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Date: 2024/1228 Category: 業界ニュース
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再生可能型有機農法の認証であるROC(Regenerative Organic Certified)が急成長を見せています。認証された農場の面積は2023年の400万エーカーから2024年には1840万えーかーにまで広がりました。
ROC
グラフにあるように、実質的には2022年から始まった新しい認証であるにもかかわらず、ものすごい伸びになっています。

実際、この1年半ほど、来日する生産者と話をすると、ほぼ確実にRegenerativeの話題が出ます。認証を取るかどうかは別にして、この概念が特に先端的なワイナリーでは重要視されていることが分かります。

一方で、ビオディナミで有名なリトライのテッド・レモンはRegenerativeじゃなくてGenerativeが大事なのでは、といったことも語っており、どちらにしても興味を引き立てるテーマになっています。

再生可能型有機農法の肝は、土壌の状態を農薬や化学肥料がなかった昔の状態に戻すということで、二酸化炭素削減なども大きな柱になっています。また社会的公正といった従来サスティナブルのテーマになっていた内容も含まれており、有機農法にサスティナブルな考え方がミックスしたと捉えることもできると思います。

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ROCのサイトの情報によるとワイン関係で認証を得ているのは19。アルゼンチンが2つ、イタリアとオーストリアがそれぞれ1つで、残りの15はすべて米国です。認証が米国で始まったからだというところはあるでしょうが、現在のところはかなり米国に特化した認証になっています。

米国の中ではオレゴンがAmber Estate、Troon Vineyardの二つ。ワシントンがEstelbrook Farms and Vineyard、あとはカリフォルニアです。
Bonterra
Grgich Hills
Gundlach Bundschu
Neal Family
MAHA Estate
Medrock Ames
Booker’s(My Favorite Neighbor LLC)
Solminer Wine
Spottswoode
Stag's Leap Wine Cellars
Tablas Creek
Donum Estate
ナパは4つのワイナリー(Grgich、Neal、Spottswoode、SLWC)、ソノマは3つのワイナリー(Gundlach Bundschu、Medrock Ames、Donum)、パソ・ロブレスが3つのワイナリー(MAHA、Booker's、Tablas Creek)の認証を受けており、先導的な役割を果たしています。
Date: 2024/1226 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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パソ・ロブレスのロバート・ホール(Robert Hall)ワイナリーが、この12月に再生可能型有機農法の認証であるROC(Regenerative Organic Certified)を取得し、再生可能型有機農法(以下ではROCと略します)を実践した畑と、そうでない畑で何がどう変わるのか、実験した結果を発表しています(Can Regenerative Organic Farming Pencil Out? Study Provides State-of-the-Art Data and Demonstrates Dramatic Improvements in Wine Quality | Grape and Wine Magazine)。
全体のプレゼンテーション
なお、O'Neill Vintners & Distillersというのは親会社の名前で、ソノマのラムズ・ゲートなど多くのワイナリーを所有しています。

ROCへの転換は2020年に開始しました。48エーカーの畑の中で43エーカーはROCにするものの、5エーカーは従来型の農法を続けています。ワインはカベルネ・ソーヴィニヨンとプティ・シラーを栽培しています。

資料ではROCと従来型の違いを様々なデータで比較しています。
例えば、収量はやや増えていますが、コストも上がっており、トータルすると収穫1トンあたりのコストは増えています。

水の保持力は13%と顕著に上がっており、葉の茂っているところの気温は4℃ほど下がっています。38℃を超える日は従来型では8日あったのが1日でした。温暖なパソ・ロブレスでは気温は上がりすぎない方がいいので、これは好ましい変化です。土壌の温度もROCの方が低くなっています。

何よりも興味深いのは、両方の区画から同じようにワインを造ったとき、ROCの方が劇的に品質が高かったということです。 「フレッシュさがあり、活気があり、ワインには異なるエネルギーがある。 古典的なカベルネの特徴がより強く出ています」とジェネラル・マネージャーのケイン・トンプソンは語っています。

ロバート・ホールのワイナリーではROCの啓もうのために、一般ビジターでも両方の比較試飲げできるとのことです。
Date: 2024/1225 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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コスタ・ブラウン(Kosta Browne)の輸入元変更による半額セールをやっているWassy'sですが12月25日でセールが収量になります。既に2つのワインは売り切れていますが、まだ4種類残っています。おそらく、これ以上安い値段でコスタ・ブラウンを売っているところは現状ありませんし、今後も値上がり傾向は間違いないでしょうから、この価格で手に入れるのは最後のチャンスにんるだろうと思います。

コスタ・ブラウンはダン・コスタとマイケル・ブラウンの二人がピノ好きが嵩じて始めたワイナリー。映画「サイドウェイズ」から始まった2000年代のピノ・ノワールブームの中で、ワイン・スペクテーターなどで高得点を取って一躍大人気のワイナリーになりました。当時はネットで販売されるたびに、文字通り瞬殺で売り切れることばかりで、入手そのものがかなり難しかった記憶があります。

その後創設者の二人は別のワイナリーを始め、オーナーは変わっていますが、人気ワイナリーであり続けているのはすごいことです。ワインも当初は「シラーみたいなピノ」と言われるような濃厚なスタイルでしたが、ときを経るごとにエレガントなスタイルへと移り変わっていっています。

近年ではブルゴーニュでのワイン造りを始めるなど、カリフォルニアのピノ・ノワールをリードする存在のワイナリーです。

今残っているのはアンダーソン・ヴァレー2021、ロシアン・リバー・ヴァレー2020、マウント・カーメル2020、マウント・カーメル2019の4種類。ワイン・アドヴォケイトの評価はそれぞれ90、93、90、94となっています。








Date: 2024/1224 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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しあわせワイン俱楽部でハーシュ(Hirsch)のピノ・ノワール3本セットが出ています。

うち1本は2021年のラシェン・リッジ(Raschen Ridge)。ヴィナスで100点を取ったピノ・ノワールです。ヴィナスは元ワイン・アドヴォケイトのアントニオ・ガッローニが始めたレビューサイトで、レビューの信頼性は今一番高いのではないかと思います。ちなみにヴィナスで100点を取ったカリフォルニアのピノはわずかに4本。2018 Rivers-Marie Platt、2018 Occidental SWK、2021 DuMOL McIntyre、そして2021 Hirsch Raschenです。

残りの2本は同ヴィンテージのサン・アンドレアス・フォールト、リザーブ・エステートでそれぞれ94、97点という高得点が付いています。これで68090円(送料無料)というのは、品質を考えたらかなり安いと思います。

カリフォルニアのピノはナパのカベルネや、ブルゴーニュのピノなどと比べると値上がりもさほどひどくなく、これらの地域のワインなら100点ワイン1本で5万円以下というのはまずありえません。ちなみにヴィナスで2020ヴィンテージ以降のブルゴーニュのピノで99点以上を取っているのが4本くらいありますが、どれも50万円は下りません。

ハーシュはウエスト・ソノマ・コースト(フォートロス・シーヴュー)AVAにあるワイナリー。太平洋に近く非常に気温が低いところですが、高台で霧がめったにかからないので日照を強く浴びます。さらにハーシュの畑はサン・アンドレアス断層の上にあり、畑のブロックごとに土壌や傾斜などさまざまなパラメーターが変わる複雑なところです。

100点のラシェン・リッジはかなりタンニンがつよく力強いワインになるところで、リザーブは古木のブロックを使い長熟向き。サン・アンドレアス・フォールトは様々なブロックのブドウをブレンドしており、ハーシュでは「フラッグシップ」と言っていますが、一番高級というよりも、一番代表的なワインというのがよさそうです。

ワインメーカーは創設者の娘のジャスミン・ハーシュ。2019年からワインメーカーになってこれが3ヴィンテージ目。ウルトラマリンのワインメーカーであるマイケル・クルーズがパートナーで、ワイン造りのアドバイザーでもあり、このヴィンテージからは完全除梗にしたとのこと。ボディが強いハーシュのワインには完全除梗が向いていたのか、このヴィンテージは軒並み高い評価になっています。アントニオ・ガッローニは「2021 年はまさにハーシュにとって魔法のようなヴィンテージです。私が試飲したワインはどれも素晴らしく、お気に入りを選ぶのは何よりも個人的な好みの問題です」と述べています。


Date: 2024/1223 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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シルヴァー・オーク(Silver Oak)の設立者はレイ・ダンカン(Ray Duncan)とジャスティン・メイヤー(Justin Meyer)の二人でしたが、現在はダンカン家が唯一のオーナーになっています。ジャスティン・メイヤーの家族はアンダーソン・ヴァレーにメイヤー・ファミリー・セラーズ(Meyer Family Cellars)というワイナリーを持っていますが、新たにナパのオークヴィルにワイナリーの許可を得ました。

新しいワイナリーはボニーズ・ヴィンヤード(Bonny's Vineyard)という名前で、1972年に3.5エーカーを取得。かつてはシルヴァー・オークのフラッグシップ・ワインとしてボニーズ・ヴィンヤードの単一畑ワインがありました。その後2010年に拡張して17エーカーになっています。ボニーはジャスティンの奥さんの名前です。

Date: 2024/1218 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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2024年のカリフォルニアのワイン用ブドウ収穫は、収穫量は若干少な目になりそうなものの品質は上々でした。2023年は1年を通して涼しく、平年より3週間も遅い収穫になりましたが、2024年は比較的気温が高く早い収穫になりました。とはいえ、暑いだけのヴィンテージではなく、地域によっては9月に入って涼しい期間が入ったことでブドウが熟しすぎず、エレガントな仕上がりになったといいます。また、10月初旬に熱波が来たことで、9月中に収穫を終えたワイナリーが多いようです。

ナパのダックホーンのルネ・アリー醸造担当副社長は「美しい深い色のカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローが、凝縮した果実味、ふわふわのタンニン、鮮やかな酸味を伴って育っています。このヴィンテージはピラジンがほとんどなく、暑さを乗り切るのに役立ちました」と語っています。

同じくナパのスポッツウッドのワインメーカー兼ヴィンヤード・マネージャーのアロン・ワインカウフは「果実の特徴は素晴らしいです。私たちが望んでいた熟成度を達成し、ヴィンテージに大きな影響を残しかねない過熟の特徴を避けることができたと思います」と語っています。

ソノマでは、8月下旬から9月上旬に熱波が訪れましたが、ピノ・ノワールとシャルドネの生育は良好でした。「タンク容量や脱水症状などを心配し始めたちょうどその時、天候が急激に涼しくなったのです。そのため、ピノ・ノワールとシャルドネが樹上で回復し、水分を吸収して熟成を終え、均一かつ安定したペースで収穫できる2週間の猶予ができました。全体的に本当に素晴らしい品質です」とマクロスティのハイディ・ブリゲンハーゲン氏は語っています。

モントレーは比較的暑いヴィンテージで、シャイド・ファミリーのハイディ・シャイド副社長は「白ワインでは、優れた品種特性、強い芳香、バランスのとれた酸味が見られます。ピノ・ノワールが際立っており、複雑な味わいと酸味が印象的です」とのこと。

一方、パソ・ロブレスは春の霜と8月の高温で収穫量は減少しましたが、品質は上々でした。
Date: 2024/1214 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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サンタ・バーバラの人気ワイナリー「シー・スモーク(Sea Smoke)」の初代ワインメーカーとして知られているクリス・キュラン(Kris Curran)が12月11日に、亡くなりました。すい臓がんだったそうです。年齢は57か58と思われます。

ロスアンゼルスで生まれ、サンタ・バーバラのサンタ・イネズ・ヴァレーで育った彼女はワインには親しんでいましたが、ワイン造りに携わることは考えていませんでした。それが一転したのが1990年に、当時サンフォード・ワイナリーのワインメーカーだったブルーノ・ダルフォンソと出会ったこと。彼から、学位をとればワインメーカーになれると聞き、UCデーヴィスなどを経てフレズノ州立大学でワイン醸造の学位を取りました。1997年にカンブリア、1999年にケーラー、そして2000年にシー・スモークの初代ワインメーカーになりました。2003年にはワイン・スペクテーターの「カリフォルニアの新世代」にも選ばれています。

おりしも、映画「サイドウェイズ」のブームもあり、サンタ・バーバラのピノ・ノワールの人気が急上昇する中で、特にシー・スモークはカルト的人気を博しました。

2008年にシー・スモークをやめたキュランは、ウィリアム・フォーリーのフォーリーでワインメーカーを務め、その後は出会って以来のパートナーであるブルーノ・ダルフォンソとダルフォンソ・キュラン・ワインを設立。以降はそのブランドに専念していました。

ご冥福をお祈りいたします。
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Date: 2024/1213 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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オーベール(Aubert)のワイン会に約8年ぶりに参加しました。以前はメーリング・リストで買われている方が時折開催していたのですが、いろいろな事情で途絶えていたのが、復活した形です。メンバーも懐かしい顔ぶれでした。

今回のラインアップは

 Hudson 2014
 Eastside 2014
 Sugar Shack 2014
 CIX 2014
 Lauren 2014


 Sonoma Coast 2013
 Ritchie Vineyard 2012
 UV-SL Vineyard 2012

とちょっと熟成したものです。主催者によると以前飲んだヴィンテージとのことでしたが、私の記録には含まれていないようでした。

まず、オーベールを取り上げるのは久しぶりなので、おさらいしておきましょう。オーベールの創設者であるマーク・オーベールは1961年生まれ。1985年にカリフォルニア大フレズノ校卒業後、ナパのモンティチェロ(Monticello)やラザフォードヒル(Rutherford Hill)で働き、カリストガのオール・シーズンズ・カフェでヘレン・ターリーと知り合いました。その後、ソノマのピーター・マイケル(Peter Michael)でヘレン・ターリー(Helen Turley、現Marcassin)の下で働き、1990年にピーター・マイケル(Peter Michael)の第2代ワインメーカーに就任。1999年には再びヘレン・ターリーの後任としてコルギン(Colgin)の第2代ワインメーカーになりました。同年、自身のブランドとしてオーベールを始めています。

カリフォルニアの5大シャルドネと呼ばれるワイナリーの一つであり、パーカー100点をシャルドネで7回取っています。これはマーカッシン、ピーター・マイケルと並んでカリフォルニア最多となっています。

ハドソンのシャルドネから飲んでいきます。ハドソンはこのサイトでも何度も取り上げているナパのカーネロスの畑。自社のシャルドネも素晴らしいものがあります。同じくカーネロスのハイドと双璧をなす銘醸畑ですが、オーベールのワインの中ではハイドとハドソンはちょっと価格が安く、格落ち感があるとのこと。なんとも恐ろしい(笑)。

とはいえ、むちゃくちゃ美味しいです。ミネラル感にやや強めの酸。蜜の香り、パイナップル、アプリコット。麦わらのようなニュアンスもあります。

次のイーストサイドはロシアンリバー・ヴァレーの東側にある契約畑。石がごろごろ転がっている土壌があります。やや温暖なところかと思いますが、ハドソンよりも酸高く、オレンジやミネラルの風味。

3つ目のシュガーシャックからは自社畑が続きます。これだけはナパにある畑。しかもかなり温暖なラザフォードです。シュガーシャックを飲むのは多分初めてなので、どういう味わいになるのか興味深々でした。

ラザフォードのシャルドネをどう仕上げてくるのだろうと思いましたが、予想外にきれいなワインで酸もしっかりあります。どうしたらラザフォードでここまで酸が残せるのでしょう。ほかよりも樽のニュアンスを強めに感じます。バニラや香ばしい香り。ネクタリン。

次のCIXも自社畑。ソノマのグリーン・ヴァレー(ロシアンリバー・ヴァレー、ソノマ・コーストにも含まれており、ソノマ・コーストの畑として書かれていることが多いです)にある畑。ちょっと熟成が進んでナッツの風味が出てきています。アプリコットなど有核果実の味わいも。

白の最後も自社畑のローレンです。ここはオーベールの初期に作られた畑であり、娘の名前を付けたフラッグシップの畑でもあります。実はCIXとは隣り合わせですが、ローレンがゴールドリッジと呼ばれる黄土色の土壌なのに対して、CIXは海の塩のようなテクスチャーを持つ白い土壌。これは石灰質ではないそうです。

過去のテイスティングでもローレンのすばらしさは際立っていたのですが、今回もやはりシャルドネでトップを選ぶとしたら100人中90人以上はローレンを選ぶでしょう。パイナップルのようなトロピカルフルーツの風味にミネラルやナッツ、豊かな酸があり、パワフルなのに恐ろしいほどにきれいなワイン。久しぶりに飲みましたが、改めてオーベールのシャルドネ、特にローレンは素晴らしいと思いました。

この後はピノ・ノワールが3種類です。

最初は唯一のAVAものであるソノマコースト。
レッド・チェリーなどの赤果実の味わいがあり、柔らかなテクスチャ。カリフォルニアらしさのあるピノ・ノワール。美味しいですが、シャルドネのような突出さはなかったような気がします。

次はロシアン・リバー・ヴァレーの銘醸畑リッチー。
ピノ3種の中では一番ボディのあるワイン。アルコール感も少し強く、熟したザクロの風味にブルーベリーも感じます。濃いですが酸もありバランスはいいワイン。

最後はUV-SL。UVはオーベールの畑の管理や開発を任されていた故ユリシス・ヴァルデスの略。SLはStotz Laneという道路の名前です。Rivers-Marieのシルバー・イーグルと実は同じ畑のことです。
3つのピノの中ではこれが一番エレガントで、個人的にも評価の高いワイン。赤い果実にきれいな酸、熟成による腐葉土の風味もでてきています。

久しぶりのオーベール、やはり特にシャルドネは只物ではないです。美味しかったです。
Date: 2024/1212 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのセント・ヘレナにあるフローラ・スプリングス(Flora Springs)を、ジャン・シャルル・ボワセとジーナ・ガロ夫妻が買収しました。

フローラ・スプリングスは1978年設立。フローラというのは創設者の妻の名前です。今回の買収まで、家族経営を保ってきました。代表的なワインとしては、レッド・ブレンドのトリロジー(Trilogy)があります。

2019年にワイナリーは生産量を半分以下に削減し、消費者への直接販売を中心にするという大きな変革をしました。ワイナリーも小ロットの生産に向いた形に更新しました。現在の生産量は約8500ケースとなっています。

新しいオーナーの下でも大きな変更はなく、ワインメーカーも同じ人が続ける予定です。

ジャン・シャルル・ボワセはフランス・ブルゴーニュのネゴシアンの出身。カリフォルニアではナパとソノマを中心に数々のワイナリーを所有。例えばブエナ・ヴィスタ、デローチ、エリザベス・スペンサー、レイモンドなどを傘下に持ちます。一方、妻のジーナ・ガロはガロの創設者兄弟のジュリオ・ガロの孫。ガロ初の女性ワインメーカーであり、テレビや雑誌広告の顔としても活躍してきました。

二人は2009年に結婚。二人の娘がいます。今回の買収は、それぞれの企業の顔である二人が初めて共同で所有するワイナリーとなります。ボワセでもガロでもなく夫妻のワイナリーです。今後Flora Springsがどうなっていくかも興味深いところです。

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Date: 2024/1205 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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犬の嗅覚をワインの病気の発見・駆除に役立てようというプロジェクトがローダイで行われています。マルベック、ソーヴィ B、キャブ、ジニーという4匹の犬が、リーフロールウイルスを媒介するブドウコナカイガラムシを発見・駆除する訓練を受けています。

ブラック・ラブラドールのマルベックとイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのソーヴィBはコナカイガラムシを駆除する訓練を受け、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのキャブと、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのジニーはリーフロールウイルスを見つける訓練を受けています。

パイロットプログラムではリーフロールウイルスについては93.4%、ブドウコナカイガラムシについては97.3%という高確率で発見に成功。具体的に発見できなかった場合も、ほぼ100%存在には気づいていたといいます。

ちなみに、商用の検査機関でのリーフロールウイルスの発見率は93.4%。存在に気付いた率は91.4%と犬の方が優秀でした。

また、犬による発見の方が、樹のサンプルなどを取る必要がないため、早期発見が可能で樹を傷つけることもありません。ウイルスの蔓延を防ぐためには特に、苗木屋の段階で発見することが効果的だとパイロットプログラムを主導するボルトン氏はいいます。

犬による検知の方がコストもかかりません。例えば40エーカーの畑を2匹の犬と1人の調教師で調べた場合27000本のブドウの樹を調べて5200ドル程度で済むとのことです。ブドウの枝1本あたりにすると0.01ドルもかからないとのこと。サスティナビリティの面でも優れているとのことです。

Date: 2024/1204 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパというかカリフォルニアのの代表的なスパークリングワインの生産者であるシュラムスバーグ(Schramsberg)から現オーナーのヒュー・デイヴィーズ(Hugh Davies)氏が来日し、極めて貴重な蔵出しの熟成ものを含むワインを試飲しました。



この日のラインアップは
2021 Blanc de Blancs
2018 Blanc de Blancs
2015 J. Schram Blanc
2004 J. Schram Late Degorge
2020 Blanc de Noirs
2018 Blanc de Noirs
2014 J. Schram Noirs
2007 Reserve Late Degorge

2004 J. Schram Late Degorgeと2007 Reserve Late Degorgeは、レギュラー品ではなく、デゴルジュしたばかりの極めて貴重な蔵出しのものとなっています。

シュラムスバーグの設立は1862年。創設者はドイツ移民のシュラム夫妻。ナパのダイヤモンド・マウンテンの先駆けとなるワイナリーでした。その後禁酒法でワイナリーはクローズし、打ち捨てられた状態だったのを1965年にデイヴィーズ夫妻が購入して、現在のシュラムスバーグが誕生しました。そのときに米国初の瓶内二次発酵方式のスパークリングワインを造ることにしたのですが、その理由をヒュー・デイヴィーズ氏に聞いたところ「元々スパークリングワインが好きだったのと、新しいものにトライしたいという気持ちが強かったのだろう」とのことでした。今年が60回目のヴィンテージになります。

ただ、ダイヤモンド・マウンテンはナパの北部にあり、シャルドネやピノ・ノワールを育てるには気温が高いところです。その時代はまだ品種ごとの適地といった知識もあまりなかったわけですが、だんだん冷涼な海に近いところがいいということがわかってきて、今はナパのカーネロスに加えマリン郡、ソノマ郡、メンドシーノ郡の畑からもブドウを調達しています。マリン郡などはワインの産地としては相当冷涼で、それだけ酸を大事にしているそうです。

温暖化による影響は、という質問がありましたが、今のところカリフォルニアでは寒流の温度には大きな変化がなく、気温もそれほど大きく変わっていないとのことでした。

ブドウは大体19Brixで収穫しますが、16~17Brix程度のかなり酸っぱいものも一部アクセントとして使っているとか。とにかく酸にこだわるのがシュラムスバーグの流儀です。

ワインのテイスティングに移ります。
Blanc de Blancs 2021
ブラン・ド・ブランはシュラムスバーグの生産の40%を占める主要なワイン。2021年は66%ソノマ、31%ナパ、2%メンドシーノ、1%マリン。樽発酵は18%、総酸量は9.0g/L、残糖は9.0g/L。樽発酵を入れるのはテクスチャーをリッチにして、ゆるやかに酸化させるためだとのこと。ニュートラルな樽を使っているので樽香はほとんどつきません。マロラクティック発酵は10%くらいしています。
フレッシュな酸があり柑橘にハーブ。焼きリンゴのようなちょっと甘い香り。イースト香もわずかにあります。
個人的な印象としてはシャンパーニュのブラン・ド・ブランと比べても酸のきりっとした感じが強いように思います。

次に2018年のBlanc de Blancs。総酸量は8.6g/Lとわずかに少なく、残糖も8.0g/Lと少し少なくなっています。
熟成によるアーモンドの風味があり、2021年よりも少し柔らかく感じられます。酸は高いですが、テクスチャーはまろやか。

3つめはJ. Schram Blancs 2015。8年間熟成させて今年2月から3月にデゴルジュしています。ブランですが、16%ピノ・ノワールが入っています。畑はナパのウィルキンソン、シュワルツ、ラムゼイ、マリンのスティーブンス、ソノマのぴ江戸ら・リブレ。総酸量は9.7g/Lとブラン・ド・ブランよりも多くなっています。残糖は9.0g/L。樽発酵34%。WEで98点を得ています。
アーモンドの風味とイースト香が顕著にあります。柑橘はレモンというよりもオレンジの印象。レイニアチェリー。ブラン・ド・ブランよりもリッチでクリーミー。テクスチャーが素晴らしいです。

ブラン・ド・ブラン系の最後はJ. Schram Late Disgorged 2004。2004年のワインですが、デゴルジュしたのは2022年9月。18年熟成させています。生産量はわずか120ケース。
ナッツにキャラメル、焼きリンゴ、焼き栗とトースト系の香りを強く感じます。とてもリッチでJ. Schram Blanc以上にテクスチャーもリッチです。ここまでのスパークリングワインを味わう機会はほとんどありません。

ブラン・ド・ノワール系に移ります。
まずは現行の2020 Blanc de Noirs。65%ソノマ、17%メンドシーノ、14%マリン、4%ナパ・ヴァレーという構成。ブラン・ド・ノワールですが、シャルドネが10%使われています。樽発酵18%。総酸量7.8g/L。残糖は8.0g/L。
白い花、オレンジ、アプリコット、チェリー、アーモンド、酸高くリッチでエネルギーを感じるワインです。

次は2018 Blanc de Noirs。シャルドネの比率が14%と少し高くなっています。
リッチで複雑な味わい。ストーンフルーツや香木といった、他のワインではあまり感じなかったフレーバーを感じます。ヒュー・デイヴィーズ氏によるとシーフード(ウニにも)に合うとのこと。

次はJ. Schram Noirs 2014。今年デゴルジュマンしたばかりのワインです。シャルドネの比率は19%。
エレガントでシックなワイン。ナッツやアプリコット、少し樽の風味もあります。

最後はReserve Late Disgorged 2007。今年8月にデゴルジュマンしたばかりのワイン。生産量234ケースという貴重なワイン。
ドライフルーツのようなリッチな感じにナッツ。エネルギーの詰まったワイン。コクがありさわやかな香りも感じます。素晴らしい。2014のJ. Schram Noirsと比べてもリッチで熟成感もあり、とても美味しいワインでした。

と、これで最後のはずだったのですが、おまけにもう1本登場しました。
Cremant Demi Sec
フローラ(Flora)というセミヨンとゲヴュルツトラミネールの交配で、UCデーヴィスで1940年代作られた品種を中心に使っています。シュラムスバーグでは1972年からナパのヨントヴィルで栽培しています。Demi Secとあるようにオフドライの巣アイルで残糖は35~40g/Lもあるとのこと。
ゴールドに輝いており、カスタードの香りに紅茶の風味、ストーンフルーツ。リッチでテクスチャー豊か。これはまた全然違っていて魅力的なワインです。酸の高さのためか残糖ほど甘さを感じないですが、リッチで豊かなフレーバーがあるので、食後酒的に飲んでもよさそう。

ちなみに2025年春には2000年のLate Disgorgedを出荷する予定だそう。200ケースでシャルドネとピノ・ノワール両方入ったものです。25年熟成のものを出すのは初めてとのこと。こういった長期熟成ものを出すためにワインを保存していますが、そろそろ2000年のものは最後だそうです。

一通り試飲した後は、アンダーズ東京の食事と楽しみました。魚介類は言うに及ばず、豚ロースのグリルといった料理にもピノ・ノワール系のものがしっかり合って、美味しかったです。






Date: 2024/1202 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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現在はシャトー・イガイタカハのプロデュースなどで知られている杉本隆英さんが、「カリフォルニアワインのファンクラブ(California Wine Fan Club=CWFC)」を設立したのが1999年12月1日。昨日で25周年となりました。
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まだ、Webの文化が始まって間もない時期で、今のようなSNSもなく、ユーザー間の交流は「掲示板」を使うのが一般的でした。CWFCの掲示板には、ほとんど毎日のように様々な書き込みがあり、活発に交流が行われました。今から考えたら当時の自分は、知識も経験も非常に乏しく、いろいろと偉そうに書いていたことが恥ずかしく思い出されるところもありますが、とにもかくにも、当時の日本のネットにおけるカリフォルニアワイン情報の集積地であり、そのころに知り合った方々とは今もいろいろな形で交流が続いています。

杉本さんはフットワーク軽く、頻繁なワイン会でさまざまなワインの経験を積ませていただきました。また、麻布十番のレストラン「カリフォルニアワインガーデン(CWG)」をオープンして、カリフォルニアの様々な生産者が訪れる聖地にもなりました。

CWFCは、間違いなく日本におけるカリフォルニアワインファンを増やすのに貢献したと思いますし、私もそこでお手伝いができたことは大きな財産です。CWFCがなかったら、今の自分もなかっただろうと思い、感謝しております。

ちなみに、Internet Archiveには初期の掲示板のデータなどが残っております。
CWFC掲示板(Part1)
Part2(日付の年表示は平成だそうです)
Part3(上と同様)
Date: 2024/1129 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ソノマに拠点を置くワイナリー「ポール・ホブズ(Paul Hobbs)」のポール・ホブズ氏が来日し、セミナーに参加しました。Forbes誌では「ワイン界のスティーブ・ジョブズ」、ワイン・スペクテーターでは「マスター・オブ・シャルドネ」、ワイン・アドヴォケイトでは「ワイン・パーソナリティ・オブザイヤー」2回取得など数々の異名や名誉を持ち、米国だけでなく、アルゼンチンやスペインなどでもワイン造りを手掛けるフライング・ワインメーカーでもあり…
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ワイン業界の中でも雲の上の人感がありますが、実は本人はとても堅実な性格らしく、東京でも高級ホテルでなく庶民的なホテルに泊まっていると聞いて、いい人感の認識を新たにしました。

以前お会いした時と変わらず若々しく溌溂としており、今年70歳というのもびっくり。しかもこの秋の収穫が80回目のヴィンテージとのことでそのバイタリティにも驚かされます。ちなみにヴィンテージが年齢よりも多いのは南半球でもワインを造っていて1年に2回ヴィンテージがあるから。

ニューヨーク州バッファローの農場で生まれたポール。農場にはチェリーやピーチ、リンゴなどさまざまな果樹がありましたが、ブドウはなく食卓にはワインはおろか酒類が出ることもなかったと言います。曾祖母が医者で医者になるつもりだったといいますが、ノートルダム大学の牧師がワイン造りを勉強することを薦め、親に内緒でカリフォルニアに行ってワインを勉強し、母親に激怒されたとか。

ちなみに父親は歴史やアドベンチャーが好きで、6週間かけて世界旅行をするような人。普通農家が6週間家を空けるということはなく、それだけ旅行好きだったというのは、今も世界を飛び回るポールに受け継がれているようです。

ポールは11人兄弟の2番目で、家は決して裕福ではなく子供時代は納屋のようなところで寝起きし、カリフォルニアに来たときもポケットに500ドルが入っているだけだったそうです。

ノートルダム大学を卒業した後は、UCデーヴィスで栽培と醸造の修士を取りロバート・モンダヴィに職を得ます。オーパス・ワンの初代醸造チームにも加わり、1985年にはシミ(Simi)のワインメーカーになるなど順調に経歴を重ねていきます。

ソノマのセバストポールにポール・ホブズ・ワイナリーを設立したのは1991年。北欧デザインを採用し、シンプルで美しくクリーンなワイナリーにしています。
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ワインメーカーとしての印象が強いポール・ホブズですが、実は自社畑も複数持っており、栽培にも力を入れています。ポール本人も「ワインメーカーと呼ばれるよりもヴィネロン(フランスで栽培とワイン造りを両方担当する人)と呼ばれたい」と言っています。また、ワイン造りは自然への介入を最小限にしています。

ワイナリーのあるあたりはゴールドリッジと呼ばれるロシアンリバー・ヴァレーを代表する土壌があります。砂と少しシルト、細かくなって舞い上がったものが落ちてたまった土壌です。セバストポールシリーズという派生した土壌もあります。やや粘土が多く(色が赤で鉄分多い)小石の層もあります。ブドウの樹齢が6年くらいになると下層土に達して灌漑が不要になります。土壌としては粘土質の方が樹の水分のために良いと思われがちですが、粘土自体が水をキープするので樹には水は入りにくく、むしろゴールドリッジの方が水を吸いやすいのだそうです。
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ポール・ホブズではブドウはすべてナイトハーヴェストで収穫します。収穫にナイフでなくハサミを使うのもこだわりです。ナイフだとブドウにダメージを与えるからだそうです。機械収穫と比べると4~5倍もコストがかかります。ポール・ホブズには畑のクルーが40人ほどもいます。ただ、収穫期にはこれでも足りないので季節労働者も雇っています。

醸造はすべて野生酵母、MLFも自然に行います。
シャルドネの醸造ではピュアなジュースを取り出すことを重視しています。ジュースと果皮などとの接触を最小限に抑えるために除梗や破砕をせずに、全房のままプレスします。果汁は4時間タンクで落ち着かせてから小樽に移します。樽はあえて完全充填ではなく1割程度空きスペースを作って空気に触れさせます。その方が酵母が活発に動くからだそうです。こうして作ったワインは「開けて3日たっても劣化しない」といいます。

興味深いのは樽の木材の「目の詰まり方」を重視しているということ。樽一つひとつを目視で確認して目の詰まり方を端に記しています。下の写真で「T」と書かれているところが目の詰まった(Tight)なところで「M」が中間的なところとなっています。それから、以前は熱湯で樽を消毒していたのを今は水洗いだけだそうです。理由は忘れてしまいましたが、あまりクリーンにしすぎないということなのでしょうか。
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ワインの試飲に移ります。

シャルドネ ロスステーション・エステート 2021
ロシアンリバー・ヴァレーの自社畑でシャルドネの実をおs立てています。ハドソン由来のウェンテ・クローンやカレラ・クローン、マウント・エデン・クローンが植わっています。
高級感あるシャルドネでピュアな果実味が印象的。酸高く、柑橘や青リンゴなどの風味が豊かに広がります。

次はシャルドネ キュベ・ルイーザ ゴールドロック・エステート 2021
ルイーザは末娘の名前だとのこと。ウエスト・ソノマ・コーストの自社畑です。畑を購入したときに植わっていたクローン76(フランス由来のクローンですが、取り立てて大きな特徴はないそうです。植え替え時にはロスステーションと同様のヘリテージ・クローン(カリフォルニアで独自に発展したクローン)を使う予定だとか、
ワインはロスステーションよりミネラル感があり、シルキーなテクスチャが特徴的です。素晴らしく美味しい。リンゴ、柑橘、イチジクなど。

ピノ・ノワール ゴールドロックエステート2021 
14%全房発酵を使っています。赤果実から黒果実系の味わい。酸豊かでイチゴのシロップ煮のような柔らかさも。シルキーでグリップ感を感じるテクスチャ。

ピノ・ノワール、ジョージメニニ・エステート 2021
15%全房発酵。果実感強い一方で、果実以外の腐葉土や紅茶などのニュアンスも強く感じる。ややワイルドな印象。


カベルネ・ソーヴィニヨン ネイサン・クームズ・エステート 2020
クームズヴィル初の「100点カベルネ」となった2021年の1年前のヴィンテージです。
カベルネ産地としてはやや冷涼なクームズヴィル。冷涼感を感じつつも、果実の風味としてはダークな黒果実。シルキーなテクスチャ、腐葉土。今飲んでも十分おいしいですが20年以上熟成させて飲んでみたいワイン。

カベルネ・ソーヴィニヨン ベクストファー・ト・カロン 2019
泣く子も黙るベクストファー・ト・カロンのカベルネ・ソーヴィニヨンです。ベクストファー・ト・カロンの中でも、ダークなフルーツの風味が強いクローン4だけのブロックのブドウを使っています。
きめ細かなタンニンに、コーヒーやカカオの風味。やや赤果実を含んだ青果実の風味。


Date: 2024/1125 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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楽天の赤坂エラベルで閉店セールをやっています。
閉店セールのワイン一覧

割引率でダントツなのはスクライブのピノ・ノワール2021。他の店で9000円程度。米国でも50ドルするワインが4000円台です。ニューカリフォルニア系のエレガントなワインを造る代表的な生産者の一つです。


メイオミのシャルドネが2640円。通常3300円くらいするワインです。


ハーンのピノ・ノワール、メルロー、ピノ・グリ、シャルドネがいずれも1980円。これもかなり安いです。モントレーの代表的な生産者。


スリー・ガールズのカベルネも安い。気楽に飲めるタイプです。サクラアワードでダイヤモンドトロフィー。

Date: 2024/1122 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのセント・ヘレナにある名門ワイナリー「スポッツウッド(Spottswoode)」のベス・ノバックCEOが来日し、バックヴィンテージを含む7種のワインを試飲してきました。



スポッツウッドのフラッグシップであるカベルネ・ソーヴィニヨンは最新が2021年。1982年にワイナリーを始めているので、これが40回目のヴィンテージということになります。

まずはソーヴィニヨン・ブランから。スポッツウッドのソーヴィニヨン・ブランはナパでもトップクラスの一つであり、個人的にも大好きなソーヴィニヨン・ブランの一つです。ちなみに、ソーヴィニヨン・ブランは1984年から作っており、こちらも今回の2023年が40回目のヴィンテージです。

スポッツウッドの初代ワインメーカーはトニー・ソーター。その後、ダラ・ヴァレやアラウホ(現アイズリー)、ニーバウム・コッポラ(現イングルヌック)、ヴィアデルといったそうそうたるワイナリーでワインメーカーを務め、1990年代にはナパで一番有名なワインメーカーの一人となった才人です。現在はオレゴンでソーター・ヴィンヤーズを立ち上げてワインを造っています。

トニー・ソーターは肩書きはワインメーカーですが、スポッツウッドの畑を見て栽培にもかかわりたいと思い、1985年からは栽培も担当しています。スポッツウッドはナパで初めて有機栽培を始めたワイナリーですが、それもトニー・ソーターが主導して実現しました。

スポッツウッドは有機栽培の認証であるCCOFのほか、Demeterによるビオディナミの認証、公益性の高い企業を認証するB Corpの認証。そしてここ数年注目が増している再生可能型有機栽培(ROC=Regenerative Organic Certified)の認証も得ています。電力はすべて再生可能型のものを使っています。

1990年代にフィロキセラで全て植え替え。

ソーヴィニヨン・ブランはセント・ヘレナの自社畑にもわずかに植わっていますが、1990年以降は購入したブドウも使うようになっています。すべてトニー・ソーターが選んだ畑であり、家族経営でオーガニック栽培の畑ばかりです。
ソーヴィニヨン・ブラン
マップには現在の畑が示されています。ナパだけでなくソノマの畑も入っています。ソノマのブドウを使い始めたのは2000年過ぎくらいから。カーネロスのハイド・ヴィンヤードのソーヴィニヨン・ブランを契約していましたが、それを引き抜いてしまうということで、紹介をしてもらったのがきっかけだそうです。現在ではソノマ・マウンテンやナイツ・ヴァレーなど標高の高い畑をソノマから調達しています。

スポッツウッドのソーヴィニヨン・ブランは様々な発酵容器を使っています。2023年の場合、ステンレスの小樽、普通の樽、コンクリートエッグ2つ、セラミックの発酵槽1つ、アンフォラ5つとなっています。複数の発酵槽を組み合わせることで服雑味が生まれ、フレーバーが層のように感じられるようになるそうです。今回、ライブラリーものとして持参された2013年はフレンチオークの樽とステンレスの小樽、コンクリートの発酵槽だけでしたから、種類が増えています。スポッツウッドだけでなく、近年の高級ソーヴィニヨン・ブランは様々な発酵槽を使うところが多いようです。ほかの品種ではあまりそういった例を見かけないので興味深いです。

このほか、2013年との違いでは2023年の方はセミヨンが加わっていることがあります。セミヨンはカリストガのトファネリとソノマ・ヴァレーのバーソロミューという畑のものを使っています。

試飲に移ります。

2023年は柑橘やグアバ、カモミール。酸高く、厚みのある味わい。改めてカリフォルニアのソーヴィニヨン・ブランの中でもトップクラスの一つであることを感じました。ベス・ノバックさんは「ストラクチャー、バランス、エナジー、酸味、フレッシュ感」があるソーヴィニヨン・ブランだとおっしゃっていました。
一方、2013年はまだまだフレッシュ感があり、きれいで複雑。さわやかだけど柔らかさもあります。柑橘に香木の香り。ソーヴィニヨン・ブランはあまり熟成させて飲むことはありませんが、熟成による複雑さの魅力も感じられるソーヴィニヨン・ブランでした。

その次はスポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンのセカンドであるリンデンハースト(Lyndenhurst)です。リンデンハーストというのは1908年に屋敷につけられた名前だとのこと。ちなみにSpottswoodeは2010年にここを購入したSpotts夫人が名付けたもの。

リンデンハーストで使うブドウの半分は自社畑のもの。外部の栽培家はすべて有機栽培です。ファーストのカベルネ・ソーヴィニヨンと比べると果実味が前面に出ていてアプローチしやすいワインではありますがシリアスなナパのカベルネでもあります。

現行ヴィンテージは2021年。
酸柔らかく、カシスやブルーベリーの風味。シルキーなタンニンで飲みやすいですが、ストラクチャーも感じられるいいワインです。

ベス・ノバックさんはスポッツウッドのカベルネについて、フレッシュネスを大事にしているといいます。また、コアにパワーを感じるワインにすること、アルコール度数は14%を超えないことを基本にしています。

アルコール度数を考慮すると収穫時の糖度は24Brixくらいになります。温暖なセント・ヘレナでは収穫を遅くすると水分が蒸発して糖度も上がってしまいます。成熟のピークで収穫できるようにするために、ブドウに日陰を造ったり、カバークロップを植えることで土壌の冷たさを保っています。スポッツウッドやコリソンといったナパの中でもエレガント系なカベルネ・ソーヴィニヨンを造るワイナリーが、温暖なセント・ヘレナにあって、このスタイルをキープしているというのも面白いところです。

エステートのカベルネ・ソーヴィニヨンは現行の2021に始まり、2016年、2006年、1996年とさかのぼって試飲しました。

2021年はまだまだタンニンの堅さを感じます。酸も高く引き締まった印象。スパイスや黒鉛、ブラックベリー。
2016年もまだ堅いです。酸も高くエレガント。
2006年は素晴らしい。ブラックベリー、カシス、ブルーベリーの果実味。複雑で重層的。飲み頃的にも素晴らしいです。
1996年。スポッツウッドは1990年代にフィロキセラの被害に遭い、ブドウ畑を全面的に植え替えました。何年かかけて行ったため、1996年にも一部初期に植えたブドウが入っています。滋味深い味わい。ウーロン茶の風味。

スポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンは、カベルネ・ソーヴィニヨンのほかカベルネ・フランとプティ・ヴェルドがブレンドされています。プティ・ヴェルドは2009年に植樹されました。いいクローンが見つかったとのことです。新樽率は60%程度、リンデンハーストでは40%です。

スポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンはナパの中では非常にエレガントな部類に入ります。果実味が爆発するようなワインではないので、もしかするとやや地味に感じられるかもしれませんが、レベルは非常に高いです。
Date: 2024/1120 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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ワイン・スペクテーターの年間トップ10で4位に入ったのはナパのファウスト(Faust)のカベルネ・ソーヴィニヨン2021でした。実は、このワイナリー、ほとんど内容を知らず、今回の好成績から日本に輸入されていることも知ったくらいでした。

ワイナリーのオーナーはフネイアス・ヴィントナーズ(Huneeus)。チリのコンチャイトロなどのオーナー会社です。カリフォルニアではクインテッサ(Quintessa)、フラワーズ(Flowers)、リヴァイアサン(Liviathan)、ファヴィア(Favia)、オレゴンではベントン・レーン(Benton-Lane)を所有しています。なおファヴィアはアンディ・エリクソンと妻のアビー・ファヴィアによるワイナリーで、フネイアスはオーナーというより提携関係になっているようです。

ファウストは1998年にナパのクームズヴィルで設立されました。当時はまだAVA認定前でクームズヴィルでどのようなブドウが向いているのかも分かっていなかったようです。その中で冷涼地でありながらカベルネ・ソーヴィニヨンを選んだのがファウストでした。

ファウストは現在クームズヴィルにワイナリーと畑を所持しています。この畑のブドウだけを使ったフラッグシップの「ザ・パクト」カベルネ・ソーヴィニヨン。クームズヴィルの自社畑に加えてナパ各地の提携畑からのブドウをブレンドしている「ファウスト」カベルネ・ソーヴィニヨン。それからクームズヴィルのブドウにヨントヴィルとオークノールの提携畑のブドウをブレンドした「サルヴェーション」の三つのワインを持っています。

今回4位に入ったのはエントリーレベルのファウスト。ワインスペクテーターのトップ100はワインの味だけでなく、入手しやすさや価格なども合わせて評価されます。94点という高い評価と、65ドルという価格が大きく評価されて上位入賞につながりました。
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クームズヴィルは、先日ポール・ホブズのカベルネ・ソーヴィニヨンが100点を取って、クームズヴィルのカベルネとしては初の100点になりました。温暖化が進む中で冷涼地域への関心は高まっており、個人的にも注目している地域です。

ファウストはクームズヴィルのワインの入門的にもいいかもしれません。価格も今の為替水準で考えると現地価格とあまり変わりません。

タカムラワインハウスです。


トスカニーです。

Date: 2024/1114 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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恒例のワイン・スペクテーター年間トップ100の発表が始まっています。日本時間の12日に10位と9位、13日に8位と7位、14日に6位と5位と発表されています。
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今年は今のところ米国多め。ということは上位にはあまりないかもです。10位から5位まで順に紹介します。
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チムニー・ロックは今は輸入なし、ウイリアムズ・セリエムもこのアイテムはないと思います。

10位のレイミー(Ramey)はシャルドネの魔術師と言われるシャルドネの名手。個人的にもすごく好きな作り手です。今回はロシアンリバー・ヴァレーのシャルドネ2022です。国内にも入っています。

しあわせワイン倶楽部


柳屋


9位のバローロは国内輸入ありますが、該当ヴィンテージはまだ入っていないようです。
8位のウイリアムズ・セリエムもこのアイテムはなさそう。
7位のシャトーヌフ・デュ・パプは現物あります。米国の114ドルよりもだいぶ安いです。



6位はオレゴンでドメーヌ・ドルーアンが作るローズロック・ピノ・ノワール。ドルーアンはオレゴンでも老舗で、ダンディー・ヒルズに畑を持っていますが、このローズロックは新たにエオラ・アミティ・ヒルズ(先日紹介したイヴニングランドなどがある要注目のAVA)に作った畑。2年ほど前にも高評価でプチばずったことがあります(ドルーアンが造る高評価のオレゴンピノが格安)。
今回もなんと該当ワインを4000円台という、現地より全然安い値段で売っているショップがあります。


その次に安いWassy'sさんでも十分安いですが。


ちなみにWANDSマガジンの記事によると「ダンディー・ヒルズのピノ・ノワールがエレガントなシャンボール・ミュジニーならば、エオラ・アミティ・ヒルズはストラクチャーのあるジュヴレ・シャンベルタンだ」とのこと。

Date: 2024/1112 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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ピーチーキャニオンの「インクレディブル・レッド」。ジンファンデル系のブレンドの中でもコスト・パフォーマンスの高いワインとして知られています。個人的にも2000円台で信頼できるワインとして、ときどき購入しています。

このインクレディブル・レッド、新ヴィンテージの2021からラベルが大きく変わりました。
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味わい的には大きな変化はありませんが、見かけは驚きます。また、価格も以前に比べると2割ほど上がっています。

インポーターとしても、ラベルが大きく変わるため、商品を完全に入れ替える必要があるのでしょう。しあわせワイン倶楽部では輸入元協賛で旧ラベルのワインがセールになっています。税込み2178円は税抜きなら1000円台という安さ。

なお、インポーターの旧ラベル在庫はなくなったそうなので、今店頭に出ているものでいったんは売り切れになります。おそらく実売価格も上がるでしょうから、今のうちにまとめ買い推奨です。


Date: 2024/1111 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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サシ・ムーアマンが作るサンタ・バーバラのサンディ(Sandhi)とオレゴンのイヴニングランド(Evening Land)、セーラム(Salem)のワインを、サシの話を聴きながら試飲しました。サシのワインにはほかにシラーなどを手掛けるピエドラサッシ、サンタ・リタ・ヒルズでピノ・ノワールを中心に作るドメーヌ・ド・ラ・コートがありますが、そちらはインポーターが違うので今回はありません。


いつも穏やかな笑顔のサシ・ムーアマン

イヴニングランドはオレゴンの中でも注目が高まっているエオラ・アミティ・ヒルズに自社畑を持つドメーヌ・タイプのワイナリー。イヴニングランドはブルゴーニュのコント・ラフォンのドミニク・ラフォンが当初手がけ、2007年からサシ・ムーアマンとラジャ・パーがかかわっています(2015まではドミニク・ラフォンが関与)。コント・ラフォン時代にビオディナミの認証を受けており、現在もビオディナミで栽培されています。250エーカーの敷地に畑は35エーカー。畑にはブドウ以外に果樹なども植わっており、2割くらいは果樹が占めています。羊なども飼っていて生物多様性の面でも申し分ないところです。東向きの斜面で海からの風も通り冷涼。

土壌はジョリーと呼ばれる火山性の粘土質。鉄分が多く、シャルドネは酸がしっかりして強い味わい。ピノ・ノワールもタンニンが強くなります。ブドウの味わいや骨格が強いので、ほぼすべて除梗し、新樽もほとんど使いません。シャルドネは全房でプレスし、種や皮などからの強い味わいが付くことをさけています。樽もっパンチョンと呼ばれる大型のもので発酵・熟成します。

サンディはいろいろな面でイヴニングランドと対照的です。一部を除いて購入したブドウでワインを造ります。サンフォード&ベネディクトなど、サンタ・リタ・ヒルズの銘醸畑からブドウを仕入れています。サンタ・リタ・ヒルズは風が強く気温はオレゴンより低く乾燥しています。頁岩などの堆積性の土壌が中心です。

サンタ・リタ・ヒルズの方がブドウの味わいは優しく、ブドウの実は小さくなります。タンニンが少ないのでピノ・ノワールは全房を多用します。シャルドネも破砕してからプレスすることで皮からの味わいを果汁に移します。

試飲はイヴニングランドの若木を使ったSalem Wine Co.からです。2021年のシャルドネが4600円、ピノ・ノワールが2023年で4600円。

葛飾北斎風のラベルがユニークなワイン。描かれているのはマウント・フッドというオレゴンの山です。富士山に似た形なのでこのラベルを思いついたそう。シャルドネはエレガントで少し蜜っぽさも感じます。ピノも赤果実を中心にきれいな味わい。どちらもコスパが素晴らしいです。

サンディのピノ・ノワールは2022年のサンタ・リタ・ヒルズ(9500円)と2021年のロマンス(18000円)。
サンタ・リタ・ヒルズはAVAものと言っても、ドメーヌ・ド・ラ・コートなどの銘醸畑のブドウを使っています。赤果実の味わいがきれいで、酸高く、うまみや複雑さもありとても美味しい。
ロマンスは自社畑であるドメーヌ・ド・ラ・コートの畑のみ。購入ブドウを中心とするサンディの中では異色のワインです。ただ、ロマンスで使っていた区画はウイルスの被害にあってしまい、もう抜かれてしまったのでこの2021年が最後となります。ちなみに、なぜロマンスはドメーヌ・ド・ラ・コートではなくサンディで出しているのかを質問したところ、「ドメーヌ・ド・ラ・コートのラインアップは増やしたり減らしたりしたくないから」とのことでした。
果実味よりもうまみや複雑さを強く感じる味わい。ちょっとブレットも感じました。おそらく5年以上の熟成によって本領を発揮するようなワイン。今飲むならサンタ・リタ・ヒルズの方が美味しいです。


次に、イヴニングランドのピノ・ノワールです。いずれも2022年。スタンダードのセヴン・スプリングス(9500円)、ラ・スルス(La Source、16000円)、スマム(サマムとも、Summum、18000円)。
セヴン・スプリングスはバランスよく酸きれい。まとまっています。おすすめ。
ラ・スルスは一番風が強い区画のブドウを使っています。過酷な環境でブドウが深く根を張るところ。樹齢が高い樹の比率が上がっており、タンニンがおだやかになるため、一部全房も入れています。スマムは良年だけ作られるワインでラ・スルスのブロックの中でも最良のブドウを選んでいます。
ラ・スルスは酸高く、複雑さもきれいさもあります。
スマムはより複雑さ強く、うまみ系の味わいもあり、美味しい。ラ・スルスより1ランク上の味わいで、個人的には2000円の価格差ならこちらを選びます。


シャルドネに移ります。
サンディのシャルドネはAVAものが2022年のセントラル・コースト(4900円)と2021年のサンタ・リタ・ヒルズ(6300円)。セントラル・コーストはサンタ・バーバラとサン・ルイス・オビスポの畑のブドウから。どこも冷涼であり、ワインもかなり酸が強く、ややリーンな味わい。
サンタ・リタ・ヒルズはAVAものと言いながら、実は自社畑のドメーヌ・ド・ラ・コートのブドウを90%も使っている贅沢なワイン。これはコスパが素晴らしい。酸の高さはセントラル・コーストと同様ですが、果実の厚みが全然違います。大おすすめ。


単一畑ものが4本並びます。いずれも2022年でパターソン(Patterson、16000円)、リンコナーダ(Rinconada、14000円)、サンフォード・アンド・ベネディクト(Sanford & Benedict、10500円)、ロマンス(Romance、20000円)。
いずれもサンタ・リタ・ヒルズの畑です。
パターソンは標高高く、北向き斜面で酸が落ちにくいとのこと。粘土質の土壌で質感豊かなワインになります。
果実味高く濃密な味わい。美味しいですがやや重さを感じます。
リンコナーダとサンフォード・アンド・ベネディクトは隣り合った畑。サンフォード・アンド・ベネディクトは火打石の成分であるケイ酸塩を含むシレックス(火打石)土壌、リンコナーダは粘土とロームの土壌と、土壌の違いがあります。
リンコナーダはバランスよくエレガント。サンフォード・アンド・ベネディクトは、サンタ・リタ・ヒルズのシグニチャーとも言える塩味を強く感じます。エレガントできれいなのはリンコナーダに通じますが個人的にはサンフォード・アンド・ベネディクトがより魅力的。
ロマンスはドメーヌ・ド・ラ・コートの自社畑のワイン。4つの畑の中で一番冷涼。非常に酸が高く、その奥から果実味が出てきます。深さもありますが、飲み頃になるまでは少し時間がかかりそうなワインです。品質は非常に高いので、セラーに置く余裕があるならお薦め。


最後にイヴニングランドのシャルドネです。ピノと同様、スタンダードなセヴン・スプリングス(6800円)、ラ・スルス(15000円)、スマム(17000円)という構成。ヴィンテージはいずれも2022年。
セヴン・スプリングスは酸とうまみのバランスがいいワイン。
ラ・スルスはディジョン・クローンの高樹齢の樹のブロックだけを使っており、より複雑さを感じます。美味しい。
スマムは最も良いブロックのブドウを使っています。ラ・スルスにさらにリッチさを加えた味わい。やっぱりこれは素晴らしい。ピノと同様、2000円の価格差ならスマムを選びます。


セミナー後、近年ブルゴーニュからオレゴンやカリフォルニアに進出する生産者が増えているのはなぜか聞いてみました。サシの考えでは温暖化など気候変動の影響ではないかとのこと。ブルゴーニュは近年ヴィンテージごとの差が非常に大きく、安定性を大きく欠いているとのこと。品質や味わいも毎年大きく変わります。消費者にとっては安心して選ぶのが難しくなっています。オレゴンも温暖化の影響はありますが、ブルゴーニュのような不安定さはなく、むしろ以前は収穫時期の雨が問題になりやすかったのが、その問題が減っていて良いヴィンテージが増えています。リスクヘッジのために米国に進出しているのだろうとのことです。
Date: 2024/1109 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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オレゴンのWillamette Valley Wineries Associationが、2024年の収穫レポートを発表しています(Oregon's Willamette Valley Winemakers Celebrate a Spectacular 2024 Harvest: A Vintage to Collect)。

それによると2024年は「コレクター垂涎のヴィンテージ」になるとのこと。「2024年はワインメーカーにとって絶対的な夢でした。ここ数週間、最高気温は20度台前半で、ほとんど晴天が続いています。この時間の贈り物によって、糖分の蓄積とフェノールの成熟が冷涼な気温と連動して進み、鮮やかな酸が保たれ、素晴らしい風味を生み出すことができました」と」とマッツィンガー・デイヴィス・ワイン・カンパニーのワインメーカー、アンナ・マッツィンガーは語っています。

夏の間は38℃くらいに達する日もいくつかありましたが、9月半ばには最低気温が10℃強、最高気温が20℃程度の日が続いて、バランスよく糖とフェノールの蓄積が進みました。天候などによって、仕方なく収穫日を決めるのではなく、より最適なタイミングで収穫することができました。

温暖化はブドウの生育に大きな影響を与えていますが、オレゴンの場合は、収穫時期の天候の安定につながっていると、イヴニングランドのサシ・ムーアマンは語っていました。一方で、ブルゴーニュは天候の不安定さがより増しており、ブルゴーニュの生産者がリスク低下を求めてオレゴンやカリフォルニアに進出する大きな理由になっているようです。
Date: 2024/1106 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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クアディー(Quady)・ワイナリーはカリフォルニアでは珍しい、デザートワイン専門のワイナリーです。オーナーのアンドリュー・クアディーは現在79歳。1973年にUCデーヴィスを卒業し、ローダイでワインメーカーを始めてセントラル・ヴァレーのマデラでワイナリーを続けています。2024年は50年目のヴィンテージとなります。UCデーヴィスの同期にはメリー・エドワーズやティム・モンダヴィといった名ワインメーカーがいます。

同期のほとんどがカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネを作っているのに対して、クアディは酒精強化によるデザートワインに特化しています。特にマデラで、カリフォルニアでは珍しいオレンジ・マスカットを見つけ、それを使ったエッセンシアというデザートワインを造ったのがヒットになりました。ブラック・マスカットを使ったエリジウムというデザートワインも人気です。

このほか変わったものでは、ヴェルモットや、パロミノを使ったフィノ・タイプのシェリーもあります。

デザートワイン、近年ではあまり人気がないのではないかと思われがちですが、クアディーの生産量は驚くほど伸びています。2010年に5万ケースだったのが25万ケースにまで成長しているとのこと。競争相手がすくないブルーオーシャンを満喫しているようです。

価格の安さも特筆できます。コストの低いセントラル・ヴァレーで生産しているからというのもあるでしょうが、日本の価格でハーフボトルが2000円そこそこ。調べたらワイナリー価格は16ドルくらいなので、日本がかなり安く売っているようです。ブラックマスカットは「想いを込めた矢がハートを射抜く」デザインで、好きな人へのプレゼントにもいいと思います。





Date: 2024/1105 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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これも1カ月前のニュースですが、破綻したVintege Wine Estatesの所有するワイナリーの買収先が決まりました(Jay Adair Buys B.R. Cohn, Kunde and Viansa Wineries in Sonoma County - Sonoma County Winegrowers)。

ナパのクロぺガス(Clos Pegase)やジラード(Girard)、ソノマのBRコーン(B.R. Cohn)、カンデ(Kunde)、ヴィアンサ(Viansa)はコパート(Copart)というオンラインの車のオークションの会社が買収することが決まりました。エグゼクティブ・チェアマンのジェイ・アデアとタミ夫妻は、サスーン・ヴァレーにアデア(Adair)ワイナリーを持っており、ワインビジネスは素人というわけではありませんが、今回は大幅にポートフォリオを拡充することになります。

このほか、ボデガ・ベイにテイスティング・ルームを持つソノマ・コースト・ヴィンヤーズなどを、チョーク・ヒルなどのオーナーであるビル・フォーリーが取得しました。

Date: 2024/1104 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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インポーター「リエゾン」の試飲会から美味しかったワインを紹介します。試飲アイテムが全13と少ないので、紹介する数も少なくなっております。決して美味しいワインが少なかったわけではありません。


