ナパの山地のカベルネ、通称山カベ専門で、パーカー100点9本と圧倒的な実績を誇るワイナリーがロコヤ(Lokoya)。そのワインメーカーのクリス・カーペンターが来日し、セミナーに参加しました。
まずは、ナパの基本的なところを抑えておきましょう。
ナパヴァレーの東側にヴァカ山脈、西側にマヤカマス山脈があります。ナパは南にサンパブロ湾があり、そこから冷たい空気や霧が内陸に入ってくるので、基本的には南ほど涼しくなります。また、西側と東側を比べると、マヤカマス山脈は太平洋からの空気も入ってくるのでヴァカ山脈側よりも涼しくなります。また、山の畑の多くは霧がかかる標高よりも高いところにあるので、霧の影響を受けません。谷底など霧がかかるところは夜に気温が大きく下がり午前中にあまり日照を受けませんが、山は気温はそれほど下がらず朝から日照をしっかり受けます。一方で、標高によって気温は上がりにくいので、日較差は小さくなります。
土壌はヴァカ山脈側は火山性土壌が中心で、マヤカマス山脈側は沖積性の土壌が多くなりますが、場所にもよるので一概には言い切れないところもあります。痩せた土地が多く、水はけがいいため、ブドウの実は小さく凝縮したものになります。また、タンニンも強くなります。
クリス・カーペンターはシカゴの出身、生物学を学び、卒業後は医療機器のセールスやバーで働くなどをしていましたが仕事に満足できなかったそうです。レストランと科学、創造性の三つを総合した仕事がないかと考えたときに、ワイン造りが見付かったとのこと。そうしてUCデーヴィスで学び、醸造と栽培の両方を勉強したとのこと。素晴らしいワインを造るには、まずは素晴らしいブドウがないと、ということで今でも栽培を一番大事にしています。ロコヤはジャクソン・ファミリーのワイナリーの一つであり、クリス・カーペンターはロコヤ以外にもいくつかのナパのワイナリーを担当しています。畑の管理も415エーカーに及びます。
前述のように、ワイン造りはまず素晴らしいブドウを育てることであり、場所を表現していることだといいます。醸造はできるだけシンプルに行います。さまざまな技術はありますが、どう栽培しているかが見えるようなワインを造りたいとのことです。
ワインのテイスティングに移ります。今回は2019年のワインを4つのAVAそれぞれについて試飲し、そのあとマウント・ヴィーダーについては2006、2010年と垂直で試飲します。最後に最新ヴィンテージの2021年からスプリング・マウンテンのカベルネを試飲します。ロコヤが作る4つのAVAを下の地図に示します。ワインはすべてカベルネソーヴィニヨン100%です。
最初の試飲はスプリング・マウンテンです。標高640mの自社畑イヴェルドン、標高300mの自社畑ワーテレに加え、契約栽培のスプリング・マウンテン・ヴィンヤード(標高550m)のブドウをブレンドしています。沖積土壌と火山性の土壌が混じっているのがこの地域の特徴でもあります。また、ロコヤのワイナリーはスプリング・マウンテンにあります。
カシスやブラックベリーに、レッド・チェリー、ブラッドオレンジ、バラの花など華やかな香りが特徴です。山のブドウだけあってタンニンも強く酸も高く、きれいで余韻の長いワイン。最初からびっくりするほど美味しいワインです。
次はダイヤモンド・マウンテン。スプリング・マウンテンの北側に隣接するAVAです。自社畑ライオライト・リッジ・ヴィンヤード (標高365m)、 自社畑ウォリス・ヴィンヤード (標高450m) に、契約栽培のアンドリュー・ジョフリー・ヴィンヤード (標高550m) をブレンドしています。黒曜石が土壌に含まれていてキラキラ光ることからこの名前が付いたと言われています。
スプリング・マウンテンよりも少し北にあることから少し温暖なAVAになります。畑の標高もスプリング・マウンテンより低いので、それも気温に関係しているかと思われます。赤系果実が感じられたスプリング・マウンテンと違い、ダイヤモンド・マウンテンは黒系から青系の果実、特にブルーベリーを強く感じます。チョコレートや黒鉛の風味もあり、ダークな印象。酸やタンニンはスプリング・マウンテンより少し控えめに感じられました。
3本目はヴァカ山脈側でロコヤが唯一造るハウエル・マウンテン。インポーター資料には「自社畑 W. S. キーズ・ヴィンヤード、ヴァカ山脈の北東に位置し標高556m、火山性のトゥーファ土壌 (火山灰堆積)と鉄分を含んだ赤い粘土」とあります。最初に植樹されたのは1888年という歴史ある畑です。
四つのワインの中で、これが一番リッチでパワフル。甘やかさも感じますが、一方で赤い果実の感じもあるのが面白い。酸は一番低く、タンニンは強いがシルキー。主張の強いワインなので好きな人とそうでない人には分かれるかもしれません。ちなみにジェブ・ダナックは100点、パーカー97点。
クリス・カーペンター本人はハウエル・マウンテンが一番好きだとのこと。グリーン・ノート(青っぽい風味)が感じられるところがいいと言っていましたが、私にはグリーン・ノートは分かりませんでした。
AVA水平試飲の最後はマウント・ヴィーダー。他の3つのAVAと比べるとかなり南にあり、ナパの山のAVAの中では一番冷涼と言われています。ワインもミントやセージなどハーブのニュアンスがあり、赤い果実に花の香り、酸高く、タンニンもガチガチに硬いです。非常に長塾型のワイン。最低10年くらいは置いてから飲みたいワインです。ちなみにジェブ・ダナックはこちらも100点を付けています。パーカー96+。
個人的には4つのAVAのワインの中でスプリング・マウンテンが一番良かったです。山らしい酸やタンニンに華やかな香り、もちろん熟成もできますが、今飲んでも十分に美味しい。
さて、一番長熟タイプのマウント・ヴィーダーは2010年と2006年も試飲しています。
2010年は酸高くきれいでエレガントな印象。タンニンはまだまだ強いです。2006年はミントの風味に赤果実、生肉のニュアンスも。やっぱりこれくらいは熟成させたい感じです。すばらしい。
最後に2021年のスプリング・マウンテンです。少し冷涼感がある2019年と比べると2021年は非常にパワフル。凝縮感もタンニンもものすごいレベルです。赤い果実はあまり感じられず、青系果実の風味が優性。すばらしいですが個人的には2019年のきれいさの方が良かったです。
山カベばかりをこれだけ並べて試飲する機会はめったにありません。特に4つのAVAの水平試飲はとても勉強にもなりました。ナパのカベルネ・ソーヴィニヨンの中で、ト・カロン・ヴィンヤードのカベルネ・ソーヴィニヨンなどヴァレーフロアのいわゆる「谷カベ」ももちろん素晴らしいですが、まったく個性の異なる「山カベ」もあるというのがナパの魅力の一つだと思います。山のワインは生産量が少ないものが多く、価格も高くなりがちですが、ぜひ体験してほしいワインです。
