Wine Advocate誌の224号が発表されました。メインはボルドーの2015年で、今年はついにパーカーがフューチャーの担当から外れるという記念の年になっています。
代わるレビュアーはニール・マーティン。2015年のボルドーは非常に評判がいいだけに、どういうレイティングが付くか興味深いところでした。
現時点の最高である(98-100)というスコアが付いたのは、シャトー・マルゴー、オー・ブリオン、ペトリュス、ヴュー・シャトー・セルタン、カノン、イケムの計6本。業界の期待からはちょっと低いのではないかな、という気がしました。これからニール・マーティンのレビューにどういう評価が出てくるのか気になります。
というのは、ここでは置いておいて、同じ号ではカリフォルニア(こちらはパーカーがレビュー)でターリーとパッツ&ホールの特集が出ています。
ターリーは2014年のレビュー、といってもそれだけで34本もあるので大変です。
最近のターリーは飲んでいないのですが、昔の濃い濃い作りからは変わってきていて、エレガントさも出てきていると言われています。一時はちょっと低迷気味だった評価もここ数年はまた急上昇しており、今回も95点以上が13本という高得点でした。ジンファンデルだけでも9本が95点以上。
実はWine Advocate誌で、これまで95点以上ついたジンファンデルは109本。その1割近くが今回のターリー2014なわけです。
一番高得点は97点のハイン(Hayne)。ここは昔からターリーのトップとなっています。96点はエステートとペセンティ、そしてベッドロック(!)のジンファンデル。ラトルスネイク・リッジのプチ・シラー。ベッドロックは本家のものよりも高い評価となってしまいました。
ターリー、また機会があれば飲んでみたいです。
もう1つのパッツ&ホールは2014年のものと、ダットン・ランチのシャルドネの垂直、ハイドのピノ・ノワールの垂直でした。特にハイドのピノ・ノワールは評価が高いものが多く、2009年と2012年は95点。最新の2014年も94点でした。
このほか、初の自社畑となるMoses-Hall Vineyardの2014ピノ・ノワールも94点。
一方、ダットンランチは概ね新しいヴィンテージはよく、古いのはあまり評価が高くないという結果。ダットン・ランチのシャルドネは若いうちに楽しむのがいいと思っているので、この評価はわかるような気がします(なぜ垂直の対象をダットン・ランチにしたのかはちょっと不思議ですが)。
観光客は本当に地域の経済を発展させるのか、そういったテーマのシンポジウムがナパで開かれ、さまざまな数値から検証されました(Close to Home: Growing pains in a tourism economy | The Press Democrat)。
確かに、観光客は地域にお金を落としていきます。しかし、それが地域に役立っているかどうかという面で見ると、そうでない部分も見えてきます。
神話その1:観光は収入と地域における仕事を増やす
確かに、一部は当たっています。しかし、給料の安い仕事ばかりがたくさん増え、さらに季節要因も大きくなります。結局生活のためには複数の仕事をしなければいけないかもしれません。
神話その2:ツーリズムは皆の利益になる
不動産やデベロッパー、金融など一部の業種にとってはメリットとなります。しかし、それ以外の人にとっては、家賃が上がったり、レストランが高くなったり、渋滞が激しくなったり、環境が悪くなるなどのデメリットがあります。観光への投資は大きな学になりますから、その分地域向けのサービスが減るかもしれません。
神話その3:成長が速いほど地域経済への貢献が大きい
Fodorが米国の100の大都市圏を調べたところ、成長率が高くなるほど世帯あたりの収入が急激に落ち込み、さらに失業率や貧困率も高くなることがわかりました。
このように、データを詳しく見ていくと、観光客が増えても、簡単に地域の発展につながるとは言えないことがわかります。とはいっても地域の収入は増えるわけですから、それをどう分配するかなど、行政側の差配が重要になるわけです。そういった緻密な計画を行ったところだけが長期的に観光で伸びていくとしています。
果たして日本の行政はそれをちゃんと考えているのだろうかと思わせた記事でした。
確かに、観光客は地域にお金を落としていきます。しかし、それが地域に役立っているかどうかという面で見ると、そうでない部分も見えてきます。
神話その1:観光は収入と地域における仕事を増やす
確かに、一部は当たっています。しかし、給料の安い仕事ばかりがたくさん増え、さらに季節要因も大きくなります。結局生活のためには複数の仕事をしなければいけないかもしれません。
神話その2:ツーリズムは皆の利益になる
不動産やデベロッパー、金融など一部の業種にとってはメリットとなります。しかし、それ以外の人にとっては、家賃が上がったり、レストランが高くなったり、渋滞が激しくなったり、環境が悪くなるなどのデメリットがあります。観光への投資は大きな学になりますから、その分地域向けのサービスが減るかもしれません。
神話その3:成長が速いほど地域経済への貢献が大きい
Fodorが米国の100の大都市圏を調べたところ、成長率が高くなるほど世帯あたりの収入が急激に落ち込み、さらに失業率や貧困率も高くなることがわかりました。
このように、データを詳しく見ていくと、観光客が増えても、簡単に地域の発展につながるとは言えないことがわかります。とはいっても地域の収入は増えるわけですから、それをどう分配するかなど、行政側の差配が重要になるわけです。そういった緻密な計画を行ったところだけが長期的に観光で伸びていくとしています。
果たして日本の行政はそれをちゃんと考えているのだろうかと思わせた記事でした。
昨年8月に起きたナパのワイントレインにおける訴訟問題は和解によって解決しました(#LaughingWhileBlack Wine Train Lawsuit Is Settled - NYTimes.com)。
この“事件”は、ワイントレインに乗っていた黒人女性を中心にしたグループがスタッフにより途中下車させられたというもの。ワイントレイン側は騒がしくて周囲の客から文句が出たことを理由としましたが、女性側は人種差別によるのとして訴訟に踏み切りました。求めた賠償額は1100万ドル。
このことはソーシャルメディアを巻き込んで大きな話題となり、その中でワイントレイン関係者による“暴言”もあったことからさらに紛糾しました(暴言についてはワイントレイン側が謝罪)。
今回の和解の条件などは明らかになっていません。
この“事件”は、ワイントレインに乗っていた黒人女性を中心にしたグループがスタッフにより途中下車させられたというもの。ワイントレイン側は騒がしくて周囲の客から文句が出たことを理由としましたが、女性側は人種差別によるのとして訴訟に踏み切りました。求めた賠償額は1100万ドル。
このことはソーシャルメディアを巻き込んで大きな話題となり、その中でワイントレイン関係者による“暴言”もあったことからさらに紛糾しました(暴言についてはワイントレイン側が謝罪)。
今回の和解の条件などは明らかになっていません。
ナパの人気ワイナリー、フロッグス・リープが、ジャムやバターの製造設備をナパ郡に申請しているのですが、それがなかなか難航しています(Frog's Leap seeking unusual winery approval)。
問題になっているのはビジターの数。現状、フロッグス・リープは週に350人のビジターを受け入れられることになっています。それが、今回は1100人にまで増やす申請になっているのです。
