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Date: 2023/0831 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのロンバウアー(Rombauer)を、世界最大のワイナリーであるE&Jガロが買収しました。買収額は明らかになっていません。ロンバウアーは1980年に設立され、濃厚でクラシカルなスタイルのシャルドネの人気で知られています。

買収にはロンバウアーのブランドのほか3カ所の醸造設備、2カ所のテイスティング・ルーム、ナパを中心に700エーカーに及ぶ畑を含んでいます。

ガロはこの6月にはモントレーのハーンのブランドを買収していますが、そのときには畑を含んでいませんでした。今回は畑を含んだ買収ということで、より深いコミットメントになっています。ロンバウアーのワインメーカーはそのまま職務を続ける見込みです。

一方、ロンバウアーはこの5月に初めてのピノ・ノワールを発売するなど、積極的に事業を行っており、今回なぜ買収に応じたのかは疑問もあります。

ガロが高級ワインブランドの買収を始めたのは2015年から。ソノマのJ、モントレーのタルボット、ナパのパルメイヤーとステージコーチ・ヴィンヤード、オリン・スイフト、上記のハーンなどを買収しています。
Date: 2023/0830 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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サンディ(Sandhi)が作る異例のワイン「ロマンス(Romance)」が日本に入荷しています。異例というのは、他のサンディのワインとはブドウの出所が違うからです。

サンディとドメーヌ・ド・ラ・コート(Domaine de la Cote)はどちらもラジャ・パーとサシ・ムーアマンによるワイナリー。ドメーヌ・ド・ラ・コートがサンタ・リタ・ヒルズの西端にある超冷涼な自社畑のブドウを使っているのに対し、サンディはサンフォード・ベネディクトなどサンタ・リタ・ヒルズの他社の銘醸畑のブドウを使っています。ところが、このロマンスの畑の持ち主はドメーヌ・ド・ラ・コート。つまり実質自社畑のブドウなのです。ドメーヌ・ド・ラ・コートは基本的にはピノ・ノワールだけなので、その白版がこのロマンスとも言えます。

ロマンス・シャルドネ2020は、いきなりワイン・アドヴォケイトで98点。今回入荷した2021年もジェームズ・サックリングで97点。また、どちらもワイン・スペクテーターでは95点でセントラル・コーストのシャルドネとしてはトップに立っています。私は5月のセミナーで試飲しており(全房発酵のあれこれなどを、サシ・ムーアマンに聞く)、それ以来いつ入荷になるのかずっと気になっていたワインです。税込み1万6000円台と価格は張りますが、米国でも100ドルなので国内価格は高くありません。

なお、同時にロマンスのピノ・ノワールというのも入荷しています。こちらは畑も含めて資料がなく、謎のワイン。

Wassy’sです。


トスカニーです。

こちらがピノ・ノワール。

Date: 2023/0826 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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米国政府による「USDA Organic Integrity Database」に登録された有機栽培認証のブドウ畑は過去1年間に1774エーカー増加したそうです(Organic Wines Uncorked: California)。

興味深いのはこのうちの77%にあたる1370エーカーが大規模なワイナリーによるものだったことです。

例えばソノマでは732.95エーカー増加しましたが、このうち664エーカーはジャクソン・ファミリー傘下の畑でした。

ナパでは430エーカーのうちコンステレーション・ブランズが所有するト・カロンの331エーカーが寄与しました。

パソ・ロブレスでは260エーカー中、ハルター・ランチ(Halter Ranch)が200エーカーに寄与、サンタ・バーバラでは198.5エーカー中、ストルプマンが174エーカーに寄与しました。

ちなみにモントレーのシャイド・ファミリーは3000エーカーを有機栽培に転換中であり、これまで666エーカーで認証を得ています。
Date: 2023/0825 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ilovecalwineの海老原卓也さんが亡くなって1カ月ちょっとが経ちました(参考「ilovecalwine海老原卓也さんを偲ぶ」)。

海老原さんが日本に紹介したワインの代表格の一つであるポール・ラトー・ワインズのポール・ラトー氏が全世界のメーリング・リスト・メンバー向けのメールで、卓也さんに言及し、その死を悼みました。

「海老原卓也さんが、『心』ワインの最初のヴィンテージを試飲するためだけに、わざわざ日本から飛来してくれたことを今でも鮮烈に覚えています。彼はカリフォルニアワインへの真のパッションを持っており、それをユニークな日本流の方法で表現していました。彼は輸入会社の名前を『I love California wines』と名付けたのです。卓也さんは1カ月前に急死され、私はこのヴィンテージの『心』ワインを彼の思い出と彼が生涯をかけて日本でカリフォルニアワインの宣伝してくれたことに捧げたいと思います」

