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Date: 2023/0531 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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6月8日にナパの「ケール・ワインズ(Kale Wines)」の方が来日され、六本木でペアリング・ディナーが開かれます。

ケールの創設者のケール・アンダーソンは、元パルメイヤーのワインメーカーで、パルメイヤー初の「パーカー100点」ワインを作った人。「パーカー100点」ワインのワインメーカーとしては最も若い一人だといいます。2016年にパルメイヤーをやめ、自身のワイナリーに専念しています。ナパをベースにしながら、カベルネ・ソーヴィニヨンはつくらず、ローヌ系品種の赤とシャルドネ、そして甲州も作っているそうです。奥さんは日系人のランコさんで、日本で英語を教えていたこともあります。

今回は残念ながらケールは来日できないのですが、ワイナリー共同オーナーのトレイが来日します。

店は「焼きとりの八兵衛」六本木店。ミッドタウンからすぐのところにあります。オーナーの八島さんは先日のナパのツアーにいらっしゃっていて、そこでケールのワインに感動したのでした(私は別グループだったのでそのときはケール飲めませんでした)。

今回はナパヴァレー・ヴィントナーズの小枝絵麻さんが料理をアレンジしてペアリング・ディナーとして提供します。私も少しですがお手伝いさせていただきます。

まだ若干名席がありますので、よろしかったらご参加いただけると嬉しいです。

Kale Wines 来日イベント | Peatix
Date: 2023/0530 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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米国で買うよりも日本で買った方が安いカリフォルニアワインというのはいくつかあるのですが、その中でも日本で買うほうが圧倒的に安く、しかもその状態が何年も続いているのがドメーヌ・カーネロスのスパークリング・ワインです。しかし、ついにこの夏から大幅値上げになってしまうようです。残念ですが、今までの価格は明らかにおかしかったのでしょうがないと思うしかないでしょう。セラーの空きがあったら買いだめ大推奨です。

ドメーヌ・カーネロスのスパークリングは、基本どれも安すぎるのですが、中でも極端なのがフラッグシップのル・レーヴです。ワイナリー価格が120ドルで、米国の市場価格でも税抜きで100ドルは超えています。今のレートで考えたら税込みでは1万5000円を確実に超えます。それが国内では7000円台で買えるのですからほぼ半額です。

品質が悪いわけではなく、現行ヴィンテージの2014年はワインスペクテーターで94点。2022年12月の米国産スパークリングの記事ではアイアン・ホースのブリュットLDの95点に次ぐ評価となっています。そもそもドメーヌ・カーネロスはシャンパーニュハウスのテタンジュによるワイナリーですから品質が低いはずはありません。

ショップはWINE NATION。


ショップは「代官山ワインサロンLe・Luxe」


ショップは「酒宝庫 MASHIMO」


しあわせワイン倶楽部


個人的にはロゼもおすすめです。米国で税抜き40ドル台が税込み4000円~5000円台なので、これもだいぶ国内の方が安いですが、ル・レーヴほどの衝撃はないかもしれません。

うきうきワインの玉手箱


酒宝庫 MASHIMO


代官山ワインサロン Le・Luxe


WINE NATION 楽天市場店


しあわせワイン倶楽部

Date: 2023/0529 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ロバート・モンダヴィ、ワイナリーのリノベーションでテイスティングルームをナパ市に移転」という記事を1月に掲載していますが、ワイナリー改築中の新しいテイスティング・ルームがこの夏遅くにオープンすることが正式発表されました。



これは4月に行ったときに撮った、テイスティング・ルームになるビルの写真ですが、予想よりも小さな建物で、駐車スペースも10台くらいしかありません。ナパのダウンタウンからすぐなので、ダウンタウンあたりに駐車して歩いて行く感じになるのでしょうか。それとも近くに駐車場を確保するのか、そのあたりはわかりません。

新しいテイスティングルームではグラスワインと軽食のペアリングも楽しめるそうで、ナパのダウンタウンのアトラクションになりそうです。

現在のワイナリーでのテイスティングは7月中旬までとのことで、夏休みにナパに行く人はモンダヴィには行けなさそうな感じです。

Date: 2023/0526 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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カリフォルニアのバークレーにあるブロック・セラーズ(Broc Cellars)が初の自社畑を購入しました。SFクロニクルの記事を参考にお伝えします。

ブロック・セラーズの過去記事
「ニューカリフォルニア」の注目株、ブロック・セラーズの魅力
ユニークな都市型ワイナリー「ブロック・セラーズ」のロゼ

バークレーはサンフランシスコからベイブリッジを渡った対岸にある街。大学「UCバークレー」がある学生街であり、カリフォルニア料理の生みの親であるレストラン「シェ・パニーズ」がある文化的な発信地でもあるところです。ブロック・セラーズ以外にもいくつか街中にワイナリーがあり、いずれもナチュラル系のワインを手掛けています。

ブロック・セラーズは様々なマイナー品種のブドウから少量多品種でワインを作っています。これまではすべて購入したブドウでワインを作っていましたが、栽培まで手掛けたいという希望は常に持っていたそうです。

今回購入したFox Hill Vineyardは、ソノマのヒールズバーグにあるアイドルワイルド(Idlewild Wines)のオーナーで友人のサム・ビルブロから10年ほど前に紹介された畑とのこと。サムは前オーナーのストーンズ夫妻を説得して、シャルドネやリースリングを引き抜いて、コルテーゼ、ドルチェット、バルベーラなど25種のイタリア品種をに植え替えてもらいました。

ブロック・セラーズはRuth Lewandowski WinesやRyme Cellarsといった友人のワイナリーとFox Hillのブドウを購入し、いつかは畑を共同で購入することも視野に入れていました。ただ、サム・ビルブロがメンドシーノのヨークヴィル・ハイランズにLost Hills Ranchという畑を購入したことで、その計画からははずれてしまいました。

ストーンズ夫妻は3年ほど前に亡くなり、ブロック・セラーズが畑の管理を任されるようになりました。その間も遺族と交渉を続け、ようやく契約にこぎつけたわけです。

ブロック・セラーズは畑の購入後、Frapatto、Cataratto、Grilloといったシシリー島のブドウを植えたとのこと。今後も他のワイナリーにもブドウを売りつつ、自社ワインに使っていくようです。また、畑の脇に醸造設備を持つ(今は古い設備が置いてある)計画もあるようです。
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Date: 2023/0525 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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NVV
ナパヴァレー・ヴィントナーズが主催する「ナパヴァレー・ヴィントナーズ・リーダーシップ・プログラム」の第3期が始まりました。これは大火やコロナという大きな災厄を迎えた後の2021年から始まったプログラムで9カ月間、カスタム・メイドで様々なプログラムに取り組んでいきます。

