このブログでまだあまりちゃんと取り上げていなかったので、僕も詳しいことは知らなかったのですが、Webサイト(Realm Cellars)を見ると、これまでのストーリーが非常に詳しく綴られており、とても興味深いものでした。
オーナーのジュアン・メルカド(Juan Mercado)は、ワインのバックグラウンドはなくオークランドの病院で看護師として働いていた人。ワインが好きになって、ナパに通い、トーマス・ブラウンやパックス・モールなど後に有名になったワインメーカーたちと友人になりました。
趣味が高じて、収穫期にワイナリーで手伝いをするようになり、自分でもワインを作りたいと思うようになりました。最初は畑のオーナーにお願いに行くと「ワインメーカーは誰か」、ワインメーカーにお願いに行くと「どこの畑のブドウが使えるのか」とまさに鶏か卵かの状態だったのですが、さまざまな友人や知人の伝手で、ベクストファーのトカロンやドクター・クレーン、ドミナスのナパヌックなど、素晴らしい畑のブドウを入手できるようになりました。
その後も、2番めのヴィンテージの2003年のワインがナパの倉庫の火事で全滅してしまったり、離婚したり、ワインメーカーがやめてしまったりなど、様々な困難が押し寄せますが、それらを乗り越え今に至ります。
そして、2014年末にはWine Advocate誌で2012ヴィンテージの2本のワインに満点が与えられました。さらに2015年には2013ヴィンテージの3本のワインが満点。2ヴィンテージで5本のワインに満点というのは、カリフォルイアワインでは初めてではないでしょうか(フランスだとギガルで1ヴィンテージ5本、2ヴィンテージで9本に満点という例があります)。この快挙によって、一躍注目のワイナリーになりました。
日本には2006ヴィンテージから中川ワインが輸入しているとのことですが、なんとこの2013ヴィンテージは日本への割当がゼロになってしまいました。
その代わりといっては何ですが、2010年のベクストファー・ドクター・クレーンが安く入ってきてわけです。安くといっても2万円を超えるのですが、現行ヴィンテージが5万円近い価格を付けているのと比べればかなりの安さです。
また、既にFacebookページやTwitter、Instagramでは投稿が始まっています。
Liana Estates: coming soon! #CarnerosLove pic.twitter.com/KZlfiXwICl
— Liana Estates (@LianaEstates) 2016年7月15日
ワイナリーの名前はリサとアリアナという、ペジュー・オーナーの二人の娘の名前を組み合わせて付けたもの。リアナのオーナーはこの二人になるようです。
リアナはワイナリーとしては珍しい3階建ての建物。1Fがメイン・テイスティングルームで2Fは暖炉があり、ワイン・クラブ・メンバー向け、グループ向けの3Fは見晴らしが素晴らしいようです。
また、ワイナリーでヨガのクラスを開いたり、ブート・キャンプをやったり、料理教室も開催されます。
リラックスしたい人のためにはハンモックや枕なども用意されています。
ワインはシャルドネやピノ・ノワールなどアケイシアから引き継いだものが中心になります。ワインメーカーのサラ・ファウラーは、カリフォルニアの「失われたブドウ品種」の発掘にも力を入れたいとのこと。第一弾としてはメンドシーノからドライ・オレンジ・マスカットを購入してワインを作るとか。
いろいろな意味で新時代のワイナリーになるようですね。楽しみです。
ウィリアムズ・セリエムといえば、カリフォルニアのピノ・ノワールで最初に「カルト」的人気を得たワイン。私がピノ好きになった1990年代後半は、ほとんどのワインがメーリングリストで売られ、ショップで見かけることさえめったにありませんでした(訪問してみようと電話をかけましたが、それも断られました)。高級ピノ=ロシアン・リバー・ヴァレーという図式も、こことロキオリ、そしてキスラーが築いたと言っても過言ではないでしょう。
参考:Williams Selyem Winery: 元祖カルトピノ
そういう意味ではセールで出てくるだけでもびっくりなワインです。それだけ、多くのワイナリーに興味が分散したということでしょうか。なお、新しいワインばかりでなく2000年代初頭のものもあります。
ちなみに、ここのワインは購入したブドウが中心ですが、ロキオリ(Rochioli)からブドウを仕入れているのは、ほかにゲイリー・ファレル(Gary Farrell)しかありません。ハーシュ(Hirsch)のワインも90年代から作っています。
ウィリアムズ・セリエムの一覧はこちら
●ピノ・ノワール
○エステート
ウィリアムズ セリエム エステート ヴィンヤード ピノノワール[2010](750ml)28,512円
○ロキオリ・リバー・ブロック
ウィリアムズ セリエム ピノノワール ロキオリリヴァー ブロック ヴィンヤード[2010]ロッキオリ(750ml)22,464円
ウィリアムズ セリエム ピノノワール ロキオリ リヴァーブロック ヴィンヤード[2011] 赤(750ml)25,920円
○ヴィスタ・ヴェルデ
ウィリアムズ セリエム ピノ ノワール ヴィスタ ヴェルデ ヴィンヤード [2002](750ml)22,464円
○ハーシュ
ウィリアムズ セリエム ピノノワール ハーシュ ヴィンヤード[2010](750ml)21,600円
○フェリントン
ウィリアムズ セリエム フェリントン ヴィンヤード ピノノワール[2010](750ml)19,008円
○ウエストサイド・ロード・ネイバーズ
ウィリアムズ セリエム ウエストサイド ロード ネイバーズ ピノノワール[2010](750ml)18,144円
○フラックス
ウィリアムズ セリエム フラックス ヴィンヤード ピノノワール[2010](750ml)18,144円
○イーストサイド・ロード・ネイバーズ
ウィリアムズ セリエム イーストサイド ロード ネイバーズ ピノノワール[2011](750ml)17,280円
○ロシアン・リバー・ヴァレー
ウィリアムズ セリエム ピノノワール ロシアンリヴァー ヴァレー[2012](750ml) 15,552円
○ソノマ・コースト
ウィリアムズ セリエム ピノノワール ソノマコースト[2012](750ml)15,552円
○セントラル・コースト
ウィリアムズ セリエム セントラルコースト ピノノワール[2011](750ml)12,096円
○ソノマ・カウンティ
ウィリアムズ セリエム ピノノワール ソノマカウンティ[2013](750ml)11,059円
●ジンファンデル
ウィリアムズ セリエム ジンファンデル フォルチーニ ヴィンヤード サウス ノール[2009] 赤(750ml)13,392円
●シャルドネ
ウィリアムズ セリエム ドレイク エステート シャルドネ[2010](750ml)ドレーク 19,008円
ウィリアムズ セリエム ハインツ ヴィンヤード シャルドネ[2010](750ml)15,552円
ウィリアムズ セリエム ロシアンリヴァー ヴァレー アンオークド シャルドネ[2011](750ml)11,059円
昨年に続いて7月に始まった収穫。平年より1週間から10日早いが、昨年よりは6日遅くなったとのこと。
昨年は収量がかなり減りましたが、今年は旱魃も一息つき、量的にも順調なようです。ここから先はむしろ水分が多すぎる心配の方が多くなりそうです。
寿司に合わせるワインとしてはシャンパーニュとリーデルが双璧ですが、ここでは敢えて赤ワインに合わせることも提唱しています。
例えば、コースで提供する場合、3番めか4番めの皿にはサバなどの青魚やカニ、エビなどが来ることが多く、それと赤ワインは合うそうです。
また、ネタの味だけでなく歯ごたえなどのテクスチャーもペアリングに重要な役割を果たすとのこと。例えば、皮がついている魚は、そこにアブラがあるため、赤ワインと合わせやすくなります。魚卵も同様です。
また、魚を熟成して提供する場合、旨味が増し、日本酒であれば山廃が合うとのこと。そこをワインだとガメイで合わせたいとこのソムリエは言っています。ガメイのミネラルや土っぽさ、酸味が魚の旨味と相乗効果になるとのこと。
また、トロにはカベルネも合うとしています。
先日のナパツアーの「モリモト」でもかなりユニークなマッチングをしましたが(ナパ4日め――料理の鉄人のレストランで和食とワインのペアリング)、アメリカのソムリエの方が発想が自由なのかもしれませんね。
固定観念にとらわれずにいろいろ試すことは面白いと思います。
これも欲しいなあ。
ただ、秋にはスタッグス・リープ・ディストリクトとヨントヴィルも追加されるそうです。送料5ドルなので、その都度買ってもそれほど変わりませんが、やっぱりまとめて買おうかな。
ところが、米国、特にナパでは「有機栽培」や「ビオディナミ(バイオダイナミクス)」という言葉はむしろこそこそ使われているようなのです(Organic Wines Keep it on the Lowdown | Wine News & Features)。実際にはかなり多くのワイナリーがそれを採用しているにもかかわらず。