まずは、ナパの基本的なところを抑えておきましょう。
ナパヴァレーの東側にヴァカ山脈、西側にマヤカマス山脈があります。ナパは南にサンパブロ湾があり、そこから冷たい空気や霧が内陸に入ってくるので、基本的には南ほど涼しくなります。また、西側と東側を比べると、マヤカマス山脈は太平洋からの空気も入ってくるのでヴァカ山脈側よりも涼しくなります。また、山の畑の多くは霧がかかる標高よりも高いところにあるので、霧の影響を受けません。谷底など霧がかかるところは夜に気温が大きく下がり午前中にあまり日照を受けませんが、山は気温はそれほど下がらず朝から日照をしっかり受けます。一方で、標高によって気温は上がりにくいので、日較差は小さくなります。
土壌はヴァカ山脈側は火山性土壌が中心で、マヤカマス山脈側は沖積性の土壌が多くなりますが、場所にもよるので一概には言い切れないところもあります。痩せた土地が多く、水はけがいいため、ブドウの実は小さく凝縮したものになります。また、タンニンも強くなります。
クリス・カーペンターはシカゴの出身、生物学を学び、卒業後は医療機器のセールスやバーで働くなどをしていましたが仕事に満足できなかったそうです。レストランと科学、創造性の三つを総合した仕事がないかと考えたときに、ワイン造りが見付かったとのこと。そうしてUCデーヴィスで学び、醸造と栽培の両方を勉強したとのこと。素晴らしいワインを造るには、まずは素晴らしいブドウがないと、ということで今でも栽培を一番大事にしています。ロコヤはジャクソン・ファミリーのワイナリーの一つであり、クリス・カーペンターはロコヤ以外にもいくつかのナパのワイナリーを担当しています。畑の管理も415エーカーに及びます。
前述のように、ワイン造りはまず素晴らしいブドウを育てることであり、場所を表現していることだといいます。醸造はできるだけシンプルに行います。さまざまな技術はありますが、どう栽培しているかが見えるようなワインを造りたいとのことです。
ワインのテイスティングに移ります。今回は2019年のワインを4つのAVAそれぞれについて試飲し、そのあとマウント・ヴィーダーについては2006、2010年と垂直で試飲します。最後に最新ヴィンテージの2021年からスプリング・マウンテンのカベルネを試飲します。ロコヤが作る4つのAVAを下の地図に示します。ワインはすべてカベルネソーヴィニヨン100%です。
最初の試飲はスプリング・マウンテンです。標高640mの自社畑イヴェルドン、標高300mの自社畑ワーテレに加え、契約栽培のスプリング・マウンテン・ヴィンヤード(標高550m)のブドウをブレンドしています。沖積土壌と火山性の土壌が混じっているのがこの地域の特徴でもあります。また、ロコヤのワイナリーはスプリング・マウンテンにあります。
カシスやブラックベリーに、レッド・チェリー、ブラッドオレンジ、バラの花など華やかな香りが特徴です。山のブドウだけあってタンニンも強く酸も高く、きれいで余韻の長いワイン。最初からびっくりするほど美味しいワインです。
次はダイヤモンド・マウンテン。スプリング・マウンテンの北側に隣接するAVAです。自社畑ライオライト・リッジ・ヴィンヤード (標高365m)、 自社畑ウォリス・ヴィンヤード (標高450m) に、契約栽培のアンドリュー・ジョフリー・ヴィンヤード (標高550m) をブレンドしています。黒曜石が土壌に含まれていてキラキラ光ることからこの名前が付いたと言われています。
スプリング・マウンテンよりも少し北にあることから少し温暖なAVAになります。畑の標高もスプリング・マウンテンより低いので、それも気温に関係しているかと思われます。赤系果実が感じられたスプリング・マウンテンと違い、ダイヤモンド・マウンテンは黒系から青系の果実、特にブルーベリーを強く感じます。チョコレートや黒鉛の風味もあり、ダークな印象。酸やタンニンはスプリング・マウンテンより少し控えめに感じられました。
3本目はヴァカ山脈側でロコヤが唯一造るハウエル・マウンテン。インポーター資料には「自社畑 W. S. キーズ・ヴィンヤード、ヴァカ山脈の北東に位置し標高556m、火山性のトゥーファ土壌 (火山灰堆積)と鉄分を含んだ赤い粘土」とあります。最初に植樹されたのは1888年という歴史ある畑です。
四つのワインの中で、これが一番リッチでパワフル。甘やかさも感じますが、一方で赤い果実の感じもあるのが面白い。酸は一番低く、タンニンは強いがシルキー。主張の強いワインなので好きな人とそうでない人には分かれるかもしれません。ちなみにジェブ・ダナックは100点、パーカー97点。
クリス・カーペンター本人はハウエル・マウンテンが一番好きだとのこと。グリーン・ノート(青っぽい風味)が感じられるところがいいと言っていましたが、私にはグリーン・ノートは分かりませんでした。
AVA水平試飲の最後はマウント・ヴィーダー。他の3つのAVAと比べるとかなり南にあり、ナパの山のAVAの中では一番冷涼と言われています。ワインもミントやセージなどハーブのニュアンスがあり、赤い果実に花の香り、酸高く、タンニンもガチガチに硬いです。非常に長塾型のワイン。最低10年くらいは置いてから飲みたいワインです。ちなみにジェブ・ダナックはこちらも100点を付けています。パーカー96+。
個人的には4つのAVAのワインの中でスプリング・マウンテンが一番良かったです。山らしい酸やタンニンに華やかな香り、もちろん熟成もできますが、今飲んでも十分に美味しい。
さて、一番長熟タイプのマウント・ヴィーダーは2010年と2006年も試飲しています。
2010年は酸高くきれいでエレガントな印象。タンニンはまだまだ強いです。2006年はミントの風味に赤果実、生肉のニュアンスも。やっぱりこれくらいは熟成させたい感じです。すばらしい。
最後に2021年のスプリング・マウンテンです。少し冷涼感がある2019年と比べると2021年は非常にパワフル。凝縮感もタンニンもものすごいレベルです。赤い果実はあまり感じられず、青系果実の風味が優性。すばらしいですが個人的には2019年のきれいさの方が良かったです。
山カベばかりをこれだけ並べて試飲する機会はめったにありません。特に4つのAVAの水平試飲はとても勉強にもなりました。ナパのカベルネ・ソーヴィニヨンの中で、ト・カロン・ヴィンヤードのカベルネ・ソーヴィニヨンなどヴァレーフロアのいわゆる「谷カベ」ももちろん素晴らしいですが、まったく個性の異なる「山カベ」もあるというのがナパの魅力の一つだと思います。山のワインは生産量が少ないものが多く、価格も高くなりがちですが、ぜひ体験してほしいワインです。