ポール・ラトー

ポール・ラトー氏にとっては、日本に輸出しなくても、米国内の需要だけで余裕でまかなえるでしょう。日本に輸出をしたのは海老原さんの情熱に打たれたからではないかと思います。このようにわざわざ言及してくれるのは嬉しいですね。

そういえば、最後にお会いしたときに、ポール・ラトーからカベルネが出る話をうかがったと思います。

なお、ポール・ラトー氏の記憶違いがあったのかもしれませんが、ポール・ラトーのワインの中で「心」だけはワインライフの杉本夫妻と共同で開発しており、現在もワインライフが国内で取り扱っております。



「心」は現在柳屋でセールになっています。


Date: 2023/0824 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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シェーファー・ヴィンヤーズを昨年、韓国資本の会社に売却した前社長のダグ・シェーファーがワイン・サーチャーのインタビューに答えています(Napa Legend on Life After Shafer | Wine-Searcher News & Features)。

内容の大部分はシェーファーのこれまでの歩みの話であり、いろいろなところに書かれてきたことですが、最後にシェーファーをやめた後、何をするか質問しています。

ワイン・ライターになろうか、なんていう冗談も言っていますが、まずは休みを取り、米国各地に住んでいる4人の孫のところを回りたいとしています。そんなにお孫さんがいるのは知らなかったです。後はチャリティ活動にも取り組んでいるとのことで、しばらくは今までできなかったことをゆっくりやるような生活のようです。
Date: 2023/0823 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Aviana
C.K.モンダヴィ・ワイナリーを率いる5人の女性が新しいブランド「Aviana」を立ち上げました。ラベルにはひいおばあさんで、米国に移住した初代であるローザ・モンダヴィをあしらい、女性の強さ、冒険、創意工夫を称えるとしています。

「この新しいコレクションは、ワインそのものよりも、友人たちとのつながりから生まれるエネルギーと創造性、そして旅行や居心地の良い場所から抜け出すときに生まれる新しいアイデアを刺激したかったのです。ワインはそれぞれ気分や考え方を表しており、その全てに恩返しへの献身が込められています」と四女のジョヴァンナ・モンダヴィは語っています。

ワインはカリフォルニアではなく世界各地から優秀なブドウを選んだもので、スペインのベルデホを使った白ワイン、ポルトガル産のブドウを使ったレッド・ブレンド、フランスのカベルネ・ソーヴィニヨンの3種類からなります。

また、ラベルにはQRコードが書かれており、それを使って拡張現実を体験することもできます。

第1~第2世代
アップデート
Date: 2023/0822 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ハリケーン・ヒラリーがカリフォルニアを襲い、南カリフォルニアを中心に洪水などの被害が出ています。ハリケーンがカリフォルニアを襲うのは1939年以来84年ぶりのことです。

収穫時期の雨ですから、ワイン業界にも影響はゼロではありません。特にサンタ・バーバラとロスアンゼルスの間にあるマリブ・コーストAVAでは、被害がある程度出ていそうだといいます。
マリブコースト

ただ、今年はヴェレゾンの進行が平年よりも1~2週間、場所によっては1カ月近くも遅れていることもあり、まだ急いで収穫しないといけないブドウは多くありません。雨で湿気が増えることでベト病やうどんこ病といった病気が広がる恐れはありますが、キャノピーの管理を適切に行っていれば、それほど大きな問題にはならないだろうと見られています。

ナパやソノマでもこれまでの雨は「お湿り」程度であり、大きな問題にはならないというのが大方の予想ですが、雨が長く続くようだと被害が広がる可能性もあるため、天気予報を注視しているという状況です。
Date: 2023/0821 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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カベルネ・フラン好きを自称しており、ナパのカベルネ・フランだけのセミナーを開催したこともあるアンディです。(「ナパのカベルネ・フラン、その魅力と実力は?」で紹介しています)

カベルネ・フランのブームをより広く捉えた記事があったので内容を紹介します(Cabernet Franc: Red-Hot Red | Wine-Searcher News & Features)。

