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Date: 2021/0430 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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先日の記事の続きです。
アース・デイにサスティナビリティについて考えた

前回はワイナリーにとってのサスティナブルへの取り組みがどういう意味を持つのか考察しましたが、今回はセミナーでのシルバーオーク(Silver Oak)とリッジ(Ridge)のリットン・スプリングス(Lytton Springs)における取り組みの紹介です。

シルバーオークはカリフォルニアの中でもサスティナブルに最も力を入れているワイナリーです。これまでにLEEDプラティナム、カリフォルニア・グリーン・メダルのリーダー・アワード、リビング・ビルディング・チャレンジといった賞を受賞しています。

LEEDプラティナムはナパのオークヴィルのワイナリーが2016年、ソノマのアレキサンダー・ヴァレーのワイナリーが2018年に受賞。オークヴィルはワイナリーとしては初めてのLEEDプラティナムです。リビング・ビルディング・チャレンジは2020年にこれもワイナリーとしては初めての受賞。これまで受賞した最大の製造設備だといいます。リビング・ビルディング・チャレンジは世界で25施設しか受賞していない、非常にレベルの高い賞であり、水やエネルギー、マテリアルなど7つの分野で認められる必要があります。

シルバーオーク

例えば太陽光発電では1MWの発電が可能であり、ワイナリーで使う電力の100%以上を作っています。水利用も大幅に削減しています。ワイン自体には水は入れませんが、ワイン造りでは清浄などに大量の水を使います。以前は1ガロンのワインを作るのに7~8ガロンの水を使っていましたが、使った水の再利用などを徹底的に行い、わずか1ガロンで作れるようになったそうです。

栽培においては、科学の力、具体的には様々な計測を徹底的に行うことで、灌漑や使う薬剤などを最低限に押さえています。

サスティナブルはこういった物質的なことだけでなく、コミュニティなどの項目も含まれていますが、シルバーオークでは従業員の健康面や、若い人にワインの啓蒙を行うといったこともその一環で行っています。

サスティナブルに取り組むことでワインの品質にどういう影響があったかという質問に対しては、水資源の保護や薬剤利用の最適化、灌漑の最適化などで畑に対してプラスになっているとのことでした。

リッジはサンタ・クルーズ・マウンテンズのモンテ・ベッロとソノマのリットン・スプリングスのワイナリーがありますが、今回はソノマのワイナリーを取り上げています。カリフォルニアワイン協会のバイザグラスの今年のテーマがソノマなのでそれに沿っています。
リットン・スプリングス

リットン・スプリングスのワイナリーはもちろんリットン・スプリングスの畑の隣にあります。1900年代に植樹された120年近い樹齢の畑です。見てわかるように屋上にソーラーパネルが敷かれています。確かここがリニューアルされたのは2000年代の前半だったと思います。まだ太陽光発電を導入したというだけでニュースになった時代でした。

このワイナリーの最大の特徴は壁に藁を使っていること。
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風通しがいいので、エアコンが不要になりました。

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外壁には土をまぜて漆喰にしています。

藁や漆喰を使った建物というのは米国ではあまり見かけませんが、実はリッジのモンテ・ベッロの古い19世紀からある建物の床で漆喰が使われていたとのこと。カリフォルニアでは米も作られているので、藁は比較的容易に手に入るようです。

また、リッジでは畑の有機栽培も行っています。まだ100%有機ではありませんが、ほぼそれに近いところまで来ています。リットン・スプリングスに関しては2008年からとかなり早い段階から有機栽培に切り替えています。ソノマとサンタ・クルーズ・マウンテンズでいずれも最大の有機栽培畑を持っているとのこと。

また、サンタ・クルーズ・マウンテンズの畑では「土を耕さない」とのこと。土が流れ出すのを防ぎ、保水を考慮しています。

さて、この日は虎ノ門のホテル「東京エディション虎ノ門」でセミナーを受けており、2つのワイナリーのプレゼンの後はお楽しみのランチです。


シルバーオークとリッジのワインはもちろん、サスティナブルに取り組んでいる他の2つのワイナリー(Jとシャイド・ファミリー)のワインも飲みました。


シャイドのサニー・ウィズ・ア・チャンス・オブ・フラワーズは低アルコールと低カロリーを実現したワイン。ここの畑はすべて有機栽培になっており、ワイナリーではモントレーの強い風を生かした風力発電を行っています。低アルコールのワインというと「おいしくない」というイメージがありますが、それを覆すかのようなしっかりとした味わいには驚いた人が多かったようです。


リッジのリットン・スプリングスに合わせたのは、このホテルのスペシャリテだというウィンナーシュニッツェル。ちょっと酸味の効いたソースがリットンの味わいによく合います。


そして、シルバーオークに合わせたのは、ワイナリーのシェフからのメニューだという「ファロット」。お米(リゾ)から作るのがリゾットで、大麦(ファロ)から作るのがファロットとのこと。カベルネ・ソーヴィニヨンには肉という常識に合わないような料理ですが、シルバーオークのアレキサンダー・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンは、ミディアムプラスくらいのボディで、赤系の果実味が結構しっかりするため、肉肉しい料理にはむしろ合わないのです。大麦とチーズの組み合わせが意外と思うほど、おいしくワインにも合っていました。
Date: 2021/0428 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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一世を風靡したナパ・ハイランズの上位版である「リザーブ」が国内入荷しています。最初の2015年はなんと500本というわずかな生産量。日本の入荷数ではなく生産量です。次の2016年も1000本と極めて少なく国内市場でも瞬殺状態でした。今回は3000本と大分生産量は増えましたが250ケースですから極めて少ないというのは間違いありません。