ナパヴァレー・ヴィントナーズのリンダ・リーフCEOは「ナパヴァレーの成功は、先見の明のあるリーダーたちのおかげです。2020年以降、私たちは団結し、未来に投資し、伝統を確実に継承する必要があると考えました。私たちはナパヴァレーを今日の姿にするのに貢献してきたコア・バリューを浸透させたいだけでなく、より広範で多様な関与とより深い行動を促し、私たちの象徴的なナパヴァレーの次の最高の章を書くことによってそれを超えていきたいと考えています」と語っています。

参加者のグループはプログアムが終わるまでに、共同のプロジェクトを立ち上げます。第2期のメンバーは、ナパヴァレーでの雇用を推進するためのDream.Work.Napaというプロジェクトを始めました。

今回の参加者は以下の12人です。
Kale Anderson, Kale Wines
Michael Baldacci, Baldacci Family Vineyards
Derek Baljeu, Knights Bridge Winery
Sally Johnson Blum, Tamber Bey
Kelly MacLeod, Hudson Vineyards
Shannon Muracchioli, Sequoia Grove Winery
Ryan Pass, Farella Vineyard
Mailynh Phan, RD Winery
Suhayl Ramirez, Trois Noix
Matthew Sharp, Shafer Vineyards
Molly Sheppard, Spottswoode Estate Vineyard & Winery
Wesley Steffens, Vineyard 7 & 8

地域の生産者団体がこのように人材の育成に取り組んでいるというのは、かなり画期的なものであり、すごいことだと思います。CEOのリンダ・リーフさんには4月にナパに行ったときにお目にかかりましたが、見るからに「切れる人」という感じを受けました。今回のプログラムに参加しているKale WinesのKale Andersonさんは来月日本に来ますので、このあたりの話も聞けたら面白いかなと思っています。
Date: 2023/0524 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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「パリスの審判」で白ワインの1位になったシャトー・モンテレーナのシャルドネを作ったマイク・ガーギッチ。その後、ガーギッチ・ヒルズを立ち上げて今に至ります。今年4月1日に100歳を迎え、先週記念のイベントが開かれました。
Mike Grgich

たまたま5月22日にTwitter Spaceでパリスの審判を描いた映画「ボトル・ドリーム」の話をしたのですが、映画の中で大きなポイントになっているのが、試飲会に出すつもりのワインが茶色に変わっていてワインを捨てかけたというエピソード。実はこの映画の原題は「Bottle Shock」となっていて、そこからもこのエピソードがポイントであることがわかります。

Spaceのトークはこちらから聞けます。

トークの中で、この茶変エピソードが本当にあったのか質問されたのですが、パリスの審判の本にはそういった話は出てこないので、実際に1位になったワインではないのではないかと回答しました。

冒頭に戻って、ガーギッチ100歳のイベントの中でパリスの審判のワインの前年の1972年シャトー・モンテレーナ・シャルドネが振る舞われたそうです(Mike Grgich Celebrates his Century in Style | Wine-Searcher News & Features)。そこで明かされたのが、そのワインが実際に茶変したことがあったという話。それが映画の制作者に伝わったのかどうかは不明ですが、完全に作ったエピソードというわけではなかったようです。

ところで、映画にはそもそもマイク・ガーギッチは登場しません。オーナーのジム・バレット、息子で後を引き継いだボー・バレット、アシスタント・ワインメーカーだったグスタヴォ・ブランビーラは実名で出てきたのに、です。

実はマイク・ガーギッチはジム・バレットと折り合いが悪く、特にパリスの審判で1位を取ってからは、その名誉をワイナリーのものとするジム・バレットと、自身の功績と主張するガーギッチとの間に大きな軋轢が生じ、それもあってガーギッチは独立したのでした。その確執は映画の撮影時にもなくなっておらず、映画には全く登場しなかったのでした。パリスの審判に関連した試飲会などでもモンテレーナかガーギッチのどちらかが出ることはあっても両方が出るということは一度もありませんでした。

ただ、2013年にジム・バレットが亡くなり、ガーギッチがサンタ・ローザの新聞「プレス・デモクラット」で彼を称賛したことで、実質的に和解した形になりました。今回のイベントにもボー・バレットが参加しています。さらに今回は、不仲で知られたマイケル・モンダヴィとティム・モンダヴィの兄弟もそろって出席し、昔話に花を咲かせるという異例の光景も見られたそうです。

ガーギッチ・ヒルズのシャルドネやフュメ・ブラン(ソーヴィニヨン・ブラン)はナパの白ワインの中でもトップクラスに入る高いクオリティのものです。改めて映画を見ながら、モンテレーナと飲み比べてみたりするのも面白いかもしれません。




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Date: 2023/0523 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Floraという極めてマイナーなブドウ品種の記事がSFクロニクルに出ていました。FloraはUCデーヴィスの有名な学者だった故ハロルド・オルモ氏がゲヴェルツトラミネールとセミヨンをかけあわせて作った品種。セミヨンの蜂蜜のような香りやゲヴェルツトラミネールの持つ花の香りを合わせもったようなブドウになることを目指して作ったものです。

元記事にはフローラを現在育てているのはナパのヨントヴィルにあるYount Mill Vineyardのみとなっていますが、2022年のクラッシュ・レポートによるとカリフォルニア全体で14.1トンのフローラの収穫があり、うち11.3トンがナパ産となっています。このほかサン・ルイス・オビスポ、サンタ・バーバラ、ヴェンチュラの3郡の中で1トン、シエラ・フット・ヒルズのあたりで1.8トンとごく少量作られています。

Yount Millの畑ではこの品種が発明された直後の1958年からFloraを植えているとのこと。最初の顧客はチャールズ・クリュッグだったそうです。

そして、1972年からこの品種を買っており、最大の顧客となっているのがシュラムスバーグ。この品種のアロマティックな性質が、デザートワインに向いていると考え、ドゥミセックのスパークリングに採用しています。
Flora
残念ながらこのワインは国内輸入がないようです。

このほかマサイアソンのヴェルモットでも使われています。日本でも販売されていた「No.4」という4回めに作ったヴェルモットでも80%がFloraです。ワインの説明には以下のように書かれています。

まず、私たちのベルモットは、ワインが主役です。ベースとなるワインは80%がフローラです。フローラという品種は、1950年代に伝説的なハロルド・オルモがUCデイヴィスで育てたものです。フローラはセミヨンとゲヴェルツトラミネールの交配種です。今となってはオルモに直接質問して私たちの説を確かめることはできませんが、彼が酒精強化ワインのために特別に作ったものだと確信しています。カリフォルニアのワイン産業は、この種のワインから遠ざかり、フローラは幻の存在になりました。しかし、ヨント・ミル・ヴィンヤードの有機農法で栽培されたフローラがまだ存在すると知り、私たちはすぐに果実の提供をお願いに行きました。通常、私たちはすべての果物を自家栽培していますが、この希少で歴史的な品種からワインを造るという誘惑には勝てませんでした。