まずカベルネ・フランの畑の面積ですが、カリフォルニアでは2014年の2852エーカーから2022年の3414エーカーへと2割近く増加しています。オレゴンでは2011年の120エーカーから2022年の344エーカーと3倍近くにもなっています。また、米国内ではニューヨーク州とヴァージニア州で一番多く植えられている赤ワイン用品種となっています。

もっと増えているのはアルゼンチンで1990年の188エーカーから2021年の3877エーカーと30年で20倍にも増加しています。カリフォルニアよりも多くなっているのはちょっと驚きました。

また、カリフォルニアではカベルネ・フランは最も販売価格の高いブドウになっています。ワシントン州でも2021年は3位だったのが、1位になっています。

ワイナリーにおける販売も伸びています。消費者に直接販売するDtC(Direct to Consumer)の分野では2023年上期の数字が前年より販売額で87.3%、販売量は56.9%伸びています。順位も16位から7位に上がりました。

ナパで1996年からカベルネ・フランを軸に据えているラング&リードでは過去18カ月で販売額が25%増加しています。

リバモアにあるスティーブン・ケント・ワイナリーはCabFranc-a-Paloozaというカベルネ・フランのイベントを始めました。イベントの参加者は2021年の150人から2022年は600人に増えました。またワイナリーでは5種類のカベルネ・フランを作っており、過去2年は倍倍で増えています。一番の問題は需要に対して供給が全く追いついていないことだとしています。ちなみにパソ・ロブレスでも「カベルネ・フラン・デー」が行われているとのことです。

オンラインでレアワインを販売しているベンチマーク・ワイン・グループのデヴィッド・パーカーCEOも供給が需要を上回っているといいます。また、ロワールのカベルネ・フランがクラシックな味わいを続けているのに対して、米国のカベルネ・フランを求める人は違ったスタイルを好んでいるといいます。

ニューヨークのドクター・コンスタンティン・フランクのミーガン・フランクは、ピーマン香をもたらすメトキシピラジンは、ワインのスタイルとして敢えて入れるのでなければ減らすかなくすかしないといけないとしています。栽培の工夫でフィンガー・レイクスでもよりよりカベルネ・フランが作られるようになっているとのことです。

若い世代がカベルネ・フランを好んでいるという話もあります。彼らは親世代が子供の頃から飲んできたカベルネ・ソーヴィニヨンには興味がなく、違うものとしてフランへの興味を持っているそうです。

間違いなくカベルネ・フランへの注目は今後も続きそうです。ちなみにアルゼンチンでは20ドルのカベルネ・フランもあるそうで、高価格が敷居の高さにつながっている日本の現状では、そういったものが輸入されるのも期待したいところです。
Date: 2023/0818 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのサン・スペリー(St. Supéry)が8月16日に自社畑「ダラーハイド」のソーヴィニヨン・ブランの収穫を始めました。今年のナパの収穫の皮切りになります。
サンスペリー

実はナパのワイナリーで最初の収穫を始めたのはサン・スペリーではなくマサイアソン(Matthiasson)でした。ただ、畑はナパではなくナパの北東にある「ヨロ郡」のもので、ロゼに使うシラーやグルナッシュでした。

サン・スペリーではいわゆるナイト・ハーヴェストを行っており、8月15日の深夜近くに畑の周りにクルーが集まり、夜のうちに3つのブロックの収穫を行ってワイナリーに運び込みました。

収穫とは無関係ですが、サン・スペリーのソーヴィニヨン・ブランについてもうひとつ発表が出ていたので紹介します。ロング・メドウ・ランチ(Long Meadow Ranch)がラザフォードに持つソーヴィニヨン・ブランの畑48エーカーをサン・スペリーが買収しました。価格は1億4800万ドルと見られています。

近年、ソーヴィニヨン・ブランの人気は上昇していますが、ナパの中での調達は年々難しくなっています。例えばスポッツウッド(Spottswoode)やトゥーミー(Twomey)はソノマのソーヴィニヨン・ブランとのブレンドに切り替えています。

サン・スペリーは自社畑のブドウだけを使っているので、より調達は難しくラザフォードの一等地にある畑の取得は大きな意味を持ちそうです。なお、サン・スペリーは現状でもナパのソーヴィニヨン・ブランの栽培の8%を占めています。ロング・メドウ・ランチもこの畑のソーヴィニヨン・ブランをしばらく使っていくとのことです。