ナパ・ハイランズはテレビ番組で明石家さんまさんが激賞して市場から一瞬で消えてしまったというワイン。4000円台のナパ・カベルネという新たなジャンルを築いたワインであり、多くのインポーターがその価格帯に秀逸なワインを投入しました。今でもこの価格帯を代表するワインでリファレンスといえると思います。

リザーブ版はオークヴィルの西側斜面という超一等地の畑のブドウから作られています。ドミナスのユリシーズ(Ulyssys)や、ボンドのVicinaにも使われているヴァインヒルランチ(Vine Hill Ranch)などのある辺りの畑です。
Oakville

周りのワインを考えると税別で1万円切るワインはほとんど思いつきません。大体2万~3万円程度はするワインがほとんどです。定価約1万円はもちろん安ワインではありませんが、コスパはすごいです。

高級カベルネの入門編的に飲むのがいいのでは、と思います。

ノムリエ・ザ・ネット


葡萄畑 ココス


ワッシーズ

Date: 2021/0427 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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カリフォルニアワイン・バイザグラスのキャンペーンが5月末まで行われています。昨年は途中で中止となってしまいましたが、今年も再び緊急事態宣言が出る中、続いてはおります。都内のお店は酒類提供ができなくなってしまいましたが、ほかの地域はまだ大丈夫です。
カリフォルニアワイン・バイザグラス・プロモーション2021|カリフォルニアワイン

なかなか外出も難しい昨今ですが、せっかくなので2軒行ってきました。バイザグラスなので一人でも行きやすいのはありがたいことです。

最初は銀座のワインバー「ジム・ルーム」。以前の「エド・パーラー」時代に伺ったことがありましたが、移転後は初めてです。

相変わらず入りにくい店構えですが、入れば笑顔で迎えられます。

まずいただいたのはあまり見かけないアレキサンダー・ヴァレーのカリニャン。

ZO Winesというワイナリーです。アレキサンダー・ヴァレーということでふくよか系かと思ったら意外とスリムな味わいでした。


もう一杯、今度はシャルドネをいただきました。中井ヴィンヤードの「すっぴん」シャルドネ2017です。樽を使っていないすっきり系。

ワインはこちらからサーブされます。

もう1軒伺ったのは(別の日です)、たまプラーザにあるアメリカ料理の店です。

ハンバーガーなどの定番メニューもありますが、Cal-Mexも割と充実しています。ということでケサディーヤからいただきました。サルサが美味しい。


もう一品は、バイザグラス用のスペシャルメニューの一つ「ビーフロール」。ハーブ類のペーストを牛肉で巻いて焼いた料理です。

ワインは689セラーズの「Lucky Draw」カベルネ・ソーヴィニヨン。ハーブのニュアンスがカベルネ・ソーヴィニヨンにとっても合っています。美味しかった。

都内の飲食店は、今の状況本当に大変だと思います。なんとか応援したいですね。
Date: 2021/0426 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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コラヴァンよりも安く、スクリューキャップのワインなどにも利用可能な「Pivot」が国内でも販売になりました。

コルクに細い針で穴を開けてワインを出し、代わりにアルゴンガスを注入するコラヴァンは、保存期間が非常に長い一方、天然コルクを使ったワインでないと利用できません。そこで作られたのがPivotで、ワインを開けた後にストッパーを差し込み、専用の棒(コラヴァンの針よりも太いもの)を使ってワインの抽出とアルゴンガスへの置換を行います。

一回ボトルを完全に開けてしまうため、保存期間は4週間とコラヴァンよりも相当短くなりますが、より簡単にまた多くのワインに利用できるというメリットがあります。なお、ハーフボトルには使用できません。ガスのカプセルはコラヴァンと互換性があります。




Date: 2021/0425 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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この冬の少雨により、カリフォルニア州で旱魃の問題が広がっています。特にソノマとメンドシーノについてはニューサム州知事が4月21日に旱魃の緊急事態宣言を発令しています。

この地域の水の供給はロシアン・リバーへの雨水の供給に依存しており、今のままの状況が続くと10月までにレイク・ソノマとレイク・メンドシーノは2012~2016年の旱魃時以下の水準にまで落ち込むと見られています。

もっと広域での宣言をした方がいいという意見もあったようですが、前回の旱魃前と比べると都会における水の使用量は16%削減されていることなどもあって、一部の地域に留めることにしたとのこと。

また、マリン郡では日中の散水や家庭での洗車などが禁止になっています。

南カリフォルニアでは、地域の水よりもコロラド川などからの上水システムが中心になっており、そちらは当面問題なさそうです。
Date: 2021/0424 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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4月22日はアース・デイでした。日本ではまだまだ知られていない日ですが、米国ではテレビのニュースなどで取り上げるくらいでそこそこ知られている日です。

このアース・デイにカリフォルニアワイン協会がサステナビリティをテーマとしたセミナーを開催し、改めてサステナビリティについて考える機会となりました。

サステナビリティはなかなか難しいテーマです。似たようなものとして、オーガニックやビオディナミ(バイオダイナミクス)、自然派もありますが、これらとサステナビリティはどう違い、どういう意味があるのでしょう。