米国では有機栽培は流行っていないのかというとむしろ逆で、スーパーマーケットなどでは有機栽培のものを積極的に扱う店が人気になり、有機栽培の果物などを高いお金を払って買っています。
では、なぜワインに関しては有機栽培と積極的にうたわないワイナリーが多いのでしょう。
それはかつてあった酸化防止剤を使わない「有機ワイン」への苦い思いがまだ消費者の印象に残っているからのようです。また、有機栽培とうたったからといって 高い値段を払ってくれるということもあません。
「有機栽培」を標榜しているガーギッチ・ヒルズによると、欧州では実際に「有機」を歌うことでよく売れるとのことで、米国とは状況が大きく異るようです。
ナパの人気ワインメーカーの一人であるスティーブ・マサイアソンは、有機栽培を行っていますが、その認定を受けていません。認定を受けないのは、自由度を失ってしまうことなどの理由があるから。一方で認定を受けないのは「怠慢だ」と考える人もいるようです。
最後に、ちょっと面白い話があります。ガーギッチ・ヒルズで自社畑の健康なブドウと葉っぱの病気に侵されたブドウとでワインを作ってみたところ、病気に侵されたブドウで作った方がずっと美味しかったとか。病気に侵された方が収量が少なくなるのが1つの理由のようです。
スティーブ・マサイアソンも、ブドウの葉が多少白カビ病に侵されてもあまり気にしないと言っています。
一般に、有機栽培にすると収量は減ります。それを受け入れられるか、コストに転嫁できるかといったことも、それを採用できるかどうかに影響しています。
有機栽培をするかどうかという話と、そのマーケティングの話と、ややごっちゃになっている感はありますが、興味深い記事でした。
ナパツアーの後、ピノをあまり飲まなかった反動か、ついピノに手を出してしまいます。このときも、こんないいワインを飲むつもりじゃなかったのですが、つい魔が差して開けてしまいました。
写真でもわかるかと思いますが、最初に注いで驚いたのが、その濁りっぷりです。色も一見カベルネのようにも見えます。フィルターを使っていないからなのかと思いますが、この濁りは最後まで続きました。
しかし飲んでみると、味はまごうことなきピノ。それもとても蠱惑的な。
色は濃いですが、味は重くなく、適度な酸味があってスルスルと飲めてしまいます。ピノの表現にシラー系とか薄旨系とかありますが、あえて言うならこれは旨旨系。上品なエキスがたっぷり詰まっています。
若干低めの温度で飲んだ方が、美味しく感じられて変化も楽しめるかも。
このワイン、買ったときは6000円台でしたが、安すぎますね。
サンタ・クルーズ・マウンテンズのピノとしてはヴァーナー(ニーリー)とリース(Rhys)が双璧だと思いますが、価格を考慮に入れたら、これがダントツでしょう。
なお、何回も書いていますが、わかりにくいので念のため説明しておきます。ヴァーナー(Varner)とニーリー(Neely)は同じワイナリー。単一畑のシャルドネとピノ・ノワールを4種類ずつ作っていますが、ピノ・ノワールはその中の単一ブロックを使った3種がニーリーで、それらをブレンドしたのがヴァーナー。シャルドネは単一ブロック3種がヴァーナーでブレンドがニーリー。いずれも評価はブレンド物が高いです。
なお、最近サンタ・バーバラのブドウを使ったワインを追加しています。また、フォックスグローブは購入したブドウから作る下位ラベル。シャルドネとカベルネ、ジンファンデルがあります。
ヴァーナー・ニーリー・ピクニック・ブロック・ピノ・ノワール [2011]※同一ワイン12本ケース購入でさらに3%割引 |
ヴァーナー・ニーリー・ヒドゥン・ブロック・ピノ・ノワール [2011]※同一ワイン12本ケース購入で3%さらに割引 |
ヴァーナー・スリー・ブロックス・ピノノワール [2011](750ml)赤 Varner Three Blocks Pinot Noir[2011] |
ニーリー(byヴァーナー) ピノ・ノワール "スプリング・リッジ・ヴィンヤード(ピクニック・ブロック/アッパー・ピクニック/ヒドゥン・ブロック/スリー・ブロックス)" サンタクルーズマウンテン [2011] (正規品) Neely by Varner Spring Ridge Vineyard |
先日も紹介したボーグルのピノ・ノワールですが、やっぱりなかなかいいワインです。2000円台前半で買えるピノ・ノワールとしてはかなりのレベルではないかと思います。ジャミーなタイプではなく、やや軽めの味わいなので、夏に飲んでも重くないです。
足かけ1カ月近くに渡って書いてきましたナパツアー・レポートをまとめておきます。
初日
SFのフェリー・ビルディングで人気バーガーとワイン
2日め
プリチャードヒルに初めて行く
アミーチ・セラーズで「真のアメリカン・バーベキュー」とリーズナブルなワインを堪能
トレフェッセンにて、スポッツウッドのオーナーなどに会う
パイン・リッジのケーブでおしゃれディナー
3日め
ダリオッシュのこだわりと心意気に感銘を受ける
初めてのワイントレイン
ブレンディング・セッションでワインメーカー気分を味わう
レイモンドの強烈な世界に皆ノックアウトされる
4日め
クリフ・レイディで先進ワイナリーの努力と実力に触れる
料理の鉄人のレストランで和食とワインのペアリング
ナパのテロワールを一流生産者が語る
ケークブレッドで最後のディナー
5日め
クヴェゾンの畑とバレル・テイスティング
一部、お見苦しいですが、1秒動画でまとめたものです。
4泊6日という日程としては、ものすごく密度の濃いツアーでした。30を超えるワイナリーの方にお会いし、80種類ほどのワインを試飲しました。個人的にも久しぶりのナパで、新たな発見も多くありました。
また、日本からツアーに参加された方々からもいろいろな刺激をいただきました。
このような機会を与えていただいたナパ・ヴァレー・ヴィントナーズの方々には改めて感謝申し上げます。
Kindleの電子書籍ナパ版も、今回のツアー内容を盛り込んでアップデートしたいと思っていますが、膨大な作業量を前に大分怯んでいます。でもやらなきゃなあ(ほかにもいろいろ宿題が)。
ちなみに2012年はWine Advocate誌で96点という高い評価。カレラ・ジェンセンとしては2007年の97点に次ぐ高評価です。飲み頃は2015~2025年となっています。カレラは非常にきれいに熟成するので、できたら10年くらいは保存してから飲みたいワインです。
4日めはシルバラードでパネル・ディスカッションに参加した後、ケークブレッド(Cakebread)でワイナリー見学とディナーです。ここは、ジャケット着用でという指示があったので、ここまでのプログラムをこなしてきた安堵感と、ちょっと緊張した感じがメンバーから感じられます。
すぐにディナーなのかと思ったら、まずはワイナリー見学でした。ブルース・ケークブレッド社長兼COOが案内してくださいます。
ここもエコにとても力を入れています。珍しいのが発電機を持っていること。ワイナリーで使う電気を賄うほか、発生した熱を冷暖房に活用しているそうです。
このほか、駐車場は特殊な舗装で染みこんだ雨水を回収して再利用できるようにしています。
Bigbellyというゴミ箱もあります(これと同じものはサンフランシスコのフェリー・ビルディングでも見かけました)。これは、上部にソーラーパネルが付いていて、発生した電力を使ってゴミを圧縮します。たまっているゴミの量はワイアレスで監視できるようになっています。ゴミの回収を効率化します。
様々な野菜を育てている菜園もあります。下の写真はオイスター・リーフというもの。食べるとなんと「牡蠣」の味がします。これには一同びっくりでした。
このほかワイナリー見学で興味深かったのは樽を積み上げるラックにプラスチック製のものを採用していること。
多くのワイナリーではスティール製のラックを使っていますが、そのタイプは地震に弱く、2年前のナパの地震で多くの被害が出ました。プラスチック製のラックを使っているところは問題がなかったとのころで、ケークブレッドは全面的に置き換えたそうです。
この、被害が出たワイナリーの一つは、この次の日に訪問したクヴェゾンです。記事内で写真を紹介しているように地震で樽がほとんど下に落ちてしまいました(ナパ最終日――クヴェゾンの畑とバレル・テイスティング)。クヴェゾンでも今後はプラスチック製のラックに置き換える予定だとのことでした。
中庭でしばらく歓談しながらちょっと軽食をつまみ、いよいよディナーです。
ディナーはケークブレッドのほか、シュラムスバーグ(Schramsberg)、ヴィアデル(Viader)のワインが提供されました。それぞれ現行のヴィンテージと古いヴィンテージのものがセットになっており、熟成を楽しむという趣向です。
シュラムスバーグのスパークリングワインにはソフトシェルクラブをあわせます。ワインはここのプレステージであるJ.シュラムでヴィンテージは2004年と2007年。