ナパのオークヴィルにあるヴァイン・ヒル・ランチ(Vine Hill Ranch)は、ナパヴァレーの中でも有数の銘醸畑であり、今でもブドウの多くを他のワイナリーに販売しています。一方で、自社のワインブランドVine Hill Ranchもトップクラスの評価を得るにいたっています。そのヴァイン・ヒル・ランチについての記事が出ていました(Meet the Napa Valley Vineyard That Grows Some of the Region’s Best Grapes)。
ヴァイン・ヒル・ランチの歴史は1859年にまでさかのぼりますが、現在の形を作ったのは1959年に買収したフィリップス家によるものです。畑の大部分はカベルネ・ソーヴィニヨンで、このほかプティ・ヴェルドが少量植えられています。
現在、ヴァイン・ヒル・ランチの単一畑のワインを造っているワイナリーとしてはTor、Memento Mori、Kindsman Eades、Arrow & Branch、Annulus、Bond(Vecina)があります。このほかにもColgin、Accendo Cellars、Lail Vineyards、Simon Familyなどにブドウを売っています。
上の地図に示したように、畑はオークヴィルの西側、マヤカマス山脈の麓の沖積扇状地にあります。フィリップス家の土地は600エーカーもありますが、うち72エーカーばブドウ畑になっています。畑を管理しているのはマイク・ウルフで、この65年間で2人目の畑の管理者となっています。72エーカーは、ナパの畑の中ではかなり広い方ですが、ブロックごとに植密度や剪定、クローン、ルートストックなどが異なるため、それぞれに合った管理が必要になっています。特定のスタイルのブドウを育てるというよりも、キャノピー内の均一性に気を配っているとのことです。
この畑のブドウを使うワインメーカーは、水はけの良さや適度の冷涼感といったテロワールに加え、畑の管理のすばらしさでここを選んでいます。Torのトール・ケンワード氏はこの土地で造られるワインは旧世界の性格が強いと考えています。「私はその非常に独特な性格が大好きです。それは、前世紀のナパヴァレーの最高のワインを思い出させます」とケンワード氏は言います。
ブドウの85%は外部に販売していますが、15%は自社のワイナリーで使っています。ワインの大部分はメーリング・リストで販売され、フレンチ・ランドリーなどナパの著名なレストランにも卸されています。
2021年からはセカンドワインの「Baker & Hamilton Cabernet Sauvignon」を作っています。ヴァイン・ヒル・ランチのワインが300ドルするのに対し、こちらは125ドルとだいぶ安くなっています。この名前は、現オーナーのおじいさんのおじいさんに当たる人が作った会社名に由来しています。
InsightAce Analytic Pvt. Ltd. の最近のレポートによると、オーガニックワインの市場は 2021年に98億4000万米ドルと評価され、2030年までに250億7000万米ドルという驚異的な額に達すると予想されています。年平均成長率 (CAGR) は11.3%に達します(Organic wine market set to triple by 2030)。
オーガニックワインの市場を牽引しているのは「ミレニアル世代」(1980年代から1990年代前半に生まれた世代)。米国ではミレニアル世代のワイン愛好者の30%がオーガニックワインを高品質と考えています。
また、サスティナブルへの意識の高まりとあいまって、パッケージングへの関心も高くなってきています。ガラス瓶が主流であり続けてはいますが。缶入りワインの人気も高くなってきています。
オーガニックワインの市場を牽引しているのは「ミレニアル世代」(1980年代から1990年代前半に生まれた世代)。米国ではミレニアル世代のワイン愛好者の30%がオーガニックワインを高品質と考えています。
また、サスティナブルへの意識の高まりとあいまって、パッケージングへの関心も高くなってきています。ガラス瓶が主流であり続けてはいますが。缶入りワインの人気も高くなってきています。
ヴィナス(Vinous)でアントニオ・ガッローニがナパとソノマのレポートを相次いで公表しています。非常に極端に性格が分かれた2022年と2023年のヴィンテージについての所感をまとめておきます。
まず、2022年は「2つのヴィンテージ」と言われるように、一つの年ではありますが前半と後半で大きく性格が分かれます。その原因となったのが9月上旬の熱波で、40℃後半にもなるような異常な暑さが1週間近くも続きました。これによってブドウは酸が落ちてしまったり、成熟を止めてしまったり、場合によってはブドウの実の中で発酵が始まってしまうといったことまであったようです。この熱波の前に収穫したか、熱波を越えてから収穫したかが、大きなポイントとなっています。
一方、2023年は稀に見る涼しいヴィンテージでした。生育は通常の3週間遅れで進行し、11月に入っても収穫が続くところもありました。ただ、熱波や雨といった品質低下につながりやすいイベントは起こらず、安定した天候が続いたため、適熟の状態で収穫でき「一生に一度のヴィンテージ」とまで言われていました。
ナパの場合、2022年は熱波のときに「果実が熟しかけ」「完熟状態」「成熟のまだ手前」の3段階によって状況が分かれました。「果実が熟しかけ」の生産者は熱波の間に急いで収穫をし、いい状態のブドウを手に入れられました。「成熟のまだ手前」だった生産者は熱波の後、改めて成熟を待ちましたが今度は低温や雨といった事象にも悩まされました。一番問題だったのは熱波前に完熟に達してしまったところで、熱波によってレーズン化してしまうなどの問題が生じました。また熱波前に収穫をしようとしても必要な働き手が見つからずに収穫できなかったというところもあるようです。特にメルローでは問題が大きかったと見られます。
ソノマでも熱波の影響はありましたが、熱波による暑さはナパほどではなかったので、そこまで大きな問題にはなりませんでした。「2022年のピノは、濃厚で芳醇なワインであり、テクスチャーの強さが際立っています。2022年は熟したワインもあれば、粒状でやや粗いタンニンに暑さの影響が見られるワインもあります」とガッローニは記しています。やや大柄なワインになる傾向はあるものの、特別に難しい年ということでもなったようです。
一方、2023年ですが2022年とは逆にソノマの方が難しいヴィンテージとなりました。確かに雨も降らず、熱波もなく安定した天候が続きましたが、あまりにも冷涼な地域ではブドウが完熟できなかったところもありました。冷涼でブドウが完熟しないところが多かった2011年よりもさらに涼しかったという声も聞かれたようです。2022年のソノマは涼しい地域の方が高品質でしたが、2023年のソノマは涼しい地域では熟度が上がりにくく、暖かい地域の方がそうじてよくできていました。