実は既にフロッグス・リープのビジターは週に800人くらいにまで増えており、今回の申請は実態への対応といった面もありました。
しかし、ナパ郡としては観光客が増えることは交通や水道などインフラへの負荷が高まることなので、おいそれと承認できないのです。さらにはそういった環境負荷へのアセスメントの書類提出が遅れたことも、神経を逆撫でているようです。
門外漢からすると、これくらい認めていいんじゃないの? と思いますが、そう単純な話ではなさそうです。
問題になっているのはビジターの数。現状、フロッグス・リープは週に350人のビジターを受け入れられることになっています。それが、今回は1100人にまで増やす申請になっているのです。
実は既にフロッグス・リープのビジターは週に800人くらいにまで増えており、今回の申請は実態への対応といった面もありました。
しかし、ナパ郡としては観光客が増えることは交通や水道などインフラへの負荷が高まることなので、おいそれと承認できないのです。さらにはそういった環境負荷へのアセスメントの書類提出が遅れたことも、神経を逆撫でているようです。
門外漢からすると、これくらい認めていいんじゃないの? と思いますが、そう単純な話ではなさそうです。
先日モントレーのシャローン(Chalone)を買収したフォーリー・ファミリー・ワインズ(Foley Family Wines)が、ソノマのガイザーヴィルにあるストライカー(Stryker)を買収しました(Vintner Bill Foley buys Stryker Sonoma Winery in Geyserville | The Press Democrat)。
これまでフォーリーは、比較的有名なワイナリーを買収することが多かったのですが、今回のストライカーは生産量5000ケースという小さなワイナリー。フォーリーは、オーナーであるビル・フォーリーの娘コートニー・フォーリー(Courtney Foley)をワインメーカーに据え、フォーリー・ソノマ(Foley Sonoma)と改名する予定です。生産量は2万ケースに引き上げます。
ストライカーはアレキサンダー・ヴァレーに畑を持っており、そこからカベルネ・ソーヴィニヨンを作っています。フォーリーも、「ビッグでまろやかでソフト」なカベルネ・ソーヴィニヨンをそこから作る計画です。
フォーリーは米国で18番目に大きなワイン会社。年産110万ケースで約40のブランドを持っています。
これまでフォーリーは、比較的有名なワイナリーを買収することが多かったのですが、今回のストライカーは生産量5000ケースという小さなワイナリー。フォーリーは、オーナーであるビル・フォーリーの娘コートニー・フォーリー(Courtney Foley)をワインメーカーに据え、フォーリー・ソノマ(Foley Sonoma)と改名する予定です。生産量は2万ケースに引き上げます。
ストライカーはアレキサンダー・ヴァレーに畑を持っており、そこからカベルネ・ソーヴィニヨンを作っています。フォーリーも、「ビッグでまろやかでソフト」なカベルネ・ソーヴィニヨンをそこから作る計画です。
フォーリーは米国で18番目に大きなワイン会社。年産110万ケースで約40のブランドを持っています。
シャトー・モンテレーナが、電気自動車の充電用コンセントを備え付けると発表しました(It's Electric)。
ナパでは初となるテスラ用の277Vのもののほか、一般用のものを20個備え付けるそうです。
きっかけはサンフランシスコ・ジャイアンツのゲーム。そこで、ワイナリーのクラブメンバー向けにワインを提供したときに、「最近ワイナリーに来ているか」どうか尋ねたところ、電気自動車の充電が必要だからいけない、と複数の顧客から聞いたのでした。
モンテレーナが特別なわけではありません。ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズのサイトではワイナリー検索のオプションに「電気自動車の充電ステーション」という項目があり、現状29のワイナリーがヒットします。
カリフォルニアのシリコンバレーは高額所得者が多く、新しい技術への関心も高いので、テスラなど、電気自動車の大きな市場になっています。また、彼らが、ナパの高額なワインを支えてもいるわけで、客層の重なりはかなりありそうです。
ワイナリーにとってもクリーンなイメージは歓迎するでしょうから、この動きは急速に広がるのではないかと思います。
ナパでは初となるテスラ用の277Vのもののほか、一般用のものを20個備え付けるそうです。
きっかけはサンフランシスコ・ジャイアンツのゲーム。そこで、ワイナリーのクラブメンバー向けにワインを提供したときに、「最近ワイナリーに来ているか」どうか尋ねたところ、電気自動車の充電が必要だからいけない、と複数の顧客から聞いたのでした。
モンテレーナが特別なわけではありません。ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズのサイトではワイナリー検索のオプションに「電気自動車の充電ステーション」という項目があり、現状29のワイナリーがヒットします。
カリフォルニアのシリコンバレーは高額所得者が多く、新しい技術への関心も高いので、テスラなど、電気自動車の大きな市場になっています。また、彼らが、ナパの高額なワインを支えてもいるわけで、客層の重なりはかなりありそうです。
ワイナリーにとってもクリーンなイメージは歓迎するでしょうから、この動きは急速に広がるのではないかと思います。
ワシントン州最大のワイナリーであるシャトー・サン・ミシェルが、ソノマをベースとするワイナリー パッツ&ホールを買収しました(Purchasing Pinot: Ste. Michelle Wine Estates Buys Patz & Hall)。
サン・ミシェルの狙いはピノ・ノワール。パッツ&ホールは自社畑こそありませんが、ソノマの数多くの銘醸畑と長期間の契約を結んでいます。
なお、パッツ&ホールのオペレーションには変更ないとのこと。マーケティング担当のドナルド・パッツは「これまではMBAが考えるようなビジネスプランとかいったものはなしでやってきた。この買収でワイナリーが新たなレベルになることを期待する」としています。
基本的には変わらなさそうで安心しましたが、あまりビジネスライクにならないといいなあと思います。
サン・ミシェルの狙いはピノ・ノワール。パッツ&ホールは自社畑こそありませんが、ソノマの数多くの銘醸畑と長期間の契約を結んでいます。
なお、パッツ&ホールのオペレーションには変更ないとのこと。マーケティング担当のドナルド・パッツは「これまではMBAが考えるようなビジネスプランとかいったものはなしでやってきた。この買収でワイナリーが新たなレベルになることを期待する」としています。
基本的には変わらなさそうで安心しましたが、あまりビジネスライクにならないといいなあと思います。
ケンダル・ジャクソンなどを擁するジャクソン・ファミリー・ワインズがオレゴンのワイナリー ペナー・アッシュを買収しました(Jackson Family Wines Buys Penner-Ash Wine Cellars)。買収価格などは明らかになっていません。
ペナー・アッシュ・ワイン・セラーズは、リンとロンのペナー・アッシュ夫妻が1998年に設立したワイナリー。当初は二人とも別の仕事を持っていたため、生産量はわずか125ケース。それが現在では1万5000ケースにまで増えています。