オーガニックや自然派は消費者に対してかなりのアピール・ポイントとなっています。「自然派ワイン」の店はありますが、サステナビリティのワインの店というのはまずありえないでしょう。マーケティング的な意味ではワイナリーにとってサステナビリティに取り組む意味というのは弱そうな感じもします。

また、オーガニックやビオディナミが、厳格な規定に則ることを必要とするのに対し、サステナビリティの方はちょっと曖昧な感じがあります。何をやっていればサスティナブルといっていいのか、何をやっていなければダメなのか、規定はありますが一言では説明しにくい感じがします。
要件

今回のセミナーでは、マーケティング的にもサスティナブルが浸透しつつあることが分かってきました。
マーケティング
米国のワイン愛飲家の71%がサスティナブルな方法で作られたワインの購入を将来検討すると回答、またミレニアル世代の9割がサスティナブルなワインにもっとお金を払ってもいいと考えているとのことです。前者の方は「将来」ということなので実際に消費者が今後どう動くかはなんともいえないところがありますが、後者からは若い世代にとってサスティナブルという言葉が、かなり重要に捉えられているということが伺えます。

実際、ワイン業界以外の企業にとっても昨今、SDGs(エスディジーズ、Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)は避けては通れないものになりつつあります。SDGsは貧困や飢餓をなくすといったことも含むより広範な取り組みですが、17個の目標のうち
・目標7: エネルギーをみんなに そしてクリーンに
・目標12: つくる責任つかう責任
・目標13: 気候変動に具体的な対策を
・目標15: 陸の豊かさを守ろう
といったものはワイナリーにおけるサスティナブルの取り組みと大きく関連しています。
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ワイン業界の企業にとってもサスティナブルが「頻繁に重要」となっている比率が3年間で10ポイントも上がっています。おそらくこれはSDGsの動きと無縁ではないでしょう。

サスティナブルなワイン造りは、農薬なども最低限の利用は認められている点でオーガニックやビオディナミのような厳格さはありません。だからといってサスティナブルが単なる「緩い」自然派と捉えてしまうのも一面的です。

オーガニックやビオディナミは栽培、あるいは醸造に関わる部分を規定していますが、サスティナブルはより広範な項目を扱っています。
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例えば節水や水質管理といった項目はオーガニックと無関係ではありませんが、特に規定はされていないはずです(誤解していたらすみません)。エネルギーの効率化や人的資源、近隣コミュニティ、空気の質といったこともサスティナブルでは項目に上がっています。つまり、トータルとして「より良い」生産活動を行おうというのがサスティナブルであり、むしろオーガニックやビオディナミと比べても志は高いと言えるのかもしれません。

また、サスティナブルはオーガニックと反するわけでもありません。今回のセミナーでは具体的な取り組みとして、シルバーオークとリッジが紹介されましたが、リッジの畑はほとんどがオーガニックの認証を受けています。

サスティナブルにすることでワインが美味しくなるとは言えませんが、ワインを選ぶときに「より良い活動をしている」ワイナリーを選ぶということには意味があると思います。栽培や醸造の方法論以外にも目を向けて、そう考える人が増えていくと、よりサスティナブルの活動が広がるのではないでしょうか。

私もこれからワイナリーの紹介をするときに、そのワイナリーのサスティナブルへの取り組みについても言及していきたいと思いました。

シルバーオークやリッジの取り組みについては別記事で取り上げます。

ではHappy Earth Day!(もう過ぎたけど)
Date: 2021/0423 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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カルト中のカルトワインとして知られるスクリーミング・イーグルのオーナーが所有する兄弟ワイナリーがサンタ・バーバラに3つあります。ボルドー系の品種やシラーを作る「ホナータ(Jonata)」、シャルドネとピノ・ノワールを作る「ザ・ヒルト(The Hilt)」、この両者のセカンドに相当する「ザ・ペアリング(The Paring)」です。ホナータはサンタ・バーバラのボルドー系としてはトップクラスの高い評価を得ており、価格は1万~2万円台。ザ・ヒルトもピノ・ノワールで最高97点(ヴィナス)と高い評価では5000円強~1万円強、ザ・ペアリングは3000円台となっています。今やサンタ・バーバラを代表するワイナリーとなりつつあると言ってもいいかもしれません。

ザ・ヒルトは3つの畑を持っており、それぞれの単一畑(日本未輸入)のほか、ブレンドものを3種類作っています。「
新樽を多めに使い果実味と骨格が感じられる「ザ・ヴァンガード」、旧樽をメインに使いオールドワールドの繊細さとアロマをフィーチャーした「ジ・オールド・ガード」、そして両極端とも言えるこの 2 つのワインの「ちょうど真ん中」的なニュアンスでブレンドされるエステートワインがメインのラインナップです。
(インポーター資料より)

コスパで非常に優れているのがエステート。3つのワインは優劣というよりもスタイルの違いですが、エステートは特に格安になっており、ワイナリー価格48ドル(税抜き)が日本で税込み5000円台と、国内価格の方が安いくらいの設定になっています。しかも2017年のエステート・ピノ・ノワールはヴィナスのアントニオ・ガッローニが95点という高評価を付けています。価格からみて「ありえないほどの品質」であり「Don't miss it!」とまで書いています。