2023年のナパはソノマのようなブドウが完熟しない問題もなかったので、いいヴィンテージであることは間違いないようです。
まず、2022年は「2つのヴィンテージ」と言われるように、一つの年ではありますが前半と後半で大きく性格が分かれます。その原因となったのが9月上旬の熱波で、40℃後半にもなるような異常な暑さが1週間近くも続きました。これによってブドウは酸が落ちてしまったり、成熟を止めてしまったり、場合によってはブドウの実の中で発酵が始まってしまうといったことまであったようです。この熱波の前に収穫したか、熱波を越えてから収穫したかが、大きなポイントとなっています。
一方、2023年は稀に見る涼しいヴィンテージでした。生育は通常の3週間遅れで進行し、11月に入っても収穫が続くところもありました。ただ、熱波や雨といった品質低下につながりやすいイベントは起こらず、安定した天候が続いたため、適熟の状態で収穫でき「一生に一度のヴィンテージ」とまで言われていました。
ナパの場合、2022年は熱波のときに「果実が熟しかけ」「完熟状態」「成熟のまだ手前」の3段階によって状況が分かれました。「果実が熟しかけ」の生産者は熱波の間に急いで収穫をし、いい状態のブドウを手に入れられました。「成熟のまだ手前」だった生産者は熱波の後、改めて成熟を待ちましたが今度は低温や雨といった事象にも悩まされました。一番問題だったのは熱波前に完熟に達してしまったところで、熱波によってレーズン化してしまうなどの問題が生じました。また熱波前に収穫をしようとしても必要な働き手が見つからずに収穫できなかったというところもあるようです。特にメルローでは問題が大きかったと見られます。
いくつかの例外はあるものの、2022年のワインは、例年のワインに比べて色、ボディ、タンニンが薄い。高熱で色が褪せ、タンニンが劣化し、最良の年のような躍動感のないワインとなった。糖度は前例のないレベルまで上昇し、2022年産ワインの多くはセラーでの調整が必要となった。これには、水と酸の追加、非常に軽いワインのためのマストのブリーディング、タンニンの追加など、さまざまな技術が含まれる。一部のワインは驚くほど新鮮で、おそらく2023年の果汁がブレンドされていると思われる。アルコール度数は、果実の収穫時期によってかなり異なる。と書かれています。ヴィンテージ表記を付けるにはAVA表記が付く場合は95%以上、つかない場合は85%以上がそのヴィンテージのブドウである必要があるので5%ないし15%、2023年のヴィンテージを加えた生産者もあるのでしょう。
ソノマでも熱波の影響はありましたが、熱波による暑さはナパほどではなかったので、そこまで大きな問題にはなりませんでした。「2022年のピノは、濃厚で芳醇なワインであり、テクスチャーの強さが際立っています。2022年は熟したワインもあれば、粒状でやや粗いタンニンに暑さの影響が見られるワインもあります」とガッローニは記しています。やや大柄なワインになる傾向はあるものの、特別に難しい年ということでもなったようです。
一方、2023年ですが2022年とは逆にソノマの方が難しいヴィンテージとなりました。確かに雨も降らず、熱波もなく安定した天候が続きましたが、あまりにも冷涼な地域ではブドウが完熟できなかったところもありました。冷涼でブドウが完熟しないところが多かった2011年よりもさらに涼しかったという声も聞かれたようです。2022年のソノマは涼しい地域の方が高品質でしたが、2023年のソノマは涼しい地域では熟度が上がりにくく、暖かい地域の方がそうじてよくできていました。
2023年のナパはソノマのようなブドウが完熟しない問題もなかったので、いいヴィンテージであることは間違いないようです。
試飲してみると、2023年は香りがよく、洗練されたワインだった。間違いなく、美しく並外れたワインがたくさんあるヴィンテージだ。今のところ、2023年が本当に素晴らしいヴィンテージだとは思っていないが、最終的には時が経てばわかるだろう。
米国の「酒類・タバコ税貿易管理局(TTB)」がアルコール飲料のラベル記載義務に関する新しい提案を公表しています。
Federal Register :: Major Food Allergen Labeling for Wines, Distilled Spirits, and Malt Beverages
それによると、主な変更点は二つあります。一つは栄養表示に関するもの。食品と同様に、カロリー、炭水化物、脂肪、タンパク質などの栄養成分表示を義務化する予定です。
もう一つはアレルゲンの表示。アルコール飲料に含まれるアレルゲン物質の表示も義務化される可能性があります。
これらはまだ決定したものではありませんが、おそらくそのまま義務化される可能性が高いでしょう。
Federal Register :: Major Food Allergen Labeling for Wines, Distilled Spirits, and Malt Beverages
それによると、主な変更点は二つあります。一つは栄養表示に関するもの。食品と同様に、カロリー、炭水化物、脂肪、タンパク質などの栄養成分表示を義務化する予定です。
もう一つはアレルゲンの表示。アルコール飲料に含まれるアレルゲン物質の表示も義務化される可能性があります。
これらはまだ決定したものではありませんが、おそらくそのまま義務化される可能性が高いでしょう。
ポルトガルのTree Flowers Solutionsという会社が、SO2(亜硫酸塩)の代わりに使う栗の花の粉末「Chestwine」を開発しました。
SO2は酸化防止剤と言われるように、ワインの酸化を防ぎ、微生物の増殖を妨げます。ワインの長期保存のためには欠かせない存在ですが、一方で人体に有害だとして嫌われてもいます。確かに大量に摂取すれば悪影響はあるでしょうが、現在ではSO2の利用はかなり抑えられており、実際に健康問題が起こる可能性は非常に低いと思います。とはいえ、人体に有害なものは少しでも摂取したくないという考えの人も少なからずおり、酸化防止剤無添加のワインが作られる動機にもなっています(正確には酸化防止剤としてはビタミンC=アスコルビン酸などもありますが、最も広く使われているのがSO2です。本記事のタイトルに酸化防止剤としているのも本来はSO2あるいは亜硫酸塩としないといけませんが、間違いは承知で敢えて使っています)。
その代替品として白羽の矢が立ったのが栗の雄花で、フェノール酸とタンニンを多く含んでおり、ワインの酸化や微生物の増殖を防ぐのに使えます。スペインのBraganza UniversityとPolytechnic Instituteが2017年に特許を取得しており、その後Philippe Ortegaという人が中心になって特許を買い取ってTree Flowers Solutionsの設立となりました。