ワインメーカーは夫人のリン。当初はカリフォルニアでスタッグス・リープ・ワイン・セラーズやシャトー・セント・ジーンなどのために働き、1988年にオレゴンのレックス・ヒルのワインメーカーになりました。オレゴンでは初めての女性ワインメーカーだったようです。
ワイナリーの売却は、ワイン作りに専念するため。日常的なオペレーションをジャクソン・ファミリーに委ねることによって、ワイン作りにより重きをおけるようになるからです。
ペナー・アッシュ・ワイン・セラーズは、リンとロンのペナー・アッシュ夫妻が1998年に設立したワイナリー。当初は二人とも別の仕事を持っていたため、生産量はわずか125ケース。それが現在では1万5000ケースにまで増えています。
ワインメーカーは夫人のリン。当初はカリフォルニアでスタッグス・リープ・ワイン・セラーズやシャトー・セント・ジーンなどのために働き、1988年にオレゴンのレックス・ヒルのワインメーカーになりました。オレゴンでは初めての女性ワインメーカーだったようです。
ワイナリーの売却は、ワイン作りに専念するため。日常的なオペレーションをジャクソン・ファミリーに委ねることによって、ワイン作りにより重きをおけるようになるからです。
カリフォルニアでスパークリングワインを作る生産者が急増しています。これまではマムやシャンドンといった大規模な生産者が中心だった泡の世界がついに動き出したようです(California's New Wave of Sparkling Wine)。
例えばサンタ・バーバラでも新しく泡を始めたワイナリーは20を下らないとか。一つにはスパークリングワインがクリスマスなど、お祝い用のワインから、日常的に飲むワインへとなっていっていることが背景にあります。特にミレニアル世代や女性に顕著だといいます。
もう一つは小規模生産者をサポートする体制が整いつつあること。例えばスパークリングワインには専用のボトリング設備が必要ですが、ソノマのヒールズバーグにあるラック&リドルという会社が、サービスを提供しています。
作られているスパークリングワインも従来のシャンパーニュを模したものだけではなくなってきています。
例えば先日紹介した、シェバンのスパークリングワイン「シェ・バブルズ」はカリニャンから作っていましたし、サンタ・バーバラのパルミナはバルベーラから赤のスパークリングワインを、マルヴァシアから白のスパークリングワインを作っています。
この記事にはでてきていませんが、ベッドロックの記事で紹介した「アンダー・ザ・ワイヤー」も単一畑、単一ヴィンテージでスパークリングワインを作るプロジェクトです。
これから泡の世界、面白くなっていきそうです。
例えばサンタ・バーバラでも新しく泡を始めたワイナリーは20を下らないとか。一つにはスパークリングワインがクリスマスなど、お祝い用のワインから、日常的に飲むワインへとなっていっていることが背景にあります。特にミレニアル世代や女性に顕著だといいます。
もう一つは小規模生産者をサポートする体制が整いつつあること。例えばスパークリングワインには専用のボトリング設備が必要ですが、ソノマのヒールズバーグにあるラック&リドルという会社が、サービスを提供しています。
作られているスパークリングワインも従来のシャンパーニュを模したものだけではなくなってきています。
例えば先日紹介した、シェバンのスパークリングワイン「シェ・バブルズ」はカリニャンから作っていましたし、サンタ・バーバラのパルミナはバルベーラから赤のスパークリングワインを、マルヴァシアから白のスパークリングワインを作っています。
この記事にはでてきていませんが、ベッドロックの記事で紹介した「アンダー・ザ・ワイヤー」も単一畑、単一ヴィンテージでスパークリングワインを作るプロジェクトです。
これから泡の世界、面白くなっていきそうです。
シャトー・ラトゥール出身でキャプサンディのワインメーカーなどとして知られるデニス(ドニ)・マルベックが4月16日早朝、交通事故でなくなりました(Denis Malbec, former winemaker at Captûre Wines, dies in Napa County crash | The Press Democrat)。ご冥福をお祈りします。
デニス・マルベックはメルセデスで、ナパのワシントン・ストリートを走行していましたが、道をそれ、フェンスに激突し、その場所で死亡が確認されました。助手席に乗っていた「テイクン」のジョシュ・フェルプスは大きな怪我を負いませんでした。酒を飲んでいたかどうかなどは調査中です。
デニス・マルベックは、祖父の代からシャトー・ラトゥールの醸造責任者という名門の生まれ。本人も1999年まではシャトー・ラトゥールで醸造責任者を務めていました。
その後、ナパに移り、キャプサンディのワインメーカーなどとして頭角を現します。また、自身のブランドとして「ノートル・ヴァン」、「アリエノール」を作っています(アリエノールは日本にも輸入されています)。
また、若いワインメーカーたちの指導役としても尊敬を集めていました。
まだ46歳という若さ。残された奥さんのメイ・ブリットさんもお気の毒です。
デニス・マルベックはメルセデスで、ナパのワシントン・ストリートを走行していましたが、道をそれ、フェンスに激突し、その場所で死亡が確認されました。助手席に乗っていた「テイクン」のジョシュ・フェルプスは大きな怪我を負いませんでした。酒を飲んでいたかどうかなどは調査中です。
デニス・マルベックは、祖父の代からシャトー・ラトゥールの醸造責任者という名門の生まれ。本人も1999年まではシャトー・ラトゥールで醸造責任者を務めていました。
その後、ナパに移り、キャプサンディのワインメーカーなどとして頭角を現します。また、自身のブランドとして「ノートル・ヴァン」、「アリエノール」を作っています(アリエノールは日本にも輸入されています)。
また、若いワインメーカーたちの指導役としても尊敬を集めていました。
まだ46歳という若さ。残された奥さんのメイ・ブリットさんもお気の毒です。
カリフォルニアワインがフランスの名だたるワインを打ち負かして、カリフォルニアワインの一大転機となったパリ・テイスティング、通称パリスの審判。それが行われた1976年から今年で40年ということで、関連したイベントが数多く行われます。
その、忙しい中、白ワインで一位になったシャトー・モンテレーナ(Ch. Montelena)のボー・バレットさんが来日、東京・青山のアカデミー・デュ・ヴァンでセミナーが開催されました。
まず、モデレーターの葉山考太郎さん(パリスの審判の本の翻訳も担当しています)から、パリスの審判の勝利は「高校野球のPL学園がプロ野球の阪神タイガースに勝つくらいすごいことだった」と紹介。その後、ボー・バレットさんから当時のことなどを聞いていきました。
ボーさんは当時22歳。オーナーである父のジム・バレットの元でセラーの下働きをしていたそうです。勝利の連絡がきたときも樽の仕事をしていたとのこと。インターネットもない当時、現地にいたジム・バレットからの連絡はテレグラムで来ました。受け取ったワインメーカーのマイク・ガーギッヂが「We won, We won」と、テレグラムの紙を振りながらやってきて皆で大騒ぎになったとのことでした。
そういう意味では勝利したワイン作りに直接携わっていたわけではなかったのですが、チームとしてそれに加われたことがとても名誉に感じたそうです。また、ジム・バレットはチームでなしとげたことと考えていたのに、マイク・ガーギッヂは「自分の功績」と言ってはばからない人だったので、袂を分かつ結果になってしまいました。