サン・スペリーはナパのソーヴィニヨン・ブランの約8%をダラーハイドの畑で栽培しています。サン・スペリーは自社畑のブドウのみを使っていますが、
Date: 2023/0817 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Calwineday
2023年、「カリフォルニアワインの日」が決まりました。カリフォルニアがアメリカ合衆国に州として編入した9月9日です。以前から9月はカリフォルニアワインマンスとして、いろいろなイベントが行われていましたが、今年はカリフォルニアワインの日のお祝いとして「カリフォルニアワインパーティ」も開催されます。

9月9日(土)11:30~14:30
GRILL&DINING用賀倶楽部
参加費:7000円

場所は東京・世田谷のGRILL&DINING用賀倶楽部。田園都市線の用賀駅から徒歩6分ほどのところです。パーティは20種類以上のカリフォルニアワイン、スペシャルビュッフェ、オリジナルリーデルグラスのプレゼント、抽選会と充実した内容。
ワインはグラス400円からで、参加費に2000円分のワインチケットが含まれており、追加のワインチケットも購入できます。

それ以外にも各地で9月9日のランチイベントが開催されます。抽選会も含まれています。

八戸パークホテル
青森県八戸市吹上1丁目15-90
0178-43-1111

Ile de colline
東京都大田区西馬込2丁目14-23
03-6429-7062

olivino
東京都目黒区三田2丁目8-6
03-5721-9335

ワインショップうめや
東京都大田区蒲田2丁目55-3
03-6873-4002

レストラン カリストガ
神奈川県鎌倉市七里ガ浜東3-1-14
050-5600-6557

Griddle me Local
兵庫県 有馬町1021-1A
078-587-2223

Rogue Hill
東京都中央区日本橋本町4-5-1 LINX日本橋 1FRogue Hill
03-6262-0974

9月はこの日以外にも、スプリングプロモーションで優秀店となった店がプロモーションを開催予定です。
いろいろ楽しみですね。私は用賀のパーティに参加予定です。
Date: 2023/0816 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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エルンスト

ドイツ・モーゼルで200年以上の歴史を持つ名生産者「ドクター・ローゼン」。その現当主であり、デカンター誌のマン・オブ・ザ・イヤーにも選ばれたことがあるエルンスト・ローゼンがオレゴンのウィラメット・ヴァレーでワインを作っています。10年以上の歳月を経たそのワインがようやくリリースされました。

ワイナリーの名前はアパッショナータ(Appassionata=熱情)。ベートーベンのピアノ・ソナタから取ったタイトルです。

エルンスト・ローゼンはピノ・ノワールのファンでブルゴーニュにも地所を持っています。1999年にシャトー・サン・ミシェルと始めた「エロイカ・リースリング」のプロジェクトでしばしばワシントン州を訪れ、オレゴンにも立ち寄るようになったとのことです。そして2005年に「ジェイ・クリストファー」ワイナリーのオーナーのジェイ・ソマーズと共同で少量のピノ・ノワールを作り始めました。

その後、チェハレム・マウンテンズに畑を購入し、アパッショナータの畑としました(AVAはダンディー・ヒルズ)。2010年からワインを作り始めていますが、当初はソマーズが、エルンストの希望を汲んだ形で醸造を担当しました。ただ、エルンストはトップ・レベルのピノ・ノワールを造るとし、しかもそれを単一畑ではなくバレル・セレクションによるブレンドで造ると期待していました。ソマーズはその方針に反対し、2010年、2011年は単一畑でワインを作り、2012年からようやくエルンストの思う形でのブレンドになっていきました。

また、エルンストはワインを熟成して最高の状態で出荷すると考え、このほどようやく2012年のワインの出荷を始めたのです(同時に2017年、2019年もリリースしています)。2012年にはフォルティシモ、2017年はアンダンテ、2019年はアレグロと名付けられています。2012年は175ドルという価格が付いています。

また、エルンストはジェイ・クリストファーのオーナーにもなり、2019年にはジェイ・ソマーズと喧嘩別れしています。ソマーズは現在は「J.C.ソマーズ・ヴィントナー」というプロジェクトで一人でワインを造っており、彼の思う単一畑で小ロットのピノ・ノワールにこだわっています。

ワイン・サーチャーでW.ブレイク・グレイが書いた記事では3つのワインのテイスティング・ノートも書かれています。共通するのは3つともテクスチャーがよいということ。一方でやや複雑さに欠けるともしています。特に2012年のものについては「これは『Wow』とか「ホー」とか思うワインではなく「う~む」と思うようなワインだ」と、やや厳しい評価をしています。
Date: 2023/0815 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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スプリング・マウンテン
ナパのスプリング・マウンテンAVAにあるスプリング・マウンテン・ヴィンヤードは2020年のグラス・ファイアーの後、経営危機に陥り、2022年9月に民事再生(チャプター11)を申請していました。その後、投資グループのMGGインベストメント・グループが経営権を取得し、再建計画が発表されています。

