAY NAPA VALLEY 
ダリオッシュ シグネチャー シャルドネ ナパヴァレー 2021
カーネロスの畑のブドウを中心にしており、きれい系のシャルドネです。新樽率50%、100%マロラクティック発酵しています。果実味豊かでフレッシュな味わい。

DARIOUSH SIGNATURE PINOT NOIR RUSSIAN RIVER 
ダリオッシュ シグネチャー ピノノワール ロシアン リヴァー 2021 
これだけはナパではなくソノマのロシアン・リバー・ヴァレーのブドウを使っています。ロシアン・リバー・ヴァレーの中でも、ミドルリーチと呼ばれるあたりに畑があるようです。赤果実の芳醇な味わい、イチゴジャムのような甘やかさがあります。全房も使っているとのことで、やや骨太でカリフォルニアらしいピノ・ノワールです。

DARIOUSH SIGNATURE MERLOT NAPA VALLEY
ダリオッシュ シグネチャー メルロー ナパヴァレー 2018 
メルローは基本的にはカベルネ・ソーヴィニヨンへのブレンド用に作っていますが、できのいい年だけ単独でボトリングしています。これは果実味と酸がきれいで、メルローとしては珍しいほど緊張感のある味わい。おいしくて驚きました。

DARIOUSH SIGNATURE CABERNET FRANC NAPA VALLEY
ダリオッシュ シグネチャー カベルネ・フラン ナパヴァレー 2019 
カベルネ・フランも基本はブレンド用に作っています。青っぽさはありませんが、スパイス感とちょっと土っぽさがあり、メルローとはちょっと対照的な味わい。これもいいです。

DARIOUSH SIGNATURE SHIRAZ NAPA VALLEY
ダリオッシュ シグネチャー シラーズ ナパヴァレー 2019
ダリオッシュ氏の出身地であるイランには「SHIRAZ」という町があります。ここで見つかった7000年前の壺の底の残存物からワインの痕跡が見つかったそうで、ダリオッシュ氏に言わせると最古のワインではないかとのことです。というわけでカリフォルニアでは珍しくシラーズと名乗っています。シラーズらしい陽性の味わいとスパイスの風味があります。

DARIOUSH SIGNATURE RED WINE NAPA VALLEY 
ダリオッシュ シグネチャー レッド ワイン ナパヴァレー 2019
カベルネ・ソーヴィニヨン32% メルロー23% プティ・ヴェルド22% カベルネ・フラン17% シラーズ6%という構成。このワインはまだ数ヴィンテージしか作っていません。果実の風味と酸がきれいでバランスよく、パワフルさもあるワイン。初めて飲みましたがこれもすごくいいです。

DARIOUSH SIGNATURE CABERNET SAUVIGNON NAPA VALLEY 
ダリオッシュ シグネチャー カベルネ ソーヴィニヨン ナパヴァレー 2019
こちらのワインは別途レビューしますが、2018年と2019年は例外的にカベルネ・ソーヴィニヨン100%で作られました。スケールの大きなワイン。

DARIOUSH SAGE VINEYARD MOUNT VEEDER CABERNET SAUVIGNON NAPA VALLEY 
ダリオッシュ セージ ヴィンヤード マウントヴィーダー カベルネ ソーヴィニヨン ナパヴァレー 2019
セージ・ヴィンヤードはナパの西側、マウント・ヴィーダーにある畑。マウント・ヴィーダーの著名ワイナリーであるマヤカマスの近隣にあります。標高600メートルとかなりの高さです。山らしいしっかりとしたタンニンとストラクチャーがあり、素晴らしいワイン。


DARIOUSH DARIUS I I CABERNET SAUVIGNON NAPA VALLEY 
ダリオッシュ ダリウス I I カベルネ ソーヴィニヨン ナパヴァレー 2019
毎年一番いい樽を18~20だけ選んで作るという「お宝」のワイン。甘やかで華やか。重厚な味わい。
ラベルはロンドンのヴィクトリア&アルバート・ミュージアムにあるペルシャの織物のコレクションから画像を送ってもらって、作っているとのこと。毎年変わります。


CARAVAN RED BLEND NAPA VALLEY 
キャラバン レッドブレンド ナパヴァレー 2018
キャラバンは若木のブドウを使ったワイン。味わいも重厚感ではなくはつらつとした印象でした。

ダリオッシュのワイン、オークノールやマウント・ヴィーダーといった、ナパの中では冷涼な地域の畑のブドウを使っています。それを生かした冷涼感あるメルローやレッド・ブレンドが今回発見でした。また、個人的には4月にナパでこのセージ・ヴィンヤードのワインを飲んで非常に素晴らしい印象だったので、それが今回輸入されるようになったことがうれしかったです。
Date: 2023/1114 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパヴァレー・ヴィントナーズのYouTubeチャンネルで入門の講座が公開されました。20分くらいで簡単にまとめています。上手に編集していただき、いい感じです。


「いいね」もよろしくお願いします。
Date: 2023/1110 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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スティーブ・キスラーの作るオキシデンタル(オクシデンタル)のピノ・ノワールの中でエントリーレベルになる「フリーストーン・オキシデンタル2021」が2023年のワインスペクテーター年間2位に入りました。

古巣のキスラーのワインでも、ざっと調べた範囲では年間6位が最高で、もちろんスティーブ・キスラーとしても最高順位になります。レイティングは94点。

日本にも同ヴィンテージが入っています。瞬殺案件になる可能性が高いのでお早めに。

なお、5位にはロバート・モンダヴィの孫のカルロとダンテが作るレイン(Raen)のピノ・ノワールが入りましたが、残念ながら国内は2ヴィンテージ前しかありません。









Date: 2023/1107 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパで初めての「マイクロ・ワイナリー」の認可が下りました。