実はモンテレーナにとってはシャルドネは、それほど力を入れていたわけではなく、あくまでも本命の品種はカベルネ・ソーヴィニヨンでした。カベルネ・ソーヴィニヨンを作るための資金作りとして、購入したブドウでシャルドネを作っていたのです。
パリスの審判で勝利したことにより、シャルドネは飛ぶように売れていきました。ワイナリーとしては収入が増え、結果的に目的であるカベルネ・ソーヴィニヨンに手が届くようになりました。そういう意味で、この勝利は「dream comes true」でした。
奥さんで、有名なワインメーカーでもあるハイジ・ピーターソン・バレットさんとのなれそめの話も出ました。まだボーさんがフレスノ大学の学生だった時分、ナパのヨントヴィルにあるサルーンという西部劇に出てきそうなバーに入ったとき、目の前に座っていたのがハイジさんだったそうです。一目で恋に落ちてしまったとのこと。
ハイジさんとはまったく独立してワイン作りを行っていますが、2008年からはBarrett & Barrettというプロジェクトで一緒にワインを作っています。
さて、ここからは試飲です。
まずは極めて限定数しかないソーヴィニヨン・ブランの2014年。気の置けないワインで、みつや柑橘系の香りにアフターの苦味が心地よい味わい。
シャルドネは2013年、2011年、2007年の3ヴィンテージ。2013年は暖かい年で、花の香りにトロピカルフルーツの味わい。2011年は涼しい年ですが、意外にもリッチな味わい。2013年よりもボリュームを感じるほど。そして2007年は余韻が長く素晴らしい味わい。
ボーさんが語るには、シャルドネは水彩画のようなもので、色を加えていくとピュアなフルーツが失われてしまう。そうならないように作っているとのこと。新樽使用率は7%と低く、第一印象はそれほど押し出しがないようですが、熟成するほどに魅力を増してくるワインです。また、上記のように「足し算」していかないワイン作りというのは、引き算の料理といわれる和食との相性もいいように思います。
次は2012年のジンファンデル。ジンファンデルは自社畑で、ヴィオニエと一緒に醸造されているそうです。ジンファンデルにしては薄めで、これも押し出しはあまり強くないワイン。ブルーベリーの味わいやスパイスなどが心地よい。
最後の2つはエステートのカベルネ・ソーヴィニヨン。モンテレーナが自らの存在理由という気合を込めたワインです。ヴィンテージは2012年と2006年。
2012年は暖かい年で、ボリュームを強く感じる作り。パワフルで強いタンニン。すみれの香り、ブルーベリーやカシス、スパイスの味わい。もう数年置いておきたいワインです。
2006年はとてもバランスがいいワイン。酸がしっかりしており、それが全体を支えています。すばらしい。
ボーさんによると、ナパの土壌は、火山性、沖積、そして海底の堆積の3種類があるそうですが、モンテレーナのエステートの畑はこれら3つすべてを含んでいるとのこと。それが複雑な味わいを運営るようです。カベルネ・ソーヴィニヨンの新樽率は30%前後。
シャルドネにしてもカベルネ・ソーヴィニヨンにしても、モンテレーナのワインは10年程度は熟成してからが本領を発揮するようです。今回それを改めて確認できたのは大きいな収穫でした。
パリスの審判の本。絶版になっています。
その、忙しい中、白ワインで一位になったシャトー・モンテレーナ(Ch. Montelena)のボー・バレットさんが来日、東京・青山のアカデミー・デュ・ヴァンでセミナーが開催されました。
まず、モデレーターの葉山考太郎さん(パリスの審判の本の翻訳も担当しています)から、パリスの審判の勝利は「高校野球のPL学園がプロ野球の阪神タイガースに勝つくらいすごいことだった」と紹介。その後、ボー・バレットさんから当時のことなどを聞いていきました。
ボーさんは当時22歳。オーナーである父のジム・バレットの元でセラーの下働きをしていたそうです。勝利の連絡がきたときも樽の仕事をしていたとのこと。インターネットもない当時、現地にいたジム・バレットからの連絡はテレグラムで来ました。受け取ったワインメーカーのマイク・ガーギッヂが「We won, We won」と、テレグラムの紙を振りながらやってきて皆で大騒ぎになったとのことでした。
そういう意味では勝利したワイン作りに直接携わっていたわけではなかったのですが、チームとしてそれに加われたことがとても名誉に感じたそうです。また、ジム・バレットはチームでなしとげたことと考えていたのに、マイク・ガーギッヂは「自分の功績」と言ってはばからない人だったので、袂を分かつ結果になってしまいました。
実はモンテレーナにとってはシャルドネは、それほど力を入れていたわけではなく、あくまでも本命の品種はカベルネ・ソーヴィニヨンでした。カベルネ・ソーヴィニヨンを作るための資金作りとして、購入したブドウでシャルドネを作っていたのです。
パリスの審判で勝利したことにより、シャルドネは飛ぶように売れていきました。ワイナリーとしては収入が増え、結果的に目的であるカベルネ・ソーヴィニヨンに手が届くようになりました。そういう意味で、この勝利は「dream comes true」でした。
奥さんで、有名なワインメーカーでもあるハイジ・ピーターソン・バレットさんとのなれそめの話も出ました。まだボーさんがフレスノ大学の学生だった時分、ナパのヨントヴィルにあるサルーンという西部劇に出てきそうなバーに入ったとき、目の前に座っていたのがハイジさんだったそうです。一目で恋に落ちてしまったとのこと。
ハイジさんとはまったく独立してワイン作りを行っていますが、2008年からはBarrett & Barrettというプロジェクトで一緒にワインを作っています。
さて、ここからは試飲です。
まずは極めて限定数しかないソーヴィニヨン・ブランの2014年。気の置けないワインで、みつや柑橘系の香りにアフターの苦味が心地よい味わい。
シャルドネは2013年、2011年、2007年の3ヴィンテージ。2013年は暖かい年で、花の香りにトロピカルフルーツの味わい。2011年は涼しい年ですが、意外にもリッチな味わい。2013年よりもボリュームを感じるほど。そして2007年は余韻が長く素晴らしい味わい。
ボーさんが語るには、シャルドネは水彩画のようなもので、色を加えていくとピュアなフルーツが失われてしまう。そうならないように作っているとのこと。新樽使用率は7%と低く、第一印象はそれほど押し出しがないようですが、熟成するほどに魅力を増してくるワインです。また、上記のように「足し算」していかないワイン作りというのは、引き算の料理といわれる和食との相性もいいように思います。
次は2012年のジンファンデル。ジンファンデルは自社畑で、ヴィオニエと一緒に醸造されているそうです。ジンファンデルにしては薄めで、これも押し出しはあまり強くないワイン。ブルーベリーの味わいやスパイスなどが心地よい。
最後の2つはエステートのカベルネ・ソーヴィニヨン。モンテレーナが自らの存在理由という気合を込めたワインです。ヴィンテージは2012年と2006年。
2012年は暖かい年で、ボリュームを強く感じる作り。パワフルで強いタンニン。すみれの香り、ブルーベリーやカシス、スパイスの味わい。もう数年置いておきたいワインです。
2006年はとてもバランスがいいワイン。酸がしっかりしており、それが全体を支えています。すばらしい。
ボーさんによると、ナパの土壌は、火山性、沖積、そして海底の堆積の3種類があるそうですが、モンテレーナのエステートの畑はこれら3つすべてを含んでいるとのこと。それが複雑な味わいを運営るようです。カベルネ・ソーヴィニヨンの新樽率は30%前後。