200エーカーを超えるブドウ畑は植え替えられる予定で。70エーカーの畑の追加を申請する予定です。また22,000平方フィートの地下カーヴを新しいホスピタリティセンターとして改修します。また灌漑用の新しい池を造る承認も求める予定です。

スプリング・マウンテン・ヴィンヤードは4つのワイナリーが融合してできたワイナリー。1992年にミラヴァル(Miravalle)エステートからスプリング・マウンテン・ヴィンヤードに名称を変えました。1980年代には「ファルコン・クレスト」というテレビ番組のロケ地として使われたことでも有名です。

2020年のグラス・ファイアーで畑の28%のブドウをや16個の建物、ワイナリー設備などが失われました。そこからの再建を図っていましたが、コロナ禍なども影響して思うように立ち直れず、山火事の補償金を巡る保険会社との裁判に負けたことで(3500万ドルの補償を求めたが、1000万ドル上限という条項が付されていた)、チャプター11申請に至っていました。

山カベの雄としての復活を期待しています。
Date: 2023/0814 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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アルノー・ロバーツはニュー・カリフォルニアと呼ばれる自然派の中でも人気が高い生産者です。冷涼系の畑にこだわり、醸造ではごく少量のSO2を添加するほかは、土着酵母で旧樽を使い、赤ワインでは全房発酵を行うといった作りをしています。幼なじみのダンカン・アルノーとネイサン・ロバーツによるワイナリーで、ネイサン・ロバーツはロバート・モンダヴィの妻だったマルグリットの孫ということでも知られています。ラベルの絵はマルグリットによるものです。

人気の高いのはトゥルッソーなどですが、個人的には以前からここのシラーには注目していました。5年ほど前の試飲会で飲んだのが初めてだったと思いますが、それまで飲んだカリフォルニアのシラーはパソ・ロブレスやナパ、ソノマの温暖な地域のものが中心で、ソノマ・コーストのシラー自体が初めてでした。そのエレガントで凜とした味わいに驚き、それがきっかけで冷涼系シラーが好きになりました。

そのアルノー・ロバーツがウエスト・ソノマ・コーストにあるQue(ケイ)という畑で作る2021年のシラーがヴィナスで100点を取っています。ケイの畑はシャルドネで有名なThieriot(リトライ、リヴァース・マリー、センシーズなど)、リヴァース・マリーの自社畑のSummaのすぐ近くであり、太平洋からは8km程度。先日紹介したOccidentalの畑があるあたりと比べても丘1つ分ほど海に近い本当に冷涼な地域です。アントニオ・ガッローニはレビューの最後に「It's a magical wine that will thrill readers lucky enough to find it.」と書いており、この貴重なワインが日本で買えること自体ラッキーです。

ただ、飲み頃は2025年からとなっていますので、2年間は我慢して置いておいてください。

なお、アルノー・ロバーツのソノマ・コーストのシラーにも一部この畑のブドウが使われています。ちょっと前のヴィンテージなら5000円台で売っているところもあり、かなりお買い得だと思います。

ショップはしあわせワイン倶楽部です。


同じくしあわせワイン倶楽部のAVAものですが、こちらはインポーター直送品なので上と同梱はできないと思います。ただ、送料やクール便の料金は1つ分でいいようです(【楽天市場】直送、お取り寄せワインについて:しあわせワイン倶楽部)。


もう1つの単一畑「クラリー・ランチ」のシラー。こちらはペタルマ・ギャップの畑です。ヴィナス97点。ショップはしあわせワイン倶楽部。


ショップはトスカニーです。


ショップはリカータイムです。

Date: 2023/0811 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Veraison
上の写真はナパのカベルネの写真で左が昨年、右が今年の同じ日に、同じ樹を写したものです。明らかにヴェレゾンの進み具合が違うのがわかります。おおむね3週間くらい進行が違うとコメントされています(Side by side with last year’s vintage – same vine, same date | Harvest Napa Valley)。