「マイクロ・ワイナリー」は2022年5月に生まれた新しいワイナリーの認可制度で、201ガロンから5000ガロン(4樽~100樽程度に相当)の醸造設備を持つワイナリーが対象になります。カスタム・クラッシュなどを使って醸造を行うワイナリーは対象になりません(そもそも醸造設備の許可を取る必要がありません)。

通常のワイナリーはナパ郡のプランニング・コミッションで設立の許可を取らないといけませんが、時間が長くかかり、最初の申請からさまざまな修正を強いられるなど、大きなハードルになっています。マイクロ・ワイナリーは、地域分けのアドミニストレーターの許可だけでよく、今回はわずか15分のヒアリングで許可が下りました。

認可されたワイナリーは、カーネロスにあるGoel Estate Winery。ミズーリ州セントルイスに住むDharam Goel and Myrto Frangosの二人が申請していました。2020年に土地を購入し、今年3月にワイナリーの設立申請を出したとのことです。

20エーカーの土地の中で12エーカーがブドウ畑。ワイナリーはかつてマッシュルーム栽培をしていた納屋のところに作るとのこと。テイスティング・ルームもあり予約のみで1日最大10人のビジターを迎えられます。このほか、駐車場が6台分あり、うち1つは電動車の充電設備になっています。こういったもろもろのことがすべて設立条件に入っています。

Date: 2023/1103 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ジェームズ・ブライアント・ヒルのピノ・ノワールが柳屋としあわせワイン倶楽部で安く出ています。

ジェームズ・ブライアント・ヒルはモントレーで「コスパ王」と個人的に読んでいるシャイド・ファミリーのワイン。シャイドはモントレーに多くの畑を持っており、サスティナブルの認証も受けています。さらには有機栽培にも取り組んでいます。

シャイドといえばランチ32のシャルドネやカベルネ・ソーヴィニョン、あるいはプティ・シラー系のブレンド「Odd Lot」などが人気です。モントレーにありながら意外とピノノワールはそんなに有名ではなかったかもしれません。

ジェームズ・ブライアント・ヒルは以前別のヴィンテージのものを飲みましたが、酸がきれいでバランス良く、お手本のようないいワインでしたお。











Date: 2023/1102 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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もう1か月も前のことで恐縮ですが(先月はいろいろ忙しくてニュース系がほとんど置き去りでブックマークだけがたまっています)、デカンター誌が今年の「ライジング・スター」を二人発表しています。一人はダーク・ニーポート(Dirk Niepoort)というポルトガルのワインメーカー、もう一人がブレナ・キグリー(Brenna Quigley)という地質学者です。

Brenna
ブレナ・キグリーはカリフォルニアの地質学者で、様々なワイナリーが畑のテロワールを理解するために彼女と契約をしています。契約しているワイナリーにはナパのクインテッサ(Quintessa)、ソノマのレイン(Raen、ティム・モンダヴィの2人の息子によるワイナリー)、サンタ・バーバラのドメーヌ・ド・ラ・コート(Domaine de la Cote)などがあります。また、ブルゴーニュの生産者からも招聘されています。

彼女の活動については半年ほど前から注目しているのですが、音声コンテンツが多く、なかなかゆっくり聴く時間が取れていません。ともかく、「テロワール」とワインの味わいの説明について、現状最も頼りになる一人として認識されているのは間違いありません。

おそらく、これから記事で登場する頻度も上がるのではないかと思います。地質や土壌に興味がある方はウオッチしておいた方がいい人です。
Date: 2023/1101 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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パソ・ロブレスの人気ワイナリー「ダオ(DAOU)」をオーストラリアをベースにする大手会社トレジャリー・ワイン・エステートが買収すると発表しました。買収にはDAOUとDAOU傘下のブランド、ワイナリー、ホスピタリティ・センター、畑が含まれています。買収額は9億ドルの契約一時金と最大1億ドルの追加アーンアウトとなっています。

ダオはレバノン出身のジョージとダニエルのダオ兄弟が2007年にパソ・ロブレスのアデレーダ・ディストリクトに設立したワイナリー。パソ・ロブレスの中では冷涼な地域に畑を持っています。カベルネ・ソーヴィニョンなどボルドー系品種のワインを得意とし、ダオ・ブランドではワイン・アドヴォケイトで最高97+、パトリモニー(Patrimony)ブランドでは同じく最高99点という高い評価を得てきました。買収以降もダオ兄弟はワイナリーに残ってワイン造りを担当します。

トレジャリーはオーストラリアのペンフォールズやウルフブラスなどを擁する大手メーカー。カリフォルニアではベリンジャー、エチュード、BV、スターリング、スタッグス・リープ・ワイナリーを保有しています。これらはいずれもナパのワイナリーであり、パソ・ロブレスのワイナリー取得は初めてになります。

今回の買収はトレジャリーにとってはラグジュアリー・ブランドの拡充の狙いがあります。また、ダオにとっては、これまでのパソ・ロブレスのローカルなワイナリーというイメージから世界レベルのブランドへの飛躍といった意味合いがありそうです。

ダオのワインは国内ではナニワ商会(新橋のワイン蔵Tokyo)が輸入しており、ダオの中でもラグジュアリー系のパトリモニーは中川ワインが輸入しています。これらが今後どうなるかは不明ですが、トレジャリーは日本支社もあることから、将来はそちらへの移管が行われる可能性もありそうです。