トスカニー


はせがわ酒店


ウメムラ


柳屋

Date: 2021/0422 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのシュレーダー(Schrader)やマイバッハ(Mybach)などのワインメーカーで、ソノマのリヴァース・マリーのオーナーであるトーマス・リヴァース・ブラウンが、ソノマ沿岸の最北端にあるワイナリー「Aston Estate」の全権利を買い取ったことを明らかにしました。

アストンは2001年にシュレーダーのオーナーだったフレッド・シュナイダーとトーマス・リヴァース・ブラウンで始めたワイナリー。その後、ヴァイン・クリフの創設者であるチャック・スウィーニーも経営に参加しました。ソノマ・コーストの最北部「アナポリス」の近くにあります。ピノ・ノワールだけを作っています。
トーマス・リヴァース・ブラウン
アストンは主にメーリング・リストで販売されており、3000人の登録者がいますが。トーマス・リヴァース・ブラウンという大物がやっている割には、ややマイナーです。過去に何回かテコ入れを図りましたが、あまり状況は変わりませんでした。シュレーダーが売却の意向を示し、トーマス・リヴァース・ブラウンが購入することになりました。

リヴァース・マリーのピノ・ノワールとはエレガントなスタイルですが、アストンは冷涼感がありながら非常にパワフルな作り。それは今後も買えないとのこと。

アストン、非常においしいですが確かにマイナー。ソノマ・コーストのピノ・ノワールのワイナリーが次々に有名になっていくなかで取り残された感じはあります。個人的にはラベルをもっとキャッチーにした方がいいのではと思います。


Date: 2021/0421 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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米国時間の4月25日に開催されるア●デ●ー賞の授賞式で使われるはずだったワインが日本市場にごくわずか入っています(賞の名前は出してはいけないらしいです)。今年は93回目なので「93Awards」と入っています。普通はそこ以外に出ることはないワイン。コロナの影響で参加人数が減ったために余ったもののようです。中身は見えない黄金色のボトルですが、白はロシアン・リバー・ヴァレーのシャルドネ、赤はアレキサンダー・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニョンです。



Date: 2021/0421 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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一昨日公開した「オレゴン・ワシントンの試飲会で美味しかったワイン オレゴン編(2021年春)」は写真の貼り込みがおかしく、ラベルが見えていませんでした。修正しましたのでまた見ていただけると幸いです。また、この記事は昨日公開したはずだったのですが、記事がタイムアウトで消えてしまっていました。悲しい… オレワシに祟られているのでしょうか。

気を取り直してワシントン編です。ピノ・ノワール中心のオレゴンと異なり、内陸の産地が中心となるワシントン州は温暖でカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーなどで秀逸なワインがあります。ただ、温暖といっても朝晩と日中の温度差が大きかったり、9月になると急激に気温が下がったり、日照時間もどんどん短くなるなど、カリフォルニアのように太陽をさんさんと浴びたというよりも、抑制されたスタイルになることが多いように感じます。


オレゴン・ワシントンのインポーターといえばオルカ・インターナショナル。そのオルカが輸入する「ビューティ・イン・カオス」というワインです。2300円。カベルネ・ソーヴィニヨンとシラーがありますが、個人的にはシラー推し。コスパ高く、名前もインパクトがあります。


カベルネ・ソーヴィニヨンならやはりこのワインははずせません。「ワインズ・オブ・サブスタンス」のレギュラーのカベルネ・ソーヴィニヨン2018(2800円)。この価格帯ではカリフォルニア含めても最強の一つでしょう。非常に完成度の高いワインです。


Kヴィントナーズのシラー「ミルブラント2017」(5900円)。ワインズ・オブ・サブスタンスと同じくワシントンのスター・ワインメーカー、チャールズ・スミスが作るワインです。カリフォルニアのシラーがどちらかというとオーストラリア寄りだとすると、北ローヌ寄りのシラーのイメージです。


Kヴィントナーズのフラッグシップ「ロイヤルシティ2014」も試飲しました。これは言うことないです。濃厚だけど重くない。素晴らしいシラー。


Pepper Bridgeというワイナリーは初めて聞きましたが、実はレコール41などにブドウを提供している栽培家でもあります。カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローがありますが、特に秀逸なのはメルロー(9000円)。引き締まった味わいで非常に美味しいです。


グラマシー・セラーズのヴィオニエ(4000円)は、個人的に大好きなワインの一つです。米国のヴィオニエの中ではベストの一つでしょう。酸がきれいでバランスがいいヴィオニエです。





Date: 2021/0419 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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オレゴンとワシントンの試飲会に参加してきました。カリフォルニアとつながった西海岸の2州ですが、緯度が違うためカリフォルニアとは大分生育環境が異なっており、またオレゴンの産地とワシントンの産地も大きく異なっています。

オレゴンの主要産地はウィラメット・ヴァレー。オレゴンのワイン産地の7割を占めています。赤ではピノ・ノワールが圧倒的に多く、白ではピノ・グリが主流ですが、日本に入ってきているものではシャルドネもかなりあります。緯度が高いため夏は日照時間が長く、気温もカリフォルニアの冷涼産地より高くなりますが、9月以降は一気に涼しくなります。気候的にはブルゴーニュにかなり似ています。