ソノマも今年の収穫予想についてリリースを出しています(Sonoma County Anticipating the Start of Winegrape Harvest - Sonoma County Winegrowers)。ナパと同様、昨年と比べると3週間ほど遅い進行だそうです。ただ、昨年が干ばつの影響で収穫が早かった年であり、平年との比較では1~2週間遅れだとしています。

遅れの主な理由は今年前半の低温です。収穫量については昨秋から冬にかけて雨が多かったため、平年並みに戻ることが期待されています。
Date: 2023/0810 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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アーサー
日本人のワインメーカー桃井隆宏さんが造るアーサー・セラーズのディナーに参加してきました。アーサー・セラーズのワインと六本木「Modanism」のモダンな和食とを組み合わせたワイン会です。

ワインリストは以下の通り
1. Veuve Cliequot NV Brut
2. Arthur Chardonnay Russian River Valley 2019
3. Arthur Pinot Noir Russian River Valley 2021
4. Arthur Pinot Noir Cherry Ridge Vineyard 2021
5. Arthur Pinot Noir Spring Hill Vineyard 2018
6. Arthur Pinot Noir KR Ranch 2019
7. Arthur Pinot Noir Gloria Vineyard 2018
乾杯のスパークリングとシャルドネ1つ以外は5つピノ・ノワールが並びました。



2. Arthur Chardonnay Russian River Valley 2019
シャルドネについては「シャバシャバしたワインは作りたくない」と桃井さんのコメント。フィルターなしでボトリングされています。少し温かさを感じるワイン。中程度の酸味。白桃、塩っぽさも少しあります。ロシアン・リバー・ヴァレーというイメージに合っているワインだと思います。

3. Arthur Pinot Noir Russian River Valley 2021
2020年は山火事とそこからの煙の影響でワインを造るのを断念した桃井さん。ナパの被害の大きさが目立ちますが2020年はソノマも相当程度被害がありました。打って変わって2021年は非常にいいヴィンテージと評価されています。ただ、収量は少なく、ブドウの調達には苦労した面もあったそうです。
ロシアン・リバー・ヴァレーのピノ・ノワールは「楽しいワインをきちんと作りたい」と思って作ったワインだとの桃井さんのコメント。ロシアン・リバー・ヴァレーらしいリッチなピノ・ノワール。ジューシーな赤果実の風味で飲むと幸せになるワイン。

4. Arthur Pinot Noir Cherry Ridge Vineyard 2021
Cherry Ridgeは近年ワインメーカーとしての評価をめきめきと上げているRoss Cobbが栽培している畑。冷涼なグリーン・ヴァレーにあります。Arthurでこの畑のワインを造るのがこれが最初です。3番と比べるとエレガントですが、キメの細かいタンニンがあり、グリップ感を感じます。複雑さもあり、個人的にはこの日のベストワインでした。

5. Arthur Pinot Noir Spring Hill Vineyard 2018
Spring Hillはペタルマ・ギャップにある畑。風が強くブドウには過酷な環境です。果皮が厚く、タンニンもしっかりしています。Pommartクローンということもあるのか、アメリカン・チェリーのようなダークな果実味を感じます。4番が軽やかさに腰を据えた感じがするのに対して、こちらは最初からずっしりとした感じ。

6. Arthur Pinot Noir KR Ranch 2019
スイス・クローンを使っているという話。同席した方から教わったことによるとスイス・クローンは果実がやや大きめになるとのこと。そのせいか一番赤果実系の味わいを感じます。桃井さんいわく「どの料理にも寄り添うワイン」。バランスよく総合的によくできたワインです。

7. Arthur Pinot Noir Gloria Vineyard 2018
GloriaはFreemanの畑。Freemanのアキコさんと桃井さんとは共にエド・カーツマンにワイン造りを教わった兄妹弟子の関係です。
これは3と同様、やや温かさを感じるワイン。リッチな果実味が美味しいです。うなぎのタレとのマッチングが良かったです。

ワインはもちろんのこと、料理も美味しく堪能しました。






Date: 2023/0809 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ワシントン州最大のワイナリーであるシャトー・サン・ミシェル(Chateau Ste. Michelle、会社名はサン・ミシェル・ワイン・エステーツ)が向こう5年間、購入するブドウを4割カットすると表明し、ワシントンのワイン業界に激震となっています。

シャトー・サン・ミシェルは一時はワシントン州の7割のワインを生産していたほどの大ワイナリー。米国全体で見てもトップ10に入る規模であり、現在もワシントン州の約半分を生産しています。また、オレゴンでもAtoZやErathなどのワイナリーを保持しており、オレゴン最大のワイナリーでもあります。