このほかZDがロゼを作り、栽培家であるHoxsey-Onyskoが「Elizabeth Rose」というブランドで白ワインを作っています。

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シュラムスバーグのクレマン・ドゥミセックはワイナリーの売上のわずか2%でしかありませんが、熱烈なファンが付いているそうです。また、これは非常に長熟なスパークリングにもなるとのこと。

マサイアソンのヴェルモットは試飲したことがあって、とても美味しかった記憶はありますが、こんなマニアックな品種を使っているとは知りませんでした。次に輸入されたらぜひ飲んでみたいと思います。
Date: 2023/0522 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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2023年春に、ナパのロンバウアーがついにピノ・ノワールを発売しました(Why Rombauer Vineyards Traveled To Monterey To Source Grapes For Its New Pinot Noir)。それにまつわる記事がFotbesに出ていたので内容を紹介します。

ついに、というのはロンバウアーといえば有名なのはシャルドネであり、シャルドネを作るワイナリーは合わせてピノ・ノワールを作ることも多いからです。

ロンバウアーはナパの一番南にあって冷涼なカーネロス地区にシャルドネの畑を数多く持っています。しかし、ピノ・ノワールはそれらの畑ではなく、南に3時間ほども離れたモントレーのサンタ・ルシア・ハイランズから調達しています。

ロンバウアーはピノ・ノワールを作り始めるにあたって北はオレゴンから南はサンタ・バーバラまで探して歩きました、その中でロンバウアーの顧客の反応が一番よかったのがサンタ・ルシア・ハイランズでした。

ピノ・ノワールを作り始めるにあたり、コンサルタントを依頼しました。シドゥーリ(現在はジャクソン・ファミリー傘下)のワインメーカーとしてピノ・ノワールで一世を風靡したワインメーカーです。彼のつてもあり、サンタ・ルシア・ハイランズの中でも人気の高いGarys'、Sierra Mar、Rosella's、SoberanesのGary Franscioni家が管理する4つの畑のブドウ、さらにSirra Marのすぐ近くにあるLemoravoの畑のブドウを使っています。

ブドウは夜のうちに収穫し、朝早くナパのワイナリーに運びこまれます。そこで選果をした後、醸造に移ります。ちなみにロンバウアーはカーネロスに白ワイン専用のワイナリー、シエラフットヒルズにジンファンデルなどのワイナリーも持っています。

冒頭に戻って、なぜカーネロスに多くの畑を持ちながらそこでピノを作らないのかということですが、ロンバウアーにとってはシャルドネが何よりも重要な品種になっています。それだけにカーネロスの畑はシャルドネに専心したいということです。
Date: 2023/0520 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパの最後のディナーで、オーパス・ワンのワインメーカーであるマイク・シラッチさんから聞いた話のメモを載せておきます。といいつつ、すでにうろ覚えですが(汗)。

マイク・シラッチさんがオーパス・ワンに入ったのは2001年。2004年にロバート・モンダヴィが経営破綻し、コンステレーション・ブランズに売却されます。それ以降、ワイン造りの指揮を取っています。2000年前後はワインの評価もあまり芳しくないときがありましたが、マイク・シラッチさんになってからは品質も安定し、評価もよくなっています。

このディナーのときに飲んだオーパス・ワンは2007年だったのですが、この年は初めて無灌漑に挑戦した年でした。その結果は収穫量は相当減ってしまい「災害一歩手前だった」とのことですが、ワインのでき自体は素晴らしいものでした。現在はどうかというと、「完全無灌漑ではやっていない」。畑のブロックによって状況に応じて灌漑はしているとのことです。

マイク・シラッチさんになって品質が上がったのはどうしてか、という不躾な質問をしてみました。ちょっと苦笑いをしながら答えてくれたのは畑のクルーが安定したのが理由ではないかとのこと。オーパス・ワンには畑のクルーが16人ほど常勤でいます。人手が必要なときには臨時のワーカーも入るそうですが、基本的には常勤のワーカーが畑を管理しています。剪定方法としては長梢剪定を採用していまう。理由は自由度が高いこと、カビ害などを防ぎやすいこと、ワーカーが樹を1本1本ケアできることを挙げていました。

オーパス・ワンの畑はワイナリーの周囲のほか、ハイウェイ29を渡ったト・カロン・ヴィンヤードの中に「ト・カロン・ノース」と「ト・カロン・サウス」の2つのブロックがあります。ノースの方はカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フラン、プティ・ヴェルド、サウスの方はカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロー、プティ・ヴェルドが植わっています。ワイナリーの周囲は6つのブロックに分かれており、ナパ・リヴァーに近い東の方はメルローが多いようでした。メルローは粘土質を好み、やや水はけで劣る東のブロックに向いているようです。逆にカベルネ・フランは石が多い土壌を好むとのことでした。

温暖化への対応をどう考えているか聞きました。それでシラッチさんが描いてくれたのが下の絵です。

ブドウを植える列の向きをこれまで南北方向だったのを34°傾けるとのこと(先日の配信では15°とか適当なことを言ってました、すみません)。これによって西日の当たり方を弱くするそうです。
また、列と列の間隔をこれまで1mだったのを1.8mと広くします。これは水不足に対応して樹のストレスを和らげるためです。

これらは今の樹を抜いて植え替えないと行けないので、一気に行うことはもちろんできず、少しずつやっていくのでしょうけど、普通のワイナリーではなかなかリスクが取れないのではないかとも思います。オーパス・ワンだからできることでもあるし、オーパス・ワンが常に挑戦を続けていることの証でもあるように思いました。

このほか、オーガニック栽培(オーパス・ワンはビオディナミを採用しています)の話なども質問しましたが、メモが読み取れないので、報告は以上です。
Date: 2023/0517 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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bliss
マイクロソフトのパソコン用OSとして2000年代に使われていた「Windows XP」。その標準の壁紙画像として使われていた草原の写真はカリフォルニアのロス・カーネロスで撮られたものでした。日本語版では「草原」というタイトルですが、英語版では「bliss=至福」というタイトル。一種夢のようなきれいな風景です。

Wikipediaには以下のように説明があります。
この写真は1996年6月24日に、元ナショナルジオグラフィックの写真家で、ナパ郡セントヘレナに在住するチャールズ・オレアによって撮影された。オレアによれば、この画像にはデジタルによる強調や修正は施されていない。この写真はカリフォルニア州道12号・121号沿いから中判カメラのマミヤRZ67で撮影された。撮影した位置は北緯38.248966度 西経122.410269度である。オレアはナパバレーにおけるワイン造りに関する写真を撮ろうとしていたが、当時この丘にはブドウの木は植えられていなかった。後に、この一帯はブドウ畑になった。
草原 (画像) - Wikipedia

この場所をGoogle Mapのストリートビューで見ると、ブドウ畑になっていることがわかります。丘の形などは変わっていないのも見て取れます。
Google Mapストリートビュー
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ストリートビューの写真は撮られた時期で選べるようにもなっています。今の写真は春先で全体に茶色がかっていますが、もっとブドウの葉が茂った状態だとXPに近い感じもあります。