ワシントンの主要産地はコロンビア・ヴァレー。南端はオレゴンにも入っていますが大部分はワシントンです。緯度はさらに高くなりますが内陸なので日中の気温は高くなりますが、夜間は涼しくなります。カベルネ・ソーヴィニヨンやシラーなどが作られています。カリフォルニアのようなパワフルさではなく、エレガントできれいな印象を受けるワインが多いです。

では、ワインを紹介していきましょう。今回はオレゴンのワインを見ていきます。

アーガイル(Argyle)のピノ・ノワールとシャルドネ。オレゴンらしいきれいな味わい。ピノ・ノワール4300円、シャルドネ3600円は安いです。どちらも5000円台と言われても納得するレベル。


イヴニングランド(Evening Land)のピノ・ノワールとシャルドネ。どちらも4400円。オレゴンでもトップクラスの評価されているこのワインが5000円を切る価格に値下げされたときは驚きました。上位キュヴェの「ラ・スルス」はワイン・スペクテーターで98点を取って年間3位にランクされたこともある素晴らしいワイン。このレギュラーラインも非常にレベル高いです。サンタ・バーバラでドメーヌ・ド・ラ・コートやサンディのワイナリーを持つラジャ・パーとサシ・ムーアマンが現在のオーナーです。オレゴンで何を飲んだらいいか分からなかったらまず、ここから試すことをおすすめします。


イヴニングランドのあるエオラ・アミティ・ヒルズ(Eola Amity Hills)はオレゴンのウィラメット・ヴァレーのサブAVAで、非常に注目されている地域。クリストム(Cristom)のシャルドネも非常にレベル高いです。


ケリー・フォックスというビオディナミでブドウを作るワイナリーのピノ・ノワール「ミラバイ」。とてもチャーミングで上品なワイン。




Date: 2021/0417 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ソノマ北部のウィンザー(Windsor)の市長ドミニク・フォッポーリに性的暴行疑惑が巻き起こっています(Calls for Resignation over Sonoma Sex Claims | Wine-Searcher News & Features)。フォッポーリ家はクリストファー・クリークというワイナリーを所有しています。

先週、SFクロニクルに4人の女性がドミニク・フォッポーリによる性的暴行を告発した記事が掲載されました。さらに、かつてのガールフレンドも2日後に同様の告白を公表しました。フォッポーリ側は逆にウィンザーの女性議員を性的暴行で避難する文書を公表しましたが、女性議員側は事実はその逆でフォッポーリが彼女に暴行したのだとプレス・デモクラット紙にか合っています。

ただ、最後の議員の告発以外は古いものであり、時効を過ぎています。今後、警察がどう動くのかも注目されています。

また、プレス・デモクラット紙は、この問題をしばらく前から知っておきながら、アクションを起こさなかったとして避難を受け、謝罪しています。今回クロニクルの記事のレポーターの一人は以前プレス・デモクラットに勤めており、情報を握っていましたが、編集者が証拠が不十分だとしてボツにしていたのでした。

クリストファー・クリーク・ワイナリーは、フォッポーリとの縁を切ると表明しています。

ちょっと泥仕合になりかけていますが、どうなることでしょうか。
Date: 2021/0416 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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アカデミー・デュ・ヴァンの「対決・カリフォルニアの名門ワイナリー」最終回はターリー対ベッドロック。これまで2年半セミナーやってきていますが、ジンファンデルメインで話すのは実はこれが初めてでした。

かなり気合を入れて資料作ったら、話が長くなりすぎて、途中端折ったにも関わらず、試飲になかなか入れませんでした。ちょっと入れ込み過ぎで反省。ワインの選択も反省の余地が多かったです。
ワイン

試飲したワインの中ではターリーのエステート・ジンファンデルとベッドロックのベッドロック・ヘリテージが人気。あと濃〜いワンス・アンド・フューチャー(ジョエル・ピーターソンのワイナリーです)はさすがにほとんどの人が正解でした。

残念ながら来期は不成立。なかなか同じ講座が続かないのが悩みです。
Date: 2021/0415 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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桃井隆宏さんがサンフランシスコで作るピノ・ノワールとシャルドネのワイナリー「アーサー・セラーズ」のワインがワインショップでも購入できるようになりました。これまでは専用のオンラインショップだけでの販売でしたが、楽天などでの販売も始まっています。

しあわせワイン倶楽部では2019ヴィンテージの「グロリア」と「ケイアールランチ」のピノ・ノワールのほか、アーサーのオンラインショップでももう買えない2018年の「スプリングヒル」のピノ・ノワールも販売中です。

グロリアはフリーマンの自社畑。実は桃井さんはフリーマンのワインメーカーであるアキコさんとは兄弟弟子の関係です。二人共「オーガスト・ウエスト(August West)」や「サンドラー(Sandler)」で知られ、かつては「ロアー(Roar)」のワインメーカーでもあったエド・カーツマン(Ed Kurtzman)にワイン造りを教わっています。

エド・カーツマンのワインとアーサーに共通するのは、果実味豊かでバランス良く、リリース直後からとても美味しく飲めること。そしてちゃんと熟成もきれいにしていくこと。ただ、桃井さんのワインはついつい開けてしまってなかなか熟成用に置いておけないのですが。