シャルドネにしてもカベルネ・ソーヴィニヨンにしても、モンテレーナのワインは10年程度は熟成してからが本領を発揮するようです。今回それを改めて確認できたのは大きいな収穫でした。
パリスの審判の本。絶版になっています。
先日、リースリング・リングというリースリングのみの試飲会が開催されました。カリフォルニアが少ない(ボンテラだけだった)のは当然としても、オレゴンやワシントン州も2、3種類ずつくらいしか出ておらず、ちょっと寂しい感じがしました。
そんな中で、北米のワインで一番目立っていたのはニューヨーク州のワイン。
といっても、出していたのはこの「Gotoワイン」というニューヨーク専門のインポーターだけでしたが、コーナーのいい場所を陣取っており、ワインもみな美味しく感じました。
それにしても、今回痛感したのは自身のリースリング経験の低さ。いいリースリングがどのようなものかわかっていないので、評価するのが難しいのです。例えば、このワインは熟成したらおいしくなりそう、といったイメージがもっとできるようにならないといけないなと思いました。
例えばリースリングの特徴と言われている「ペトロール香」。これがあるかないかは、もちろんすぐに分かりますが、それがあるからいいのか、ない方がいいのか。個人的にはない方が好きですが、熟成するときには、そういった要素も必要になるのかもしれません。
安いものだと、明らかにバランスを崩しているものもありましたが、そうでないワインであれば、正直いって2000台のものと1万円台のもので、どちらが美味しいか、あまりわかりませんでした。
そんな中で、北米のワインで一番目立っていたのはニューヨーク州のワイン。
といっても、出していたのはこの「Gotoワイン」というニューヨーク専門のインポーターだけでしたが、コーナーのいい場所を陣取っており、ワインもみな美味しく感じました。
それにしても、今回痛感したのは自身のリースリング経験の低さ。いいリースリングがどのようなものかわかっていないので、評価するのが難しいのです。例えば、このワインは熟成したらおいしくなりそう、といったイメージがもっとできるようにならないといけないなと思いました。
例えばリースリングの特徴と言われている「ペトロール香」。これがあるかないかは、もちろんすぐに分かりますが、それがあるからいいのか、ない方がいいのか。個人的にはない方が好きですが、熟成するときには、そういった要素も必要になるのかもしれません。
安いものだと、明らかにバランスを崩しているものもありましたが、そうでないワインであれば、正直いって2000台のものと1万円台のもので、どちらが美味しいか、あまりわかりませんでした。
ヴィナス(Vinous)のアントニオ・ガッローニが、2013年、2014年を中心にナパの試飲レポートを出しています。個々のワインのレビューは有料会員でないと見られませんが、レポートは誰でも読めるようになっています(2013 Napa Valley: Once Upon a Time in America… (Oct 2015) | Vinous - Explore All Things Wine)。
総じて言えば、2013年は最高、2014年は2013年に迫るものがあり、2015年はやや品質にバラつきがある、といったところ。
このほか、Clos du Val、Inglenook、Stag's Leap Wine Cellarsといった懐かしいワイナリーのワインがここ数年非常に良くなっている、若い世代が頑張っていて、彼らが目指しているのは1960年代や1970年代のナパのワインだ、など興味深い考察がいろいろあります。
一方で、ナパの現状への警鐘もあります。例えばあるコンサルタントは「自分がコンサルトしているワイナリーのワインはグラス一杯飲むのがやっと」と打ち明けるなど、評論家の高得点を得るために、飲みたいワインと作るワインが乖離していること。ワインをボトルに詰めるときに樽の一番上や一番下の部分は使わないのが普通なのを、そういったものをテイスティングルーム用に使っているワイナリーがあることなど。
ナパのワインに興味があるならば必見の内容です。
総じて言えば、2013年は最高、2014年は2013年に迫るものがあり、2015年はやや品質にバラつきがある、といったところ。
このほか、Clos du Val、Inglenook、Stag's Leap Wine Cellarsといった懐かしいワイナリーのワインがここ数年非常に良くなっている、若い世代が頑張っていて、彼らが目指しているのは1960年代や1970年代のナパのワインだ、など興味深い考察がいろいろあります。
一方で、ナパの現状への警鐘もあります。例えばあるコンサルタントは「自分がコンサルトしているワイナリーのワインはグラス一杯飲むのがやっと」と打ち明けるなど、評論家の高得点を得るために、飲みたいワインと作るワインが乖離していること。ワインをボトルに詰めるときに樽の一番上や一番下の部分は使わないのが普通なのを、そういったものをテイスティングルーム用に使っているワイナリーがあることなど。
ナパのワインに興味があるならば必見の内容です。
カリフォルニアで一番古いブドウの樹はどこにあるのでしょうか。
カリフォルニアにブドウをもたらしたのは宣教師です。18世紀に南カリフォルニアに作られたSan Gabriel Missionに植えられたものがワイン用のブドウの種類であるヴィティス・ヴィニフェラ種としては一番古いと考えられます。ヴィーナ・マードレ(母なるブドウという意味でしょうか)と呼ばれるそのブドウの発見と再生を試みている人たちがいます(The oldest vine in California | Allison Levine | napavalleyregister.com)。
San Gabriel Missionで植えられたブドウの木については実は生きているのかどうかも判明していません。今回は、このブドウの樹から挿し木されたブドウが見つかったという話です。
このブドウの木は1800年代前半に植えられたと考えられます。「Avila Adobe」というロスアンゼルスで現存する最古の建物の中庭に植えられています。この建物は1818年に完成しており、ブドウの樹はその中庭の日除け用として植えられています。実際には2本の樹が50センチほど離れて植わっているのですが、実質的にはひとつの樹として見なされています。
古いミッションの中には今でもブドウが残っているところもあるようなのですが、調べた範囲では、このブドウが実を付け続けているものでは最古と見られています。
このブドウの樹を発見したのはマイケル・ホランドというロスアンゼルスの公文書保管人をしている人。彼は家でワインも作っているので、この樹のブドウを収穫して、アンジェリカという発酵を途中でより止めて糖分を残したワインを作って見たそうです。
彼はその後、以前会ったことがあったクロ・ぺぺのワインメーカー、ウェス・ヘイガンにコンタクトを取りました。
そして、ヘイガンと一緒に文書を調べたり、DNAの検査をUC Davisに依頼したりしました。その結果、このブドウがヴィーナ・マードレから挿し木されたものであろうということが分かったのです。
ヘイガンは2016年1月に、この樹の手入れを始めました。枯れた葉や枝を取り除いて元気なところを残すようにしています。昨年は10kg程度しか収穫がなかったものを、この建物の200周年にあたる2018年には500kg近くにまで増やしたいとしています。また、今は色も糖度も不十分なものが、しっかりと熟したブドウになると考えています。