Chestwineは粉末になっており、収穫後の移動やブドウの破砕、熟成やボトリングなどSO2と同様、様々な場面で利用できます。有機栽培の認証を取っており、オーガニックなワインに添加が可能です。
価格は最終的なワイン1ボトルあたり50セント以下と見込まれています。既にポルトガルとスペインなどでは初期ユーザーがおり、称賛を得ています。
Bodegas Mazuelaというリオハのワイナリーでは2024年に主要ワインのテンプラニーリョでCheswineを使い、結果に満足しているといいます。
フランスのロワール地方のDomaine Thetでは次のように語っています。「私たちは2つのシュナン・ブランワインを比較しました。1つは6ヘクトリットルの卵形の樽で1ヘクトリットルあたり30グラムのCheswineを使用して作られ、もう1つは同じジュースで1ヘクトリットルあたり2グラムのSO2を使用して作られました。 2つの製品は非常に異なっています。前者はより風味豊かでトロピカルフルーツの香りがより顕著であるのに対し、後者はより伝統的で、リンゴやライムグリーンの香りを想起させます」
このほかシャンパーニュやソーテルヌでもテスト使用が始まっているようです。
米国では食品医薬品局の認証を申請中です。米国では「Organic Wine」とラベルに称するにはSO2を使用しないことが必要となるため、これまでほとんどOrganic Wineはありませんでした。Chestwineを使えば、Organic Wineとしても認可されるので、Organicと銘打ちたい人には朗報となりそうです。
なお、コスト的にはボトル1本あたり50セント程度のもよう。低価格ワインには使いにくいですが、高級ワインであれば問題ないレベルと思われます。
杉本隆英さんと美代子さんの夫妻がプロデュースするシャトー・イガイタカハ。そのフラッグシップのピノ・ノワール「園(その)」は2013年からJALのファーストクラスでも提供されており、Vinousで94点を取ったこともある実力派ワインです。
ラベルに漢字をあしらったイガイタカハの「漢字シリーズ」は元々、ブリュワー・クリフトンやダイアトムのワインメーカーとして知られるグレッグ・ブリュワー氏とのコラボで始まったもの。いろいろと紆余曲折ありましたが、残念ながら2019ヴィンテージでグレッグは退任しています。
その間の歴史については、こちらの記事をご参照ください。
グレッグ・ブリュワー、シャトー・イガイタカハ「漢字ワイン」を退任
なお、この記事では今後はケネス・ガミア氏が園などを担当すると記していますが、実際にはポール・ラト氏が現在はワインを造っています。
シャトー・イガイタカハは今年で20周年。それを記念してバックヴィンテージであり、まさに飲み頃の2018年の園を特別価格1万円(税抜き)での販売を始めました。480本限定となっています。
ご購入はこちらから。
2018 シャトー・イガイタカハ 園ピノ・ノワール Ch.igai Takaha Sono Pinot Noir | Winelife ONLINE SHOP
ラベルに漢字をあしらったイガイタカハの「漢字シリーズ」は元々、ブリュワー・クリフトンやダイアトムのワインメーカーとして知られるグレッグ・ブリュワー氏とのコラボで始まったもの。いろいろと紆余曲折ありましたが、残念ながら2019ヴィンテージでグレッグは退任しています。
その間の歴史については、こちらの記事をご参照ください。
グレッグ・ブリュワー、シャトー・イガイタカハ「漢字ワイン」を退任
なお、この記事では今後はケネス・ガミア氏が園などを担当すると記していますが、実際にはポール・ラト氏が現在はワインを造っています。
シャトー・イガイタカハは今年で20周年。それを記念してバックヴィンテージであり、まさに飲み頃の2018年の園を特別価格1万円(税抜き)での販売を始めました。480本限定となっています。
ご購入はこちらから。
2018 シャトー・イガイタカハ 園ピノ・ノワール Ch.igai Takaha Sono Pinot Noir | Winelife ONLINE SHOP
年間100万ケースものワインを38のワイン・ブランドで生産し、さらに他社向けに100万ケース、それだけでなく特定クライアント向けのワインを65種類も作っているワイナリーがナパにあるのをご存じでしょうか。「フィオール・ディ・ソーレ(Fior di Sole)」という名前を聞いてピンと来なくても「カモミ」や「ベンド」「イーター」「アデュレーション」「ジ・アトム」といったブランド名は聴いたことがある人が多いのではないでしょうか。どれもコスト・パフォーマンスの高いワインを造ることで知られているブランドです。「Fior di Sole: The Largest Winery in Napa You've Never Heard Of」の内容を中心に紹介します。
これが自社ブランドの一覧です。私が知っているブランドは10余りですが、「Fior di Sole」で検索すると、ここに挙げられていないブランドも出てきます。おそらくは特定顧客向けに作っているワインが日本に流れてきているのではないかと思います。
フィオール・ディ・ソーレを設立したのはステファーノ・ミゴットとヴァレンティーナ・グオーロの夫妻。ミゴットはイタリアで父親から引き継いだワイナリーを12年間経営し、1997年にカリフォルニアに移住してきました。
ミゴットがカリフォルニアに来て最初に思ったのはカリフォルニアがイタリアに比べて技術的に遅れているということ。そこで彼がイタリアで使っていたフィルターなどの技術をカリフォルニアで提供する「ワインテック」という会社を最初に始めました。当初はあまり受け入れられなかったのですが、様々なワイナリーと付き合う中で、米国のワイン業界のことを学び、自身でのワイン造りにも取り掛かります。2008年にはナパの倉庫で、使われていないボトリングラインを見つけてそこをワイナリーにします。そうして始まったのがフィオール・ディ・ソーレです。
フィオール・ディ・ソーレでは最新鋭のボトリングラインを次々と導入すると共に、ボトリングラインでCCOFによる有機認証を得たり、水の使用量を通常の半分以下にする工夫をしたりと、環境面にも気を使っています。澱の回収サービスも行っており、澱を分析してヴィネガー生産やワイン生産に使うなどの再利用も行っています。カリフォルニア中のワイナリーがこのサービスを利用しているとのことです。
このほか、シャルマ方式のスパークリングワインを造る設備も備えています。
成長を続けるフィオール・ディ・ソーレ。ナパだけでなくカリフォルニアのコスパ系ワインを支える重要なワイナリーです。