その特徴のためかアーサー・セラーズのワインは「日本で飲もう最高のワイン」の品評会で4年連続プラチナを受賞、最高評価のベストワインも取るという評価を得ています。

ケイアールランチは以前はキーファーランチ(Keefer Ranch)と言っていた畑。コスタ・ブラウンに畑の一部を売ったことなどにより、キーファーランチという名称は使えなくなったとか。

5000円を超えるワインではありますが、コスパとして考えたら非常にいいと思います。実際私も毎年購入しているワインです。




Date: 2021/0413 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ハーラン・エステートの創設者であるビル・ハーランがワイナリーを息子のウィルに譲ると発表しました(Bill Harlan Appoints His Son, Will, as Managing Director of Harlan Estate | Wine Spectator)。

かねてから80歳になったら引退すると表明しており、次世代に譲ることにしたとビル・ハーランは伝えています。
ハーランチーム
(写真右端がウィル・ハーラン)

ウィルはこれまでプロモントリーの責任者を努めており、また自身が立ち上げたブランド「Mascot」の責任者も兼ねています。今後もそれは続けた上でハーランとボンドも見ていくことになります。

ビル・ハーランは「創設者兼会長」として職にとどまる意向。ハーランとボンドのワインメーカーだったコーリー・エンプティングは「ワイングローイング担当マネージング・ディレクター」へと昇格します。この役職は前のワインメーカーだったボブ・リーヴィが努めていたので、彼は引退ということでしょうか。

ビル・ハーランは「200年計画」として長く続くワイナリーを志向しており、今回の禅譲もその計画を進めていく一端なのでしょう。
Date: 2021/0412 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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娘の誕生祝い(本当は2月ですが、息子の受験などでのびのびになっていました)で恵比寿ガーデンプレイスのロウリーズ・プライムリブに行ってきました。恵比寿の店での食事は2回めですが、前回は一人だったので家族で来るのは初めてです。米国駐在中にもシカゴとラスベガスで行ったことのある思い出のあるレストランです。シカゴ店が今回のコロナの影響で閉店してしまったと聞いて残念でした。

恵比寿の料理長の高知尾さんとは以前ナパのツアーでご一緒したことがあり、今回も大変よくしていただきました。感謝感激です。


まずは肉の写真を載せちゃいましょう。300gのロウリーズ・カットですが、骨付きのところなので骨を入れたら500gくらいありそうな大きなカットです。骨のところは最後、手で持ってむしゃぶりついてしまいました。


グラスのシャンパーニュはローラン・ペリエです。グラス自体もおしゃれですね。


前菜のスモークサーモンが、普通の切り身かと思うほど分厚くむちゃくちゃ美味しい。子どもたちは実は生牡蠣デビューでした。


サラダも懐かしい味。ブラックペッパーベースの専用調味料をふりかけるとさらに美味しいです。


クラムチャウダーもしっかりハマグリの出汁が効いています。息子の食べたロブスタービスクも濃厚でおいしかったですが、年寄はこっちのほうがいいです(笑)。


ワインはViaderの1997年。ワインスペクテーターで年間2位になったワインそのものです。カベルネ・ソーヴィニヨン62%にカベルネ・フラン38%。プライムリブはステーキほど味が濃くないので、意外とワインとのマッチングは苦労すると料理長もおっしゃっていましたが、僕もそう考えてカベルネ・フランが多めのワインにしてみました。

果実味はだいぶおちていましたが、それでもまだ少し残っています。酸はやや多め。マッシュルームや腐葉土のような熟成系の香りが強くします。きれいに熟成しています。ピークはちょっと越えているかもしれませんが、まだ5年くらいは美味しく飲めそうな気がします(同じワインがまだ2本くらいあります)。

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最後はデザートプレートです。

ロウリーズ、変わらない味で美味しかったです。妻の職場や娘の家から近くなので、またこういう機会を作りたいと思いました。
Date: 2021/0410 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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スタッグリン・ファミリーがワイナリーのビジター数の上限で近隣住民と衝突しています。
スタッグリン
スタッグリンの現在の上限は1日10人。これを1日44人に増やしたい、また年間31回のイベントを開きたいとナパのプランニング・コミッションに申し入れています。コミッションはOKを出したのですが、地元住民による「ラザフォード・ベンチ・アライアンス」が反対して提訴。ナパのスーパーバイザー委員会がこの夏調停をすることになりそうです。

ワイナリーにとって顧客との関係を築くことは非常に重要です。特にスタッグリンのような最高385ドルもするワインを販売しているワイナリーにとって、以前は評論家の高い評価だけで売れたものが、現在は顧客がそのワイナリーと密接な関係を築くことで初めて売れるようになってきています。

一方、住民からのビジター数を増やすことへの抵抗も年々強くなっています。慢性的な渋滞に悩まされているということも大きく影響しているのだろうと思います。ただ、ワイン産業はナパの地域にとっても最も大きな産業であり、雇用を生んでいるわけですから、持ちつ持たれつのところはあって然るべきかと思います。

個人的には1日44人ならせいぜい車が20台来るか来ないかでしょうから、大した影響はないようにも思うのですが。
Date: 2021/0409 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパ、ソノマ、コントラコスタの各郡は、2021年4月7日に「オレンジ層」に移行したことを確認しました。