J.シュラムともう1つのプレステージであるリザーブは、醸造したワインから、上位のもの2%を選んで瓶詰めしたもの。ワインはどちらもさすがに美味しく、現時点での美味しさでは個人的には甲乙つけがたいでき。よりトースティな2007年の方が将来性はあるのかも、と思いました。
ところで、シュラムスバーグはナパ・ヴァレーでも北に位置するカリストガにワイナリーがあります。スパークリングワイン用のブドウはカーネロスなど、南で作っており、かなりの距離があります。どうしてカリストガに作ったのか聞いたところ、ワイナリーができた1870年代には、どこの土地が何に向いているかといったことはあまりわかっていなかったのと、ナパ市より南には何もなかったからだとのことでした。
スープにはケークブレッドのシャルドネ。ヴィンテージは2014年と2008年。
メインディッシュのウズラには、ヴィアデルの1999年と2010年です。
ワインの説明をするオーナーのデリア・ヴィアデルさん。哲学などの学位を持つ才女でかるワイナリーの人には珍しいウィスパーボイス。男性ファンも多いようです(笑)。
ヴィアデルの1999年には期待していたのですが、ちょっとワインのコンディションがよくなかったようで、今回はフレッシュな2010年の方が美味しく感じられました。なお、今は息子さんがメインでワインを作っているそうです。
最後に、それぞれ今回のツアーの卒業証?をもらい、最後のディナーは終わりました。
2015年のランキング発表時にはまだ、当該ヴィンテージの2012年は日本に入荷していなかったのですが、やっと入ってきています。
マウント・エデンのあるサンタ・クルーズ・マウンテンズのシャルドネは、酸がしっかりしていて、ゴージャスな味わいでも上品さを失わない印象があります。マウント・エデンはその中でも抜群の安定性を誇っています。
値段は以前より上がってしまいましたが、同クラスのシャルドネをナパ・ソノマで探したら1万円では効かないでしょう。
旧ヴィンテージの2011年もレイティングは95点で同じです。
そんなワイナリーの一つがジャム・セラーズ(JaM Cellars)。JaMとは「John and Michele」の頭文字を取ったもの。ただし、第2世代で10年間近くウルトラプレミアムワインを作ってきた、という以上の情報はあまりなく、どういうバックグラウンドなのかは不明です。
作っているワインはカベルネ・ソーヴィニヨンの「JaM」、シャルドネの「Butter」、スパークリングの「Toast」の3種類。
名前からしても、ある意味はっきりとコンシューマー向けを狙っていると思われますが、ただ濃いだけ一辺倒のワインでないところが今風なのでしょう。どちらにしても肩肘張って飲むワインではなく、仲間とワイワイ楽しむようなときに飲みたいワインです。
米国で買ってきたワインです。実は買ったときは気づいていなかったのですが、Peay(ペイ)のセカンドラベルでした。
ジャミーな方向に行かない、けど味わいのしっかりしたピノ・ノワールでした。ただ、ペイの面影を感じるかどうかというと、正直よくわからず。
ソノマ・コーストらしいピノ・ノワールで20ドル台の価格で買えるものとしては、なかなかいいのではないでしょうか。
ホーニッグでのランチはワイナリー・オーナー宅の庭です。ホーニッグのほか、ペジュー(Peju)、ヘイヴンズ(Havens)が来ていました。
一番右の女性がホーニッグのオーナー夫人ステファニーです。PRを担当しています。ホーニッグはドイツからの移民の家族でHonigとは蜂の意味。なのでラベルにも蜂の絵が描かれています。
ランチです。野菜がたくさん食べられてよかったです。トマトが美味しかった。
ワインはヘイヴンズのシャルドネとホーニッグのソーヴィニヨン・ブラン、ペジューのシラー・ロゼでした。
この日もかなり暑く、だいぶヘロヘロでワインのメモもちゃんと取っていなかったのですが、やはりロゼは夏に合いますね。いろいろな料理にも合わせやすいし、ドライなロゼを少し冷やして飲むのはオールマイティな感じがします。ホーニッグのソーヴィニヨン・ブランも爽やかでよかったです。
食後は隣接する畑を見せてもらいました。
ランチの後は、今回のツアーでは3回目のスタッグス・リープ・ディストリクトへ。今度はシルバラード(Silverado)です。小高い丘の上に立つワイナリーは景色もよく、とてもいいところです。
ここではパネル・ディスカッションで、4つのワイナリーが、ナパの各地域のカベルネ・ソーヴィニヨンについて語りました。
左からロンバウアー(Rombauer)のリッチー・アレン・ワインメーカー、コリソン(Corison)のキャシー・コリソン・オーナー兼ワインメーカー、タック・ベクストファー・ワインズ(Tuck Beckstoffer Wines)のタック・ベクストファー社長兼オーナー、シルバラードのラス・ウェイズ・ジェネラル・マネージャー、そしてモデレーターのマット・スタンプ・マスターソムリエです。
マット・スタンプ氏は10年前はナパのカベルネ・ソーヴィニヨンは皆同じ味がすると言われていたが、今はそうではないと語ります。今回はそれぞれ単一畑のカベルネ・ソーヴィニヨンで、その違いを見ていきます。
まず、シルバラードはGEOというカベルネ・ソーヴィニヨン。これはクームズヴィル(Coombsville)にあるマウント・ジョージという畑のブドウを使っています。
クームズヴィルはナパの中でも最も最近AVAになった地域。いわゆるナパ・ヴァレーからは南東方面に少し外れており、冷涼な地域です。クームズヴィルでカベルネ・ソーヴィニヨンというのはかなり意外な感じがしますが、山麓で標高が高く、霧がかかりにくい、いわゆる「フォグライン」より上の畑だからカベルネ・ソーヴィニヨンでも栽培できるのだそうです。ただ、気温が低いため、ブドウの実が熟すまでの時間が長く、スタッグス・リープ・ディストリクトに比べると収穫が2週間くらい遅くなるとのこと。
ナパとしてはかなりエレガントなカベルネ・ソーヴィニヨンで、ラズベリー、ブルーベリーなどの果実味と、ブラックペッパーなどのスパイスを感じます。タンニンはあまり強くありません。個人的にはかなり気に入りました。
醸造では、ドライアイスで冷やして、冷たい状況での発酵を20日間かけて行っているとのこと。18カ月樽で熟成して瓶詰めしています。
2番めはタック・ベクストファーでモッキンバード・ミズーリ・ホッパー・ヴィンヤード。ミズーリ・ホッパー・ヴィンヤードは、ベクストファー・ファミリーが管理する歴史ある畑の一つで。オークヴィルAVAの南のはずれにあります。東側にヨントヴィルの丘陵地帯が広がり、風が吹き抜けるところでもあります。
ワインはハーブの香りが印象的。青系の果実味が強く、ややタニックです。
ここでは、畑の水はけについての話が印象的でした。ミズーリ・ホッパー・ヴィンヤードは、ヴァレー・フロアですが、西のマヤカマス山脈につながる緩やかな斜面で、水はけがいいということでした。雨が降らないナパで水はけが重要なのかという質問があったのですが、ナパ・リバーに近いところだと、地下2~3mまで根が伸びると土が湿っており、ブドウは水を吸い過ぎてしまうとのこと。ブドウが吸う水をコントロールできる状況が必要なのだそうです。
ここの畑の収量は2.5トン/エーカーと少なめです。発酵は16日間。5~10%は樽で、残りはオープントップで発酵させます。オープントップの発酵はワインがソフトになるのに重要だとのことでした。
3番めはキャシー・コリソンさんです。女性ワインメーカーの草分けとして、多くの人から尊敬されています。カベルネ・ソーヴィニヨンはパワフルなワインと考えられていますが、キャシーさんはパワーとエレガンスの両立を目指しているそうです。
今回試飲するワインはKronos Vineyardのカベルネ・ソーヴィニヨン2012年です。なお、ヴィンテージはこれとシルバラードが2012年で、残りの2本が2013年でした。
Kronos Vineyardはワイナリーの周りにある寺社畑で1971年に植樹されました。
場所はセント・ヘレナ。ナパの中でも「サニー・セント・ヘレナ」と言われるくらいいつも天気がよく、気温も高くなります。カリストガが暑いと言われますが、カリストガの暑さはヒートスパイクと呼ばれる一時的な熱波が多く、セント・ヘレナはそれよりも平均的に暑くなります。
カベルネ・ソーヴィニヨンに青みを感じなくなるためには、かなりの熱が必要で、ここはそれを満たしています。また、夜は気温が下がるため、酸が維持されます。
アルコール度数を14%以下にするため、収穫は9月の第2週と早めにしています。周囲の誰よりも早く収穫を始めるそうです。
ワインは、ブルーベリーなど青系の果実味が中心ですが、ラズベリーなどの赤系の果実味も感じます。スミレの花の香りやミントやスパイスなどのアクセントもあり、パワーで押すワインとは一線を画した味わいです。
最後のワインはロンバウアーのアトラス・ピーク カベルネ・ソーヴィニヨン。アトラス・ピークはナパの東側のヴァカ山脈にあるAVA。スタッグス・リープ・ディストリクトの裏側といえばいいでしょうか。