サンタ・バーバラのワイナリー「リュサック(Rusack)のシャルドネ2020(7500円)。銘醸畑ビエン・ナシードのブドウを使っているそうです。新樽30%ですが樽の風味とのバランスがとてもいいワイン。ビエン・ナシードでこの価格は安いです。


リュサックのピノ・ノワール2021(8000円)です。冷涼なサンタ・バーバラらしい酸の高さが特徴で、エレガントなピノ・ノワール。


人気のナパ・ハイランズを産んだスミス・アンダーソン・グループのブランド「ナパワインアーツ」のカベルネソーヴィニヨン2019(7000円)。ナパのカベルネですが、重くなく、酸の高さとジューシーさが秀逸です。


もう一つリュサックからシラーです。2018年と2019年がありましたが、個人的には2018年が良かったです。
スパイス感と複雑さ、酸が特徴です。


ターリー(Turley)のジンファンデル「エステート2021」(1万1000円)。ナパのセントヘレナの自社畑のブドウで造るワイン。ジンファンデルとしてはストラクチャーがあり複雑。
Date: 2024/1102 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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2024年9月に開かれた中川ワインの試飲会から良かったワインを紹介します。


デコイ初の本格スパークリングワイン。ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエのブレンド。カリフォルニアでムニエが入るのは珍しいような。エレガント系というより、しっかりした味わいでうまみあるスパークリング。


コクレルのソーヴィニヨン・ブランは以前セミナーで紹介しています(ソーヴィニヨン・ブランへのこだわり、ナパのコクレル)。
これはスタンダードレベルのソーヴィニヨン・ブランですが、レベル高いです。ステンレスタンク熟成ですがしっかりと味が乗っています。


ルイスのソーヴィニヨン・ブランも昔から人気のワイン。果実味の強さを感じます。


シェアード・ノーツはカリフォルニアでもハイエンドのソーヴィニヨン・ブランを造るワイナリー。ボルドータイプとロワールタイプがありますが、こちらはロワールタイプ。酸高く、ミネラル感を感じるワイン。新樽100%ですが、樽香はわずかしか感じられません。エレガントなソーヴィニヨン・ブラン。


ティーター・トッターのシャルドネ。ピュアでリッチ、高級感あり7000円は安いです。


元ウェイフェアラーでシェアード・ノーツのワインメーカーでもあるビビアナ・ゴンザレス・レーヴの個人ブランドがカトレア。きれいで華やか。個人的に大好きなワインの一つです。


マウント・エデンのシャルドネはお久しぶり。酸豊かでミネラル感を感じる味わい。きれいで美味しい。


デコイ・リミテッドのピノ・ノワール。果実味広がりおいしい。


オー・ボン・クリマのノックス・アレキサンダー ピノ・ノワール。ノックスはピノ・ノワールとしては結構ストラクチャーがあるスタイル。今回もそのスタイルは変わりません。フラッグシップクラスで8200円というのは安いです。


中村倫久さんが作るノリアのピノ・ノワール。サンタ・クルーズ・マウンテンズのマンズ・ヴィンヤードのものは初登場です。バランスよくおいしい。


ピノ・ノワールが続きますが、その中でベストだったのがアストンの「Xラベル」。2018年なのでまだラベルはソノマ・コーストですが、ウエスト・ソノマ・コーストの北端に近い冷涼なところにある畑。酸の豊かさと、ストラクチャーが際立ちます。すばらしい。


ベッドロックのジンファンデル オールド・ヴァイン2022。これも意外と久しぶりにテイスティングしたような気がします。ジューシーでチューイー。古木ジンファンデルの魅力を過不足なく伝えます。とてもいい。


デコイの高級版リミテッドのメルロー。ナパではなくソノマのアレキサンダー・ヴァレーです。メルローらしい芳醇さと柔らかさがあり、いいメルロー。


ナパ・ハイランズから初めてのジンファンデルです。ジンファンデルらしいジャミーさと酸が好バランス。


ポストマークはダックホーン傘下のブランド。以前はナパヴァレーのカベルネを作っていましたが、今はパソ・ロブレスのカベルネ。しなやかな味わいでバランスいいです。3000円台としては極めて秀逸。とてもいいです。


デコイ・リミテッドのカベルネ・ソーヴィニヨン。今回はこれもアレキサンダー・ヴァレーです。ストラクチャーがしっかりあり、前述のメルローとは対照的。こちらも良いです。


初めて試飲したと思います。ティストリア(TISTRYA)というワイナリーのナパ・カベ。中川ワインではこう紹介してあります。

このワインのブランド名「ティストリア」は古代ペルシャ王国・最古の宗教と言われるゾロアスター教の神で、「雨、収穫、豊穣」を司り、その神は馬の姿をしておりラベルにその姿が描かれている。このブランドのオーナー・シャヒン・シャハビ氏のルーツはイランにあり、彼はそのルーツと古代からワイン造りが行われてきたイラン(ペルシャ)にオマージュを捧げこのブランド名を命名。ナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンの個性を銘醸畑から表現する。
非常に力強くバランスもいいワイン。これ6000円は安い。


ナパのカベルネはリッチでパワフルじゃなきゃ、という人にはこちらのキャッターウォウルがお薦めです。ワインメーカーはトーマス・リヴァース・ブラウン。


近年世代交代で以前のややオールドスタイルのイメージから刷新しつつあるペドロンチェリ。ロゼは初めて飲むかもしれません。ジンファンデルのロゼで、フレッシュ感と赤果実の風味が新鮮です。


ペドロンチェリのラベルは変わっても、ジンファンデルは健在です。ジューシーでリッチ。


ルチア(Lucia)からはシャルドネとピノ・ノワールを紹介します。シャルドネはエステート・キュヴェ2022(9500円)。リッチでこくありミネラル感も感じるシャルドネ。
ピノ・ノワールはエステート・キュヴェ2022(10000円)とソベラネス2022(12400円)、ゲイリーズ2021(14000円)。エステートキュヴェは果実味と酸のバランスが秀逸。ソベラネスもより果実感強くおいしい。ゲイリーズはさすがのパワフルさでした。


新規取り扱いのナパのシニョレッロからです。以前はilovecalwineが扱っていたものです。トリムのシャルドネはリッチだけどバランスもいい。3000円は安いです。


同じくシニョレッロの「S」。リッチでストラクチャーもありおいしい。

Date: 2024/1101 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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TTBはワシントン州の新しいAVA「Beverly(ベヴァリー)」(正式名称は「Beverly, Washington」)を承認しました。ワシントン州では21番目のAVAとなります(州内が17、オレゴンと共有が3、アイダホと共有が1)。ちなみにオレゴンは24(州内20、ワシントンと共有が3、アイダホと共有が1)、カリフォルニアは154あります。オレゴン、ワシントンはなんとか全部を覚えられるレベルですね。カリフォルニアは全然無理です。

Beverly

ベヴァリーはワシントン州内ではかなり小さなAVAとなります。地図で示したようにロイヤルスロープAVAの西南のはずれになります。ロイヤルスロープはチャールズ・スミスのKヴィントナーズのフラッグシップ・シラー「ロイヤル・シティ」の畑がある地域です。AVA名にスロープと入っている通り、AVA全体が南向けの斜面になっています。

ベヴァリーも同様に南向き斜面で、ロイヤルスロープと比べても温暖、というかかなり暑いエリアとなります。積算温度でいうと3500度ということで、ウィンクラーのインデックスではリージョン3とリージョン4の間くらいとなります。ワシントン州内では最も暑いAVAの一つです。

もう一つの特徴が風の強さ。ベヴァリーはコロンビア川のすぐそばにあり、このすぐ南に「センティネル・ギャップ」という渓谷があります。このせまい谷を通り抜ける風がAVAに吹きつけるのです。

3つめの特徴は水はけのよさ。

気温の高さから、この地域ではほぼ黒ブドウだけが栽培されています。ただ、ここに拠点を置くワイナリーなどはいまのところないようです。総面積2415エーカーのうち400エーカーほどがブドウ畑です。降水量は年間130㎜ほどとワシントンでもかなり少なく、乾燥した地域です。
Date: 2024/1026 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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アイコニック ワイン・ジャパンが2024年9月に開いた試飲会から美味しかったワインを紹介します。


まずはコスパで人気のブランドジ・アトム。定番のカベルネや今回初登場のピノ・ノワールもよかったですが、個人的には2022年のシャルドネ(2200円)がほどよい樽感で美味しかったです。


人気の689セラーズ、実は689以外にもいろいろなブランドがあり、いずれも秀逸なコスパなのですが、その一つが「ザ・ハイプ」(2020年、3100円)。濃厚なんだけど酸もあってバランスよく美味しいです。


スラムダンク(2021年、3300円)はいまさら紹介しなくても定番になっている気もしますが、やっぱりよくできているワインです。ワインメーカーはフィリップ・メルカの右腕であるメイヤン・コチスキー。普段は高級ワインを造っている人ですが、バリュー系でも腕を見せるのはさすがだと思います。


アルタマリアのシャルドネ ゴールドコースト・ヴィンヤード2015(3400円)。9年熟成で熟成感が出てきていますが、酸もきれいでおいしい。


ストルプマンのシラー「クランチー・ロースティ」(2022年、5300円)。カルボニック・マセレーションを使って作るユニークなシラーです。カルボニック・マセレーションならではのフレッシュ感とうまみがあります。


サンタ・バーバラを代表する銘醸畑ビエン・ナシードを擁するミラー家のもう一つの畑がソロモン・ヒルズ。ビエン・ナシードよりも海に近く極めて冷涼な畑。シャルドネ2021(12300円)は果実が柔らかく酸高いワイン。
もう一つビエン・ナシードのピノ・ノワール2021(16400円)はエレガントなワイン。時間をかけて飲みたい
味わい。


バレル・バーナーのカベルネ・ソーヴィニヨン。樽香に特徴のあるワイナリーです。カベルネ・ソーヴィニヨン2021(3500円)はバーボン・バレルを使って熟成したワイン。樽感は意外とほどよいレベルで、樽香除いてもうまい。


ユニオン・サクレのリースリング2021(4100円)。ドライ・リースリングとありますが、少し甘みもあります。酸良くおいしい。



同じくユニオン・サクレからゲヴェルツ・トラミネールのオレンジワイン(4100円)。きれいでおいしい。


もう一つユニオン・サクレからピノ・ノワール2022(5800円)。ジューシーできれいな味わい。


動物のラベルが印象的なフィールド・レコーディングズからアルバリーニョ2023(3800円)。フレッシュでおいしいワイン。


フィールド・レコーディングスのワンダーウォール・ピノ・ノワール(2023年、4000円)はきれい系ピノ・ノワール。もう一つのフィクション・レッド(3800円)はバランスよくジューシーなワイン。


同じくフィールド・レコーディングスのリジェネレーター・ジンファンデル2022(3800円)。ジンファンデルのスパイシーな面が出たワイン。グリップ感ありうまい。


グラウンドワークのシラー(2020年、4400円)は力強くおいしい、ローヌ系白ブレンドの「コート・デュ・コースト」(2022年、5500円)はローヌ系らしいやわらかさと芳醇さがありバランスもいい。


ピーチーキャニオンのジンファンデル系赤ワイン「インクレディブル・レッド」(2021年、3200円)。ラベルがこれまでと大きく変わってびっくり。味わいは変わりません。コスパ抜群。


同じくピーチーキャニオンのウエストサイド ジンファンデル(4500円)。ブラインドで飲んだ人が「ピノ・ノワール」と答えたほどのエレガントさ。このレベルで5000円を切るのはジンファンデルはコスパ高いです。


ロアーのシャルドネ、ロゼラズヴィンヤード2022(12000円)とサンタルシアハイランズのピノ・ノワール2022(11000円)。ロゼラズのシャルドネは果実味が前面に出るというよりも美しさを感じるワイン。サンタルシアハイランズのピノ・ノワールはバランスよく、かみしめるようなうまみのあるピノ・ノワール


サンドラーのキュベ・海老原 ピノ・ノワール(2023年、9300円)。サンドラーの前インポーターで2023年に亡くなった海老原さんを偲んで作られたキュベです。オーナー、エド・カーツマンは2000年代初期のピノ・ノワール・ブームで非常に注目されていたワインメーカーの一人です。海老原さんも彼のファンで、当時輸入されていなかったサンドラーやオーガスト・ウエストをエドさんが「扱っていいよ」と言ってくれたことから、インポーターになったと生前語っていました。
ワインは優しい果実味がエドさんらしい味わい。親しみやすく美味しいピノ・ノワールです。


コブのドックス・ランチ・ピノ・ノワール(21年、17600円)とライス・スピーヴァック・ヴィンヤード ピノ・ノワール。前者は酸がきれいでうまみがあるピノ・ノワール。後者は今年から扱いはじめました。後者はうまみが素晴らしく、あとから果実味がやってきます。すばらしい。


ジョージのセレモニアル・ヴィンヤード2020(15400円)。ジューシーで果実味がすばらしい。ハンセン・ヴィンヤードピノ・ノワールは鰹節系のうまみが感じられるワイン。


バーマスターのカベルネ・ソーヴィニヨン ヨントヴィル2019(5900円)。うまみあり非常に美味しい。この日のベストワインの一つ


最後に紹介するのはプロヴィナンスのカベルネ・フラン カリストガ 2016(9000円)。
カベルネ・フラン感もありつつ非常に美味しい。


Date: 2024/1024 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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セミナーやディナーのレポートは何とか書いていましたが、多忙で試飲会のレポートがずいぶん置いてきぼりになっていました。ようやく9月の試飲会から手を付けていきます。

JALUXの試飲会ではフランスなどのワインも数多く出ていましたが、アイテム数が多いため、カリフォルニア中心に試飲してきました。


まずはオー・ボン・クリマのピノ・ノワール ノックス・アレキサンダー2020(11500円)とイザベル2021(11500円)です。なお、オー・ボン・クリマはJALUXのほかに中川ワインも輸入しています。日本向け独自の製品だと「ツバキラベル」がJALUXで「ミッションラベル」が中川ワインになります。ノックスやイザベルはどちらも販売しています。ノックスはエレガントですが、ストラクチャーもありバランスのいいワイン。イザベルは酸高くきれいな味わい。


ハーシュ(Hirsch)のピノ・ノワールからサンアンドレアス・フォルト2021(16000円)、ウエストリッジ2018年(16000円)、リザーブ・エステート2018(16000円)。サンアンドレアス・フォルトは全房発酵ぽい複雑さがあります(全房比率は12%)。ウエストリッジ2018(1万6000円)は果実のチャーミングさが印象的。リザーブエステート(2018年、16000円)は熟成向けの落ち着いた味わい。タイプは違いますが甲乙つけがたいできです。


ハーシュも良かったですが、それを超えてすばらしかったのがデュモルのピノ・ノワール。ハイランド・ディバイド2020(16500円)はデュモルの中ではエントリー的な位置付け。ストラクチャーのあるピノ・ノワールでした。フィン(Finn)2020(23000円)はスムーズでエレガント。この日のベストワインでした。ライアン(Ryan)2021(23000円)は、非常に複雑な味わい。これもすばらしい。


クロデュヴァルのナパヴァレー・カベルネ・ソーヴィニヨン2021(8300円)はバランスよくエレガントよりのカベルネ・ソーヴィニヨン。クラシックな味わい。リヴァイアサン2021(9600円)は複雑で熟成させたいワイン。どちらも万円切りとしては素晴らしいクオリティ。


デュモルがナパのクームズヴィルのメテオール(Meteor)ヴィンヤードのブドウで造るワイン。2019年で33000円。酸が豊かで複雑な味わい。


ダラヴァレのコリナ2019(22000円)。若木のブドウを中心にしたダラヴァレの中ではエントリー的なワイン。エレガントでうまみあって美味しい。


ダラ・ヴァレがイタリアのオルネライアと共同で作るDVO2020(55000円)。複雑ですが柔らかさのある味わい。


白に移ります。タリー(Talley)のビショップス・ピーク シャルドネ2022(3800円)はタリーのエントリー的なシャルドネ。冷涼なSLOコースト産だけあり、酸高くきれいで冷涼感があふれています。


もう一つタリーからエステートのシャルドネ(5300円)。これも酸高く、うまみのあるワイン。


オー・ボン・クリマのヒルデガード2020(6500円)はピノ・グリとピノ・ブラン、アリゴテをブレンドしたワイン。2年間の樽熟成を経てから出荷されています。複雑でうま味ありとても美味しい。6500円は破格です。


タリーのローズマリー・ヴィンヤード シャルドネ2020(11500円)はこの日の白のハイライト。ほどよい樽感ときれいな酸があり複雑なワイン。


マイケル・ポザーンのアナベラ・プラティナム オークヴィル カベルネ・ソーヴィニヨン2020(5800円)はコスパがすばらしい。複雑でストラクチャーがあります。通常のナパヴァレーのカベルネソーヴィニヨンが5200円で、これも悪くはないですが、600円の価格差ならだんぜんこちらを選びます。


トゥーミーのピノ・ノワール ロシアンリバー・ヴァレー2020(9800円)はややリッチ系のピノ・ノワール。果実感たっぷりで美味しい。


最後もタリーです。タリーのエステートピノ・ノワール2020(6600円)。コスパが素晴らしいです。うまみにリッチ感があります。

Date: 2024/1023 Category: 業界ニュース
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ナパを代表する銘醸畑ト・カロン(To-Kalon)。そのオーナーであるコンステレーション・ブランズによるト・カロンのマスタークラスに参加してきました。シュレーダーの2022年、ト・カロン・ヴィンヤード・カンパニーの2021年を中心に、シュレーダーのセカンドであるダブル・ダイヤモンドと、コンステレーション傘下のマウント・ヴィーダー・ワイナリーのワインも試飲しています。

昨年もシュレーダーとダブル・ダイヤモンドの2021年のお披露目イベントがありましたが、試飲対象を拡大しての開催となりました。なお、ナビゲーターは昨年と同じ、ジェイソン・スミスMSです。
シュレーダーとダブルダイヤモンド、2021ヴィンテージのお披露目

ワイナリーや畑の説明などは、昨年とほぼ同じなので割愛します。新情報としてはト・カロンが有機栽培の認証を取ったこと(本ブログでは既報です)、カルロ・モンダヴィ(ロバートの孫)が携わる新世代トラクターMonarchを導入したことなどがありました。

ヴィンテージの紹介からしていきます。
2020年は2回の山火事で大きな影響が出た年。特に2回目の火事となった9月下旬のGlass Fireはナパ中に煙を充満させ、ブドウが煙を吸ってしまったため、今回紹介しているワイナリーはいずれもワインを造るのを諦めました。

2021年は干ばつの年。ブドウの実が小さく、皮の比率が高くなったため、タンニンが強く力強い味わいのワインになりました。

2022年は記録上一番暑かった年でした。特に9月上旬には45℃を超える日が続き、タンニンが強いというよりもフルーツが前面に出た。早い時期に楽しむようなスタイルのワインになりました。熟成を待たずに飲むことが多い、レストランには向いているヴィンテージだとのことです。コンステレーションの畑では、ブドウ畑に灌漑をすることで、熱の影響をやわらげました。熱波の間、ブドウの成熟がストップしてしまったため、収穫は1週間くらい遅くなっています。

今回のワインはいずれも2021年か2022年のものですが、最近のヴィンテージにも言及がありました。

2023年は冬に雨が非常に多く、過去20年で一番涼しい年になりました。生育は例年より3週間遅く、収穫の最後は11月になりました。雨が降らず、服雑味が増え、完熟したワインができました。今から来年2023年を持ってくるのが楽しみだとのことです。

2024年はクラシックなナパヴィンテージ。特にマウントヴィーダーはハイクオリティで典型的ななヴィンテージとなりました。

試飲はト・カロン・ヴィンヤード・カンパニーのワインからです。ト・カロン・ヴィンヤード・カンパニーは、銘醸畑ト・カロンから究極的に素晴らしいワインを造るために2016年から始まったブランド。最初のワインメーカーはアンディ・エリクソン。2022年から、HourglassやPlumpjackなどでワインメーカーを務めたトニー・ビアージが加わり、2022年はアンディ・エリクソンと協力して醸造、2023年からトニー・ビアージ一人でのワイン造りとなりました。今回は2021年なので、まだアンディ・エリクソンによるものです。

最初のワインは2021年のEliza’s(エリザズ、50000円)です。カベルネ・ソーヴィニヨン60%にカベルネ・フラン40%というカベルネ・フラン比率の高いワイン。Eliza(現地の発音はエライザ)はト・カロン・ヴィンヤードを作ったハミルトン・ウォーカー・クラブの奥さんの名前。その家が現在のカベルネ・フランのブロックのあたりだったことから名付けました。

ラズベリーやザクロ、カカオにハーブのニュアンス。酸高く、フルボディでありながら軽やかでエレガントさを感じさせるワインです。タンニンはしっかりあって芯が通っています。個人的には非常に好きな味わいです。

次のハイエスト・ビューティ(Highest Beauty、50000円)は、ギリシャ語のト・カロンの英語での意味から取った名前です。

スミレの花、カシスにブラックベリー、チョコレートやコーヒー、タバコのニュアンス。ストラクチャー強くタンニンも非常に強いワイン。タンニンが強固で飲み頃はまだしばらく先のようです。

このほか、100%カベルネ・ソーヴィニヨンで、シングルクローン、シングルブロックというHWCというブランドがあります。

次はシュレーダーです。シュレーダーは2022年のヴィンテージとなります。このヴィンテージからは従来のベクストファー・ト・カロンのブドウはなくなり、モンダヴィのト・カロンの畑からのワインだけになります。


3本目のワインはシュレーダーのト・カロン・ヴィンヤード カベルネ・ソーヴィニヨン(90000円)です。中川ワインではこのワインを(シュレーダー、シュレーダー)と呼んでいるとか。

チョコレート、リキュール、カシスやブルーベリー、チョコレート。強いけどスムーズなタンニン。リッチで酸高くジューシー。とにかく香りが素晴らしく、グラスから30㎝離れていてもワインの香りが漂ってきます。

4本目はシュレーダー ト・カロン・ヴィンヤード モナステリー・ブロック カベルネ・ソーヴィニヨン2022(90000円)。ト・カロン・ヴィンヤードの中でも最高のブロックとして知られています。

青系、黒系果実にミントやハーブ。リッチだけど酸高くタンニンもやや強い。バランスも良く素晴らしく美味しいワイン。

5本目はシュレーダー ト・カロン・ヴィンヤード ヘリテージクローン カベルネ・ソーヴィニヨン 2022(90000円)。ヘリテージ・クローンはブドウの房が握りこぶしの半分くらいしかない、レアなクローンを使ったワインです。あまりにもブドウが小さいので1アーカーあたり1トン程度しか収穫できません(通常2トンを下回ると極めて少ないと言われます)。ちなみにト・カロン・ヴィンヤード・カンパニーのHWCもこのクローンで作っています。

ラズベリーやザクロのような赤果実の香りが前に出てきます。カシスも感じられます。甘酸っぱくジューシー。これもフルボディで濃いワインですが、チャーミングさを感じます。個性的な魅力を感じさせるワインでした。

シュレーダーの最後に2021年のオールド・スパーキー(200000円)が供されました。これはベクストファー・ト・カロンのいくつかのブロックの最良のものから作るワイン。マグナムボトルだけの提供です。

極めてリッチでタニック。パワフルでストラクチャーも酸も強いワイン。飲んでいくと少し甘やかさを感じられるようになります。ベクストファー・ト・カロンの濃密さが堪能できるワインです。

シュレーダーとト・カロン・ヴィンヤード・カンパニーを比べると、シュレーダーの方が最初から魅力全開。一方、ト・カロン・ヴィンヤード・カンパニーは少し奥ゆかしさがあります。なお、醸造においてシュレーダーは10~13日の発酵で。温度は高めで発酵させます。一方、アンディ・エリクソンのト・カロン・ヴィンヤード・カンパニーは低めの温度で約2週間かけて発酵させます。どちらもバランスの良さを目標にしており、それを実現していますが、シュレーダーはやや甘やかさを感じさせるワインです。

なお、2022年はオールド・スパーキーは作られませんでした。ブレンドしたもののオールド・スパーキーの品質に届かなかったとのこと。2023年からは、モンダヴィのト・カロンから同じように最良のものによるオールド・スパーキーが作られる見込みです。


別途試飲したワインのコメントを記します。

まずはダブル・ダイヤモンド カベルネ・ソーヴィニヨン 2022(14800円)。

カシス、レッドベリー、アルコール高いがきれい。タンニンやや強く、ストラクチャーしっかり、鉄、黒鉛、タバコ。ストラクチャーの強さが特に印象的でした。

次にダブル・ダイヤモンド プロプライエタリー・レッド・ワイン 2022(14800円)。

カシスの香り高くブルーベリーも。カベルネ・ソーヴィニヨンよりリッチで濃密。チョコレートの風味。

最後はマウント・ヴィーダーのカベルネ・ソーヴィニヨン2021(13000円)です。
ブラックベリーに杉や腐葉土。山らしさを感じられるワインでした。
Date: 2024/1022 Category: 業界ニュース
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ナパのワイナリー「ライソロジー(Lithology)」をヴィノスやまざきが扱うようになり、ワイナリーからマネージング・ディレクターのジェームズ・シルバー氏が初来日してディナーを開催しました。ライソロジーというのは岩石学という意味で、ワインのラベルにも、その畑の土壌から撮った写真が施されています。



オーナーのアレハンドロ・ブルゲローニ氏はアルゼンチン出身で石油やガスなどの事業を営んでいたビリオネア。60歳を過ぎてからウルグアイのガルソンなどのワイナリーを立ち上げ、イタリア、フランス、オーストラリア、そしてナパとワイナリーを造ったり買収したりしています。2018年のワインスペクテーターの記事によると4大陸で13のワイナリーを経営し、ブドウ畑の総面積は4500エーカー近くになるといいます。

ナパではハーラン・エステートが会員制で作っていた「ナパ・ヴァレー・リザーブ」のワイナリーを買い取り、それがライソロジーの基となっています。

また、ライソロジーは世界最高のワインを造るという目標でワインメーカーをフィリップ・メルカとミシェル・ロランという、超有名な二人に委託しています。

最初のワインはソーヴィニヨン・ブラン2022(35,000円)です。セント・ヘレナの東側にあるワイナリーの周囲の畑で、元々はカベルネ・ソーヴィニヨンが植わっていたのをソーヴィニヨン・ブランに接ぎ木し直したものです。周囲が樹に囲まれて日照がやや少ないことからソーヴィニヨン・ブランにより向いていると判断したとのこと。有機栽培の認証を得ています。非常に生産量の少ないワインで、今回2割をヴィノスやまざきが輸入したそうです。

グアバやパッションフルーツなどの熟した果実に、ハーブや草の香り。軽くヴァニラの香り。酸高くリッチな味わい。高級感あるソーヴィニヨン・ブランです。特に樽の使い方のきれいさが際立っており、果実の魅力と上品な味わいを両立させています。

次はシャルドネ リッチー・ヴィンヤード2021(35,000円)です。唯一ソノマのワイン。リッチー・ヴィンヤードはロシアン・リバー・ヴァレーのラグーナ・リッジと呼ばれる地域の畑。トゥファと呼ばれる石灰質の土壌があり、リッチでパワーを秘めたワインができるといいます。

ソーヴィニヨン・ブラン同様、こちらも樽がとても上品。 パンや柑橘などの香り、リッチさもありとても美味しい。

この後はナパのカベルネ系のワインが3つ続きます。
まずはベクストファー・ト・カロン・ヴィンヤードカベルネ・ソーヴィニョンです。ヴィンテージは2021年(10万円)。カシスなど黒系果実にチョコレート、黒鉛などリッチな味わい。少しリキュールのような感じもあります。ミントや杉、酸高く、タンニンもしっかりとしたパワフルでストラクチャーのあるゴージャスなワインです。今飲んでも美味しいですが、10年くらいは確実に熟成すると思います。

その次はベクストファー・ドクター・クレーンのカベルネ・フラン2021(10万円)。
ドクター・クレーンはセント・ヘレナの西側にある畑。ベクストファーの様々な畑の中でもト・カロンと並んで評価の高いワインができます。歴史的には1850年にまでさかのぼる由緒ある畑。カベルネ・フランはそこのわずか4列しかない貴重なもの。このカベルネ・フランは英デカンター誌で100点を取っています。

ベクストファー・ト・カロンより温暖な地域だけあって、通常のカベルネ・フランに感じられる赤い果実の要素はほとんど見られず、青系や黒系の果実が中心です。それでも酸が豊かなのはやっぱりこの品種のせいでしょうか。チョコレートや腐葉土の香り。特筆できるのはシルキーなテクスチャ。ドクター・クレーンの特徴の一つがシルキーな味わいになることだそうですが、特にこのワインはそれを強く感じます。これもカベルネ・フランらしさの現れだと思います。生産量50ケースにも満たないという貴重なワイン。

最後はオーナーの名前のついた「アレハンドロ・ブルゲローニ2017(12万円)」。7年経っているので腐葉土やマッシュルームといった熟成香が出てきています。非常にバランスよく作られたワイン。

ちなみに、今回の来日はヴィノスやまざきの広尾店のリニューアルに合わせたもの。地下鉄の出口のすぐ横にある広尾店は新たに2階でテイスティングができるようになったそうです。今や広尾は東京のワインショップのメッカにようになっています。広尾のワインショップツアーとかも面白そうですね。

今回のディナー会場はTOKYO NODE DININGという虎ノ門ヒルズのステーションタワーという新しいビルの上の方にあるところ。料理も素晴らしかったです。カベルネ・ソーヴィニヨンにアマダイを合わせるというのも面白かった(ソースが絶妙に美味しくワインに合いました)。


熊本県産天然真鯛のカルパッチョ


ホタテのコートレット ベニズワイガニのベシャメルソース


活き甘鯛のソテー ポルチーニの焦がしバターソース


赤城和牛イチボのロースト 赤ワインソース


24カ月熟成コンテチーズとオータムトリュフのリゾット


洋ナシのヴァシュラングラッセ
Date: 2024/1019 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのプリチャードヒルにあるワイナリー「ブランド(BRAND)」がワインメーカーを変更したと発表しました。これまではフィリップ・メルカが、直接自身でワインメーカーをしていました(多くのワイナリーではアトリエ・メルカという会社として契約しています)。

新しいワインメーカーはグレーム・マクドナルド(Greame MacDonald)。自身のマクドナルド・ワイナリーのほか、ブランキエ(Blankiet)でもワインメーカーをしています。
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マクドナルドは19世紀にハミルトン・ウォーカー・クラブが作ったオリジナルの「ト・カロン・ヴィンヤード」の一部を自社畑として所有しています。そのブドウは長年ロバート・モンダヴィに供給しており、故ロバート・モンダヴィは「ナパヴァレーで最高のブドウの栽培家」とマクドナルド家を称えていました。グレームにはUCデーヴィスへの進学を勧めたといいます。

現在はモンダヴィへの供給はやめ、自身のワイナリーでカベルネ・ソーヴィニョンを作っています。ワイン・スペクテーターで2021年のカベルネが99点を取得するなど、非常に高い評価を得ています。

フィリップ・メルカが直接携わる数少ないワイナリーだったBRANDが、わざわざそれをやめてマクドナルドと契約したことが非常に興味深いです。
Date: 2024/1018 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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10月16日にナパで17番目となるネステッドAVA「クリスタル・スプリングス(Crystal Springs)」が認可されました。ナパで新しいAVAが認可されるのは2011年のクームズヴィル(Coombsville)以来13年ぶりとなります。

Crystal Springs

新しいAVAはハウエル・マウンテンの南西、セント・ヘレナとカリストガの東側に当たります。ヴァレー・フロアではなく斜面のAVAなのでハウエル・マウンテンと共通性がありますが、ハウエル・マウンテンは標高1400フィート以上なのに対し、クリスタル・スプリングスは標高1400フィート以下。霧がかかるかかからないかという大きな違いがあります。

ワイナリーとしては一番有名なのがヴィアデル(Viader)があり、このほかBremer、Somniumといったワイナリーがあります。また、バージェス(Burgess)の畑があり、バージェス創設者のスティーブン・バージェスがAVA策定の原動力となりました。バージェスによるとクリスタル・スプリングスのカベルネ・ソーヴィニヨンは「非常に濃く、複雑なフレーバーとリッチなアロマがある」とのこと。

なお、クリスタル・スプリングスは従来のカリストガの一部を含み、両方が重なる部分がないように、カリストガの境界も修正されています。
Date: 2024/1017 Category: 業界ニュース
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経営破綻したヴィンテージ・ワイン・エステート傘下のワイナリー「オーウェン・ロー(Owen Roe)」を創設者が買い戻しました(Owen Roe founders buy back winery in Vintage Wine Estates selloff - Northwest Wine Report)。
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オーウェン・ローはワシントン州のヤキマ・ヴァレーにあるワイナリー。デイヴィッド・オライリーと妻のアンジェリカが1999年に設立しました。

その後ヴィンテージ・ワイン・エステートの傘下に入っていましたが、今回ワイナリーや住居、二つの畑、ブランド、知的財産権などすべて買い戻すことになりました。従業員も変わりません。価格は明らかになっていません。

これと同時に、ヴィンテージ・ワイン・エステートからカリフォルニアのアロヨ・グランデ・ヴァレーのレティシア(Laetitia)を3つの家族が買収しました。

ワインメーカーでジェネラル・マネージャーのエリック・ヒッキーなど地元の3家族が共同で購入する形です。ヒッキーは1988年からレティシアに携わっており、2000年からワインメーカーを務めるベテランです。

買収価格などは明らかになっていません。
Date: 2024/1016 Category: 業界ニュース
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有機栽培のワインに関する情報を発信している「Organic Wines Uncorked」によると、カリフォルニアで有機栽培認証を行ているCCOFで認証されたブドウ畑は2万3187エーカー。州内のブドウ畑は55万エーカーほどあるため、有機栽培の比率は4%ほどということになります。欧州の主要なワイン生産国では有機栽培の比率は18%ほどに達しており、それと比べるとカリフォルニアはまだだいぶ遅れている印象があります。

とはいえ、2016年には1万644エーカーにとどまっていたので、それから8年で倍増してきたことにはなります。

州内において有機認証で先行しているのはナパで、CCOF認証の24%がナパの畑です。ナパでは全体の12%ほどが有機認証を受けており、かなり比率が上がってきています。

続くのはソノマで州全体の11%。ナパの半分であり、ブドウ畑全体における比率は4%程度と、州全体とさほど変わりません。
Date: 2024/1010 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ハーラン・エステート(Harlan Estate)の40周年を記念して、現当主のウィル・ハーランとワインメーカーのコーリー・エンプティングが来日、マスタークラスを開催しました。現行最新ヴィンテージの2020年を筆頭に、2013年、2011年、2002年、1995年のハーラン・エステートを垂直で試飲するという贅沢なイベントです。

今回は、中川ワイン社長の中川誠一郎の質問に答えるという形でセミナーは進みました。

――ウィルさんは、2012年にハーランに入る前にITビジネスに携わっていましたが、ワインビジネスに入った理由は何だったのでしょうか。
 若いころは自分自身で仕事をしたいと思っていた。ハーランはファミリービジネスで、そこに自分がかかわることはないと思っていた。ワインにかかわるようになったのはマスコット(The Mascot)のプロデュースがスタートだった。その後、プロモントリー(Promontory)に携わることになって、それをトップでやるときにワインの道に進むことを決心した。現在はファミリービジネスをリードすることに自分自身の役割をはっきりさせないといけないと感じている。具体的には、今の仕事を少しずつでも良くしていくということが私の大事な責任だと思っている。
 父とは密接につながっている。ハーランやボンド(Bond)のポテンシャルをしっかりと見極めていくことで意見は一致している。プロモントリーには個人的な創造性を取り入れる余地があるが、ハーランは父が築いたものを続けていくのが基本だ。

――ワイン造りは年々進歩しているが、ハーランの第一世代と違うところは何か。
 マスコット、プロモントリー、ハーラン、ボンド、それぞれアイデンティティがあり、ビジョンも持っている。それぞれのブランドにおける文化を引き継いでいくということが非常に大切なことであり、各ブランドが自分の足で立っているということが重要だ。ワイン作りは農業からスタートするので、個性の違う畑をその個性に合わせて仕事をしっかりやっていくということ、その土地の個性を引き立てていくことを大事にしている。

――2020年にマネージング・ディレクターに就任して、グループの将来についてもっともわくわくすることは?
 ワインビジネスでは40年はまだスタート地点。この土地を耕し始めた人にとっては毎年が発見だっただろう。学ぶことはたくさんあり、終わりのない旅路だと思う。畑をしっかり理解してワインを造ることが大事。生産量を増やして大きくすることは考えていない。より良くすることだけを考えている。退屈で時間がかかるが、そこに興奮し、喜びを感じている。

――ウィルさんが生まれたのが87年。ハーランの設立が84年なので生まれたときからそこで育ってきたわけです。この特別なテロワールをどう表現しますか?
 240エーカーの敷地の中で40エーカーだけがブドウ畑であり残りは森である。ナパのような暖かいエリアにおいて、森に囲まれていることはとても大事。森の要素がワインから感じられる。森の中を歩き香りを嗅ぎ、湿気とか、少し暖かさといった、その森のニュアンスがハーランに影響を及ぼしていると思っている。

――次にハーラングループ全体のワイン造りの責任者であるコーリー・エンプティングさんに伺います。コーリーさんが初代ワインメーカーのボブ・リービーさんの下で働き始めたのが2001年。それから23年で栽培技術、醸造技術はどう進歩していったのでしょうか。
 栽培管理では、とても細かいことを丁寧に掘り起こすのが大切。樹齢が高まっていくにつれて樹が語ることをしっかり見る。人の力ができるのはブドウが何をしてほしいかを細かいところまで見ていくことだ。技術自体よりも、樹とともに生きることが大切。ハーランでは80%以上は灌漑しておらず、土を掘り起こすこともしない、農薬をまくこともしない。自然のままというとおかしいが、ブドウの声を聴いて、望むものを自然に行っていこうとしている。

――コーリーさんは創業時のメンバーとも働いているし、今の若い人とも働いている。伝統と変革と、どのようにバランスを取っていますか?
 創業者がやってきたことを引き継いで、それをいかに発展させていくか。やってきたことフォローしていくことも大切だと思っている。何かすごく変化をさせるということではなく微調整をしながら進めていくことが大事だ。自分がやっていることにボブ・リービーがうーんといったときには、本当にいいのか改めて考える。指示されたようにやるのではなく考えることが大切だ。

質疑応答しながらテイスティングに移ります。新しい2020年から順に飲んでいきます。

――2020年はハーランにとって重要なヴィンテージです。どのような収穫でどのようなタイミングだったのか教えてください。
 2020年は、私が長年ワイン業界に関わってきた中で一番大変な。そして一番大切なヴィンテージだ。ハーランでは2008年から灌漑なしのドライファーミングをしており、それが有効に働いた。ハーランではヴァインマスターという畑の役割があり、それが非常に重要である。
 これはハーランが独自で作り出したマスタープログラムで、栽培管理をする人にとってしっかり勉強して栽培管理をしていくことを目指している。マスターを取ると、それがリーダーとして自分のチームを持つことができ、そして自分の与えられた区画をしっかり管理していくということになる。
 2020年は火事が2回あった。最初の火事は8月18日でナパの東。ハーランでは火事の影響はなかった。火事のあと、すぐに畑でブドウを食べたところ成熟が確認され、収穫を始めた。9月27日にグラスファイアーが始まったが、その2週前には収穫終わっていた。煙が全域に広がったため、煙の影響全くなしに収穫できたワイナリーは10以下だろう。
 結果的に2020年は従来の1か月以上前に収穫が終わった。今テイスティングして、非常にバランスがとれたハーモニーがあるワインになった。中にぎゅっと要素が詰まっていて、ワインの中には力強さをしっかり持っているワインに仕上がった。ドライファーミングで作ってきたので早い収穫であってもしっかりした味になった。
 無灌漑は元々水源を確保するのが難しいことから始めた。樹のエネルギーをいかに引き出すか。余計な水分を与えないことで、樹自身がエネルギーを出すことを期待している。冬の剪定の段階から考えていかないといけない。どれだけ芽を出すかといったところから始まる。

筆者(アンディ)のコメント:赤果実中心に少し青い果実の香り。腐葉土や針葉樹、落ち着きのある香り。ピュアな味わい。とてもエレガント。きわめてしなやかだが、実はタンニンも強く、中央に芯を感じる。2020年のハーランは2月にも試飲していますが、そのときはもっと華やかさがあり、今回はそれが腐葉土や針葉樹など、落ち着きを感じさせる香りに変わってきている感じがしました。

次の2013年は暖かいヴィンテージで干ばつの2年目、ストラクチャーのあるワインだといいます。

筆者のコメント:濃密な香りで2020より少し重さを感じる。赤果実はわずかで黒果実主体、タバコやコーヒー、アニス。シルキーだが強固なタンニンとストラクチャー。この日のワインの中では一番濃厚でパワフル。

続く2011年は雨が多く、冷涼なヴィンテージ。ナパでは珍しくブドウが完熟しないワイナリーも多く、多くのワインメーカーが「これまでで一番難しかった年」といいます。

筆者のコメント:複雑な香り、マッシュルームや腐葉土。赤果実が主体だが、果実感は強くない。まだタンニンが強固。バランスが素晴らしい。

2002年は温暖な年。ナパのワインが最も濃厚に作られていた時期でもあります。

筆者のコメント:赤から青の果実。生肉や皮革のような動物的な熟成香。甘草の甘やかさ。20年以上たっているとは思えないほどの芳醇さ。強固なストラクチャー。

最後は1995年。前年の1994年が非常に素晴らしいヴィンテージであり、それに隠れがちなヴィンテージです。また、ハーランは1984年植樹なので、ブドウの樹齢はまだ11年くらいです。

筆者のコメント:色は少し褐色が入っている。赤い果実、皮革、腐葉土。濃密で集中した果実味。驚くほど若々しい。明るい味わい。

今回の試飲、どのワインも非常に素晴らしく甲乙つけがたいものでした。その中で2020年はこれからどうなっていくのかを含めて、興味深く、機会があればまた飲んでみたいと思うワインでした。また、あまりよくないと言われる2011年も非常に素晴らしく、バランスの良さではこの日、一番でした。また1995年も30年近く経っているとは思えないほどの若さがまだあり、無理して若作りしているのではなく、自然に残った若さが魅力的でした。

 「生涯の夢は世界中で一番のワインを造ること。熟成のポテンシャルを持つものを作っていく」と語るウィル。既に世界一と言ってもいいレベルにあると思いますが、200年に向けてこれからも家族経営で一つ一つを丁寧にやっていくと語っていました。

 また、2020年のスタイルがこれからのハーランのスタイルになっていくのかと聞いたところ、「スタイルを決めていくのではなく、各ヴィンテージや土地の理解を進めて反映させることを大事にしている。その中で2020年は特別なグローイングシーズンが反映されたワインになっている」とのこと。「2021年2022年にも期待してほしい。2021年は力強く、ストラクチャーのあるワイン、2022年はソフトで輝きのあるきれいなワインに仕上がっている」

ハーランの栽培や醸造における新たなアプローチとしては前述のヴァインマスタープログラムに注力しているそうで、それを強調していました。その中で、ハーランの一部の区画では、いわゆる「ヘッドプルーン」や「ゴブレット」などと呼ばれる垣を作らない仕立ても試しているとのこと。灌漑なしでの栽培に向いているのではないかという話でした。
ヘッドプルーンというと、ジンファンデルで樹間をかなり大きく取ったもののイメージがありますが、ハーランでは樹間が1m程度とかなり狭く取っているのも興味深いところです。

これはコーリー・エンプティングのスマホから。


コーリー・エンプティング

Date: 2024/1009 Category: 業界ニュース
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ロス・カーネロスのソノマ側で秀逸なピノ・ノワールやシャルドネを造るドナム(Donum)のディナーに参加しました。ドナムを輸入するワイン蔵Tokyoがイルドコリンヌで開催したイベントで、ドナム以外にもワイン蔵Tokyoが輸入するワインが供されました。

ワインメーカーのダン・フィッシュマンさん


グローバル・エステート・アンバサダーのマーク・デ・ヴィアMW

ドナムは2001年に設立されたワイナリー。ワイナリー名はギリシャ語でGiftの意味。土地からもらうギフトをワインにするという考えから名付けられたそうです。創設者のアン・モラー・ラッケは1981年にドイツから米国に渡り、1983年にカリフォルニア最古のワイナリとして知られているブエナ・ヴィスタでワインメーカーになりました。その後カーネロスの畑を大幅に拡張して、多くのワイナリにブドウの提供も始めました。2001年にブエナ・ヴィスタがアライド・ドメック社の手に渡った後、アンの手にTula Vista Ranchという土地が残り、そこが現在の本拠地となりました。2005年にはケネス・ユーハスをワインメーカーに迎えました。2011年にデンマークの投資家が買収、同年ダンさんもドナムで働き始めました。

オーナーが芸術好きで、畑にはそこかしこにアート作品が置かれています。
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畑はDonumヴィンヤードのほか、そこから1マイル離れたTFVヴィンヤード、ロシアン・リバー・バレーのWinsideヴィンヤード、ソノマコーストに2019年に植樹したばかりのBodegaヴィンヤード、メンドシーノのアンダーソン・ヴァレーにAngel Campヴィンヤードと2023年に買収した有名なSavoyヴィンヤードがあります。栽培はオーガニックで、2023年にはROC(リジェネラティブ・オーガニック・サーティファイド)の認証も取っています。ROCは土壌の状態を昔のように健康な状態に持っていくことを主旨とした認証で、土壌にエネルギーとバイタリティを与えるとドナムでは評価しています。カーネロスでは初の認証です。ドナムは非常に栽培を重視しており、畑のテロワールを表現するワインを造ろうとしています。

カーネロスは粘土質の土壌が多く、必ずしもピノ・ノワールに最適な土壌というわけではありません。しかし、ROCを採用したことにより、土壌の状態がよくなって水はけも良くなってきています。ピノ・ノワールの栽培にはROCが特に大きな意味を持つようです。


生産の8割はピノ・ノワールで、あとはシャルドネです。カーネロスの畑にはごく少量だけメルローがあるとのことですが、ワイナリーを訪問した人しか買えないようです。

ワインの感想に移ります。

シャルドネは2021年のカーネロス・エステート(15950円)。柑橘の心地よい酸味とヴァニラの風味、白桃やネクタリンの柔らかな味わい。きれいで美味しいシャルドネです。ジェームズ・サックリングで95点。

シャルドネのクローンはオールド・ウェンテが中心。樽の風味はあまり付けたくないので新樽は1/3でトーストも軽くしています。MLFはしていません。ワインは結構ヴァニラ感があったので新樽率は高いのかと思いましたが、意外と低くて驚きました。


オーナーの夫人が中国人とのことで、ラベルには干支をモチーフにした絵柄があしらわれています。

ピノ・ノワールも2021年のカーネロス・エステート(18700円)。ワイナリー創設から毎年作り続けている唯一のワインとのことで、まさにドナムを代表するワインと言っていいでしょう。

ラズベリーやザクロの果実味に、紅茶やマッシュルームの風味。意外とタンニンもしっかりあります。カーネロスらしい落ち着きのあるピノ・ノワールです。


この後、このディナーのためにとダンさんが特別に持参されてきた「East Slope」という単一ブロックのピノ・ノワール(2022年)をいただきました。
East Slopeは東向きの斜面なので、朝日をしっかり浴びる一方で、午後の強い日差しはさえぎられます。またここはカレラ・クローンしかないそうです。わずか180ケースの生産量という貴重なワインです。

エステートのピノ・ノワールもかなりエレガントと感じたのですが、こちらを飲むと果実味のピュアさ、繊細な味わいがより強く感じられます。デリケートでありながら、芯には強さもあるピノ・ノワール。すばらしかったです。

ディナーでは、このほかカドレ(Cadre)のアルバリーニョ(これ、好きなんです)、ナパのエーカー(Acre)のメルロ、パソ・ロブレスのダオ(Daou)のカベルネ・ソーヴィニヨン・リザーブも供されました。個人的にはやはりCadreのアルバリーニョが良かったです。


Date: 2024/1008 Category: 業界ニュース
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ダックホーンやカレラなどを擁するダックホーン・ポートフォリオ社が投資管理会社のバタフライに買収されることで合意しました。バタフライは現金で株式を買い取ります。ダックホーン・ポートフォリオは上場企業ですが、株主は1株あたり11.10ドルの現金を受け取ります。

バタフライは食料品に特化した投資管理会社。Milk Specialties Global、Chosen Foods、MaryRuth Organics、Orgain、Bolthouse Fresh Foods、QDOBAといった会社を保有しています。

買収は冬に完了する見込みで、買収が終わるとダックホーンは上場停止となります。

Date: 2024/1005 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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お得情報をいくつかまとめます。

ウメムラではスポッツウッドのエステート・カベルネ・ソーヴィニヨン2016と、オショネシーのハウエル・マウンテン・カベルネ・ソーヴィニヨン2015のセットが41800円。米国の税別価格で調べるとスポッツウッドが280ドル、オショネシーが130ドルくらいなので、スポッツウッドの価格だけで4万円を軽く超えます。

スポッツウッドはロバート・パーカーがしばしば「ナパのマルゴー」と呼んでいたワイナリー。エレガントなワイン造りに定評があります。畑は有機栽培でビオディナミも認証取得しています。2016年はアドヴォケイトもヴィナスも96+。オショネシーはハウエル・マウンテンを代表するワイナリーの一つ。ハウエル・マウンテンはナパの山の中では一番温暖で、ダークなフルーツとしっかりとしたタンニンが特徴となる地域です。


しあわせワイン倶楽部ではナパのエチュードが終売セール。好きなワイナリーだったので輸入停止はかなり悲しいですが。
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シャルドネとピノ・ノワールとカベルネ・ソーヴィニヨンがあります。個人的にはカベルネ推しですが、ピノ・ノワールでもナパのカーネロスを代表するワイナリーの一つです。


もう一つしあわせワイン俱楽部から、ジンファンデルの雄ターリーが3割引セール。次のヴィンテージからは大幅値上げになりそうなので、まとめ買いも推奨です。
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ジュヴナイル、オールド・ヴァイン、エステート、シダーマンの4つのジンファンデルが出ていますが、一押しはオールド・ヴィンテージ(2014年)のシダーマン。ちょうどこなれて飲み頃だと思います。


コスパダントツはオールド・ヴァイン。米国で実売38ドルが5000円台です。ジュヴナイルは若木のブドウで、こちらは古木。それほど価格が変わらないならやはり古木が魅力的です。

Date: 2024/1004 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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会社のロッカーの中から古いワインスペクテーター誌を発掘しました。2003年7月31日号、特集は「California’s New Generation」というタイトルで、ワインメーカーを中心に10人のワイン業界人を取り上げています。たぶん、この特集が読みたくて買ったのでしょう。日本の紀伊國屋書店のシールが貼ってありました。価格は1270円。米国では4ドル95セントとなっており、おそらく航空便で運んでいるのだと思いますが、価格は結構リーズナブルに感じます。

さて、特集の10人ですが、以下のようになっています(肩書は当時)
・Greg Brewer(Brewer-Clifton、Melvilleのワインメーカー)
・Thomas Brown(Outpost、Chiarello、Nicholson Ranch、Schrader、Tamber Bay、Frank Familyのワインメーカー)
・Marc Cuneo(Sebastiani)
・Kris Curran(Sea Smokeワインメーカー)
・Mat Garretson(Hospice du Rhone主宰など)
・Agustin Huneeus Jr.(Constellation Brandsの高級ワイン部門CEO)
・Brian Loring(Loring創設者)
・Philippe Melka(Bryant Family、Vineyard 29などのワインメーカー)
・Cecilia de Quesada(Ristowのビジネス・マネジャ)
・Vanessa Wong(Peay Vineyards)

特に興味深かったのがトーマス・リヴァース・ブラウン。

ワインマニアとしてトーマスがナパに移住したのが1996年。1997年にTurley Wine Cellarsで職を得、それからOutpostのジンファンデルなどで有名になりつつあったころです。Wine AdvocateでSchraderのワインが次々と100点を獲得して注目を受けたのはおそらくこの2、3年後でしょう。既に多くの顧客を抱え始めていますが、今ほど注目される存在ではなかったと思います。

ワインも常に高得点というわけではなく、アウトポストのジンファンデルでは1998年に早くも93点を取っていましたが、ニコルソン・ランチ ピノ・ノワール ソノマ・ヴァレー2001は84点とかなり低い点にとどまっています(いずれもスペクテーターで)。このワインのレビューでは「土っぽい、皮のようなアロマがスパイシー、ハーブ、ルバーブ、煮詰めたプラムのフレーバーへと続く。 滑らかなテクスチャーだが、リッチさと風味には欠ける」とスペクテーターの編集者ジェームズ・ロービーが書いています。この評価に対してトーマスは「ピノは常に色が明るく果実味豊かなものだ。私はピノらしい香りと味わいのピノが好きなんだ」と反論しています。暗に、ジェームズ・ロービーのピノの好みを批判しているようなコメントではありますが、信念を強く持ってワインを造るトーマスらしさも感じられます。

次のようなやり取りも書かれています。
ある日、顧客とワインの価格設定について話していたとき、ブラウン氏は「ワインを作るのにいくらかかったかを見て、そのように価格設定したらどうですか」と提案した。顧客は笑ってその考えを却下した。「初年度のワイン販売で全額回収することではなく、プロジェクトの長期的な成功に目を向けてほしいと願うだけです」とブラウン氏は言う。(日本語はGoogle翻訳による)
このとき、トーマスは理自身のブランドであるリヴァース・マリーを立ち上げかけているところで、まだワイナリー名も決まっていなかったのですが、リヴァース・マリーのリーズナブルな値付けは、上記のような考えから来ているのかと思われます。

また、彼はワインマニアであり、ワインの教育は全く受けずにナパに来たのですが、このころはワインマニア心をまだ多分に持っています(今でも内心はそうなのかもしれませんが)。
「ワインメーカーになったことで、ワインをもっと高く評価できるようになりました。今では、テイスティングのときに、ワインを逆から味わうことができるからです。完成した製品から感じ取ったものを、それが作られたプロセスと関連付けることができるようになりました。」(日本語はGoogle翻訳による)
このように、ワインマニアとしてワインメーカーになったことを喜んでいる様子がうかがえるのも面白い記事でした。

というか、こんなことをサラッと言えてしまうのが、やっぱりトーマスは天才だと改めて思った次第です。

ちなみに、表紙の写真、トーマスだけ入っていません。何か理由はあったのでしょうけど、彼らしいと思いました。

このほかの記事ではグレッグ・ブリュワーの寿司職人のようになりたいという話も興味深いものがありました。寿司職人が、魚という素材をシンプルな調理で寿司に仕上げるように、ブドウの味わいをワインに反映させたいというような意味です。彼のミニマリスト的アプローチ、特にこの後のダイアトムでのワイン造りに強く通じていると感じました。
Date: 2024/1003 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ボルドーでは減反政策でブドウの樹が引き抜かれており、オーストラリアも巨大在庫にあえいでいますが、カリフォルニアも例外ではありません。2020年の山火事による収穫減や、2022年までの干ばつによる収穫減で、表面化していなかった「ブドウ余り」がついに現実のものになってきています(California Farm Bureau Reports 'Brutal' Wine Market Leaves Farms in Peril)。

多くのブドウ畑はワイナリーと契約を結んでブドウを栽培しています。通常は5年間などの長期契約を結びますが、それが切れた後に更新されないケースが増えています。契約なしに栽培されたブドウはスポットで市場に出てきます。これまではそれらも買い手を見つけることができていましたが、2024年はスポット市場の多くが買い手のないままになりそうです。ワイナリー側も在庫が多くて生産を増やす余裕がないのです。

400軒の栽培家のブドウを仲介するAllied Grape Growersのジェフ・ビター社長の試算によると、今年はスポット市場に出てくるブドウがカリフォルニア全体の3分の1に達するかもしれないとのこと。それらの多くが行き場がなくなってしまうかもしれません。

特に状況が厳しいのは、安価なワイン用のブドウを作っているセントラル・ヴァレー(インランド・ヴァレー)の栽培家です。ローダイのジンファンデルなども難しい状況に立たされています。
Date: 2024/1002 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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9月23日にイルドコリンヌで「カリフォルニアワインの玄関口」の25周年記念パーティを開きました。2部制で合計70人弱の方にお越しいただく大盛況でした。改めて皆様に感謝いたします。


今回は、わがままを言って、ワインの多くをインポーターさんに協賛いただきました。中にはレアなマグナムボトルもあり、すばらしいワインが並びました。ご協力いただいたインポーターの皆さま、本当にありがとうございました。

また、サイトをオープンした1999年のワインを持参した方は会費を半額にするということで、こちらも10数人の方にワインをお持ちいただきました。




この日の目玉のワインはBondのPluribus 2010マグナムボトル。これだけは喧嘩にならないように、ビンゴの景品で、前半後半それぞれ10人の方にお飲みいただきました。

さすがに最後の方はだいぶ酔っぱらったのと、人数も多かったので行き届かなかったところもあるかと思います。お話したくてもする時間がなかった方もいらっしゃったと思います。この場を借りて、謝罪いたします。

あっという間の5時間でした。

30周年は、もっと小規模に開くと思います。またお越しいただけたら幸いです。

Date: 2024/0916 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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2025年1月に試験が行われるナパヴァレー・ワイン・エキスパート認定試験の申し込みが始まりました。
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1次試験と2次試験に分かれていること。1次試験の上位者のうち、ソムリエ資格のある人と、ワイン講師をしている人は2次試験に進めることはこれまでと同様です。ただし、これまではソムリエとエデュケーター1人ずつを最終的に選んでいましたが、今回は区別せずに上位2人をナパツアー招待という形になりました。

一般の方の場合は一次試験60点以上でエンスージアスト、70点以上でエキスパートの認定証がもらえます。エキスパートは別途ピンバッジを購入することも可能です。また、ワイン講師は85点以上でエデュケーターとして認定されます。エデュケーターは認定証とピンバッジがもらえます。

試験だけを申し込むこともできますが、教本やワイン試飲を含むウェビナーなどがセットになった受験セットで申し込むことを強くお薦めします。教本の内容は必須ですが、試験には教本以外の内容も含まれますので、ウェビナーである程度の指針がわかります。

ワイナリー情報の勉強には手前みそながら、電子書籍で出している「無敵のカリフォルニアワイン講座(ナパ編)」も役立つと思います。

Date: 2024/0910 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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英デカンター誌がポール・ホブズ(Paul Hobbs)のネーサン・クームズ・エステート(Nathan Coombs Estate)カベルネ・ソーヴィニョン2021年に100点を付けたとワイナリーが発表しました。
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ネーサン・クームズ・エステートはクームズヴィルがAVAに策定された翌年の2012年にポール・ホブズが取得した畑。ナパ市の設立者で、クームズヴィルの名前の元になったネーサン・クームズから名前を取りました。ソノマに本拠地を置くポール・ホブズにとっては、ソノマ外で初めて取得したブドウ畑であり、自社畑として初めてのカベルネ・ソーヴィニョンになりました。

クームズヴィルはナパ市のすぐ東側でナパの中ではカーネロスに次いでサンパブロベイに近いところ。冷涼なことと、火山のカルデラが中央にあり鉄分の多い火山性の土壌が中心になるのが特徴です。

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個人的にもこれから注目の地域としてクームズヴィルをよく取り上げており、カベルネ・ソーヴィニョンやカベルネ・フランのトップクラスの産地になってくると思っていたので今回の快挙にはちょっとガッツポーズです。
Date: 2024/0907 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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デプトプランニングの試飲会からお薦めのワインを紹介します。


新入荷のコブルストーン ブラン・ド・ブラン(6000円)です。シャルドネ100%ですがリーン過ぎず、果実味も楽しめるスパークリング。


スペインの著名なサーフスポット「ムンダカ」をブランド名にしたソーヴィニヨン・ブラン(3800円)。作っているのは「モントレーのコスパ王」(アンディ命名)ことシャイド・ファミリー。ややリッチ系のソーヴィニヨン・ブランで美味しいです。