オレンジ層とは、カリフォルニアが独自に定めた感染警戒のレベルで、人口10万人あたりの1日の新規感染者が2~5.9人、PCR検査の陽性率が2~4.9%というのがオレンジ層にあたります。
Tier System
日本だと人口10万人あたりの1週間の新規感染者が15人以上がステージ3なので、そことほぼ同じということになります。

オレンジ層になるとレストランの室内での食事が50%まで認められます、またワイナリーのテイスティングルームなども25%あるいは最大100人まで入れられるようになります。

また、現在の改善状況が続けば6月15日には完全に再オープンにこぎつけるという見通しも出ています。

ワクチン接種も順調に進んでいるようであり、日本よりも完全再開は早くなりそうな感じです。
Date: 2021/0408 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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シャンパーニュのボランジェ(Bollinger)のオーナーであるボランジェ・ファミリーがオレゴンのポンジー(Pinzi)を買収したと発表しました(Bollinger Champagne Owners Buy Oregon's Ponzi Vineyards)。
ポンジー
買収金額は公表されていませんが、ウィラメット・ヴァレーにあるワイナリーとテイスティングルームなどのホスピタリティ施設、35エーカーの畑が含まれています。ポンジー家は100エーカーのブドウ畑を今後も所有し、長期契約に基づいてボランジェにブドウを売り続けます。

ポンジーは1970年に設立されたオレゴンのパイオニア。当時はまだこの地でピノ・ノワールができるとは思われていませんでした。創業者は1990年代に引退し、現在は娘2人が経営しています。CEOのアンナマリアは次のCEOが決まるまではセールスとマーケティングを引き続き担当し、栽培と醸造を担当するルイーザは今後も職を続ける見込みです。

ボランジェにとってはフランス国外における初のワイナリーとなります。緯度や気候が似ていることからオレゴンを選んだとしています。フランス以外にどこかに投資するとしたら米国だろうとずっと考えていたとのこと。

ポンジーはこれまで売却は考えていなかったが、ボランジェから提案を受けて光栄なことだと考えたとのこと。創業者である両親にも相談して決めたそうです。
Date: 2021/0407 Category: 業界ニュース
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ラクレマ
ジャクソン・ファミリーとガロの間で繰り広げられている訴訟が第2幕に移りました。

最初の訴訟はガロの「ターニング・リーフ」のラベルデザインがケンダル・ジャクソンのヴィントナーズ・リザーブ・シャルドネに似ているとして90年代に訴えていたもの。1997年に判決が出て、侵害はなかったという結論にいたりました。ケンダル・ジャクソンのジェス・ジャクソン社長によると、この件で1900万ドルの費用がかかっているとのこと。

それに加えて先ごろ始まったのが、ガロが投入しようとしている「Cask & Cream」というブランド名が、ジャクソン・ファミリー傘下のラ・クレマ(La Crema)と似ているとして訴えていること。
カスク

実はこの件も発端は1990年代。1996年にブランデーに「Cask & Cream」の名をつけ、2004年に米国の商標を取っています。2013年にそれをアルコール飲料全般に広げようとしたときに、ジャクソン・ファミリーが反対し、ガロは蒸留酒に限るとしたことがありました。ところが2019年にガロがワインにこれをひろげようとし、既にラベルの認可を得てしまっており今回の訴訟につながりました。

La CremaのCremaはCreamのことなので、共通点はありますが、ラベルデザインを見る限り、似ているとみなされる可能性は低そうな気がします。
Date: 2021/0406 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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「Cabernet Pfeffer」という品種をご存知でしょうか。そもそもどう発音するのかもわからないという人がほとんどだと思います。マスター・オブ・ワインでもあるモーガン・トウェイン・ピーターソンによると「ファイファー」に近い発音だそうです。ただ、調べてみるとPfefferというのはドイツ語のピーマン(英語だとPepper=ペッパー)のこと。この発音は「フェッファー」に近いようです(How To Pronounce Pfeffer)。

この品種、Pfeffer博士なる人がカベルネ・ソーヴィニヨンとトゥルソーをかけ合わせて作ったという説があったそうですが、現在はDNA鑑定によりそれは否定されており、フランス・ボルドー原産のMourtaou(ムルタウ)という品種と同じだということが分かっています(Pfefferの名前はペッパーのようなスパイスの風味があることから来ているようです)。といったもムルタウも極めて無名な品種であり、それを聞いても分かった感じはあまりしませんね。

Cabernet Pfefferはカリフォルニアで約12エーカー栽培されています。そのほとんどがCienega Valley(シエネガ・ヴァレー)にあります。カレラ(Calera)の少し南側にあるAVAです。仮に1エーカーあたり4トンの収穫があったとして年間400ケースほどにしかなりません。

こんなレアな品種のワインを2種類飲み比べるというので参加してきました。


左はブロック・セラーズ(Broc Cellars)のSOGIというワイン。名称は「South of Gilman」の略で、ワイナリーがあるバークレーのGilman地区と、今回のブドウ畑がニンニクで有名なギルロイのGilmanという道から南方向にあることに掛けているとか。また、ラベルに描かれているのは日本の酒蔵によくある「杉玉」です。畑はEnzという名前で1920年代に植樹されています。