これが自社ブランドの一覧です。私が知っているブランドは10余りですが、「Fior di Sole」で検索すると、ここに挙げられていないブランドも出てきます。おそらくは特定顧客向けに作っているワインが日本に流れてきているのではないかと思います。
フィオール・ディ・ソーレを設立したのはステファーノ・ミゴットとヴァレンティーナ・グオーロの夫妻。ミゴットはイタリアで父親から引き継いだワイナリーを12年間経営し、1997年にカリフォルニアに移住してきました。
ミゴットがカリフォルニアに来て最初に思ったのはカリフォルニアがイタリアに比べて技術的に遅れているということ。そこで彼がイタリアで使っていたフィルターなどの技術をカリフォルニアで提供する「ワインテック」という会社を最初に始めました。当初はあまり受け入れられなかったのですが、様々なワイナリーと付き合う中で、米国のワイン業界のことを学び、自身でのワイン造りにも取り掛かります。2008年にはナパの倉庫で、使われていないボトリングラインを見つけてそこをワイナリーにします。そうして始まったのがフィオール・ディ・ソーレです。
フィオール・ディ・ソーレでは最新鋭のボトリングラインを次々と導入すると共に、ボトリングラインでCCOFによる有機認証を得たり、水の使用量を通常の半分以下にする工夫をしたりと、環境面にも気を使っています。澱の回収サービスも行っており、澱を分析してヴィネガー生産やワイン生産に使うなどの再利用も行っています。カリフォルニア中のワイナリーがこのサービスを利用しているとのことです。
このほか、シャルマ方式のスパークリングワインを造る設備も備えています。
成長を続けるフィオール・ディ・ソーレ。ナパだけでなくカリフォルニアのコスパ系ワインを支える重要なワイナリーです。
ワインスペクテーターが2024年のヴァリューワイントップ10を発表しています。以下にリストと、日本で売っている場合のリンクを載せています。
1. SEGHESIO Zinfandel Sonoma County 2022
93 points | $26 | 112,500 cases made
2. ROEDERER ESTATE Brut Anderson Valley NV
93 points | $32 | California
3. RUFFINO Chianti Classico Ducale Riserva 2019
92 points | $25 | Italy
4. ARGYLE Pinot Noir Willamette Valley 2022
92 points | $28 | Oregon
5. ANTINORI Toscana Villa Antinori 2021
92 points | $25 | Italy
6. CRAGGY RANGE Sauvignon Blanc Martinborough Te Muna 2023
94 points | $26 | New Zealand
7. DRY CREEK Sauvignon Blanc Dry Creek Valley 2022
92 points | $25 | California
8. BODEGAS TERRAZAS DE LOS ANDES Malbec Mendoza Reserva 2022
91 points | $20 | Argentina
9. LA RIOJA ALTA Rioja Viña Alberdi Reserva 2019
91 points | $25 | Spain
10. FRANK FAMILY Chardonnay Carneros 2022
92 points | $40 | California
コスパワインなので、価格が大事ですが、国内で売っているものはドルの価格と比べて安いものが多くあります。ただ、1位のセゲシオジンファンデルについては3本で2万2000円ですから、1本あたり7000円くらいになり、米国の価格と比べてちょっと割高です。
2位のロデレールのブリュットは、日本では「カルテット」として売っているワイン。エノテカ輸入でエノテカでは5500円くらいですが、他のショップでは4000円前後と、米国の32ドルと比べてもかなり安く売っています。このスパークリング、とてもいいと思います。以前自宅セラーで3年ほど熟成したものを飲みましたが、さらによくなっていました。
あとはUSワインで国内で流通しているものはなさそうです。ドライクリークのソーヴィニヨン・ブランは大昔は輸入されていたと思いますが、今では見かけません。
1. SEGHESIO Zinfandel Sonoma County 2022
93 points | $26 | 112,500 cases made
2. ROEDERER ESTATE Brut Anderson Valley NV
93 points | $32 | California
3. RUFFINO Chianti Classico Ducale Riserva 2019
92 points | $25 | Italy
4. ARGYLE Pinot Noir Willamette Valley 2022
92 points | $28 | Oregon
5. ANTINORI Toscana Villa Antinori 2021
92 points | $25 | Italy
6. CRAGGY RANGE Sauvignon Blanc Martinborough Te Muna 2023
94 points | $26 | New Zealand
7. DRY CREEK Sauvignon Blanc Dry Creek Valley 2022
92 points | $25 | California
8. BODEGAS TERRAZAS DE LOS ANDES Malbec Mendoza Reserva 2022
91 points | $20 | Argentina
9. LA RIOJA ALTA Rioja Viña Alberdi Reserva 2019
91 points | $25 | Spain
10. FRANK FAMILY Chardonnay Carneros 2022
92 points | $40 | California
コスパワインなので、価格が大事ですが、国内で売っているものはドルの価格と比べて安いものが多くあります。ただ、1位のセゲシオジンファンデルについては3本で2万2000円ですから、1本あたり7000円くらいになり、米国の価格と比べてちょっと割高です。
2位のロデレールのブリュットは、日本では「カルテット」として売っているワイン。エノテカ輸入でエノテカでは5500円くらいですが、他のショップでは4000円前後と、米国の32ドルと比べてもかなり安く売っています。このスパークリング、とてもいいと思います。以前自宅セラーで3年ほど熟成したものを飲みましたが、さらによくなっていました。