非常に興味深い話です。歴史がないといわれるカリフォルニアのブドウですが200年というのは結構立派な歴史だと思います。これをきっかけにほかの古いブドウの樹の歴史も発掘されるといいですね。
カリフォルニアにブドウをもたらしたのは宣教師です。18世紀に南カリフォルニアに作られたSan Gabriel Missionに植えられたものがワイン用のブドウの種類であるヴィティス・ヴィニフェラ種としては一番古いと考えられます。ヴィーナ・マードレ(母なるブドウという意味でしょうか)と呼ばれるそのブドウの発見と再生を試みている人たちがいます(The oldest vine in California | Allison Levine | napavalleyregister.com)。
San Gabriel Missionで植えられたブドウの木については実は生きているのかどうかも判明していません。今回は、このブドウの樹から挿し木されたブドウが見つかったという話です。
このブドウの木は1800年代前半に植えられたと考えられます。「Avila Adobe」というロスアンゼルスで現存する最古の建物の中庭に植えられています。この建物は1818年に完成しており、ブドウの樹はその中庭の日除け用として植えられています。実際には2本の樹が50センチほど離れて植わっているのですが、実質的にはひとつの樹として見なされています。
古いミッションの中には今でもブドウが残っているところもあるようなのですが、調べた範囲では、このブドウが実を付け続けているものでは最古と見られています。
このブドウの樹を発見したのはマイケル・ホランドというロスアンゼルスの公文書保管人をしている人。彼は家でワインも作っているので、この樹のブドウを収穫して、アンジェリカという発酵を途中でより止めて糖分を残したワインを作って見たそうです。
彼はその後、以前会ったことがあったクロ・ぺぺのワインメーカー、ウェス・ヘイガンにコンタクトを取りました。
そして、ヘイガンと一緒に文書を調べたり、DNAの検査をUC Davisに依頼したりしました。その結果、このブドウがヴィーナ・マードレから挿し木されたものであろうということが分かったのです。
ヘイガンは2016年1月に、この樹の手入れを始めました。枯れた葉や枝を取り除いて元気なところを残すようにしています。昨年は10kg程度しか収穫がなかったものを、この建物の200周年にあたる2018年には500kg近くにまで増やしたいとしています。また、今は色も糖度も不十分なものが、しっかりと熟したブドウになると考えています。
非常に興味深い話です。歴史がないといわれるカリフォルニアのブドウですが200年というのは結構立派な歴史だと思います。これをきっかけにほかの古いブドウの樹の歴史も発掘されるといいですね。
英国のDecanter誌に「飲む価値がある10のエキサイティングなカリフォルニアワイン」という記事が掲載されていました(10 exciting California wines to try - Decanter)。
スパークリングが1本、ソーヴィニヨン・ブランが1本、シャルドネが1本、ピノ・ノワールが3本、シラーが2本、カベルネ・ソーヴィニヨンが2本という構成。全体的に日本人の好みにも合いそうなラインナップになっています。
Roederer Estate Brut NV
Vineyard 29, Sauvignon Blanc 2012
Diatom, Miya Chardonnay 2011
Sanford, Sanford & Benedict Pinot Noir 2012
Failla, Hirsch Vineyard, Pinot Noir 2012
Roar Pinot Noir 2013
The Ojai Vineyard, Solomon Hills Vineyard Syrah 2013
Radio-Coteau, Las Colinas Syrah 2013
O’Shaughnessy, Cabernet Sauvignon 2012
Scarecrow, Cabernet Sauvignon 2012
なかでも注目は唯一シャルドネで選ばれた「美夜」(みや)。これはダイアトム時代の2011年のものですが、2012ヴィンテージからはシャトー・イガイタカハで出ています。「初めてこのワインを飲んで以来、カリフォルニアのシャルドネを見る目が完全に変わってしまった」とレビュアーは書いています。「精密でパワフルで、夕方の海で波が砕け散る寸前のところを閉じ込めたような」とも。
そういえば、私が先日試飲したときには「うちに秘めたパワーを感じます」と書いていますが、最後の詩的なコメントは私の印象と重なるような気がしました(シャトー・イガイタカハの一気試飲、「侍」「園」はさすがの美味しさ、「美夜」のパワーにビックリ)。確かにこれはそんじょそこらにあるワインではないので、実際に飲んでみてほしいワインです。
スパークリングが1本、ソーヴィニヨン・ブランが1本、シャルドネが1本、ピノ・ノワールが3本、シラーが2本、カベルネ・ソーヴィニヨンが2本という構成。全体的に日本人の好みにも合いそうなラインナップになっています。
Roederer Estate Brut NV
Vineyard 29, Sauvignon Blanc 2012
Diatom, Miya Chardonnay 2011
Sanford, Sanford & Benedict Pinot Noir 2012
Failla, Hirsch Vineyard, Pinot Noir 2012
Roar Pinot Noir 2013
The Ojai Vineyard, Solomon Hills Vineyard Syrah 2013
Radio-Coteau, Las Colinas Syrah 2013
O’Shaughnessy, Cabernet Sauvignon 2012
Scarecrow, Cabernet Sauvignon 2012
なかでも注目は唯一シャルドネで選ばれた「美夜」(みや)。これはダイアトム時代の2011年のものですが、2012ヴィンテージからはシャトー・イガイタカハで出ています。「初めてこのワインを飲んで以来、カリフォルニアのシャルドネを見る目が完全に変わってしまった」とレビュアーは書いています。「精密でパワフルで、夕方の海で波が砕け散る寸前のところを閉じ込めたような」とも。
そういえば、私が先日試飲したときには「うちに秘めたパワーを感じます」と書いていますが、最後の詩的なコメントは私の印象と重なるような気がしました(シャトー・イガイタカハの一気試飲、「侍」「園」はさすがの美味しさ、「美夜」のパワーにビックリ)。確かにこれはそんじょそこらにあるワインではないので、実際に飲んでみてほしいワインです。
ワシントン州からグラマシー・セラーズ(Gramercy Cellars)オーナーのグレッグ・ハリントン氏が来日し、そのセミナーに参加してきました。約2時間のセミナーは前半がワシントン州のお勉強で後半がブラインド・テイスティング。
この記事ではまず、前半のワシントン州のワインについてのお勉強部分を紹介します。
正直言って、ワシントン州のワインについては詳しくありません。コロンビア・クレストのワインのコスト・パフォーマンスの高さは昔から知っていますし、シャトー・サン・ミシェルのリースリングくらいはもちろん飲んだことあります。ほかの知識というとクィルシーダ・クリーク(Quilceda Creek)のカベルネ・ソーヴィニヨンがWine Advocate誌で何度も100点を取っていることや、カイユース(Cayuse)のシラーが引く手あまたなこと、くらいでしょうか。