ダックスープ(Duxsoup)のシラー(3000円)。コスパ抜群です。リッチでフルボディ、酸もしっかりあって美味しいシラー。


GGディアーリのアメリカン・レジェンド ジンファンデル(3500円)。シエラフットヒルズのジンファンデルです。バランスよく美味しい。コスパ良いです。


最後にデプトプランニングが扱うソノマのワイナリー2つのワインを紹介します。まずはロシアン・リバー・ヴァレーの老舗デリンガー(Dehlinger)。2018年のシャルドネ(8000円)、2017年のピノ・ノワール(10000円)、2014年のカベルネソーヴィニヨン(12000円)のどれも素晴らしい。シャルドネは熟成で蜜っぽさがでてきています。ピノ・ノワールはロシアン・リバー・ヴァレーらしいリッチで芳醇なタイプ。カベルネ・ソーヴィニョンもロシアン・リバー・ヴァレーです。10年熟成で複雑さがかなりでてきています。リッチで芯のしっかりしたカベルネ。


マルベックで100点を取るなど注目を集めるワインメーカー ジェシー・カッツのアパーチャー・セラーズ。ソーヴィニヨン・ブラン(12000円)、カベルネ・ソーヴィニョン(18000円)、オリバーランチのカベルネ・ソーヴィニョン(35000円)。いずれもかなり高額ですが、それだけの実力があります。ソーヴィニヨン・ブランはボルドータイプのリッチで樽を利かせたもの。複雑さもあり高級感が漂います。カベルネ・ソーヴィニョンはモダンでリッチなスタイル。オリバーランチのカベルネはより酸が高く芳醇。すべてにおいてレベルの高いカベルネ・ソーヴィニョンです。

Date: 2024/0907 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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元Patz&Hallで、現在はMaritana VineyardsやSecret Doorを持つドナルド・パッツさんがFacebookに挙げていた写真が面白かったので紹介します。

Patz

これはソノマのロシアン・リバー・ヴァレーにあるRegina's Vineyardのシャルドネとジンファンデルの1房です。シャルドネは高品質で知られるOld Wenteクローン。Old Wenteはブドウの実が小さく、凝縮した味わいになり、皮の比率が大きいことから、皮からの複雑さも生まれると言われています。

一方、ジンファンデルは皮が薄くて大きな実ができる品種。Old Wenteと比べたら一目瞭然で大きいのがわかります。おそらく房の重量だと3倍くらいになりそうです。ブドウ畑の列が1つ違うだけなのでテロワールはほとんど変わりませんが、ジンファンデルの方が収量は大きくなります。

Kongsgaard
参考のためにこちらは、コングスガードのジャッジの畑のシャルドネ。非常に痩せた土壌で、20年以上の樹齢にもかかわらず、幹の太さが直径5cmくらいにしかなりません。同じOld Wente(厳密に言うとOld Wenteにもいくつかバリエーションがあるので全く同じではないかもです)ですが、こちらはさらに房が小さく、にぎりこぶしよりも小さいくらい。

この房の小ささが素晴らしいワインを産んでるのですね。

ト・カロン
最後に、こちらはナパのオークヴィルのト・カロン・ヴィンヤードの中でも高品質なカベルネ・ソーヴィニヨンを作る「モナスタリー・ブロック」のカベルネ・ソーヴィニョン。「ヘリテージ・クローン」と呼ばれるクローンで、ジャッジと比べても小さな房ができます。
Date: 2024/0906 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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しあわせワイン俱楽部が楽天スーパーセールに合わせてセールをしています。

一番の目玉はダイアトムのシャルドネ2022年。税込み4000円台でスペクテーター92点です。樽を使わない「すっぴん」系のきれいなシャルドネ。ワインメーカーはブリュワー・クリフトンでも知られているグレッグ・ブリュワーです。



もう一つシャルドネの目玉がHyde de Villaineのシャルドネ2020。13860円と高価ですが、ワイン・サーチャーの平均価格が92ドルですからほぼ現地価格といっていいでしょう。こちらはダイアトムとは対照的に樽をしっかり効かせたシャルドネです。


赤のコスパ系ではワシントンのシャトー・サン・ミシェルのカベルネが安いです。ワイナリー17ドルがなんと2000円。ヴィンテージは違いますがワイン・エンスージアストでベストバイ1位を取ったこともあるコスパ系のワインです。



ラック&リドルのスパークリングも安いです。通常3000円程度なのが2233円。スパークリングワインの醸造を他社から請け負うカスタム・クラッシュが作るワインで、その実力は折り紙付きです。もちろん瓶内二次発酵方式。ブリュットとブラン・ド・ブランが同価格。個人的にはブリュットの方が好きです。



コン・クリークの2003年のカベルネ・ソーヴィニヨン トルシャード・ヴィンヤードは6160円。単一畑の熟成ワインでこの価格は貴重です。


2割引のコーナーからは、まずはウルトラマリンのロゼを紹介します。
3万9600円は高価ですが、いまや国内で5万円切るのも貴重なレアワイン。カリフォルニアのスパークリングの最高峰といっていいでしょう。


ターリーのジンファンデル「ジュヴナイル」は若木を使ったワイン。5000円切りは貴重です。


ナパのオークヴィルのカベルネ・ソーヴィニヨンとしては最安だと思われるのがアナベラのプラティナム。3454円は1ランク下のナパヴァレーのカベルネと比べても400円くらい安くなっています。オークヴィルAVAは伊達でなく、実際飲んでもナパヴァレーよりも1ランク以上美味しいカベルネです。カベルネ好きならマストバイ。


バレルバーナーのシャルドネは2376円。樽系のシャルドネが好きな人なら飲むべきワインです。


最後はバージェスのコンタディナ カベルネ・ソーヴィニヨン。ナパのカベルネ・ソーヴィニヨンの中でも貴重な山系のワイン。AVAはナパヴァレーですが、畑はハウエル・マウンテン沿いの2つの畑(ハウエル・マウンテンAVA外)。山らしいしっかりとしたストラクチャーを楽しめます。


Date: 2024/0904 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパの観光局「Visit Napa Valley」が2023年に観光客のデータを発表しています。それによると2023年はのべ370万人がナパを訪問。これは2018年の390万人は下回るものに、2012、2014、2016年を上回っており、コロナ前の状態にほぼ回復したと言っていいでしょう。

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人種や性的嗜好で見ると、ラテン系やアフリカ系アメリカ人が増えており、アジア系は少し減っています。LGBTQの人はかなり増えています。

興味深いのは平均年齢で2023年は40歳。2018年の46歳から6歳若返っています。そのあたりの理由が気になりますが、今回は統計データを公開しているだけで分析はないので、わかりません。

そのほかで気になったデータとしては、ビジターが使った金額で一人当たり1日平均281ドルと出ています。グループの人数と滞在日の平均は3~4、2日間となっているので、3人で2日間滞在したとすると1686ドル。合計で25万円近く費やすことになります。
Date: 2024/0903 Category: 業界ニュース
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カリフォルニアワイン界の奇人・変人を10人挙げるとしたら、間違いなく入るであろう一人がボニー・ドゥーンの創設者であるランドール・グラームでしょう。
randall grahm

ローヌ品種の先駆けであり、人を食ったようなユニークな言動で知られる彼ですが、ワインに対しては真摯であり、ビオディナミによる栽培にも早くから取り組んでいます。

彼が2015年から始めたのが、交配によって新しい品種を作り出すというプロジェクト(「1万種の品種を作るランドール・グラームの壮大なプロジェクト、クラウド・ファンディングで出資者募集中、あなたの名前がブドウに付けられる」)。

その後プロジェクトはこのための畑ポープルシュームの開発に比重が移っているようではありますが、今も新しい試みは続いています。

その一つがシラー(彼は古い名前のセリーヌで呼んでいます)による白ブドウ。シラーの親は黒ブドウと白ブドウであり、通常は黒ブドウの遺伝子が優性で、黒ブドウがなりますが、シラー同士を交配すると、約4分の1の確率で白ブドウができるというのです。そういったシラーによる白ブドウのクローン65種を作って1.75エーカーのブロックに植えています。順調であれば2025年に「セリーヌ・ブランシュ」の収穫ができる見込みだといいます。

このほか、ドラマ「フライデー・ナイト・ライツ」などを作った映画/ドラマ監督ジェフリー・ライナーがランドール・グラームのドキュメンタリーを撮影していることも明らかになりました。順調にいけばこちらも2025年に公開される見込みです。ランドールは自分の「スワン・ソングになるかも」と言っているので、もしかすると引退を考えているのかもしれません。

常に挑戦を続ける姿勢、見習いたいものです。
Date: 2024/0829 Category: 業界ニュース
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MacPhail

ソノマのワイナリー「マックファイル(MacPhail)」を創設者であるジェームズ・マックファイルが買収しました。

マックファイルは2001年に設立。畑は持たず、買いブドウでピノ・ノワールを作る、当時雨後の筍のように増えいていたワイナリーの一つでした。ラベルにアメリカの子供のおもちゃとして有名な「ラジオフライヤー」社のワゴンのデザインを使うなど、ちょっとポップで明るい雰囲気を醸し出すワイナリーでした。

2008年に火事の後の煙の影響でワインを造るのをやめ、その後リーマンショックなどの影響で経営は厳しく、2011年にヘス・コレクションのオーナーであるヘス・パーズソン(Hess Pursson)に売却し、その後は他のワイナリーでコンサルティングワインメーカーとして働いていました。

ヘス・パーズソンはヘス・コレクションを中心にいくつかのワイナリーを持っており、マックファイルは子供のサブリナとティモシーが管理していました。ブランドの一貫性のためにいくつかのワイナリーを売買するなかで、マックファイルのようなブティック系のワイナリーは、ポートフォリオにあまり合わないと判断されたようです。

今後はアンダーソン・ヴァレーのピノ・ノワールなど単一畑の少量生産のワインを造っていきたいとのこと。

今年は3月にジェームズ・ホールがパッツ&ホールを買い戻すというニュースもありました。自身の名前の付いたワイナリーも売却することが珍しくないカリフォルニアで、その逆の動きが相次いで起こったのも興味深いことです。
Date: 2024/0828 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのワイナリー「クインテッサ(Quintessa)」のワインメーカーであるレベッカ・ワインバーグさんが来日し、アンダーズ東京でのランチ・ミーティングに参加しました。


クインテッサのワインは2017年のヴィンテージから毎年ハーフボトルを送ってもらって試飲しています。今回は最新ヴィンテージの2021年だけでなく、2019年、2014年、2000年のワインも比べて飲む機会となりました。
<参考>過去のヴィンテージの記事
進化を遂げつつあるナパの隠れた自然派「クインテッサ」の魅力
クラシックスタイルのトップ級、さらに進化するクインテッサ
クインテッサ2019は傑作2018を超える!?
災難の年2020、クインテッサのできはどうだったか?

オープナーのワインは、クインテッサが同名のワイン以外に唯一作っているソーヴィニヨン・ブランの「イルミネーション(Illumination)」2023年です。9月に出荷を始める予定の最新ヴィンテージです。国内ではファインズが輸入する予定です。

イルミネーションは唯一自社畑以外のブドウを使っているワインでもあります。ソーヴィニヨン・ブランとセミヨンのブレンド。セミヨンはカリストガの古い畑で、自社畑はソーヴィニヨン・ブランのウェンテ・クローン1と呼ばれるカリフォルニアで一番主流のクローンに加え、香りの華やかさで知られるソーヴィニヨン・ムスケも植わっています。このほか、ソノマのベネット・ヴァレーにも自社耕作の畑をリースで借りています。ベネット・ヴァレーのソーヴィニヨン・ブランは畑は別ですが、ビーヴァン・セラーズも使っていて、個人的にはソーヴィニヨン・ブランの産地としてかなり期待しているところです。レベッカに、ベネット・ヴァレーの畑を使う理由を聞いたところ「ほどよく温暖でソーヴィニヨン・ブランには一番いいと思っている」とのこと。ナパのソーヴィニヨン・ブランは畑が足りない状態なので、今後ソノマのこのあたりのブドウを使うところはかなり増えるのではないかと思っています。

セミヨンを使っているのでボルドー系かロワール系かといえばボルドー系のスタイルになりますが、明るい酸味を持たせたいとしています。全房でプレスすることでピュアな果汁を出し、ニュートラルな樽(6割)に加え、コンクリートエッグ(2割)、ステンレスタンク(15%)、新樽、アカシアの樽と5種類の発酵容器を使っています。コンクリートエッグはミネラル感、ステンレスはピュアさ、アカシアの樽はフローラルなキャラクターを与えるのに役立つとのこと。5~6カ月、ときおりバトナージュしながら熟成させてボトル詰めします。MLFは行いません(PHが低いのでMLFが起こらないとのこと)。

イルミネーションの2023年はフレッシュさとリッチさが両立した味わい。グアバや明るい柑橘系を感じます。ボルドースタイルですがリッチさが前面に出ず、まずフレッシュな味わいが来て、あとから複雑さを感じます。ナパのソーヴィニヨン・ブランの中でもユニークなスタイルで非常に魅力的。個人的にも一番好きなソーヴィニヨン・ブランの一つです。

レベッカさんは今年がクインテッサで10年目のヴィンテージ。ナパで20年ほどのキャリアを持っています。クインテッサ以前はスタッグリン(Staglin)、ラッド(Rudd)、ブッチェラ(Buccella)と、そうそうたる経歴です。土地の個性をワインに表現できるところを探していてクインテッサに行きついたそうです。



クインテッサはナパのラザフォードに110ヘクタールに及ぶ地所を持っています。ナパでも最も美しい場所の一つといっていいでしょう。

中央の貯水池はこの地所の前のオーナーが作ったものだそうですが、前オーナーのときは畑として使われていたわけではなく、クインテッサになってから初めて耕作され、最初から有機栽培(1996年からはビオディナミ)されているので、一度も農薬が使われていない土地です。さらには以前から植わっている樹も1本も切り倒していないとのこと。当初から樹が生えていないところだけを畑にしています。ブドウ畑は60ヘクタールほどになります。

ブドウの樹も当初に植えたものが35年ほど経った今も60%程度残っています。近年は剪定の専門家として知られるマルコ・シモーネのアドバイスを受け、古い樹がまたいい実を付けるようになってきたそうです。カベルネ・ソーヴィニヨンはまだ20年くらいは持つのではないかとのことです。樹齢が高くなると、土地とのバランスが自然に取れてくるそうです。

クインテッサのワインは食事をしながらいただいています。また、話をしながらコメントを書いているので、あまり詳しいテイスティングコメントは書けていません。

最新の2021年は例年に比べるとやや赤果実系の味わいが少なく、黒果実系が強くなっています。カシスにミント、杉。リッチで芳醇、複雑性も高いのは例年通り。

この年は干ばつで雨が極端に少なく、気温も高めでした。その特徴が出ているワインです。レベッカさんはこのヴィンテージが個人的には一番好きだとのこと。レベッカさんの感じる畑の土や樹などの印象が表れているとのことで、ワインメーカーでないとわからない感覚かもしれません。

また、この年は初めて発酵にアンフォラの容器を3%ほど使っています。好気的な環境での発酵という意味では樽と共通しますが、樽のような風味を与えず、ワインにフレッシュな味わいを増やすことを期待しているとのことです。また、酸素の影響するパターンが樽とは少し違うそうで、このあたりはまだ作って試している段階です。

2019年はおととし試飲したときに非常に印象の良かったワイン。過去4ヴィンテージでは2018と2019が個人的にはベストでした。今回もその印象は変わらず素晴らしいワインでした。2021年と比べると赤果実の味わいがあり、酸もやや高いのが特徴です。セパージュの比率は特に変わっていないのですが、カベルネ・フランのような味わいがあります。

2014年はミントの風味や五香粉のようなオリエンタルなスパイスの風味がありとても複雑。熟成により腐葉土やマッシュルームのニュアンスもでてきています。ワイン全体としてはやや柔らかな印象。ナパのカベルネ系ワインは果実味が強すぎて熟成による魅力があまり出てこないケースもありますが、クインテッサは元々が果実味に頼った作りではないので、熟成感がきれいに出てきます。

最後のワインは2000年。これくらい古いものになるとレベッカさんもほとんど試飲する機会がないとのことで選んだそうです。腐葉土やマッシュルームが2014年よりもより顕著になります。果実味も少し残っていますが、だいぶ落ちています。レベッカさんは「ちょっとブレットもある」とのこと(私はあまり感じなかったですが)。2000年というヴィンテージ自体がやや弱めのワインが多いこともあり、近年のクインテッサに比べると、ちょっと質が低いかもしれません。

クインテッサ、以前はカベルネ・ソーヴィニヨンが5割くらいで残りはカベルネ・フランとメルローが半々くらいでした。2021年だとカベルネ・ソーヴィニヨンが91%、以下カベルネ・フラン4%、カルメネール3%、メルロー1%、プティヴェルド1%となっています。今後はカルメネールが増える可能性が高そうです。個性としてはメルローに近いものがありますが、メルローは暑い環境に弱く、カルメネールは強いというのが理由です。

アンダーズ東京の料理はどれも素晴らしかったのですが、特筆したいのがラム。ラムはワイルドさがクインテッサの複雑さやハーブのニュアンスと合うとのことで、ワイナリーから指名があった食材だったそう。普段はアンダーズではラムを出していないのを特別に調理いただきました。これが絶品で、骨までしゃぶりたいほどでした。




Date: 2024/0813 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Common Ground
ナパ在住の弁護士であり、デザートワインに特化したユニークなワイナリーも持つリチャード・メンデルソンが、「Common Ground」という新しい書籍で、これからのナパの在り方について提言しています。ワイン・サーチャーの記事から紹介します(Ranking Napa's Vineyard Areas)。

提言の一つはラベル表記に関するもので、「Napa Valley」を冠するワインはナパ産のブドウを100%使うべきだとしています。米国のルールでは「Sonoma County」などの郡名は75%以上、「Napa Valley」や「Oakville」などのAVA名は85%以上、「To-Kalon Vineyard」などの畑名は95%以上、「Estate Bottled」は100%自社畑自社醸造などとなっています。85%以上というのはほとんどの新世界の生産地で共通しています。

これを「Napa Valley」でも100%にすべきだというのがメンデルソンの提言で、ナパは他の新世界のワインと区別するためにも100%にするべきだとしています。

もう一つの大きな提言は収穫の場所だけを制限する現在のルールを越えて、品種の指定や酸度、糖度、アルコール度などワインそのものの制限を含めたEUのAOC式のルールを検討すべきだというものです。

もちろん、このルールには反対意見も多いでしょう。EUでもAOCなどの原産地呼称に縛られず、自由にブドウを栽培したいという生産者も増えていますし、ナパでも植える品種を制限されるなんてまっぴらと思う人が多いでしょう。メンデルソンは自身弁護士であり、ルールに敵対するようなことを積極的に行うタイプでもない人なので、これはTTBなどのルールにするよりも民間の認証にするといった考えの方が合っているかもしれないとしています。

実際に導入するとなったらさらに物議を醸しそうな提案もあります。それは郡が事前に未開発の土地の地図を作成し、どの地域がブドウ畑に適していて、どの地域が適していないかを決めておくというものです。これが実行されると、しばしば起こる開発の認可の訴訟はなくなっていくでしょうが、これも米国人が嫌いそうな考え方ではあります。

ナパは1968年に農業用地の保護法を全米で初めて定め、それがサンフランシスコに近い便利な土地でありながら農業が残った大きな理由になりました。メンデルソンによると、その基本的な考え方は、農業は土地の最高かつ最良の利用法である、ということです。今のナパでは環境保護の観点から斜面における木の伐採はほぼ認められなくなっており、そのため斜面の畑の新たな開発ができなくなっています。メンデルソンは、これは農地保護法の考え方と反対であり、実質的に「平らな土地は畑にしていいが、丘や尾根はダメ」という土地のランク付けになっていると指摘しています。前述の「未開発の土地の地図とブドウ畑にしていい土地を決めておく」というのは現在のやり方よりも農業が最良の利用法であるという保護法の精神により近いというのがメンデルソンの考えです。

この方法を実現するには極めて高い壁がありそうですが、ある意味根本に立ち返った提案ということで非常に興味深いものがあります。


Date: 2024/0807 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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8月5日に2024年のナパヴァレーのブドウの収穫が始まりました。従来、収穫の開始は糖度が比較的低い段階で収穫するスパークリングワイン向けのものが先行していましたが、近年はソーヴィニヨン・ブランが先に来ることも多くなっていました。

2024年はどちらも同じ日に開始。これまでのところ生育状況は問題なく、良いヴィンテージになりそうです。

ラウンド・ポンドではラザフォードの畑でブランドブラン用のシャルドネの収穫が皮切りとなりました。糖度は18.3~18.7Brix、総酸度は10.5g/Lから11.5g/Lという状況だそうです。

Pejuではナパの南東地域からのソーヴィニヨン・ブランが最初の収穫。Honigでは8月13日ころにソーヴィニヨン・ブランの収穫を見込んでいます。ロバート・モンダヴィは8月19日の週にスタッグスリープかオークヴィルで始まる見込み。

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Date: 2024/0807 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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現地価格より全然安い、ローダイのコスパカベルネという記事で紹介した「ビッグ・スムース カベルネ・ソーヴィニョン」。その後、売り切れ状態が続いていましたが、在庫が戻ってきています。

ビッグという名前ですが、ミディアムボディで非常に飲みやすいワイン。スムースの方はまさにその通りという感じです。

柳屋です。


しあわせワイン倶楽部


タカムラワインハウス

Date: 2024/0806 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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米国のUSA Todayのサイトに、米国のワイナリー・ツアーのベスト10の記事が出ていました(Get an insider's look with the 10 best winery tours in the US)。

No. 10: Neal Family Vineyards - Angwin, California

10位はナパのハウエル・マウンテンにあるニール・ファミリー。ワイナリーのケーヴなどが見られるほか、有機栽培の畑なども見学できます。

No. 9: Cline Family Cellars - Sonoma, California

カーネロスのソノマ側にあるクライン・セラーズ。
マップをもらって自分で回る形式だそうです。

No. 8: Buena Vista Winery - Sonoma, California

8位もソノマで、カリフォルニア最初の商用ワイナリーとして知られている「ブエナ・ヴィスタ」。ジャン・シャルル・ボワセがオーナーになっていろいろテコ入れしたのがよかったようです。

No. 7: Benziger Family Winery - Glen Ellen, California

ソノマヴァレーにあるベンツィガー・ファミリー。トリムに乗って回るのが有名なところです。ビオディナミを実践しています。

No. 6: Inglenook - Rutherford, California

6位はナパのラザフォードにあるイングルヌック。歴史あるワイナリーであるのと同時に、映画監督のコッポラ所有で映画に関連した展示も見られます。

No. 5: Ken Wright Cellars - Carlton, Oregon

5位はオレゴンのケン・ライト・セラーズ。オレゴンのワイナリーも行ってみたいです。

No. 4: Robert Hall Winery - Paso Robles, California

4位はパソ・ロブレスのロバート・ホール。再生可能型の農業を実践しています。

No. 3: Eberle Winery - Paso Robles, California

3位もパソ・ロブレスでエバリー。パソ・ロブレスにおけるシラーのパイオニアとして知られています。

No. 2: Davis Estates - Calistoga, California

2位はナパのカリストガからデーヴィス・エステート。ハワード・ベッケンという人が設計したワイナリーが見ものなようです。

No. 1: Dr. Konstantin Frank Winery - Hammondsport, New York

1位はニューヨークのフィンガーレイクにあるドクター・コンスタンティン・フランク。フィンガーレイクのパイオニアとして知られています。ニューヨークのワイナリーも興味深いです。

総じて、有機栽培やビオディナミ、再生可能型農業に取り組んでいるところが多く選ばれているようです。ワイナリーツアーも醸造から栽培へと興味が移っているということでしょうか。


Date: 2024/0804 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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8月16日に、「カリフォルニアワインの玄関口」をオープンしてから25周年を迎えます。今年は年齢的にも区切りの年となりますので、記念パーティを開きたいと思います。実は春先からずっとやるやる言っていたのですが、なかなか企画に本腰が入れられず、ようやく概要が決まりました。

25ans

日時:9月23日(月・祝)12:00~17:00(12:00~14:30 第1部、14:30~17:00 第2部)
場所:イルドコリンヌ
 東京都大田区西馬込2-14-23 佐田コーポ1F
 03-6429-7062
 都営浅草線西馬込駅徒歩5分
会費:1万円(1999年産のワインをお持ちいただいた方は5000円)

なるべく多くの方に来ていただきたいので、緩い2部制にします。緩いというのは第1部の人が14:30以降に残っていただいてもいいし、第2部の方が早く来られても構いません。ただし、だいたいの人数の目星をつけたいので、参加表明される際は第1部か第2部か(および1999年産のワイン持参予定があるかどうか)お知らせください。

13時と16時くらいにグッズが当たる抽選会を行う予定です。こちらは一人1回の参加にさせていただきます。

申し込みは以下のフォームあるいは各種DMで承ります。
申し込みはこちらから

また、ワインのドネーションも歓迎します。
Date: 2024/0804 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Xの友達のマニアックなワイン会に参加してきました。



メモも全く取っていないので、クソ簡単な感想だけですが、セリタスのピノはエレガントきれい系ですばらしい、メイバック(マイバッハ)はきれいだけど濃い、Tidingsのカベルネは山系好きにはたまらない(Moon Mountainは隠れたカベルネの名産地など再確認)、Betaはちょっと酸化していた(コラヴァンで半分以上開けてから半年放置だったとか)けどおいしい、ラジオ・コトーのジンファンデルもクールクライメット系。サンドランズのカリニャンは、この日の中では一番暖かい産地(Lodi)だけども酸がしっかりあってジューシーで美味。こう見るとほぼ冷涼系ワインばかりですね。

私が持って行ったのは、ドメーヌ・カーネロスのル・レーヴ2014。シャンパーニュのテタンジェがカリフォルニアで作るスパークリングのフラッグシップです。100%自社畑のシャルドネを使ったブランドブラン。
偶然ですが、もう一つ泡でお持ちいただいたのがテタンジェのコント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン2012。テタンジェのブランドブラン同士ということで図らずも飲み比べになりました。

泡音痴な私ですが、これはいいですね(そりゃいいに決まっている)。ブランドブランだけあってきれい系で味わいの深みもある。泡のきめのこまかさは瓶熟8~10年というコントが5年半というル・レーヴを上回っていましたが、泡が抜けたら区別できないくらい味わいはよく似ていました。価格的には今でもル・レーヴの方が1万円以上安いですから、いいと思います。ちなみにこれを買ったのは、まだ日本の価格がうそのように安かった8000円台のときでした(といってもまだ1年くらい前のことです)。

みなさま貴重なワインをありがとうございました。
Date: 2024/0801 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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米国の大手ワイナリー「ヴィンテージ・ワイン・エステート」が米国破産法11条、いわゆるチャプター11(イレブン)を申請しました(Vintage Wine Estates, Inc. Announces Bankruptcy Filing and Voluntary Delisting and SEC Deregistration)。チャプター11は日本の民事再生法に相当し、今後は負債を削減して行って企業再生を目指します。

ヴィンテージ・ワインが倒産の危機であることは5月に「ジラード、クロ・ペガスなどのオーナー企業が倒産の危機」という記事で記しています。

同日、ヴィンテージ・ワイン傘下だったナパのコセンティーノのワイナリーなどを、ナパのブリオンとBワイズを所有するビリオン・ワイズが購入したことを明らかにしました。売却額は1050万ドルです。

また、同時にオハイオ州最大のワイナリーであるメイヤーズ・ワイン・セラー(Meier's Wine Cellar)もチャプター11を申請しました。ヴィンテージ・ワインは2022年にメイヤーズを買収し、その後も独立したワイナリーとして運営していましたが、倒産は同時にという形になりました。

ヴィンテージ・ワインが所有するのは以下のワインやスピリッツのブランドです。国内輸入があるものはジラード、クロ・ぺガスなどです。
Ace Cider
Alloy Wine Works
Bar Dog
B.R. Cohn
Buried Cane Wines
Cameron Hughes
Cartlidge & Browne
Cherry Pie
Clayhouse Wines
Clos Pegase
Cosentino Winery
Delectus Winery
Firesteed Cellars
Gaze
Girard Winery
Girl & Dragon
If You See Kay
Kunde
Laetitia
Layer Cake
Middle Sister Wines
No. 209 Gin
Owen Roe
Purple Cowboy
Qupe
Sabotage
Sonoma Coast Vineyards
Swanson Vineyards
Tamarack Cellars
The Splinter Group
Viansa
Vinesse
Windsor Vineyards
Wine Sisterhood
Date: 2024/0731 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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colters creek
アイダホ州にあるコルターズ・クリーク・ワイナリー(Colter’s Creek Winery)が山火事で焼失しました(Idaho’s Colter’s Creek Winery destroyed by fire - Northwest Wine Report)。

コルターズ・クリーク・ワイナリーはルイス・クラーク・ヴァレー(Lewis-Clark Valley)というAVAに入っています。ルイス・クラーク・ヴァレーはワシントン州とアイダホ州にまたがるAVAです。現在8個のワイナリーが地域のアライアンスに加盟していますが、うち7個はアイダホに所属しています。
Lewis-Clark
7月25日に雷の後に発生したGwen Fireという山火事が20000エーカーを焼き、コルターズ・クリーク・ワイナリーのあるジュリエッタという町(人口634人)は避難命令が出ました。

その火事によりワイナリーの醸造設備やテイスティングルーム、ワインの倉庫などが焼失。今年1月には寒波によって畑が大きなダメージを受けており、ワイナリーのオーナーは「白旗を上げた」と、廃業を表明しています。

今後はわずかに残った在庫を売って、従業員に配るとのことです。
Date: 2024/0727 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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土用の丑の日に、うなぎのかば焼きに合わせてカルディでセール中のローゼンブラムのジンファンデル「ヴィントナーズ・キュベ ロット42」を飲みました。


米国で14ドル程度で売っているこのワイン。カルディで1400円そこそこですからかなり安いです。しかもRosenblumといえば、かつてはジンファンデルの「3R」の一角として活躍したジンファンデルの名門。否が応でも期待が高まります。

ただ、カルディにときどき登場するこういった特売もの、今まで何回か買いましたが、「値段相応」と思ってしまうことも多くどこまで期待していいのかちょっと悩ましいところもありました。さらに、いち早く買って飲んだ人からは「薄い」とか「メルローみたい」といった声も聞こえており、期待と不安の入り混じったところでした。

土用の丑の日に開けたのは、うなぎのかば焼きのタレの甘さにジンファンデルの甘やかさがあるだろうと思ったから。

ワインを飲んでみると、エレガントさが目立ちます。
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ワインの裏ラベルにはこのように「Go Big」と大きく書いてありますが、そういうタイプのワインではありません。プラムの甘酸っぱさが優しく感じられます。そういえば、以前はジンファンデルの特徴というと「プラムの香り」と思っていましたが、最近のジンファンデルはプラムっぽさを感じないことが多いです。このワイン、ジンファンデル80%にプティ・シラーを20%ブレンドしているそうですが、プティ・シラーっぽさもあまりなかったように思います。ミディアム・ボディで酸もしっかりあり、なかなかバランスよく美味しいです。

時間がたつとだんだん甘やかさがでてきて、よりジンファンデルらしさが出てきます。甘やかさが出ても、品は良く、好印象です。1000円台のジンファンデルやレッドブレンドにあるような甘さを強調したタイプではないのでちょっとおとなしく感じられるかもしれませんが、いいジンファンデルだと思います。

ところで、うなぎはスーパーで1尾1280円くらいの中国産のかば焼きを買ったのですが、ネットで「市販のかば焼きを美味しく食べる方法」を検索し、たれを一回洗い流してからお酒をかけてアルミホイルでくるんでオーブントースターで温めて食べました。安いうなぎってたれの味が悪目立ちする感じがありますが、こうすることでふくよかで上品になります。普通に温めて食べたら、このジンファンデルは負けてしまったかもしれませんが、いい感じで合って良かったです。
Date: 2024/0722 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのビーヴァン・セラーズ(Bevan Cellars)のラッセル・ビーヴァン氏が初来日し、そのセミナーに参加してきました。写真のシャツが「一番地味」だという破天荒なラッセルですが、長年の熱烈なワインファンで、ワイン好きをこじらせてワイン造りを始めてしまったという、まさにマニアの夢をかなえた人でもあります。それで様々な評論家から累計38回もの100点を得ているという、トーマス・リヴァース・ブラウン並みの実績を持つのですから、驚きです。自ら「地球上で一番幸せな人間」だという彼のワイン造りのこだわりを聞きました。

彼がワインになじみ始めたのは12歳のときというから、これもまた驚きです。家族が日曜日に何本かワインを開けるときに、彼はバーテンダー役としてワインをサーブし、残ったワインを1週間かけて自分で飲んでしまっていたそうです。その後、大学生のときにE&Jガロで営業をし、さらにワインを飲むようになりました。28歳のときにはシカゴ・トリビュート紙でワイン評論を始めたというから、すでに相当のマニア度だったのでしょう。「普通の人が車や家に使う以上のお金をワインに使ってきた」といいます。

また、彼の信念の一つは「品質が良くないものは市場には出さない」ということ。ナパが火事で煙害を受けた2017年と2020年はほとんどワインを造りませんでした。経営的には厳しく、破産しそうになったこともありますが、それでも信念を曲げずに続けています。「今出しているものは最高のクオリティだと保証する」とラッセル。

生産量も少なく、輸出をする気はなかったそうですが、知り合いのワインショップから、輸出をすることを薦められ、日本は重要な輸出先で、中でも中川ワインが一番重要だと諭されて、中川に輸出することにしたそうです。

ワイン造りの正式な教育を受けたことがないラッセルですが、栽培にも醸造にも数々のこだわりを持ってやっています。どこでワイン造りや栽培のことを学んだのかを聞くと、様々なワインメーカーからだとのこと。マニアとして多くのワインメーカーの知己を得、彼らを質問責めにして様々なことを学んできたのだそうです。フィリップ・トーニなどが、特によく話を聞く相手だとのこと。また、化学的知識についてはGreg La Follette(グレッグ・ラ・フォレット)に教わったそうです。



試飲に入ります。

最初のワインは2022年のソーヴィニヨン・ブラン(希望小売価格税別7900円、以下同)。ソノマのベネット・ヴァレーにあるドライ・スタック・ヴィンヤードという畑のソーヴィニヨン・ブランを100%使っています。この畑のブドウを使うのは、自宅がベネット・ヴァレーにあって畑のオーナーと友達だということもあるようですが、素晴らしい畑だそうです。ソーヴィニヨン・ブランのクローンはイタリアン・クローンというもの、プリティでリッチネスと華やかさがあるクローンだとのこと。

ソーヴィニヨン・ブランの栽培では、フランスのロワールの有名生産者、故ディディエ・ダグノーが始めたという、房の周りの葉を取って太陽光を直接ブドウに当てる方法を使っています。これによってブドウの皮が赤っぽい色になり、ピラジンがなくなってより熟したブドウができるとのことです。冷涼な年には地面にアルミフォイルを敷いて、反射光を当てることまでしています。ビーヴァンのワインのほとんどは契約畑のブドウを使っていますが、このように栽培面でも多くのこだわりを持ち、それを栽培家と共有しながらブドウを作ってもらっています。

醸造ではステンレススチールタンクで発酵し、一部はフランソワ・フレールの樽で発酵・熟成してブレンドしています。これによってタンニンを和らげるとのこと。

2022年は、9月頭に気温43度を超えるような高温が1週間近く続きました。1988年以来の熱波だったそうで、多くのワインメーカーが対策に苦慮しました。この熱波の後はフレーバーの蓄積が進まず、糖分だけが上がっていって難しい年でした。

ここのソーヴィニヨン・ブランは以前に飲んだことがありますが、ちょっと濁りがあって色もかなり濃いものでした。濁りがあるのはフィルターをかけないためで、フィルターを使わないことには絶対的なこだわりがあります。
飲んでみると、さわやかな柑橘に、リッチなグアバのフレーバー。そこはかとなく感じるハーブやミネラル感が味わいを引き締めています。樽から来ると思われるブリオッシュ。特筆すべきなのはテクスチャの厚みで、さらっとしたソーヴィニヨン・ブランとは対極的です。リッチで熟成も楽しめそうな味わい。

2番目のワインはソノマのロシアンリバー・ヴァレーのリッチー・ヴィンヤード(Ritchie Vineyard)シャルドネ 2019(12000円)。リッチー・ヴィンヤードはオーベールやレイミー、デュモルといったシャルドネの名手たちがこぞってブドウを調達する銘醸畑。100%新樽で発酵・熟成しています。マロラクティック発酵は100%行います。これもフィルタを使わないために厳守しているやり方です。

2019年は数年間続いた干ばつが一段落し、比較的雨の多かった年。水が多かったため樹勢が強くなり、カバークロップを2回植えることで、ストレスを与えたとのこと。例年はグリーン・ハーヴェストといって、ブドウの実が小さい段階で不要な実を落とす作業をするのですが、この年は逆に樹勢を使わせるためにグリーンハーヴェストせず、樹も伸ばすだけ伸ばしたそうです。余計なブドウの実はヴェレゾンが始まる直前になってようやく落としたとのこと。

香りはそこまで濃厚ではなく、白い花や、軽いヴァニラ、洋ナシ。味わいはやはりリッチで白桃やオレンジ。濡れた石や酸。これもテクスチャはクリーミー。リッチだけど上品さも目立ちます。

3本目はピノ・ノワール 2021(14500)。ペタルマ・ギャップのブドウを使っています。ソノマ・マウンテンの山麓にある太平洋が見えるような場所の畑畑(ソノマ・マウンテンAVAには入っていません)3つからブドウを調達。カレラ・クローンと828クローンを使っています。どちらも「ミーティ(肉っぽい)なニュアンスが出る」クローンだとのこと。すべて除梗し、ステンレススチールタンクで発酵、数種の樽で熟成しています。ビーヴァンのメーリング・リスト・メンバーはカベルネ・ソーヴィニヨン好きがほとんどなため、カベルネ・ファンが飲みたいと思うピノ・ノワールに仕上げています。


ダークなフルーツのトーン。色も濃く、ボルドー系かと思うほど。柔らかなテクスチャと少し舌に残るタンニン。酸はやや低めで、確かにカベルネ好きな人が飲みそうなピノ・ノワールです。

4本目からは、いよいよカベルネ・ソーヴィニョンです。

カベルネ系でもブドウに日照を確保することを大事にしています。特にカベルネフランは開花して受粉する前から完全に葉を除きます。酵素の働きが活発になってタンニンがやわらかくなり、ピラジンが減って野菜感がなくなります。温暖化によって収穫時期が早くなっており、かえってピラジンが出やすくなっていますが、それでも野菜感が出ないようにしています。

VSPは25年前はスタンダードでしたが、今ではみなそれをやめてキャノピーを広くしています。ラッセルは特に早い時期からブドウに日を当てることを大事にしています。ハーランも収穫を早くしていますし、スーパープレミアムなワイナリーになるほど収穫を早くし、それに伴って栽培管理も変化してきているとのこと。これは中堅以下のワイナリーではまだ理解していないところが多いとラッセルの弁。

ビーヴァンの醸造でユニークなのはタンニンをソフトにするためにポンプオーバーをほとんど行わないこと。ラッセルによると種から出るタンニンはきついので、種からはタンニンを抽出せず、皮からのタンニンだけが出るように優しく抽出をするためとのこと。「マクロバブル」と呼んでいる泡を使って抽出しているそうです。ワシントンのクィルシーダ・クリークが使っている方法だとのこと。

また、発酵タンクの中に、樽の木材と特別なイーストを入れるということをしています(3トンに対し新樽一つ)。イーストがフリーラディカルやたんぱく質を吸着し、タンニンの抽出を柔らかくするためとのこと。調整が難しく、あまりやられていない方法だそうです。

4本目はオントジェニー プロプライエタリー・レッド・ワイン 2019(20000円)。75%カベルネ・ソーヴィニヨン、20%カベルネ・フラン、5%メルロー。スミレの花、カシス、コーヒー。バランスいいワイン。タンニンはしっかりしていますが、しなやかでとげとげしさはありません。すごく何かが突出したワインではないのですが、バランスよくトータルで高品質なワインです。コスパ高い。

オントジェニーは価格的にはビーヴァンのエントリーであり、一般的にはセカンドワイン的位置付けですが、ファーストで使わなかったワインをブレンドして作っているわけではありません。逆に、単一畑のワインをボトル詰めする前に、オントジェニーのブレンドを決めています。そうすることでヴィンテージごとの味わいの一貫性を保っています。200ほどある樽すべてを試飲してブレンドを決めますが、2021年は最終的なブレンドを決めるまで、16回も試作を繰り返したそうです。今回の2019年は比較的決めやすく5回ほどで決まったとのこと。

想像以上にちゃんと作っているし、いいワインです。オントジェニーに限らず、近年はセカンド的なワインの高品質化が顕著に進んでいます。おそらくファーストはプレミアム化が進んでいて、量は少なくても厳選されたワインになっているため、セカンドにより高品質なワインが回っているのでしょう。オントジェニーは一般的なセカンドの作り方とは違いますが、高品質という点では共通しています。

最後の2本はオークヴィルのテンチ(Tench)ヴィンヤードのカベルネ・ソーヴィニョンの2019年(39000円)と2018年。
Tench
テンチの畑はオークヴィルの東側、スクリーミング・イーグルの隣という素晴らしいロケーション。ビーヴァンはこの畑の中で一番東側の20列を使っています。テンチの畑の中でも東寄りの部分はヴァカ山脈由来の水はけのよく、石がごろごろした鉄分の多い土壌が中心。より東側にあるダラ・ヴァレやピーター・マイケルのオー・パラディの畑、さらにはプリチャードヒルとも共通する土壌になっています。

テンチは自社畑ではありませんが、ビーヴァンとは非常に密接な関係で、ビーヴァンのワイナリーもテンチのすぐ横にあります。醸造では100%新樽で熟成。また、ステンレススチールタンクから樽に移す段階では少し糖を残します。そして、残りの発酵は樽の中で行うというユニークな方法を取っています。こうすることによって、より樽の風味がワインに溶け込むのだといいます。

2019年は色非常に濃く、ほぼ紫。グラスのエッジまでほとんど色が変わりません。黒系果実の濃厚な味わいにインクや黒鉛、生肉、エスプレッソ。パワフルで余韻の長いワインです。素晴らしい。

一方、2018年は2019年より赤系の色合い。特にエッジ部分に少しグラデーションが見られるのが2019年との大きな違い。香りも2019年が黒果実に鉱物系の硬い香りを感じたのに対し、2018年は赤系の果実の香りや杉や腐葉土など植物系の少し柔らかい香りが入ります。甘草の甘やかさがバランスを取ってこれもいい。パワフルなワインが好きな人は2019年がいいでしょうし、私は少しエレガント系が入った方が好きなので2018年がより好印象でした。

テンチのカベルネ・ソーヴィニョンは15%を超えるアルコール度数ですが、そのような重さを感じません。ラッセルによると、ワインの中の揮発酸の割合が関係するとのこと。揮発酸が多いとアルコール度数を強く感じるので、それを抑えることが重要で、そのためにはワイナリーをできるだけ清潔な状態に保つ必要があるのだそうです。掃除は徹底して行うのが彼のやり方です。

栽培においても醸造においても自身のスタイルに徹底的にこだわる。これがビーヴァンのやり方であり、学校で教わる教科書的知識とは少し違うかもしれませんが、数多くのワインメーカーからの集合知が彼の源泉になっています。

ちなみに、ビーヴァンが現在契約している畑はなんと140もあります。1日に10個ほどの畑を見回り、約2週間に1回はどの畑にも通っています。栽培上のこだわりは、そのときに伝えて、次に確認するということを続けているそうです。

140もの畑の見回りを考えると気が遠くなりそうですが、それをこなすことが世界中で一番幸せだというのですから、やはりオタク中のオタクなのでしょう。
Date: 2024/0720 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ワイン検定

ワイン検定のブロンズクラスの講師を初めてやってみることにしました。アカデミー・デュ・ヴァンでは、これまでワイン検定用に教室を貸し出すことはやっていなかった(ワイン検定は日本ソムリエ協会主催となります)のですが、今回初めて貸し出しに応じるということで、アカデミー・デュ・ヴァン青山校の教室を使わせていただきます。

試験会場・お問合せ先 - 一般社団法人日本ソムリエ協会 ワイン検定

ワイン検定の教室一覧のところは名前が入っておらず、教室名だけなのですが、一覧に表示するのは本名のみとのことであえてはずしています。

日程は教室の都合で9月4日(水)のみですが、受講いただけたら嬉しいです。必ず合格できるようにサポートしていきます。

また、オプションになりますが、試験後に同じ教室で簡単なテイスティング講座も行います。ワイン検定の授業ではワインは飲めないので、ここで習ったワインを飲んでいただく形になります。

ぜひぜひよろしくお願いいたします。
Date: 2024/0718 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Carlisle
ワイン・スペクテーターの記事によるとソノマのカーライル(Carlisle)ワイナリーが2024年ヴィンテージを最後に廃業するとのことです(Sonoma's Carlisle Winery Calls it Quits)。

カーライルはベッドロックやターリー、リメリック・レーン、ロバート・バイアルなどと並ぶ古木のジンファンデルの代表的プロデューサー。1920年代に植樹された自身のカーライル・ヴィンヤードや、ベッドロック、テルデスキなどソノマを中心とした古木の畑から数多くの単一畑のワインを造っています。
Mke Officer

廃業する理由は引退のため。オーナーのマイク・オフィサーと妻のケンドール、ワインメーカーのジェイ・マドックスのいずれも60代で70前には引退したいと考えていました。ワイナリーを売却しようとしたこともありましたが、カーライルの古木の畑へのこだわりやパッションなどを受け継ぐ買い手が現れず、廃業することになったそうです。

マイク・オフィサーは1987年に趣味としてワイン造りを始め、1991年にソノマに引っ越し。1998年からプロになりました。ワイン・スペクテーターで最高98点を取るなど、高評価のワインを数多く作っていました。生産量は全部で8000ケースと少量。家族経営を貫いてきました。

2024年は五つの畑から2700ケースくらいだけを作ります。来年以降もエステートの畑だけは作るかもしれないとのこと。しばらくは在庫の管理などもあるので、すぐに完全な廃業というわけではないようです。

Date: 2024/0715 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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中川ワインのミニ試飲会から美味しかったワインを紹介します。一部は「輸入復活シニョレッロ、米国のワイナリーも「復活」」で紹介しているのでここではそれ以外のワインを取り上げます。

この日は気温35℃くらいの相当暑い日でしたが30種類の試飲アイテムのうち25アイテムはカベルネ・ソーヴィニヨンなどボルドー系品種のワイン。かなり濃いワインが続きました。ときおりの白ワインがさわやかで、ついつい高評価を与えがちになってしまったのはちょっと反省です。


新入荷のブリオン(Brion)というワイナリーからは4種類のカベルネソーヴィニヨンが出ていました。クームズヴィルのカルドウェル・ヴィンヤード、ヨントヴィルのスリーピング・レディ・ヴィンヤード、オークヴィルのオークヴィル・ランチ・ヴィンヤード、そしてソノマのムーン・マウンテンAVAです。どれもそのAVAらしさもあり素晴らしいカベルネソーヴィニヨン(価格はいずれも5万8000円、税別希望小売価格、以下同)。中でもこのオークヴィルのものはバランスが完璧。リッチでシルキー。ナパのカベルネソーヴィニヨンに求められているものが詰まっています。


パソ・ロブレスの大人気ワイナリー「ダオ(Daou)」の手がける高級ブランド「パトリモニー(Patrimony)」の白です。値段はちょっとびっくりの8万5000円。同じワイナリーの赤より高価格です。ボルドースタイルのソーヴィニヨン・ブランとセミヨンのブレンドで、しなやかな味わいにきれいな樽感。何というか値段を見なくても高級感が漂ってきます。


パトリモニーの赤もどれも素晴らしい。価格はいずれも6万円とナパの超一流並みですが、品質的にもナパの最上級のものに引けを取りません。写真の右からメルロー、カベルネソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、レッドブレンド(カベルネソーヴィニヨンとカベルネ・フラン)の「カーヴ・デ・ライオンズ」。カベルネソーヴィニヨンだけ試飲ボトルがハーフですが、実際の販売はフルボトルです。
メルローはリッチでチョコレート感があります。カベルネ・ソーヴィニョンは超パワフル。カベルネ・フランもリッチで濃厚ですが、酸の豊かさがバランスを取ります。カーヴ・デ・ライオンズは一番ソフトな味わい。バランスよく口当たりがいい。


ナパのワイナリー「ラッド(Rudd)」の廉価版クロスローズのソーヴィニヨン・ブラン(7800円)。これは暑さ効果を抜きにしても素晴らしい。ボルドースタイルのソーヴィニヨン・ブランで、リッチ感とさわやかさが共存しています。これが1万円切るのは安いと思います。


ラッドの「サマンサズ・カベルネ・ソーヴィニヨン2018」(2万8000円)。しなやかな味わい、ストラクチャーもありテクスチャーがすばらしい。美味しいです。


定番中の定番ですが、ダックホーンのメルロー「スリー・パームス2020」(1万5500円)。メルローはカベルネ・ソーヴィニヨンほど価格が高騰していないので、コスパが高くなっています。これはチョコレート感とエレガントさが共存。酸も高くカリフォルニアのメルローの代表格と言っていいでしょう。とはいえ、米国で100ドル超えるワインですから、この価格がいつまで維持できるかもわかりませんが。


最後はハーラン系の末っ子「マスコット」の2019年。ちょっと甘やかさがあり、酸とのバランスがよくリッチで美味。サードワインの位置づけですが、以前のセカンドと同レベルのクオリティがあります。

Date: 2024/0712 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Roca
ナパのワイナリー「ダリオッシュ(Darioush)」がヨントヴィルに畑を購入しました。ナパの東側を南北に走るシルヴァラード・トレイルの近くでRoccaFamilyがこれまで保有していた20エーカーの畑です。価格は1000万ドル程度と郡の記録には書かれています。

ダリオッシュはこれまでオーク・ノールやスプリング・マウンテン、マウント・ヴィーダーなどに65エーカーの畑を持っていました。

今回の畑にはカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロー、シラーが植わっています。今後どのワインに漬かっていくかは未定とのことです。
Date: 2024/0711 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ロブ・レポートにナパの次のカルトワインとして「サイン・オブ・ザ・ドーヴ」というワイナリーの記事が出ていました(Sign of the Dove Is Napa Valley's Next Great Cult Winery)。
Sign of the Dove
私も初耳のこのワイナリーですが、ワインメーカーがジェシー・カッツと聞けばもしかしたら「なるほど」と思う人もいるかもしれません。

私がこの人のことを初めて知ったのは「1本100万ドル、オークションで落札新記録 ソノマの無名ワインがなぜ?」のときでした。この1本100万ドルという史上最高額で落札されたワインを造っていたのがジェシー・カッツです。

さらに、同年(時期的にはこちらが先ですが)、ソノマのアレキサンダー・ヴァレーにあるデヴィル・プルーフというワイナリーでマルベックがワイン・アドヴォケイトの100点を取得。カリフォルニアとしては初のマルベックの100点となりました。このデヴィル・プルーフのオーナーがジェシー・カッツ(とその父親)なのでした。

サイン・オブ・ザ・ドーヴのオーナーはジェイク・トーブとその父のマーク・トーブ。ジェイクが自身がほれこんだベクストファー・ミズーリ・ホッパーとベクストファー・ジョージIIIのブドウを確保して、5年ほど前からの知り合いだったジェシー・カッツに醸造を依頼したという流れです。

ベクストファー・ミズーリ・ホッパーはオークヴィル西側の南端。西にヴァイン・ヒル・ランチ、北にドミナスのユリシーズの畑があるという好立地です。ベクストファー・ジョージIIIはラザフォードの東より、南の方にあるかなり大きい畑。ケイマスの畑などに隣接しています。ジェシー・カッツは自らのコネクションも利用して、最もいいブロックのブドウを得られるようになったとのことです。

さらに、ジェシー・カッツは、自身がソノマで行っているのと同じスタイルで剪定するようベクストファーに依頼し、ブドウに最適な日陰を作って成熟をゆっくり行うような形にしているとのことです。

ワイナリーでは手で3回選果したあと、さらに光学式の選果機で選果。発酵はステンレスタンクとコンクリートタンクを使用。発酵温度を変えて違ったニュアンスが出るようにしています。樽は「ミディアム・ロング」のトーストのものを注意深く選択しています(以上はベクストファー・ジョージIIIの説明にあったものなので、もしかしたらミズーリ・ホッパーは違うかもしれません)。

最初のヴィンテージは2021年。ベクストファー・ミズーリ・ホッパー・カベルネ・ソーヴィニヨン2021は100%カベルネ・ソーヴィニヨン。100%フレンチオークの新樽で22カ月熟成しています。ジェシー・カッツは「ベクストファー・ミズーリ・ホッパー・ヴィンヤードの驚くほど複雑なカベルネは、ブルーベリー、ボイセンベリー、ダークチェリー、カシスの魅惑的なノーズを示しています。 洗練されたシルキーな味わいで、月桂樹、シガーボックス、タバコのノートが層になり、鮮やかな酸味によって引き上げられています」と語っています。

ベクストファー・ジョージIII カベルネ・ソーヴィニヨンは100%カベルネ・ソーヴィニヨンで熟成はフレンチオークの新樽を80%使っています。ジェシー・カッツは「ナパの豊かなデカダンスとバランスを取るために、これらの世界クラスの土地のエレガンスとフィネスを引き出すことで、見事なテクスチャーと緊張感を持つワインが生まれました」と語っています。

次の高評価ワインを探している人は調べる価値があるかもしれません。

ちなみに「サイン・オブ・ザ・ドーヴ=鳩の印」とはキリスト教で精霊を表しています。イエス・キリストがヨルダン川でヨハネに洗礼を受けた際、天が開け、神の霊が鳩のように下ってきたと記されています。
Date: 2024/0710 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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昨年、ilovecalwineの海老原社長が亡くなってから輸入が途絶えていたナパのシニョレッロのワインを中川ワインが輸入し始めています。試飲会で新ヴィンテージを試してきました。

Signorello
シニョレッロのナパのワイナリーは2017年の火事で焼失していましたが、そちらもこの6月に再オープンしており、米国のワイナリーも復活を祝っています。

シニョレッロは畑の管理にスティーブ・マサイアソン、コンサルティング・ワインメーカーにセリア・ウェルチと超豪華なメンバーでワインを造っています。ワインメーカーはプリヤンカ・フレンチが務めていましたが、こちらも先月マイケル・コストリーという新しいワインメーカーにバトンタッチしたところです。

試飲したワインの中でも特に印象に残ったのが「Trim(トリム)」ブランドのシャルドネと「Edge(エッジ)」ブランドのカベルネ・ソーヴィニヨン。

トリムのシャルドネ2022(希望小売価格3000円、以下同)は非常にバランスがよく、きれいな酸が印象的なワイン。この価格帯ではベストの一つでしょう。


トリムより一つ高級ラインのエッジのカベルネ・ソーヴィニヨン2021(5500円)はソノマのアレキサンダー・ヴァレーのブドウを中心にしています。カベルネ・ソーヴィニヨンのほかにプティ・シラーなどをブレンドしているのがユニークなところ。リッチでフルボディ。凝縮感を味わいたい人にお薦めです。

ほかのワインについても簡単にコメントしていきます。
トリムのカベルネ・ソーヴィニヨン(3000円)は、ちょっと甘やかさがあり、ボディは抑え目。スムーズな飲み口が特徴です。

「エスby レイ・シニョレッロ」はちょっと高級なカベルネ・ソーヴィニヨン(17000円)。非常にストラクチャーが強く、くっきりとしたタンニンが印象的なワイン。がっしりとしたワインが好きな人に向くでしょう。

一番高級なシニョレッロ・エステートからはシャルドネ「ホープス・キュベ」(18000円)とカベルネ・ソーヴィニヨン「パドローネ」(4万円)。 シャルドネ「ホープス・キュベ」2021は、柔らかな味わいが印象的。ほどよい樽感でリッチな印象です。カベルネ・ソーヴィニヨン「パドローネ」2019はゴージャスながらパワフルで固いワイン。もう少し時間が経つとほぐれて美味しくなりそうです。

ショップはオンラインWassy’sです。






Date: 2024/0709 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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サンタ・バーバラで「レイク・ファイヤー(Lake Fire)」と呼ぶ山火事が発生しており、7月8日時点では20320エーカーが燃えて最大の山火事となっています。コンテイン率は8%と低く、まだ燃え広がる可能性があります。

Lake Fire
場所はサンタ・イネズ・ヴァレーAVAの北側になります。避難命令や避難警告が出ているエリアもあります。

カリフォルニアは熱波に襲われていて、デス・ヴァレーでは華氏129度(摂氏53.9度)というこれまでの最高記録に並ぶ高温を記録し、隣のネヴァダ州ラスベガスでも120度(摂氏48.9度)という史上最高気温を記録しています。沿岸部でも100度(摂氏37.8度)前後が各地で記録されています。これによって山火事も多発しており、7月8日時点では20以上の山火事が存在しています。

現在のところ、火事は北方面に広がっていっており、産地への直接の影響は大きくないと見られていますが、予断を許さない状況です。
Date: 2024/0707 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのカリストガでソーヴィニヨン・ブランを得意とするユニークなワイナリー「コクレル(Coquerel)」のオーナーやワインメーカーなどが来日し、セミナーを開きました。東京の吉兆など和食の店で採用されているワインです。
Coquerel

春に開催されるプルミエ・ナパヴァレー・オークションはプロ向けで、このオークション専用に作った選りすぐりのワインを各ワイナリーが出展します。ほとんどがカベルネ・ソーヴィニヨンなど赤ワインを出展する中で、白、しかもソーヴィニヨン・ブランを出展するワインは全体の1~2%しかありません。そんなワイナリーの一つがコクレルで、中川ワインではこれまで3回コクレルのワインを落札しています。

これは中川ワインが2022年の同オークションで落札したワインの一覧。コクレルは上から2番目です。


右からオーナーのクレイ・コクレルさん、娘のリリー・コクレルさん(テキサス担当)、オーナーのブレンダ・コクレルさん、ワインメーカーのクリスティーヌ・バーブさん、営業部長のステイシー・ピトルースキーさん。

オーナー夫妻は元々ワインのコレクターで、2005年にカリストガでWalnut Washヴィンヤードを購入し、ワイナリーを始めました。ここはカリストガの中でも北西部でソノマに近いところに位置しています。太平洋からの風が入ってくる場所なので、カリストガの中では涼しい場所になります。粘土にごろごろとした石が混じった土壌で25エーカーのうち17エーカーに植樹しています。植えている品種はソーヴィニヨン・ブランのほかヴェルデホ、プティ・シラー、テンプラニーリョ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン。ソーヴィニヨン・ブランが4割を占め、次に多いのはカベルネ・ソーヴィニヨンの27%だそうです。

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ワインメーカーのクリスティーンはボルドーの出身で、ソーヴィニヨン・ブランを得意とするシャトー・カルボーニュなどで働いた経験を持ちます。ボルドー大学で化学と醸造の博士号を取られたという優秀な方です。1996年にナパに来て、ガロやトリンチェロ、モンダヴィなど大きなワイナリーで働いた後、コクレルでワインメーカーになりました。コクレルではラボや畑の管理も自ら行っています。

メインとなるソーヴィニヨン・ブランは夜間に収穫。一晩マセレーションしてからプレスして発酵に移ります。酸化を防ぐためにマセレーションやプレス時にはドライアイスを使っています。 

最初のワインは生産量の半分を占めるというスタンダードのソーヴィニヨン・ブラン「Le Petit Coquerel(ル・プティ・コクレル) Sauvignon Blan 2023」です。
香り高くリッチ。ボリューム感あり酸も豊か。グレープフルーツや草のニュアンスといったソーヴィニヨン・ブランらしさに、グアバなどのトロピカルなフルーツの味わい。ちょっと塩味を感じます。樽の風味を感じたように思ったのですが、熟成もステンレスタンク。シュールリーで週1回バトナージュをしているということで、風味のリッチさが出ているようです。スタンダードといってもレベルが高いソーヴィニヨン・ブランです。