あとはUSワインで国内で流通しているものはなさそうです。ドライクリークのソーヴィニヨン・ブランは大昔は輸入されていたと思いますが、今では見かけません。
ロスアンゼルスの山火事については、日本のニュースでも数多く取り上げられておりますが、ここでも報告しておきます。
現在、五つの山火事がロスアンゼルス近郊で発生しています。いずれも鎮火には至っていませんが、中でも大きいのがサンタモニカの西側で発生したパリセーズ・ファイア(Palisades Fire)とパサディナの北で発生したイートン・ファイア(Eaton Fire)。亡くなった方は11人以上。12300を超える建物が焼失したと見られています。
パリセーズ・ファイアの延焼範囲は22660エーカー(約91.5平方キロ)。コンテインは11%(延焼範囲の外枠の中で、それ以上火災が広がらないように食い止めているラインの比率のこと)。
イートン・ファイアの延焼範囲は14117エーカー(約57.1平方キロ)。コンテインは15%。
残りの3つのうち2つはコンテインが80%、76%とおおむね食い止めている状況で、もう一つはコンテインはゼロですが19エーカーと規模は小さいです。
特に高級住宅地を含んでいるのがパリセーズ・ファイアです。イートン・ファイアは少し規模が小さいですが、亡くなった方はこちらの方が多いようです。
カリフォルニアは11月から雨季で、一般的には山火事シーズンではないのですが、今年は南カリフォルニアで降雨量が少ないことと、気温が比較的高いこと、また強風で燃え広がるスピードが早いことが被害を拡大しているようです。
今回は保険による賠償金も天文学的な価格になりそうであり、今後の山火事に関する保険にも影響が大きいと思われます。2017年や2020年の山火事でも保険料問題は浮上していましたが、今回はさらに大きな問題に発展しそうな気がします。
現在、五つの山火事がロスアンゼルス近郊で発生しています。いずれも鎮火には至っていませんが、中でも大きいのがサンタモニカの西側で発生したパリセーズ・ファイア(Palisades Fire)とパサディナの北で発生したイートン・ファイア(Eaton Fire)。亡くなった方は11人以上。12300を超える建物が焼失したと見られています。
パリセーズ・ファイアの延焼範囲は22660エーカー(約91.5平方キロ)。コンテインは11%(延焼範囲の外枠の中で、それ以上火災が広がらないように食い止めているラインの比率のこと)。
イートン・ファイアの延焼範囲は14117エーカー(約57.1平方キロ)。コンテインは15%。
残りの3つのうち2つはコンテインが80%、76%とおおむね食い止めている状況で、もう一つはコンテインはゼロですが19エーカーと規模は小さいです。
特に高級住宅地を含んでいるのがパリセーズ・ファイアです。イートン・ファイアは少し規模が小さいですが、亡くなった方はこちらの方が多いようです。
カリフォルニアは11月から雨季で、一般的には山火事シーズンではないのですが、今年は南カリフォルニアで降雨量が少ないことと、気温が比較的高いこと、また強風で燃え広がるスピードが早いことが被害を拡大しているようです。
今回は保険による賠償金も天文学的な価格になりそうであり、今後の山火事に関する保険にも影響が大きいと思われます。2017年や2020年の山火事でも保険料問題は浮上していましたが、今回はさらに大きな問題に発展しそうな気がします。
カリフォルニアの沿岸の夏は本当に涼しいです。寒いといってもいいくらい。例えば、サンタ・クルーズの辺りの海に近いところの年間の気温を示したのが下のグラフです。8月でも昼間の最高気温が10℃台。一番気温が高い10月でも18℃。逆に一番気温が低い1月は13℃と年間を通してほとんど気温が変わりません。
ちなみに、カリフォルニアの沿岸ではラッコが見られるところがありますが、ラッコは水温15度以上のところでは生活できないそうなので、水温も年間通じてそれ以下であるのは確実です。
この涼しさはアラスカから流れてくる海流の影響であると、いつも説明していますが、それだけでなく地球の自転がかかわっているということをブラインドテイスティングで有名な田尻智之さんが、投稿されていました。
Note(WSET Level3 練習問題(番外編:カリフォルニアと沿岸湧昇) | The Planet of Wine)では、数式を使って分かりやすくモデル化して説明しています。
数式は見たくないという人も多いでしょうから、簡潔に説明します。西海岸では夏場、太平洋に高気圧、陸上に低気圧が生じ、結果として北寄りの風が長時間吹きます。風によって海面の水は北から南に力を受けますが、このときに地球の自転の影響で、風向きから90°右向きの方向に移動するような力が生じるのです(学生時代に地学を習った人は「コリオリの力」という名前を憶えているかもしれません)。北風に対して90°右向きですから東から西に向かう力になり、結果として海面の水は海岸から離れていきます。
海面の水が沿岸から離れる方向に移動することによって、海底から水が上がってきます。これを「沿岸湧昇」といいます。カリフォルニア近辺は海が深く、深海の水温は非常に低くなっています。この水が上がってくることで沿岸の水温が低くなるのです。
もちろん寒流で運ばれてくる冷たい水も大きく影響していますが、夏場の極端な涼しさについてはそれだけでは説明しきれないという感じは以前から持っておりました。この沿岸湧昇の影響が加わることで冬と変わらないような低温が続くというのは、すごく納得がいきます。
ちなみに、カリフォルニアの沿岸ではラッコが見られるところがありますが、ラッコは水温15度以上のところでは生活できないそうなので、水温も年間通じてそれ以下であるのは確実です。
この涼しさはアラスカから流れてくる海流の影響であると、いつも説明していますが、それだけでなく地球の自転がかかわっているということをブラインドテイスティングで有名な田尻智之さんが、投稿されていました。
沿岸付近の海水は、コリコリの力により西へ運ばれるのである。
— Tomo Blind Wine Tasting (@wine_planetary) January 3, 2025
運ばれた分の海水は深部から湧昇という形で補償されるのだが、深部からの水は冷たい。
そのため、カリフォルニアの沿岸付近は冷たく、霧が発達しやすい
なぜ西へ?と思う方へ、下記で数式で解説してます!笑https://t.co/JU9IymtreZ
Note(WSET Level3 練習問題(番外編:カリフォルニアと沿岸湧昇) | The Planet of Wine)では、数式を使って分かりやすくモデル化して説明しています。