ワシントン州の中でもシアトルには何十回か行ったことがあります。夏は非常にいいところですが、秋から冬にかけては雨が多く、自殺者も多いと聞いたことがあります。
飲食関係で言えば、スターバックスなど「シアトル系」のコーヒーショップの発祥の地であり、コストコもワシントン州からだったはず。サーモンやクラムチャウダーが美味しい。
と、いきなりワシントン州についての数少ない知識をさらけだしてしまいましたが、実は米国でもワシントンといえばワシントンDCしか知らないという人も意外と多いのだとか。この程度の知識でもまだマシなのかもしれません。
グラマシー・セラーズのグレッグ・ハリントン氏もワシントン州の出身ではなく、元々ニューヨークの人。24歳という若さでマスター・ソムリエの資格を取り(最年少記録だとか)、ニューヨークでソムリエをしていました。ちなみにグラマシーというのはニューヨークにある公園の名前なのだそうです。2005年に初めて奥さんとワシントン州に旅行に来て、「引退したらここに来よう」と思ったのが、なぜか翌年にはワイナリーを作りに移住してきてしまったそうです。
ワシントン州のワインについて知っておきたいことをまとめておきます。
・ワインの生産量はカリフォルニアに次いで米国で2番めに多い
・ワイナリーの数は850位上
・畑は2万ヘクタール以上
・一番作られている品種はリースリングで、シャトー・サン・ミシェルが大きく貢献している
・以下、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラーの順だが、シラーはメルローの半分以下
・緯度はボルドーと同程度
・日照時間が長く、昼間は35℃まで上がることもあるが朝は15℃まで下がる
・コロンビア・ヴァレーがワシントン州のワインのほとんどの生産地を含んでいる
・ワインの生産地は内陸
生産地について、もうちょっと詳しく見ていきましょう。
地図の中央、大きな三角形をなしているのがコロンビア・ヴァレーです。太平洋から来る湿った風はシアトルには雨を降らしますが、オリンピック山脈とカスケード山脈を越えることによって乾燥してしまうため、コロンビア・ヴァレーでは雨はあまり降りません。
歴史的に見ると「ミズーラ洪水」と呼ばれる極めて巨大な洪水がこの地域の形成に大きな役割を果たしています。
氷河期の時代、ワシントン州の東側、今のモンタナ州の西部に巨大な氷河湖がありました。この氷河が決壊すると、その水が一気に今のコロンビア・ヴァレーのあたりを流れていきます。洪水の高さは200mに達したといいますから、津波の規模をさらに超えていたわけです。そんな洪水が何十回と起こっており、それによってできた堆積物がコロンビア・ヴァレーの土壌の基本となっています。非常に砂が多いのが特徴です。
というわけで、ワシントン州のワイン栽培地域は、土壌に関してはどこもさほど変わらないそうです。
そして、この砂が多い土壌や、冬場の気温の低さ、といった条件により、ワシントン州ではフィロキセラの被害が発生していません。なので、ワインの樹は接ぎ木ではなく自根で育てられています。
自根というのはワシントンにおいては重要な要素です。冬場に冷え込むとき、場合によってはブドウの木全体が死んでしまうことを防ぐために、根だけ残して、幹部分をカットしてしまうようなこともあるそうです。
また、霜にも強くなるよう、樹の幹を2つ撚り合わせたようなユニークな剪定方式も使っているそうです。
このほか、ワインを育てる条件として重要な気温についていえば、緯度経度よりも標高が大きな要素になっています。したがって、山脈に近い標高が高いところが気温が低く、リースリングなど寒いところに強いブドウ向け、標高が低いところがカベルネ・ソーヴィニヨンなど温暖な地域のブドウ向けになります。
グラマシー・セラーズのワインについては後編で紹介します。
この記事ではまず、前半のワシントン州のワインについてのお勉強部分を紹介します。
正直言って、ワシントン州のワインについては詳しくありません。コロンビア・クレストのワインのコスト・パフォーマンスの高さは昔から知っていますし、シャトー・サン・ミシェルのリースリングくらいはもちろん飲んだことあります。ほかの知識というとクィルシーダ・クリーク(Quilceda Creek)のカベルネ・ソーヴィニヨンがWine Advocate誌で何度も100点を取っていることや、カイユース(Cayuse)のシラーが引く手あまたなこと、くらいでしょうか。
ワシントン州の中でもシアトルには何十回か行ったことがあります。夏は非常にいいところですが、秋から冬にかけては雨が多く、自殺者も多いと聞いたことがあります。
飲食関係で言えば、スターバックスなど「シアトル系」のコーヒーショップの発祥の地であり、コストコもワシントン州からだったはず。サーモンやクラムチャウダーが美味しい。
と、いきなりワシントン州についての数少ない知識をさらけだしてしまいましたが、実は米国でもワシントンといえばワシントンDCしか知らないという人も意外と多いのだとか。この程度の知識でもまだマシなのかもしれません。
グラマシー・セラーズのグレッグ・ハリントン氏もワシントン州の出身ではなく、元々ニューヨークの人。24歳という若さでマスター・ソムリエの資格を取り(最年少記録だとか)、ニューヨークでソムリエをしていました。ちなみにグラマシーというのはニューヨークにある公園の名前なのだそうです。2005年に初めて奥さんとワシントン州に旅行に来て、「引退したらここに来よう」と思ったのが、なぜか翌年にはワイナリーを作りに移住してきてしまったそうです。
ワシントン州のワインについて知っておきたいことをまとめておきます。
・ワインの生産量はカリフォルニアに次いで米国で2番めに多い
・ワイナリーの数は850位上
・畑は2万ヘクタール以上
・一番作られている品種はリースリングで、シャトー・サン・ミシェルが大きく貢献している
・以下、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラーの順だが、シラーはメルローの半分以下
・緯度はボルドーと同程度
・日照時間が長く、昼間は35℃まで上がることもあるが朝は15℃まで下がる
・コロンビア・ヴァレーがワシントン州のワインのほとんどの生産地を含んでいる
・ワインの生産地は内陸
生産地について、もうちょっと詳しく見ていきましょう。
地図の中央、大きな三角形をなしているのがコロンビア・ヴァレーです。太平洋から来る湿った風はシアトルには雨を降らしますが、オリンピック山脈とカスケード山脈を越えることによって乾燥してしまうため、コロンビア・ヴァレーでは雨はあまり降りません。
歴史的に見ると「ミズーラ洪水」と呼ばれる極めて巨大な洪水がこの地域の形成に大きな役割を果たしています。
氷河期の時代、ワシントン州の東側、今のモンタナ州の西部に巨大な氷河湖がありました。この氷河が決壊すると、その水が一気に今のコロンビア・ヴァレーのあたりを流れていきます。洪水の高さは200mに達したといいますから、津波の規模をさらに超えていたわけです。そんな洪水が何十回と起こっており、それによってできた堆積物がコロンビア・ヴァレーの土壌の基本となっています。非常に砂が多いのが特徴です。
というわけで、ワシントン州のワイン栽培地域は、土壌に関してはどこもさほど変わらないそうです。