次は上級版のソーヴィニョン・ブラン「Terroir Coquerel(テロワール・コクレル)Sauvignon Blanc 2022」です。こちらは樽発酵樽熟成しています。クローン1というクローンを使っているとのこと。
色濃く、深みがある香り。味わいも深みと複雑さを感じます。ヴァニラやグアバなどリッチ系の味わいですが、ぐいぐい出てくるような味わいではなく、柔らかさを感じます。クリーミーなテクスチャ。76ケースという貴重なワイン。

3つめのワインは「Terroir Coquerel Cabernet Sauvignon Estate 2021」。
杉や森の下草といったフルーツ以外の要素が第一印象。それからカシスなどの青黒果実が出てきます。タンニンはかなりしっかりしていますが溶け込んでいます。酸も比較的あり、ナパのカベルネというよりもボルドー的なイメージが近いかもしれません。

ソーヴィニヨン・ブランとカベルネ・ソーヴィニヨンでは畑の樹の間隔を変えています。ソーヴィニヨン・ブランは果実が大きくても良く、カベルネ・ソーヴィニヨンは小さい果実にしたいため、カベルネ・ソーヴィニヨンは3フィートと5フィート間隔とソーヴィニヨン・ブランの5フィートと8フィート間隔よりもだいぶ狭くしています。抑制されたスタイルを目指していて、9月末には収穫。新樽25%で20カ月熟成しています。エステートのカベルネ・ソーヴィニヨンで希望小売価格が1万円を切る(税抜き9000円)はいまどき貴重かもしれません。

4本目と5本目は今回の来日のために特別に輸入したワインです。

4本目はクームズヴィルにあるBennett's Vineyardのカベルネ・フラン。ヴィンテージは2021年。
カベルネ・フランは意外にパワフルでスパイシー。第一印象に胡椒を感じます。赤系果実の味わいはカベルネ・フランらしいところですが、黒系果実に杉や血液なども感じ、タンニンもカベルネ・ソーヴィニヨン以上に感じます。ブラインドで飲んだらカベルネ・フランと思わないかもしれません。

最後のワインはデザートワインでLa Douce Revanche Late Harvest Sauvignon Blanc 2012。
デザートワインは2008年が最初のヴィンテージで2012年が2回目。これ以降は作っていませんが、また在庫がなくなったら作るかもしれないとのこと。
残糖4gでそれほど甘さは強くありません。ナッツや蜜、花、複雑な香り、エレガントなデザートワインです。

コクレルのワイン、特に二つの対照的なソーヴィニヨン・ブランが印象に残りました。
Date: 2024/0704 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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オレゴンでシャルドネの栽培が年々盛んになってきているという記事がRobb Reportに出ていました(Why Oregon Winemakers Are Trading Their Pinot Noir Vines for Chardonnay)。近年ではピノ・ノワールを植え替え(正確には接ぎ木を替えるので継げ替えでしょうか)する生産者も出てきているといいます。

オレゴンは元々白ワインではピノ・グリがメジャーでした。現在もピノ・ノワールが約6割と圧倒的で、次いでピノ・グリ、シャルドネは3番目ですがピノ・グリの半分にとどまっています。
oregon

とはいえ、現在明らかに勢いがあるのはシャルドネで、ピノ・グリを超すのは時間の問題と言っていいでしょう。

シャルドネが伸びた最大の理由はクローンだと言われています。以前オレゴンで植えられていたクローンはあまり質がよくなくオレゴンの土地にも合っていなかったようです。それがDijonクローンが使われるようになって、品質が急上昇したと言われています。

シャルドネの栽培面積は2020年に2610エーカーだったのが2021年に2724エーカー、2022年に3118エーカーになっています。わずか2年で2割も増えている計算です。

WillaKenzieというワイナリーでは2018年に2エーカーしかなかったシャルドネが現在では13エーカー。Clairiéreと呼んでいる涼しくて土壌が深いセクションをピノノワールからシャルドネに転換したのがうまくいき、その後もシャルドネが増えているといいます。Gran Moraineというワイナリーでは現在150エーカーがピノノワールで50エーカーがシャルドネですが、将来はそれが逆転する可能性もあると見ています。

個人的にも、オレゴンのシャルドネはもっと伸びる可能性があるように感じています。もちろん今はピノノワールが圧倒的に多いですが、「良い」から「とても良い」クオリティのものはたくさんあるものの「びっくりするほど良い」ものは案外見つかりにくい。シャルドネの方が「びっくりするほど良い」ものに出会うような気がしています。もちろん、私の経験が少ないだけかもしれませんが。

消費者としてはともかく「オレゴンのシャルドネは注目だよ」ということを覚えていただけるといいと思いますです。

Date: 2024/0703 Category: 業界ニュース
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ワシントン州の著名ワインメーカーであるチャールズ・スミスが立ち上げたサブスタンス・ワインズ(ワイン名はワインズ・オブ・サブスタンス)が、カリフォルニアのオニール・ヴィントナーズ・アンド・ディスティラーズに買収されました。売却額は明らかにしていません。

オニール・ヴィントナーズはソノマのラムズ・ゲートや、XTANT、Back House,Spur Ranchなどのブランドを持っています。珍しいのが、環境や社会に配慮した公益性の高い企業に与えられるB Corpという認証を取っていること。オレゴンではときどきこの認証を取っているワイナリーを聞きますが、カリフォルニアではかなり珍しいと思います。

ワインズ・オブ・サブスタンスは、品種名の略称などをラベルに描くのが特徴のワイナリー。カベルネ・ソーヴィニヨンは「Cs」、ピノ・ノワールは「Pn]などと書かれています。非常にコスト・パフォーマンスが高く、かなりの規模なのに樽発酵・樽熟成にこだわるなど、手間ひまかけたワイン造りをしています。

チャールズ・スミスは「当初からの私たちの目標は、最高級のワシントン・カベルネ・ソーヴィニヨンを驚くべき価格帯で造ることでした。テロワールとワイン造りのプロトコルを重視した結果、"サブスタンス "は飛躍的に成長しました。 持続可能性を重視するオニール・ヴィントナーズ&ディスティラーズは、このブランドを販売と流通において次のレベルに引き上げるでしょう。継続的な成功のために、このブランドは素晴らしい手に委ねられています」と語っています。

個人的にも、ワインズ・オブ・サブスタンスのワインのコスト・パフォーマンスの高さには舌を巻いていました。これからどう発展していくのかも楽しみです。


Date: 2024/0701 Category: 業界ニュース
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オレゴンのパイオニアの一人であるイーラス・ワイナリーのディック・イーラス(2023年に87歳で逝去)の畑だったプリンス・ヒル・ヴィンヤードをシルヴァー・オークに売却したのが2016年。その後、シルヴァー・オークの姉妹ワイナリーであるTwomey(トゥーミー)のピノ・ノワールとして作られていましたが、新たにプリンス・ヒル・ヴィンヤーズとして独立したブランドになりました。
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プリンス・ヒル・ヴィンヤードはオレゴンのウィラメット・ヴァレー内、ダンディー・ヒルズAVAにあり、クローン95と呼ぶブルゴーニュのクロ・ヴージョ由来のクローンが初めて育てられた畑としても知られています。

ワインのリリースは9月。2022年のウィラメット・ヴァレー シャルドネ、ダンディー・ヒルズ ピノ・ノワール、プリンス・ヒル・ヴィンヤード ピノ・ノワールの3ワインの予定です。
Date: 2024/0701 Category: おすすめワイン
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しあわせワイン倶楽部で、マーティン・レイのナパ・カベルネ・ソーヴィニヨン32%割引の特価になっています。今年のサクラアワードではゴールドメダルに加え「すき焼きに合うワイン」「韓国料理に合うワイン」「焼き鳥に合うワイン」も受賞しています。ここのワインはニューヨークなど世界各地に約100店舗のレストランを展開する松下信幸氏のレストランNOBUのハウスワインとしても使われています。

ちなみに、マーティン・レイというのは、元々サンタ・クルーズ・マウンテンズにあったワイナリーで、現在のマウント・エデンにその場所が引き継がれています。今でいう自然派のワインメーカーで、SO2を添加しない独特のワイン造りは、失敗も多かったものの、信者も少なからずいたようです。

現在のマーティン・レイ・ワイナリーは彼に敬意を表して、そのブランドを買い取りワイン造りをしています。さすがにSO2不添加ではないですが、100%単一品種へのこだわりが共通しているようです。


Date: 2024/0622 Category: 業界ニュース
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イタリアのアンティノリがワシントンでプレミアムなカベルネ・ソーヴィニヨンを作る「コル・ソラーレ(Col Solare)」の100%オーナーになりました。これまではワシントン州最大のワイナリーであるシャトー・サン・ミシェルと50%ずつを持つ形でした。

シャトー・サン・ミシェルはワシントン州のワイン生産の約6割を占める巨大ワイナリーですが、ここ数年は業績の悪化に苦しんでいます。昨年には、契約栽培農家に対して、5年間で4割購入ブドウを減らす旨を通告して、ワシントン州のワイン産業全体が大騒ぎになりました。

アンティノリとは以前から協業をしていましたが、昨年にはナパのスタッグス・リープ・ワイン・セラーズの持ち分をアンティノリに売却、ナパのコン・クリークも売却(アンティノリも売却し、実質的にコン・クリークは廃業状態になりました)と事業の整理が相次いでいます。ソノマのパッツ&ホールも創設者が株を買い戻してオーナーに戻りました。

コル・ソラーレは1995年に設立、当初はサン・ミシェルの買いブドウからワインを造っていましたが、2007年にワシントンで最も温暖でプレミアムなワインのできるレッド・マウンテンにワイナリーを設立、26エーカーの自社畑も有するようになりました。これらはいずれも今回の買収に含まれています。
col solare
Date: 2024/0621 Category: 業界ニュース
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ソノマのカーネロスに本拠地を持つクライン・ファミリー・セラーズ(Cline Family Cellars)が、クラインの中では高級ラインになる「ソノマAVAシリーズ」の国内発売に伴い、日本で発表会を開催しました。

クラインのワインは、国内では2000~3000円台の価格帯のものが中心でした。ソノマAVAシリーズは希望小売価格が税抜き6500~7000円と、やや高級な部類に入ります。なお、米国では単一畑のシリーズも販売しています。ソノマAVAシリーズは米国外では日本が初だとのことです。

今回来日したのは創設者のフレッド・クライン、ナンシー・クラインの夫妻。1982年の創設以来、家族経営をつづけています。ナンシーさんは初来日、フレッドさんは30年ぶりの来日。フレッドさんが以前来たときはココファームの仕事だったとのことで、クラインの代表として来るのは初めてです。


クラインはワイナリー名に「ファミリー」と入っているように、家族をとても大事にしています。ワイナリーの哲学も「家族」で、子供たちが畑を走り回っても危険がないように、設立当初から自社畑では除草剤や農薬をつかっていません。今でこそ「サスティナブル」は多くのワイナリーのキーワードになっていますが、約40年前からそれを実践してきたわけです。なお、二人には子供が7人おり、そのうち4人はクラインで働いています。家族経営としての持続性もあるわけですね。


クラインでは上の写真にあるように羊や山羊を放し飼いにしています。彼らが適度に草やブドウのはっぱを食べてくれます。雑草を食べてもらうための羊や山羊をレンタルするサービスもカリフォルニアにはありますが、クラインでは自分のところで飼っている羊や山羊を使っています。このほかブドウの皮などはたい肥に使用、猛禽類のための巣籠を設置するなど、自然と共存した農業を実践しています。

クラインのワインは、以前はABC(Anything but Chardonnay、Anything but Cabernet)といってシャルドネやカベルネといった人気品種を避けて、ローヌ系品種やジンファンデルを中心としていました。今もそれらは大事な品種ではありますが、近年はシャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワールなども作っています。ソノマAVAシリーズもシャルドネ、ピノ・ノワール、ジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨンという構成で、それぞれその品種を得意とするAVAのブドウで造られており、その地域の特性をワインのニックネームに使っています。このシリーズを始めたのも、ワイナリーを子供たちに継承していくことが年頭にあるようで、子供たちが生まれ育ったふるさとであるソノマを代表するようなブドウのワインを造り、新しいクラインの姿を伝えていきたいと語っていました。 


シャルドネは「ハット・ストラップ」。畑はカーネロスの自社畑「J. Poppe」で、この畑が強風の通り道となっていることから、帽子を飛ばされないように紐を付けないといけないということで、そのニックネームが付きました。味わいは、まず柑橘などの果実味が口全体に広がります。豊かな酸で食欲もそそられるあじわい。白い花の香り、軽い樽の風味。アルコール分もたっぷりあり、濃密ですが上品なシャルドネです。

ピノ・ノワールも100%自社畑でソノマ・コーストのペタルマ・ギャップにある二つの畑のブドウを使っているようです。ニックネームは「フォグ・スウェプト」で、朝霧に覆われた地域を表現しています。チェリーやフランボワーズ、ザクロなど赤果実の風味。これも酸が高いです。エレガントですが、果実味がギュッと詰まったような濃密感や満足感のあるピノ・ノワールです。どうやら、この上品さと果実の豊かさによる濃密さの両立というのがこのシリーズの特徴になっているような気がしました。

ジンファンデルはドライ・クリーク・ヴァレーから。スクール・ハウス・クリーク・ヴィンヤードというレイク・ソノマの近くの畑のブドウを使っています。樹齢は40~100年。樹が1本ずつ自立した作りで、ブドウの枝を8方向に伸ばすという古来からの剪定方法を使っていることから「エイト・スパー」というニックネームが付きました。ラズベリーやクランベリーの柔らかな果実味で甘やかさと酸とのバランスがいいワイン。ジューシーな味わいはジンファンデルのお手本的です。

最後はカベルネ・ソーヴィニヨンで、アレキサンダー・ヴァレーのブドウを使っています。畑はRio Lagoという、アレキサンダー・ヴァレーの中では一番ロシアンリバー・ヴァレーに近いやや冷涼なベンチランドの畑です。メルローとプティ・シラー、アリカンテ・ブーシェがブレンドされていてプティ・シラー、とアリカンテ・ブーシェは自社畑のものです。アレキサンダー・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンというと代表するのがシルヴァー・オークやジョーダンで、どちらも濃すぎず芳醇な果実味が特徴です。このワインも果実味の豊かさはそのイメージ通り。味わいの底の方にタンニンがあり、じっくり味わうとそれがだんだんと出てくるような印象です。

ソノマAVAシリーズ、その名前通り、そのAVAらしさを出しつつ、親しみやすさはクラインらしいところでいいワインだと思います。特に、ソノマを勉強したい人は、このあたりから味わってみるのがいいかもしれません。

試飲会にはクラインの他のワインも出ており、また会場となった「俺のフレンチ グランメゾン大手町」(余談ですがこのお店、開店当時は「俺のGrill&Bakery」という名前でときどきステーキ食べに来ていました)によるソノマAVAシリーズとマリアージュする料理も出ていました。

この中で特に面白かったのがカベルネ・ソーヴィニヨンに合わせる料理として提供されていた「マグロとカラスミのカルパッチョ アホ・ブランコソース」。カベルネに魚を合わせるというのはあまり一般的ではありませんが、このカベルネは酸とのバランスがよく、やや軽快な味わいなのでよく合っていました。

ワインの感想を簡単に記しておきます。

クラインの「セブン・ランチランズ」シリーズの左がシャルドネで、右がソーヴィニヨン・ブランです。このシリーズは希望小売価格が3000円台のライン。シャルドネはよくできています。ソノマAVAシリーズと比べてもさほど見劣りしません。こちらの方がやや樽感が強く出てくるので、果実の良さをピュアに味わうならソノマAVAシリーズ、樽の風味を求めるならこちらがいいと思います。ソーヴィニヨン・ブランはステンレスタンク発酵・熟成タイプのもの。グレープフルーツの風味が豊かで教科書的ないいソーヴィニヨン・ブラン。


次はクラインのエントリーラインとなる「ファームハウス」シリーズのホワイトとレッドです。実売2000円強。ホワイトはアルバリーニョ、ヴィオニエ、ソーヴィニヨン・ブラン、マスカット・カネリのブレンド。前述のようにクラインは元々ローヌ系品種を中心としてきました。そのイメージを一番よく残しているのがこのシリーズです。

白は南ローヌの白のようなやわらかな味わいが心地よく、癒し系。最近はこういうワインを飲むと幸せに感じます。さくらアワードでダブルゴールドを受賞しているとか。赤も果実味にちょっとスパイスが入った印象。


最後は「エンシェント・ヴァインズ ジンファンデル」と、セブン・ランチランズ・シリーズのピノ・ノワールとカベルネ・ソーヴィニヨンです。

エンシェント・ヴァインズ ジンファンデルは、クライン創業の地であるコントラ・コスタの古木のジンファンデル。エレガントなソノマAVAシリーズのジンファンデルとは好対照なこのワイン。ビッグで果実味があふれるような味わい。多くの人のイメージするジンファンデルのスタイルだと思います。

セブンランチ・ランズのピノ・ノワールはベリーの香り豊かなワイン。ピノ・ノワールが一番ソノマAVAシリーズとの違いが大きかったように思います。カベルネ・ソーヴィニヨンはバランスよく作られた印象。スタンダードなワインです。

以前はクラインというとシラーやジンファンデルが中心という印象でしたが、もちろんジンファンデルもあるものの、イメージを変えつつあることを感じた発表会でした。
Date: 2024/0619 Category: 業界ニュース
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ナパで最も多くの有機栽培やバイオダイナミクスの畑を栽培しているのが誰だかご存じでしょうか。フロッグス・リープ? オーパス・ワン? デイビッド・エイブリュー?

答えは「ジャック・ニール&サン・ヴィンヤード・マネージメント」という畑の管理会社です。私も知らなかったのでほとんどの人が知らないと思いますが、ナパでCCOF(カリフォルニア有機栽培認証)を得ている畑や、バイオダイナミクスの畑の大部分を管理している会社で社員も420人もいる大会社です。

この会社の名前を聞いたことがなくても、「ニール・ファミリー・ヴィンヤーズ」というワイナリーは知っているかもしれません。昨年来、環境再生型有機栽培(Regenerative Organic Farming)がしばしば話題になりますが、その世界的認証であるROCをナパで初めて(米国では2番目)に取得したのがニール・ファミリーです。

ここはハウエル・マウンテンとラザフォードに畑を持っており、ROC認証を得たのはハウエル・マウンテンの方でしたが、ラザフォードの畑「ラザフォード・ダスト・ヴィンヤード」もとてもユニークな畑になっています。

それこそがこの記事の主旨である「ダブル・トレリス」と呼んでいる仕立て法です。
Rutherford dust

ブドウの樹が、上と下と2段になっています。よくわからないですか?
Double Trellis

これでどうでしょう。ブドウがヴぇレゾンすると上が黒ブドウで下が白ブドウになっているのがわかると思います。もちろん、一つの樹に黒ブドウと白ブドウの両方が出ているわけではなく、樹を1本おきに黒ブドウ、白ブドウとして、白ブドウは低く、黒ブドウは高く剪定しています。

この仕立て方の最大のメリットは収穫が倍になること。同じ場所に黒ブドウだけを植えていたときと比べて黒ブドウの収穫量は変わらず、白ブドウの分だけ収穫が増えているそうです。

剪定の労力は増えますが、倍ほどではなく効率はいいのです。収穫量が増えたら、ブドウの質は下がるのではないかと思う人もいるでしょう。少なくともこれまでのところでは、品質が落ちたということはないようです。例えば、ワイン・エンスージアストでは2019年のカベルネ・ソーヴィニヨンが97点、2021年のヴェルメンティーノが91点を取っています。ドウが水を競い合うことで、自然に枝の成長などが抑えられているそうです。

ここはスケアクロウなどの畑のすぐ近くでナパの中でも最高級のカベルネ・ソーヴィニヨンができる地域。当然、畑もほとんどがカベルネ・ソーヴィニヨンなどボルドー品種になっています。白ワインも作りたくても、ワインが高く売れるカベルネ・ソーヴィニヨンを優先せざるをえないという状況です。この仕立て方をすると、上段のカベルネ・ソーヴィニヨンには十分に日光が当たり、下段の白ブドウ(ソーヴィニヨン・ブランとヴェルメンティーノ)はその日陰で少し温度が低くなり、適度な温度になるとのことです。この地域で白ワインを作るための方法としても画期的です。

ナパはブドウ畑が飽和状態で、新しい開発もほとんど認められていません。これ以上収穫を増やすのは難しい状況です。近年は特にソーヴィニヨン・ブランなどの白ブドウが足りず、多くのナパのワイナリーが近隣の郡(レイクやソノマ、ソラノ)から調達するようになってきています。この方法を使えばナパ産の白ワインが復活することになるかもしれません。

また、この方法を使うことで二酸化炭素の放出もより少なくできるとニールは主張しています。環境にも優しい方法なのです。

この方法を採用する畑は少しずつ増えています。セント・ヘレナのソラレス(Solares)ヴィンヤードは4年前にダブル・トレリスに切り替え、上段にカベルネ・ソーヴィニヨンとプティ・シラー、下段ではアルバリーニョを育てています。Lola Winesというワイナリーがアルバリーニョを、アワーグラス(Hourglass)が赤を購入しているとのこと。

かの有名な「マーサズ・ヴィンヤード(Martha’s Vineyard)」も今年この方法を一部でとりいれました。ブドウの樹の勢いが強すぎるため、それを弱めるために採用したとのこと。ニールはこの畑の栽培を1980年代から担当しており、彼の判断に従ったそうです。採用した白ブドウはアルバリーニョとフィアーノです。

これからさらに増えていくのでしょうか。
Date: 2024/0618 Category: 業界ニュース
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Point Fire
ソノマのドライ・クリーク・ヴァレーの北東部Lake Sonomaの近くでPoint Fireと呼ぶ山火事が発生しています。現地時間の6月16日昼頃に発生し、6月17日午前6時45分時点で1100エーカーに広がっています。延焼を防ぐ「コンテイン」の比率は20%とまだまだです。

レイク・ソノマ周辺では避難命令が発動されており、ヒールズバーグの近くまで避難警告が出ています。

月曜日には火事の範囲は広がる可能性が高いとしています。

まだ、煙の被害には早そうな気がしますが、心配なところです。
Date: 2024/0615 Category: 業界ニュース
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シャトー・モンテレーナでエステート・ディレクターを務めるジョージ・ブランケンシー氏が来日、セミナーに参加してきました。


シャトー・モンテレーナといえば、だれでも引き合いに出すのが「パリスの審判」で白ワイン1位になったことでしょう。もちろん、その功績や影響は計り知れないほど大きなものがありますが、そこにあぐらをかいてきたワイナリーでないのも明らかです。

モンテレーナのウェブサイトを見ると、以下のようなことが書かれています。
モンテレーナでは、慣例や過去の方法論、あるいはもう少しうまくやる方法など、あらゆることに疑問を投げかける。

探求する自由があるからこそ、私たちは学ぶことができるのです。そして、「なぜ」と自問することで、「どうすれば」への道筋をよりよく理解することができるのです。

ワインのスタイル自体は基本的に変わっていないのですが、スタイルを守り続けることの中にも進化の過程が見られます。

ちょっと余談になりますが、以前CEOのボー・バレットが来日したときに「パリスの審判で1位になって一番良かったことは何か」と質問したことがあります。彼の答えは「シャルドネが売れて儲かったので、作りたかったカベルネ・ソーヴィニヨンに予定よりも早くトライできるようになったことかな」ということでした。ここからも、「シャルドネ1位」に甘えない姿勢が見えるような気がしました。

Montelena

ラベルにも描かれているワイナリーの建物は19世紀の1888年に完成したもの。これも見かけは変わっていませんが2011年には醸造設備などをリノベーション、耐震性も高めています。Napa Green Wineryの認証を取っており、電気は100%太陽光発電で賄っています。

2000年代には一時期ブショネの問題に悩まされたこともありますが、2010年代にDIAM30というブショネの起こらない合成コルクに切り替えています。

このほか、畑の植え替えも進めています。病害虫対策などを目的にしているとのこと。

ちなみに有機栽培については認証を取ると足かせになってしまう面もあるため、認証の予定はないとのこと。一方で畑の不耕起などを特徴とする「リジェネラティブ・ファーミング」については積極的に取り組んでいく姿勢だそうです。カバークロップを使って土壌の圧縮を防ぎ、有機物を増やすことを大事にしています。


今回は5種類のワインを試飲しました。

・シャルドネ ナパヴァレー 2021
オークノールの南東、少しだけクームズヴィルにかかっているところに長期契約の畑があります。パリスの審判のころからマロラクティック発酵しないスタイルで作られています。2021年は干ばつで収穫が少なかった年。2週間かけて発酵しています。
第一印象は甘いトロピカルなフルーツの香り。白い花の香りやヴァニラもあります。口に含むと豊かな酸があり、香りの印象よりもずっとバランスよく素直に美味しい。

・ジンファンデル ナパヴァレー 2019
カリフォルニアのヘリテージのジンファンデルが40%。イタリア由来のプリミティーボが60%。ジンファンデルとプリミティーボは品種としては同じであることが分かっていますから、クローン違いと捉えればいいかと思います。プリミティーボの方が実の付き方がまばらで均等に成熟するそうです。ジンファンデルは不均等に成熟するため、青い未熟な果実を避けようとするとどうしてもレーズン化してしまう果実もでてきます。それが濃厚な甘さやアルコール度数の高さにつながるのですが、プリミティーボではそういった面が避けられるとのこと。
レッドベリーなど赤果実の味わいが優勢で、少しブルーベリー感もあります。リコリスやアニス、コーヒー。白コショウ感もあり、ブラインドで飲んだらシラーと思うかも。酸やや高く、タンニンもジンファンデルにしては強い方でしょう。ストラクチャーもありバランスよくおいしいジンファンデル。多くの人のジンファンデルのイメージとは合わないかもしれませんが、非常にいいです。

・カベルネ・ソーヴィニヨン ナパヴァレー 2019
レギュラーのカベルネ・ソーヴィニヨンです。畑はカリストガの自社畑と契約農家、オークノール(メルロー、シャルドネと同じ畑)にあります。以前はナパの様々な地域のブドウを使っていましたが、自社の畑の場所が中心になりました。
カシスにレッド・チェリー、ザクロ、ややタイトな香りでタンニンもしっかりあります。エレガント系の作りでバランスよいワイン。

・カベルネ・ソーヴィニヨン エステート 2019
カリストガの自社畑のカベルネ・ソーヴィニヨン。わずかにプティ・ヴェルド、カベルネ・フランが入っていますが99%カベルネ・ソーヴィニヨンです。
レギュラーのカベルネ以上に引き締まった味わい。杉やコーヒー、タバコなどの複雑な香りにカシスなどの青黒系果実。非常に美味しいですが、熟成させたらもっと良くなることが間違いないと思います。

最後はエステートのバックヴィンテージです。
・カベルネ・ソーヴィニヨン エステート 2008
2008年は前年の2007年が評価高かったのでちょっと埋もれがちなヴィンテージですが品質は上々です。ヒートスパイクがあり収量が少なかった年だとのこと。
2019年のエステートと比べて赤果実系の味わいをより感じます。トマトのようなうまみ、柔らかなタンニン、若いうちの引き締まった感じから、穏やかなワインに変わってきています。

シャトー・モンテレーナのワイン、特に赤ワインは「モダン・ナパ」と呼ばれるような果実味が前面に出たはでなタイプとは真逆でエレガントなスタイルを貫いています。いろいろ変わりつつもそのスタイルは健在であることを改めて確認しました。


Date: 2024/0614 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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ナパのオークノールにあるワイナリー「マテッラ | キューナット・ファミリー・ヴィンヤーズ」のオーナー夫人とワインメーカーなどが来日し、そのセミナーに参加してきました。実はオーナー夫人は仙台出身の日本人で「美紀」さんといいます。ワイン造りをするとは夢にも思っていなかったそうですが、イリノイ州出身のご主人がいつか農業をしたいという気持ちを持っていて、ナパ旅行をきっかけに2007年に畑を買い、ワイナリーを始めることになりました。美紀さんは「そういう運命だった」と、米国の慣用句「It was meant to be」を使っておっしゃっていました。

とはいえ、群雄割拠のナパのワイナリーの中で、個性を出すのには苦労していた面もあったようです。それが近年大きく二つのテコ入れで魅力的なワイナリーになってきました。

一つが2019年から参画しているワインメーカーのチェルシー・バレット(写真左)。父親がシャトー・モンテレーナのボー・バレット、母親が「ワインのファーストレディ」と言われたハイジ・バレットという超エリート夫妻の娘です。ちなみにハイジ・バレットの父親のリチャード・ピーターソンも著名なワインメーカーです。シャトー・モンテレーナを庭として育ったチェルシーにとってワインメーカーはまさに天職であり、ジョエル・ゴットでワイン造りを始め、その後南フランスやワシントン州、オレゴン州、サンタ・バーバラなど様々なところでワインを造り、現在は母のハイジともアミューズ・ブッシュで一緒にワイン造りをしながら、マテッラのワインメーカーになりました。ワイン造りは科学だけど芸術的な面があることに惹かれるという彼女は、メルローを自社畑で育てているマテッラに魅力を感じたそうです。


左がチェルシー、右はディレクター・オブ・オペレーションズのキャリン・ハリソン。UCデーヴィスで医学を学びながらワインの授業を受けて興味を持ち、コースを変えたとのこと。タンニンや色の抽出などをラボで研究しているそうです。

チェルシーの紹介が長くなりましたが、もう一つのテコ入れが「ジャパン・シリーズ」と呼ぶ和食との相性も考えて作るワインです。和食に合うようなデリケートな味わいのワインを造る上でもチェルシーの実力やワインの好みが生かされています。

このシリーズを始めたのは、美紀さんが、ルーツである奈良の吉野に2016年に招待されたのがきっかけでした。それまで先祖には興味がなかったそうですが、実はひいおじいさんが「日本林業の父」とも呼ばれる土倉庄三郎という人であり、奈良の山の静けさを表すようなワインを造りたいと思ったのでした。現在はシャルドネとロゼ、カベルネ・ソーヴィニヨンの3種類のワインをジャパン・シリーズとして作っています。

マテッラのワイナリーとエステートの畑があるオークノールは、ナパ市のすぐ北、ヨントヴィルの南にあり、霧の影響実大きいナパの中では比較的冷涼なところです。ナパ川の流れも広くなり、粘土やロームといった川由来の土壌があります。メルローやシャルドネに向いた土地です。
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地図で☆マークで示したところがマテッラの自社畑があるところです。

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エステートの畑のブロック図です。メルローとシャルドネが多いのが分かります。ブロックが傾いているのは日当たりを考慮しているためだそう。

サスティナブルなワイン造りや栽培を目指しており、ナパ・グリーン・ワイナリー、フィッシュ・フレンドリー・ファーミングの認証を取っています。有機栽培やナパ・グリーン・ヴィンヤードの取得も目指しています。

試飲のワインに移ります。1本目は2023年が初ヴィンテージとなるアルバリーニョの「やまぶき」。ワインの色合いや香りがヤマブキに似た印象があることから名付けました。FOD(Field of Dreams)と呼ぶ畑に2020年に植えた樹で、まだ1エーカーあたり2トンしか収穫がありません。そもそもナパではアルバリーニョはレアな品種であり、模範となるようなワインもないので何もかもが試行錯誤のようです。
さわやかで海の香りやかんきつ系の香りがあります。テクスチャーはちょっと粘性が高くねっとりした感じ。すっきりとしながらも少しグリップ感があり、美味しいアルバリーニョです。発売は今秋になるとのこと。

2本目はジャパン・シリーズのシャルドネ「森閑」2022。吉野の杉の静けさを表すシャルドネでシュールリーでクリーミーさを出し、新樽4%、しかもライトなトーストの樽で少しストラクチャーを与えています。
酸高く、貝殻やチョーク、青リンゴ、ジャスミンを感じました。アフターに樽由来と思われるかすかな苦みがあります。カリフォルニアらしい果実味を強く出したシャルドネではなく、寄り添うような味わい。

3本目はレギュラーのシャルドネでヴィンテージは2021年。白桃やクリーミーなニュアンスがあるのでマロラクティック発酵による風味かと思ったのですが、マロラクティック発酵は行っていないとのことで(チェルシーはシャルドネはマロラクティック発酵しない派だそうです)、バトナージュによって生まれたテクスチャーを勘違いしたようです。ほのかなバニラの風味(新樽率は28%)でバランスのいいシャルドネです。ほどよいリッチさが良かったです。

4本目からは赤ワイン。ミッドナイト2021。これはマルベック29%、メルロー21%、プティ・ヴェルド20%、シラー17%、プティ・シラー7%、カベルネ・フラン6%というユニークな構成。ちょっともわっとくるけものっぽさがあり色濃くスパイシーなので最初はシラーかと思いました。濃厚パワフルで面白いワイン。

5本目はライト・バンク2021。ボルドー右岸を意識してメルロー91%というブレンドになっています。赤果実にマッシュルーム。しなやかなタンニン。ストラクチャーもあり、いいメルローです。

最後はカベルネ・ソーヴィニヨン ヒドゥン・ブロック2019。カベルネ・ソーヴィニヨンも美味しいです。バランスよくリッチ感もタンニンもしっかりあり、美味しいです。

試飲の後半は別件で離席してしまい、ワインメーカーのコメントは聞けなかったのですが、ナパのワイナリーの中でもちょっと個性的な位置付けで存在感を出していくことはできそうです。チェルシーもまだ4ヴィンテージしか作っていませんから、これからさらに良くなることも期待できそうです。

Date: 2024/0613 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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「大日本農会」から緑白綬有効章を受けたり、岸田首相訪米の昼食会に招待を受けたりと、名誉が続くアキコ・フリーマンさんですが、今月にはノース・ベイ・ビジネス・ジャーナル誌から「ワイン業界の女性賞(Women in Wine Awards)」の「優秀ワイン醸造賞(Excellence in Winemaking Award)」を受けました。

Akiko

いくつかの賞がある中で、優秀ワイン醸造賞は「高品質のワイン生産において卓越した技術、革新性、一貫性を発揮した女性ワインメーカーを表彰」するとのことでまさにアキコさんにぴったりの賞だと思います。なお、シュラムスバーグのジェシカ・コガさん、ジョーダンのマギー・クルーズさんも同時に受賞しています。どちらも長年にわたって人気と実力を兼ね備えてきたワイナリーであり、そこに並ぶのも名誉だと思います。

フリーマンのワインの実力は、日本のカリフォルニアワインファンならだれでもご存じかと思いますから、賞を受けることは不思議でもなんでもありませんが、このように形として評価されるのは、日本人として嬉しいことです。

ここ数年で見ても、ブランドブランのスパークリングワイン、ロゼのスパークリングワイン、ロス・コブさんの畑からのリースリングと新たなワインをどんどん試みられており、2022年のウエスト・ソノマ・コーストAVA策定においてもご主人のケンさんが中心人物の一人として活動されていました。

あらためておめでとうございます。
Date: 2024/0611 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Warren Winiarski
ナパのスタッグス・リープ・ワイン・セラーズ(Stag’s Leap Wine Cellars)の創設者であり、1076年の「パリスの審判」で赤ワイン1位になったカベルネ・ソーヴィニヨンを作ったウォーレン(ワレンとも)ウィニアルスキーが95歳で亡くなりました。自宅で平穏に死を迎えたとのことです。

ウォーレン・ウィニアルスキーはシカゴの出身のポーランド系アメリカ人。イタリアに旅をしたのがきっかけでワインに目覚め、ワイン作りをするためにカリフォルニアに来ました。苗字のWiniarskiはポーランド語で「vintner's son(ワイン醸造家の息子)」という意味だそうです。1966年から、誕生したばかりのロバート・モンダヴィでアシスタント・ワインメーカーを務めました。

モンダヴィで働きながら、自身のワイナリーのための畑を探していたところ、スタッグス・リープのネイサン・フェイ(Nathan Fay)という人のカベルネ・ソーヴィニヨンを飲んで衝撃を受け、その近くでワインを造りたいと考えました。たまたまその隣の土地が売りに出たため、購入。1970年のことです。

植樹を始めて、1972年にスタッグス・リープ・ワイン・セラーズを設立。この年には同じくパリスの審判で白ワイン1位になったシャトー・モンテレーナや、ナパのケイマス、シルバー・オーク、ダイヤモンド・クリークなどそうそうたるワイナリーが数多く作られています。

創設2年目の1973年のカベルネ・ソーヴィニヨンがパリスの審判で1位になり、一躍時代の寵児となりました。この畑がStag's Leap Vineyard。現在はS.L.V.という略称で知られています。ネイサン・フェイの畑も彼の引退時に取得してFAYという畑で、その単一畑のカベルネ・ソーヴィニヨンも作っています。また、この二つをブレンドして作った最高級のカベルネ・ソーヴィニヨンがCask23です。
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2006年に行われたパリ・テイスティングの30周年記念テイスティングでは、このワインはRidgeのMonte Belloに続いて2位。決して若い時だけのワインではないことを示しました。

ウォーレン・ウィニアルスキーは後継者がいないということから、ワイナリとS.L.V.、FAYの畑を2007年にワシントン州のCh. Ste. Michelleなどに売却。本人もワイン造りからは引退しましたが、クームズヴィルのアルカディア・ヴィンヤードだけは自身のものとして持ち続け、スタッグス・リープ・ワイン・セラーズにブドウを供給していました。

彼はまた、ナパの農地保護の活動にも積極的に携わっていました。様々な意味でナパの先駆者のひとりだったと言えます。人柄も良く、皆に尊敬されていました。

昨年はマイク・ガーギッチが亡くなり、今年はウォーレン・ウィニアルスキー、歴史の証人がだんだん減っていきます。

Date: 2024/0608 Category: 業界ニュース
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X Japanのリーダーであり、アーティストのYoshikiが故ロバート・モンダヴィの孫のロブ・モンダヴィJrとのコラボレーションで作るワイン「Y by Yoshiki」。その新ヴィンテージのリリース・イベントに参加してきました。体調の問題で当日参加できるかわからなかったYoshikiさん本人も登場し、新ヴィンテージに華を添えました。

timeline
Y by Yoshikiのワインはカリフォルニアで作るものと、シャンパーニュのポメリーと作るものの大きく2つに分かれます。カリフォルニアの方は、全域のブドウから作る「California」、ナパのオークヴィルのブドウを使った「Oakville」のカベルネ・ソーヴィニヨン、ソノマのロシアンリバー・ヴァレーのブドウを使った「Russian River Valley」のピノ・ノワールの3種あり、さらにCaliforniaはシャルドネとカベルネ・ソーヴィニヨンがあります。そして、今回Californiaにロゼが加わりました。

ロゼはバルベーラやピノ・ノワールを使っているとのこと。華やかでローズペタルやフランボワーズの風味。グリップ感があるので肉料理にも十分合わせられそうです。すごくオールマイティなワインで、ワインを初めて飲むといった人にもぜひ飲んでほしいワイン。

Californiaシリーズのシャルドネはきれいな酸と果実味があり、樽感もほどよく乗っています。同シリーズのカベルネ・ソーヴィニヨンは少し甘やかさがあり、まろやかな果実味が魅力的です。どちらもバランスよく飲みやすく仕上げられています。

オークヴィルのカベルネ・ソーヴィニヨンは本格的なカベルネ・ソーヴィニヨンの味わい。タンニンもしっかりあり骨格を感じられます。

昨年は山火事の影響でリリースされなかったピノ・ノワール。ロシアンリバー・ヴァレーらしい甘やかさのあるワイン。ピノ・ノワールファンというよりも、ピノ・ノワールを飲みなれていない人に喜ばれそうなワイン。


シャンパーニュの方も、華やかなボトルで舞台映えします。ハレの日のワインにぴったりのイメージ。



Y by Yoshikiはカリフォルニアワインの中でも高い知名度を誇ります。ここからワインファン、カリフォルニアファンが増えることを期待します。
Date: 2024/0606 Category: 業界ニュース
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ウィリアムズ・セリエム
ソノマのロシアンリバー・ヴァレーにあるピノ・ノワールとシャルドネのトップワイナリーの一つである「ウィリアムズ・セリエム(Williams Selyem)をブルゴーニュのフェヴレが買収しました。

前オーナーのダイソン夫妻は2016年頃からワイナリーの譲渡先を探しており、投資会社や大会社でないところに売りたいという考えを持っていました。一方でフェヴレはブルゴーニュに120ヘクタールの畑を持ち、ブルゴーニュではこれ以上の拡張は考えず、海外への進出を考えていました。

両社の思惑が一致して2021年にフェヴレがダイソン夫妻から株式の一部を買っており、3年間を引き継ぎ期間と位置付け、問題がなければその後買収へとなる見込みを表明していました。結局、予定通りにフェヴレの買収となりました。なお株式の全部買うのではなく、一部はダイソン夫妻に残しています。

CEOも当面(3年間を予定)はジョン・ダイソンが引き続き務めます。ワインメーカーなども現在のまま移行を進めます。

ウィリアムズ・セリエムは元々バート・ウィリアムズとエド・セリエムが始めたガレージ・ワイナリーで、1980年代にロキオリのピノ・ノワールでカルト的人気になり、カリフォルニアでは最初のピノ・ノワールの人気ワイナリーとなりました。90年代末に、ワイナリーを売却しています。

ウィリアムズとセリエムの時代は、畑を持たずに買いブドウだけでワインを造っていましたが、現在は5つの自社畑を持ち、契約畑も20近くと大きく成長しています。
Date: 2024/0605 Category: おすすめワイン
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しあわせワイン倶楽部で楽天スーパーSALEに合わせて、最大30%引きのセールをやっています。

3割引コーナーは、アイコニックさん輸入のものがたくさん出ています。はっきり言うと、どれもはずれはないです、というよりも水準以上のワインばかりです。むちゃくちゃ選びにくいですが、5つだけお薦めを選んでおきます。どれも僕がワイン会に持参したことのあるワインですから、間違いはないです。

ストルプマンの「パラ・マリア」シラーはマセラシオン・カルボニックを使った芳醇なシラー。シラーあまり飲まないという人にぜひ試してほしいワイン。
フィールド・レコーディングスの「SKINS」オレンジワインは旨味がむちゃくちゃ素晴らしいワイン。
ホワイトホール・レーンの「トレ・レオーニ」はナパらしい芳醇なレッド・ブレンド。
カーボニストのタコ・ラベルのスパークリング。アルバリーニョのスパークリングで魚介に合います。
クレーン・アッセンブリーの「エル・ココ」。プリズナーの生みの親として知られているデイブ・フィニーが作る渾身のジンファンデル・ブレンド。






ここまで3割引のものを紹介しましたが、実は2割引のワインの方もちょっとびっくりするようなワインが出ています。

ラック&リドルのブリュットの2500円なんて言うのも地味に心惹かれますが、まずびっくりしたのはロバート・モンダヴィのオークヴィル・カベルネ2019。これってワインスペクテーターで年間6位になっているワインなのですが、当時はまだ日本では前のヴィンテージが売られていたので市場に出ていなかったんです。オークヴィルという名前ですが、中身はほぼ「ト・カロン・ヴィンヤード」という実はむちゃくちゃぜいたくなワイン。


なんでこんなのがセールに?の二つ目はデュモルのピノ・ノワール「Finn」。ワイン・アドヴォケイト96点取っているワインです。デュモルは何飲んでも美味しい、間違いないです。


なんでこんなのがセールにの3つ目はなんと「ドメーヌ・ド・ラ・コート」のピノ・ノワール。今や品薄で引っ張りだこのワインで、ブルゴーニュファンも触手を伸ばしているので、買えたらラッキーくらいなもの。セールにしなくても間違いなく売り切れると思うのですが…




なんでこんなのがセールにの4つ目はウルトラマリンのスパークリング・ロゼ「ハーシュ・ヴィンヤード」。2割引でも高いワインではありますが、そもそも楽天ではここでしか在庫がないワインです。


シネクアノンのDISTENTA 3のシラーとグルナッシュもセール対象。



ほかにも高額ワインや熟成ワインの出物が並んでいます。買えるものなら全部買いたいくらいのワインばかりですが…
Date: 2024/0604 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパヴァレーのすぐ東にあるサスーン・ヴァレー(Suisun Valley)で日本人が営むワイナリー「サンセット・セラーズ(Sunset Cellars)」。そのリリース・パーティが渋谷で開かれ、お招きいただいて楽しんできました。

サンセット・セラーズの過去記事
日本人エンジニアがカリフォルニアでワイナリーを買った話が面白い
ナパ近郊のワイナリーに「足湯」、日本人エンジニアがDIYで制作
ナパツアー初日ーーお隣のサスーン・ヴァレーに寄り道

サンセット・セラーズ・オーナーの4人。左からきょろさん、はとねさん、Fahさん(ワインメーカー)、Mioさん。

サンセット・セラーズではメーリング・リストのメンバーを「ツタ主」と呼んでおり、四半期ごとに3本のワインを買うことを条件に、畑のバルベーラの茎40㎝分(ブドウ1房分)を占有できるという形になっています。今回のパーティもこのツタ主を対象にしたものでした。




ワインはこの写真のほかに、委託醸造の形で作ったソーヴィニヨン・ムスケのワイン(香りとうまみがすごい)とか、アシルティコで作ったオレンジワイン、カリフォルニアでわずか6エーカーしか存在していないシャルボノのワインなど、ユニークなものもありました。ちなみにアシルティコは某有名ワイナリーがサスーン・ヴァレーで実験的に栽培しているものだそうです。

個人的にはこの日のナンバーワンはテルデスキのジンファンデル、2番目はロシアンリバー・ヴァレーのピノ・ノワールでした。テルデスキはソノマのドライ・クリーク・ヴァレーを代表するようなジンファンデルの古木の畑で、ベッドロックなどジンファンデルの大御所ワイナリーが最高と評する畑の一つです。もちろん、簡単にブドウを入手できるような畑ではないのですが、あるワイナリーの収穫後に残ったブドウを使っているそうです。摘み取られなかったブドウなので、房が小さかったりするわけですが、それがかえって均等な熟成になっていたりするのが面白いところです。このジンファンデルは、赤果実に黒果実が混ざった風味、スパイスもあり、なにより酸がきれいでバランスがいい。エレガントと呼んでもいいジンファンデルで素晴らしかったです。

ピノ・ノワールもやはり他のワイナリーの収穫後のブドウをわけてもらっているそうですが、ロシアンリバー・ヴァレーらしい果実の芳醇さときれいな酸があります。少しスパイシーさもありうまいです。

ワイナリーのサイトはこちら
SUNSET CELLARS (サンセット・セラーズ) - カリフォルニアのマイクロ・ファミリー・ワイナリー
ツタ主についてはこちら
Vine Owner's Club

今後は日本でのこういったイベントも積極的にやっていきたいとのことです。作っているワインも面白く、作り手との距離が近いワイナリーなので、ツタ主になるといろいろ楽しめると思います。


ペアリングの料理もいろいろあって、楽しかったです。
Date: 2024/0601 Category: おすすめワイン
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ビッグ・スムース(Big Smooth)というブランドのカベルネ・ソーヴィニヨンがしあわせワイン倶楽部で輸入元協賛特価になっています。税込み1848円は、現地の実売価格の平均18ドル(ワイン・サーチャーによる)と比べてもかなり安い値段です。

ビッグ・スムースはソノマをベースにカリフォルニア各地のブドウからワインを造るドン・セバスティアーニ&サンズのブランドの一つ。同社はコスパ系のブランドをいろいろ持っていて、ペパーウッド・グローヴやスモーキング・ルーンなどがあります。ビッグ・スムースはその名の通り、芳醇でタンニンの柔らかなワインを目指したもの。温暖なローダイのブドウを使っています。

2020年のカベルネ・ソーヴィニヨンはワイン・エンスージアストで89点。このクラスのワインとしては高得点です。



Date: 2024/0531 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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楽天市場で南オーストラリア州政府が2割引のクーポンを出しています。

クーポンはこちら

対象はワインでなくてもいい(マグロとかもあります)のですが、ワイン好きならこれを逃す手はありません。
ただし、注意点がいくつかあります。

まず、最大の注意点はクーポンの使用が合計200回までということ。今この記事を書いている時点で開始から
3日ほど経っていますが、残り86回と半分を切っています。この週末で使い切られる可能性が高いです。

次に、割引は最大5アイテムまで、1回の購入では3アイテムまでということ。一度に4アイテム以上買ったときは3つだけが対象になります。

また、すべてのショップが対象ではないので、割引対象のワインかどうかを確認する必要があります。
赤ワインの対象ワイン
白ワインの対象ワイン

その代わり、割引の上限はないので、例えば3万円のワインを3本買って、次に2本買ったら合計3万円分がクーポンで引かれることになります。

対象ワインで一番高額なのはこちら。

このワインを購入した場合、7760円割り引かれることになります。

濃厚スタイルで人気のモーリードゥーカーも対象になっています。


自然派が好きならルーシーマルゴーは逃せないでしょう。一時期はセールはおろか、購入するのも大変な人気ワイナリーでした。



ちなみに私は以前から気になっていたショウ・アンド・スミスのシラーズなどを買ってみました。

この価格でパーカー93+という高い評価です。エレガント系のシラーズを飲んでみたかったのが選んだ理由です。
Date: 2024/0530 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Bonanza

ナパの人気ワイナリー「ケイマス(Caymus)」のオーナーであるワグナー・ファミリー・オブ・ワインの新しいブランド「ボナンザ(Bonanza)が急成長を遂げています(With Bonanza — a.k.a ‘Baby Caymus’ — the Wagner Family Strikes Gold Again | VinePair)。

2020年に市場投入し13万1000ケースを販売したボナンザは、2023年には約3倍の36万ケースに達し、2024年もその勢いは落ちていないといいます。今や人気ブランドのダオ(Daou)やJosh Cellars(ジョッシュ・セラーズ)と並ぶほどの勢いがあります。

「ベイビー・ケイマス」というニックネームもあるボナンザですが、ケイマスとはだいぶ違っています。

まず、ブドウはローダイのカベルネ・ソーヴィニヨンを使っています。ボナンザは市場価格22ドルほどで売られており、今や90ドルになっているナパのカベルネと比べると4分の1ほどの価格です。ヴィンテージを付けず、ロット番号だけを記しています。

また、ケイマスは、芳醇なスタイルで知られており、アンチ・ケイマスの人からは「砂糖でコーティングしたような」などと言われるほどリッチな味わいが特徴ですが、ボナンザは豊かな果実味という特徴は持ちつつも、やわらかいタンニンと、ちょっと軽めのスタイルに仕上げています。ミレニアル世代とジェネレーションZ世代が求めるような「ライトな赤」とまではいきませんが、そこに少し寄り添う面もあるようです。

米国のワイン通やソムリエの間では、あまり人気のないケイマスですが、消費者が求めるものを知っているというのは、かつてのメイオミ・ピノ・ノワールの大成功(2015年にコンステレーション・ブランズに売却)からもうかがえます。
Date: 2024/0529 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ソノマでヴェルメンティーノを初めとしたイタリア系品種のワインが急速に増えています(Vermentino Rising: Is Sonoma's New Star Grape the Next Chardonnay?

Vermentino
Magnetto - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

元々カリフォルニアのワイン業界はロバート・モンダヴィなどイタリア系の移民がかなり多くいます。それでも作るワインはシャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンなどフランス系のいわゆる国際品種が主体でした。ここに来てイタリア系品種が台頭してきたことには2つ理由があります。

一つはワイン造りをするのが、第2世代に移ってきたこと。新しい世代のワインメーカーはメジャーな国際品種から、ちょっと違うものを求めるようになり、中でもルーツを持つイタリア系品種に興味を持つワインメーカーが増えたこと。

もう一つは気候変動。イタリアは地中海性気候で気温が高い地域も多く、イタリア系品種の多くは熱に強く、暑くても酸を維持する傾向が強くあります。特にヴェルメンティーノは干ばつに強いという特徴があります。カリフォルニアは2023、2024年は比較的水が豊富にありますが、その前5年間ほどは干ばつ続きで収量にも大きな影響が出ていました。今後さらに進むであろう温暖化と干ばつの時代に適応する品種としてヴェルメンティーノが選ばれているそうです。

もちろん、それだけでは積極的に選ばれる理由にはなりませんが、ヴェルメンティーノはソーヴィニヨン・ブランに似たフレッシュな酸味やかんきつの味わい、かすかな塩味があり、一方で樽を使った複雑な味わいのワインにもなります。ワインメーカーにとっては自由度が高いブドウ品種です。

ヴェルメンティーノ以外ではファランギーナやアルネイス、リボッラ・ジャッラなども増加している品種です。

ソノマはウエスト・ソノマ・コーストに代表される夏でも寒い冷涼地区と、ドライ・クリーク・ヴァレーなどの40℃を超えるような地区と、カリフォルニアの中でも最も幅広い気候を備えています。そういう意味では多くの品種が成功する可能性を秘めていると思います。ヴェルメンティーノがその一つになるのか、またその適地やスタイルがどうなっていくのか、興味深いところです。

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Date: 2024/0528 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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オレゴンのウィラメット・ヴァレー・ヴィンヤーズがレヴィーノ(Revino)社の再利用可能ワインボトルを採用すると発表しました。このボトルを使うのは2023年のWhole Cluster Pinot Noirで生産本数は1400ケース。ワイナリーのテイスティング・ルームで販売されます。
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レヴィーノの再利用可能ワインボトルは、ワイナリーやレヴィーノの回収所にボトルを持ち込むことで再利用されます。通常はガラスのリサイクルは一回ガラスを溶かしてから別の形に作り直しますが、レヴィーノのボトルは洗浄するだけでまたワインボトルとして利用されます。25回から50回まで再利用でき、その後は通常のガラスと同様のリサイクルが可能です。環境への負荷は従来のリサイクルよりもはるかに小さなものになります。

オレゴンやカリフォルニアなどでは消費者がボトルをリサイクルするとお金が戻ってくる仕組みがありますが(カリフォルニア、新しいボトルリサイクリングプログラム開始)、レヴィーノのボトル回収はこのリサイクルとは別過程なので、お金は戻ってこないことになります。

レヴィーノのWebサイトによると以下のワイナリーが今年レヴィーノのボトルを採用する予定だといいます。
Adelsheim • Willamette Valley Vineyards • Cameron Winery • Bethel Heights Winery • Cramoisi Vineyard • Remy Wines • Soter (Planet Oregon) • Walter-Scott • Pierce Wines • Winter’s Hill Estate • Et Fille Wines • Hope Well Wines • Portland Wine Company • love & squalor • Brooks Wine • Quady North • Lange Estate • Troon Vineyard • Schultz Winery • Dwell Wines • LongSword Vineyard • Mt. Hood Winery • Ruby Vineyard • Sadness and Chardonnay/ Gamay • Cória Estates • Jackalope Wine Cellars • Fairsing • Winderlea • Björnson Vineyard • Bryn Mawr Vineyards • Durant Wines (+ Olive Oil Bottle Washing) • Throughline Wines

Date: 2024/0525 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ジラードやクロ・ペガス、コセンティーノ、ヴィアンサなど数多くのブランドを抱えるヴィンテージ・ワイン・エステート(VWE)が倒産の危機に直面していることを認めました(Vintage Wine Estates at risk of collapse - Global Drinks Intel)。

VWEは上場企業なので、四半期ごとに決算資料を公開しています。最新の報告では、3月末までの3か月(VWEの会計年度第3四半期)の売上高は30%弱減少して4,570万ドルとなり、年初からの売上高は15%減の1億8,690万ドルとなっています。

同社はテコ入れのために、クロ・ベガスなどいくつかのブランドを売却する予定ですが、まだ確定した情報はありません。

同社の経営陣は、今のままだと負債の返済が滞り、破産申請せざるを得なくなる可能性があることを認めています。

2023年のカリフォルニアおよびワシントンの豊作が、余剰在庫になっている面もあります。




Date: 2024/0524 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ダックホーン(Duckhorn)が、ソノマの人気ワイナリー「ソノマ・カトラー(Sonoma-Cutrer)」を買収しました。ソノマ・カトラーはこれまで大手酒販会社ブラウン・フォーマンが所有していました。

ダックホーンの経営陣にはブラウン・フォーマンのエグゼクティブが2人入っているので、今回の買収はブランドの移管という感じなのでしょう。ブラウン・フォーマン傘下に置くより、ダックホーン傘下の方が期待できるということなのだと思います。

ソノマ・カトラーはシャルドネで有名なワイナリーで、古くはソノマ・コーストAVAの策定時に影響力を発揮したことがあるほどのワイナリーでした。近年はそれほど目立ったワイナリーではありませんが、シャルドネの人気は衰えていないようです。

このほか、ソノマのカーネロスにあるラムズ・ゲート(Ram’s Gate)はオニール・ヴィントナーズに買収されました。ラムズ・ゲートはゴールデンゲートブリッジ方面からワイン・カントリーに向かうときに、最初に現れるワイナリー。ラムはカーネロスのスペイン語の意味である羊であり、まさにカーネロスの入り口というワイナリーです。

オニール・ヴィントナーズはどちらかというと安ワインを中心としたブランドを持っていますが、そのCEOがもともとラムズ・ゲートの創設者のひとりだったことから今回の買収になったとのことです。
Date: 2024/0523 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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「オレゴン・ワイン・ボード」と「ワシントン・ステート・ワイン・コミッション」が共同で行う「ノースウエスト・ワイン・コアリション」による「上級スペシャリスト」に合格しました。20数人(かな?)の受講生の中で2位という好成績だったのは望外でした。ちなみに、上級スペシャリストの講座をやるのが世界中で今回が2回目。日本ではもちろん初です。なお2021年に初級を受けています。
オレゴンとワシントンのワインの認定スペシャリストに合格しました!