また、Google Mapには投稿写真も付いており、かなりXPの壁紙に近い雰囲気の写真もありました。
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カーネロスはこのようになだらかな丘がいくつも重なりあうように並んでいます。「ローリング・ヒルズ」と呼んでいます。これによってブドウにも様々なマイクロクライメットが生じます。土壌も、粘土質を基調としながら火山性の土壌もあり、それによって適したブドウ品種も変わってくるようです。また、この場所はブドウ畑になりましたが、牧畜も盛んなので、草原のままのところもかなり残っています。
Date: 2023/0513 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのラザフォードにあるケークブレッド・セラーズ(Cakebread Cellars)が創業50周年を迎えました。

ケークブレッドは写真家だったJack Cakebreadが設立したワイナリー。「Cakebread」とは美味しそうな名前ですが、本名なのです。Jackは有名なAnsel Adamsの薫陶を受け、ナパに写真を取りに行ったところ、そこが気に入ってしまい、いつかはワインを作ろうと決意しました。それを、Rutherfordに住む知り合いに伝えたところ、その日のうちにその知り合いから電話がかかってきて、そこを買い取ることになりました。1972年のことで、翌1973年からワインを作り始めました。以来、家族経営を続けています。

50周年を記念して、いくつかの記念ワインを出していく予定です。最初のワインはシャルドネ。ワイナリーで最初に作ったのがシャルドネだったからです。ケークブレッドの持つカーネロスの4つの畑の単一畑ワインをセットにしました。ワイナリーおよび、ウェブサイトで購入できます。

Buy 50th Anniversary Chardonnay Selection | Cakebread Cellars
Date: 2023/0512 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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パソロブレスのワイン観光が勢いを増しています。2022年のパソロブレスの宿泊税収入は前年の40%増しであることがっ判明しました。2021年3月から2022年9月までの19カ月間、パソロブレスでは宿泊税が前月比で増加しました。その後、ペースは平準化していますが、2023年度は前年を上回るペースで推移しています。

2022年に郡全体の観光産業は8億6500万ドルの収益を上げました。郡内の旅行支出は21億5000万ドルに達し、1億1600万ドルの地方税収を生み出しました。コロナ前の約93%の水準に戻ったといいます。
マップ

さらに、2023年には60ページの「ワインカントリーガイド」を発行します。Wine Follyが2022年に作ったデジタルガイド(Paso Robles Wine Guide | Wine Folly)をベースに作られました。パソロブレス・ワイン・カントリー・アライアンスという業界団体に所属する約200のワイナリーすべての情報が入っています。5月15日以降、Pasowine.comおよびWinefolly.comで購入できます。
Date: 2023/0511 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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イタリアのマルケーゼ・アンティノリがナパのスタッグス・リープ・ワイン・セラーズの最大株主になりました(Marchesi Antinori to Take Over Full Ownership of Stag's Leap Wine Cellars)。
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ウォーレン・ウィニアルスキが1970年に設立したスタッグス・リープ・ワイン・セラーズは1973年に作ったカベルネ・ソーヴィニヨンが1976年のパリ・テイスティングで1位になったことで、世界にその名が知られました。2007年にウィニアルスキが引退のため、ワシントンのシャトー・サン・ミシェルとマルケーゼ・アンティノリに売却しました。売却金額は1億8500万ドルと言われています。当時はアンティノリの持ち分は15%でした。

サン・ミシェルとアンティノリはワシントンのコル・ソラーレ(Col Solare)でもパートナーを組むなど、深い関係を持っています。

一方でサン・ミシェルは近年業績があまりよくなく、2021年には投資会社のシカモア・パートナーズに売却されました(ワシントンに激震!? シャトー・サン・ミシェルの売却)。なお、サン・ミシェル傘下のワインはワシントン州の2/3を占めるほど絶大な影響力を持っており、同社の業績が、ワシントン全体のワイン産業の浮沈につながっています。

その後、ワシントンの事業により注力するために今回の売却になったようです。アンティノリは元々スタッグス・リープ・ワイン・セラーズを購入したときのパートナーでしたから、自然な買い手だったとのこと。アンティノリはこれで85%を所有することになりました。

なお、アンティノリのカリフォルニアでの活動は、ナパのアトラス・ピークに始まり、現在はアンティノリ・ナパ・ヴァレーというワイナリーを保有しています。当初はサンジョヴェーゼの栽培を狙っていましたが、現在はカベルネ・ソーヴィニヨンなどを作っています。


Date: 2023/0510 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ダックホーンの親会社であるダックホーン・ポートフォリオが、ソノマのアレキサンダー・ヴァレーにあるワイナリーとブドウ畑を購入したと5月4日に発表しました(The Duckhorn Portfolio, Inc. (NAPA) Acquires North Coast Winery and Vineyards)。

畑は7エーカー超でカベルネ・ソーヴィニヨンが植えられています。買収のメインはワイナリーで、最先端のワイン醸造の設備を備えており、他社への醸造や保管、瓶詰めの委託を減らすことができるとのことです。買収額は5500万ドルと発表されています。

売り主はE & J Galloで、以前はクロ・デュ・ボワ(Clos du Bois)の施設だったところです。2021年に完了したコンステレーション・ブランズからガロへのブランド移管によって、ガロのものとなっていました。
Date: 2023/0509 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパツアーの記事のおまけです。今回、約20名の方々と一緒にツアーに参加しました。以前からよく知っている方もいらっしゃいましたし、今回初めてお会いする方もたくさんいました。

思い起こしてみると、2016年にもこのExperience Napa Valleyのツアーに参加させていただき、同じように20人近くの方とご一緒しました。そのときは知っている方もほとんどおらず、かなりドキドキでの参加でしたが、ここで知り合った方との結びつきは今でもとても大きなものになっています。

例えば立花峰夫さんと知り合ったことがきっかけでアカデミー・デュ・ヴァンで講師をするようになりました。講師をしていなかったら、今年ベスト・エデュケーターに選ばれることもなかったわけで、改めてそういった縁のおかげと思っています。

今回ご一緒した方々とも、これから先、いろいろな縁が続いていくだろうと思います。ツアー自体の素晴らしさはもちろんのこと、人との関わりという点でも意味の大きなツアー参加でした。

それから、ナパヴァレー・ヴィントナーズの方々の様々な努力にも改めて感謝します。若下さんとは前回のツアーでも一緒でしたが、今回は初めて小枝絵麻さんとも長い時間を共にして、二人が名コンビであることがよくわかりましたし、米国側の担当者であるコナーには、細かな気遣いなど、ちょっと惚れちゃいました(笑)。

もう一つ、今回はナパヴァレー・ベスト・エデュケーターとしての参加で、同じくベスト・ソムリエ・アンバサダーに選ばれた山田琢馬君とも初めて長い時間を共に過ごしました。すごく勉強熱心で、気持ちのいい青年。しゃべりも上手です。親子ほども年齢は違いますが、なかなかいいコンビになれると思います。