畑の標高は1600~1700フィート。火山性の土壌でとても水はけがよく、ブドウの樹にとってはとてもストレスがかかる状況です。
山のワインはタンニンが強くパワフルになる傾向があります。しっかりとブドウが熟さないと非常にタニックになってしまうため、成熟したところから5回に分けて収穫しているとのこと。
ワインはさすがにタニック。今のナパでは珍しいくらいの作りです。
4つのワインの中では、個人的にはコリソンさんのワインはバランスよく、美味しかったです、またシルバラードのクームズヴィルのワインも予想以上においしく、この地域の可能性を感じました。
シェバングの白が税込み1814円と、これも相当安いです。ほかで買ったら2500円以上します。ずっとこれくらいの値段だったら嬉しいのに(^^;)。
シェバングといえば、スパークリングも国内入荷しているんですね。セールというわけではありませんが、これも今気づきました。カリニャンが80%で、あとはピノ・ノワールとシャルドネというユニークなロゼ・スパークリング。よく冷やして夏の夕方に飲んだら美味しいでしょうねえ。
ワイナリーに現れた例などが、Twitter上に投稿されています
We've got some feisty little earth and water #pokemon here in the #margaretriver vineyard and a Pokéstop #PokemonGO pic.twitter.com/P4xJ4FxDQx
— MadFish Wines (@MadFishWines) 2016年7月14日
#BourgogneWines welcome #PokemonGo players who want to visit the vineyard & share the wines
上のワイナリー(オーストラリアとブルゴーニュ)は基本的にポケモンGOを歓迎しているようです。
一方で、ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズは必ずしもワイナリーはそのメリットを享受できないとしています。郡の規約がきびしく、事前の予約がないと入ってはいけないワイナリーが多いからです。
最後にもう一つ。ポケモンGOに便乗して、主婦向けのシャルドネGOというアプリのビデオを公開した人がいます。10日あまりで2000万回を超える視聴となっています。
さて、パリ16区でクリアランスセールを開催中で、カリフォルニアではオーハイ・シラー、キュペ・シラー、コッポラのディレクターズカット・ジンファンデル、3つのワインが対象になっています。いずれもかなり格安。
オーハイ・シラーは税込み2894円。他ショップでは4000円台で売っているところがあります。
キュペ・シラーは税込み2678円。他ショップの最安より2割程度安いです。
コッポラのディレクターズカット・ジンファンデルは税込み3110円。他ショップの最安より1割程度安いです。
今やモンダヴィ家からコンステレーション・ブランズに渡ってしまったワイナリーではありますが、今回のイベントには長男のマイケル、次男のティムどちらも参加していたようです。二人が顔を合わせたのかどうかは不明ですが、同じイベントに参加すること自体、相当レアです。
故ロバート・モンダヴィのカリフォルニアワインへの貢献は、いくら強調しても強調しすぎることはないくらい、重要です。子どもたちも道は分かれてしまいましたが、それぞれいいワインを作っています。今後のさらなる発展を祈ります。
説明を読んでみると「カリフォルニアで探し求めやっと手に入れました。もちろん現地でリリースしたものをリーファーコンテナーで輸送しました」とあるので、大塚食品による正式輸入ものではなさそうです。
なお、ヴィンテージは2012年で、Wine Advocate誌では90点がついています。名目上は、プロプライエタリ・レッド、すなわち赤系のブレンドという位置づけですが、実際には82%はジンファンデルなので、ジンファンデルと名乗ることも可能です。ジンファンデルのほか、12%がプティ・シラーで、残りはカリニャン、アリカンテ・ブーシュとのこと。
こちらはラベル破損でないもの
リットンスプリングスも、普通より1500円ほど安いです。
昨年、「日本で飲もう最高のワイン2015」でプラチナを取った、日本人醸造家のピノ・ノワールという記事で紹介していますが、このときは愛好家がプラチナで専門家はゴールドでした。
ちなみに、今回プラチナを受賞したのはトータルで25ワイン。このうち両方でプラチナだったのはこのワインと、オーストラリアのレッドバンク・ワイナリー「サーシャ」ピノ・ノワール2013の2つだけでした。
なお、アーサーはカリフォルニアワイン専門店 アーサーセラーズ ワインブティックから購入でき、現在期間限定で送料無料(クール便含む)となっています。
このほか、シャトー・イガイタカハのワインが出品したワイン6種すべて入賞しました。愛好家のゴールドと専門家のシルバーを受賞したのが
シャトー・イガイタカハ ジュウェルウイッシュ シャルドネ サンタリタヒルズ ランチョサンタローザ ヴィンヤード2014。
専門家のゴールドと愛好家のシルバーを受賞したのが
シャトー・イガイタカハ エレガントハート ソーヴィニヨンブラン サンタイネズヴァレー グレートオークスヴィンヤード2014
愛好家のゴールドを受賞したのが
シャトー・イガイタカハ クロスド ウイング ウラウラ サンタバーバラカウンティー 2013
シャトー・イガイタカハ タイガージョー シラー バラ-ド キャニオン ジョリアンヒル ヴィンヤード2014
シャトー・イガイタカハ ディヴァインウイッシュ ピノノワール サンタリタヒルズ ゾトヴィッチヴィンヤード2013
の計5本です。これも相当の快挙だと思います。
このワイン、ワイナリー価格は29ドルですから、つい数ヶ月前の1ドル120ドル水準で考えたら、ワイナリー価格でも3500円くらいするわけで、今回の価格はそれを大幅に下回る水準です。おそらくこれも円高のおかげなのでしょう。カリフォルニアワインファンとしては、1ドル100円くらいの水準が続いてほしいなあと思ってしまいます。
カリフォルニアから米国市場および、海外市場への出荷は量および価格ともに順調に成長を続けています。
なお、同時に発表された米国市場全体のワインの売上は558億ドル。カリフォルニアワインはこのうち319億ドルなので約6割を占めていることになります。
なんだかんだ言って、やっぱりモンダヴィのカベルネ・ソーヴィニヨンはナパの一番スタンダードなワインだと思うのですよ。とりあえず困ったときはこれを飲め的な。
それで20年前もやはり20ドルくらいはしたので、日本に持ってきたら大体4000円近く。50ドルくらいで売っていたワインが軒並み100ドル超になっているのを考えると、米国の価格も良心的なレベルを保っているような気がします。
というわけで、こういう値段がもっと続いてくれると嬉しいんですけどねえ。ナパのワインももっと飲んでもらえるだろうし。
具体的にはどういうことかというと、ニューヨークにブルックリンというワイナリーがあります。ここは写真のように、ロス・カーネロスのAVAワインを作っています。本来は、AVAを付けるためには、ワイナリーが、同じ州にないといけないのですが、実はワイナリーが自身の州内で売る場合には、そのルールは適用されません。したがってこのワイナリーのラベルは許されることになります。
こういった「抜け穴」をなくすべく、NVVを中心にラベル・ルールの強化を申し出ています。具体的には、上記のような例外をなくし、どのワイナリーにも同じルールが適用されるようにしようとしています。
今後の見通しはよくわかりませんが、早く改善されるといいですね。
思った以上に解説が充実していて楽しいです。この地図1枚で、ご飯10杯は行けますね(笑)。
どちらか一つを選ぶならやっぱりオークヴィルでしょうね。ナパでグラン・クリュの畑を選ぶとしたらまず一番に選ばれるであろうトカロンを始め、ハーランやスクリーミング・イーグル、ダラ・ヴァレなどの畑が載っています。この地図持ってオークヴィルを散歩したい。
詳しくはこちらから。
で、実を言うとOvidでもこれのプリチャード・ヒル版をもらったのでした。なのでプリチャード・ヒルのマップは2枚。だれか希望者がいたら1枚ゆずってもいいかなと思ってます。
具体的には、味わいや香りを科学的に分析し、それと一致するように、ワインメーカーがさまざまなワインをブレンドして作るとのことです。同じような味わいで価格は25~50%安いことを売りにしています。
このレプリカが、本当に元のワインと似ているのか、人気ライターのW. ブレイク・グレイがブラインド・テイスティングしました(Do Replica Wines Taste Like The Prisoner and Kendall-Jackson?)。
取り上げたのはプリズナーを模したPickPocketと、ケンダル・ジャクソンのシャルドネを模したKnockoff。