月曜日は午前・午後とオレゴンの勉強と試飲、火曜日は午前・午後とワシントンの勉強と試飲、水曜日はテストというなかなかのハードスケジュール。テキストも180ページあり、2日で頭に入れるのは無理です。
講師はブリー・ストックMW。オーストラリアからオレゴンに移住したという方です。明快koな語り口で、説明も分かりやすく、すごくいい人でした。



講義では、午前に白ワインのフライト、午後に赤ワインのフライトが2回という試飲も行います。

最初はオレゴンの白です。
Argyle Vintage Brut 2019 Willamette Valley
Del Rio Rock Point Pinot Gris 2022 Oregon AVA
Etheric Wine Workshop Skin Contact Pinot Gris 2022 Oregon AVA
Domaine Drouhin Rose Rock 2021
Lingua Franca Estate Chardonnay 2021
Phelps Creek Chardonnay 2021 Columbia Gorge AVA
オレゴンというと従来ピノ・グリが多かったのですが、シャルドネの品質の高いクローンが導入されるようになって、急速にシャルドネが増えています。近々逆転するだろうとのことでした。個人的にはリングア・フランカのシャルドネ(AVAはエオラ・アミティ・ヒルズ)が素晴らしかったです。ハーブやスパイス感があり、かんきつ系の味わいと酸がキリっと芯を作ります。複雑で余韻も長い。
ピノグリではオレンジワインの方法で作られるスキン・コンタクトのピノグリが面白かった。ビオディナミを実践している生産者で、ワイン造りもナチュラル系。独特の風味が苦手という人もいましたが、ナチュラル系をあまり飲まない私も、これは許容範囲でした。ピノグリはピノ・ノワールからの変異種なので皮に赤系の色素があります。そのため普通のオレンジワインのような色ではなくロゼのようになります。赤果実の味わいに、ホールクラスター的なスパイスのニュアンス。タンニンによるグリップ感もあります。


赤の最初のフライトはピノ・ノワール。
Ponzi Laurelwood PN 2021 Laurelwood
Beaux Freres 2021 Ribbon Ridge
Domaine Drouhin 2021 Dundee Hills
Soter Vineyards Mineral Springs Ranch Pinot Noir 2021 Yamhill Carlton
Lingua Franca Estate Pinot Noir 2021
Cristom Eileen Vineyard Pinot Noir 2021

Ponziはやや黒系果実の味わいがあり、タンニンも比較的強いスタイル。ボー・フレールは一番エレガントな作り。ドルーアンはチェリー・コークのスパイス感に高い酸でエレガント。ソーターはパワフルで樽も強く凝縮感があるスタイル。リングア・フランカは紅茶の風味が特徴的。酸高くなめらかな味わい。クリストムはうまみがあり凝縮感も。
6つともそれぞれ良いのですが、なかなか甲乙をつけるのは難しいです。オレゴンのワインはこのあたりが難しい。もっと「変」なワインが出てくると面白いのになあなどと、傍観者としては思ってしまいます。


赤の二つ目は南オレゴン中心のフライト。
Del Rio Rock Point Pinot Noir 2022 Oregon AVA
Grachau Cellars Gamay Noir 2018 Willamette Valley
Abacela Barrel Select Tempranillo 2020 Umpqua Valley
Troon Vineyard Syrah 2021 Applegate Valley
Jackalope Wine Cellars Cabernet Franc 2021 Applegate Valley

テンプラニーリョとか植わっているの知らなかったです。シラーが結構好きでした。シナモン、スパイス、胡椒、干し肉、酸高く、青い果実もあります。
ブリー・ストックMWはガメイノワールが伸びてくると予想していました。赤い果実の風味に酸の高さ、フレッシュ感など、ピノ・ノワールに近い魅力はありますが、複雑さにはやや欠けたように思います。まだ真価はつかみかねています。


二日目はワシントンの白からです。
Eroica Riesling 2022 Ancient Lakes AVA
Nine Hats Riesling 2022 Columbia Valey AVA
Airfield Estate Sauvignon Blanc 2022 Yakima Valley AVA
L'Ecole No.41 Luminesce 2022(Semillon/Sauvignon Blanc) Walla Walla AVA
Devona Chardonnay 2020 (Columbia Valley AVA & Columbia gorge AVA)
リースリングが2つに、ソーヴィニヨン・ブランが2つ、それにシャルドネです。ちなみに白の生産量ではシャルドネが一番多く、次が僅差でリースリング。ソーヴィニヨン・ブランはその4分の1くらいです。

リースリングは二つとも残糖があるタイプ。エロイカはワシントン州最大手のシャトー・サン・ミシェルがドイツ・モーゼルのドクター・ローゼンと共同でやっているワインでモーゼルのスタイルのリースリングを作っています。そういう意味では安心して選べるワインですが、逆にわざわざこのワインを選ぶ理由があるかというところは課題かもしれません。Nine Hatsの方は残糖少な目でジンジャーのようなスパイス感がちょっと面白い。ブリー・ストックMWは「マルガリータのよう」と言っていました。
L'Ecole No.41のソーヴィニヨン・ブランはボルドー的なスタイル。樽のニュアンスが少しあり、クリーミーなテクスチャーとハーブやストーンフルーツの風味が高級感を出しています。


赤の最初のフライトはシラーなど。
Syncline Gamay Noir 2021 Columbia Gorge
Rocky Pond Clos CheValle Syrah 2020 Lake Chelan
Hedges Descendants Liegeois Dupont Syrah 2018 Red Mountain
K Vintners The Deal Sundance Vineyard 2020 Wahluku Slope
Kobayashi Cabernet Franc 2021 Yakima Valley
Dunham Trutina Red Bland 2020 Columbia Valley

Synclineのガメイはオレゴンのものより個人的には高評価。イチゴミルクにフランボワーズ、ホワイトペッパー、酸豊かで少しタンニンも感じます。美味しい、
ワシントンのシラーは基本的に好きなのですが、今回はあまり響くものがなかったです。三つの中では温暖なレッド・マウンテンで作るHedgesが良かった。K Vintnersは好きなワイナリーですが、今回のワインは全房発酵による茎の要素が前面に出ていて味わいに落ち着きがなかった。もう少し熟成するといい感じになるかもしれません。
Kobayashiのカベルネ・フランは日本のミズナラの新樽を使った珍しいワイン。ブリー・ストックMWによると、この樽からは甘さやバニラがほとんど出てこず、うまみ系の味わいやサンダルウッドの風味があるそうです。私の印象は、酸やや高くタニック。クランベリー。悪くないですが、現状ではタンニンに果実味が負けている感じ。もう少し熟成してタンニンが落ち着くと良くなるのかどうか。個性的な味わいなので評価は難しいです。


最後はワシントンのボルドー系品種のフライト。
Ste Michelle Canoe Ridge Estate Merlot 2019 Horse Heaven Hills
Seven Hills Vineyard Merlot 2020 Walla Walla Valley
Pomum Cabernet Sauvignon 2021 Rattlesnake Hills
DeLille Four Flags Cabernet Sauvignon 2021 Red Mountain
Woodward Canyon Artist Series Cabernet 2021 Columbia Valley
Matthews Cabernet Sauvognon 2021 Royal Slope

ブリー・ストックMWによるとワシントンの生育環境はメルローに合っているとのこと。スロープや風が小粒のブドウを作り、ワインにストラクチャーが生じます。普通はカベルネ・ソーヴィニヨンがストラクチャーが強く、メルローはやわらかな味わいを出しますが、ワシントンの場合はメルローのストラクチャーを和らげるためにカベルネ・ソーヴィニヨンがブレンドされるとか。
このフライトの5つのワインの中で個人的ベストは「Ste Michelle Canoe Ridge Estate Merlot 2019」。パワフルで密度高く、しなやかなタンニンがあります。果実味は赤から青。杉やミントの風味もあります。とてもいい。
Seven Hillsのメルローもタンニン強いですが、きれいで美味しい。
最後のマシューズは、ワシントンで最も評価が高いカベルネ・ソーヴィニヨンを作ってきたQuilceda Creekのチームが移籍して作っているワイナリーで、注目されています。今回のワインはややタニックですが、バランスよく美味しいです。ただ、個人的には今飲むならPomumかDeLilleを選びます。

メルローの良さに感激していたのですが、あとから3年前の初級編のときの記事を読んだら、同じことを書いていて成長していなさにがっくりきました。

三日目は選択式のテストと6種のワインのテイスティング(コメントを書いて品種とその判断理由も記します)。火曜日家に帰ってからかなり勉強したのですが、テストはあまりしっかり覚えていなかった歴史の問題が結構出て、だいぶ苦戦しました。テイスティングは白はあまり迷わなかった(2番は残糖と花の香りからリースリング、1番は最初はピノグリと少し迷ったのですが、キリっとした酸と後からバニラの風味が出てきたのでシャルドネ、おそらくエオラ・アミティ・ヒルズと判断。3番は酸の柔らかさなどからピノグリ)のですが、赤は結構迷いました。
1番は最初は赤果実にキャンディも感じたような気がしてガメイかと思ったのですが、時間が経つにつれて杉やカシスが出てきて、タンニンも強く感じるようになりました。ボルドー系品種までしぼって、メルローかカベルネかかなり迷ったのですが、リーンな味わいからカベルネを選択(答えはメルローでした)。
2番は紫系の色とスパイスの風味、青系果実からシラーと判断。
3番は赤系果実で色も薄くピノ・ノワールかと思いましたが、ピノ・ノワールにしては酸が高くなく、色も薄めとはいえ、ピノにしてはガーネット感があり、ガメイもワンチャンありそう。だいぶ迷った結果、キャンディ感が出てこなかったのでピノ・ノワールにしました(正解)。
結局メルロー以外は正解と、実力以上の結果で、おかげで2位になれたようです。ちなみに1位になったワッシーズの青木さんは赤の2番だけ間違えたとのことでした。




これからはカリフォルニアだけでなく、オレゴン・ワシントンも教えられるようにならないとですね。
Date: 2024/0521 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ワインに関連した二酸化炭素の排出で、最も問題が大きいのはガラスボトルです。製造のために多くの熱が必要になるほか、ボトル1本で1㎏近くにもなるため、輸送に伴う排出量も大きくなります。
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そのため、より軽く、二酸化炭素の排出が少ないボトルを多くのワイナリーが探していますが、ボニー・ドゥーンは2024年5月から紙製のボトルを使ったワインを発売しています。その名も「Carbon…Nay!」と二酸化炭素排出が少ないことをアピールしています。

紙製のパッケージングというとボックスワインと呼ばれている箱型のものをイメージすると思いますが、今回の「Frutalpac」を使ったものは従来のワインボトルと同じ形をしています。

紙の内側はPETボトルで、どちらもリサイクルできるのも特徴です。

ちなみに4年前に記事で書いたものと基本的には同じだと思います。
紙製のワイン・ボトルが登場、メリットとデメリットは?

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また、新たに開発された容器として8角形のボトルがあります。

ボトルと二酸化炭素排出との関係でいうと、重量が大事であることは言うまでもないですが、このボトルを開発したNeotempo社のCEOは「形とサイズも同じくらい重要だ」といいます。

このボトルを使うと、一つのパレットに従来56ケース入るところに80ケース収納できるといいます。運送コストは39%減るとのことで、これはかなりの削減になります。

Date: 2024/0520 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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10数年ぶりにお会いする方々ばかりというワイン会に参加してきました。その名も「爺爺ワイン会」。ほとんどが還暦前後という集まりです。

「爺爺」は実は「ZZ」にかけています。20年ほど前、「CWFC(カリフォルニアワインのファンクラブ)」が活発に活動し、サブユニットではないですがその仲間内でのワイン会も頻繁に行われていました。なかでも「zouk」さんが主宰する通称「Z会」はサンタ・リタ・ヒルズのAVA認定や映画「Sideways」などで注目されつつあった新しいワインを勉強する場として一種あこがれのような場所でした。今回はそのzoukさんも参加され、古の「Z会」を彷彿とさせるタイトルが付けられたわけです。

ということで、10数年前の「地引網」会など年寄りならではの昔話に花が咲いたわけですが、ワインも素晴らしいものでした。お店は吉祥寺の「ボナペティ」。ワインファンには有名な店ですが、ここに来るのも20年ぶりくらいです。


最初のワインはブリュワー・クリフトンのシャルドネ「Marcella’s」1999。最初のワインはブリュワー・クリフトンのシャルドネ「Marcella’s」1999。写真でもわかるように、熟成によってかなり色濃く、濃い黄金色になっています。味わいもキャラメルやナッツなど熟成による複雑さが前面に出ています。Marcella’sという畑は、今はフェス・パーカーが使っているようです。ブリュワー・クリフトンはごく一時期作っていたらしいですが、私は初めて飲んだと思います。裏ラベルには840本製造とありました。樽3つというところですね。ちなみにアルコール度数は驚きの16.5%。ただ、飲んでいてそこまでアルコール度数が高いとは思いませんでした。


2本目はシー・スモークのシャルドネ2004。先日、コンステレーション・ブランズが買収したことで話題になったシー・スモークですが、2004年というとちょうどブームの真っただ中だったころのワインです。マグナムボトル。7人でマグナムはかなりたっぷり飲めます。これはこの日のワインの中で個人的にはベスト。ハーブやナッツ、果実味もまだあります。柔らかな酸。甘美な味わい。とろけます。100%新樽を使っているそうですが、樽感は完全に溶け込んでいます。やっぱりマグナムだとゆっくり熟成するのでしょう。最初のワインと比べてヴィンテージも5年若いですが、ワインの若さはもっとでした。


3本目は同じくシー・スモークのピノ・ノワールSouthing 2004。シー・スモークのピノ・ノワールは3種類(現在は2種類)ありますが、Southingは真ん中の扱い。個人的にはフラッグシップの「Ten」はちょっと濃すぎるのでSouthingのバランス感が好きでした。これもマグナムボトル。
マグナムボトルのためか、果実味がまだまだしっかりしています。ザクロやブルーベリー、完熟した果実の味わいがあります。逆に言うとあまり熟成感は出てきていません。ピノの飲み頃は難しいですね。

次はボトルの写真を撮り忘れていました。ブリュワー・クリフトンのピノ・ノワールJulia’s1999。マッシュルーム、フランボワーズ、薄旨系で酸がきれい。果実とのバランスがいいです。シー・スモークと比べてかなりエレガント。ピノ・ノワールはこちらが好みでした。

残りはナパのカベルネ・ソーヴィニヨンが2本。どちらもナパヴァレーの有名ワインで、どちらも1960年代のもの。


1969年のハイツ、マーサズ・ヴィンヤード。元祖カルトワインと言ってもいい超有名ワイン。マーサズといえばミントの味わいなわけですが、まだちゃんとミントいました。エレガントな赤果実の味わいもあり、きれいに熟成しています。これも素晴らしい。


カベルネの2本目はBVことボーリュー・ヴィンヤードのカベルネソーヴィニヨン1968です。カリフォルニアワインの歴史を学ぶと必ず名前が出てくるアンドレ・チェリチェフがワインメーカーだった時代のワイン。
こちらはちょっと熟成のピークを越えてしまっていました。酢酸がだいぶ出ています。

この後最後にデザートワインも飲んでいますが、もうだいぶ酔っぱらってメモがありません。マグナムで飲みすぎました。

懐かしく、素晴らしいワインを懐かしい人々と飲んで楽しい時間でした。

最後にボナペティさんの料理の写真を挙げておきます。














Date: 2024/0512 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ワイン蔵Tokyoの試飲会から残りのワイナリーを紹介します。

ソノマのカーネロスにあるドナム(Donum)はカーネロスのソノマ側を代表するワイナリー。以前、輸入されていた時期もありましたが、しばらく見ておらず、久々の復活です。

ドナムは2001年にドイツ出身のアン・モラー・ラッケが設立したワイナリーで2006年にPinot Reportのライジングスターに選ばれるなど、カーネロスのソノマ側の代表的ワイナリーになりました。ワイナリーや畑には様々なアート作品が展示してあることでも知られています。
Love me

ドナムではピノ・ノワールを17種、シャルドネを6種も作っていますが、今回輸入されるのはワイナリーの一番メインのワインであるカーネロスの自社畑のシャルドネ2021(14500円)とピノ・ノワール(17000円)です。いずれも有機栽培で土着酵母を使用。樽は吟味を重ねたものを使っています。

シャルドネは上品な樽感があります。酸が高くかんきつ系の香りがありますが味わってみるとトロピカルフルーツのフレーバーもあり複雑で高級感のあるシャルドネです。
ピノ・ノワールは柔らかな酸味で、熟度の高い赤果実と少し黒果実も感じます。軽くトーストの香り、土っぽさもあります。これも複雑でいいワイン。


最後はダオ(Daou)。レバノンからの移民のダオ兄弟がパソ・ロブレスで作るワイン。パソ・ロブレスの中では比較的海に近く標高の高いアデレード・ヒルズに畑を作り、今やパソ・ロブレスのトップワイナリーとして、特にカベルネ・ソーヴィニヨンが高く評価されています。中でもフラッグシップの「ソウル・オブ・ア・ライオン(Soul of a Lion)」は数年前に初めて試飲したときにその美味しさとシルキーなテクスチャーに驚いたワインです。

写真の左から紹介します。
ソーヴィニヨン・ブラン2022(4200円)は、明るく華やかなワイン。ステンレスタンクタイプのすっきりとした味わいで、グレープフルーツにハーブのニュアンスが加わります。
シャルドネ2022(4360円)は果実味が爆発するような味わい。軽い樽の風味が全体を引き締めます。これはこの価格帯のシャルドネとしては素晴らしいと思います。
次はリザーブのシャルドネ2021(7500円)。レギュラーのシャルドネと比べ、樽の風味がしっかりと感じられます。クラシックなスタイルのシャルドネ。
次はレギュラータイプのカベルネ・ソーヴィニヨン2021(5750円)。
甘やかな果実味が印象的ですが、酸もしっかりあってエレガントさも感じられます。ハーブやスパイスの風味もありこの価格帯としては複雑さのあるカベルネ・ソーヴィニヨン。とてもいいです。
リザーブのカベルネ・ソーヴィニヨン2021(1万円)は、レギュラータイプよりもパワフルなワイン。チョコレートのようなリッチで濃密な味わい。高級感があります。
最後は2020年のソウル・オブ・ア・ライオン(2万8000円)。前述のフラッグシップのカベルネです。2020年は10周年記念で例年とラベルの色が異なっています。
リッチで複雑なカベルネ・ソーヴィニヨンで、エレガントさと少し甘やかさもあります。いいワインですが、個人的な意見としては例年のソウル・オブ・ア・ライオンと比べるとちょっと魅力が弱い気がします。

以上、3回にわけて報告しましたが、個人的には特に最初に紹介したSLOコーストの白ワイン専業「カドレ」が面白かったです。
Date: 2024/0510 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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大手ワイン会社のコンステレーション・ブランズが、サンタ・リタ・ヒルズの人気ワイナリー「シー・スモーク(Sea Smoke)」を買収しました。
シー・スモーク

シー・スモークはハンドヘルドのポーカーゲーム機などで財をなしたボブ・デイビッズが1998年に創設したワイナリー。

2003年のピノ・ノワール「Ten」がWine Advocate誌で96点を取り、メルヴィルやブリュワー・クリフトンなどと並んで、サンタ・リタ・ヒルズのピノ・ノワールのトップクラスに躍り出ました。映画「Sideways」によるサンタ・バーバラとピノ・ノワールの人気にも乗り、入手困難銘柄になりました。ワインメーカーのクリス・キュランは2003年にワイン・スペクテーターの記事で単独で取り上げられ、2005年にはSFクロニクルのワインメーカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、シー・スモークの顔として人気が高まりました。
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2008年にクリス・キュランがやめてから、人気は沈静化した気がします。当時のシー・スモークは濃厚なスタイルでしたが、2010年代にはニュー・カリフォルニアのムーブメントで濃厚スタイルのピノが時代遅れな印象になっていったこともあり、話題の上ることも減りました。ちなみにクリス・キュランはその後、夫とダルフォンソ・キュランというワイナリーをやっています。

とはいえ、ヴィナスで2018年のピノ・ノワール「テン」が95点を取るなど、近年のワインも再び高評価を得ています。

コンステレーションは256エーカーの畑やワイナリー、在庫やブランドなどを購入しました。買収価格は公開されていません。

コンステレーションは近年はプレミアム指向を強めており、ナパのシュレーダー・セラーズなどのウルトラプレミアムなワイナリーも傘下に収めています。これまで、サンタ・バーバラは比較的大手ワイナリーの進出が少ない感じがありましたが、それも変わっていきそうです。
Date: 2024/0509 Category: 業界ニュース
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ワイン蔵Tokyoが新たに輸入を始めたワイナリーの紹介を続けます(インポーター名はナニワ商会)。

エーカー・ワインズ(Acre Wines)は創設者のデイブ・ベッカーが2002年に1エーカーのブドウ畑を作ったことで始まりました。名前の由来もこの1エーカーの畑です。

現在のオーナーのヘンリー夫妻は2017年にワイナリーを購入、ベテランワインメーカーのリチャード・ブルーノとナパヴァレーの様々な地域のブドウからワインを作っています。ワインはどれも数百ケースと少量生産です。


ボトルにエッチングされたブドウの葉の柄が印章的です。

右のソーヴィニヨン・ブラン2022(希望小売価格6250円)から紹介します。
ヨントヴィルのモーゲン・リー(Morgaen Lee)というヴァレー・フロアの畑のブドウを使っています。この畑は有機栽培の認証を得ています。ソーヴィニヨン・ブラン95%にセミヨン5%。ステンレスタンクで発酵、6カ月シュールリーで熟成しています。

とてもコクのあるソーヴィニヨン・ブラン。マイヤーレモン、熟したライム、ハーブやスパイスの風味。酸がきれいに広がります。今飲んでも美味しいですが、数年熟成させるとさらに魅力が広がりそうなワインです。

次はメルロー2019(希望小売価格8400円)。
カリストガのカフェラータ(Cafferata)というサスティナブル農法の畑のメルローを100%使っています。フレンチオークの新樽70%、旧樽30%で20カ月熟成。
ソフトでほんのり甘やかなメルローです。甘草やシナモンを使ったフルーツケーキのような味わい。美味しいです。

次はジンファンデル2019(希望小売価格6850円)。
オークヴィルのリンカーン・クリーク(Lincoln Creek)という畑のジンファンデルを100%使っています。ヨントヴィル・ヒルズと呼ばれるヨントヴィルとオークヴィルの間にある丘の北側で、ト・カロン南端のオーパス・ワンのブロックからほど近いところにある畑です。
ジューシーでフルボディ、甘やかさのあるジンファンデル。スパイスやタンニンがストラクチャーを与えています。

最後はカベルネ・ソーヴィニヨン2019(希望小売価格12600円)。
ヨントヴィルのミル・レース(Mill Race)という畑のカベルネ・ソーヴィニヨンを100%使っています。畑は上述のヨントヴィル・ヒルズの東側。ナパ・リヴァーの脇にあるヴァレーフロアの畑で、ヨントヴィルの名前の元になっているジョージ・ヨントが180年前に作った畑の一つだそうです。有機栽培の認証を得ています。「セガン・モロー」という有名樽メーカーのフレンチオークの新樽70%、旧樽30%で3年近く熟成してからボトル詰めしています。
ナパのカベルネ・ソーヴィニヨンとしては比較的青さを感じます。カシスにセージ、杉。複雑でエレガントなカベルネ・ソーヴィニヨンです。ボルドースタイルのカベルネ・ソーヴィニヨンが好きな方にお薦めです。

ワインは
エーカー / ACRE【新入荷】
から購入できます。
Date: 2024/0508 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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東京・新橋にあるカリフォルニアワイン専門のワインバー「ワイン蔵Tokyo」が新たに輸入を始めたワインを試飲する機会をいただきました(インポーター名はナニワ商会)。ワイナリーごとに紹介します。
カドレ

カドレ・ワインズ(Cadre Wines)はセントラル・コーストのエドナ・ヴァレーにあるワイナリー。2022年に策定されたSLOコースト(サン・ルイス・オビスポ・コースト、スロー・コースト)にも含まれています。
SLO Coast
地図を見てわかるように、このSLOコーストは太平洋に直接面していて、海からの距離もごくわずかです。カリフォルニアで一番冷涼なAVAと言われています。

冷涼さと、やや緯度が低いことが相まって、年間を通して大きな気温変化がなく、雨も少ない地域となっています。ブドウが芽吹くのは2月頃。収穫は10月に入ってからと、極めて長い生育期間を持ちます。

カドレは2000年代半ばに設立されましたが、オーナーのジョンの祖父は1973年にエドナ・ヴァレーで最初のブドウ畑を作った人。そのパラゴン・ヴィンヤードがカドレのワインの中核をなします。作っているワインは白のみ。アルバリーニョ、グリューナー・ヴェルトリーナー、ソーヴィニヨン・ブランとそれらのブレンドのみと、冷涼系白に特化しています。この地域の中核品種であるシャルドネもピノ・ノワールも全く作っていない潔さが素晴らしいです。ワインはどれもステンレスのタンクで発酵・熟成しています。


4種類のワインを試飲しました。ラベルもおしゃれです。ワインの味わいから連想されるものが描かれています。

アルバリーニョ100%の「カドレ シー・クイーン(Cadre Sea Queen)」(希望小売価格5600円、以下同)は名前の通りの「海のワイン」。ちょっと塩っぽさを感じる味わいは、海をそのまま凝縮したかのよう。かっちりした酸があり、柑橘類や花の香りが強く感じられます。アフターにオレンジピールのようなちょっとした苦みもあります。フレッシュでとても美味しい。

ソーヴィニヨン・ブラン95%にグリューナー・ヴェルトリーナー5%の「カドレ ストーン・ブラッサム(Cadre Stone Blossom)」は、ブドウの大部分がパラゴンで1973年に植樹された一番古いブロックからのものです。冷涼感と同時に凝縮された果実の風味があるワイン。さわやかな草の香り、グレープフルーツやハーブ、パッションフルーツにちょっとトロピカルな果実味さえ感じられます。「シー・クイーン」がアルコール度数13.2%なのに対してこちらは14.2%。スケールの大きなソーヴィニヨン・ブランです。

グリューナー・ヴェルトリーナー100%の「カドレ バンド・オブ・ストーンズ(Cadre Band of Stones)」はパラゴンのほかにジャック・ランチ・ヴィンヤードという畑のグリューナーも使っています。白コショウの風味に柑橘、酸。スパイシーさが特徴です。

「カドレ ビューティフル・ストレンジャー(Cadre Beautifule Stranger)」はグリューナー・ヴェルトリーナー50%にアルバリーニョ42%、ソーヴィニヨン・ブラン8%をブレンドしたワイン。4つのワインの中では一番酸が低く、豊かな果実味とこくのある味わい、後味にグリップを感じさせる苦みがあります。

四つのワインどれもそれぞれ違っていて魅力的なワイン。冷涼系白ワインを求めている人に飲んでほしいワインです。

カドレ / CADRE【新入荷】
から購入可能です。
Date: 2024/0502 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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メリーヴェール(Merryvale)をご存じでしょうか。古いファンだったら、「あの金色のラベルの」とかって覚えているかもしれません。2000年頃はナパでも高品質なワインを作っているワイナリーの一つとしてそこそこ知られているような気がします。その後しばらく輸入が絶えていましたが3年前から輸入が再開されています。ただ残念ながらまだ知名度はそこまで戻っていないかもしれません。


今回、ワインメーカーのジェフ・クロフォード氏が来日し、プロモーションを行いました。久しぶりにラインアップの様々なワインを試飲し、よりエレガントなスタイルになっていることにも気づきました。セミナーの内容を中心に紹介します。

ロバート・モンダヴィやハーラン・エステートは、多くの人がご存じでしょう。どちらもナパを代表するワイナリーですが、二つともメリーヴェールに深い縁があります。メリーヴェールのワイナリーはセント・ヘレナの一等地にありますが、禁酒法が明けてからその地にワイナリーを構えたのがサニー・セント・ヘレナというワイナリー。このワイナリーこそがモンダヴィ家が初めてナパに持ったワイナリーなのです。ロバート・モンダヴィの父親のチェザーレはイタリアから米国に移住し、ミネソタの鉱山近くで食品やワインなどを売る店をやっていました。それが禁酒法時代に、自家醸造用のブドウを調達するためにカリフォルニアのローダイに移り住み、ロバートが大学を卒業してからワイン業界に入るために手に入れたのがサニー・セント・ヘレナです。その後、チャールズ・クリュッグを買収、そこからロバートが家を追い出されて作ったのがロバート・モンダヴィですが、それは全く別の話なのでここでは割愛します。

そのサニー・セント・ヘレナのワイナリーを買い取ってメリーヴェールというワイナリーを立ち上げたのがハーラン・エステート創設者のビル・ハーランでした。1983年のことです。メリーヴェールはハーランを立ち上げるためのワインやブドウの研究といった面があり、ナパの様々な畑からブドウを買い付けてワインを作っていました。その経験がハーランに生き、またそのときにブドウを買っていた畑がボンドの礎になっています。ちなみにハーランのワインメーカーとして長年活躍したボブ・リーヴィーも1988年にメリーヴェールに参画しています。

1994にスイス出身ジャック・シュラッターがパートナーに加わり、その後単独所有となって現在に至ります。現在は娘のレネと夫のローレンスの夫妻がオーナーになっています。欧州の出身ということで、ワインの味わいもナパの中ではエレガントなタイプになります。

ジェフ・クロフォードは2007年に入社、今年「統括ワインメーカー」としてメリーヴェール傘下のブランド全体を含めてワイン造りに責任を持っています。

メリーヴェールは現在4つのブランドからなります。フラッグシップがプロファイル・コレクション(Profile Collection)。以前はメリーヴェールの中のフラッグシップワインという位置づけで金色や銀色のラベルで知られていましたが、2010年以降は独立したブランドになっています。また、ラベルもシックな黒系に。下の写真のように、オーナー夫妻の横顔がシルエットになっています。



ビル・ハーランがオーナーだったことには現在ボンドで使っている畑をプロファイルに使用していたこともありましたが、今はエステート化を進めており、ボルドー系ブレンドのプロファイルはセント・ヘレナの東斜面にあるプロファイル・エステート・ヴィンヤード、シャルドネのシルエットはカーネロスのスタンレー・ランチ・ヴィンヤードの中の専用のブロックのブドウを使っています。

メインのブランドがメリーヴェール・ヴィンヤーズ(Merryvale Vineyards)。ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、ピノ・ノワール、メルロー、カベルネ・ソーヴィニョン、デザートワイン(フォーティファイド)を作っています。これまでは契約農家のブドウがメインで、上記プロファイルの畑のブドウも使っていましたが、2019年にはマウント・ヴィーダーに二つの畑、クームズヴィルにも自社畑を購入し、自社畑中心になりつつあります。

三つめがフォワード・キッド(Forward Kidd)。ナパのブドウを使ったレッドブレンドです。畑やブレンドはヴィンテージによって異なります。ナパの土壌のバリエーションに敬意を払い、土壌タイプにちなんで付けられたワインだそうです。

四つ目はスターモント。一番リーズナブルな価格帯でエントリー・レベルを担います。買いブドウを使ったワインでノース・コーストやセントラル・コーストの畑を使っています。



試飲の最初のワインはメリーヴェールのソーヴィニヨン・ブラン2022。ナパの北東部にあるポープ・ヴァレーのブドウを使っています。ハウエル・マウンテンの東側で日中は暑くなりますが夜は冷え込みます。醸造にはコンクリート・エッグと葉巻のような横長の形をしたシガーバレル、ステンレススティールタンクの三つを使っています。コンクリートはミネラリティやフローラルさ、シガーバレルは柔らかな口当たり、ステンレススチールは酸味に貢献しているそうです。最近、ソーヴィニヨン・ブランではこのように様々な熟成容器を使う話をよく聞きます。
レモンのような鮮烈な酸とミネラル感。かりん、すいかずら、濡れた石などを感じました。

次はプロファイル・コレクションのシャルドネ「シルエット」2020。
見るからに色濃く黄金色に輝くワインです。はちみつやカスタード、ヘーゼルナッツ、マンゴーなど。熟度の高さと熟成感が特徴でした。

3本目はメリーヴェールのピノ・ノワール2018。クローン15というピノ・ノワールのクローンとSO4という台木の組み合わせがユニークなのだそうです(Block 2A)。果実の成熟と酸の両立を目指しています。スタンレー・ランチ・ヴィンヤードのほか、ブラウン・ランチ、リー・ヴィンヤード、RMSといったカーネロスの畑を使っています。

新樽率30%は最近のワインの中では高いほうですが樽がオーバーにならないことに気を遣っているとのことで、実際飲んでみるとそんなに樽が強い印象はありませんでした。6年経っているので多少熟成感も出始めていて、赤果実や黒果実に加え、紅茶や土っぽいニュアンスもあります。とはいえまだまだ果実味も豊かです。15%だけ除梗なしになっています。

4本目はメリーヴェールのカベルネ・ソーヴィニョン2017。アトラスピークのステージコーチのブドウなどを使っています。しっかり熟してタンニンもあるが酸もあり、バランス良く仕上げるという信条だそうです。
上品でややタンニン強く、甘やかな果実味、カシス、ブラックベリーを感じます。酸のバランスもいい

5本目はプロファイルの2018年。カベルネ・ソーヴィニョン82%にカベルネ・フランが17%、プティ・ヴェルド1%という構成です。よいカベルネ・ソーヴィニョンに感じることが多い黒鉛や、タンニン強い、酸M+、余韻長い、濃い果実、スパイスなどを感じます。ワイナリーでは冷やした状態で一回漬け込んだあと、主発酵、さらに発酵後にも果皮などとワインを接触した状態を続けます。80%新樽。

プロファイルの畑はボンドのQuellaの隣。様々な向きに斜面があり一つの畑の中にもさまざまなテロワールがあるそうです。

もう一つ特別に2010年のプロファイルをいただきました。2010年は100%エステートになった最初の年です。むぎわら、甘やかさ強い、タンニンもまだしっかりしています。

特にプロファイルとシルエットのすばらしさを感じました。

セミナー後はメリーヴェールやスターモントのほかのワインも試飲できました。スターモントのシャルドネやロゼ、メリーヴェールのメルローあたりがとても良かったです。

ところで、メリーヴェールといえばラベルの上部の切り欠きが特徴的です。これの意味を聞いてみたところ、メリーヴェールの「M」をかたどったというのが一つの意味。もう一つの意味は切り欠きの英語がnotchで、ラベルのトップにnotchがあるから「top notch」=一流ということだそうです。

Date: 2024/0501 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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X(旧Twitter)で旧知の間柄の安ワイン道場師範がゴールデンウイークに勝沼のワイナリー巡りはどうでしょうかと声をかけていたので、参加してきました。せっかくなのでと、昨年アカデミー・デュ・ヴァンで教えた生徒さんたちにも声掛けしてみたところ、5人参加いただき、総勢14名というなかなかの人数のツアーです。とはいえ、ゆるゆるの集まりですから、途中から参加も途中でドロップアウトもありで、最後のお疲れ様会だけは予約するので守りましょうという、周りから見たらちょっと不思議な感じの集団だったかもしれません。

ツアーの詳しいことは安ワイン道場師範がアップしてくれるはずなので、私は手抜きして感想だけを書いていきます。

我が家からだと長津田駅を6:42の電車(横浜線)に乗れば、八王子・高尾と鈍行で乗り継いで勝沼ぶどう郷駅に8:55着。特急使っても10分くらいしか変わらないので、リーズナブルに各駅で行きました。

今日のツアーはすべて徒歩。結果的には2万歩ほど歩いています。

最初のワイナリーはシャトー勝沼。ここは大きなワイナリーで観光バスのツアーにも入っています。入るとプラカップでいくつかのワインが試飲できます。ボトルを見ても品種が書いておらず、ほの甘のワインが中心で、品質については言わずもがな。500円で2杯飲める有料試飲も試しましたが、どちらも明らかに酸化していて、ちょっとどうなのかなあという感じ。まじめにワインをテイスティングしにくる人は珍しいのかもしれません。

ここはおみやげ物も充実していて観光バスで来たお客さんもそちらが中心のもよう。おみやげはどこかで買えるかと楽観していたのですが、実はほかでは全く買えなかったので、実は貴重な店だったようです。

次の目的地は原茂ワイン。1924年に創設され、今年で丸100年という老舗ワイナリーです。

建物の外には1949年に植えられたという「シトロンネル」というブドウの樹もあります。



ここの試飲はコイン(100円)を入れてボタンを押すとワインがサーブされるというもの。勝沼に来たのは2016年以来ですが、前回はまだこういうスタイルのものは見なかったような気がします。行ったワイナリーの違いもあるでしょうが、今回はシャトー勝沼以外はプラカップ試飲もなく、試飲のレベルはだいぶ上がっている印象がありました。

ただ、ここも基本的には勝手に試飲してくださいというスタイルなので、ワインの説明などは特にありません。ワイナリーツアーはエデュケーションという面も重要だと思っているので、ここはちょっと残念だったところ。

次のワイナリーはマルサン葡萄酒。こちらは若尾果樹園という観光のブドウ園も経営しているそうです。


オーナーの若尾亮さんが自らワインをサーブして説明してくださいます。甲州は最近は早摘みするところが多くなっているが、ここは遅めに収穫して敢えて皮の苦みとかも出しているなどの話を伺いました。やっぱりどうしてそう作っているのかなどの話が聞けると楽しいです。ここはなんと試飲も無料。スタンダードな甲州を購入しました。

あと、面白かったのは観光用の生食のブドウで余ったものを使って作るワイン。その性質上、年によって比率が異なるそうですが、17種類ものブドウを使っています。

今回行った中ではここが個人的には一番良かったです。

この後はランチ。慶千庵というほうとうの店に行きます。とはいえ大人数で入れるか心配だったのですが、ちょうど12人入れる部屋が空いていて(ランチ時は12人でした)ラッキーでした。肉ほうとう、自家製の味噌によるスープや、味変用の自家製柚子胡椒などが美味しかったです。ワインもいただきました。

ランチ後はシャンモリ(盛田甲州ワイナリー)へ。ここは6年前にも来たことがあります。そのときは無料のプラカップ試飲だった気がしますが、今回は有料でグラスの試飲にグレードアップしていました。

カウンターで4枚550円のチケットを買ってグラスを渡してもらい、別の試飲スペースに行ってチケットを渡して試飲するというスタイル。最後は元のところにグラスを戻しにいくのですが、この形だと、例えば追加で試飲したいと思っても、一回カウンターのある建物に戻らないといけないのがちょっと面倒。試飲して美味しかったワインを買いたいというときにも、一回場所の移動が入ることでちょっと勢いがそがれてしまう感じがしてもったいないと思いました。ここもワインの説明はなし。

シャンモリからはすぐ近くのシャトー・メルシャンに向かいます。

さすがに大手だけあって90分3000円のツアーもあり、それは満席になっていました。ちなみに今回行った中でツアーがあるのはここだけのようでした。テイスティングのメニューも様々用意されていましたが、今回は安ワイン道場師範のおごりで、庭でスパークリングワインを皆でいただきました。師範ありがとうございました!

ここは無料で見られる資料館もあり、棚栽培が主流の勝沼では珍しい垣作りの畑もあります。庭も広々としていて良かったです。

メルシャンの次はワイナリーの目的地としては最後のグレイスワイン(中央葡萄酒)に。


ここは勝沼、というよりも日本を代表するワイナリーの一つといっていいでしょう。テイスティングメニューもいろいろ魅力的なものがありましたが、私は1800円で畑違いの甲州が3種類試飲できるセットにしました。


ここは樽は使わず、シュールリーもしないすっきりタイプの甲州。酸がきれいに伸びてくるのがいいですね。さすがの作り手と感じました。ただテロワールの違いはなかなか難しい。比べて飲めば違いがあるのは分かりますが、多分一通り試飲した後で、一つ飲んで当てろと言われても外しそうな気がします。

ほかの方が試飲していたキュベ三澤(メルロー中心のブレンド)も一口おすそ分けいただきました。ピラジン(ピーマン香のもと)を感じるのは、この日試飲したメルローに共通していますが、その中では果実の熟度も高く、単にタニックなのではないストラクチャーもあって、レベルの高さを感じました。

ここはスタッフもワインの知識がちゃんとあって、質問すると答えていただきました。そういった面でもやはり優れたワイナリーだと思います。場所も広いのでフリーテイスティングだけでなく、スクール形式のテイスティングとかもしたら面白いのにと思いました。

グレイスの後は、山梨のワインを買うならここ、という新田商店に向かいます。

歩いている途中に「ハーブ庭園」というところを発見。入場無料ということで、ちょっとツアーから抜けて、見に行きました。

ローズマリーやミント、セージなどワインのコメントにもよく使われるハーブももちろんありますし、初めて香りをかいだものもありました。

これはカレーのにおいがするハーブ。

ここは面白いです。もっと時間かけて寄りたかったくらいでした。


新田商店ではワインの購入はもちろん、試飲もできます。1000円でコイン3つもらってサーバーから注ぐスタイル。ワインはかなりレアなものもあり、試飲だけでも良かったです。特にダイヤモンド酒造のPetit diXという上位のキュベは、これまで飲んだことのあるマスカット・ベーリーAとは一線を画すレベル。美味しかったです。ワインは何か買おうか迷っている間に時間切れ。

新田商店からお疲れ様会の「パパソロッテ」までは徒歩で30分以上、最後はかなりの坂道を上りました。

パパソロッテは勝沼ぶどう郷駅近くでは唯一といっていい本格的なレストラン。食事ができる店の少なさもどうなのと思いますが、ゴールデンウイーク中なのに、この日それほどほかの観光客を見かけませんでした。どうしてなのかなあ。観光バスで来る人くらいなのでしょうか。ワイナリーツアー自体が知られていないのでしょうか。もっともっと発展する余地はあるような気がします。

話がずれましたが、パパソロッテは素晴らしいレストランでした。あらかじめコースを頼んでいたのですが、飲むワインを決めたら、料理の仕上げをワインに合わせて変えてくれるのです。

例えばこればメインのチキンのソテーですが、これにボルドータイプのワインを合わせるため、赤ワインを煮詰めたソースを使っています。料理単体でも美味しいのですが、ワインと一緒だとまさにマリアージュでどちらの美味しさも増します。美味しすぎてあっという間に食べてしまうのだけが難点。



ワインもかなりレアなものを揃えています。これは地元で生産者と直接つながっているからできること。しかもワインの値段もリーズナブルです。

食事が終わって、8時32分の電車に乗り、10時半ころには地元の駅に戻ってきました。ちゃんとディナーを食べてもこの時間に帰れるのもありがたい。私も初めて電車で行きましたが、運転がないので試飲も自由にできていいですね(前回は石和温泉泊で、勝沼では妻に運転してもらいました)。

ちょっとネガティブなことも書きましたが、よりワインツーリズムが盛んになってほしいと思ってあえて書いています。もっと多くの人にワイナリーに行ってほしいものです。
Date: 2024/0428 Category: 業界ニュース
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ナパのカーネロスにあるトルシャード(Truchard)のオーナーであるアンソニー・トルシャードが来日し、ディナーに参加してきました。トルシャードはちょうど1年前にナパに行ったときに最初に訪問したワイナリーであり、アンソニーとも1年ぶりの再会です。


ディナーの場所は恵比寿の「ロウリーズ ザ・プライムリブ」です。この日のために、普段は使わないタケノコなどの食材もわざわざ用意して、トルシャードのワインに合わせた料理を提供いただきました。

トルシャードの概要を説明します。

トルシャード家は19世紀末にフランスから米国に移住してきました。フランスではワインを作っていたようですが、フィロキセラ禍をきっかけに米国に来たようです。米国でもワイン造りを志しましたが、最初に移住した先はテキサスで、気温も湿度も高く、ブドウ栽培には失敗して農業をやっていました。

アンソニーの父のトニーは陸軍の軍医としてカリフォルニアでも働き、家族の伝統であるブドウ造りをまたカリフォルニアで始めたいと移住してきました。当時はまだほとんど畑がなかった冷涼なカーネロスに地所を買い、ブドウ造りを始めました。今ではナパの家族経営のワイナリーとしてかなり大きな260エーカーの畑をほじしています。

トルシャードは栽培専門として始まり、今でも8割のブドウは他のワイナリーに売却しています。シェーファーやダックホーン、ファー・ニエンテと言った有名ワイナリーも顧客に入っています。「トルシャードのワインだと思っていなくてもトルシャードのブドウを使ったワインを飲んでいる」と思うよとアンソニー。

トルシャードは1988年にワイナリーを始めましたが、今でもブドウの8割は他のワイナリーに売っています。また自社のワインはすべてカーネロスの自社畑のブドウを使っている「エステート」のワイナリーです。

実はナパでは北にいくほど降水量が多く、カーネロスは一番雨が少ないところ。かつてはブドウ栽培が無理ではないかと思われていたほどでした。トルシャードではため池を作って冬場の雨を溜めることで、栽培に必要な水を確保しています。




最初に飲んだのはソーヴィニヨン・ブラン2021。これは「シェパード」というブランド名になっています。カーネロスはスペイン語の「羊」であり、元々牧羊の盛んなところ。そこで「羊飼い」を意味するシェパードというブランド名を使っているそうです。ソーヴィニヨン・ブランは父親のトニーの好きなワイン。トニーは今は85歳になったそうですが、今も畑に出て働いており、夕方家でソーヴィニヨン・ブランを飲むのを楽しみにしているそうです。夕方5時くらいになると近所の人も来て一緒にソーヴィニヨン・ブランを飲んでいるとか。

ライムやマイヤーレモンなど柔らかな柑橘系の香り。ほどよい酸味にミッドパレットのボリューム感もありナパらしさのあるソーヴィニヨン・ブランです。毎日飲みたい気持ちも分かります。

ちなみにアンソニーが好きなワインはルーサンヌ。トルシャードのルーサンヌは私もすごく好きですが、生産量が少なく日本にもわずかしか入っていないため、今回のディナーには登場しませんでした。


オイスターの香草焼きと、オイスターと高知産のトマトジュース。トマトジュースの方が特にソーヴィニヨン・ブランに合いました。香草焼きはパン粉の香ばしさと火を入れたオイスターのジューシー感が次のシャルドネとベストマッチ。

2番目のワインはシャルドネ2022。トルシャードの看板的なワインでもあります。昨年訪問したときに、母親のジョアンが「トルシャードはTrue Chard。本物のシャルドネなのです」とジョークを言っていたのを思い出しました。カリフォルニアらしいリッチさと冷涼な酸のバランスを大事にしているといいます。樽発酵樽熟成で、新樽を3割くらい使っています。マロラクティック発酵も控えめ。
柑橘に白桃の柔らかさが加わった味わい。ほどよい樽感とミネラル感もあります。

トルシャードのシャルドネは私のナパの講座でも使いましたが、ほんとよくできていて美味しいシャルドネです。


料理はカツオのカルパッチョ。カツオも普段はロウリーズで提供していない素材です。

三つ目のワインはピノ・ノワール2020。2020年は山火事の煙の影響で、ナパの多くのワイナリーが赤ワインを諦めましたが、カーネロスは山火事の地域から離れていて比較的影響が少なく、火事の時期もピノ・ノワールの収穫よりは遅かったので、問題なく作られています。

トルシャードのピノ・ノワールはやわらかな味わい。やや濃いめのフルーツで、赤系もイチゴというよりはザクロの味わい。黒系の果実もあります。優しい酸で寄り添ってくれるピノ・ノワール。

次の料理は鴨のローストと季節の野菜のスープ。ビーフコンソメ。写真を撮り忘れていました。次のジンファンデルに合わせた料理とのことでしたが、鴨ですからピノにももちろん合います。

四つ目のワインはジンファンデル2020。涼しいカーネロスでジンファンデルを作っているという意外性もトルシャードの面白いところです。そしてこのジンファンデルが美味しいのです。
2020年は前述のように山火事の問題があり、ジンファンデルの収穫は火事よりも遅く、難しい判断を強いられました。火事を除いては比較的温暖な年であり、カーネロスのジンファンデルとしては結果的にはしっかりしたいいワインになりました。
ジンファンデルらしい甘やかさもあり、赤果実とシナモンなどのスパイスの風味が広がります。冷涼地区だけに酸もほどよくありバランスよく美味しいジンファンデルです。



ロウリーズに来たらプライムリブを食べないわけにはいきません。今回は付け合わせに春の野菜やキノコが入っているのがユニークです。

ワインはカベルネ・ソーヴィニョン2020。冷涼なカーネロスでカベルネ・ソーヴィニヨンを育てるのはチャレンジングで、比較的気温の高い、南向き斜面のブロックに植えています。カベルネ・ソーヴィニヨンのほか、プティ・ヴェルド、カベルネ・フラン、マルベックをブレンドしてストラクチャーを出しています。冷涼カベルネだけあって、少し青さもあります。多くの人がイメージするナパのカベルネとは一線を画した涼しさのあるカベルネ・ソーヴィニヨンです。


最後にもう一つスペシャルなカベルネ・ソーヴィニヨンです。Cave Blockという特別なブロックのカベルネ・ソーヴィニヨン2021。トルシャードのワイナリーのケーヴの上にあるブロックです。通常のカベルネ・ソーヴィニョンよりも黒果実の風味が強く、ミントやハーブのニュアンスあります。きれいでエレガント。これもナパっぽくはないですが、非常に素晴らしいエレガント系カベルネです。今回のプライムリブの付け合わせの春野菜の天ぷらなどといい相性でした。これは日本食にもよく合いそう。



ナパのワインというと果実味が爆発するような味わいを想像する人が多いと思います。トルシャードはもちろん果実味もありますが、どのワインもエレガントさもあり、一方で繊細すぎるわけでもなく優しい味わいのワインを作っています。日本食にも合わせやすいので、ぜひ試してほしいワインです。
Date: 2024/0418 Category: 業界ニュース
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TTB(酒類・たばこ税貿易管理局)は2024年3月15日、カリフォルニアの新たなAVAとしてコンプチ(Comptche)を承認しました。
Comptche
地図にコンプチと、周辺のいくつかのAVAを示しました。コンプチはアンダーソン・ヴァレーよりさらに北に行ったところにあります。同名の町の周辺になります。

このAVAについては非常にユニークな特徴があります。地図に示すようにノース・コーストAVAの内部にありますが、今回のTTBの認定ではノース・コーストのサブAVAには含まれないことになっています。もちろん物理的にはノース・コーストAVAに囲まれているのですが、ここのAVA内のブドウを使ってワインを作った場合、コンプチとは名乗れてもノース・コーストとは名乗れません。ここだけノース・コーストに穴が開いているわけで、えくぼのようなものでしょう。

除外された理由は気候や土壌が特殊だから。ここは標高187~400フィートですが、周りが山ばかりであり盆地状になっています。
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そのため、夜間に冷たい空気がこの地域に立ち込め、特異的に冷涼になっています。ブドウの栽培においては限界に近い涼しさであり、現状ここではピノ・ノワールしか作られていません。

土壌については大きく2種類に分かれており、丘のところはBearwallow–Wolfeyと呼ばれる砂岩で、栄養の乏しく水はけがいいのが特徴です。もう一つはPerrygulch Loamと呼ばれ、盆地部分に多くあります。こちらは水はけ悪くリッチな土壌です。この地域の畑は標高が低いところにありますから、後者の土壌が中心になると思います。

現状、このAVA内にはワイナリーはなく、畑がいくつかあります。調べた範囲ではアントヒル・ファームズが使っている「コンプチ・リッジ」という畑がここに含まれるようです。あとはフィリップス・ヒルのOppenlanderという畑があるようですが、ここのブドウを使ったワインが日本に入ってきているのか定かではありません。

追記:デプト・プランニングでバクスターのOppenlander Vineyardピノ・ノワール2009年の在庫があるとのことです。(サイトはこちら



Date: 2024/0417 Category: 業界ニュース
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先日、廃業ワイナリーの20年熟成カベルネが激安という記事で、コン・クリークのワインを取り上げました。

そのときにコン・クリークの売却について調べたのですが、詳しいことがわからず、ただ「廃業」としたのですが、実際には畑やワイナリーなどの設備については2023年にアンティノリに売却していました。その結果、中身のないブランド名としてコン・クリークが残ったわけですが、そのブランド名を「サード・リーフ・ワインズ」に売却したことが判明しました。

サード・リーフ・ワインズは、サード・リーフ・パートナーズという投資会社の子会社です。サード・リーフ・パートナーズはJohn Micek、Aaron D. Faust、Alexander G. Pagonの3人が設立した会社でメドウッド・リゾートなどにも出資しているようです。

サード・リーフ・ワインズが所有しているワイナリーは、アルゼンチンのパタゴニアにあるAlto Limay、ニューヨークにあるEmpire Estate、フランスのLaurent Miquel、南アフリカのMulderbosch、カリフォルニアのStringer Cellars、Turning Tideがあります。

今回の売却はブランドだけですから、今後どのようにコン・クリークを続けていくのかわかりませんが、少なくともナパ・ヴァレーの優秀なワイナリーとしてのコン・クリークはなくなってしまいました。

柳屋です。


トスカニーです。

Date: 2024/0416 Category: 業界ニュース
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先週のことですが、日本で初めて開催されたProwine(本国ドイツではProwein)に行ってきました。米国産ワインの出展はほとんどなく、出ていたところも旧知のインポーターだったので、そちらの収穫はほとんどありませんでしたが、普段飲まないワインをいろいろ試飲してきました。

最初に行ったブースはフランスのシャトーデスクラン。フランスのプロヴァンスを代表するロゼの生産者です。前日までにProwineに行った知り合いのほとんどがここの2万円するロゼの写真を上げていたので興味を持ったのでした。ブースに行くと先客が一人いらっしゃったのですが、実はXで以前から知り合いだったクヴェヴリ・エミさんでした。

というわけで2000円台から2万円まで5種類のロゼを試飲しました。2000円台、3000円台、4000円台と明らかにおいしくなっていきますが、7000円台になるとミネラル感やエレガントさなど、良くなるベクトルの方向が少し変わる感じがします。2万円のものも同様。比べて飲めば確かに違いはあるし、良くなっているのもわかりますが、単独で試飲して2万円のワインを2万円と評価できる自信はないです。

ロゼの後、どこに行こうかと思案したところ、エミさんが「PIWI品種を飲んでみたい」とのこと。PIWI(ピーヴィ)とはドイツ語のPilzwiderstandsfähige Rebsortenの略で、カビ類に耐性を持つブドウ品種です。ワイン用のブドウであるヴィティス・ヴィニフェラとアメリカ系のヴィティス・ラブルスカなどのブドウ品種を掛け合わせて作る人工的な品種です。ラブルスカ系の品種は「フォクシー・フレーバー」と呼ばれる独特の臭みがありますが、それにさらに何重にもヴィティス・ヴィニフェラを掛け合わせていくことで、現在作られているものは、ヴィティス・ヴィニフェラに属するということです。

私もNagiさんの動画などでPIWIには興味を持っていたのでドイツのコーナーに行って、PIWI品種がないか聞いてみました。そこで見つけたのがこのワイン。

カベルネ・フランならぬカベルネ・ブラン(Cabernet Blanc)です。カベルネ・ソーヴィニヨンとREGENTの交配で作られたそうです。
ソーヴィニヨン・ブランに似ていると言われたのですが、確かにフレーバーは少し共通点を感じるものの、酸があまりありません。嫌な風味はなかったですが、積極的に選ぶかと言われると難しいところがあります。その後、同じワイナリーのソーヴィニヨン・ブランを試飲しましたが、やはりそちらに軍配を上げます。


このワイナリーでは石灰岩土壌と花崗岩土壌のリースリングの飲み比べもでき、なかなか面白かったです。

セミナーに出るエミさんとはここで別れ、この後は知り合いのミッツィーさんが通訳をしていたスペインのブースに行ったり、モルドヴァワインのブースに行ったり、ヴィーニョ・ヴェルデのところでも知り合いにあったりなど……

面白いものはいろいろありましたが、カリフォルニア以外だと記憶になかなかとどまらないのが難点です。
Date: 2024/0415 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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大リーグ、ロサンゼルス・ドジャーズの大谷翔平選手が、インスタグラムに愛犬デコピンがワインボトルをかじっている写真をアップしていました。

よく見るとかじっているのはガラスのボトルではなく、ワインボトルの形をしたぬいぐるみでした。

デコピンの英語の名前はDecoy。おそらくそれでダックホーンからプレゼントされたのではと思っていますがどうなんでしょう。


この写真を受けて、ワインショップにはデコイのワインの注文が相次ぎ、品切れになったところもあるようです。

インポーターの中川ワインに聞いてみたところ、在庫はまだあるので大丈夫とのこと。これを期に、デコイの人気が上がるといいですね。カリフォルニアの中でもリーズナブルな価格で高品質のワインを提供しているワイナリーです。ボトルのぬいぐるみは、現状は日本にはないそうです。リクエストは出しているそうなので、将来入荷があるかもしれません。

ちなみに、後ろに写っている本当のワインはこれですね。デコイの中でも高品質なリミテッドのワインです。



で、デコピンがかじっているのはこれ。デコイを代表するワインです。


Date: 2024/0415 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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オレゴンのワイン業界団体「オレゴン・ワイン・ボード」が2022年のオレゴンワインの経済効果を発表しました。2019年のデータと比較すると、12.8%増の81憶ドルとなっています。税収や雇用への効果も同様に1割以上多くなっていますが、ツーリズムだけは15.1%減。コロナによる減少から立ち直っていないことがうかがえます。

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このデータをカリフォルニアと比べると、さすがに全米の8割の生産量を占めるカリフォルニアの方が、だいぶ大きくなっています。経済効果で730憶ドルですから、オレゴンの9倍程度になります。

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こちらはナパだけのデータ。経済効果は54憶ドルでオレゴンの7割程度。雇用も1万8000とオレゴンの半分以下です。カリフォルニアの中では規模が大きいナパですが、オレゴン全体には届きません。ちなみに面積で大きく優るソノマもナパと同程度の経済効果。ナパとソノマを足すとオレゴンを上回ります。
Date: 2024/0412 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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お友達のヒマワインさんが、X(旧Twitter)に下のような投稿をしていました。


これに対して私は
ヒマさんがジョークで書いているのは分かりながらマジレスしますが、ジョークがジョークじゃない、本当にめんどくさいこと言う人が多いのがワインの世界なんですよね。なので、やっぱり「~~じゃなきゃ」みたいなところを全部ぶち壊さないと先に進めないと思っています
とコメントしました。

ヒマさんは「面倒くさい」という言葉の中に、奥深さを意識させたのだろうと想像していますが、あえて嚙みついたのは、実際問題「面倒くさい」しきたりにしばられていたり、それを他人に強制する人ってワイン好きの中でやっぱりいるんですよね。そういう場面に出会ってしまうと、「面倒くさいけど面白い」ことが「面倒くさくて嫌」なことになってしまう恐れがある。だからやっぱり面倒くささを一回全部取り払わないといけないと思っています。

なんてことをつらつら思っていたら、敬愛するワイン商えいじさんが、Noteに次のような投稿をしていました。
あなたは何と答えますか 「ワインって難しいですよね?」|ワイン商えいじ | DipWSET

ちょっと長く引用させていただきます。
ぼくの答えは

「ワインは難しい!!しかも、めちゃくちゃ難しい!!」 です。

おいおい!と思うかもしれませんが、だって、紛れもない事実です。知識という点においては。

そして、最も大事なことは、

この難解なワインの世界を全て把握している人はこの世に1人もいないということ。

それがワイン界の頂点と言われる、マスター・オブ・ワインであろうと。

ワインの話をする楽しみは、さながら誰も答えの知らない人生論や哲学の話をすることに似ています。答えがないのだから、誰が何を言おうと、それは新しい何かを発見するためのヒントでしかない。

(中略)
だから、ぼくはこれからワインを飲む人にこう言いたい。

たしかにワインは難しい、でも怖がる必要はまったくないです!