下はコナーからのメッセージカード。最後の日にホテルの部屋に届けられていたものです。印刷された「Matsubara-san」をわざわざ「Andy」と書き換えてくれるところにも気配りを感じたのでした。
Date: 2023/0507 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Date: 2023/0507 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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もりだくさんのイベントもいよいよ最後のディナーです。最後は「ナパヴァレー・ライブラリー・ワイン・ディナー」と称し、オーパス・ワン(Opus One)やコルギン(Colgin)などナパを代表する名ワインが振る舞われるディナーです。しかも各ワイナリーからワインメーカーなどが直々に列席し、話を聞けるというこの上ない贅沢なものです。

会場となったのはクインテッサ(Quintessa)です。ラザフォードに広大な自社畑を有し、貯水池まで持っています。

もう、この美しさだけですごいですよね。今回は建物の中はほとんど見られなかったのですが、テイスティング・ルームなどもとてもいいそうです。またゆっくり来たい。

で、ウェルカムワインがQuintessaのソーヴィニヨン・ブランIlluminationの2021年だったのですがこれがまたきれいで美味しいのです。今回ウェルカムワインでソーヴィニヨン・ブランを何回もいただきましたが、その中でも特筆できる美味しさでした。

ワインとディナーにいらっしゃった方を紹介しておきましょう。
コルギンは2006年のIX Estateです。マスター・ソムリエで共同CEOのポール・ロバーツさんが来場予定でしたが、急な事情で今回はダニエルさんという方の参加となりました。


ダラ・ヴァッレ(Dalla Valle)は2013年のマヤ(Maya)。いらしたのは今のワインメーカーのマヤさん御本人です。これまでオンラインミーティングでしゃべっているところを拝見することはありましたが、言葉を交わすのは初めてです。ちょっとクールですが、予想以上に気さくな方でした。日本にも実は毎年2回くらい来ているそうです。お母様の実家の神戸やスキーで北海道などに。

自分と一緒の写真を撮ってもらうことは少ないのですが、今回は例外です。

次はグレース・ファミリー(Grace Family)。ワインは2006年のグレース・ファミリー。いらっしゃったのはワインメーカーのヘレン・ケプリンガーさん。ヘレンさんももちろん会うのは初めて。来年くらいには日本に来たいそうです。席が遠くてあまりお話はできませんでしたがエレガントで素敵な方でした。


オーパス・ワンからは2007年のオーパス・ワン。いらっしゃったのはワインメーカーのマイケル・シラッチさんです。

2007年は初めて無灌漑での栽培に挑戦した年だったとのこと。ただ、無灌漑はいろいろ大変で収穫量も減り、今ではやっていないそうです。マイケル・シラッチさん、紙の名刺は持たず、オンラインの名刺にアクセスするQRコードを見せてくれるというなかなかユニークな方。料理の写真もスマホで撮っていましたし、意外とネット好きなのかもしれません。大物で最初はちょっと取っつきにくい感じもありましたが、細かい質問も嫌がらずに丁寧に教えてくださいました。

クインテッサからは2014年のクインテッサ。そして2016年のイルミネーションも供されました。出席されたのはワインメーカーのレベッカ・ワインバーグさん。珍しくちょっとシャイな感じの方でした。クインテッサからはジェネラルマネージャーのロドリゴ・ソトさんも。オンラインミーティングでは何回かお会いしていたのですが、リアルに会うのは初めてで、今回とても会いたかった人の一人だったので嬉しかったです(その割に写真撮るの忘れましたが)。


シェーファー(Shafer)は2012年のヒルサイド・セレクト。いらっしゃったのはワインメーカーのイライアス・フェルナンデスさん。ダグ・シェーファーさんとは何度もお会いしていますがイライアスさんとは初めて。あまり表に出て来ないのは人付き合いが好きじゃないのかと思っていたのですが、むしろ真逆でした。うるさいほどに(笑)よくしゃべる人。面白かったです。


最後にスポッツウッド(Spottswoode)からは、あえて難しい年だった2011年のスポッツウッド。いらっしゃったのはワインメーカーでヴィンヤード・マネージャーでもあるアーロン・ワインカウフさん。ご挨拶くらいしかできなかったのがちょっと残念でした。


料理ももちろん美味しかったのですが、ワインに圧倒されてあまり記憶にありません。




ワインの説明や感想を記していきます。

クインテッサのソーヴィニヨン・ブラン、イルミネーションはウェルカム・ドリンクの2021年のほか、2016年のワインが食事のときに供されたのですが、これがまた2021年を超えて美味しかったのです。熟成によって、酸は少し落ち、オレンジのような風味に白い花の香り、濡れた石や草のニュアンスも少しあります。ナッツの風味も加わり複雑さは倍増です。私がこれまで経験したソーヴィニヨン・ブランの中では間違いなくトップクラスの味わいでした。

2006年のグレース・ファミリーは何よりもエレガントさが際立っていました。重さを感じないワイン。赤黒果実に熟成によるハーブやきのこの風味も。

2006年のコルギンIX(ナンバーナイン)エステートも、リッチでグリップのある味わいですが、こちらも重くなくきれいなワイン。香りが素晴らしく、ミネラル感も感じます。

2007年のオーパス・ワンは前述のように灌漑なしに挑戦した年でしたが「災害一歩手前」だったそうです。翌2008年も収量少なく、現在は灌漑なしはやめています。この年のもう一つの特徴がプティ・ヴェルドをカベルネ・ソーヴィニヨンと一緒に発酵させるようになったこと。互いにいいところを引き立て合うようになったそうです。2001年からオーパス・ワンで働いているマイケル・シラッチさん、「誰のためにワインを作っているのか?」と聞かれたときには「2人いる。ロバート・モンダヴィとロスチャイルドだ」と答えたそうです。これには感動している人が多くいました。
ワインの味わいは、バランスの良さがともかく秀逸。どこをどうとってもよくできているワインです。本当に素晴らしい。熟成したオーパス・ワンは久しぶりでしたが、感服しました。

スポッツウッドはあえて難しい年の2011年でした。アーロン・ワインカウフさんがワインメーカーになって初めて作ったワインとして持ってこられました。非常に香り高く、これもきれいなワイン。シェーファーのイライアスさんは、自分のスピーチのときにまず最初に「彼がワインメーカーとしての最初の年が、この困難な年で、これだけ素晴らしいワインを作ったことを称えたい」と言ったほどです。

そのシェーファーは2011年の次の年の2012年。別の意味で難しい年で、収量が非常に増えてしまい、結果としてクオリティが伴わなかったワイナリーが多く出てしまいました。2011年が非常に収量が少なかったので、それを補おうという面もあったと思います。シェーファーではかなり収量を切り詰めることでクオリティを維持しています。1984年にシェーファーに入り、今年でもう40年目になるというイライアスならではの安定したワイン造りが伺えました。タバコやスパイスなどの複雑な風味がでてきてよかったです。