そして、この砂が多い土壌や、冬場の気温の低さ、といった条件により、ワシントン州ではフィロキセラの被害が発生していません。なので、ワインの樹は接ぎ木ではなく自根で育てられています。
自根というのはワシントンにおいては重要な要素です。冬場に冷え込むとき、場合によってはブドウの木全体が死んでしまうことを防ぐために、根だけ残して、幹部分をカットしてしまうようなこともあるそうです。
また、霜にも強くなるよう、樹の幹を2つ撚り合わせたようなユニークな剪定方式も使っているそうです。
このほか、ワインを育てる条件として重要な気温についていえば、緯度経度よりも標高が大きな要素になっています。したがって、山脈に近い標高が高いところが気温が低く、リースリングなど寒いところに強いブドウ向け、標高が低いところがカベルネ・ソーヴィニヨンなど温暖な地域のブドウ向けになります。
グラマシー・セラーズのワインについては後編で紹介します。
世界最大級のワイン会社であるコンステレーション・ブランズが、ヒュネイアス・ヴィントナーズからプリズナーなどのブランドを買収しました(Constellation Buys The Prisoner Wine Company for $285 Million | News | News & Features | Wine Spectator)。総額は2億8500万ドル。日本円では310億円程度になります。
プリズナーはオリン・スイフトが2000年に作り始めた赤ブレンド。ジンファンデルにカベルネ・ソーヴィニヨンなどをブレンドしています。これが大ヒットしたことが、現在の赤ブレンド・ブームにつながっています。
オリン・スイフトは2010年にプリズナー・ワイン・カンパニーとして分社し、ヒュネイアスに売却。当時の生産量8万5000ケースから現在は17万ケースに成長しています。価格35ドルと高額のワインとしてはかなりの量です。また、プリズナー以外に「サルド」「カッティングス」「ブラインドフォールド」「ソーン」といったブランドも作っており、これらも一緒に売却されています。
コンステレーションは昨年、ケイマスのワグナー家から「メイオミ」を買収しており、それに続く大型買収となりました。
プリズナーはオリン・スイフトが2000年に作り始めた赤ブレンド。ジンファンデルにカベルネ・ソーヴィニヨンなどをブレンドしています。これが大ヒットしたことが、現在の赤ブレンド・ブームにつながっています。
オリン・スイフトは2010年にプリズナー・ワイン・カンパニーとして分社し、ヒュネイアスに売却。当時の生産量8万5000ケースから現在は17万ケースに成長しています。価格35ドルと高額のワインとしてはかなりの量です。また、プリズナー以外に「サルド」「カッティングス」「ブラインドフォールド」「ソーン」といったブランドも作っており、これらも一緒に売却されています。
コンステレーションは昨年、ケイマスのワグナー家から「メイオミ」を買収しており、それに続く大型買収となりました。
イタリアのEnosis Meraviglia社のDonato Lanati博士がGenesisというワイン・ロボットを開発しました(‘Sci-fi robot’ wine fermenter unveiled)。
このロボット、記事には「R2-D2にそっくり」と書かれています。
その是非はともかくとして、200kgのブドウから100リットルのワインを作れるのだそうです。さまざまなセンサーを持っており、糖度やpH、抽出可能なアントシアニンなどを測定できるとか。
また、浸漬や酸素投与などもコントロールできるそうです。
ただ、これでできるのは第一段階の醸造までで、その後は別のタンクに移す必要があるとか。
開発者は土着のブドウによるワインを作るのに使うとしていますが、個人的にはどこがすごいのか、もうひとつわかりかねております(笑)。
このロボット、記事には「R2-D2にそっくり」と書かれています。
その是非はともかくとして、200kgのブドウから100リットルのワインを作れるのだそうです。さまざまなセンサーを持っており、糖度やpH、抽出可能なアントシアニンなどを測定できるとか。
また、浸漬や酸素投与などもコントロールできるそうです。
ただ、これでできるのは第一段階の醸造までで、その後は別のタンクに移す必要があるとか。
開発者は土着のブドウによるワインを作るのに使うとしていますが、個人的にはどこがすごいのか、もうひとつわかりかねております(笑)。
基本的に偶数月の月末に発行されるWine Advocate誌ですが、最近は奇数月にも中間号としていくつか小さな記事を公開しています。
3月にはそんな記事の1つとしてロバート・パーカーがマイケル・デイビッドの試飲をして高評価をあげていました。マイケル・デイビッドといえば「ワイン・エンシュージアストの年間トップ100発表、2位は驚きの18ドルワイン」という記事で紹介したプチ・シラーが最近のヒットであり、また一般には7に下線を付けて7にもZにも見えるようにしたラベルの「7デッドリージン」が有名ですが、今回はそれ以外のワインが中心。21本のワインがレビューされた中で11本に90点以上の評価(最高は94点)がつきました。
また、ワイナリーへのコメントでは、価格と生産量(トータルで70万ケース)を考えると賞賛するほかないとしています。
こちらは89点。6万ケースという生産量でこの品質は素晴らしいと。
こちらはジンファンデルの上級版。93点。
今回のレビューには入っていないですが、以前90点を付けています。Wine Enthusiast誌の年間2位。
ワイナリーの顔的存在のワイン。
3月にはそんな記事の1つとしてロバート・パーカーがマイケル・デイビッドの試飲をして高評価をあげていました。マイケル・デイビッドといえば「ワイン・エンシュージアストの年間トップ100発表、2位は驚きの18ドルワイン」という記事で紹介したプチ・シラーが最近のヒットであり、また一般には7に下線を付けて7にもZにも見えるようにしたラベルの「7デッドリージン」が有名ですが、今回はそれ以外のワインが中心。21本のワインがレビューされた中で11本に90点以上の評価(最高は94点)がつきました。
また、ワイナリーへのコメントでは、価格と生産量(トータルで70万ケース)を考えると賞賛するほかないとしています。
こちらは89点。6万ケースという生産量でこの品質は素晴らしいと。
こちらはジンファンデルの上級版。93点。
今回のレビューには入っていないですが、以前90点を付けています。Wine Enthusiast誌の年間2位。
ワイナリーの顔的存在のワイン。
毎年4月と5月に開催されるカリフォルニアワイン バイザグラス キャンペーンが今年も始まりました。
参加したレストランは、カリフォルニアワインをグラスワインとして提供します。少しずついろいろなワインを飲みたい人に向いています。知らないワインをちょっと試してみるのにもいいですよね。
参加しているのは関東と関西の約230のレストラン。上記のリンクから調べられます。なお、レストランによって参加日程が違っているので注意してください。
今年はすべてのレストランでグラスワインにジンファンデルを入れてもらっているそうです。
参加したレストランは、カリフォルニアワインをグラスワインとして提供します。少しずついろいろなワインを飲みたい人に向いています。知らないワインをちょっと試してみるのにもいいですよね。
参加しているのは関東と関西の約230のレストラン。上記のリンクから調べられます。なお、レストランによって参加日程が違っているので注意してください。
今年はすべてのレストランでグラスワインにジンファンデルを入れてもらっているそうです。