なぜなら

ワイン好きという生き物たちは、誰も答えを知らないワインの世界で

好き勝手なことを言って楽しんでいるだけなのだから、と。

だからあなたにも、メジャーとかマイナーとか、主流だとかセオリーだとか関係なく、好きなものを飲んで、好き勝手言ってほしい、と。

そしてぼくらプロは
できるだけ多くの人たちが好きなワインにたどり着き
好き勝手言える環境を整えるべきなんだと。
そのために、「プロが」知識を身につけるべきだと思うのです。

これを読んで思い出したことがあります。
昨年、ワインスクールで初心者向けのクラスを教える機会をいただいたのですが、生徒さんたちにこんな話をしたと思います。

ワインて、むちゃくちゃ奥が深いんです。
世の中にワインの数はどれだけあるのか数えきれないし、一人の人が全種類を飲むことも絶対にできません。
僕みたいにカリフォルニアワインという割と狭い世界だけを見ていたって、知らないワインや飲んだことがないワインは山ほどあります。
勉強すればするほど、わからないことも増えていきます。
そして、知れば知るほど、より面白く感じられるんです。
そういうところがワインて奥が深い、面白いなあと思います。

面倒くさいことは取り去って楽しめるというのが前提条件として、その先に知ることの面白さや、知ってから味わうことでより飲むことも楽しめるというのがワインの面白く、すごいところだと思います。だからこそ、大の大人がたかが飲み物にこれだけ夢中になるのでしょう。

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Date: 2024/0411 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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円安と現地のインフレでワイン価格が上昇しています。ナパのカベルネ・ソーヴィニョンのトップクラスは、軒並み5万円を大きく超える価格帯になっており、おいそれと手が出ません。

今回はあこがれのブランドのセカンドワイン、その中でも飲んで損はない高品質なものを紹介します。

先日、ナパの「名門ワイナリー」のセミナーで驚いたのがシェーファーとドミナスのセカンドのレベルの高さです。特にシェーファーは以前はフラッグシップのヒルサイド・セレクトとの間に結構な違いを感じたものですが、今回の2019は非常にいいできでした。ショップによっては2021年が入っているところもありますが、2019の方が2000円くらい安く売られています。

オンラインWassy’sです。


ドミナスのナパヌックも試飲した2019は1万5000円強ですが、2017だと1万2000円程度と安いです。
2017年。割田屋です。


2019年。青山ワインマーケットです。


高級系カベルネの中では比較的値段が安いのがスポッツウッド。ナパのマルゴーと呼ばれる上品さはセカンドのリンデンハーストでも健在です。
しあわせワイン倶楽部です、


ベクストファー・ト・カロンなどの銘醸畑の単一畑ワインを数多く作り、トップキュベは20万円にもなるレアム(Realm)。ここのセカンド「ザ・バード(The Bard)」はセカンドを超えた品質として知られています。実際、ワイナリーのサイトではこのワインを「フラッグシップ」と書いているほど。単一畑で使っている銘醸畑の残りのブドウをブレンドしているため、バランスの良さが秀逸です。2万円台ですがコスパ抜群と言わせてもらいます。

オンラインWassy’sです。


ハーランのザ・マスコット(The Mascot)はハーラン・ファミリーの「ハーラン・エステート」「ボンド」「プロモントリー」の比較的若い樹のブドウを使ったワインで正確にはサード的位置付けになります。ハーランにはメイデン、ボンドにはメイトリアークというセカンドのワインがあり、その次という意味です。ただ、メイデンもメイトリアークも現在は日本への輸入はほぼなくなっているので、実質的にはこれがセカンドと言ってもいいでしょう。マスコットもザ・バードと同じで、ブレンドすることによるバランスの良さが秀逸です。ハーランぽさやボンドぽさがあるかと言われると難しいですが、コスパはかなりいいです。
ココスです。


最後に紹介するのはセカンドではなく、ファーストのワインですがコスパ抜群のもの。アンディ・エリクソンが作る「リヴァイアサン」です。これが1万円以下というのはびっくりです。
しあわせワイン倶楽部です。


今回の記事、オーパス・ワンのセカンド「オーバーチュア」がどうして入っていないの? と思う人もいるかもしれません最大の理由はオーバーチュアにはヴィンテージが記載されていないことです。ロット番号などもないので、そのオーバーチュアがいつ作られたものなのか分かりません。もしかしたら20年以上前のものでもう美味しくないかもしれません。売っているものが、どのヴィンテージのワインが入ったものなのかわからないというのは、ワインを薦める上ではちょっと難しいかなと思います。
Date: 2024/0410 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパを中心に数多くのブランドを持つトリンチェロ・ファミリー(Trinchero Family)が、ナパで最も有名な栽培家のデイビッド・エイブリュー(David Abreu)と提携して新たなブランドを始めることを明らかにしました。

トリンチェロ・ファミリーでは2021年からエイブリューの自社畑ラス・ポサダス(Las Posadas)のブドウを使ったワインを作っていますが、今回はそれとは別に新たなブランド名を冠したワインになる予定です。ヴィンテージは2024年が最初になります。

トリンチェロ・ファミリーは1948年に、打ち捨てられていたナパのワイナリー「サター・ホーム(Sutter Home)」を買収してワイン造りを始めました。ワイナリー名を変更しなかったのはワイナリーの建物に描かれた「Sutter Home」の文字を描き直すお金がなかったからだといいます。

サター・ホームは1970年に偶然から生まれた「ホワイト・ジンファンデル」で一世を風靡します。今もサター・ホーム・ブランドは残っていますが、そのほかにトリンチェロ・ファミリー、メナージェ・ア・トロワ、ネイヤーズ、ジョエル・ゴット、テイクン、ナパ・セラーズ、フォリエ・ア・ドゥ、チャールズ&チャールズ、シーグラス、トリニティ・オークス、スリー・シーヴズ、ザ・スペシャリスト、カリフォルニア・ルーツなど50近いブランドを保有しています。
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エイブリューのブドウを使うブランドは、新規立ち上げになります。ワインメーカーはトリンチェロ・ファミリーのランドン・ドンリーが担当し、エイブリューとエイブリューのワイナリーでワインを作るブラッド・グライムズがコンサルタントになります。


Date: 2024/0409 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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カリフォルニアワインを中心に、スペインやニュージーランドのワインなども輸入するデプト・プランニングの試飲会に参加してきました。そこからお薦めのワインを紹介します。


ナパのスプリング・マウンテンにあるワイナリー「テラ・ヴァレンタイン」のドライ・リースリング(5800円)。新ヴィンテージですが、なんと2013年です。ドライなリースリングといってもドライさには幅がありますが、これは本当にドライなリースリングです。香り良く美味しいです。


メンドシーノのジラソーレによるシャルドネ2022(3500円)。自然派のワイナリーで、ワインはやわらかな味わい。コスパいいです。


ニュージーランドのピノ・ノワールを2つ。右はクルクル(Kuru Kuru)のピノ・ノワール2016(4500円)。香り良く果実味もきれいで複雑さもある素晴らしいピノ・ノワール。これで5000円切りは驚きです。この日のメモには0.5点刻みで5点までの評点を付けていましたが、これは「5」を付けた3本のワインの一つです。左はタラス(Tarras)のピノ・ノワール2020(6000円)。これも果実味がとてもきれい。


スペインのリベラ・デル・ドゥエロから2本です。右のヴィーニャアロヨグランレゼルバ2014(8000円)。むちゃくちゃ華やかな味わい。これも5を付けています。左は同じくヴィーニャアロヨのヴィンディミア・セレクシオナーダ2015(12000円)。きわめて複雑でパワフルなワイン。


メンドシーノのモンテ・ヴォルペ(Monte Volpe)のプリモ・ロッソ ロット16(3500円)。ジンファンデルなどのブレンドもの。これも華やかで果実の明るい味わいが光ります。


メンドシーノのグラジアーノ(Graziano)は、実は上のモンテ・ヴォルペと同じワイナリーによるワイン。右はプティ・シラー2012(3400円)。プティ・シラーらしい強靭なタンニンと豊かな酸、素晴らしい果実味で非常にコスパの高いワイン。5点を付けています。3ケースしかないということなので、見つけたら「買い」です。
左はジンファンデル2018(5000円)。芳醇で甘やかさのあるワイン。明るい果実味とバランスの良さがいいワイン。


ナパのシルバー・ゴーストのカベルネソーヴィニヨン(8000円)。シルキーなタンニン、文句なしに美味しい。


アパーチャー・セラーズは今ソノマで大変注目されているワインメーカー「ジェシー・カッツ」のワイナリーです。右からレッド・ブレンド2021(15000円)、カベルネ・ソーヴィニョン2021(20000円)、オリバー・ランチ カベルネ・ソーヴィニョン2019(35000円)。どれもいいワインですが、個人的には中央のカベルネ・ソーヴィニョンが一番良かったです。タンニンや果実感のバランスが素晴らしい。
Date: 2024/0408 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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柳屋にナパのコン・クリークの2003年のカベルネ・ソーヴィニヨン「トゥルシャード・ヴィンヤード」が入荷しています。20年超の熟成を経ながら7000円台とかなりの格安です。

コン・クリークはワシントンのシャトー・サン・ミシェル傘下にあったのですが、シャトー・サン・ミシェルの近年の業績不振に伴い、ブランド名以外は売却されてしまったそうで、実質的に廃業になっています。

今回のワインはその在庫整理からでてきたようです。コン・クリークの近年のカベルネ・ソーヴィニヨンはAVAものでも100ドル超。単一畑でこの価格は激安といっていいでしょう。

トゥルシャードはワイナリーとしても知られていますが、ブドウの多くは他のワイナリーに販売しています。カーネロスのカベルネ・ソーヴィニヨンはあまり多くありませんが、冷涼な地域の中の丘の上など比較的暖かいところで作られています。ナパの他の地域と比べると果実味の強さでは勝てませんが、熟成向きなカベルネだと思います。


Date: 2024/0406 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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フリーマンのワインが、4月11日に開かれる岸田首相と、カマラ・ハリス米副大統領、アントニー・ブリンケン国務長官の昼食会で供されます。アキコさんとご主人のケンさんも昼食会に出席します。

フリーマンのワインは、オバマ大統領と安倍首相(どちらも当時)の2015年の晩さん会でも使われましたが、そのときはワインの提供だけで、ワインも「涼風」シャルドネ1種類だけでした。

今回は昼食会への参加とともに、「2020 Yu-Kiヴィンヤード ブラン・ド・ブラン」「2021 涼風シャルドネ」「2021 アキコズ・キュベ ピノ・ノワール」の3本が供されます。ワインの種類の多さも、そこに直接出席できるというのも、大きな名誉です。

Press Democratの記事によると、アキコさんがメールで連絡を受けたのは4月1日のこと。その話をケンさんに伝えたら「仰天した」そうです。

昨年は「大日本農会」から緑白綬有効章を海外在住の女性としては初めて受章する、といった名誉もありました。長年のファンとしてもうれしいことです。
Date: 2024/0405 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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サスティナブルを推進するワイナリーや栽培者を表彰するカリフォルニア・グリーン・メダルが10年目となる2024年のリーダーシップ・アワードを発表しました。

表彰されたのは次の3つのワイナリーと、一つの栽培管理会社。
リーダー賞
ランゲツインズ(LangeTwins)・ファミリー・ワイナリー&ヴィンヤーズ
環境賞
グロリア・フェラー(Gloria Ferrer)
コミュニティ賞
クーパー-ギャロッドヴィンヤーズ@ギャロッド・ファームズ(Cooper-Garrod Vineyards at Garrod Farms)
ビジネス賞
ヴィノ・ファームズ(Vino Farms)
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リーダー賞は環境的に健全で(Environmentally sound)、社会的に公平(socially Equitable)、経済的に実行可能(Economically viable)という3つのEで卓越したワイナリーに与えられます。ランゲツインズは1970年代からサスティナブルに取り組んでおり、地域におけるサスティナブルの啓もうにも努めています。

グロリア・フェラーは環境再生型有機農法に2021年から取り組んでいます。特に生物多様性に様々な方法で取り組んでいます。スパークリングワイン用の軽量ワインボトルなど、カーボンフットプリントを下げる取り組みも行っています。

クーパー-ギャロッドはサンタ・クルーズ・マウンテンズにあるワイナリーで地域の慈善活動や、ワイナリー内のハイキング・トレイルへの地元民の招待など、地域を広く巻き込んだ活動を行っています。

ヴィノ・ファームズはローダイの栽培管理会社でサスティナブルを企業活動に落とし込んでいます。様々なモニター技術を使い、水の効率的な活用などを行っています。2010年からはトラックやトラクターをバイオ燃料に切り替えています。


Date: 2024/0404 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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カリフォルニアワイン協会のスプリングプロモーションが始まっています。期間は5月31日まで、参加しているレストランやワインショップで様々なカリフォルニアワインを提供しているのに加え、インスタグラムでは毎週10名にワインが当たるキャンペーンを実施中です。

参加店舗一覧 料飲店
参加店舗一覧 小売店

今年は昨年より参加している店舗も増えたような気がします。行ったことがない店も結構あるので機会があったら行きたいです。
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また、今年のテーマ産地はパソ・ロブレスなので多くの参加店でパソ・ロブレスのワインを提供していると思います。ジンファンデルやローヌ系品種が有名な地域ですが、カベルネ・ソーヴィニヨンも素晴らしいものがあります。赤のイメージが強い地域ですが、白もローヌ系など面白いです。

2月のセミナーもご参考まで。
パソ・ロブレスの意外なクールさに驚いた

そして、見逃せないのが毎週10名にワインがあたるというキャンペーン。9週間ありますから全部で90本と大盤振る舞いです。毎週インスタグラムにお題が挙げられて、それにコメントするという申し込み方法です。今週の投稿は現時点では40くらいですから、結構当たる確率は高そうですよ!



みんな奮って参加しましょう。

お店も行ったことないところが結構あるので、開拓できたらいいなと思います。
Date: 2024/0403 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのプリチャード・ヒルにあるワイナリー「ブランド・ナパヴァレー(Brand Napa Valley)」の新オーナーが来日し、インタビューの機会をいただきました。


ブランドは2009年に創設されたワイナリーで2019年からジム・ビーンとクリスティーン・オサリヴァン夫婦がオーナーになりました。二人は元アップルのエグゼクティブで、最高のワインが作れるところをナパで探していました。2019年に同ワイナリーが売りに出ているのを知り、これ以上の場所はないと購入したといいます。ナパヴァレーのブドウ畑が4万7000エーカーほどある中で、プリチャード・ヒルのブドウ畑の面積は1%にもなりません。その中で、コルギンやコンティニュアム、シャペレー、オーヴィッドなどナパの中でもトップクラスのワイナリーがひしめきあっています。これほど貴重な地域でワイナリーを買えるチャンスはそうそうありません。

というと、金に任せてワインを作るだけのオーナーなのかと思ってしまいそうですが、この二人はそうではありません。実はブランド購入前、2013年にセント・ヘレナに20エーカーの畑を買っており、2019年までに65エーカーに拡張し、自らブドウ栽培していました。そのときは家族のプロジェクトという位置づけでした。ワイナリーを本格的にやるにはまず栽培を知らないといけないという考えでやっていたそうです。なので、全く何も知らないところからブランドでのワイン造りを始めたわけではないと強調していました。ブランドの畑の管理はシルバラード・ファーミング・カンパニーですが、オーナー二人も毎日畑に出ており、シルバラードのチームと緊密に作業をしているそうです。ちなみにセント・ヘレナの畑はブランド購入時に売却しています。

ブランドでは栽培を有機栽培、そしてビオディナミ(バイオダイナミクス)に転換。すでに有機栽培では認証を取っています。果実の純粋さを引き出すために栽培が一番大事だと考えています。なお、バイオダイナミクスの認証を取るためには耕作に必要な動物を自分のところで飼っていないといけないのですが、現在は近所の農家から借りて耕作しているので、そちらの認証は「牛を飼ってからね」とのことです。

ワインメーカーはフィリップ・メルカ。前にマーヤン・コシツキーの記事で「アトリエ・メルカ」というコンサルティング会社の話を書いていますが、ブランドに関してはアトリエ・メルカではなくフィリップ自身がワインメーカーとして携わっています。


新オーナーになってから、ラベルデザインも変わりました。

以前は下のようなデザインでした。


新しいラベルは、ワイナリーの建物の印象的な5角形を模したものになっています。


新しいボトルデザインでもう一つ注目してほしいのがキャップシールのところです。ワインの種類によって色が異なっており、ラベルと同じアイコンが描かれています。これはワインセラーに入れたときの分かりやすさのためです。ワインセラーに入れるとキャップシールのところしか見えないのが普通です。その状態でも、これがブランドのワインであるということと、そのワインの種類が、ボトルを引っ張り出さなくても分かるというわけです。こういうところはさすがUX(ユーザー・イクスペリエンス)を大事にしているアップル出身だなあと思わせます。


ワインを試飲しながらインタビューを続けます。最初は唯一の白ワインであるナパの「ホワイト・ブレンド2020」(16000円)。こちらはリボッラ・ジャッラ、フィアーノ、アルネイス、グレコ・ディ・トゥーフォ、ヴェルメンティーノ(多い順)のブレンドという5種類のイタリア系品種を使った非常にユニークなワイン。一般的なシャルドネやソーヴィニヨン・ブランとは違ったきれいなワイン、そしてさまざまなシチュエーションに合うワインを作りたかったとのこと。ブランドの赤ワインはすべて自社畑のブドウを使っていますが、このワインだけは近隣の畑のブドウをメインに使っています。また、アンフォラとステンレス、オークの小樽と3種類の容器を組み合わせて使っています。

5種類のブドウは闇雲にブレンドしているのではなく、それぞれ役割があるそうです。リボッラ・ジャッラはカリフォルニアでは「グラスの中の太陽」などとも言われることがありますが、実はきれいなミネラル感があり、特にアンフォラによってそれが引き出されるそうです。フィアーノはゴージャスな柑橘の風味があります。アルネイスはボディを与えてくれます。グレコは花の香りやマイヤーレモンのような風味をもたらします。この品種は米国のTTBで認められている品種ではないので、ラベルには名前が入れられません。ヴェルメンティーノはごくわずかしか入れていないのですがワインに深みを与え、ブレンド全体をまとめあげています。

実際に飲んでみると、酸が豊かで果実味も広がります。果実味も、柑橘だけでなくトロピカルな味わいも出ています。複雑さもあり非常にバランスのいいワイン。これが突出しているというのがないのでテイスティング・コメントとしては少し書きにくい感じもしますが、美味しいです。応用範囲が広いワインというのはよくわかります。

ちなみに今回試飲した2020年はナパ以外のブドウも使っており「カリフォルニア」の表記になっていますが、2021年は「ナパ」になるそうです。ブランドの自社畑でも少しずつ白ワインを増やしていて2021年は自社畑だけになるとのこと。

プリチャードヒル
赤ワインの話に移る前に、プリチャード・ヒルの特徴について少し説明します。プリチャード・ヒルはオークヴィルの北東側にあるヴァカ山脈系の産地で、いくつかの丘からなり、北側にはレイク・ヘネシーという大きな貯水池があります。シャペレーが名前の登録商標を持っているため、プリチャード・ヒルという名前が付いたワインはシャペレー以外は作れませんが、ナパでも指折りの高級ワイン産地です。ポイントを三つ挙げると、まずは標高の高さ。ブランドの畑で360~430mほどの標高があり霧がかからないため、朝晩は比較的暖かくおだやかです。第2にレイク・ヘネシーからの影響です、そこからの冷却効果で昼間の気温はヴァレーフロアより華氏で10~15°も低くなります。第3にヴァカ山脈の土壌で、いくつか種類はあるのですが、総じて言うと鉄分が多く、岩がちで痩せた土壌です。

Brand

ブランドの地所は110エーカーありますが、畑は15エーカーで三つに分かれています。西のNo95は一番標高が低く、やや粘土質が多く比較的保水性があります。カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランが主に植えられています。中央のNo92はレイク・ヘネシーからの風の影響を一番受け、その涼しさがカベルネ・フランに最適のサイトになっています。東のNo90は一番標高が高く、すぐ東側にはコルギンの畑があります。コルギンとの境界が尾根になっています。土壌は一番岩が多く、ブドウにとっては過酷な環境です。

今後は既存の畑を拡張する形で30エーカーにまで増やしたいと考えていて、ナパ郡に申請を出しています。畑を拡張できたら現在9種類のクローンを使っているカベルネ・ソーヴィニヨン、4種類のクローンを使っているカベルネ・フランのクローン違いを植えていきたいとのことでした。

ブランドで作ろうとしているワインは、バランスが取れており、エレガントでフレッシュさがあること。果実味爆弾と言われるような濃厚でパワフル過ぎるワインにはしたくないといいます。また、エステートであることにこだわりを持っており、栽培から醸造、ボトル詰めにいたるまですべて自社で行い、オーナー自ら毎日ワイナリーや畑の作業にかかわり、すべてに目を配っています。それだけ手をかけて作っているワインだということです。これは高級ワインであれば当たり前と思われるかもしれませんが、実際に自社畑だけでまかなっているワイナリーはそれほど多いわけではありません。例えばナパのワイナリーは400くらいですが、ブランドの数で言えば3000を超えるわけで、大半はエステートの畑を持っていないのです。

赤の最初のワインはNo.95カベルネ・ソーヴィニヨン。その名の通り、No95の畑のブドウを使っています。この畑はブランドの前にモンターニャが使った畑で一番古く、また一番若い樹(樹齢10年)がある畑でもあります。ブランドの赤ワインの中ではエントリー・レベルになります。以前のオーナーはセカンドラベルのワインを作っていましたが、それよりもレベルが高いワインを少し価格を抑えて出したいというワインです。

2017年のNo.95はカベルネ・ソーヴィニヨン88%にカベルネ・フラン8%、プティ・ヴェルド4%という構成。プティ・ヴェルドはカベルネ・フランに接ぎ木してしまったので、これが最後のヴィンテージになるそうです。新オーナーになる前のワインですが、最終的なブレンドには携わっています。

ブランドの赤の中ではこれが一番リッチでパワフルな印象。ダークなフルーツ感があります。気温が少し高めだったヴィンテージの特徴もあるのかもしれません。その中でミントのような清涼さもあり、土っぽいタンニンの感じもあるいいワインです。

次のワインは2019年のプロプライアタリー・ブレンドです。これはNo92の畑のブドウを使っています。前述のようにカベルネ・フランが多く68%カベルネ・フラン、32%カベルネ・ソーヴィニヨンという構成。少し粘土質の土壌で保水力があるため、ほぼ無灌漑で栽培しています。

米国でもカベルネ・フランの人気は高まっているものの、ナパでの栽培はわずか3%以下にとどまっています。栽培が難しいのがその理由。カベルネ・フランは24℃から35℃の間の気温が最適だそうですが、ナパではそれよりも朝は寒いし、昼は暑くなるところが多いため、いいカベルネ・フランができるところは限られています。No92の畑はレイク・ヘネシーからの冷却効果があり、さらに周りが樹で囲まれていることでその温度が保たれる、カベルネ・フランに最適な畑です。

第一印象はスミレの香り。華やかさが光ります。きれいな赤い果実とブルーベリー。溶け込んだタンニン。リッチ感もありますが、重くなくエレガント。時間が経つと、皮のようなニュアンスも出てきます。カベルネ・フラン好きにはたまらないワイン。実際、このワインが好きな人は熱烈にこれを求めるそうです。プリチャード・ヒルのカベルネ・フランをメインに置いたワインとしては、オーヴィッドのヘキサメーターが素晴らしいと思っていたのですが、それに全くひけを取らないと思います。

最後のワインはNo90の畑のカベルネ・ソーヴィニヨンを使ったカベルネ・ソーヴィニヨン 2019です。フラッグシップのワインです。一番岩の多い畑で、ブドウは生長に苦労し、とても小さな実のブドウができます。この畑の中でも一番いいブロックが「See」というクローンが植わっているところ。2023年のプルミエ・ナパヴァレー・オークションでは2021年のSeeクローンだけを使ったカベルネが出品され、最高価で落札されました。

100%カベルネ・ソーヴィニヨンのワインの中でもとてもいいものには鉛筆の芯を感じることが多いのですが、このカベルネにもそれを感じます。エレガントで、重いワインではないのですが、緻密でパワーがふつふつと出てくるような強さがあります。最上級のカベルネ・ソーヴィニヨンらしい良さがあります。

フレンチランドリーのワイン・ディレクターがブランドのワインを、美しく料理をオーバーパワーしないワインだと高く評価しているそうですが、そのコメントがよくわかります。

最後に、ナパでは近年気候変動による高温が、大きな問題になりつつあります。例えば2022年はオークヴィルで華氏110°(摂氏43℃ほど)を超える日が26日もあったそうです。プリチャード・ヒルは標高の高さから6日で済んだそうですが、ブランドでは高温に対処するために、畑に霧を撒くシステムを導入したとのこと。1時間ほどで5~7℃ほども気温を下げるそうです。

ブランドのワイン、じっくりと試飲をしたのは初めてでしたが、超有名ワイナリーばかりのプリチャード・ヒルにおいても、見劣りしないだけでなく、非常に魅力的なワインを作っていることがよくわかりました。個人的にはやはりカベルネ・フランが一番好きでしたが、カベルネ・ソーヴィニヨンも非常に良かったです。白のブレンドもこれまで飲んだことがないものでした。まだ新オーナーになってからそれほど年月が経っていませんから、これからさらに良くなっていくことが期待できそうです。
Date: 2024/0403 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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最近買ったワインの本でお薦めを紹介します。

まずは『ゼロからスタート! 紫貴あきのソムリエ試験1冊目の教科書』。アカデミー・デュ・ヴァンの紫貴先生の書かれたソムリエ/ワインエキスパート受験用の入門書です。

この本のいいのは、とにかくさらっと分かりやすく書いてあり、ストレスなく読めること。ソムリエ/ワインエキスパートの教本はA4サイズで900ページ近くもあり(今年のページ数は未確認ですが)、とにかく重いし、文字も多く、見るだけで押しつぶされそうになり、プレッシャーを感じる人がほとんどだと思います。本書はA5判で200ページちょっと。単純に面積だけ考えても8分の1ですし、基本的に左ページは文章、右ページは図版になっていますから実質的にはもっとずっと少ないです。また、見開き単位で構成されていますから、適当に開いたページを読むといった使い方もできます。
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逆に言うと、これだけで試験に合格することは絶対にできません。例えばフランスのAOCがどんなものかは書いてありますが、具体的にどういうAOCがあるかといった項目はありません。あくまでも勉強のイントロダクションとして使う本です。そういう意味ではこれまである程度ワインの勉強をしたことがある人はわざわざ買わなくていいかもしれませんが、ワインの勉強をどこから始めたらいいかわからない、といった人には、この本で概要をつかんでから、教本や、他の受験用の参考書を見ることで、よりすっきりと内容が頭に入ってくるだろうと思います。試験を受けない人にとっての入門書としても使えます。


ゼロからスタート! 紫貴あきのソムリエ試験1冊目の教科書



もう一つは『WINE ブラインドテイスティングの教科書』。鈴木明人さんが書かれた本です。副題に「科学的アプローチからワインを理解して品種を当てる」とあるように、化学物質にまで落とし込んでワインの香りや味わいを分析し、それを品種などを考える際にどう使うかを解説しています。著者の鈴木明人さんは製薬会社に勤務する薬剤師であり、化学はお手の物というわけで、理系的な人間にとってはとても納得感がいく解説になっています。

ブラインドテイスティングを楽しむ人だけでなく、一般のワイン愛好家やソムリエ/ワインエキスパートを受ける人にとっても役に立つ内容だと思います。ただ、内容はかなり高度なのですべてを自分のものにしていくのはかなり大変です。一気に読んで内容を理解するというよりも、一つひとつゆっくり咀嚼して身に着けていくのがいいのかなと思います。私もかなりゆっくり時間をかけて読んでいます。


WINE ブラインドテイスティングの教科書 科学的アプローチからワインを理解して品種を当てる


Date: 2024/0401 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Bonny Doonに続いて、Wine to Styleの試飲会でお薦めのワインを紹介していきます。Wine to Styleはボランジェなどをかかえるnakatoとの合併でヨーロッパのワインも扱うようになり、試飲会は300を超えるアイテムが出てきます。試飲は入れ替え制で2時間の時間制限があり、時間的にも全部を試飲するのは不可能です。なので米国産ワインに絞って試飲していますが、それでも130を超える数がありました。

また、従来はニュー・カリフォルニアのコーナーなど、ある程度ジャンルに分かれておいてあったのですが、今回はおおむねアルファベット順に並んでいました。特定のジャンルのワインを試飲したい人にはわかりにくかったかもしれませんが、フラットにいろいろなワインが出てくるのは面白かったです。


クロ・ぺガスのミツコズ・ヴィンヤード メルロー2021です(5500円)。ミツコズ・ヴィンヤードはナパのカーネロスにある畑。冷涼地域のメルローは注目株です。冷涼メルローらしいきれいな味わいで秀逸です。


フェイラはナチュラル系の生産者といっていいでしょう。知名度はそれほど高くないかもしれませんが、非常に良質なワインをリーズナブルな価格で作っています。このソノマ・コースト ピノ・ノワール(6800円)もナチュラル感があっておいしいです。


フェイラのジンファンデル「Day」です(5300円)。「フェイラでジンファンデル?」って思うかもしれませんが、フェイラのエーレン・ジョーダンはジンファンデルで有名なターリー(Turley)のワインメーカーをしていた人なので、ジンファンデルの経験は誰よりも多いのです。ただ、フェイラのジンファンデルはターリーと比べてもずっとエレガント。複雑さもあり美味しいです。


「ベラ・ユニオン」(15500円)と「ファー・ニエンテ」(28000円)そして写真にはないですが「ポスト・ビーム」はいずれも同じグループのワイン。ラベルの雰囲気がよく似ています。ファー・ニエンテはフラッグシップ的位置づけで、リッチな味わい。リッチなだけでなくバランスもいいところを評価しました。「ベラ・ユニオン」は果実味豊かで華やかなカベルネ・ソーヴィニョン。価格はファー・ニエンテよりだいぶ安くコスパいいです。


ジラードのワインは果実味豊かで親しみやすい味わいが特徴。このソーヴィニョン・ブラン(3500円)も例外ではありません。リッチでクリーンな味わい。


グレース・ファミリーのラリークス(Reliquus)というワイン(30000円)。初めて見ました。グレース・ファミリーはクラシック系の味わいですが、こちらはリッチでモダンな味。


ガーギッチ・ヒルズのシャルドネ(9500円)は、個人的にはナパのシャルドネのベンチマーク的ワイン。ビオディナミでの栽培(2023年にはリジェネレーティブ・オーガニックの認証も)、MLFなしでクラシックなエレガント系シャルドネを作っています。いつ飲んでもはずれがないという点でもお薦めのシャルドネ。


右はハーンのピノグリ(2850円)。ピノグリはあまり飲みませんが、これは華やかで美味しい。左はピノ・ノワール。バランスよくやわらかい味わい。ピノとしては酸味も穏やかで、多くの人がイメージするカリフォルニアのピノ・ノワールに近いと思います。


ハンドレッド・エーカーのジェイソン・ウッドブリッジが作る、比較的リーズナブルな価格のブランドがフォーチュネート・サン。「ザ・ドリーマー」(33000円)と「ザ・ディプロマット」(33000円)の2種が試飲で出ていましたが、個人的な好みはザ・ディプロマットの方でした。カベルネ・ソーヴィニョンにメルローとプティ・シラーがブレンドされています。


アイ・ブランド&ファミリーの ペイサン オールド・ヴァイン カベルネ・ソーヴィニョン(4600円)。有機栽培されている樹齢45年と60年の畑のブドウを使っています。とてもやわらかく、優しい味わいのカベルネ・ソーヴィニョン。


兄弟ワイナリーのホナタ(Jonata)とヒルト(Hilt)から、ホナタのトドス(11000円)はシラー系のブレンド。リッチですがきれいな味わい。ローヌ系の味わいです。
ヒルトのベントロック・ヴィンヤード シャルドネ(20000円)はヒルトのワインの中でも上級のもの。非常にレベルの高いシャルドネ。酸のきれいさもひかります。


ホナタとヒルトのセカンドに相当するザ・ペアリング。シャルドネもピノ・ノワール(どちらも4500円)もバランスよくまとまった味わい。とてもよくできています。


古いファンならご存じかもしれませんが、サンタ・バーバラのワインの歴史に残る「Wine Cask」というワインショップ/レストランがあり、サンタ・バーバラのワイン情報の集積地にもなっていました。そのWine Caskを創設した人がダグ・マージェラムで、現在はWine Caskを売却してワイナリーに専念しています。ローヌ系の5種類の品種を使った赤ワインM5(左、4900円)が看板ワインで、右はその白ワイン版として新たに登場したM5ホワイト(4900円)。グルナッシュ・ブランなどのブレンドです。
ホワイトは柔らかな味わいできれいなワイン。M5も非常にきれいでうまみがある、しみわたるようなワインです。どちらも美味しい。


2024年、SNSで一番バズったワインとして知られているのがジョッシュ・セラーズ(Josh Cellars)。バズりはともかく、米国で大ヒットしているワインです。右のソーヴィニョン・ブラン(2600円)は果実味あふれる作り、中央のピノ・グリージョ(2600円)は華やかな香りと味。シャルドネ(2600円)はリッチな味わいで、それぞれ違う魅力をはなっています。個人的にはとくにピノ・グリージョが良かったです。


ジョッシュの「リザーブ・バタリー・シャルドネ」(3800円)はその名の通り、バター系のリッチな味わい。つまりはブレッド&バタータイプのシャルドネです。個人的には「バタリッチ」と呼んでいます。

このほか写真からは抜けていますが、ちょっと甘めですがスパイス感がいいピノ・ノワールや、689系のレッドブレンド「レガシー レッド・ブレンド」、濃い旨系の「リザーブ バーボン・バレル・エイジド カベルネ・ソーヴィニョン」など、濃い系のワイン好きにアピールするワインがたくさんあります。


ジョッシュの隣にエレガントなマサイアソンが並ぶというのも、ちょっとシュールで面白いです。右の「タンデュー レッド」(4500円)はマサイアソンの入門的ワイン。フレッシュな果実味が美味しいです。中央のナパヴァレー カベルネ・ソーヴィニョン(16000円)はクラシックな味わい。タンニンの強さもクラシカルな雰囲気を出しています。
左のマヤカマス(20000円)はクラシック系カベルネ・ソーヴィニョンの最高レベルといっていいでしょう。しっかりとしたタンニンがいわゆる「山カベ」らしさを出しており、うまみもあります。熟成させて飲みたいワイン。


ミウラのピノ・ノワールは、リッチでストラクチャーのあるタイプの代表格の一つ。エレガント系とは対極的な味わいですが、これはこれでうまいです。


ポップなラベルと親しみやすい価格で人気のスリー・ガールズ。右のソーヴィニョン・ブラン(2450円)はフレッシュな果実味でさわやか。とてもいいです。右のカベルネ・ソーヴィニョン(2450円)はメルローかと思うほどやわらかで上品な味わい。強いカベルネをk対すると肩透かしかもしれませんが、気軽に飲めて美味しいです。


中央のオークリッジ カベルネ・ソーヴィニョン(2550円)は果実味の豊かさに、複雑さもあるカベルネ。上のスリーガールズとは対照的な重厚タイプで美味しいカベルネです。


ポー(POE)のロゼ・スパークリング(6800円)。このワイン、初めて飲んだような気がしますが素晴らしい泡です。ピノムニエを使っています。ソノマ・マウンテンのVan der Kempの畑のブドウ。この畑のピノ・ノワールは以前HdVが作っていて神の雫にも登場しました。


こんなすごいワインを改めて紹介しなくてもいいのですが、中央のワイン、ピーター・マイケルのレ・パヴォというぼるぢー系のフラッグシップです(50000円)。バランスよく複雑でクラシカルな味わい、さすがのレベルの高さです。


右のラシーヌのピノ・ノワール(1万円)。ブルゴーニュのドメーヌ・ド・モンティーユがサンタ・バーバラで始めたワイナリーですが、このピノ・ノワールはカリフォルニアらしい果実味もあり酸もきれい。レベル高いです。
中央のサンディのセントラル・コースト シャルドネ(4900円)はちょっと好みが分かれそうなワイン。かなり酸が高く、酸好きには受けそうですが、ややエレガント系に寄りすぎな感もあります。
その左のサンディのサンタ・リタ・ヒルズのピノ・ノワール(7300円)は鰹節感のあるエレガント系ピノ・ノワール。多少好みが分かれるかもしれませんが、個人的にはシャルドネよりピノ・ノワールが好きです。


シュラムスバーグのスパークリングは何度となく飲んでいますが、あらためて美味しいです。ブラン・ド・ブラン(6300円)。自分のコメントでは「文句なくうまい」と書いています。


最近多くなったバーボン・バレル熟成のワイン。これはサバスチャーニの「レッド・ワイン バーボン・バレル」(3800円)。マルベック50%、メルロー22%などのブレンドです。濃くてリッチな味ですが、意外とバランスは悪くない。前述のジョッシュのバーボン・バレルに比べると、より幅広いユーザーに受けそうです。


1500円を切るリーズナブルな価格帯のワイン「スリー・ブロックス」のシャルドネとカベルネ・ソーヴィニョン。どちらも1350円でノン・ヴィンテージ。シャルドネはトロピカルなフルーツのフレーバー。カベルネは樽のしっかり効いた甘やかな味わい。


ターンブルのカベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー(11000円)。ナパらしい果実味豊かな味わいでバランスよく美味しいカベルネ。

Date: 2024/0330 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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カレラのインポーターがJALUXからエノテカに変わります。エノテカでの発売は4月1日ですが、すでに販売ページはできています。
セントラル・コースト シャルドネ 5500円
セントラル・コースト ピノ・ノワール 6000円

マウント・ハーラン シャルドネ 11,000円
マウント・ハーラン ヴィオニエ 9,900円
マウント・ハーラン ド・ヴィリエ ピノ・ノワール 14.300円
マウント・ハーラン ライアン ピノ・ノワール 14,300円
マウント・ハーラン ミルズ ピノ・ノワール 14,300円
マウント・ハーラン セレック ピノ・ノワール 22,000円
マウント・ハーラン リード ピノ・ノワール 22,000円
マウント・ハーラン ジェンセン ピノ・ノワール 22,000円

ということで、単一畑のピノ・ノワールは1万円を大きく超える価格になります。おそらく他のショップからの価格はもう少し安くなると思いますが、1万円を切ることはないでしょう。ただ、これはエノテカが高い価格を付けているわけではなく、ド・ヴィリエのワイナリー価格で100ドル近くになっていますから、為替を考えれば決して高くない水準です。

現状はまだ、JALUX分が残っているショップもあり、セントラル・コーストのシャルドネは3000円台から、ピノ・ノワールは4000円台から、ヴィオニエが5000円台から、マウント・ハーランのシャルドネが6000円台から、ド・ヴィリエとライアンが8000円台から、ミルズが9000円台から、リードが1万6000円台から、セレックが1万8000円台から、入手可能です。

なお、現状ジョシュ・ジェンセン・セレクションというシャルドネとピノ・ノワールがありますが、これはJALUX専用に作っていたキュベですので、エノテカの扱いには入らないと思います。

単一畑ものの中でジェンセンは安定してレベルが高く、セレックは熟成したときの魅力は抜群です。後の4つの畑についてはそれほど大きな差はないかと思います。また、ブラインドではド・ヴィリエを一番と評する人も多く、味的には一番ジェンセンに近いと感じます。

ということで、JALUX扱いのボトルが残っている今が買い時です。特に単一畑ピノが1万円以下で買えるのはこれが最後と思った方がいいでしょう。

リンク先は「セラー専科」です。




うきうきワインです。


オーリックです。


セラー専科です。


リカオーです。


Date: 2024/0330 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Wine to Styleの試飲会から輸入再開されたボニー・ドゥーン(Bonny Doon)のワインを紹介します。

ボニー・ドゥーンは1983年にランドール・グラームによってサンタ・クルーズに作られたワイナリー。当初はブルゴーニュ品種を作ろうとしていましたが、人と同じことをやっていてはつまらないと、ローヌ系品種の栽培を始めます。1986年に始めたGSM(グルナッシュ、シラー、ムールヴェードルのブレンド)「ル・シガール・ヴォラン」がヒットし、カリフォルニアのローヌ系生産者の先駆けとなりました。1989年にはワイン・スペクテーターで「ローヌ・レンジャー」として紹介され、同名のワイナリーグループが作られるきっかけにもなりました。

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この月光仮面のような扮装をした人がランドール・グラームです。彼のユニークな言動はワイン業界でも有名で、ワインも「その風変わりなラベル、風変わりなブドウの組み合わせ、ユーモラスな名前のワインで最もよく知られています」(Wikipediaの和訳)。ちなみに「ル・シガール・ヴォラン」というのは葉巻型のUFOのことで、シャトーヌフ・デュ・パプのある村が、UFOのぶどう畑への着陸を禁止する条例を決めたことを皮肉って付けた名前だといいます。

こんなことから「色物」的なワイナリーかと思ってしまうところですが、彼は実はカリフォルニアにおけるバイオダイナミック(ビオディナミ)の先駆けでもあります。2000年代初めには栽培に力を入れるために、生産量の多いブランドをいくつか売却してしまうということもありました。現在のボニー・ドゥーンのワインは契約栽培のブドウもあるため、すべてがバイオダイナミックで栽培されているわけではありませんが、今も継続してそちらへの以降を志しているようです。

ユニークな品種や風変りなラベルといった要素は、その後のニュー・カリフォルニアにもつながっていますし、昨今の「ナチュラル・ワイン」と同じようなことを20年前からやっているとも言えます。醸造も天然酵母を使い、SO2の添加もごくわずかですから、ナチュラル・ワインや自然派ワインと呼んでも一向に差し支えないのではないかと思います(前述のように、契約農家のブドウの栽培については不明ですが)。

なお、ランドール・グラームは2020年にボニー・ドゥーンを売却していますが、今もワイナリーの顔でありワインメーカーとして携わっています。ちなみに彼は「1万種の品種を作るランドール・グラームの壮大なプロジェクト」といったこともやっています。このクラウドファンディングには私も出資したので、今も定期的にメールで状況報告が来ます。新しい品種を作るというところはだいぶシュリンクしているようですが、グルナッシュ系のものを「ポープルシューム」という畑で作っており、ワインも2年ほどまえから生産しています。


写真は右から「ヴァン・グリ・ド・シガール」「ル・シガール・オレンジ」「ル・シガール・ヴォラン」。
ヴァン・グリはロゼワインでサンソー50%、グルナッシュ43%、クレレット・ブランシュ5%、ムールヴェードル2%。さわやかな味わいでうまみもあります。
オレンジはオレンジワインで品種はグルナッシュ・ブラン44.5%、ピノ・グリ25%、グルナッシュ・グリ14%、オレンジ・マスカット9.5%、シュナン・ブラン7%。これむちゃくちゃうまいです。酸もしっかりあってうまみもすごい。ロゼもすごくいいのでどちらを選ぶか悩むところですが、個人的にはこちらのオレンジの方が好き。試飲会で数少ない「Very Good」を付けたワインです。
ル・シガール・ヴォランは現在はGSMではなく、ムールヴェードルの代わりにサンソーとプティ・シラーが入っています。やわらかくバランスのいい味。

このほかピクプール主体のワイン、「ル・シガール・ブラン」というヴェルメンティーノとグルナッシュ・ブランのブレンドもあります。

ル・シガール・ヴォランが希望小売価格3500円(税抜き)、あとは同2900円と価格的にもだいぶ求めやすいところ。特にオレンジとロゼはぜひ試してもらいたいワインです。






Date: 2024/0328 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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渡米して最初の働き口がスクリーミング・イーグル! テロワール重視の実力派ワインメーカー
「すげえうまい」ダックホーン/デコイの実力
に続いて、中川ワインの試飲会からお薦めのワインを紹介します。

ベッドロックのソーヴィニョン・ブランは初めて試飲したような気がします。うま味あり、リッチ系のソーヴィニョン・ブランで美味しい。


マックマニスのヴィオニエは定番ですね。1000円台でこのクオリティはすばらしい。リッチですがきれいな味わい。


左のイーターのシャルドネはブレッド&バター系の味わい。ブレッド&バターと比べると少しさわやかでコスパ高い。
右のペドロンチェリのシャルドネは果実味がいい。樽はそこまで強くなく、美味しくコスパ高いです。


左のナパ・グレンのシャルドネもナパらしいリッチな味わいですが、バランスもよく美味しいです。右のリンカーン・セラーズはヴィンテージ2018年で、少し落ち着いた感じとリッチな味わいで高級感があります。


高級系シャルドネ3本です。左のリースは、リースの中ではエントリーにあたるサンタ・クルーズ・マウンテンズのキュベで8000円。うまみと酸が高次元でバランスを取っています。リースの入門としてもいいですし、クオリティは1万円超えのレベルです。ルチアのエステート・キュベはピゾーニの自社畑、ピゾーニ・ヴィンヤードとソベラネスのブドウを使ったもの。これも9500円は格安。サンタ・ルシア・ハイランズらしい濃密な果実味と酸があります。右のハドソン・シャルドネはハドソンの看板ワイン。リッチで複雑、酸がきれいで言うことありません。


シャルドネが続きます。センシーズは先日生産者ディナーで詳しく紹介しましたが、非常にきれいな作りのワイン。果実味も素晴らしい。スタッグリンのセカンド「サルース」のシャルドネは、ナパの中でもリッチ系シャルドネの代表格の一つといっていいでしょう。上品な樽感と濃密な果実味。高級感あるシャルドネです。
一番右のウェイフェアラーはいまやウエスト・ソノマ・コーストを代表するワインの一つといっていいでしょう(このワインはフォートロス・シーヴューとソノマ・コーストになっています)。冷涼な地域だけあって酸が素晴らしいし、それに負けない果実味の密度がこれまた素晴らしい。むっちゃうまいと思ったらパーカー98点ついてました。


もう一つシャルドネ続きます。中川ワインというとナパのカベルネのイメージが強いですが、今回これだけすごいシャルドネを揃えてきたのはちょっと驚きのレベルです(これまでの試飲会はワイナリーごとに並んでいたので分散して気づかなかった面もあるかもしれません)。
リースはマウント・パハロ・ヴィンヤードの2018年。5年ほど経つと酸や果実、樽の風味がすべて溶け込んで一体感が素晴らしい。これくらいで飲むのが一番美味しいような気がします。リリックスのシャルドネは、かつてセインツベリーで一世を風靡したブラウン・ランチの畑。今回のシャルドネの中ではどちらかというとリッチ系のうまさ。これも2018年。最後はシブミ・ノールのブエナ・ティエラ・ヴィンヤード。ロシアン・リバー・ヴァレーらしいやや重厚感ある味わい。リリックスとシブミ・ノール、それからひとつ前の写真のセンシーズはトーマス・リヴァース・ブラウンがワインメーカー。それぞれ味わいも違っており、トーマス・リヴァース・ブラウンのすごみを感じます。


ルーシー(ピゾーニ)のロゼはピノ・ノワール100%。果実のジューシーさと酸がきれいなロゼ。ロゼというとローヌ系品種のものが多いですが、ピノのロゼはチャーミングでちょっと違った良さがあります。


右のノリアのピノ・ノワールはロシアン・リバー・ヴァレーのウミノ・ヴィンヤードのもの。日本人の故海野さんが作った畑だそうです。きれいでエレガントなピノ・ノワール。左のルシア(ルチア)はピゾーニ・ヴィンヤードのピノ・ノワールを60%も使ったぜいたくな作り。これでピゾーニの判琢以下なのだからコスパ高いです。果実味の豊かさと高い酸が素晴らしい。


右のゴーストブロックのジンファンデルはオークヴィルのペリッサ・ヴィンヤードのもの。オーパス・ワンの隣でジンファンデルを作るという贅沢なワインです。複雑で重厚、うまみあるジンファンデル。これは美味しい。左のベッドロックのベッドロック・ヘリテージは1880年代に植えられた自社畑のブドウによるもの。複雑で重厚、酸もありレベル高いワイン。


ナパ・ハイランズのリザーブ・メルロー2020です。メルローらしいまろやかさとリッチでパワフルな味わい。美味しいです。


ハドソンのフェニックスはメルロー主体(84%)のブレンド。冷涼なカーネロスのメルローでエレガントな味わい。一般的なナパのメルローのイメージとは大きく違いますが、非常に素晴らしい。カーネロスはピノよりもメルローやシラーの方がいいのかもって思います(今回はシラーはありませんが)。


ナパ・ハイランズのカベルネは完全に定番になりました。酸もあってバランスよくトータルでよくできたワイン。リンカーン・セラーズのカベルネ・ソーヴィニョン2019はナパのヨントヴィルのブドウを使っています。しなやかなタンニンでレベル高い。個人的にはこの二つではリンカーン・セラーズを推します。


キャッターウォウルもトーマス・リヴァース・ブラウンの作。濃い旨系カベルネです。濃いの好きな人はたまらないでしょう。


フェ・マンはレアムのワインメーカーとして知られるブノワ・トゥケが自身で作るブランド。リッチ系ですが複雑な味わいも感じられます。


トネラ・セラーズのカベルネ・ソーヴィニョン2019。トネラ・セラーズの畑はナパのラザフォード、ハイウェイ29のすぐ西側でイングルヌックの隣にある小さな畑です。ここで100年続く畑でブドウはヘッドプルーンで植えられているというのは興味深いです。ワインはラザフォード・ダストと呼ばれるアーシーな味わいが特徴。最近のナパのワインとしては珍しいほどの土っぽさがあるクラシック・スタイルのワイン。これまであまり知らなかったワイナリーですが、とてもいいです。


次のモリソリも同じくラザフォードの西側でイングルヌックやJJコーン(スケアクロウの畑)のすぐ近くです。これもクラシックでアーシーなスタイル。素晴らしい。


レアムのザ・バードはセカンド的な位置付けのワイン。さまざまな単一畑のワインを作っているレアムで、これはいろいろな畑のブドウをブレンドして作られています。濃い旨系ですが非常にバランスよく作られています。

Date: 2024/0327 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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TTB(酒類・たばこ税貿易管理局)は2024年3月15日、カリフォルニアの新たなAVAとしてコントラ・コスタ(Contra Costa)を承認しました。
Contra Costa

コントラ・コスタはサンフランシスコの東方、ススーン湾(Suisun Bay)の南側になります。近隣のAVAを見ると、少し南にウェンテのあるリヴァモア・ヴァレー(Livermore Valley)、北東方面にはローダイ(Lodi)、北西方面にはナパヴァレー(Napa Valley)があります。

また、コントラ・コスタAVA自体はサンフランシスコ・ベイ(San Francisco Bay)という広域のAVAに含まれており、さらにはセントラル・コースト(Central Coast)の一部でもあります。AVAの部分的な重なりを防ぐために、今回サンフランシスコ・ベイとセントラル・コーストの領域がコントラ・コスタを完全に含むように修正されています。

コントラ・コスタAVAはススーン湾に面しているため、内陸でやや温暖ですが海からの冷気の影響も受けます。全体に標高は低く、なだらかな丘が連なっています。

ブドウ品種としてはジンファンデルなどが作られており、有名な畑としては1890年代に植えられたジンファンデルなどの畑エヴァンゲーロ(Evangelho)などがあります。

なお、コントラ・コスタは郡の名前でもあるので、これまでもラベルにコントラ・コスタと記したワインはあります。コントラ・コスタAVAはコントラ・コスタ郡に含まれていますが領域は完全に同じではありません。今後は単にContra Costaト記した場合はAVA名ということになります。

同じように郡名と同じAVA名を持ったものには、Monterey、El Dorado、San Benitoがあります(ほかにもあるかもしれませんが調べきれていません)。

Date: 2024/0326 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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マーヤン・コシツキーに続いては中川ワインの試飲会からお薦めワインを紹介します。試飲会のときはまずは端からひたすら試飲して簡単にコメントを書き、特にブログで紹介したいものなどはG(Good)やVG(Very Good)、あるいはCP(コスパ良い)といったマークを書いておきます。一通り試飲が終わるとメモを参考にこれらのマークを付けたワインの写真を撮っておいて後からまとめるという形です。試飲や写真を撮っている間は結構集中していますので、どの銘柄が多いとかはほとんど意識しないのですが、今回は改めて写真やメモを見るとダックホーンやエントリーレベルのデコイのものが多く、今回はそれだけを紹介します。


デコイのフェザーウェイトという低アルコール(9%)、低カロリー(通常の2/3)の新しいシリーズのソーヴィニョン・ブランです。軽やかな味わいですが、うまみもあって低アルコールや低カロリーであることを感じさせません。


デコイのピノ2021はソノマなどの沿岸部の涼しい地域の畑を使っており、酸がきれいでバランスの良い作り。酸っぱいという感じではなく果実味によるふくよかさもあるので、多くの人に好まれる味になっています。このレベルで2000円台は優秀です。
左のマイグレーションもダックホーンのグループで冷涼地域のシャルドネとピノ・ノワールに特化しています。このワインはロシアン・リバー・ヴァレーとソノマ・コーストのAVA名が記されています。デコイと比べてやはり冷涼感があり、飲むと酸が口中に広がる感覚がさわやかです。
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デコイの上位版のリミテッド。デコイとダックホーンの中間だと思っていただければいいのですが、価格はデコイ寄り、品質はダックホーン寄りでコスパは素晴らしいです。2019年はカベルネがとにかく素晴らしかったですが、2021はこのアレキサンダー・ヴァレーのメルローが非常に良かったです。メルローとしては酸もあって非常にきれいな作り。




本家ダックホーンからも2つのメルロー。通常のナパヴァレーのメルローはバランスの良さが秀逸で、メルローとしてはストラクチャーもあります。このストラクチャーがダックホーン・メルローらしいところと感じます。
もう一つのカーネロスのメルローは限定品でメルロー100%。カーネロスは実は秀逸なメルローが作られる地域。このメルローはしなやかできれい。タンニンもシルキーで美味しいです。ここまできれいなメルローはなかなかないと思います。





ダックホーンのカベルネ・ソーヴィニヨン2021。これも非常にバランスがよく美味しい。1万円以下のカベルネ・ソーヴィニヨンとしては現状ベストかもしれません。




こちらもダックホーンの限定版カベルネ・ソーヴィニヨン。ナパのラザフォードのものです。自分のコメントでは「すげえうまい」と書いています。バランスが秀逸で、複雑さも十分にあります。

良ヴィンテージの2021が入ってきているのもあるでしょうけど、まとめて見てもやはりメルローとカベルネを中心に、非常にバランスよく作られたワインが多いと思います。やはりダックホーン、実力のあるワイナリーだと改めて感じました。
Date: 2024/0324 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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現在のナパでトップ3のワイン・コンサルタントを挙げるとしたら、トーマス・リヴァース・ブラウン、フィリップ・メルカ、アンディ・エリクソンといったところになるでしょうか。セリア・ウェルチの方がとか、やっぱりハイディ・バレットが、とか異論はもちろん認めますが上記3人の実力がトップクラスであることはだれもが認めると思います。

この中でも数多くの顧客をかかえることで知られているフィリップ・メルカの下でワインメイキング・ディレクター、つまりはワイン造りの実質的な責任者を務めるのがマーヤン・コシツキー(Maayan Koschetzky)が来日して開催したセミナーに参加してきました。ちなみに、先日まではメイヤン・コチスチキーと記していましたが、来日を機にインポーターの中川ワインが確認したところマーヤン・コシツキーが一番近い表記ということになりました。「胸騒ぎの腰つき~♪」で覚えてねとインポーターの弁。

マーヤンはイスラエルの出身。柔道の黒帯で柔道のために日本に来たこともあるそう。マルガリットというイスラエルトップクラスのワイナリーで働いていましたが、2010年にイスラエル以外でワインを作りたいと米国に来ました。米国で得た職場がなんとスクリーミング・イーグル。たまたまスクリーミング・イーグルで人を募集していると聞いて、インタビューのために最初の渡米をしたそうです。インタビューでは家族やワインへの愛、人とのコミュニケーションなどを聞かれたそうなので、スクリーミング・イーグルで働きたい人はそういうことを考えておきましょうね。

おそらく人としての魅力が優れていたのでしょう、マーヤンは首尾よくスクリーミング・イーグルで職を得て、奥さんと息子、犬を連れてナパに移り住みました。スクリーミング・イーグルではちょうど地下のカーヴに新しい醸造設備を作り始めたところで、その経験がとても大きかったようです。畑を55のブロックにわけて別々に醸造してブレンドするなど、スクリーミング・イーグルではある意味究極的に手の込んだワイン造りをしていました。

最初はスクリーミング・イーグルでしばらく働いた後はイスラエルに戻るつもりだったのですが、他のワイナリーも見てみたいと思ったところでフィリップ・メルカに出会い、1年だけ働こうと彼の会社「アトリエ・メルカ」に移りました。

アトリエ・メルカではナパの北から南まで15の畑、25のワイナリーを6人のチームで担当していました。1年で10年分以上の経験が得られたといいます。ワイナリーによってエステートの畑を持っているところ、栽培は栽培家まかせのところ、ワイナリーのワインメーカーがいてコンサルタントはその人にアドバイスするところ… ワイナリーごとにコンサルタントのかかわり方も違います。ブレンドにこだわるところと単一畑にこだわるところもあります。

アトリエ・メルカでは就職1年後に6人のリーダーとなるディレクターに就任し、現在に至ります。

これだけでも十分すごいのですが、アトリエ・メルカ以外のワイナリーでもワインを作っています。自身のワイナリーとして作っている「ラ・ペレ(La Pelle)」と、ワインメーカーとして直接携わっている「ブリリアント・ミステイク(Brilliant Mistake)」。このほか実は2000円台の人気ワイン「スラムダンク」のワインメーカーでもあり、Royal Prince、Stralaというワイナリーでもワインメーカーをしています。

今回はラ・ペレとブリリアント・ミステイクのワインを試飲しました。

左の5本が「ラ・ペレ」。フランス語でシャベルの意味で、ラ・ペレはシャベルをかたどっています。写真の部分は畑の土壌。どれがどのワインだかは裏を見ないとわからないのがちょっと難しい。新しいヴィンテージではもう少しわかりやすくなるそうです。ブリリアント・ミステイクのボトルはおしゃれです。



ラ・ペレは栽培管理の会社とのコラボレーションで作ったワイナリーです。ナパのブドウ畑はどこも非常に高額なので、いろいろな畑のブドウを使ってワインを作るには大変なお金がかかります。栽培管理会社とコラボしたのは様々な畑のブドウを使えるようにするためです。きちんと栽培を管理している畑のブドウを使って1990年ころのようなワインを作りたいとのこと。前述のように名前は「シャベル」の意味です。栽培においても醸造においてもシャベルは必需品なので、この名前を付けました。

最初のワインはソーヴィニョン・ブラン ナパヴァレー2020。1981年に植えられた畑で無灌漑の有機栽培。剪定はカリフォルニア・スプロールと呼ばれる、ワイヤーを使わず樹1本1本が独立した形で立つ形です。マーヤンはサンセールのディディエ・ダグノーが好きとのことで、そのスタイルを目指しているそうです。例えば発酵と熟成に使う樽はダグノーと同じ葉巻型と呼ばれる細長い形のものを使っています。樽のメーカー自体、サンセールに近いところのものです。発酵は10℃くらいの低温で6~8週間かけて行い、18カ月樽熟成します。樽熟成中には様子を見てバトナージュアルコール度数11.5%というのはナパのソーヴィニョン・ブランとしては異例の低さ。PHは2.9~3.0。酸度が高く、SO2添加などをしなくてもマロラクティック発酵は進まないそうです。

第一印象としては豊かな酸と華やかな香り。最初はかんきつ系が中心ですが、時間が経つにつれて華やかさが増してグアバやパイナップルのような熟度の高いフルーツの味わいが出てきます。濡れた石や石灰岩の風味が全体を引き締めています。シリアスなスタイルのソーヴィニョン・ブランです。

次はカベルネ・ソーヴィニヨン ナパヴァレー 2019。この後は単一畑が3本続きますが、こちらは6つの畑のブレンドもの。畑別に醸造して後からブレンドします。2019年は柔らかい味わいのものになったとのことですが、飲んでみると結構タニックで骨格があるワインです。

3本目から5本目は単一畑のワインが並びます。クームズヴィルのセニーザ・ヴァインヤード、オークノールのレッド・ヘン、セント・ヘレナのアルヴィウム・ヴィンヤードです。クームズヴィルやオークノールはナパの中では比較的冷涼なAVA、セント・ヘレナは一番暖かいAVAです。

クームズヴィルのセニーザは「灰」という意味。火山性の細かい灰がある地域です。畑はオーガニックの栽培です。9月末の収穫。黒果実と赤果実。酸高く、しっかりしたタンニン。複雑味がありクラシックなスタイルのカベルネ・ソーヴィニヨンです。

オークノールの畑は砂交じりのローム。バイオダイナミクスの栽培です。収穫は一番遅く10月半ば。スタイルとしてはセニーザに似ていますが、より酸が高く、赤果実の風味が支配的。個人的にはこれが一番好きな味でした。

セント・ヘレナのアルヴィウムは沖積扇状地の土地。沖積扇状地というと水はけがよく細かい土のイメージですが、扇状地を作ってきた川の流れの変化などによって場所ごとに少しずつ違った土壌になっているそうです。畑はリア仕立て。ここはリッチなワインを作るのは簡単で、それをどう抑えるかが腕の見せ所とのこと。3本の中では明らかに一番リッチで凝縮感のあるワイン。多くの人がイメージするナパのカベルネのスタイルです。バランスよく美味です。おそらく8割くらいの人はこれが一番好きというだろうと思います。

最後のワインはブリリアント・ミステイクのg3カベルネ・ソーヴィニヨン 2019です。
2014年に始めたワイナリーで、オーナーはライナート夫妻。
ライナート夫妻
見るからにアート系の二人で、印象的なワイナリー名とボトルのデザイン。ワイン名のg3はベクストファー・ジョージ・ザ・サード(George III)ヴィンヤードから。もともとボーリュー・ヴィンヤード(BV)でNo.3という畑だったところをベクストファーが購入した畑です。150エーカーというかなりの広さの畑ですが、ブリリアント・ミステイクでは、この中でも砂利質土壌の好きなブロックを選んで使っているそうです。ラ・ペレの新樽率が60%なのに対し、こちらは80%。アルコール度数も1%ほど高い作りです。飲んでみるとやはり樽香しっかりで全体的にリッチさが増しています。ミントやハーブのニュアンスが濃いだけのワインになるのを防いでいます。

今回のセミナー、比較的少人数で最初からほぼフリートーク。質問割込みも自由という感じで「どうやってスクリーミング・イーグルに就職したの?」などぶっちゃけ質問も数多く出ました。この記事ではエッセンスのみを書いていますが、ほかにも樽トークなどいろいろと面白い話が聞けて楽しいセミナーでした。
Date: 2024/0323 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ワシントン州のワイン業界団体「ワシントン・ワイングロワーズ」がブドウをカナダのブリティッシュ・コロンビアに輸出するためのガイドラインを作成しました。