ただ、自社畑は少なく、ワシントンで2400エーカー、オレゴンで190エーカーとなっており、ほとんどが契約栽培者からの購入となっています。ワシントン州ではそれが3万エーカーにも及びます。今回の発表は、その3万エーカーを1万8000エーカーにまで減らすということになります。契約農家からの買い取りを一律4割減らすのか、契約農家によって完全に切ったりそのままだったりするのかは公表されていません。

サン・ミシェルは10ドル弱の価格帯を得意としており、コロンビア・クレストなどの有力ブランドを抱えています。ただ、この価格帯の市場は減少傾向にあり、よりプレミアムな価格帯のワインに移行する動きがあります。例えば2020年のコンステレーション・ブランズからガロへの大量ブランド売却(シミやレイヴンズウッド、フランシスカンなど)も低価格帯ブランドを減らすためでした。

そういう意味ではサン・ミシェルは業界の変化についていくのに失敗したという見方もあります。

また、サン・ミシェルの親会社は2021年に投資会社のシカモア・パートナーズに変わっていますが、そのことと今回の動きにはほとんど関係なく、それ以前からの価格帯シフトの失敗が重要だったという見方が主流です。

ワシントン州では1万エーカー以上の畑のブドウが行き場を失うことになり、他のワイナリーによるブドウの契約なおdにも影響がでてくるのは間違いないでしょう。ブドウ価格も下落することが予想され、栽培家にとっては非常に厳しい状況になりそうです。
Date: 2023/0805 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ピーター・ルーガー
8月6日からアカデミー・デュ・ヴァンで秋冬講座の募集が始まります。今回はナパヴァレー・ワイン・ベスト・エデュケーターとしてナパの講座を3つ募集します。

カリフォルニア・ナパ・ヴァレー・ベーシック
11月1日から始まる6回のコースです。ナパヴァレーの全AVAを網羅して学ぶ講座。1年後になりますが、次のナパヴァレー・ワイン・エキスパートを受験する人のための勉強や、すでにナパヴァレー・ワイン・エキスパートは受かったけど、AVAの知識など自信がないという人に向く内容です。公式テキストブック付属。

カリフォルニア・ナパヴァレーの名門ワイナリー
こちらは、もう一歩先を勉強したい人のための講座。
第1回 「パリスの審判」で1位になったスタッグス・リープ・ワイン・セラーズとシャトー・モンテレーナ
第2回 復活した古豪、イングルヌックとボーリュー・ヴィンヤード
第3回 ナパ・シャルドネの両雄、ハイドとハドソン
第4回 クラシックとモダンスタイル、アンディ・エリクソンが作るマヤカマスとファヴィア
第5回 独自スタイルを貫くシルバー・オークとジョセフ・フェルプス
第6回 銘醸畑が生み出す最高のカベルネ、ドミナスとシェーファー

あれ、モンダヴィとかオーパス・ワンはないの? と思われるかもしれませんが、別の先生がモンダヴィとオーパス・ワンの単発講座を開きますので内容がかぶらないようにしました。
ワインの物語を紐解く「ロバート・モンダヴィ」編 ワインへの情熱とフランス・イタリアの巨匠たち

さて、3つ目の講座は2024年1月19日に開催する予定の「ピーター・ルーガーで熟成肉ステーキと最上級ナパワインを味わう」です。
予約困難なステーキ・ハウス「ピーター・ルーガー」で熟成肉とナパのワインを味わう講座。目玉は2004年のBondの単一畑2本です(VecinaとMelburyを予定)。どちらも普通にレストランで飲んだら1本20万円はくだらないでしょう。

今期のラインアップを見ていたら、布袋ワインズの社長を退任された川上さんが大阪校でやるカリフォルニアワインの講座もあります。
カリフォルニアワインの新たな時代  =甘くて濃いワインだと思っていませんか?=
歴史を刻む古樹齢の深い味わいの世界   =カリフォルニアを中心に各産地を比較する=
どちらも単発の講座で、参加しやすいと思います。カリフォルニアワインの講座が増えるのは嬉しいことです。
Date: 2023/0804 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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最近はブルピノファンも狙っているというドメーヌ・ド・ラ・コートの2021年のピノ・ノワールが再入荷しています。生産量が元々少ないため、日本への割当もあまりもらえないというワイン。再入荷も奇跡かもしれません。エレガント系ピノ・ノワールのファンならばマスト案件でしょう。