ダラ・ヴァッレのマヤはカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランのブレンドで、カベルネ・フランが40%程度入ります。ナパのカベルネ・フランの可能性を示した最初のワインとも言われており、ロバート・パーカーが100点を付けた2つ目のカリフォルニアワインとしても知られています。2013年は前のワインメーカーのアンディ・エリクソンの時代のもの。これも香りの豊かさとエレガントさが際立っていました。

クインテッサは2014年のワイン。ここは前述のようにかなり広い畑を持っており、土壌の要素も場所によって様々に分かれています。それらをブレンドすることですばらしいワインを生み出しています。非常に複雑味のあるいいワインでした。


最後に参加者一同から列席した方々や、すべてのアレンジをしてくれたナパヴァレー・ヴィントナーズの方々に感謝を述べて、お開きになりました。
Date: 2023/0505 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ヴィノテラスワインスクールがやっている、ブラインドテイスティングのYoutubeが面白いです。3人の一流テイスターが、銘柄を伏せたワインを試飲し、品種、生産国、ヴィンテージ、価格を予想します。ぴったり当てれば2点(品種は3点)、近ければ1点、はずれれば0点で点数を加算していく形になります。
Blind Wine Tasting - YouTube

登場しているのはこの3人。日本ソムリエ協会のブラインドテイスティングコンクールで2回優勝している大蔵野さん、Youtubeチャンネル「ソムリンTV」の浦川哲也さんと小野塚悠也さん。小野塚さんは昨年の上記コンクールで決勝進出などさまざまな大会に出ています。
おおくらの
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この3人がワインを試飲しながらワインを表現し、品種や国名などを理由を含めて推測していきます。普通のブラインドテイスティングの大会では考えている過程はわからず結果だけが提示されますが、この動画ではどう考えているかを明らかにしているのが面白いところです。しかも、その最終回答を含めてしゃべった内容は自分だけでなく他の2人にも聞かれるので、ある意味カンニングありみたいな形になります。

2回目の動画ではオー・ボン・クリマのサンタ・バーバラのピノ・ノワールが登場。
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さすがに品種は全員正解。面白かったのが価格のところで、このワインの定価3900円に対して3人の回答は6000円、5600円、7500円。1.5倍から2倍近くの価格の予想となりました。それだけオー・ボン・クリマのピノ・ノワールのレベルが高いということですね。カリフォルニアワインファンとしては嬉しいところです。





ちなみに、国内市場では、このサンタ・バーバラ・カウンティものよりも「ツバキ・ラベル」や「ミッション・ラベル」の方がよく見かけると思います。どちらも日本向け専用のキュヴェで日本食に合うような味わいになっています。ツバキ・ラベルの方はJALUXが輸入しており、ミッション・ラベルは中川ワイン。ツバキ・ラベルは上記ワインと同様サンタ・バーバラ・カウンティ表記になりますが、ミッション・ラベルの方はラベルには記載していないものの中身はビエン・ナシードの単一畑とかなり高級です。価格もちょっとだけ高くなります。


Date: 2023/0504 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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最終日のランチはセント・ヘレナにあるPRESS Napa Valley。2023年1月にミシュラン一つ星を獲得したレストランです。ナパのワインのコレクションでは世界一とのこと。ワイナリー「Rudd」が設立したレストランで、かつてはステーキハウスだったのをモダンな料理のレストランに変化させています。


今回はこのレストランを我々のグループで貸し切りです。というのはなんと、厨房に入れてもらって、シェフ自ら料理教室をしてくれるというのです。これには驚きました。シェフはフィリップ・テシエ。ボギューズ・ドールという世界最高の料理コンクールで2015年に2位に輝いています。

教えてくれるのは、ここの代表的なメニューの一つであるヌーディ(Gnudi)。Gnudiを検索するとイタリアではラビオリの中身だけといった料理のようですが、ここのヌーディは一種のパスタ。材料は特別なものではありませんが、手間暇かけて素晴らしい料理に仕上げます。

材料は自家製のレモン風味リコッタチーズとパルメザンチーズ、卵黄、タピオカ粉、乳製品ベースの粉、色止めの酸、塩です。基本的にはこれをミキサーでミックスし、ピンポン玉大に丸めて指の腹でつぶし、小麦粉の中に入れて丸1日冷蔵庫で保存します。最初は柔らかかったのが、これでゴムのような弾力になり、周りの粉をきれいに取ったら完成です。

難しいところはないですが、ひびが入らないようにきれいに丸めるには打ち粉を付けすぎないようにする、きれいに粉を払うなど、気を使うところはいくつかあります。また何より1日寝かせるため時間はかかります。これを1日200個くらい作るそうです。

レストランで実際に料理として供するときは、これを3分蒸して、季節ごとのアレンジで提供します。下ごしらえは手間がかかりますが、料理を出すときは3分で用意できる手軽さもレストランにとってはいいとのこと。春から秋はカボチャ系の花でくるんだようなアレンジをするそうですが、今年は寒くて遅れているので冬から続いているマッシュルームのアレンジです。マッシュルームの出汁を取り、トリュフで風味を付けます。Gnudiの上には飾りで薄切りのマッシュルームを載せ、マッシュルームとトリュフのソースは客席でかけます。このようにシンプルな食材で手間を掛けて少しだけ高級なものを使ってほかとは違う料理にするのがこのレストランの趣向だそうです。

グループに分かれてワイワイとGnudiを作ります。混ぜる人、粉をはたく人と分担して楽しく料理(のマネごと)をしました。

料理教室の後はセラーの見学です。
ここの初代のソムリエは前の日の「レジェンドワインメーカーたちが語るナパカベの歴史」でモデレーターを務めていたケリ・ホワイトさん。「Napa Valley Now & Then」という大著の著者でもあります。彼女がナパでもナンバーワンのワインリストを作り、現在はマスター・ソムリエのヴィンセント・モローさんが引き継いでいます。ワイン・スペクテーターのグランド・アワードという最高の賞も受賞しています。



セラーは3カ所に分かれていて、2600本を超えるコレクションがあります。

これは1935年のSIMIのワイン。9500ドル。

一番高価なワインはこれ。「パリスの審判」で1位になったスタッグス・リープ・ワイン・セラーズの1973年のカベルネ・ソーヴィニヨン。35000ドルです。

ここのワインリストはこちらで見られます。
View Wine List

セラー見学の後はいよいよ食事です。

料理では先程のGnudiも。もちろん我々が作ったのではありません(シェフは明日お店で出すとジョークを言っていましたが、おそらくスタッフの口に入ったのではないかと)。食感が面白く、トリュフマッシュルームのソースも絶品でした。

それ以外にはTruffle Glazed Chickenという名物料理もとても美味しかったです。

シンプルな鶏の胸肉のローストのように見えますが、実は身と皮の間に旨味の多いチキンの脚などを使ったペーストが挟まれており、見た目と比べて遥かに複雑な味わいでボリュームもあります。これも準備に2日間くらいかかるという手の込んだ逸品。Gnudi同様、シンプルな食材に手間をかけて少し高級な食材でアクセントを付けた料理になっています。