ブロック・セラーズは「ニュー・カリフォルニア系」のワイナリーです。以前「「ニューカリフォルニア」の注目株、ブロック・セラーズの魅力」という記事で少し詳しく取り上げていますが、非常に急勾配だったり高樹齢だったりするところで、有機栽培やビオディナミなどで育てられている無名な畑のブドウを使い、天然酵母とニュートラルな樽で発酵・熟成させています。上記のようにサンフランシスコ対岸のバークレーにある都市型のワイナリーです。

Cabernet Pfefferは、カベルネと名前が付いたようにカベルネ・ソーヴィニヨンと似ていると思われていて、かなりタンニンが強くなりがちなブドウだそうです。そこでBroc Cellarsではボージョレ・ヌーボーで使われているカルボニック・マセレーション(炭酸ガス浸漬法)を使って柔らかな味わいにしています。実際に飲んでみるとレッド・チェリーやストロベリーなど赤系のチャーミングな果実味があり、タンニンはやや控えめ。それでもボディは意外としっかりしており、スパイス感もあります。個人的には赤系果実味とボディの雰囲気が「バローロ」に似ている感じがしました。

もうひとつのSer Wineryはニコル・ウォルシュという女性がオーナー・ワインメーカーをしています。彼女はサーファーで、サーフィンで人気のサンタ・クルーズに住んでおり、ワイナリーもそこにあります。ミシガン州の出身で、サンタ・クルーズ近くのボニー・ドゥーンで働きながら自分のワイナリーを立ち上げました。Serというのはスペイン語で「起源を表現すること」だそうで、いわゆるテロワールの表現に力を入れています。ラベルには波が描かれており、海の影響を受ける畑のブドウを中心にナチュラルなワイン造りをしています。

Cabernet PfefferはSer Wineryを代表するワインで、シエネガのWirzという畑のブドウを使っています。冒頭に挙げたモーガン・ピーターソンは同じ畑のリースリングを作っていて、それでCabernet Pfefferのことも知っているそうです。Histric Vineyard Society(Wirz Vineyard | Historic Vineyard Society)によると1960年代に植えられた畑となっていますが、このCabernet Pfefferは1920年代に植えられたようです。

このワインは5日間低温浸漬した後、天然酵母で10日間発酵。さらに10日間浸漬してプレス。最初の3カ月は新樽50%、中古の樽50%で熟成し、その後13カ月は中古の樽だけで熟成しています。

Broc CellarsのCabernet Pfefferと比べると、ボディもタンニンもかなりしっかりしています。赤系果実でもザクロのようにやや濃い目の味わいです。ホワイト・ペッパーなどのスパイス感も強くあります。Brocとはだいぶ違う味わいですが、こちらの方がCabernet Pfefferらしいのかもしれません。好みで言うとBrocかなあというところではあるのですが、こちらもよく出来ているワインです。



Date: 2021/0403 Category: 業界ニュース
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ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズが主催する年2回のオークションのうち、一般向けのオークション・ナパ・ヴァレーは中止かつ発展的解消が発表されていますが、業界向けのオークションで例年2月に開催されていたプルミエ・ナパ・ヴァレー・オークションについては6月第一週に開催すると公表されました。

昨年の写真
写真は昨年のもの

6月5日にメインイベントのオークションが行われますが、それ以外にセミナーやオークションワインの試飲会などが開催されます。これらについてもオンラインでも参加できるようにするとのことです。ナパヴァレー・ヴィントナーズ プレジデント兼CEOのリンダ・リーフは「苦難に満ちた2020年を終え、ワイン業界の友人やビジネス・パートナーとつながりを持つことは特に意味のあることだと考えます。ここナパ・ヴァレーで、あるいはオンラインで、皆様と素晴らしいひと時を共有できることをとても楽しみにしています」と語っています。

オークションについてはザッキーズのシステムを使うとのこと。入札はオンラインおよび、安全に十分配慮した少人数のグループに分けられた対面式の両方で行われます。

プルミエ・ナパ・ヴァレーは今年で25回めの開催。収益はナパ・ヴァレーのプロモーションなどに使われます。
Date: 2021/0402 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ソノマのワイナリー「マーフィ・グッド(Murphy-Goode)」が理想の仕事(A Really Goode Job、Goodeはワイナリー名にかけています)の候補者選びを始めています(Murphy-Goode Announces A Really Goode Job Call for Entries for a ...)。
Murphy-Goode

この仕事に選ばれると2021年8月から1年間、月に1万ドルの給料をもらってヒールズバーグに家をあてがわれ、1年間マーフィ・グッドのワインが飲み放題になります。

実はこのキャンペーン、以前2009年にも行ったことがありました(マーフィ・グッドの「理想の仕事」がついに決定)。2009年と言えば、リーマン・ショックの翌年で景気が低迷していたとき。今回はコロナ禍で多くの人が職を失っているとき。人々が苦しいときに夢を与えるキャンペーンとして投入しているようです。

ただ、前回はSNSを通じてマーフィ・グッドの宣伝をするという目的もあり、それが候補者選びにも影響していましたが、今回はそういった仕事上の規定はあまりなく、ワインメーカーの手伝いをするなどになるようです。これによってワイン業界でのさらなる就職につなげたい人を選ぶことになりそうです。

応募期間は6月30日までで、ワイナリーのサイトに自己PRの動画を投稿します。日本からも応募は可能ですが、米国の就労ビザを持っていることが条件となります。



応募方法は