試飲したのはグレイ氏と、友人のプロのフード・ライター。数多くのワインを飲んでいる人です。また、その人にはどのワインをブラインド・テイスティングするかは知らせていません。
ブラインド・テイスティングの方法は、グラスを4つ用意し、第3者(グレイ氏の奥さん)が、グラス2個ずつ、あるいはグラス3個と1個、という形で2種類のワインを入れます。試飲する人は、ペアになっているのか3つと1つなのかわかりません。
この形で、2種類のワインを分けられるかどうかが課題です。もし区別できないとしたら、うまく模倣していることになります。
結果はどうだったのでしょうか。
プリズナーとPickPocketでは、グレイ氏は区別できたものの、フード・ライターは区別できませんでした。グレイ氏の評価では、プリズナーの方が複雑で、甘みが少なく、テクスチャーも良かったとのことです。
ケンダル・ジャクソンのシャルドネとKnockoffでは、二人共ワインをちゃんと区別できました。ではKnockoffは失敗作なのかというと、二人共Knockoffの方を好んだとのことです。ケンダル・ジャクソンの方は化学的に作ったワインのような味わいがして、Knockoffの方がクリーンで果実味豊かだったとのこと。
というわけでレプリカ・ワイン、模倣がうまくいっているにしろ、いっていないにしろ、一定以上の品質のワインは作れているようです。
僕が気になるのは、今後もそのクオリティを維持できるかどうかです。おそらくいろいろなところからバルクワインを仕入れてブレンドしているのでしょうから、次のヴィンテージになると味が変わる可能性があると思います。同じ味わいをキープできれば、それなりに「本物」かもしれません。
なお、レプリカの他のラインアップを紹介しておきます。
Misbehaved――メイオミ・ピノ・ノワールの模倣
Just Right――ジョエル・ゴット815カベルネ・ソーヴィニヨンの模倣
Embellish――Erathオレゴン・ピノ・ノワールの模倣
今後登場予定のものは
Retrofit――ロンバウアー・カーネロス・シャルドネの模倣
Label Envy――ラ・クレマ・ソノマ・コースト・ピノ・ノワールの模倣
Scapegoat――サンタ・マルゲリータ・ピノ・グリージョの模倣
ナパの旅も、いよいよ終盤にかかります。4日めはまず有名なナパ・ヴァレー看板に行って写真を撮り、それからクリフ・レイディ(Cliff Lede)に行きました。
クリフ・レイディは2002年に設立された新しいワイナリー。かつてS. Andersonというワイナリーだったところを購入しており、S. Anderson時代に訪れたことがある身としては、懐かしいような新鮮な感じです。
ワイナリーの実力としてはS. Anderson時代とは比べ物にならず、ナパでも新進の実力派ワイナリーといっていいでしょう。2016年1月にはロバート・パーカーが、ここのポエトリー(Poetry)というカベルネ・ソーヴィニヨンに100点を付けています。
スタッグス・リープ・ディストリクトのヴァレー・フロア側に位置するクリフ・レイディ。2日めに行ったパイン・リッジからは3kmくらい北側になります。スタッグス・リープ・ディストリクトの中でも一番北にあり、パイン・リッジのあたりほど急峻な地形ではなく、ワイナリーの周りは比較的緩やかな丘に沿ってブドウ畑になっています。ツイン・ピークスという畑の名前で、南の方に丘が2つあります。土壌も火山性のものではなく、沖積系が中心になっているようです。
もう一つ、シルバラード・トレイルより東のスタッグス・リープ・パリセイドに向かう急峻な斜面に畑があり、こちらがポエトリー。前述の100点ワインを生み出した畑です。完全に西向きの斜面なので、午後は日当たりがとてもよく、また丘が風の通り道になっているそうです。非常に寒暖の差が大きい畑だとのことでした。
2日めの最初に行たOvidと同様、ここもデイビッド・エイブリューが畑の管理を行っています。ただ、以前からの畑もあるので、区画によって、エイブリュー流の密植して、ブドウの実を低い位置に付けるスタイルのところと、樹の幅が広く、ブドウを1mくらいのところに付けるスタイルのところとがあります。
説明は2015年のソーヴィニヨン・ブランをいただきながら聞いています。ソーヴィニヨン・ブランとセミヨンとのブレンドで、酸と果実味のバランスがとても良くおいしいワインでした。
さて、ナパには環境保全のプログラムとして、「Napa Green」というものがあります。「Land」と「Winery」の2種類のプログラムがあり、Landは173、Wineryは48のワイナリーが認定を受けています。クリフ・レイディは29あるLandとWineryの両方の認定を受けているワイナリーの一つ。ちなみに、今回訪問したワイナリーは、そのような意識の高いワイナリーがかなりを占めています。例えばパイン・リッジや、この後行くホニッグなどもその例です。ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズでは2020年までにすべてのワイナリーがプログラムに参加することを目標にしています。
実はポエトリーのような斜面の畑は現在では開発がかなり難しくなっています。というのは土壌の流出といった問題が起こるからです。クリフ・レイディでも藁を敷いたり、カバー・クロップを植えたりといった方法で土壌が流れないよう工夫をしているそうです。
ナパでは斜面の斜度が5%を超えると、このような侵食の問題への対応が必須とされており、30%を超えると新しい開発ができないのだそうです。現在ナパでは面積の9%にあたる4万5000エーカーのブドウ畑がありますが、この制限を考えると、今以上にブドウ畑を増やすのはかなり難しいようです。
このような侵食への対応もNapa Greenの一部ですし、農薬や殺虫剤などを極力使わないようにするといったこともその一つです。ナパ・リバーの鮭を守るといったこともプログラムに含まれています。
例えば、写真のようにブドウの周りの葉を取ることによって、風通しがよくなりブドウが病気にかかりにくくなります。こういったことも農薬や殺虫剤を減らすのに役立ちます。
ワイナリーに行くと、写真のように上部がガラスになっていて太陽光を取り入れるようになっています。これでワイナリー内の照明に使う電力を削減しています。また、すべてのライトはLEDになっています。ワイナリーはHoward Backenという有名な建築家に設計を依頼したそうです。
太陽光発電も行っています。今ではかなり多くのワイナリーが太陽光発電を取り入れていますが、畑にできるところを発電に振り向けるのですから、ワイナリーにとっては簡単にできることではありません。
電気だけでなく、水の使用も減らしています。例えば樽の洗浄には水蒸気とオゾンを使っているそうです。一般にワインを作るときには、その10倍の水が必要と言われていますが、ここではそれを半分の5倍に抑えているとのことでした。
ワイナリーの屋根にはほかにも工夫があり、夜になると屋根を開けるのだそうです。冷たい空気が入ることで気温が3℃くらい下がるとのことでした。
このほか、ブドウをタンクに入れる際にポンプを使うと実が傷みやすいため、クレーンで持ち上げてタンクに入れるシステムを採用しているといった話もありました。ナパのワイナリーでも2箇所しか導入していないそうです。
ワイナリーでは2010年のカベルネ・ソーヴィニヨンをいただきました。ナパらしい芳醇で柔らかさのある、いいカベルネ・ソーヴィニヨンです。
ワイナリーから今度はケーブに入っていきます。
最近はやりのコンクリート・エッグと呼ばれる醸造用のタンクもあります。
ソーヴィニヨン・ブランの場合、10%がコンクリート・エッグ、50%が樽、40%がステンレススチールタンクで発酵させているそうです。コンクリート・エッグは芳醇さとミネラルの味わいを出すのにいいとのことでした。
また、ソーヴィニヨン・ブランの樽では写真のように細長い「葉巻型」のものもあります。先日セミナーで来日したフィリップ・メルカもこのタイプの樽を使っているという話をしていました。澱と接触する面積が広くなるのがメリットだったと思います。
なお、このワイナリーでは通常はラッキングはしないと言っていました。2011年のようなあまりよくない年に限って行うそうです。
2日めに行ったOvidもそうですが、ここも細かいところまでお金と労力を使って実践しているのが印象的でした。やっぱりナパの一流ワイナリーはさすがです。
ここは畑のブロックにロックの名曲の名前を付けていることでも知られています。
今回宿泊したホテルはナパ・リバー・イン(Napa River Inn)というところ。名前の通り、ナパ・リバー沿いに建っています。下の写真の中央から左がホテルです。右側のビルには、Morimotoなどがあります。
で、川の反対側、つまり上の写真を撮ったところはトレイルになっていて、朝は軽くランニングしていました。
河原は立ち入り禁止になっていて、植生が保護されています。さまざまな生物がいます。
ウサギは頻繁に見かけます。