もちろん、今回もすばらしいワイナリーの代表者やワインも一緒です。今回のワイナリーはダリオッシュ(Darioush)、パイン・リッジ(Pine Ridge)、ラッド(Rudd)、シルバーオーク/トゥミー(Silver Oak/Twomey)の4つです。


今回のツアーでは白はオープニングの立ち話をしながらの談笑時間に飲むことが多く、あまりちゃんとコメントが書けていないのですが、このランチではRuddとTwomeyのソーヴィニヨン・ブランが対照的で面白かったです。Ruddの方はMt. Veederのブドウを使っておりフレッシュ感とミネラル感があり、Twomeyはナパとソノマのブドウをブレンドすることで、豊かな酸とリッチな味わいを持っています。どちらも美味しい。
ナパでヴィオニエのイメージはあまりないと思いますが、今回はシャペレーで素晴らしいヴィオニエを飲み、このランチでもDarioushのヴィオニエとPine Ridgeのヴィオニエとシュナン・ブランのブレンドを飲みました。Darioushはとにかく華やか。白い花の香りやトロピカル・フルーツの香りで「アロマティック」という言葉そのままに感じます。Pine Ridgeのヴィオニエ+シュナン・ブランは以前から好きなワイン。日本でも安いところでは1000円台というコスパの良さも抜群です。



赤はまずはシルバーオークのカベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー2018。説明不要かと思うくらい有名で人気のあるワインですが、長年スタイルを保ちつつ進化もしているのが素晴らしいと思います。シルバーオークはアメリカンオークの樽を使うことで知られており樽のメーカーも持っているほど力を入れていますが、決して樽香が強すぎるわけではなく、ボディも酸もきれいなレベルでまとめています。また、このヴィンテージからはラベルを変更しています。

以前はボトルにエッチングを施していたのですが、カーボンフットプリントの観点からはあまり良くないと考え、シンプルな紙のラベルに変えたのです。シルバーオークは環境保全への取り組みでも先進的であり、その姿勢がここにも現れています。

Pine Ridgeは、前回のナパ訪問のときにワイナリーにも行っていますが、スタッグス・リープ・ディストリクト(SLD)に4つの自社畑を持っています。今回はそのSLDのカベルネ・ソーヴィニヨン2019です。ドライプルーンなど青系の完熟した果実の風味やリコリスなど、やや甘やかさがあります。完熟した果実の風味というのはSLDの特徴とも言えるでしょう。かなり強いタンニンがありますが、非常にこなれています。これもSLDの特徴の一つで「鉄の拳を持った貴婦人」などと称されています。総じてSLDらしさの出た美味しいワインでした。このワインはこれまで輸出には出していなかったのですが、今後日本に入ってくることになりそうです。

Ruddからは2019年のSamantha's Cabernet Sauvignon。オークヴィルにある自社畑からのセレクションで、若いうちから飲みやすいスタイルに仕上げています。ナパらしい果実を前面に出したスタイルを目指し、新樽率は51%、エレガントで複雑さも持つワインに仕立てています。果実味が非常にきれいなのが特徴でリッチで洗練された雰囲気がいかにもオークヴィルです。

DarioushからはMt.VeederにあるSage Vineyardという自社畑の赤ブレンド。良年しか作られないワインで、これは2019年です。75%カベルネ・ソーヴィニヨン、15%カベルネ・フラン、10%メルロー。山カベらしいしっかりとしたストラクチャーが出たワイン。

4ワイナリーそれぞれの特徴やAVAの特徴も出た素晴らしいワインばかりでした。料理もワインも堪能。
この後はホテルに戻って1時間半ほど自由時間の後、いよいよクライマックスのディナーを迎えます。
豪華なランチを食べたばかりで、今度はディナー? と思われそうですが、そうなのです。強靭な胃袋が必要です。
Date: 2023/0503 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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SLD Collabo
ナパのスタッグス・リープ・ディストリクトにおける生産者団体「The Stags Leap District Winegrowers Association(以下ではSLDワイングロワーズ)」は2023年10月に「2021 STAGS LEAP DISTRICT CABERNET SAUVIGNON: A COLLABORATION」というワインをリリースすると発表しました。

これはSLDワイングロワーズによる初めての試みで、加盟する16ワイナリーすべてがワインを持ち寄り、それをブレンドして作るというスペシャルなワインです。シェーファーやクリフ・レイディ、スタッグス・リープ・ワイン・セラーズなどももちろんその中に含まれています。

ブレンディングを担当したのは以下の5人のワインメーカーです。
Michael Baldacci | Baldacci Family Vineyards
Robbie Meyer | Malk Family Vineyards
Robert Smith | Quixote Winery
Elizabeth Vianna | Chimney Rock Winery
Josh Widaman | Pine Ridge Vineyards

Pine RidgeのJosh Widamanは先日ナパでお会いした方の一人でもあります。

ラベルには木の枝のところに16個の番号が振られ、番号ごとにワイナリーの名前も記載されています。

チムニー・ロックのワインメーカーであるエリザベス・ヴィアンナは、「ワインメーカーとしての私の個人的な目標は、常に場所と時間の物語を語ることです。テロワール主導のワインを造るという哲学は私たち全員が共有していると思うので、スタッグス・リープ・ディストリクトの快楽的な質感、カベルネのフィネスと熟成感、2021年ヴィンテージのアロマと酸の圧倒的な美しさを強調する、ショーアップしたワインを造ることが目標でした」と語っています。

ワインはオンラインのみで販売され、1本275ドル。3本と6本のセットがあります。
Stags Leap District Winegrowers Association | Cabernet Collaboration
Date: 2023/0502 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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充実したナパツアーもいよいよ最終日です。この日の午前中はスタッグス・リープにあるシルヴァラード・ヴィンヤードでのテイスティングとセミナーです。

まず、最初に30分ほど「ディスカヴァー・プルミエ・ナパヴァレー・テイスティング」として、毎年2月に開催される業界向けのオークション「プルミエ・ナパヴァレー」についての説明と試飲がありました。説明をしてくれるのはなんと贅沢なことにアンディ・エリクソン。ナパヴァレー・ヴィントナーズの会長様です。


試飲したワインは2つ。どちらもプルミエ・ナパヴァレーに出したワインで5ケースしか作られていない超限定ワインです。

アンディ・エリクソンのFaviaからは2018年のリザーヴ・カベルネ・ソーヴィニヨンです。深い味わいで、旨味があります。産地のクームズヴィルは風化した火山性土壌が中心で、灰や粘土がミックスされており水はけがいいとのこと。ナパの中では比較的涼しく、それがワインにも現れているようです。
もう1本はシルヴァラードから。2021年のワインなので、ちょうど今年2月に出展したものです。これもクームズヴィルから。実はシルヴァラードはワイナリーのあるスタッグス・リープだけでなくクームズヴィルにも畑を持っています。このワインはカベルネ・ソーヴィニヨン70%にメルローを30%ブレンドしています。ボルドー右岸のワインをイメージして作ったとのこと。
このワインが実際に落札者に渡るのは、秋以降なので、これはいわゆるバレルサンプルです。若いワインだけあってかなりタニックですが、とにかく香りが素晴らしい。普通のシルヴァラードのワインと一風異なるものを試飲できました。
プルミエ・ナパヴァレーは、業界向けなので一般人は参加できませんが、だからこその特別なワインが素晴らしかったです。