ワシントン州と米国とカナダの国境を挟んでつながっているカナダのブリティッシュ・コロンビアでは今年、寒波によってブドウの樹の多くが死んでしまい、97~99%もの収穫減になると見込まれています。ブリティッシュ・コロンビアでは昨年も寒波によって大きな損害を受けており、多くのワイナリーが存続の危機に直面しています。

一方、ワシントン州ではブドウ余りが顕著です。2023年の収穫も摘まれないまま残ったブドウがあり、さらには最大手のシャトー・サン・ミシェルが2024年のブドウ受け入れを4割カットすると表明しており、栽培家の多くがブドウの引き抜きを強いられています。ブドウが足りないブリティッシュ・コロンビア、ブドウが余っているワシントン州でどちらにも渡りに船の話です。

ただ、簡単には行かない面もあります。カナダのワイナリーの規定で一定比率以上、地元のブドウを使っていないといけないというものがあります。またワインのラベルにどう書くかといった問題もあります。ブリティッシュ・コロンビアのワイナリーの中には同じカナダ内で東部のオンタリオの方から調達を図っているとこもあります。

規定を無視するわけにはいきませんが、このままだとブリティッシュ・コロンビアのワイン産業やそれにまつわる観光など、産業がなくなってしまう恐れさえでてきている状況であり、何らかの特例措置が図られるのではないかと思います。また、多くのブリティッシュ・コロンビアのワイナリーにとってはオンタリオよりもワシントンの方がずっと距離が近く、ブドウ品種の親和性なども高いため、そちらから調達する方が自然でしょう。

互いにいい結果につながってほしいと切に願います。
Kelowna
Kelownaエリアのブドウ畑by Mack Male
Date: 2024/0321 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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ワイン・スペクテーターが選ぶ2023年のコスパワイン世界一はラ・クレマのピノ・ノワール ソノマ・コースト 2021でした。エノテカでこのワインを購入して飲みました。写真はなぜか撮っていません。

ラ・クレマのピノ・ノワールはこれまで何回か飲んだことがあります。非常に親しみやすいピノ・ノワールで、エレガント系というよりも米国らしいやや骨太の酸味が低めのピノ・ノワールだったように覚えています。

2021年のソノマ・コースト ピノ・ノワールはきれいな作り。酸もありますが、突出するわけではなく、とてもバランスよくするする飲めてしまいます。完成度高いのでピノ・ノワールの入門的にもいいと思います。

ワイン・スペクテーターの記事によると、2021年はそれまでよりも収穫時期を早めているとのこと。2020年は山火事の影響で、少し早めの収穫になったのですが、怪我の功名で、これくらい早く摘んでも全く問題がないという結論に至ったそうです。

ブドウの供給元も以前とは変わっています。ソノマ・コーストは巨大なAVAでロシアン・リバー・ヴァレーの大半が含まれ、カーネロスも一部が含まれています。ラ・クレマは、ケンダル・ジャクソンなどと同じジャクソン・ファミリーのワイナリーであり、ソノマに数多くの畑を所有し、契約農家も多数あります。ソノマ・コースト内にも多数の供給元があるのですが、以前はやや温暖なロシアン・リバー・ヴァレーに含まれるところが多かったそうです。2021年は極めて冷涼なアナポリスに近い畑や、強風の吹くペタルマ・ギャップの畑がメインのコンポーネントとなり、冷涼な地域にだいぶシフトしています。

こういったことすべてが、このバランスの良さにつながっているのでしょう。なお、ラ・クレマにはモントレーなど他地域のブドウを使ったピノ・ノワールもありますので、購入時には気を付けてください。

米国価格28ドルが3000円台というのも頑張った価格ですね。



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Date: 2024/0320 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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パッツ&ホール(Patz&Hall)がワシントン州のシャトー・サン・ミシェルの傘下に入ったのが2016年。創設者のジェームズ・ホールが2024年3月18日、ワイナリーを買い戻して独立したと発表しました。

ジェームズホール

「サンミッシェル・ワイン・エステーツからワイナリーを取り戻すこの貴重な機会は、パッツ&ホールでの過去35年にわたる私のライフワークの集大成です。パッツ&ホールが現在作っているシャルドネ、ピノ・ノワール、スパークリングワインは、私のキャリアの中でも最高級のものです。この素晴らしいワイナリーの将来の成功に貢献できることに興奮しています。」とジェームズ・ホールは語っています。

パッツ&ホールは「ネゴシアン」スタイルのワイナリーの先駆者の一つ。ソノマを中心に、ハイドやマルティネリ、ダットンなど素晴らしい栽培家と契約してワインを作ってきました。創設者でワインメーカーのジェームズ・ホールは現在は「名誉ワインメーカー」の位置づけ。2023年5月にはジェームズ・マックシーニーがシニア・ワインメーカーに就任しています。

ちなみに、もう一人の創設者のドナルド・パッツは、独立して現在はSecret Door、Maritana、Terminimというワイナリーを経営しています。

個人的にも好きなワイナリーの一つなので、今後も頑張ってほしいです。一度大手資本の傘下に入ったワイナリーが独立するという例はあまりないので期待しています。
Date: 2024/0318 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ジョセフ・フェルプス(Joseph Phelps)をご存じでしょうか。インシグニアというボルドー・ブレンドが有名なナパのワイナリーです。私がカリフォルニアワインにはまり始めた1990年代頃には「玄人のオーパス・ワン」といった異名もありました。オーパス・ワンはだれもが知っているカリフォルニアの名門ですが、詳しい人は実力で優るインシグニアを選ぶよ、といった意味が込められていたと思います。

実際、ロバート・パーカーのレイティングでは100点を4回取っており(オーパス・ワンは0回)、ワインスペクテーターのワイン・オブ・ザ・イヤーも受賞したことがあります(オーパス・ワンはなし)。評論家の評価ではインシグニアが上回っているといっても過言ではないでしょう。

ただ、カリフォルニア・ワインに詳しい人も、「インシグニアって畑は何?」とかって聞かれたら答えられない人がほとんどではないかと思います。オーパス・ワンならト・カロン、ドミナスならナパヌック、シェーファーならヒルサイドなど、そのワイナリーのある地域の畑と結びつくイメージを持つことが多いですが、インシグニアにはインシグニアという名前以上のイメージがあまりありません。

また、ジョセフ・フェルプスは様々な分野でナパをリードしてきたワイナリーでもあるのですが、そのこともほとんど知られていません。オーパス・ワンと同じレベルで知られていいワイナリーでありワインであるのですが、意外とちゃんと知られていない、そういう面があります。

建築業を営むジョー・フェルプスが設立したジョセフ・フェルプスは、ジョーの死後も家族が支えてきましたが、2022年にLVMH(日本ではMHD)傘下に入りました。元オーパス・ワンのデイビッド・ピアソンが社長に就任しています。

この体制になって初めての国内のイベントが開かれて、参加させていただきました。


ジョー・フェルプスは1960年代にサンフランシスコにオフィスを持ち、ナパにおけるワイナリーの建築にも携わるようになりました。それがきっかけでナパに土地を買い、1973年にワイナリーを始めます。最初のワインメーカーはドイツ出身のウォルター・シュグ。彼のリードによってナパで初めてのワインをいろいろと生み出します。まず、インシグニアはいわゆるボルドー・ブレンドの先駆者であり、一方で単一畑の名前を付けたワインでも先駆者の一つとなっています(アイズリー・ヴィンヤード)。このほかナパで初のデザート・ワイン、ナパで初のシラーなど次々に新しい試みを行っていきました。

1990年代にはソノマ・コースト(現在のウエスト・ソノマ・コースト)のフリーストーンにシャルドネとピノ・ノワールの畑を作りました。ナパのワイナリーで現ウエスト・ソノマ・コーストに進出した例は、後にウェイフェアラー(ナパのパルメイヤー)、ボアズ・ビュー(ナパのシュレーダー)などがありますが、1990年代にここに狙いをつけたのは慧眼といっていいでしょう。

また、ジョセフ・フェルプスは実はナパの中でも大地主です。ワイナリーのあるセント・ヘレナのほか、ラザフォード、オークヴィル、スタッグスリープ・ディストリクト、オーク・ノール、カーネロス、そしてサブAVAのないところを含めて9つの畑を持ち、総面積は425エーカーに上ります。例えばスタッグスリープに二つある畑の一つは有名なFAYの隣、もう一つはクリフ・レイディのポエトリーの畑のはす向かいなど、どの畑もびっくりするくらい一等地にあります。

インシグニアは、2004年以降は自社畑のブドウのみで作られています。普通のワイナリーだったら、それぞれ単一畑のワインを作っても全くおかしくないような畑のブドウをブレンドして作られているのがインシグニアなのです。単一畑としての最高を目指すのではなく、ブレンドによって最高を目指す、そんなワインです。ブレンドでフラッグシップを作るのはオー・ボン・クリマのイザベルもそうですが、意外とレアな存在であり、そもそもインシグニアがそういうスタイルであることももっと知られていいと思います。ちなみに、各ヴィンテージの畑の比率は公開されていますが、結構毎年比率は異なります。例えば今回試飲した2019年は比較的暖かい年だったせいか、やや冷涼なオーク・ノールの「Yountville」という畑のブドウが多く使われています。

自社畑における栽培では再生農法に取り組んでいます。これは土をかつての健康な状態に戻すというコンセプトの農法で、2023年頃からしばしば話題に上るようになりました。ナパではガーギッチ・ヒルズが認証を取っており、ハーランも同じような取り組みをしています。

今回はインシグニア2019とナパヴァレー・カベルネ・ソーヴィニヨン2021を試飲しました。ステーキとのペアリング付きです。




インシグニアは100%フレンチオークの新樽で2年間熟成。その後9カ月の瓶熟を経て出荷されます。
2019年は鉛筆の芯やカシス、ハーブ、生肉、コーヒーの風味があり、濃厚でパワフルなワイン。タンニンは強いがしなやかで非常に長い余韻を持ちます。多くの人がイメージするナパのカベルネの最高峰といっていいでしょう。
一方、ナパヴァレーのカベルネは新樽率は48%で、樽の半分はアメリカン・オークを使っています。その樽からくるココナッツのような甘やかな香りが特徴で、インシグニアと比べるとややタンニンが強くがっしりとしたストラクチャーを持ちます。インシグニアの洗練さと比べるとちょっと武骨な印象のあるワインです。
デイビッド・ピアソン氏はジョセフ・フェルプスのワインはしなやかなタンニンがあるので、魚料理にも合うとしていました。単純にどの魚料理でも合うわけではありませんが、特にインシグニアは幅広い料理にも合わせられそうです。

ジョセフ・フェルプスは2015年にワイナリーを拡充し、従来のワイナリー部分をゲストセンターにしています。今後はワイナリーに来る人たちをファンにすることにも一層力を入れていくようです。

インシグニアのすごさ、少しは伝わったでしょうか。機会があったらぜひ飲んでみてください。

Date: 2024/0313 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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コッポラ
フランシス・フォード・コッポラ・ワイナリーが、ダイヤモンド・コレクションのシリーズに「ヴァイブランス」というピノ・グリジオを追加すると発表しました。急速に市場を広げようとしている低カロリー、低アルコールの流れに沿っています。具体的には5オンス(約140ml)で80カロリー、アルコール度数は8%。

コッポラ・ポートフォリオのマーケティング・ディレクターであるメアリー・ワコヴィッチは、「低カロリー、低アルコールのワインに対する需要は昨年来急増しており、ダイヤモンド・コレクション "Vibrance "は、ライト・ワイン・カテゴリーで最も人気のある品種と価格帯でその需要に応えています」とコメントしています。スーパープレミアムワイン(11~14.99ドル)は、ライトワインカテゴリーの中でも活況を呈しているセグメントで、ライトワインの中で最も売れている価格セグメントとして、総売上額の40%という大きなシェアを占めます。

日本でも低アルコール、低カロリーの流れが来るでしょうか。このワインが売れるか売れないかは別問題で気になるところです。
Date: 2024/0312 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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Wine Library TVというYouRubeチャンネルをご存じでしょうか。YouTubeが今のようにメジャーになる前に人気のあったチャンネルです。2006年に始まり、2008年までほぼ毎日10数分の動画を更新していた人気のチャンネルでした。このチャンネルが名前を変えて復活するという話が出ていました(The Original Wine Influencer Is Back Making Wine Content Great Again - Men)。

チャンネルの主宰者はゲイリー・ヴェイナーチェック(Gary Vaynerchuk)という人。ゲイリーヴィー(Garyvee)というニックネームで知られています。ベラルーシの出身で家族で米国に移住。ニューヨークでワインショップを営む父親のもとで始めたのがWine Library TVでした。
彼の情熱的な語りは多くのファンに支持され、人気チャンネルとなってテレビ出演やベストセラー本の出版などにつながりました。彼はその後、ソーシャルメディア・マーケティングなどを行う起業家として活躍。今にいたります。

ちなみにYouTubeチャンネルの登録者は3万8000人と、今の水準から比べるとだいぶ少ないです。今とは時代の違いを感じます。以前はYouTube以外でも配信していたような気もしますが、さすがに遠い話で忘れました。ともかく、ゲイリーヴィー自身、今ではSNSのフォロワーが4400万人を超えるというから、すごいものです。

その彼が、ワインのチャンネルを新たに始めたのが今回のニュース。WineText TVという名前で視聴者に新しいワインの発見を促し、流行のワインの間違いを暴くことを目的としているそうです。

動画を見るとだいぶふけたなあとは思いますが、しゃべりは変わっていないですね。


Date: 2024/0309 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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「自然派ワインは、ブドウ品種の特徴が分かりにくい」と言われています。これがどうしてだろうという疑問をXやFacebookで投稿したところ、いろいろとご意見をいただきました。自身の覚書を兼ねて、まとめておきたいと思います。

といっても、そもそもこの命題自体があいまいなものであり、ミスリーディングにつながる可能性もあります。ひとつには自然派ワインという言葉自体がきちんと定義されたものではないからです。一般には、有機農法による栽培を実践していて、醸造は天然酵母で、SO2は瓶詰め時にごくわずか使うか、あるいは全く使わないといったところが共通項かと思いますが、実はこれだけだと、オーパス・ワンなんかも自然派ワインと呼べてしまうことになります。もちろん、オーパス・ワンを自然派ワインと呼んでも構わないですが、「自然派ワイン」と聞いてオーパス・ワンをイメージする人はほとんどいないでしょう。

それから、すべての自然派ワインがブドウ品種の特徴が分からない、というわけではありません。あくまで一般論としてそういうものが多いという話です。

あと、転載許可をいただいていないので、一応お名前は伏せさせていただきます。

ワインショップWさん
私的な意見では、ブドウの熟度が低めで個性差が出る前のため、単純な酸と糖のみで構成されてる事が大きな原因かと、完熟した時に香りや色で他の生物を引き付け広まるというのが一般的な生物学的な話やったと思うので、、 
またSO2控える事で使える技法にも制約あるので幅広い味合いを作るにはハードル高いとは感じています。
因みにテロワールに関しで、土壌や気候はワインの成熟のプロセスに関わる要素と言う事であると考えると、成熟が完全に進む前に収穫するとその差も感じにくくなる様に思います。

WSET Diploma Hさん
個人的にはブドウの熟度の問題と結局品種特徴が出るのには人の手が掛かっているということが要因かなと思ってます。
野生酵母自体はナチュラルワインに限らず一般的に使用されていますが、SO2添加がされないことによりバクテリアとかのコントロールも不自由になるからそういったものがはたらいているが故の味に近づくのではないですかねぇ。
熟度が高いブドウを使ってクリーンに作られてちゃんと特徴が出ているワインももちろんありますが、一般にナチュラルワインと巷で言われるものは一方向を向いてますよね。
単純ゆえにウケてるという部分もあるのでしょうがファッションの側面も強いから扱いが難しいですね。

WSET Diploma Tさん
皆さんがコメントされてるように熟度や酵母といった理由はもちろんあると思いますが、最も大きな理由は品種個性を出すための介入をきちんとしていないからだと思います。
乱暴な言い方をすれば、これまで品種個性を強調するための先人たちの努力を無視した造りをしているから、でしょう。
例えばソーヴィニヨンブランの特徴的なアロマ。要因となる化学物質の特性をよく理解しているからこそ、収穫方法・温度・酸素との接触といったオプションを適切に行い、その個性を活かしてきました。それらをしていなければ、当然個性は失われます。
例えるなら良い食材と適切な調理法の組み合わせです。正しい火入をすることによって得られる風味や食感、それは調理法のみによってはえられず、やはり食材がなければ生まれません。そういうことかと認識しています。

ワイン講師Iさん
醸造上のナチュール系という事に限れば、似た味わいになるのはブレットと酸化によるものと思っています。酸化の部分は長期熟成のワインが似た風味になるのと同じ原理かと。
栽培のナチュール(バイオダイナミックなど)ではむしろテロワールの違いがはっきり出るように思います。かつてシャプティエとソノマのベンジガーのブランドマネージャー時代にその違いは徹底的に経験して来ました。現在BMのシャンパーニュ・トリボーも有機栽培転換以来、明確に品種、テロワール特性を感じる様になりました。

有名ソムリエYさん
「ナチュラル」に属するワインの全てに起こる現象では全くない、という前提が必要ではありますが。。。
一部のワイルド系ナチュラルでは、揮発酸、ブレタノミセス、還元臭といった「クラシック」でもごく普通にある風味香味が過度に出過ぎて「欠陥」の領域に入ることがあり、それらは確かにテロワールと我々が呼んでいる特徴に厚いヴェールをかけてしまうと思います。いわゆる「ネズミ臭(通称、マメ)」と呼ばれる欠陥だけは論外ですが。。。
ただし、これらの現象が発生する理由が、醸造過程における亜硫酸無添加が直接的なものとは言い切れませんね。むしろ、温度管理等を含めた醸造中の様々なコントロールの不備によるものが大きいかと考えられます。実際に瓶詰め前の極々僅かな亜硫酸添加のみで、クリーンなワインとなっているものも多々ございますので。
野生酵母を使用して問題が起こるケースは、むしろ葡萄畑の方に原因があると考えるのが、現状では一般論かと思います。(農薬を使用し過ぎて、酵母の質と量がよろしくない。収穫期の雨で酵母が流れた、などなど。)
過度の添加物を使用し、醸造技術で矯正しまくったタイプの「クラシック」もテロワールは歪んで金太郎飴状態になりますので、このあたりはどっちもどっちと考えるのがフェアかと思います。
一応、「カーボニック・マセレーション」や「バトナージュ」などの一般的なテクニックでも大なり小なり同様、とまた前置きしておきますが、あくまでもテロワールや葡萄品種の個性が分かりにくくなるだけで、消える訳では無いというのが私見です。
どれだけ揮発酸が出ていても、ジュラはジュラの味がしますし。。。
ご指摘の通り、かつては無添加醸造を目的とした低pH収穫(つまり早摘み)が主流になりつつあった時代がありましたが、現在この点に関しては大幅に改善されています。ポリフェノール類が未熟な葡萄は、亜硫酸の助け無しに自身を守りきれないと、多くのナチュラル派生産者がすでに理解しています。

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早摘みや醸造上の不備が品種特性を覆い隠す原因になっていそうなことは分かってきましたが、ケースバイケースの部分もかなりあるということなのでしょう。また、「自然派ワインは」と一緒くたに語ること自体、いい意味でも悪い意味でも視野を狭めてしまうことになるのでしょう。確かに「カリフォルニアワインは…でしょう」と雑なまとめ方をされてあまりいい気持ちはしませんから、同じことは言えると思います。

まとまったようなまとまらないようなことですが、いろいろ考えさせられる部分もあり、個人的には質問を投げかけてよかったと思っています。
Date: 2024/0308 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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2023年のカリフォルニアの「クラッシュ・レポート暫定版」が公開されました。カリフォルニア州各地のブドウの収穫量、取引価格、糖度を品種別に調査したものです。

過去のレポート
カリフォルニアの2022年のブドウ収穫量、2020年を下回り過去十数年で最少
カリフォルニアのブドウ収穫、2021年は前年より増加
カリフォルニアのブドウ収穫、2020年は大幅減少し過去10年で最少
カリフォルニアワイン、供給過剰で2019年は収穫量減少
2018年のカリフォルニアのワイン用ブドウ収穫量は過去最高
2017年の収穫量は2016年から微増
2年ぶりに400万トンを超えた2016年の収穫


収穫量
全体の収穫量は372万9000トン。2022年の335万トン、2021年の360万トンを上回りました。ただ、この両年は続く干ばつで収穫量がかなり減っていたとき。2018年には450万トンありましたから、それをだいぶ下回っています。2023年は雨が豊富で非常にコンディションの良かった年。収穫量は意外と増えていないというのが正直な感想です。

ワイン・サーチャーの記事「California 2023: More Better Wine」によると、どうやら実際にはブドウの売り先が見つからずに収穫されないままのブドウが少なからずあったようです。需要の伸び悩みが収穫量に反映されていると思われます。

赤ワイン用ブドウは2.3%増の195万9000トン、白ワイン用ブドウは15.3%増えて170万9000トンと、赤と白の差がだいぶ小さくなりました。これも白ワインの需要が増えていることを表していると思われます。

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価格は上昇を続けています。赤ワイン用のブドウは2022年と比べても1トンあたり100ドル以上上がっています。価格では赤ワイン用ブドウの上昇が大きく2022年から13.6%上昇、白ワイン用ブドウは6.4%増えて733.33ドルでした。

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品種別の収穫量では2022年にカベルネ・ソーヴィニヨンが1位になりましたが、2023年はまたシャルドネが1位に返り咲きました。3位フレンチ・コロンバール、4位ピノ・ノワールは昨年と同じです。
Date: 2024/0307 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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しあわせワイン俱楽部のお薦めは前の記事に載せたので、他のショップからのお薦めを紹介します。

「業務用酒販 ふじまつ」のパイン・リッジ シュナン・ブラン/ヴィオニエ。このワイン、さくらアワードで女性ワインメーカーの賞を受賞しています。癒される味わいで個人的にも好きなワイン。他の店は1900円程度しますので1300円台は安いです。


「赤坂ワインストア エラベル」のコッポラ ダイヤモンドコレクション カベルネ・ソーヴィニヨン。他の店が2800円以上、輸入元のエノテカだと3600円しますから2100円台は安いです。


「リカオー:のシャンドン スパークリング ロゼ。そもそもほかに売っている店を見かけませんが、2200円台という価格には文句のつけようがありません。


「リカオー」のカレラのエントリーレベルのシャルドネ。3100円台は他のショップより300円程度は安いです。


という上のワインは見せ球で、実は本命はこっち。カレラのマウント・ハーランの自社畑のシャルドネです。送料込みで4600円台は間違いなく激安。他のショップより2000円以上安いです。ショップは上と同じリカオー。


同じくリカオーからボーリュー(BV)のタペストリー・リザーブ。濃い系カベルネ好きにお薦め。これも他のショップより2000円以上安い。


「業務用酒販 ふじまつ」のロバート・モンダヴィ オークヴィル カベルネ・ソーヴィニヨン。1万1000円台は1ランク下のナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンの価格レベル。オークヴィルは実質ト・カロン・ヴィンヤードというぜいたくな作りで実は「一番安いト・カロンのカベルネ・ソーヴィニヨン」なのです。これはお得。

Date: 2024/0306 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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楽天スーパーセールに合わせてしあわせワイン倶楽部でいろいろ安くなっています。さすがに昨年秋のセールのときほどの大盤振る舞いではないですが、今回もいろいろ安いです。特に驚いたのがレイン(Raen)のセント・ロバート・キュベ ピノ・ノワール2021が2割引になっていること。

このワイン、昨年のワイン・スペクテーターで年間4位というワインです。当然ながらインポーターは完売しています。私も「WSで年間4位のレイン、8ヴィンテージを垂直で飲む」で飲んでおりますが、そこでも良ヴィンテージでちょうど飲み頃に入った2019に次ぐ美味しさに感じました。おそらくこれも数年熟成させればさらに良くなるでしょう。

ちなみに4位が決まった瞬間に1本購入していますが、そのときよりも今回の方が2000円以上安いです。おそらく世界最安といってもいいでしょう。



30%オフのコーナーではコスパ系がお薦め。
ディヴァムは元カレラの人が作っているワインとしてここ数年コスパ系シャルドネ/ピノ・ノワールの人気ワインになっていますが、今回はピノ・ノワールが3割引きで1584円。ほかの店は2000円超えますからまとめ買い推奨です。現地価格は20ドルとのこと。


もう一つコスパ系カベルネとシャルドネの「ジ・アトム」のシャルドネの方が1276円とこれも現地価格割れ。ほかの店は1700円以上します。リッチでカリフォルニアスタイルのシャルドネです。


さらに、瓶内二次発酵方式の中ではコスパ抜群のラック・アンド・リドルのブリュットも2233円。普通は3000円程度するスパークリングでその価格でも十分お得なのにこれは安いです。


20%オフではピーチー・キャニオンの「ウェストサイド」ジンファンデルもお薦め。先日の「Aliveテイスティング」のレポートでもお薦めにあげているワインです。3000円台で本格ジンファンデルは安いです。


ストルプマンといえばシラー、シラーといえばストルプマンというくらいシラーが得意なストルプマンからは「パラ・マリア」。カーボニック・マセレーション(ボージョレ・ヌーヴォーと同じ方式です)を使うことで、ふくよかでチャーミングなシラーに仕上げています。この味がきらいな人はいないだろうと思うワイン。


チャールズ・スミスのリースリング「カンフーガール」はときどき飲みたくなるワイン。甘酸っぱさがほっとさせてくれます。


高いけど安いのがフォーチュネート・サンのカベルネ。「カルト・ワイン」系の雄であるハンドレッド・エーカーの姉妹ブランド。2万6224円は高いけど割安です。


Date: 2024/0305 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ソノマですばらしいシャルドネやピノ・ノワールを作ってきたフリーマンのアキコさんと新作をいただきながらランチする機会をいただきました。

2019年のランチ・セミナー
ソノマのエレガンス、フリーマンのワインを堪能
2020年のウェビナー
フリーマンのアキコさん、スパークリングに挑戦中と表明
2021年のインタビュー
「レイト・ディスゴージやロゼ・スパークリングも造ってます」――フリーマン・アキコさんに訊く
直近のフリーマン関連の記事
フリーマンのアキコさん、農業への功績で表彰 国外女性では初

前回インタビューしたのは2022年に初めてのスパークリングを発売する直前でした。その後2023年にはロゼ・スパークリングを出しましたが、もともとこれはイレギュラーの産物。2020年の山火事で、ピノ・ノワールの早めの収穫を余儀なくされたため、スパークリングにしたのでした。このロゼが好評だったため、次のヴィンテージからも作り続けることになりました。最初のワインは2ヴィンテージ目となる2021年のロゼです。


畑は前ヴィンテージと同じくウエスト・ソノマ・コーストの自社畑「ユーキ・ヴィンヤード」。その中でも一番果実が熟すのが遅い、斜面の下の部分のブロックを使っています。Brix17で摘んでいるとのこと。上の方のブロックとは熟すのが2週間くらい違うそうで、スパークリング用の収穫がスティルワイン用の収穫よりも遅くなることさえあるそうです。

ロゼは色が大事で、玉ねぎの皮の色を目指しているそう。カリフォルニアのロゼ・スパークリングはかなり色が濃いものも多く、ブラン・ド・ノワールでもこれくらいの濃さのことがありますが、色一つ取ってもフリーマンらしい奥ゆかしさが感じられます。

ちなみに、2020年のロゼは色が薄くなりすぎて、スティルのピノ・ノワールを少し足して色を出したそうです。スパークリングは安定させるために、マロラクティック発酵が終わった後にワインを冷やして酒石を析出させて取り除くそうなのですが、そのときに酒石に色が取られてしまったとのこと。今回は色を少し濃く出すために、果実をプレスして果汁を出した後、数時間果皮と接触させて色を付けているそうです。

一次発酵後はピノ・ノワールの古樽で熟成させました(前ヴィンテージはシャルドネの古樽)。またドザージュは1リットルあたり1g。ブラン・ド・ブランはノン・ドザージュですが、これは酸のエッジを取るために少しだけ糖分を入れています。

2021年のロゼは口に含むと酸が広がり、オレンジのような柑橘感を強く感じます。イースト香もかすかにあり、アニスの香りがアクセントになっています。第一印象は酸の高さから、色を見なければシャルドネと思ってしまいそうですが、多少グリップのある味わいがピノ・ノワールを思わせ、また幅広い料理に合いそうです。「酸が基調になっていて、クオリティの高さに驚いた」とマンダリンオリエンタル東京の野坂ソムリエ(全日本最優秀ソムリエ)。

この日のレストランはマンダリンオリエンタル東京の中華料理「Sense」。非常に上品なそして素晴らしい香りの料理でフリーマンのワインともとても良く合いました。

蒸し点心

京鴨と芽葱のダックロール

次のワインは新作のリースリング。リースリングについては2021年のインタビューでこのように語っています。
私自身はリースリングが好きなんです。実はうちの向かいにロス・コブさんの畑があって、そこでリースリング造っているんです。いいなあと思って見ているのですが、まだ自分で作るのはやっていないです。ウエスト・ソノマ・コーストのワイナリーの方も家ではリースリング飲んでいる方意外と多いんですよ。
アキコさんの家ではタイ料理を作ることも多く、フリーマンのシャルドネやピノ・ノワールはそれにはあまり合わないため、それもリースリングをよく飲む理由の一つだそうです。

すると、アキコさんが出張で留守にしているときにご主人のケンさんがロス・コブさんと話をしてリースリングを1トン分けてもらえることになったとか。アキコさんは事前に何も聞いておらず最初はどうしようと思ったそうですが、ロス・コブさんが作り方も教えるよということでついに初のリースリングを手がけました。

コブのリースリングというと「コール・ランチ」という自社畑のものが有名ですが、今回の畑はそれとは別の「アビゲイル」。もともとバーローさんという人が所有するピノ・ノワールの畑だったところを、マット・ペリーという人が手に入れました。この人はロス・コブさんの資金面の援助もしていて、またアキコさんのリースリング飲み仲間でもあったそう。そんなことから2019年にピノ・ノワールの一部を接ぎ木してリースリングに変えました。アビゲイルというのはマット・ペリーさんの娘さんの名前だとのこと。

コブではリースリングを2回に分けて収穫するのですが、フリーマンではそのうちの早摘みしたものを使っています。シャルドネの古樽で樽発酵・熟成しています。

フリーマンのシャルドネは涼風という名前が付いていますが、リースリングは光風。日本国語大辞典によると「雨あがりの、日をあびた草木に吹く風。また、春の日がうららかに照っている時さわやかに吹く風。」という意味だそうです。涼風も光風も季節を表す言葉ということで選んだのだとか。


ボトルはドイツやアルザスの細長いタイプではなくシャルドネと同様のもの。ボトルの高さが変わると梱包材も変えないといけないので、アルザス風にはしなかったそうです。

スパークリングと共通するのは、芯の通った酸があること。残糖があるタイプのリースリングではなく完全にドライなので酸が際立ちます。レモンオイルのようなオイリーさがあり、白桃のような熟した果実の風味やナッツもわずかに感じます。白檀のようなすっとした香りもあります。ドイツやアルザスのリースリングとはまた違った個性的なリースリングで「酸フェチ」だというアキコさんらしい味わいになっています。なお、アルコール度数は12.2度とカリフォルニアのワインとしてはかなり低いです。


シロクチベラの葱生姜蒸し

「海鮮仏跳牆(ぶっちょうしょう)」。修行僧も壁を飛び越えて食べにくるというスープ。とんでもなく香りがいい。

次のピノ・ノワールに行く前に、昨年フリーマンに加わったアソシエート・ワインメーカーの赤星映司さんについて伺いました。赤星さんとは昨年4月にナパでSilenusのワインメーカーとして会ったことがあります。南米の生まれで、かの長沢鼎の親戚筋でもあります。アキコさんと赤星さんは10年以上前に日系人のワインメーカーの集まりで会ったことがあったそうです。

フリーマンではアキコさんがワインメーカーとして清掃などの力仕事も全部やっていますが、ケンさんがもう少し楽にしたらということで、アシスタントを探し始めました。赤星さんがその噂を聞いて、メールしてきたそうです。これまでは主にナパのワイナリーで働いてきましたが、ピノ・ノワールを作りたいという夢があったそう。話をしたら、実は先祖が知り合いだった、醸造を学んだフレズノ大学はアキコさんの師匠のエド・カーツマンの母校でもあり、エド・カーツマンの講義を赤星さんが受講したことがあるなど、つながりもありました。そんなことからアソシエート・ワインメーカーとして来てもらったそうです。


活蝦夷鮑のオイスターソース煮込み

さて、最後のワインはピノ・ノワールのフラッグシップ「アキコズ・キュベ」です。


フリーマンでは、フラッグシップのピノ・ノワールをバレル・セレクションで作ります。アキコさんだけでなく、ケンさんや、師匠のエド・カーツマンさんも、自分がいいと思う樽を選んでブレンドし、ブレンドしたものを全員でブラインド・テイスティングしてどれにするかを決めます。アキコさんが勝つと「アキコズ・キュベ」という名前にするのですが、これまでアキコさんが全勝というのがすごいところ。ちなみにケンさんが勝ったら「ケンズ・スペシャル」、エドさんが勝ったら「エドズ・オーサム」という名前を付けることになっているそうです。

アキコさんにブレンドの秘訣を聞きました。「いろいろな味が口の中でヒットするように作っている」、例えば「香りがいい、スパイス感、ミッドパレット、フィニッシュがいいものなどを選抜する」とのことで、米国のファンはアキコズ・キュベの味わいを「パーティ・イン・ア・マウス」と呼ぶそうです。

これには私も納得というかなるほどと思いました。アキコズ・キュベは何度も飲んでいてその美味しさはもちろん知っていますが、味の形容が意外と難しいとも感じていました。非常にバランスがよく、一方で何か突出して素晴らしいというのとも違うからです。アキコさんのブレンドの秘訣を聞いて、なるほど、そのように計算されて作られていたのだなと合点したわけです。

フリーマンではフランスの樽メーカー5社から樽を仕入れています。ピノ・ノワールでは新樽率35%、シャルドネは10%程度。畑やクローンと樽との相性などもあり組み合わせはものすごい数になります。ワインは1年に1回しか作れないことを考えると最適な組み合わせを見つけるのはむちゃくちゃ大変そうです。

2020年は作れなかったアキコズキュベ。2021年は収穫量は少なかったですが平穏な年でした。
味わいはフランボワーズやざくろ、赤果実の風味ですが熟度の高さを感じます。タンニンもありストラクチャーがしっかりしています。もちろん酸も通っています。さすがの美味しさです。

バランスの良さとストラクチャーの感じはカレラ・ジェンセンあたりにちょっと通じる気がしますが、カレラは赤果実というより黒っぽさがあるので、それともまた違うんですよね。オクシデンタルも、もう少し黒系に寄っている気がするし、赤果実のキレイさとストラクチャーを持っているピノというのは意外と見つかりにくいかもしれません。


皮付き豚ばら肉と花彫紹興酒の角煮。豚はメキシコ産でチルドで来るそうです。日本の豚は皮の下の脂肪が多く、皮を付けたものはメキシコ産が向くとのこと。


ズワイガニと天使エビのワンタンメン




来年には赤星さんも連れて来日したいというアキコさん。今後のワインもますます楽しみです。
Date: 2024/0304 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ソノマ・コーストやロシアン・リバー・ヴァレーの銘醸畑からすばらしいワインを作るセンシーズ(Senses)が国内本格輸入が始まり、創設者のひとりであるクリストファー・ストリーターが来日し、ディナーでワインをいただいてきました。

センシーズの国内輸入は2019年に始まっていました。ただ、ワインショップ「パリ16区」の独占販売という形だったので、同ショップとつながりがない人には届いていなかったかもしれません。当時、ワインのサンプルをいただいた記事がこちらになります。
センシーズのワインを検証、トーマス・ブラウンの実力にうなる

今回、中川ワインが輸入を始め、より手に入りやすくなりました。

クリストファーは昨年のAliveテイスティングにウエスト・ソノマ・コーストのワイナリーの一つとして参加しており、そのときに対面しています(実は忘れていたのですが、彼から「去年会ったよね」と言われました)。



今回のワインは6種。シャルドネとピノ・ノワールが3種類ずつです。
シャルドネ ロシアン・リバー・ヴァレー 2019
シャルドネ チャールズ・ハインツ ソノマ・コースト 2021
シャルドネ エル・ディアブロ ソノマ・コースト ロシアン・リバー・ヴァレー 2021
ピノ・ノワール MCM88(キーファーランチ) ロシアン・リバー・ヴァレー 2021
ピノ・ノワール デイ・ワン(ヒルクレスト・ヴィンヤード) ロシアン・リバー・ヴァレー 2021
ピノ・ノワール ボデガ・ティエリオ・ヴィンヤード ウエスト・ソノマ・コースト 2021

センシーズは幼馴染の3人で始めたワイナリー。その一人のマックス・ティエリオットは銘醸畑として知られるB.A. ティエリオットの畑のオーナーの息子であり、もう一人のマイルス・ローレンス・ブリッグスも両親がヒルクレストという畑の創設者です。クリストファーは大学では経済や財務を学び、卒業してジャクソン・ファミリーで働き始め、創設者のジェス・ジャクソンからワインビジネスの面白さと難しさを学んでワイナリーをやりたいと思ったそうです。弱冠22歳(あとの2人は21歳)のときに、3人でワイナリーを始めることにし、最初は100ケースからスタートし、徐々にビジネスを拡大して現在は5000ケースにまだなりました。マックス・ティエリオットは俳優としても有名で、マーケティングなどを担当。芸能人の知り合いなどハイエンドのワインが好きな顧客とのコネクションが高品質なワイン造りにも役立っているとのことです。またマイルスは料理が大好きで、畑の管理を主に担当しています。

畑の持ち主の息子ということから近隣の他の銘醸畑とのコネクションも数多く持っており、それがセンシーズのワインに生かされています。また、ワインメーカーはかの有名なトーマス・リヴァース・ブラウン。彼から3人に声をかけてワインメーカーになったという、引く手あまたの有名ワインメーカーから見染められるというのも異例の展開ですが、これもティエリオットの畑があったからこそです。クリストファーによると彼はとても賢い人だから、ティエリオットのブドウを手に入れるチャンスだと思ったのだろう」とのこと。実際、トーマスはティエリオットのシャルドネをその後作るようになりました。また、トーマスは多くの場合「コンサルタント」としてワイナリーに携わっていますが、センシーズではワインメーカーとして密にワイン造りを行っています。醸造もナパのカリストガにあるトーマスのワイナリーで行っています。

ワインの話に移りましょう。
シャルドネ ロシアン・リバー・ヴァレー 2019
名目上はAVAものですが、実際には超有名栽培家のダットン・ランチのブドウをメインで使っています。ちなみにダットン・ランチはキスラーやパッツ&ホールなどもワインを作っており「ダットン・ランチ」の名前を付けていますが、実際には単一畑ではなく数多くの畑の集合体になっています。センシーズで使っている畑はグリーン・ヴァレーのブッシュ・ヴィンヤードというダットンの畑だそうです。センシーズのポリシーとして、安いワインを作るために質の低いブドウを調達するようなことはしないとのことで、レベルの高い畑からだけブドウを買っています。

ついでにちょっとややこしい話をするとラベルにはロシアン・リバー・ヴァレーと書いてありますが、実質的にはグリーン・ヴァレーと名乗ることもできるし、ソノマ・コーストと名乗ることも可能です。どれを名乗るかはワイナリーの選択次第でどちらかというとマーケティング的な面が大きくなります。センシーズの場合、シャルドネ・ソノマ・コーストというAVAもの(日本未発売)もあるので、こちらはロシアン・リバー・ヴァレーとしているのでしょう。

ミネラル感やレモンオイル、ほのかなバニラの香り(新樽率は5%くらいと低いです)。リッチですがすごく上品できれいなワイン。センシーズのシャルドネの中ではエントリー的な位置付けですが、それにしてはレベルの高いワイン。


この日のレストランはエディション東京の「The Jade Room」。イギリス出身のシェフによる「今のイギリスの料理」を出しています。フランス料理と比べると素材の味をより生かしているように感じます。

2本目のワインに移ります。
シャルドネ チャールズ・ハインツ ソノマ・コースト 2021
チャールズ・ハインツも言わずと知れた銘醸畑。近年では入手困難なスパークリングワイン「ウルトラマリン」が使っている畑としても知られています。
最初のワインと比べるとゴージャスなワイン。白桃やパイナップルなど熟度の高いやわらかい果実味にはちみつやブリオッシュの風味。かといってビッグすぎないバランスの良さも光ります。センシーズは風味を引き出すために収穫は比較的遅めにしているのですが、チャールズ・ハインツの畑では貴腐化したブドウが必ず一部に入るとのこと。はちみつの風味はそのあたりから来ているようです。


ビーツにすだち、キャビア、干し草

シャルドネ エル・ディアブロ ロシアン・リバー・ヴァレー 2021
エル・ディアブロはロシアン・リバー・ヴァレーのミドル・リーチと呼ばれる比較的温暖なところにある畑。センシーズの使っている畑の中では一番内陸にあります。オーベールの「East Side」と同じ畑だとのこと。センシーズの多くの畑がゴールドリッジという水はけの非常にいい土壌であるのに対し、ここは粘土質が多く表土も深いところ。温暖なこともあり、収穫時期は早く、チャールズ・ハインツと比べると1カ月ほども変わることがあるそう。
温暖な畑なのでトロピカルフルーツの風味が出てくるのかと思いきや、収穫時期が早いせいか意外と冷涼感を感じます。酸がきれいでミネラルや黄桃の風味。チャールズ・ハインツとの甲乙を付けるのは難しいですが、こちらの方が開くのに時間がかかるとクリストファー。



ピノ・ノワール MCM88(キーファーランチ) ロシアン・リバー・ヴァレー 2021
ピノ・ノワールの1本目はMCM88というワイン。この名前は3人の頭文字に生まれ年の88を付けたもの。MCMはローマ数字で1900になるので「MCM88」で1988年生まれを表しています。畑は実際にはキーファー・ランチというコスタ・ブラウンで一世を風靡した畑ですが、契約上その名前が使えないためにこうしています。現在はオリジナルの名前であるPerry Ranchというのが畑の名称になっているようです。ダットンから紹介されて使えるようになった畑で現在の栽培管理もダットンが行っています。スイスクローンと呼ばれるクローンを使っています。
ピノ・ノワールとしてはややダークな果実味。ザクロやネクタリン。濃厚ですが重くなく酸とのバランスが秀逸です。ハーブ感もあります。


合わせるのが難しいあん肝を使った料理ですが、意外とピノともよく合いました。

ピノ・ノワール デイ・ワン(ヒルクレスト・ヴィンヤード) ロシアン・リバー・ヴァレー 2021
ヒルクレストはマイルスの家が持っていた畑でセンシーズの自社畑の一つとなっています。グリーン・ヴァレーの中でも最も海に近い冷涼なところの畑。1974年に植樹された、このあたりではかなり古い畑です。
ストラクチャーのあるピノ・ノワール。ハーブ、レッド・チェリーやフランボワーズといった明るい赤果実。ストラクチャーは全房から来ているのかと思ったのですが、全房発酵は基本的にやっていないそうです。クローン4種類のブレンドになっており、そのうちのカレラ・クローンがグリップ感を与えてくれるとのことだったので、そのあたりから個性が来ているのかもしれません。



ピノ・ノワール ボデガ・ティエリオ・ヴィンヤード ウエスト・ソノマ・コースト 2021
最後のワイン、ボデガ・ティエリオは2016年に植樹された新しい自社畑。ウエスト・ソノマ・コーストにあるオクシデンタルの畑の隣にあります。2021年が最初のヴィンテージ。
これがちょっと驚きのすばらしさ。赤果実に少しブルーベリーの風味も加わります。ちょっとのダークさが深みを与え、きわめてジューシー。このダークさはオクシデンタルのピノ・ノワールにも通じますが、極めて冷涼で海からの風で果皮が厚くなることから来ているようです。酸が豊かでエレガントさもあります。最初のヴィンテージでこの完成度はすごい。将来はオクシデンタルのピノ・ノワールや、同じく近隣の畑であるプラット・ヴィンヤード(トーマスのリヴァース・マリーがここからヴィノス100点のピノ・ノワールを作っています)にも並ぶ存在になりそうです。





以下のショップはいずれも「カリフォルニアワインあとりえ」。店長の野村さんもこのディナーに来られて、ワインを堪能されていました。各ページには野村さんのコメントも紹介されています。







Date: 2024/0301 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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パソ・ロブレスのセミナーレポートに続いて試飲会のレポートです。

最初にちょっと言い訳というか弁解を。

今回の試飲会、東京の回は750を超える試飲ワインが出ていたそうです。4時間半という長丁場の試飲会ではありましたが、さすがに全部を試飲するのは無理です。なので、あくまでもたまたま私が試飲した中でのおすすめワインという形になります。特にこういう大きな試飲会では、単独の試飲会に参加している中川ワイン、Wine to Style、布袋ワイン、アイコニックワインあたりはどうしてもパスしてしまうことになりがちですのでご了承ください。

あと、試飲会では安いワインも高いワインも平等に試飲するのがモットーなので、立ち寄ったブースの多くではすべてのワインを試飲しています。逆に言うと、立ち寄っているブースと全く立ち寄っていないブースでどうしても分かれてしまいます。行けなかったところは申し訳ありません。

コメントを書いたワインを数えてみたら240くらいありました。だいたい3分の1くらい試飲したという計算です。4時間半を240本で割ると1本あたり平均1分10秒弱になります。飲むだけでなく話もするのでこれくらいにはなってしまいますね。

言い訳ばかり書いていてもしょうがないので本編に進みます。


デプト・プランニングが輸入するベンジャミン・シルバー。サンタ・バーバラのワイナリーです。今回は本人自ら来日してワインを注いでくれました。ピノ・ノワールを得意とするワイナリーですが、今回光っていたのはカベルネ・フランです。赤果実がきれいで6000円はむちゃくちゃコスパ高いです。


昨年はテーマ産地ウエスト・ソノマコーストの一員として来日していたアーネスト。当時はインポーターがありませんでしたが、富士インダストリーズが輸入しています。シャルドネもピノもピュアな果実の味わいがたまらないワイン。8000円台はこの地域のワインとしては安め。きれい系のシャルドネ、ピノ好きはぜひ。


今年のテーマ産地のパソ・ロブレスから「ホール・ランチ」のカベルネ・ソーヴィニヨン。パソ・ロブレスのワインとしては酸もしっかりしていてバランスよくコスパ高いです。
写真が切れていますがその右のビリキーノ「マルヴァジア・ビアンカ」は甘酸っぱい果実味が魅力。なじみのない品種かもしれませんが、試してほしいワイン。


ディアバーグはサンタ・バーバラの優秀なワイナリー(インポーターはモトックス)ですが、なんとこのピノとシャルドネは畑の植え替えでなくなってしまうそうです。個人的には酸のきりりとしたシャルドネが特に好印象。


こちらもモトックスが輸入する「トゥルー・ミス」。シャルドネはしっかり目の樽感が魅力。ピノ・ノワールは果実味が強く、カベルネは意外とキレイ系です。


アーサー・セラーズは日本人の桃井さんがソノマで作るワイン。ソノマの高級ピノ・ノワール/シャルドネの中では安価ですが、素晴らしい畑のブドウばかりを使っています。右のグロリア・ヴィンヤードはフリーマンの畑。桃井さんとフリーマンのアキコさんはエド・カーツマンの兄弟弟子とい関係です。2019年と、少し長めに熟成したものをニューリリースで出しています。果実味と酸のバランスがいいきれいなワイン。左のチェリー・リッジ・ピノ・ノワールはソノマ・コーストで超エレガントなワインを作っているロス・コブの畑のブドウを使ったもの。桃井さんのワインはチャーミングな果実味を持ったものが多いですが、このワインはその中でもひときわエレガント。昨年も同ヴィンテージのものを試飲してお薦めに挙げていますが、1年たってさらにいい感じにこなれてきています。


樽の風味とマロラクティック発酵によるバターの風味を前面に押し出したのが大人気のブレッド・アンド・バター。輸入元はGrepe Offでしたが、昨年秋に輸入元が変更され、その代わりに輸入を始めたのがこのレベルリッジ・シャルドネ。樽の風味とバターの風味がしっかりあるのは同様ですが、酸もありバランスよく美味しいです。価格も2割ほど安くなります。


カストロ・セラーズのワイン、ずいぶんひさしぶりに飲みました。テーマ産地であるパソ・ロブレスのワイナリーです。インポーターはJALUX。どれも果実味豊かでジューシー、バランスよく美味しいです。


同じくJALUXからタリーのエステート・シャルドネ。酸がきれい。これほど高品質なシャルドネが5300円はコスパ高いです。


明治屋が輸入するウェンテのワイン。オープン価格ですが、どれも2500円くらいということで、コスパ高いです。特にメルローとカベルネ・ソーヴィニョンがお薦め。


オニール・ヴィントナーズの「バックハウス・カベルネ・ソーヴィニヨン」と「バックハウス・ジンファンデル」。輸入元はジェロボームです。どちらも1000円台でコスパ高いです。特にカベルネはいいです。ジンファンデルはちょっと甘系ですが、甘やかなワインが飲みたいときにはいいと思います。


エフセラーズが輸入するワインからグリーン&レッドのジンファンデル チャイルズ・ミル・ヴィンヤードとエインシャント・ピークスのワンストーン カベルネソーヴィニヨン。グリーン&レッドはバランス系ジンファンデル。有名レストランのシェ・パニーズで長年ハウスワインで使われているくらい食事に合うワインです。ワンストーン カベルネソーヴィニヨンはジューシーな果実味が美味しくコスパ高いです。


中川ワインが輸入するアルマ・デ・カトレア。今回ワインメーカーのビビアナさんが来日されていたので、ビビアナさんのワインだけ試飲しに行きました。レッドワインはシラー中心。ビビアナさんのワインの中では一番パワフルですが、ちゃんときれいさもあり美味しい。


いまさら紹介するまでもないワインですが、リッジのメルロ・エステート2013(1万円)とカベルネ・エステート2016(1万3500円)。メルローは果実味のやわらかさがいいです。カベルネはまさにお手本的ワイン。いろいろワインが高騰する中で、これくらいの熟成ワインがこの価格は安いと思います。


WINE TO STYLEのブースでは目についた一部のワインを試飲しました。ボニー・ドゥーンはローヌ系品種のパイオニア的ワイナリー。創設者のランドール・グラームのユニークなキャラクターでも知られていましたが、ここ10年くらいは輸入がなくなっていたかと思います。ル・シガール・ヴォラントはローヌ系赤でここの代表的ワイン。うまいです。ル・シガール・オレンジはオレンジワイン。うまみがにじみ出てくるワイン。ピクプールという品種にはなじみがない人が多いかと思いますがジューシーで良かったです。


ナパのオークノールにあるマッケンジー=ミューラー(インポーターはヴィレッジ・セラーズ)。左のナパ・ジャズはラベルが素敵ですがカベルネ・フラン主体で、ナパのカベルネ系としてはエレガントなワイン。個人的にはかなり好きです。右のカベルネ・ソーヴィニヨンは日本限定のワイン。ストラクチャーがしっかりしています。


テーマ産地のパソ・ロブレスの試飲コーナーはワイナリーごとのブースになっています。


比較的新しいワイナリーながら、パソ・ロブレスを代表するような人気ワイナリーになったダオ。輸入元はナニワ商会です。新しいヴィンテージでは特にレギュラー・クラスの「ディスカバリー」シリーズのカベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネがお薦め。どちらもリッチ系の味わいで、コスパ高いです。


セミナーでも試飲したピーチー・キャニオンですがバランスよくジューシーでコスパ高いのがウエストサイド・ジンファンデル。セミナーで試飲したナンシーズ・ヴューはエレガントで素晴らしいのですが、価格は倍します。コスパで見ればこちらをお薦めします。


タブラス・クリーク(インポーターはジェロボーム)は、パソ・ロブレスの中でも皆に尊敬される存在です。ローヌのシャトーヌフ・デュ・パプの名門「シャトー・ド・ボーカステル」のぺラン家がパソ・ロブレスに作ったワイナリー。ローヌ系品種をパソ・ロブレスに広げるために苗木の供給なども行っています。どれもきれいでバランスよくお手本のようなワイン。



J.ロアーからはプティ・シラーとセブン・オークスのカベルネをお薦め。プティ・シラーは濃厚な果実味がたまらないワイン。セブン・オークスは米国の15ドル以上のワインで売り上げ2位というベストセラー。ベストセラーになるだけあってバランスの良さが光ります。



Date: 2024/0229 Category: 業界ニュース
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しあわせワイン俱楽部で毎月29日に「肉の日」限定ワインセールをしています。通常は2月は29日がありませんが、今年はうるう年なので2月29日がセール日です。

肉の日限定ワインセール

通常価格から10~30%割引になっています。

いくつか具体的に紹介しましょう。
大人気の689セラーズ。ラベルに689をあしらったものが有名ですが、ほかにもいろいろ作っており、どれもコスパは非常に高いです。ラムゼイは中でも購入しやすい価格帯のもの。



689よりちょっと上のラインだとキラードロップもお薦めです。


濃い系ジンファンデルのTNTは1200円台とこれもコスパ抜群。


シラーは好き嫌い分かれがちな品種ですが、このシラー美味しいのでだまされたと思って飲んでみてください。


ちょっと高嶺の花のメルヴィルですがセールで6000円台前半はチャンスです。サンタ・リタ・ヒルズのベンチマーク的存在。


これも「オレンジワインはちょっと…」という人にこそ飲んでほしいオレンジワイン。きれいでうまみたっぷりです。

Date: 2024/0228 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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カリフォルニアワイン協会が主催するカリフォルニアワインの「Aliveテイスティング」とセミナーに参加してきました。丸1日、カリフォルニアワインに漬かり切りになる、カリフォルニアワインマニアにとっては夢のような一日です。

毎年、「テーマ産地」が設けられるこの試飲会とセミナーですが、おととしの「ローダイ」、昨年の「ウェスト・ソノマ・コースト」に続いて、今年は「パソ・ロブレス」です。この記事ではパソ・ロブレスのセミナーを中心にまとめます。

そもそもパソ・ロブレスがどこにあるかはカリフォルニアワインファンでもあまり知らないかもしれません。


上の写真の左下にカリフォルニアの全体図とパソ・ロブレスのおおまかな位置が書かれています。サンフランシスコとロスアンゼルスのほぼ中間地点で、正直どちらから行っても結構遠いところです。カリフォルニアの図が描かれているところの周りは濃紺になっていますが、実際このあたりが太平洋になります。沿岸の産地ではなく、山脈一つ越えた内陸の産地です。そのため、基本的にはかなり温暖な地域で、場所によっては夏場は40℃以上が当たり前というところもあります。ワインはカベルネ・ソーヴィニヨンが一番多く作られていますが、ジンファンデルも多いですし、シラーなどローヌ系品種も有名です。白ワインのイメージはあまりない

なんだか何もなさそうに思える地域ですが、TripAdvisorでは米国の訪れるべき観光地の6位にランキングされています。ワイナリーも400を超えており、アウトドアのアクティビティなどでも人気があります。

今回のセミナー、「パソ・ロブレス、思ったよりクールかも!」というタイトルが付いています。どうクールなのでしょうか。


パソ・ロブレス・ワイン・カントリー・アライアンス(PRWCA)コミュニケーション・ディレクターのクリストファー・タラント氏

パソ・ロブレスがAVAとして認定されたのは1983年。カリフォルニアのAVAの中でも初期に策定された一つです。そこからさらに11のサブAVAを2007年に申請、2014年にようやく認められ、今年で10年になります。ナパやソノマのサブAVAと比べると、浸透しているとまでは言えないですが、「アデレーダ・ディストリクト」など一部のAVAはだいぶ認知が進んできたようにも感じています(余談ですが、今「アデ」まで入力したら残りをIMEが補完してくれたので、自分的にはだいぶなじんだ言葉になっているようです)。

前述のように気候は基本的にかなり温暖ですが、山脈の切れ目から海からの冷たい風が入ってくるため、夏場でも夜は15℃くらいまで気温が下がります。その結果、昼と夜との気温差(日較差)が非常に大きいというのも特徴です。なるほど、確かに「思ったよりクールかも」しれません。

AVAの西側は山脈にかかっており山が多く、中央部は比較的平坦で東はまた山脈があり東に行くほど標高が高くなります。

植えられているブドウ品種も前述のようにカベルネ・ソーヴィニヨンが一番多く約半分ですが、品種の数は65以上あり、いわゆる国際品種以外のものもかなりあります。このあたりも意外に「クール」ですね。


セミナーでは5つのワイナリーの代表者が話をし、ワインを試飲しました。写真の左から右の順になります。

最初はマハ(MAHA)。小さな家族経営のワイナリーでシラーやグルナッシュ、ムールヴェードルといったローヌ系品種を中心に作っています。2003年にパソに移住し、畑は有機栽培とバイオダイナミックを実践。どちらも2015年に認証を受けています。ワイン造りもコンクリートの発酵槽で天然酵母を使って行い、ハンガリー製の大樽で熟成するというナチュラルな方法。大樽を使うのは「エネルギーとテンションを与えてくれる」からだといいます。

場所はアデレーダ・ディストリクト。太平洋からの冷たい風を受ける比較的涼しい地域です。石灰は保水の役目と酸を維持するのに役立つそうです。

試飲のワインはクレレット・ブランシェという品種の白ワイン「MAHA Before Anyone Else 2021」。クレレット・ブランシェという品種名はあまり聞いたことがないですが、フランスの地中海沿岸地域ではメジャーな品種の一つです。穏やかな酸味、青りんごや花梨の風味、濡れた石や石灰。マルサンヌやルーサンヌに近い印象を受けました。

2本目は「Giornata Sangiovese 2021」。
ジョルナータはイタリア系品種を手掛けているワイナリー。Elpomar DistrictというAVAにあります。急斜面の多い急流地帯で、アデレーダ・ディストリクトよりはやや温暖ですが、比較的冷涼なところになります。畑は有機栽培の認証を受けています。

イタリア品種を手掛けるのは一家がイタリアにルーツがあるからですが、そのまま品種を持ってくるだけではうまくいかず、尊敬の念をもって育てることが必要とのことでした。

サンジョヴェーゼは9月に収穫して45日発酵にかけます。果皮に長く漬け込むことで風味を抽出しています。「すごく涼しい夜と温かな昼を表すハグをして楽しむようなワイン」だとのこと。
赤系の果実の風味にブラックベリー、スパイス。果実味はそれほど前面に出てこず、酸のきれいさが目立ちます。冷涼感を感じるサンジョヴェーゼです。

3つめのワイナリーはPeachy Canyon(ピーチー・キャニオン)。先日「アイコニックワインの試飲会で美味しかったワイン(2024年2月)」の記事でもここのインクレディブル・レッドを紹介しています。このインクレディブル・レッド、2000円台で入手できるジンファンデル系ブレンドの中では間違いなくトップクラスのクオリティで、個人的にもなじみ深いワイナリーですが、ワイナリーの人の話を聞くのは初めてです。
ここはピケット家による家族経営のワイナリーで、1982年にパソ・ロブレスに移住しました。ワイナリーを始めたのは1988年で、ワイナリー名は「Peachy Canyon Road」という道の名前から来ています。12種類のワインを作っていますが、メインはジンファンデルで「すばらしいジンファンデルの代名詞」と言っています。
ブドウは自社畑からの調達で無灌漑で栽培しています。

試飲のワインは「Nancy's View Zinfandel 2020」。Nancyは今回来日したジェイク・ピケットの母親の名前です。

畑の写真にあるように土壌は石灰石による白い部分と、そうでないグレーの部分があるのが特徴だといいます。雨の決して多くないパソ・ロブレスで無灌漑栽培をするのはかなりチャレンジングで、ブドウの樹は12フィート(約3.6m)という広い間隔で植え、春には雑草を生やさないようにしたり、ブドウの収量を制限するなど、少しでもブドウに多くの水が行くようにしています。それでもブドウのストレスは多く、収穫は8月末から9月初頭と地域の中でもかなり早い方だといいます。
ジンファンデル以外にはフィールドブレンドでプティ・シラーが2%入っています。醸造では全房発酵を一部使っています。ストラクチャーやエレガントさを出すためです。発酵にはコンクリートタンクとニュートラルな樽を使い、熟成は35%新樽を使って8カ月行います。
赤い果実とスパイス、焼いたパイナップルの風味。ジューシーな果実味に穏やかな酸味でミディアム・ボディのジンファンデル。おそらく多くの人がイメージするジンファンデルよりも相当エレガントです。インクレディブル・レッドと比べてもかなりエレガント。今回一番驚いたワインです。