東の山はちょっとモヤがかかっていましたが、霧ではありません。今回の滞在中は残念ながら一度も霧を見ませんでした。
気球もナパのアトラクションの一つです。
ワイントレインの車庫越しに見た気球です(ちょっと遠いですが)。
ここは、個人的にはとても楽しみにしていたワイナリーです。2009年に創設者のRaymondさんが引退して、Jean Charles Boisset(ジャン・シャルル・ボワセ=JCB)がオーナーになり、それまでの中堅優良ワイナリーのイメージから想像できないほど、独自の世界を作り上げていると聞いていたからです。
このブログの古くからの読者はご存知かと思いますが、僕はジャン・シャルル・ボワセのファンで、彼のやることをかなりウォッチしています。
参考までに、これまでのJCB関連記事を挙げておきます。
JCBのワイナリーが興味深い
政略結婚? ジーナ・ガロとジャン・シャルル・ボワセが結婚
Galloの4代目は双子
モンダヴィ邸宅購入はGallo夫妻、など
ソノマとブルゴーニュのブレンド・ピノをジャン・シャルル・ボワセが発売
Press Democrat紙が選ぶ2013年の注目ワイナリ
Buena Vistaが歴史的建物保全で受賞
ヨントヴィルにJCBがテイスティング・サロン開設
さて、到着すると、まずは庭の方から回ります。ジャン・シャルル・ボワセのワイナリーではビオディナミを採用しており、その説明が中心です。また、バイオダイバーシティということで、さまざまな生き物との共生もテーマになっています。
あまり時間がなかったので、詳しく見られなかったのですが、じっくり見たらここだけでも軽く1時間くらいはかかるでしょう。
上の右側の巣箱はコウモリ用。コウモリは昆虫を食べてくれます。
ここは犬のワイナリー。カベに犬の絵が飾ってあります。犬を連れてきた人はここで犬を預けられるようです。ちなみに「Frenchie」というのはジャン・シャルル・ボワセが飼っているフレンチブルドッグの名前で、実際にこの名前のワインも作っています。
ワイナリー入り口です。説明しているのはリー・アン・リードさん。一部で滝川クリステル似の美女と言われています。僕は今回で会うのは3回め。
醸造用のステンレススチールのタンクが並んでいますが、照明がシャンデリアになっていたり、雰囲気は全くワイナリーっぽくありません。
よく見ると、こんなマネキンがぶら下がっていたり。
スワロフスキーでしょうか。これもワイナリーの中です。
上にもマネキンが。
全体に紫基調です。
だんだんマネキンくらい当たり前になってきます。
前の記事でも取り上げた、ブレンディング・セミナー用の部屋です。ここでセミナー受けたら楽しいでしょうね。
ここにもマネキンがいらっしゃいます。
なぜかバスタブも。
ここはフラスコごとに別々の匂いが嗅げます。ふざけているようで、ちゃんと教育的な部分もあるのが面白いです。ここだけでも30分くらいは遊べそう。
こちらにもFrenchieの肖像画が。
土壌の標本が並んでいます。時間がなくてゆっくり見られないのが残念。
ここはテイスティング・ルームでしょうか?
さて、かけあしのワイナリー見学でしたが、多くのツアーメンバーはジャン・シャルル・ボワセについてはあまり知っておらず、この特異な世界にびっくりしてしまったようでした。ともかく普通のワイナリー感をあらゆる意味で覆してしまうような強烈なワイナリーです。
でも、ワインはふざけて作っているわけではないし、やるべきことはきちんとやっているので、僕はこれはこれでありだと思っています。何より面白いし。
ナパに来たらぜひ一度は訪れてほしいワイナリーです。
さて、すっかり忘れかけていましたが、ここに来た主目的はディナーです。ワイナリーはレイモンドのほか、セハ(Ceja)、フランク・ファミリー(Frank Family)、ロング・メドー・ランチ(Long Meadow Ranch)、シニョレッロ(Signorello)が参加しています。
今日のディナーはこれです。
カリフォルニアではフードトラックといって、このような車での軽食販売が人気です。これはメキシコ料理のタコスのトラック。それぞれ好きなものを注文できます。
今回はこのようなカジュアルな料理とワインを楽しむというのがテーマです。
タコスは小ぶりなので3つ頼みました。写真だとよくわかりませんが。
せっかくなのでリー・アンと2ショットで。
リラックスモードに入って楽しんでしまい、ワインのメモはほとんど取っていません。
その中で印象に残ったのはセハ・ヴィンヤーズの方の話でした。メキシコからの移民でワイナリーを作ったという珍しいところです。カーネロスで作っているシャルドネやピノ・ノワールはカジュアルな料理によく合うもので美味しかったです。
このほか、フランク・ファミリーのジンファンデルもこのような料理にはよく合いました。
レイモンドのメルロー・リザーブやカベルネ・リザーブ、シニョレッロのFUSEなどもよかったです。
すっかりくつろいで夜は更けていきました。
ここのワイナリーはセント・ヘレナの町をちょっとはずれたあたりのまだ平地にありますが、そこから山肌に沿ってブドウ畑があります。
プログラムは19世紀に作られたThe Villa Miravalleというビクトリア調の建物の中で行われました。ステンドグラスなどがとても素敵です。
さて、プログラムが始まります。
空のグラスが5つと、中央にサンプルとして2012年のカベルネ・ソーヴィニヨンがあります。まずはこれを試飲します。やはり山カベだけあって、ストラクチャーがすごくしっかりとしています。今飲んでも美味しいですが、熟成させたいワインです。
ブレンドするのは2015年のワインです。カベルネ・ソーヴィニヨンに使う5つの品種をブレンドします。2人1組で考えていきます。
5つの空のグラスには、左からメルロー、マルベック、プティ・ヴェルド、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨンという紙が付いています。
まずは、5つのワインを試飲して、味わいをみます。
残っているいい加減なメモには、それぞれ以下のようにコメントしていました。
メルロー:青系の果実、ミント、タニック
マルベック:セージ、ボディ弱い
プティ・ヴェルド:スパイシー、タニック
カベルネ・フラン:青っぽい、タニック
カベルネ・ソーヴィニヨン:赤系の果実の味わい
カベルネ・ソーヴィニヨン単体だと意外と赤系の果実の味が強く、ちょっと軽い感じがありました。とはいえ、単体で飲んで美味しいのもこれ。今回はカベルネ・ソーヴィニヨンとして作るので最低75%はカベルネ・ソーヴィニヨンを入れる必要があります。
5種類の中で、今回マルベックだけはちょっと味が弱く、入れる意味合いを見つけられませんでした。そこで残りの4種を使ってブレンドすることで相棒と意見があいました。
カベルネ・ソーヴィニヨンに、青系の果実の味わいを加えるために、メルローとカベルネ・フランを加えます。プティ・ヴェルドは骨格を強めるために少し入れます。ここは入れ過ぎると味を壊してしまうような気もするし悩ましいところです。1%入れるだけでも結構味わいは変わってしまうのだそうです。
最終的なブレンドは、メスシリンダーで100ml作ります。1mlレベルで入れる量をコントロールしないといけないので、大変です。
我々のチームは最終的にはCS80%、CF12%、M5%、PV3%というブレンドにしました。
完成したブレンドは、チーム名を付けて、テーブルに置き、Spring Mountainのワインメーカーとディレクターが試飲して1位を決めます。
我々のブレンドは、ちょっと今飲んで美味しすぎたかもしれません。優勝チームはプティ・ヴェルドを5%入れていましたが、我々は3%。今後の熟成のことを考えるともっとプティ・ヴェルドを入れたほうが良かったかなと反省しました。
いや、それにしても楽しかったです。ワイントレインでお腹いっぱいワインもいっぱいになった後、いい刺激になりました。
なお、スプリング・マウンテン・ヴィンヤードでは普段はこのようなブレンディング・セッションはやっていませんが、いくつかのナパのワイナリーで似たようなプログラムを持っています。ご参考のために紹介します。
コン・クリーク(Conn Creek)の「Barrel Blending Experience」は、「BEST OF WINE TOURISM」賞を取ったことがある名物企画です。多分ブレンディング・セミナーが増えたきっかけのワイナリーだと思います。
ジャッズ・ヒル(Judd's Hill)ではBottle Blending Sessionというセミナーがあります。
フランシスカン(Franciscan)も最近「MAGNIFICAT TEAM-BUILDING BLENDING COMPETITION」というセミナーを始めました。
ジョセフ・フェルプスはちょっとすごいです。インシグニア(Insignia)のブレンドを自分で試せるセミナーがあります。
ダックホーン傘下のパラダックス(Paraduxx)にも「The Blend Experience」というプログラムがあります。