数式は見たくないという人も多いでしょうから、簡潔に説明します。西海岸では夏場、太平洋に高気圧、陸上に低気圧が生じ、結果として北寄りの風が長時間吹きます。風によって海面の水は北から南に力を受けますが、このときに地球の自転の影響で、風向きから90°右向きの方向に移動するような力が生じるのです(学生時代に地学を習った人は「コリオリの力」という名前を憶えているかもしれません)。北風に対して90°右向きですから東から西に向かう力になり、結果として海面の水は海岸から離れていきます。
海面の水が沿岸から離れる方向に移動することによって、海底から水が上がってきます。これを「沿岸湧昇」といいます。カリフォルニア近辺は海が深く、深海の水温は非常に低くなっています。この水が上がってくることで沿岸の水温が低くなるのです。
もちろん寒流で運ばれてくる冷たい水も大きく影響していますが、夏場の極端な涼しさについてはそれだけでは説明しきれないという感じは以前から持っておりました。この沿岸湧昇の影響が加わることで冬と変わらないような低温が続くというのは、すごく納得がいきます。
1976年の「パリスの審判」は、カリフォルニアのみならず、ニューワールドのワイン生産者すべてに勇気を与え、その品質が急上昇するきっかけになりました。カリフォルニアワインの歴史の中でも、ゴールドラッシュ、禁酒法と並んで極めて重要な出来事であったのは間違いありません。
このイベントを成功させた影の功労者がジョアン・ディッケンソン・デピュイ(Joanne Dickenson DePuy)という人。その功績をまとめた記事が出ていました(Joanne Dickenson DePuy, the Woman Who Helped Change Napa Forever)。この人については、私もほとんど知りませんでした。パリスの審判のTimes誌の記事を書いたジョージ・テイバーによる書籍『パリスの審判 カリフォルニア・ワインVSフランス・ワイン』では主催者のスティーヴン・スパリエの右腕となって働いたパトリシア・ギャラガーについては詳しく書かれていたものの、この方にはほとんど触れられていなかったような気がします。
彼女の功績の一つは、カリフォルニアのワインを選びに来たスティーヴン・スパリエとパトリシア・ギャラガーに、ナパのワイナリーを紹介したこと。彼女が紹介した中に、白で1位を取ったモンテレーナや赤で1位を取ったスタッグスリープ・ワイン・セラーズも含まれていました。
それだけであれば、彼女が紹介せずとも、出会っていた可能性が高いと思いますが、さらに重要なことがあります。試飲会で使うワインをフランスに輸送するという重要な責務を背負ったのです。
彼女は1973年に「ワインツアーズ・インターナショナル」という会社を設立し、ナパからフランスの名産地へのツアーを企画しました。アンドレ・チェリチェフがガイドをするといったツアーまで行いました。そういったことから、スティーヴン・スパリエがナパに来たときのガイド役も務めたのでした。
試飲会用のワインは赤6種、白6種をそれぞれ3本。計3ケース分ありました。スティーヴン・スパリエはそれをフランスに送る手配をしていたのですが、フランスの関税法と航空規制で発送できないということが直前にわかり、デピュイにヘルプを求めたのです。ちょうどアンドレ・チェリチェフのツアーでフランスに行く直前だった彼女はそれを引き受けたのです。
ツアーメンバーが、それぞれの荷物の一部として運ぶ(映画『ボトルショック』ではそのように描かれていました)という案もありましたが、リスクが大きく却下。結局航空会社と粘り強く交渉して、貨物として運んでもらえることになりました。ワインは1本が破損したものの、残りは無事に到着し、試飲会も開催できました。
ちなみに、試飲会でモンテレーナが1位になったことをオーナーのジム・バレットはフランスのツアー中に知ったということがジョージ・ティーバーの書籍にも書かれていたと思いますが、このフランスのツアーこそ、上記のデピュイの主催によるアンドレ・チェリチェフのツアーだったのでした。
彼女は現在97歳。今もナパヴァレーの様々なイベントに活発に参加しているとのことです。
このイベントを成功させた影の功労者がジョアン・ディッケンソン・デピュイ(Joanne Dickenson DePuy)という人。その功績をまとめた記事が出ていました(Joanne Dickenson DePuy, the Woman Who Helped Change Napa Forever)。この人については、私もほとんど知りませんでした。パリスの審判のTimes誌の記事を書いたジョージ・テイバーによる書籍『パリスの審判 カリフォルニア・ワインVSフランス・ワイン』では主催者のスティーヴン・スパリエの右腕となって働いたパトリシア・ギャラガーについては詳しく書かれていたものの、この方にはほとんど触れられていなかったような気がします。
彼女の功績の一つは、カリフォルニアのワインを選びに来たスティーヴン・スパリエとパトリシア・ギャラガーに、ナパのワイナリーを紹介したこと。彼女が紹介した中に、白で1位を取ったモンテレーナや赤で1位を取ったスタッグスリープ・ワイン・セラーズも含まれていました。
それだけであれば、彼女が紹介せずとも、出会っていた可能性が高いと思いますが、さらに重要なことがあります。試飲会で使うワインをフランスに輸送するという重要な責務を背負ったのです。
彼女は1973年に「ワインツアーズ・インターナショナル」という会社を設立し、ナパからフランスの名産地へのツアーを企画しました。アンドレ・チェリチェフがガイドをするといったツアーまで行いました。そういったことから、スティーヴン・スパリエがナパに来たときのガイド役も務めたのでした。
試飲会用のワインは赤6種、白6種をそれぞれ3本。計3ケース分ありました。スティーヴン・スパリエはそれをフランスに送る手配をしていたのですが、フランスの関税法と航空規制で発送できないということが直前にわかり、デピュイにヘルプを求めたのです。ちょうどアンドレ・チェリチェフのツアーでフランスに行く直前だった彼女はそれを引き受けたのです。
ツアーメンバーが、それぞれの荷物の一部として運ぶ(映画『ボトルショック』ではそのように描かれていました)という案もありましたが、リスクが大きく却下。結局航空会社と粘り強く交渉して、貨物として運んでもらえることになりました。ワインは1本が破損したものの、残りは無事に到着し、試飲会も開催できました。
ちなみに、試飲会でモンテレーナが1位になったことをオーナーのジム・バレットはフランスのツアー中に知ったということがジョージ・ティーバーの書籍にも書かれていたと思いますが、このフランスのツアーこそ、上記のデピュイの主催によるアンドレ・チェリチェフのツアーだったのでした。
彼女は現在97歳。今もナパヴァレーの様々なイベントに活発に参加しているとのことです。