余談ですが、自サイトを検索していたら、ドメーヌ・ド・ラ・コートのエステートが5000円台という記事を見つけて、その頃に買っておくんだったなあと改めて思いましたです。

レア物ではハドソンのスポット入荷ものも一部にあります。カベルネ・フラン・ベースのオールド・マスターは5年以上寝かせたらむちゃくちゃ美味しくなると思います。

以下の3本はいずれもWassy's。個人的お薦めはブルームズ・フィールドですが、エステートはコスパ高いです。

アサヒやワインセラーはブルームズ・フィールドはありませんが、値段は少し安い。

タカムラワインハウスも同様。

ハドソンのオールド・マスター。リンク先はココスです。

「コシュ・デュリより美味しい」と言った人もいたハドソンのリトル・ビット。超限定品です。しあわせワイン倶楽部。
Date: 2023/0803 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Occidental
先日「オクシデンタル2020年を全部飲む」という記事で、スティーブ・キスラーのオクシデンタル(Occidental、オキシデンタル)のワインの記事を書きました。

その後、期せずしてオクシデンタル関連の記事が2つ続けて公開されました。一つはVinfolioのブログで、スティーブ・キスラーがオクシデンタルを始め、一方でキスラーでは元ハドソンのジェイソン・ケスナーを育てて退いていった話、オクシデンタルのこれからの話しなどが書かれています(In Pursuit of Sonoma’s True Identity: Kistler and Occidental - Vinfolio Blog)。もう一つは、元ワイン・アドヴォケイトのリサ・ペロッティ・ブラウンの新サイト「ザ・ワイン・インディペンデント」の記事で、こちらはオクシデンタルに絞った話を書いています。

2つの記事に共通する部分として、オクシデンタルが新しい畑を開発しているという話が出ています。また、ケイト(キュヴェ・キャサリンのキャサリン)が、父親と一緒にワイナリーの仕事をしており、それを徐々に引き継いでいるという話もあります。ちなみにケイトが卒業した大学はハーバード。スティーブのスタンフォードとは異なりますが、米国の東西を代表する大学を親子で卒業しているというのも興味深いところです。オクシデンタルの新しい畑は、ケイトが最初から責任者として開発をしているとのことで、ここからオクシデンタルの第2章が始まることを予感させます。

この2本の記事、偶然同じ時期に出たというよりも、スティーブがケイトへの禅譲を世間に印象付けるために取材させたのではないかという気もしています(スティーブはメディアの取材をあまり受けない人として知られています)

なお、蛇足ですがスティーブ・キスラーがオクシデンタルを始めたときの記事、このブログがたぶん世界で最初に取り上げています(キスラー謎のオーナー変更とスティーブ・キスラーの新ワイナリ)。このときはスティーブ・キスラーがキスラーをやめて完全にオクシデンタルだけになるとは予測できませんでしたが。
Date: 2023/0801 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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オレゴンという地名からマルベックを想像する人も、マルベックという品種からオレゴンを想像する人もほとんどいないと思いますが、オレゴンの南部でマルベックが密かに広がってきています(The New Frontier for American Malbec)。
oregon

オレゴンというと広大なウィラメット・ヴァレーが有名ですが、その南にあるアンプクア・ヴァレー(Umpqua Valley)や、オレゴンの最南部にあたるローグ・ヴァレー(Roque Valley)がその地域。

マルベックが最初に植えられたのは1960年代。単一品種としてワインに使われるようになったのは1990年代終わり頃からです。現在オレゴン全体で300エーカーほどのマルベックがあり、うち170エーカーほどがオレゴン南部にあります。ちなみにカリフォルニアでは3万トン台の収穫がありますから数千エーカーのマルベックの畑があると推測できます。それに比べるとかなり少ないのは事実です。

オレゴンのマルベックはアルゼンチンのものなどと比べるとエレガントな作りになるようです。「ピノ愛好家とカベルネ愛好家の両方にアピールします。オレゴンのマルベックは、メンドーサのマルベックでは味わえない、赤いベリー、ダークベリー、プラム、野生の花、スミレが何層にも重なった複雑な味わいです。そしてその濃い色と口当たりはカベルネに似ています。オレゴン州にとっては自然のブドウなのです」。ヴァルカン・セラーズのオーナーのJPヴァロット氏はこのように語っています。

今後どう成長していくかわかりませんが、興味深い品種です。