レイモンド(Raymond)にはブレンディング・セミナー専用の理科実験室のような部屋があり「Winemaker for a day」というセミナーを受けられます。
これらのセミナーはいずれも事前に予約が必要です。時間も普通のテイスティングより長くかかりますし、料金も大体60ドル~と高めになるのでご注意を。でも、貴重な体験ができることは間違いないと思います。
500gが6袋で2579円。1袋あたり430円という安さです。当然送料込み。ちなみに楽天での最安は1袋559円。6袋送料込みだと4125円。なんと1600円も安くなります。
なお、カルビーのフルグラではなくケロッグのフルーツ・グラノラなのでお間違えなく。個人的には、こちらの方がフルーツ感があるような気がしてます。栄養面で見ると、こちらは脂質が半分以下にカット。ダイエットを考えている方はこちらの方がいいかも。
プライム会員は30日まで無料でお試し可能です。
ターリーは30種ほどの単一畑のジンファンデルとプティ・シラーを作っていますが、その中で異例の存在がジンファンデルのジュヴナイル。比較的若い樹からのブドウを使って作るワインです。
以前は日本にも結構潤沢に入っていましたが、近年はすっかりレアになってしまいました。
2014年のジュヴナイルはWine Advocate誌では90点。アルコール度数は15.5%と相変わらず高いですが、これはブドウを熟させるためにはしょうがないことで、出来たワインからは熱っぽさは感じないとパーカーは書いています。
単一畑ものは2012年が国内の現行ヴィンテージ。
ダリオッシュといえば、日本版にリメイクされた「サイドウェイズ」でロケ地の一つとして使われたワイナリー。オーナーの出身地である古代ペルシャの宮殿を模したワイナリーは、豪華さで人目を惹きます。
1997年に設立された(上記の建物は2004年)比較的新しいワイナリーであり、正直に書いておくと、個人的には、お金持ちの道楽的なワイナリーなのかと、やや軽く見ていた面がありました。
今回は、オーナーではなく社長のダンさんが案内をしてくださいました。イケメンでサービス精神旺盛。かっこいいです。
最初はヴィオニエを試飲。テイスティング用のグラスはリーデルのVinum Extremeでしょうか。Darioushの刻印がされていて、ここからも豪華さが漂っています。
このヴィオニエ、美味しいです。ヴィオニエは白い花の香りが高く、白桃のような、ちょっととろっとした甘い味わいを感じることが多いですが、第一印象が蠱惑的なのに対して、飲んでいるとちょっと退屈してしまうことも珍しくありません。このヴィオニエはカリフォルニアのヴィオニエとしては酸が高く、柑橘系の印象が強く出ています。そこに軽く桃の味わい。かなり魅力的です。
ダン社長によると、重くなりがちなヴィオニエの味わいを、クローンを選ぶことで、重くならないようにしたとのこと。また、90%は古い樽で、10%ステンレスタンクで醸造しているとのことでした。
このヴィオニエだけでも、ダリオッシュが実力のあるワイナリーであることが分かります。
地下のセラーに降りて行きます。
さらに奥に行くと、オーナーのプライベート・コレクションのセラーがあります。
カリフォルニアワイン好きだったら舌なめずりするようなワインが山ほどあります。
こちらでは今度は2013年のメルローの試飲です。ダリオッシュではメルローは高貴な品種として力を入れて作っているとのこと。ブドウの半分はマウント・ヴィーダ―の自社畑、半分はワイナリーの周りの自社畑で作っているとのこと。
これもとてもレベルの高いメルロー。メルローも凡庸な味になりがちな品種ですが、これはとてもしっかりとしていて、メルローらしさもあります。シャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンといったメインの品種ではなく、ヴィオニエとメルローという難しいところからあえて試飲に出してきたところに、心意気を感じました。
ビジターセンターも、確かに豪華ではありますが、下品ではなく非常に心地よい空間。ダリオッシュ、来てよかったです。シラバラード・トレイルをナパから上がっていくと、右側に現れるワイナリーとしては多分最初ではないかと思います。
ちなみに、ワイナリーが位置するのはスタッグス・リープ・ディストリクトより南。オークノールよりは北という、サブAVAの割り当てられていないところ。自社畑はワイナリーの周りのほか、オークノールとマウント・ヴィーダ―にあります。ワイナリーのサイトによると、あえてナパの中でも気温が低い南の方に注力することを選んだのだそう。そこにもこだわりと心意気を感じます。
今回は試飲できなかったのですが、オーナーがさらにこだわりを持っているのがシラーだそうです。イランにゆかりの品種だということです。
パイン・リッジは昔、米国に住んでいたころ、よく飲んでいたワイナリーの一つです。AVAもののカベルネ・ソーヴィニヨンが非常にコスト・パフォーマンスが良かったのでした。ただ、当時は20ドル台だったAVAものでも今は80ドル以上。20年近く前だから仕方ないのでしょうが、やはり高くなったものです。それを考えるとオーパス・ワンは当時の日本の価格が3万円近く。値上がり比率で見ると意外と優等生なのかも(内外価格差が縮まったのも大きいですが)。
どうも久々のナパでいろいろと懐かしく与太話が増えてしまうのはお許しください。
パイン・リッジは1978年にスキーのオリンピック選手だったゲイリー・アンドラス(Gary Andrus)氏がスタッグス・リープ・ディストリクトに設立したワイナリー(ちなみにオレゴンのアーチェリー・サミットもゲイリー・アンドラスによる設立です)。スタッグス・リープ・ディストリクトというと、その名の元になったヴァレーの東側のスタッグス・リープ・パリセイドと呼ばれる切り立った岩と、そこに向かう西向き斜面の畑というのが一般的なイメージですが、このワイナリーはスタッグス・リープ・ディストリクトの中でもシルバラード・トレイルの西側の、どちらかというとヴァレー・フロア側に位置しています。
ただ、このあたりはヴァレー・フロアといっても実際にはいくつかの小高い丘が立ち並ぶかなり複雑な地形。そのため、スタッグス・リープ・ディストリクトは「ヴァレー・ウィズイン・ア・ヴァレー」といったいいかたもされています。パイン・リッジの自社畑も、こういった丘の周囲の斜面に作られており、斜面の向きなど極めてバリエーションの大きな地形になっています。畑の管理も収穫もかなり手間がかかりそうなところです。
ちなみに、どうしてこういう地形になったのか、今回のツアーメンバーの一人で、ワインの地質学を研究している坂本雄一さんに聞いてみたところ、小さな火山の跡なのではないかという話でした。実際、このあたりの土壌は火山性のもののようです。
畑の次はワイナリーです。ここで面白かったのは樽を積んでいるラック。
写真で分かるように、周りが金属の円になっています。ここにローラーが付いていて、実は手動でも割と簡単に樽を回せるようになっています。このラックは地震に強いのと、その回す仕組みによって、樽の中の澱をかき混ぜて澱に含まれる旨味をワインに移すバトナージュという作業の代わりになるとのことでした。
こちらのタンクは冷却中。白ワインには酒石酸が含まれていますが、それがボトルの中で結晶化するとユーザーからのクレームの元になります(害はありませんが)。そこでボトル詰めの前に何日か冷却することで、酒石酸を結晶化させて取り除いてしまうという処理をするのだそうです。
ワイナリーからケーブに行きます。結構迷路のように複雑なケーブ。迷子になりそうです。
奥の方に行くと、テーブルがあります。今日のディナーはここです。予想以上のおしゃれ空間でちょっとびっくりしました。
本日のメニューです。
最初の皿はホタテ。
ワインはパイン・リッジのほか、シレナス(Silenus)とサマーストン(Somerston)が提供しています。最初の皿にはパイン・リッジのシャルドネとシレナスのシャルドネ。シレナスのシャルドネは、シャブリのようなレモニーな味わい。酸が強めではありますが、後からトロピカルフルーツのフレーバーも出てきます。一方、パイン・リッジはクリスプですが、樽のフレーバーもほどよく感じ(新樽は15~20%とのこと)、パイナップルなどトロピカルフルーツのフレーバーもあります。
今回のホタテはほのかに甘いスープ仕立てで、パイン・リッジは互いに芳醇さで引き立て合い、シレナスは対象的な味わいで、これもいい組み合わせでした。なお、シェフはパイン・リッジに専属の方です。
さて、一皿目が意外とボリュームがなかったので、ちょっと安心したのですが、大きな間違いでした。
メインディッシュの「ピメントン・ポークヒレ」は70~80gくらいありそうなヒレ肉のポーションがなんと4切れも入っています。その下にはコップ一杯分くらいはありそうなレンズ豆。ヒレ肉なので油っこくはなく食べられるのですが、それにしてもすごいボリュームでした。全部食べましたよ。