セラーでの試飲の後は部屋に移動してセミナーです。今回のツアーで最後のセミナー形式でした。テーマは土壌とつなげて理解するカベルネ・ソーヴィニヨンということで、ナパの5つの地域のワイナリーからワインメーカーが参加しています。

まず、クームズヴィルからFaviaのアンディ・エリクソン、スタッグス・リープ・ディストリクトからはシルヴァラード・ヴィンヤーズのアリソン・ロドリゲス、オークヴィルのグロス(Groth)からはテッド・ヘンリー、セント・ヘレナのガリカ(Gallica)からはローズマリー・ケークブレッド、プリチャード・ヒルのブランド(BRAND)からマット・ジョンソン。そうそうたるメンバーです。モデレーターはマスターソムリエのデズモンド・エチャヴァリー。


5つのカベルネ・ソーヴィニヨンをテイスティングしながら、パネルディスカッション形式で話が進みます。
ワインは以下の5つ。
Favia Cabernet Sauvignon Coombsville 2018
Silverado SOLO Cabernet Sauvignon Stags Leap District 2018
Groth Reserve Cabernet Sauvignon Oakville 2018
Gallica Estate Cabernet Sauvignon St. Helena 2018
BRAND Napa Valley Cabernet Sauvignon 2019 (AVAではないがPritchard Hill)

最初の質問は「土壌の色とそれがワインのフレーバーにどのように出るか?」でした。

Faviaはクームズヴィルの3つの区画の畑からブレンドしています。土壌は鉄分が多い赤い土壌が中心ですが、圧縮された沖積土壌や白い火山灰、川が運んできた土壌もあります。クームズヴィルはカルデラであり溶岩に火山灰がミックスされていて涼しさと凝縮さがワインにあらわれています。

Silveradoのカベルネ・ソーヴィニヨン「SOLO」の畑はスタッグス・リープ・ディストリクトの北の方に位置しています。ヒルサイドと小さな谷があり、扇状地の部分はナパリヴァーの沖積物が中心となりますが花崗岩が風化した土壌もあります。ここから豊穣さとシルキーなテクスチャーが生まれ、標高の高さからパワーが生まれるとのこと。

Grothのオークヴィルは多様性がある土地ですが、Grothはヴァレーフロアと呼ばれる中央部に100エーカーの畑を持っています。沖積系の土壌が中心ですが、粘土質、砂質、チャートなどが見られます。ソーヴィニョン・ブランは粘土質のところに植えており、カベルネ・ソーヴィニヨンは粘土のないところに植えています。化石からのミネラル感が見られるとのこと。また、Grothのリザーブはヴァカ山系で鉄分が多い土壌で育てられ、フレッシュ・フルーツの風味があるとのことでした。

Gallicaはセント・ヘレナで沖積系で小石の多い土壌の畑です。扇状地に見られるコルティナと呼ばれる水はけの良い土壌です。セント・ヘレナは温かい地区であり台木が重要だとのことでした。Gallicaではセントジョージと10Rを使っているとのこと。

BRANDのあるプリチャードヒルはオークヴィルの東側の山地で火山性の土壌です。鉄分が多い赤い土壌で岩がゴロゴロしています。表土が薄く水はけがいい土地です。岩の割れ目に根が張り、ブドウの実は小さく凝縮したものになります。ワインはいきいきとした酸味やミネラル感が特徴です。

次の質問は各地区の温度に関するもの。日較差やそのワインに与える影響を聞いていました。

Faviaのアンディ・エリクソンによるとナパの北部のカリストガがFaviaのあるクームズヴィルでは夏の日中の気温が華氏4~5度(摂氏2~3度)違うとのこと。2022年の場合、オークヴィルの畑とは収穫が6週間も違ったとのことです。この涼しさは色やアロマティクスに影響しており、ハーブなどフルーツ以外の要素が大きくなるとのことです。

Silveradoのあるスタッグス・リープ・ディストリクトでは海からの冷却効果によって日較差が大きくなります。この4月だと最低気温が摂氏2度で昼間は20度くらい、夏だと10度から33度くらいまでと日較差がとても大きな地区です。特にこれは成熟期に重要で、夜にブドウが休憩できることが昼間の光合成にも影響し、長い生育期間になります。

Grothのあるオークヴィルはちょっと涼しさもありますが、昼間は暖かくなります。日較差によって酸味とフレッシュ感が保たれるとのことです。

Gallicaのあるセント・ヘレナでも朝は霧が入ってきますが10時ころまでには晴れてきます。午後からは風が強くなります。オークヴィルと比べると10~12日収穫が早いとのこと。

BRANDのあるプリチャードヒルは丘で標高が高いため、夜は温暖で昼は涼しくなります。いわゆるフォグラインより少し上なので霧の影響はありません。穏やかな気候が続きます。ブドウはよく成熟し、タンニンもあり色調は濃くなります。

次の質問はワインメイキングとワインのスタイルについてでした。

BRANDは果実が小さく凝縮感ある。ワイン造りではたくさんのことを施さない。ストラクチャーを出したいと考えている。新樽率は60~65%で樽のニュアンスは溶け込ませたいとのことでした。50エーカーの畑で台木とクローンの組み合わせを13種も試しているそうです。

Gallicaのローズマリー・ケークブレッドはスポッツウッドなどで計40年の経験を持っています。いかに素晴らしいブドウをワインにするかが問題でワインメイキングでは手を入れないようにしています。新樽は使っていません。

Grothのリザーヴのブロックはタンニンが高くフレーバーのいきいき感があります。Gallicaとは対称的にこちらは100%新樽使用。抽出も長めに取っています。

Silveradoは、土壌がすばらしく果汁のPHや酸のバランスがよく、ワインメーカーができることは少ないとのこと。

Faviaのアンディ・エリクソンには、クームズヴィルとオークヴィルなど様々な地区のワインを作る上で、ニュアンスの違いをどのようにしてきたか、という違う質問が投げかけられました。

アンディ・エリクソンの答えは、サイトの個性を出したいとのこと。それをどう表現するか何を語りたいかを考えます。例えばマヤカマスのあるマウント・ヴィーダーはほかとは全く違います。素朴なスタイルでタンニンを表現したいと考えて作っています。オークヴィルは洗練されたスタイルでやわらかさを出したい、アトラスピークは黒系アロマ、クームズヴィルは酸とタンニンのバランスとのことでした。