ワインはサマーストンのカベルネ・ソーヴィニヨンとパイン・リッジのカベルネ・ソーヴィニヨン スタッグス・リープ・ディストリクト。サマーストンは優しい口当たり。ナパらしい芳醇なカベルネ・ソーヴィニヨンでした。パイン・リッジは、まだちょっと若い感じでタンニンがかなり強く感じました。スパイシーで熟成したら美味しそうなワインです。
順番は前後しますが、最初にパイン・リッジのテイスティング・ルームでパイン・リッジとシレナスの試飲もありました。
パイン・リッジのシュナン・ブランとヴィオニエのブレンドはほのかに甘さを感じるような優しい味わい。ナパのワインとしては珍しいですが、実は日本でも1000円台で買えるかなりお買い得なワインです(ワイナリー価格は15ドルなので実は日本で買う方が安いかも)。2014年はWine Advocateで90点を取っているなかなか優秀なワイン。
しかし、この日は食べ過ぎました。さすがにホテルに帰ってからダウン。胃薬を飲んで床に着きました。
CEOのジョン・ルエルさんが迎えてくれました。
ここは、テイスティング・ルームになっていたモニュメント的な建物(19世紀に作られたものです)が2014年の地震で大きな損傷を受けています。今はその修繕中。まだしばらくかかるようです。
奥の方に、テイスティング・ルームが新たにオープンしていたのですが、それも本当につい先日のことだそうで、まだ地震の爪痕は残っています。
ちょっと余談になりますが、ホテルのあるナパの市街には、工事をしているところが多数ありました。景気が良くて新しい建物を作っているのかと思ったのですが、実際にはまだ地震の後の修繕をしているところが多いのだそうです。下の写真の郵便局も大きな被害を受け、いろいろな事情で修繕も難しくなっているとか。For Saleの看板が出ていました。
さて、ここでは「ナパの歴史を深掘りするディスカッション」とのことで、パネル・ディスカッションの形式で、試飲しながらナパの歴史を語るというプログラムでした。
モデレーターは「Wine Bible」という米国でワインの本として一番のベストセラーを書いたカレン・マクニール(Karen MacNeil)さん。
ワイナリーからはトレフェッセンのルエルCEOのほか、ペレット・エステート(Pellet Estate)のワインメーカーであるトム・リナルディ(Tom Rinaldi)さん、スポッツウッド(Spottswoode)のベス・ノヴァック・ミリケン(Beth Novak Milliken)社長兼CEOです。
まず、カレンさんが19世紀からのナパの歴史を振り返ります。面白かったのはカリフォルニアのゴールドラッシュとワインとの関係。1849年にゴールドラッシュが始まったのは有名ですが、ワインとはこれまであまりつなげて考えていなかったので目からウロコでした。
ゴールドラッシュでサンフランシスコの人口は800人から2万5000人まで膨れ上がりました。ほとんどが若い男性です。みな金を掘ってまさに一攫千金を狙ったわけですが、ほとんどの人はうまくいかず、そこから故郷へと帰ることさえできなくなってしまいました。そこで、それらの人たちは農業をするしかなかったのです。これでサンフランシスコ近郊に、農業を営む人口と、さらにはアルコールを欲しがる若い男性が溢れたわけです。結果として1860~1890年がカリフォルニアワインにとって最初のゴールデンエイジになりました。
この後は、フィロキセラ、禁酒法、戦争と暗い時代が続きます。
次の大きな転機は1960年代。「Sex、drug、rock'n roll」の時代で、ロバート・モンダヴィがワイナリーを設立したのもこの時代です。また、ナパでは農地保全法が1968年に作られました。これが環境保全や開発の抑止という点で、今でも大きな役割を果たしています。
続く1970年代が第2のゴールデンエイジ。医者、科学者、技術者とさまざまなアントレプレナーがナパに移ってきました。今回同席したトレフェッセンは1960年代、スポッツウッドのノヴァック家は1970年代。トム・リナルディの在籍していたダックホーンも1970年代です。
スポッツウッドのベスさんの父親はスタンフォード大学の卒業生。南カリフォルニアのサンディエゴで医者をしていたのですが、田舎のライフスタイルに憧れてナパにやってきました。当時は1エーカーあたり4000ドルと、土地も極めて安価でした。
最初はプチシラーやガメイ、フレンチコロンバードなど手当たり次第にいろいろなブドウ品種を植えて、ブドウはガロなどに売っていました。その後、カベルネ・ソーヴィニヨンに植え替えてワイン作りを志すものの、今度はお金が回らなくなってしまいます。
父親が医者に戻ったのですが44歳で、亡くなってしまい、家族が後を継がざるを得なくなったそうです。
今やスポッツッドといえば、ナパを代表するワイナリーの一つであり、コンスタントに最上級のカベルネ・ソーヴィニヨンを作るワイナリーとなっていますが、初期のころはこんな苦労があったのですね。
話が長くなってきました。試飲の話に移ります。写真の左から
スポッツウッド カベルネ・ソーヴィニヨン 2012
トレフェッセン メルロー 2012
ペレット カベルネ・ソーヴィニヨン 2011
スポッツウッド カベルネ・ソーヴィニヨン 2013
トレフェッセン カベルネ・ソーヴィニヨン 2012
ペレット カベルネ・ソーヴィニヨン 2012
スポッツウッドは2012年と2013年。力強さを感じたのは2012年。非常に濃く、タンニンもしっかりしています。豊かな酸が、ただ濃いワインにならないようにバランスを保っています。この年はカベルネ・ソーヴィニヨンが89%、カベルネ・フランが8%、プティ・ヴェルドが3%。2013年の方がやや親しみやすく、芳醇な香りが印象的です。この年はカベルネ・ソーヴィニヨンが85%、カベルネ・フランが10%、プティ・ヴェルドが5%。
トレフェッセンはメルローとカベルネ・ソーヴィニヨン。
ルエルCEOは畑のデザインの移り変わりについて説明しました。1960年代は樹の間隔が広く、樹勢もあまりコントロールされていませんでした。それが1980年代にフィロキセラで植え替えをすることになり、新しいデザインで畑を作りなおすことになりました。メルローも1987年に植え替えた畑のものだそうです。
ちなみに、トレフェッセンがあるオークノールAVAは、南に涼しいカーネロス、北にはドミナスなどがあるヨントヴィルに挟まれたある意味中間地帯。そのため自社畑では涼しいところに向いたシャルドネやピノ・ノワールも、暖かいところに向いたカベルネ・ソーヴィニヨンなどを植えています。リースリングまで作っているのはナパではかなり珍しいです。ただ、1960年代には赤で42品種、白で38品種作っていたとのことなので、これでも植え替えのときに大分絞ったのだそうです。
メルローは、赤系の果実味が豊富で、酸も豊か、スパイシーな味わいもあります。タンニンがあまり強くなく、柔らかくて飲みやすいワイン。かなりいいメルローだと思います。
カベルネ・ソーヴィニヨンは打って変わってタニックなワイン。かなりスパイシー。美味しいですが時間がかかりそうなワインでした。
ペレットは非常に難しい年だったという2011年と、良年と言われる2012年のカベルネ・ソーヴィニヨン。
2011年は意外と濃く、芳醇かつ飲みやすいワイン。難しい年だということをあまり思わせないワインです。どういう手法を使ったのか聞いてみたところ、やはり、カベルネ・ソーヴィニヨンが少し薄かったので、2012年のカベルネ・ソーヴィニヨンを5%ほどブレンドしたり(ラベリングのルールで認められている範囲です)、味わいの濃いプティ・ヴェルドを普通の年よりも増やしたとのことでした。
2012年はさすがに力強さを感じます。ただ、今飲むなら2011年の方が飲みやすいかも、と思いました。
最後に余談。
パネル・ディスカッションを行う建物に入るときに、入り口で朗らかに挨拶をして迎え入れてくれた女性がいました。てっきりトレフェッセンの担当の方かだれかかと思ったのですが、それがスポッツウッドのベスさんでした。名門ワイナリーなのに、それを感じさせない雰囲気にちょっと驚きました。
この過去記事で、100%以上の出資を得ていたKian Tavakoli(以下、キアン)というワインメーカーが新たにプリチャード・ヒルのカベルネ・ソーヴィニヨンで出資者を募集しています。プリチャード・ヒルのカベルネといえば大抵は100ドル以上するワインばかりですが、今回はなんと37ドル! しかも畑はPaul Hobbsなどでも知られているStage Coach(ステージコーチ)です。
ステージコーチは実はかなり大きな畑で、一部はアトラス・ピークに差し掛かっていまいする。今回はかなり端の方にあるプリチャード・ヒルのワインです。ただし、プリチャード・ヒルは、AVAではないので、ラベルにはナパ・ヴァレーとだけ入れることになります。ワインメーカーのキアンによると、ここが一番いいカベルネ・ソーヴィニヨンができるところだとのこと。なお、キアンは過去10年以上、ここのフルーツでワインを作っていました。以前はClos du Valのワインメーカーもしていたそうで、ちゃんとしたワインメーカーだそうです。