4番目はJ. Lohr(ジェイ・ロアー)。ここもパソ・ロブレスでは古くから知られたワイナリーで、特にカベルネ・ソーヴィニョンに定評があります。シリコンバレーのサンノゼにもテイスティング・ルームがあり、そちらには訪問したことがあります。ロアー家の家族経営ワイナリーで、今回はCEOのスティーブ・ロアーが来日しました。
J.ロアーの創設は1972年と、今回のワイナリーの中では一番古いのですが、実は最初はモントレーにありました。モントレーはシャルドネやピノ・ノワール、リースリングには向いていましたが、カベルネ・ソーヴィニョンには冷涼すぎた亜ため、今度はナパに移住。その後、パソ・ロブレスのフレッシュでソフトなタンニンや果実味の高さに魅せられてさらに移住。1200ヘクタールの畑を植えて現在に至ります。ワインはボルドー系とローヌ系来る品種が中心。代表作のSeven Oaks カベルネ・ソーヴィニョンは15ドル以上のカベルネ・ソーヴィニョンで売り上げ2位を誇ります。

試飲のワインは「Hilltop Cabernet Sauvignon 2021」。リザーブの位置づけのワインです。
畑はエル・ポマール・ディストリクトにあります。やや冷涼でなだらかな丘が広がり水はけがいいところ。
パソ・ロブレスのカベルネ・ソーヴィニョンというと芳醇で柔らかなイメージがありますが、今回のヒルトップは結構固さとストラクチャーのあるワインでした。酸も高くハーブの風味、パワフルでタニック。時間はかかりそうですがいいカベルネ・ソーヴィニョンです。

最後はL'Aventure(ラヴェンチュール)。ステファン・アセオはボルドーで生まれ、ボルドーでワイナリーを作り、成功しましたが、シラーを作りたいと願うようになりました。とはいえボルドーではAOCの規定からシラーを作るのは難しく、ワイナリーを売却して米国に移ることになりました。パソ・ロブレスのウィロー・クリークに理想の土地を見つけ畑を作りました。2008年からはすべて自社畑でワインを作っています。
地所内に4つの丘があり、土壌や標高などさまざまなところがあります。さまざまなローヌ系品種をそこに植えています。特に石灰岩からの影響が大きいといいます。
試飲のワインは「Estate Cuvee 2017」。ここのフラッグシップのワインで、シラーとカベルネ・ソーヴィニョン、プティヴェルドをブレンドしています。この組み合わせのブレンドを「パソ・ロブレス・ブレンド」と呼ぶそうです。
リッチでタニック、パワフルなワイン。白コショウなどのスパイスの風味、カシスにオレンジの風味も感じます。むちゃくちゃ美味しいです。
後で調べたらパーカー96点、ジェブ・ダナックは98点という高得点を付けています。こりゃうまいわけです。

今回の5つのワイン。もちろん選りすぐりのワインを持ってきたというのもあると思いますが、芳醇で濃厚だけどややスマートさに欠けるような気がしていたパソ・ロブレスへの偏見を完全に打ち消してくれました。
Date: 2024/0227 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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第28回目となるプルミエ・ナパヴァレー・オークションがナパのセント・ヘレナにあるキュリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ(CIA)とオンラインで開催されました。今年の落札総額は300万ドル。2023年の340万どるを下回ったものの、2022年の270万ドルは超えました。
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ワイン・サーチャーのW・ブレイク・グレイ氏の独自分析によるとボトル価格の平均は195ドル。過去10年215ドルを下回ったことはありませんでした。グレイ氏はそれよりかなりさかのぼってもこれ以上低かったことはほとんどなかったのではないかと述べています。ちなみに昨年は286ドルで、2015年と並んで過去最高レベルでした。

プルミエ・ナパヴァレー・オークションは業界向けのオークション。ワイナリーはこのオークションのために作った特別なワイン(1ロット最大60本)を提供します。収益はナパヴァレーをプロモート、保護、向上させるプログラムに直接寄付されます。

1本あたりの落札額上位10ロット
Fairest Creature Napa Valley Cabernet Sauvignon 2022 $1167
Alpha Omega Angels Vista Napa Valley Cabernet Sauvignon 2022 $800
The Mascot Napa Valley Cabernet Sauvignon NV (three-vintage blend) $800
Shafer Vineyards Sunspot Vineyard Stags Leap District Cabernet Sauvignon 2022 $667
Chappellet Vineyard Upper Terraces Napa Valley Cabernet Sauvignon 2022 $633
Fait-Main, Tierra Roja Vineyards Oakville Cabernet Sauvignon 2022 $633
Chateau Montelena Apollo Calistoga Cabernet Sauvignon 2022 $583
Spottswoode Estate, Ovid Napa Valley Cabernet Sauvignon 2022 $500
3/Thirds Napa Valley Cabernet Sauvignon 2023 $500
Darioush Sage Vineyard Mount Veeder Red Table Wine 2022 $467
Fairchild Napa Valley Let the Show Begin Oakville Cabernet Sauvignon 2021 $467
Schramsberg Napa Valley Sparkling Wine Reserve Late Disgorged 1998 $467

近年、ワイン余りは世界的な問題になっており、カリフォルニアも無縁ではありません。いわゆるファイン・ワインの世界はワイン全体の需要とは動きが異なるので、全体のワインが余っているからといってハイエンドのワインが売れなくなるわけではありませんが、インフレの進行で、米国では消費者の購買力全般が落ちているようです。そういった動きが今回の落札額に影響をしているのかもしれません。
Date: 2024/0226 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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しあわせワイン俱楽部でワインくじをやっています。2970円で1位はオーパス・ワンのセカンドワイン「オーバーチュア」。1本約3万円します。

2位のナパ・ハイランズ・リザーブのカベルネも9900円。一番低い5等でもしあわせワイン俱楽部の通常価格で3000円を超えるので、はずれでも損はないのがうれしいところ。

ちなみに、送料無料ワインとセットで買えば送料節約できます。今月は「チャールズ・スミス カンフーガール」。ワシントン州のリースリングを使ったチャーミングなワイン。僕もリースリングでは定番にしているワインです。2607円と比較的安価なワインですから、これで送料節約できるのは大きい。



Date: 2024/0224 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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オレゴンワインのインポーター「ブルーブティックワイン」のワインを飲む会に参加してきました。ワインとは関係のない共通の友人がおり、その仲間のワイン会という形で気の置けないスタイルのワイン会でした。

ワインのラインアップは以下の通り

2017 Morgen Long Loubejac Vineyard Chardonnay
2015 Mad Violets Eola-Amity Hills Chardonnay
2017 Big Table Farm Willamette Valley Pinot Noir
2015 Andante Willamette Valley Pinot Noir
2012 Trout Lily Ranch Adams Vineyard Pinot Noir
2016 Hundred Suns Shea Vineyard Pinot Noir


1本目のモーゲン・ロングはシャルドネに特化したワイナリー。ジ・アイリーやセヴン・スプリングスなど素晴らしい畑と契約してブドウを調達しています。ルベジャックの畑はウィラメット・ヴァレーで無灌漑・サスティナブルで作られているところ。ライムやネクタリン、はつらつとした酸を感じます。ミネラル感があり黄色い花の香り。のっけから素晴らしいワインです。


2本目のマッド・ヴァイオレッツは
共に有名ワイナリーで豊富な経験を積んできた醸造家ケリーと栽培専門家ステューリンのゴールデンコンビ。「マッドバイオレット」という名前は彼らの二人の娘、マデレーンとバイオレット、そして彼らのヴィンヤード(葡萄園)バトンフィールドに隣接した森に咲く短命な野花マッドバイオレットに因んで付けられました。
2015年のワインで、今が熟成のピークではないかと思われます。酸はモーゲン・ロングよりもやや低いですが、白桃のトロっとした味わいに、熟成によるはちみつ感が加わり、激うまです。


3本目からピノ・ノワールに入ります。
ビッグ・テーブル・ファームはラベルが印象的なワイナリー。マーケティング・マネージャーのクレアが画家でもあることから農場の動物や農機具などをモチーフに、品種やヴィンテージごとに違うラベルをデザインしているとのことで、コレクターも多いとのこと。ワインはきれいな赤果実と紅茶の風味があり、私の中でのオレゴン・ピノらしいワインでした。


4本目はアンダンテのピノ・ノワール ウィラメット・ヴァレー2015。畑はウィラメット・ヴァレーの中のVan Duzer Corridor AVA内にあり、栽培や醸造にマッド・ヴァイオレッツの人が監修などで加わっているそうです。やや濃いめの味わいでチェリーやスパイスの風味。自然派的な味わいもあります。


5本目はトラウト・リリー・ランチのアダムズ・ヴィンヤード2012。1976年に植樹したというオレゴンでは歴史ある畑ですが、オーナー夫妻は一度はワイナリーを売却、2008年からトラウト・リリーの名前で再開しました。醸造はマッド・ヴァイオレッツに委託しています。
これは劇旨なワイン。個人的にはこの日のトップでした。赤果実にちょっとブルーベリー的な風味があり、酸とのバランスが素晴らしい。12年たっていますが、まだまだ若々しいワイン。オクシデンタルにも似ているように思いました。


最後はハンドレッド・サンズのシェイ・ヴィンヤード2016。シェイの畑はオレゴンで引く手あまたの銘醸畑。このワイナリーのワインメーカーであるグラント・クルターはボー・フレールでワインメーカーを務めていた人です。2016年はセカンド・ヴィンテージですが、そこでこの畑を使えるというのが彼の実力を表しているのでしょう。果実味豊かでジューシーな味わい。これも素晴らしいワイン。

今回のワイン、どれも非常に高いレベルでした(自分のコメントではそれがあまり伝わらなさそうなことに反省しています)。ブルーブティックさんは、昨今の円安と、米国のインフレで、今後の輸入は未定とのことですが、続いてほしいものです。なかなかオレゴンのワインまではカバーできていないのが現状ですが、もっと勉強しないといけないですね。
Date: 2024/0220 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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1984年に設立されたハーラン・エステート(Harlan Estate)、40周年となる今年は世界各地で「マスタークラス」と称するセミナーを開催して回ります。その最初の開催地として選ばれたのが東京。ありがたいことに、この記念すべきセミナーに参加させていただきました。

今回来日したのは創設時からディレクターを務めてきたドン・ウィーバー氏(写真上)と、2代目ディレクターに就任したフランソワ・ヴィニョオ氏(写真下)です。



創設者のビル・ハーランは南カリフォルニアの出身。UCバークレーに進学し、週末ごとにナパを訪れるようになり、ワインを作りたいという夢を抱きました。しかし、お金もなくビジネスの道に進みます。様々なビジネスで世界各地にも行くようになり、欧州の素晴らしいワイナリーも回りました。ナパはまだそのころ、ヴァレーフロアと呼ばれる平地の畑がほとんどでしたが、欧州では斜面の中腹に素晴らしい畑があることを知り、斜面の畑を探そうと決意します。

その後、不動産業で大儲けし、いよいよワイン造りが現実のものになってきます。

いろいろな土地を見て最終的に見つけたのがオークヴィルの西側の森の中でした。斜面で水はけがよく、土壌は火山性と沖積性が混じりあっています。東向き斜面が中心になるため、朝のやわらかい日差しはよく当たりますが、夕方の強い西日はあまり当たりません。森に囲まれていることもワインに独特のニュアンスを与えます。いわゆるフォグラインより下なので霧の影響も受けます。


ハーランのヴィンヤードマップ(北西方面からの図)

畑の東側は火山性土壌が多く、西側は沖積性土壌が多くあります。火山性のところは特に表土が非常に薄いのも特徴です。斜面の向きは東向きが基調ですが、西向きや北向きなどのところもあります。ブドウ品種はカベルネ・ソーヴィニヨンが大部分ですが、北向き斜面にはカベルネ・フランとプティヴェルドが中心に植えられていて、沖積性のところにはメルローも植えています。

ハーランでは特に栽培面に力を入れており、今回のセミナーも大部分が栽培に関するものでした。
有機栽培はすでに行っており、バイオダイナミクスにもかなり近いものになっています。また20世紀の日本の農学者で「自然農法」の実践で知られる福岡正信の手法も取り入れています。福岡正信の農法は「不耕起 無肥料 無除草」を特徴としています。近年、先進的なワイナリーが実践を始めている「リジェネレーティブ」な有機栽培は、特に「不耕起」を大きな特徴にしていますが、福岡正信の手法はその古くからの実践であり、ハーランもリジェネレーティブと名乗ってはいませんが、同じような方法にずっと取り組んでいます。

また、今回のセミナーで強調していたのが「ドライ・ファーミング」。すなわち灌漑をしない(実際には全くしないというより極力減らした形になります)農法です。土地のエッセンスを引き出すために重要だと考えており、福岡正信の思想にも近くなります。「灌漑をしないのはブドウの樹のためであるのと同時に人のためでもある」とフランソワ氏。

ドライ・ファーミングには2008年ころから取り組みを始めています。ただ、雨の少ないナパでは若いブドウの樹には灌漑をしないと枯れてしまうこともあるため、抵抗力を高められるよう最初の3~5年は灌漑しています。なお、ハーランではブドウの樹はブロック単位で植え替えるのではなく、1本単位で行うため、一つのブロックの中に様々な樹齢の樹があります。灌漑も1本単位で管理して行っています。ちなみに現在の平均樹齢は30年ほどです。このほか熱波によってブドウの樹がストレスを感じているときには部分的に灌漑することもあります。

現状では畑の8割ほどは、この8年間で全く水を与えていないといいます。面白いことに、ドライ・ファーミングにすることによって、ブドウはレーズン化しやすくなるのではなく、むしろフレッシュな味わいになるそうです。ブドウは根を張り、実は小さく種も小さくなります。また、ドライ・ファーミングによってブドウの成熟は早まっています。2020年から2022年は8月中に収穫が始まっており、9月の上旬から中旬には完了しています。ナパの多くのワイナリーでは9月中旬から10月中旬にかけて収穫するのが通例であり、ハーランの収穫がいかに早いかが分かります。

なお、そのハーランでも2023年の収穫は9月下旬から10月下旬までかかったとのこと。「例年より最低でも3週間遅れ」(フランソワ氏)という極めて例外的なヴィンテージでした。

試飲に移ります。今回はこの春リリース予定の2020年、良年と言われている2019年と2016年、そして18年熟成した2006年の4ヴィンテージを試飲します。

2020年は8月と9月に山火事が起こった年です。8月の火事はナパでの被害は少なかったですが、9月下旬の火事はナパのスプリング・マウンテンなどが燃え、ナパ中に煙が広がったことでブドウが汚染され、赤ワインの醸造をあきらめたワイナリーが数多く出ました。ハーランでは8月22日に収穫が始まり、9月上旬には完了していたため、山火事の被害を免れました。結果として酸は高く、糖は低め、それでもフェノリックは成熟したブドウが収穫できました。ワインに透明感とエネルギーがあり「新しいディレクションの始まり」とフランソワ氏。これまでのハーランと比べてもエレガントなスタイルですが、The Wine Independentの編集長で元Wine Advocate編集長のリサ・ペロッティ・ブラウンは100点を付けており、それが大きな事実ではないかとのこと。

ナパのカベルネ・ソーヴィニヨンというと濃厚で黒系や青系の果実味が強くフルボディというのがイメージだと思いますが、2020年のハーランは赤果実の風味が中心でわずかにブルーベリーを感じます。タンニンはやや強く、しなやかな味わい。ハーブやスミレの花の香り。軽やかでありながらエネルギーを感じるワイン。濃厚フルボディのカベルネとは一線を画す味わいは、もしかすると飲む人によって期待と違うと感じるかもしれませんが個人的には高く評価します。

2019年と2018年は2年連続で極めて評価の高いヴィンテージ。将来は1982年のボルドーのように名声を得られるのではないかとのこと。今回はこのうちの2019年が試飲で出ました。

2019年はそれまで数年続いた干ばつから、春先まで雨の多いシーズンとなり樹勢も強くなりました。生育期間は雨もなく良好な状況が続きました。

2020年と比べると濃厚で、黒系果実の風味を強く感じます。杉やタバコやコーヒーの風味もあります。ハーランのシグニチャーとも言えるスムーズでやわらかなテクスチャー。パワフルですがきれいなワインです。

2016年も干ばつの後の、雨の多いヴィンテージで、長く安定した生育期間が続きました。

完璧なバランスを持つワイン。内に秘めたパワーがあり、こなれてしなやかなタンニン、美しい果実味。個人的にはこの日の一番で、これまで飲んだことがあるハーランの中でも1、2を争うレベルです。

最後は2006年。冬は寒くて雨が多く、夏は気温が高めに推移した年。

赤系から黒系の果実にスミレの花、熟成によって腐葉土やマッシュルームの香りが出てきています。これもまたなめらかなテクスチャーとそこに溶け込んだタンニンが素晴らしいワイン。とてもきれいに熟成が進んでいます。まだフレッシュさもあるので後5年くらいはきれいに熟成が進みそうです。なお、ハーランでは「30年でも50年でも熟成で保つが若い時点で飲んだ方が個性を発揮できるのではないか」とのことでした。

久しぶりのハーランのセミナー。特に収穫の早くなった2020年の味わいが気になっていたので、非常に貴重な経験ができました。


最後はおまけショット
Date: 2024/0217 Category: 業界ニュース
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アイコニックワイン ジャパンの試飲会から美味しかったワインを紹介します。


数年前に格安ピノ・ノワールとして一世を風靡したアルタマリア。新ヴィンテージになっていますが、今もすばらしいコスパです。シャルドネはふくよかさと酸のバランスよく、ピノ・ノワール赤果実にちょっと青系の果実の風味も入り美味しい。


バラードレーンは銘醸畑ビエン・ナシードを擁するミラー家の手がけるブランド。今回の試飲会でもコスパではトップクラス。ジンファンデルは梅系のジューシーな酸味が秀逸、カベルネ・ソーヴィニヨンも赤系果実とスパイシーな風味。どちらも濃いだけでないバランスが素晴らしいです。


バレル・バーナーとは樽を焦がすバーナーの意味。その名の通り、樽香のはっきりしたワインを作っています。ダブル・オーク・シャルドネはリッチでバターの風味もある「ブレッド&バター」系のシャルドネ。「バーボンバレル・エイジ・カベルネ・ソーヴィニヨン」もバーボンの樽による香りのよいカベルネ・ソーヴィニヨン。


フィールドレコーディングスのスキンズは、もう定番といっていいオレンジワイン。変な癖はないのでオレンジワイン飲んだことがないという人にもおすすめです。うまみのすごさには飲むたびに感心させられます。


ユニオン・サクレはラベルがおしゃれで洗練されています。ドライ・リースリングはバランスよく染み入る美味しさ。ゲヴェルツのオレンジも癒し系の味わいです。


ピーチーキャニオンのインクレディブル・レッドはコスパ抜群のジンファンデル・ブレンド。ジンファンデルらしいふくよかさをきれいな酸がバランスを取っています。


レッジのMCAキュベは極めて秀逸なパワフル系シラー。ビエン・ナシードとパソ・ロブレスのジェームズ・ベリーという銘醸畑中の銘醸畑のブドウを使って7500円というのは、実はむちゃくちゃコスパ高いです。


モントーヤのピノ・ノワールはピュアな果実味が美味しいワイン。コスパ高いです。


モーガンのメタリコ・アンオークト・シャルドネは樽を使っていないシャルドネ。酸が豊かできれいな味わい。


モーガンのG17 シラーはきれいでストラクチャーのあるタイプ。レベル高いです。


ロアーのピノ・ノワール サンタ・ルシア・ハイランズはエントリー的な位置づけですが品質はさすがの高さ。赤果実の風味ときれいな酸が秀逸です。


ロアーのロゼラズ ピノ・ノワールはすべてがハイレベル。美味しい。


ステル+マーのカベルネ・ソーヴィニョンの新ヴィンテージ。柔らかな果実味で親しみやすいワイン。


オーガスト・ウエストのロシアンリバー・ヴァレー ピノ・ノワール。うまみと酸が美味しい。


カーボニストのアルバリーニョを使ったスパークリングワイン。美味しい


コブのドックス・ランチ・ピノ・ノワールとシャルドネ。シャルドネは繊細、ピノ・ノワールも酸が豊かできれい。



ジョージのピノ・ノワール「セレモニアル」ヴィンヤードと「ハンセン」ヴィンヤード。ジョージのピノ・ノワールは果実味のきれいさが特徴。セレモニアルはその代表格。ハンセンはうまみがつよくとても美味しい


大人気の689セラーズが作るカベルネ系三つです。右のラッキードローはクラシックなスタイル。ザ・ハイプは最安価ながらレベルが高い。キラードロップはカリフォルニアらしい果実味の豊かさが特徴です。


マイケル・ポーザンのナパ1847カベルネ・ソーヴィニヨン。うまみや酸、ストラクチャーもあるカベルネ・ソーヴィニヨン。


プロヴィナンスのメルローはメルローらしいやわらかさに、しっかりとしたストラクチャーもあります。レベル高い。


今回のカベルネ系で個人的ベストがこのバーマイスター カベルネ・ソーヴィニョン。果実と酸、ストラクチャーすべてがハイレベル。
Date: 2024/0215 Category: 業界ニュース
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審査員が全員女性という「さくらアワード」の審査結果が公表されました。ダブルゴールドやゴールドなどのランクによる受賞のほか特別賞が8つあり、そのうちの「女性ワインメーカー賞」のグランプリにパインリッジのシュナン・ブラン+ヴィオニエ2022が選ばれました。
コリーン
パインリッジのワインメーカーはジョシュ・ワイダマンという男性が基本ですが、実はこのワインだけコリーン・フェッツジェラルドという女性が担当しています。アロマティックでチャーミングなワインでコスパ良く、個人的にも好きなワインです。

飲んだことなかったら、ぜひ飲んでみてください。






Date: 2024/0213 Category: 業界ニュース
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BC
カナダのブリティッシュコロンビアが1月の大寒波で大きな被害を受けています。ブドウの樹は氷点下20℃を下回ると樹が凍結して新芽が死んでしまいます。オカナガン・ヴァレーの北部では1月11~15日にかけて累計50時間以上もこの温度を下回っていました。

実は昨年の冬にも同じような寒波があり、収穫量は58%も減ってしまいました。ただ、そのときは今回と比べると氷点下20℃以下の時間は短かったようです。

1月の寒波の後、樹の細胞を採取するなどの方法で、今年の収穫量への影響を調査しました。昨年も同様な調査を行っており、収穫量は56%減とかなり精密な予測を行っていました。

それで、今年の調査による収穫量への影響ですが、なんと97~99%という結果が出ています。平年の1~3%しか収穫がないことが判明しました。副梢や副副梢もほとんど期待できないそうです。金額にすると4億4000万~4億4500万カナダドルの損失になるとのことです
Date: 2024/0212 Category: 業界ニュース
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カリフォルニアは1週間ほど前に「大気の川(atomospheric river)」による大雨と風に見舞われました。洪水などによってサンタ・バーバラやサン・ルイス・オビスポ、ロスアンゼルスなど8つの郡では非常事態宣言が発令され、ナパでも数千世帯が停電するなど大きな被害が出ています。

昨冬に続いて、今年も雨が多い雨季となっていますが、意外なことに干ばつの危険はむしろ大きくなっているといいます。

というのは、「snow drought」と呼ばれる雪不足の状態が続いているからです。
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カリフォルニアの水の3分の1は「スノーパック」と呼ばれるシエラネバダ山脈に積もった雪からもたらされます。現状、この雪が平年の8割弱しかないというのが、干ばつの恐れがある理由です。オレゴンも同様ですが、さらにひどいのはワシントン州で、平年の半分ほどしか積雪がありません。

スノーパックの雪は春になるとゆっくりと溶け出して貯水池などの水を回復するのに使われますが、雪が少ないとそれが足りなくなるかもしれないとのことです。

2、3年前ほどのひどい状況から比べるとまだ危険は少なさそうですが、いろいろと難しいものです。
Date: 2024/0211 Category: 業界ニュース
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チョコレートに合う飲み物は何か、イタリアでの研究を紹介した記事がありました(Is Wine Thw Best Chocolate Paring Option?

この研究ではカカオの含有率99%、70%、30%のチョコレートに対して、それぞれ18種類の飲み物を合わせて、一番合うのはどれかを調べています。全部で54通りを試すわけで被験者も結構大変ですが、最終的には80人が参加してくれたそうです。

結果としては30%のカカオ含有率のチョコレートは多くの飲み物に合いましたが、中でもよかったのは甘口ワイン、バルサミコ酢、紅茶、ポートワイン、スパークリングワイン、ランブルスコ、コーヒー、グラッパでした。

70%のカカオ含有率のチョコレートも良好でしたが、一番良かったのはバルサミコ酢でした。ほかにはベルギースタウト、スパークリングワイン、甘口ワインも合いましたがバルサミコ酢ほどではありませんでした。

一方99%のカカオ含有率のチョコレートは難関でした。苦みが強いのと、油分や砂糖が少ないためくちどけも良くないのが原因ではないかと推測しています。その中で一番健闘したのはまたもやバルサミコ酢でした。バルサミコ酢は酸味と粘性があり、甘い芳香を持つことが多くあります。これらの要素が、チョコレートと両方を口に含んだときに、バランスをとることができると考えられます。

この研究はイタリアで行われたというのもバルサミコ酢の人気が高かった理由につながるのかもしれません。

ちなみに、米国ではチョコレートにリッチ系のカベルネ・ソーヴィニヨンを合わせることが多いですが、カベルネは今回の飲み物の中には入っていませんでした。
Date: 2024/0210 Category: 業界ニュース
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テラ・ヴァレンタインはナパのスプリング・マウンテンにあるワイナリーです。

インポーターによるとワイナリー名の由来は
ワイナリー名のテラはラテン語でランド(地)を意味する言葉です。山系のワインを特徴付けるヒルサイド土壌の重要性を指し示しています。また、ヴァレンタインはオーナーの父、ヴァレンタイン社の基礎となるヴァルスパー社を起業したヴァレンタイン・ヴァルテル氏に敬意を表してつけたものです。ラベルのハートもシックでロマンティック、特別な日に特別な人と飲むのに最適なワインです。
とのこと。

12年熟成のリースリングはボトルに金でハートと弓矢が描かれています。現地価格よりも安い4000円。



もちろんカベルネ・ソーヴィニヨンもあります。ラベルはリースリングの方がおしゃれですね。

Date: 2024/0209 Category: 業界ニュース
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多くの人のジンファンデルのイメージは「濃くて甘くてジャミーなワイン」だろうと思います。高級ワインになる品種というより安価な日常ワイン向けの品種と思っている人も多いでしょう。私自身、かつては「ジンファンデルはバーサタイル(幅広い)なワインになる」と聞いて首を傾げたこともありました。

この記事ではそんなジンファンデルについて、歴史を紐解きながら、誤解を解くことに挑戦したいと思います。

ジンファンデルがクロアチア起源であることを突き止めたのがUCデーヴィスのキャロル・メレディス教授(当時)。それ以前からイタリアのプリミティーボと同じでは、とかクロアチアのプラヴァッツ・マリと同じではといった噂はありましたが、DNA鑑定によって、クロアチアにわずかに残っていたツールイェナック・カシュテンランスキーという品種と同じであること、またプリミティーボも同じ仲間であることが分かりました。

一方、ジンファンデルという名称については、ニューヨークの苗木商が名付けたという説が有力です。ハンガリーに「Zierfandler」という白ブドウの品種があり、そこに紛れ込んでいた黒ブドウが「Black Zinfindal」と呼ばれたというものです。カリフォルニアに多くの苗木を輸入したアゴストン・ハラジー(ハラスティ)が持ち込んだ説も見かけましたが、ニューヨークには1930年代にはあったことが分かっていますので、ニューヨークが先であることは間違いありません。

これがゴールドラッシュとともにカリフォルニアに持ち込まれ、一躍メジャー品種になったわけです。理由の一つが育てやすさ。ジンファンデルはゴブレットやヘッド・プルーンと呼ばれるような垣を作らない育て方が容易にできるブドウです。ゴールドラッシュの時代、金属は貴重品であり垣のためのワイヤーも調達が大変でした。そこでヘッド・プルーンに向くジンファンデルがはやったと言われています。栽培に手がかからず、収量が多かったことも人気につながったと思います。当時のカリフォルニアの政府が推奨品種として挙げていたということも普及を後押ししたのでしょう、当時の畑で今に残るところはほとんどがジンファンデルが中心に植えられています。

このジンファンデル、果実の色は濃いですが、ブドウの実も房も大きくタンニンは低めになります。果皮が薄いのでワインの色はあまり濃くなりません。ジンファンデルとしばしば一緒に植えられていた品種の一つとしてアリカンテ・ブーシェがあります。アリカンテ・ブーシェは皮だけでなく果実も赤いのでワインは非常に色が濃くなります。ジンファンデルの色の薄さを補うために一緒に植えられていたものと考えられます。プティ・シラーも一緒に植えられることが多いですが、こちらも色が濃く、またタンニンも強いブドウです。ジンファンデルの色の薄さやタンニンの低さを補う狙いがあったと思われます。

このように、ジンファンデルというのは本来はエレガントな味わいの品種なのです。

ジンファンデルのもう一つの特徴は果実の成熟が不均一ということです。同じブドウの房の中に緑色のブドウと完熟したブドウが共存するといったことが普通に起こります。このため、緑色の果実が熟すのを待つと早く熟した果実はレーズン化してしまいます。これがジンファンデルのワインがしばしばジャミーな味わいになる理由です。ジャミーなワインにはジャミーなワインの良さや楽しさがあるので、それを否定するわけではありませんが、そういったスタイルにするかどうかはあくまで生産者の判断によるものであり、それがジンファンデルに共通するスタイルというわけではないのです。

Turleyがアルコール度数16%を超えるようなジンファンデルで一世を風靡したころは、完熟というより過熟なブドウによるジンファンデルが幅を利かせていましたが、今はもっとバランスが取れたスタイルのワインが多くなってきています。Turleyのワインも昔とは全くスタイルが違っています。

ジンファンデルの楽しみ方としてぜひ知ってほしいのが古木の畑のワインです。カリフォルニアには19世紀から20世紀初頭に植えられた樹齢100年を超えるジンファンデル主体の畑が今もなお何十と残っています。前述のようにこれらの多くは他の品種と混じって植えられています(フィールド・ブレンドといいます)。この比率は畑によって違いますので、畑による味わいの違いが、土壌や気候以外の要素でも出てくるわけです。そういった畑ごとの個性を味わってほしいと思っています。これらのワインはジンファンデルの中では高価ですが、それでも1万円を超えるのはめったにないので、他の品種に比べると割安感があります。

以下ではお薦めのジンファンデル(ジンファンデル主体を含む)を挙げておきます。

コスト・パフォーマンス抜群。甘やかですがジャミーではないジンファンデル。


ベッドロックが作るエントリーライン。気軽に飲むスタイル。


この価格でパーカー95点。


古木の畑の保護に力を入れるベッドロックが、様々な古木のブドウをブレンドして作る格安品。


ターリーの入門編


100年超える畑のブドウでこの価格。


エレガント系ジンファンデルの老舗。時代が追い付いてきた?


ベッドロックの自社畑。100年超える古木。ベッドロックのモーガンのMW論文はここのフィールド・ブレンドを分析したものでした。


リッジのジンファンデル系を代表するのがソノマのリットン・スプリングスとガイザーヴィル。数kmしか離れていないこの二つの畑の違いを味わってほしい。



ジンファンデルのゴッドファーザーと呼ばれるジョエル・ピーターソンが作る、現存する最も古い畑のジンファンデル。


鬼才エイブ・ショーナーがジンファンデルを作るとこうなる

Date: 2024/0206 Category: テイスティング・ノート
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X(Twitter)で知り合ったワイカン(@wine_cam)さん / Xにお誘いいただき、カリフォルニアとオレゴンの古酒を飲む会に参加してきました。ワインは米国在住のワイカンさんが、ハンドキャリーされてきたものです。お店は上野駅の「ブラッセリー・レカン」。料理はおいしいし持ち込み料無料という素晴らしいレストランです。



最初はオレゴンのソーター(Soter)のロゼ泡です。ヴィンテージは2005年。コルクは結構もろくなっていましたが、泡はまだちゃんとしていました。

このスパークリング・ロゼ、すばらしかったです。特に残っていたのを会の終わりごろに飲んでみたらイチゴミルクのような味わい。個人的には以前に飲んだウルトラマリンのロゼと並ぶくらい美味しい。

この日は白はなく、この後ピノ・ノワールが5本続きます。

最初のピノ・ノワールはナパのエチュード(Etude)の2000年。これは私的にはムネアツな展開で、最初のソーターと、このエチュードはどちらも同じワインメーカー、トニー・ソーターのワインなのです。このエチュードの2000年、予想以上に若々しく、まだチャーミングさが残るワインでした。

この後はカレラ(Calera)のReed 1997。やっぱりカレラは熟成していいですね。腐葉土とかマッシュルームのニュアンスも出ており、ストラクチャーも結構しっかりありました。

この後は3本オレゴンが続きます。
1999 Ken Wright Cellars Canary Hill Vineyard Pinot Noir
1998 Cameron Pinot Noir Willamette Valley
1996 Domaine Drouhin Oregon Pinot Noir
ケン・ライトは残念ながら、ちょっとブショネがありました。飲めないレベルではなかったですが、本領を発揮するには至らず。キャメロンはオーガニック栽培でしかも二酸化硫黄を加えていないというワイン。それで26年たっていることを考えると驚くほど健全なワインでした。味わいはこれだけ時間がたっていてもやはりナチュール感があります。好き嫌いは分かれるところがありそうですが、とても面白いワインでした。ドルーアンはなんというか、安定してます。オレゴンのスタンダードといった味わい。

つぎはレーヴェンズウッド(Ravenswood)のピックベリー(Pickberry)ヴィンヤード・レッド・ブレンド1986年です。ピックベリーはソノマヴァレーのサブAVAであるソノマ・マウンテンAVAにある畑。1982年に植樹され、1986年はなんと最初のヴィンテージとなっています。


品種はカベルネ・ソーヴィニヨン50%にカベルネ・フランが40%、メルロー10%。アルコール度数は今では考えられない12.5%です。これはむちゃくちゃ良かったです。「No Wimpy Wines」のスローガンで知られるRavenswoodのワインとしては驚くほどのエレガントさがありました。


最後は1979年のナパのZDのカベルネ・ソーヴィニョン。これが驚きなのですが、ブドウはナパとサンタ・バーバラのものを使っています。なぜカベルネ・ソーヴィニヨンでわざわざ冷涼なサンタ・バーバラのブドウを使ったのかかなり不思議ではありますが、これもまだちゃんと飲めるワインでした。コルクはグズグズで抜栓はとても大変そうでしたが。

この日のメンバーはカリフォルニア好きと古酒好き(若い人が多い)という異業種交流会のような形で楽しかったです。貴重なワインをありがとうございました。
Date: 2024/0202 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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シリコンヴァレー銀行によるワイン業界の分析レポートが1月に発行されました。昨年のシリコンヴァレー銀行破綻で、レポートの継続が懸念されていましたが、無事に発行されてよかったです。ただし、内容はバラ色とは言えず、米国のワイン業界の今後のかじ取りが難しくなってきていることを感じさせました。

fig1
最初の図はワインの販売量の前年比推移です。2000年代前半は年間20%といった大きな伸びがあり、2010年代前半もまだ成長が続いていましたが、2019年にはゼロ成長に。2020年はコロナ禍で伸びがありましたが、2021年からは完全にマイナス成長になってきています。ワインの供給過剰は欧州などでも大きな問題になっていますが、米国も例外ではなく、今後はブドウ畑の面積を減らすことも必要ではないかと言われています。

fig2
ワインの販売量が飽和する中、プレミアム化の動きが大きくなり、安ブランドを手放すワイナリーも増えました。上の図はプレミアム分野の成長を見たものです。高価格帯は景気の影響を大きく受けるため、いくつかの波がありますが、ワイン全体と比べると、成長の鈍化がゆっくりです。2021年はコロナ禍で娯楽が少ないことから高級ワインの消費が大きくなりましたが、それもつかの間で2023年は大きくマイナスになりました。これは他の娯楽にお金が回ったという事情もありますが、プレミアム分野もお花畑ではありません。

fig3
このグラフは生産者が各項目について懸念する状況なのか楽観する状況なのかを回答したもの。基本的には前年と同じ傾向ですが、景気の先行きには不安を感じているワイナリーが多くあります。唯一プラスだったのはブドウの供給の分野でした。

最後に、世代別のアルコールに対する好みを見ていきましょう。特に若い世代がワインを飲まないことが、ワイン消費の伸び悩みに大きく影響していると言われています。

fig5
上の図はパーティにいくときにどんなアルコールドリンクを持参するかというもの。65歳以上では過半数がワインを選んでいるのに対し、35から65歳ではほぼ3分の1でビールと競っています。これが21~34歳では16%と下から2番目になってしまっています。一番多いビールとは5ポイントの差があります。

fig6
最後は世代別のワインやアルコールに対する向き合い方を示したものです。若い世代はアルコール自体を飲まないと言われていますが、このデータからすると意外にもそうでもなく、アルコールを全く飲まない、あるいはたまにしか飲まないという人は30代が一番低く、40代、50代、60代、70以上とだんだん増えていきます。20代はやや飲まない比率が高いですが、これはアルコール慣れしていないという見方もできそうです。この結果を見ると、ワインの伸び悩みは、アルコール離れではなく、他のアルコールドリンクに流れているのが最大の要因と言えそうです。ここを何とかしていくことが今後のワイン業界にとって大きな課題になるでしょう。
Date: 2024/0131 Category: 業界ニュース
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Raen
2023年のワイン・スペクテーターで年間4位になったのがレイン(Raen)のピノ・ノワール「ロイヤル・セント・ロバート・キュヴェ2021」でした。このキュベの8ヴィンテージを垂直で飲むワイン会に出席してきました。

レインはカルロ・モンダヴィとダンテ・モンダヴィの兄弟によるワイナリー。この二人はナパのコンティニュアム(Continuum)のティム・モンダヴィの子供で、故ロバート・モンダヴィの孫にあたります。「ロイヤル・セント・ロバート・キュヴェ」のロバートは祖父に敬意を表して付けたものです。
ロバート・モンダヴィ
ティム・モンダヴィ
モンダヴィ家はみなナパでワインを作っていますが、レインだけは冷涼なソノマ・コーストでピノ・ノワールとシャルドネを作っています。ソノマ・コーストのフリーストーンなどに20エーカー弱の畑を持っており、「ロイヤル・セント・ロバート・キュヴェ」はフリーストーンの近くの畑のものを中心に買いブドウと自社ブドウで作っているレインの中心となるワインです。

シャルドネや限定品のロゼも飲んでいますが、ここでは8ヴィンテージのピノ・ノワールのコメントをごく簡単に紹介します。
2022年  酸強くリーンなスタイル。赤果実に鉄や血液っぽい要素
2021年  2022年よりもふくよか、赤果実に紅茶。この日の2番目
2020年  レインのワインとしては酸が低めでやや甘さと柔らかさを感じる
2019年  果実と酸のバランスが非常にいい。ハーブや旨味が出ていてとても良い。この日のベスト
2018年  香りが香水のよう。きれい系で味わいはちょっと軽い
2017年  やや濃いめの味わい。赤果実にブラックベリーなどの黒果実の味わいが加わる
2016年  レインのワインとしてはやや甘めだがバランスよく飲みやすい
2015年  赤果実を中心とした果実味がまだフレッシュで美味しい

ちなみにVinousの評価は以下のようになっています。
2022年 94
2021年 94
2020年 92
2019年 92
2018年 93
2017年 94
2016年 90
2015年 94

2021年と2022年のスタイルが意外と大きく違っていたのがちょっと驚きでした。干ばつで収穫量が少なかったり、収穫時期が早まったりといった要素はありますが、どちらも良好なヴィンテージ。違いは収穫時期によって出てきているのでしょうか。彼らの目指すスタイルに一番近いのがどのヴィンテージなのか気になりました。

年間4位の2021年は、期待を裏切らない味でしたが、それ以上に素晴らしかったのが2019(Vinousの評価はそれほどでもありませんが)。個人的には96点くらいあげたいレベルです。

貴重な機会をいただきありがとうございました。
Date: 2024/0130 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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南アフリカワインを輸入しているマスダの試飲会に参加してきました。南アフリカは、個人的にはかなり注目しているというか気になっている国であり、エキスパートになろうとは思っていませんが、もっとよく知りたいところです。今回はたまたまいた場所の近くで試飲会を開くことを知って、飛び込みで参加させていただきました。

試飲は白ワイン、泡、赤ワインの順です。


ポークパインリッジのソーヴィニョン・ブラン2023(1800円税別、以下同)。クリスプな酸が心地よく、味わいには厚みもあり、1000円台のソーヴィニョン・ブランとしては秀逸。


キャサリンマーシャルのアンフォラ熟成シュナン・ブラン(5700円)。なめらかなテクスチャーとエレガントな味わい。ふくよかさもあり1ランク上のシュナン・ブランというイメージ。


ポールクルーバーのヴィレッジ・シャルドネ(2800円)。2000円台とは思えないほどの複雑さがあるワイン。とても美味しい。


カノンコップの「カデット・ピノタージュ・ロゼ」(2100円)。ピノタージュのロゼ。バランスよくまとまっている。幅広い食事に合いそう。


リーベックのスパークリング・ブリュット(2300円)。生産者の名前「Riebeek」ですがラベルには記されていないのでちょっとわかりにくいで。シャルドネとピノ・ノワールを使ったスパークリングワインでシャルマ方式で製造。フリーランジュースのみ使用、シュールリーで6カ月熟成と作りは豪華。さわやかで果実味がきれい。シャルマなので泡立ちの「持ち」は今一つかもしれないが、この価格ならとても良い。


こちらは瓶内二次発酵を使ったスパークリング「ボレアリス・ブリュット(3100円)」。イースト香がシャンパーニュを思い起こさせる。高級感あるがこの価格は立派。


キャサリン・マーシャルのピノ・ノワール2022(4300円)。果実の柔らかさが秀逸。上品で美味しい。


左はレイビッド&ナディアの「エルピディオス2021」(5700円)。シラー、カリニャン、サンソー、グルナッシュ、ピノタージュにのブレンド。全房を使っているらしい。うまみがとても強く複雑な味わい。とてもいい。
右はニュービギニングスの「ピノタージュ2021」(2200円)。南アフリカ初の黒人生産者らしい。きれいなつくりで飲みやすい。


ドルニエのピノタージュ(2900円)。うまみと果実味のバランスが秀逸


ライナカの「オーガニック・レッド2020」(2600円)。スムーズなテクスチャーでうまみが豊富。


ボッシュクルーフのシラー2021(4000円)。シルキーなテクスチャーが官能的。美味しい。


キアモントのシラー2016(4700円)。エレガントな味わい。美味しい.


カノンコップの「カデット・カベルネソーヴィニヨン2020」(3100円)。柔らかさがありとても良い。


コンスタンシア・グレンの「ファイブ2020」(5900円)。ボルドー系ブレンド。複雑さが素晴らしい。

最後に全体の感想を記します。
全般に酸が強いものが多い。酸がしっかりしたワインは好きですが、それだけでふくよかさがないと、ちょっとバランスが悪く感じられることもあります。結果としてチョイスしたワインはどれも酸とバランスが取れた果実味や複雑さなどがあるものになったと思います。白だとシュナンブラン、赤だとシラーなどに好みのものが多かったのもそのあたりから来ていると思われます。
Date: 2024/0129 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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40近くのワイン・ブランドを所有するヴィンテージ・ワイン・エステーツがいくつかのワイン・ブランドを売却する方針であることが明らかになっています。

ワイン・サーチャーの記事によると、ナパのクロ・ぺガス(Clos Pegase)とソノマのヴィアンサ(Viansa)については売却の方針。一方で、BRコーン(B.R. Cohn)、ジラード(Girard)、クンデ(Kunde)、およびスーパーマーケット向け安ワインブランドのレイヤーケーキとチェリーパイについては「プライオリティ・ブランド」として今後も保持する方針です。

ここで言及されていないワイナリーとしてはキュペ(Qupe)、オーウェン・ロー(Owen Roe)、コセンティーノ(Cosentino)、スワンソン(Swanson)、キャメロン・ヒューズ(Cameron Hughes)などがあります。これらも売却される可能性は否定できないようです。

この発表の後、人員削減に踏み込んだことも明らかになっています。

ヴィンテージ・ワイン・エステーツは2021年に株式公開していますが、2022年以降は業績が低迷し、株価も下落しています。在庫管理の問題などもあるようで、落ち着くまではしばらくかかりそうです。
Date: 2024/0127 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ジョン・コングスガードへのインタビューから、ジャッジ以外の部分を紹介します。


●ナパ・シャルドネについて

ナパ・ヴァレー・シャルドネは1996年のコングスガード創設時から作り続けているワインであり、生産量でもコングスガード全体の75%ほどを占めている重要なワインです。その根幹をなすのがナパのカーネロスにある二つの銘醸畑、ハイド(Hyde)とハドソン(Hudson)。ハイドを創設したラリー・ハイド、ハドソンを創設したリー・ハドソンとは古くから交流があり、特にリー・ハドソンは大学の同級生として、ずっと「どこにシャルドネを植えようか」という話をしてきたといいます。

ちなみに、ハイドは79年、ハドソンは大学を卒業した81年に土地を購入し、ブドウ栽培を始めています。もう一つついでに書いておくと、ジョン・コングスガードは代々ナパに住む第5世代目。文学で大学を出た後ワイナリーで働いてワインに興味を持ち、UCデーヴィスで改めて学んでいます。リー・ハドソンも園芸で大学を出た後にブルゴーニュでワインに目覚め、UCデーヴィスに入りなおしました。この時代、最初からワイン造りを志すよりも、ほかの分野から転身する人が多かったことがうかがえます。

ジョンのワイン造りに大きな影響を与えたのは前回の記事でも触れたNewton Vineyards時代。1983年にNewtonに入り、ハイドやハドソンのブドウを使ったシャルドネもそのときから作っています。足かけ40年の付き合いになるわけです。しかも、畑の同じブロックを使い続けているそうです。

このころ、ジョンは毎年2週間ブルゴーニュでワイン造りを学び、今も基本的にそのメソッドを使い続けています。今では高級シャルドネで当たり前のようにやられている「ノンフィルター」も1990年にNewtonで始めたのがカリフォルニアでは初でした。ただ、ノンフィルターだとどうしてもワインに濁りが出ます。そこで卸売業者などにフィルターを使ったものと使っていないものを両方試飲して、美味しい方を選んでもらう実験をしました。すると味ではフィルターなしが圧倒的。「にごり」について質問すると、全く問題ないという意見がほとんどでした。

さて、数あるカリフォルニアのシャルドネの中でも、ハイドとハドソンという銘醸畑中の銘醸畑を両方入れたというナパヴァレー・シャルドネですが、ここでずっと気になっていたことを質問しました。内容は、「ハイドもハドソンもどちらも単一畑でボトリングしてもおかしくない素晴らしい生産者。これをどうしてブレンドしようと思ったのか」ということです。

クラシック音楽好きのジョンは音楽に例えてこう答えました。「ソロ・バイオリンとオーケストラの違いと同じだ。ソロ・バイオリンは美しいがシンプルになってしまう。複数のワインを合わせることでコーラスのように広がりが出る」。実際2011年は、瓶詰めまでの2年間が過ぎてもまだハイドのワインが樽発酵が終わっておらず、ハイドなしで出したそうです。その結果としてはやはり味わいがシンプルになってしまったとのこと。

また、ハイドとハドソンの個性を聞いたところ、ハドソンは中間的な味わいで横に広がるイメージ。味わいに深みを与えてくれる。ハイドはハイノートで酸が強く、単独で飲むとアルザスのワインのよう、とのことでした。

また、逆に個性ある素晴らしいワインであっても、ブレンドするとうまくいかない、といったケースもあります。コングスガードではそういったワインはセカンドラベルの「Kingsfarm」に入れてしまうそうです。

なお、Kingsfarmのシャルドネは日本には入ってきていません。メーリングリストだけでほぼ売れてしまうそうです。

今回は2018年のナパヴァレー・シャルドネを試飲しました。
芳醇で香りがすばらしい。よく熟れた柑橘に白桃の風味。やわらかなまったりとした味わい。複雑で余韻も長く、やはりこれも素晴らしいワインです。

畑は前述のようにハイドとハドソンがメインですが、ほかにジャッジの畑の近くのブドウとカーネロスの畑のブドウもブレンドしているそうです。

前回、書き忘れたのですが、ジャッジの畑は1975年に植えられており、ジャッジのワインは2002年から。それまではどこで使われていたのでしょう。実は一番最初はZDのシャルドネで使われており、1983年から1996年まではNewtonのシャルドネにブレンドされていました。Newtonで10年以上ジャッジの畑のブドウを使ってきたことが、ジャッジのワインを作るときにも生かされています。また、コングスガードを始めたばかりの最初のシャルドネは、ジャッジの畑が3/4で、残りがハイドとハドソンという構成だったというからちょっと驚きです。

シャルドネの熟成については前回のジャッジのときにも書きましたが、ジョン自身は白ワインでは酸とフレッシュさを大事にしているため、熟成については10年ほどが目安としています。ナパヴァレー・シャルドネについても6~8年は熟成して良くなりますが、それ以上は良くなるときもあるけど良くならないときも多いとのことです。

●コングスガードのワイナリー(醸造設備)とケーヴについて
コングスガードの本拠地はアトラスピークにあります。コングスガード・ワイナリーを始めて、自社設備のための場所を探していました。Lunaというワイナリーでアトラスピークのカベルネ・ソーヴィニョンを使ったことがあり、それが縁で2004年にアトラスピークに土地を買うことになりました。それから2年間かけてセラーとケーヴを作りました。お金がなかったのでほとんど自分たちだけで作ったそうです。ちなみに現在めきめきと売り出し中のMacDonald VineyardsのGream MacDonaldは、ジョンが設備を貸すことを条件に無償で手伝ってくれる人を探したときに知己になり、10年間働いてもらったそうです。

2009年に畑の植樹を始めました。標高800mというのはナパでは一番の高さと思われます。畑はカベルネ・ソーヴィニヨンのほか、シャルドネ、ヴィオニエ、ソーヴィニヨン・ブランを作っています。シャルドネは個性が強く、ナパヴァレー・シャルドネにはブレンドされていません。将来は単一畑のワインとして作っていきたいとのこと。ヴィオニエやソーヴィニヨン・ブランは自社のワインに使われています。

●シラーについて
試飲したワインの最後が2018年のシラー。シラーはハドソンの畑のものを使っています。ハドソンの畑はカーネロスの中ではマヤカマス山脈に近いところにあり、北側は丘で隆起しています。冷涼なカーネロスの中では特別な場所だといいます。2.5エーカーの畑で250~300ケース作られています。

試飲しました。
ペッパーなどのスパイス、黒鉛に黒系の果実が緻密な味わいを構成します。ちょっと血液や皮のニュアンスもあります。酸が豊かでエレガント。きれいで上品なシラーです。ナパのシラーではコルギンのシラーも素晴らしいですが、そちらはより暖かさを感じる味わい。この冷涼感は他では得られません。

シラーを作り始めたきっかけは、やはりフランス。ヴィオニエの勉強をしにローヌのコンドリューに行ったとき、一日コンドリューの試飲をして疲れて宿に帰ってきたときに飲んだシラーが美味しすぎて、シラーに目覚めたそうです。コートロティよりはエルミタージュを目指しているとのこと。

赤についてはステンレスタンクで発酵し、3週間スキンコンタクト。発酵中はポンピングオーバーを行います。熟成は50%新樽とシャルドネよりは低くなっています。新樽を多く使うと影響が出やすくなるので、あまり多くしていません。

●ピノ・ノワールは作らない?
ブルゴーニュに大きな影響を受けているコングスガードですが、ピノ・ノワールは作っていません。なぜでしょうか。「もちろんピノ・ノワールは大好きだ。ただ、私はナパの住民であり、ナパでは最高のピノ・ノワールを作るのは難しいと思っている。ソノマ・コーストまで行けば素晴らしい畑があるが、片道3時間のドライブを毎日のようにするのは大変だ」とのことでした。

●多くの弟子について
Newtonは中規模のワイナリーで、常にいろいろなワイナリーなどから研修生を受け入れていました。ジョンはコンサルタントを含めて1983年から2005年までNewtonで働いておりそこで多くの「弟子」的な存在ができました。例えばアンディ・エリクソンは彼の一番弟子と言われています。

多くの弟子の中で、スコリウム・プロジェクトというワイナリーで、アバンギャルドなワインを作っているエイブ・ショーナー(Abe Schoner)についてどう思うか聴いてみたときの反応が面白かったです。いわく「弟子の中には『高名』なワインメーカーと言われる人も何人もいますが、唯一エイブだけは「悪名」の高さで知られています。彼のワインはあまり好んでいないようですが「Intellecual」な部分は評価していると苦笑いを浮かべ名が答えてくれました。

●クラシック音楽について
クラシック好きで知られるジョンに、音楽の分野で何をやっていくか聞きました。ジョンは「CHAMBER MUSIC IN NAPA VALLEY」というNPOの世話役をしており、そちらもかなり忙しいようです。そちらは今後も続けるため、新しいことは今は考えていないとのことでした。

Date: 2024/0125 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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コングスガード(Kongsgaard)の創設者で共同オーナーであるジョン・コングスガードが初来日し、インタビューの機会をいただきました。1時間半にわたりいろいろ伺った(あっという間でした)のですが、その中から今回は、一番関心が高いと思われるシャルドネ「ザ・ジャッジ(The Judge、以下ではジャッジ)」についてまとめます。

ジャッジの最初のヴィンテージは2002年。そもそもジャッジの名前はジョンの父親が判事をやっていたことが由来ですが、その父が2001年になくなり、追悼の意味を込めて作ったワインでした。最初は樽2つだけで、法律学校の生徒さんに配ったといいます。それまではナパのシャルドネにブレンドされており、ジョンは単独のワインとして続けることは意図していなかったのですが、ロバート・パーカーが樽から試飲して「これを出さないとだめだ」と言ったことで、翌年以降も続けることになりました。

ただ、収量が少なく高価なものになってしまうため、最初はメーリング・リスト向けに「ジャッジ入りのものは100ドルプラス」という形を取ったとか。当時入手した人はラッキーでしたね。

現在の生産量は250ケースほど。今回の来日ではジャッジのマグナムを持参してきており2013年のマグナムのジャッジを試飲しましたが、マグナムは通常は販売せず、チャリティ・オークションへの出品などイベントでしか使っていないとのことです。シャルドネは酸とフレッシュさが大事で、熟成についてはあまり重視していないというジョンですが、「10年以上熟成させるならマグナムが一番」だとジョンは言います。本当に貴重なワインをいただきました。

その2013年のジャッジですが、白桃やはちみつのようなとろけるような香りと味わいに、熟成によるナッティな風味が加わります。穏やかな酸で極めて長いフィニッシュ。時間が経つとシャンパーニュのようなイーストの風味も加わります。また、ジョンによるとフィニッシュに塩味を感じるのもジャッジの特徴だとのこと。ただ、この塩味は低収量に関係しているとはいうものの、何によるものなのかはジョンにもわからないそうです。

さて、ジャッジの畑でなぜ、これほどまでに素晴らしいシャルドネができるのか。そこに大きく関係しているのが収量の低さです。コングスガードのナパヴァレー・シャルドネで使っているハイドやハドソンの畑が1エーカーあたり3トン程度あるのに対し、ジャッジの畑は1エーカーあたり1トンに行くかどうか。一般的に1エーカーあたり2トンを切ると極めて低収量と言われていますが、1トン以下というのはほとんど聞いたことがないレベルです。

この低収量はグリーン・ハーヴェストなど人為的に収穫量を減らしているわけではなく、自然によるものです。ジャッジの畑はクームズヴィルAVA内にあり、ちょっと小高くなった丘にあるようです(詳しい場所は明らかにしていません)。ヴァカ山脈系の火山性土壌が多いクームズヴィルで、ジャッジの畑も火山性土壌ですが、とにかく表土が薄くて岩ばかりなのと、その表土も、ちょっとピンク色がかった火山性の灰が中心で、窒素などの栄養分がほとんどありません。台木も樹勢が強くなるようなものを使っているのですが、それでも樹が育ちません。ジャッジの畑の一番古い樹は1975年に植樹したものですが、その樹でさえ、幹の太さが10㎝程度にしかなっていないそうです。

シャルドネのクローンは、いわゆるオールド・ウェンテ。ハドソンで使っているショット・ウェンテや、その他のオールド・ウェンテもあるようです。このクローンは非常にブドウの房が小さく、ブドウの実も小さくなるのが特徴。普通は4房程度で1ポンドの収穫になるのに、ジャッジの畑では10~15房も必要です。皮の比率が高いため、白ワインであるにもかかわらずタンニンを感じるとのこと。

写真でもその小ささがわかると思います。



コングスガードではシャルドネは24.5Brix程度で収穫しています。以前はもっと高い糖度にしていたそうですが、現在は抑え目になっています。発酵・熟成は小樽で行います。これも以前は100%新樽でしたが、今は70%程度になっています。

ジョンはNewton Vineyardsに在籍していた1980年代、毎年のようにブルゴーニュに行き、コシュ・デュリやドミニク・ラフォンなどの素晴らしい生産者の下でワイン造りを勉強してきました。コングスガードでは基本的に、そのときに学んだ伝統的なブルゴーニュの方式で醸造・熟成しています。例えば天然酵母での発酵や2年間の樽熟、フィルターなしでの瓶詰めといったことはすべてニュートン時代に始めており、コングスガードでも同じ方法にならっています。彼はUCデーヴィスでワイン造りを学んでいますが、そこでは基本的に「クリーンな」ワイン造りしか学ばないため、天然酵母はリスクが高いとして推奨されていませんでした。その時代においてジョンは先駆的な存在でした。

特に樽での熟成は常に空気に触れた状態になるため、ワインの変化も予想できないような形になります。例えば樽熟成の2年目くらいになると果実味はどこかに行ってしまい「水平線の向こうにワインを見る」ような状態になるといいます。それを乗り越えた先に素晴らしい結果が待っているのですが、現在のブルゴーニュでは熟成前酸化などのリスクを取る生産者はだんだん減ってきているとジョンはいいます。今では逆にブルゴーニュからコングスガードに勉強に来るそうです。

2年間の樽熟の後、ボトル詰めして半年間さらに熟成してから出荷します。

さて、ジャッジの畑の場所はジョンの母方の祖父が持っていた土地でした。祖父は石材業を営んでおり、サンフランシスコ周辺での護岸工事などに使われていました。

前述のように場所はクームズヴィルです。クームズヴィルはナパ市の東方、海からの距離が近いため冷涼ですが、カベルネ・ソーヴィニヨン系が有名です。例えばパルマッツやFAVIAなどがこの土地から素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨンなどを作っています。

この土地になぜ、シャルドネを植えたのでしょうか。

ボーリュー・ヴィンヤードのワインメーカーやコンサルタントとして1940年代から80年代までナパの数多くのワイナリーに影響を与えたアンドレ・チェリチェフが、この近くに住んでいました。ジョンの父とも仲良しでした。ジョンはUCデーヴィスの学生時代からここに畑を作りたいと考えていて、アンドレに助言を求めました。そうしたら「ここはシャルドネしかない」と言い切り、それでシャルドネを植えたのでした。

アンドレ・チェリチェフの慧眼にあらためて恐れ入った次第です。



後編の記事では他のワインやアトラスピークのワイナリー、交友関係などを取り上げる予定です。
Date: 2024/0124 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ジョシュ・セラーズ(Josh Cellars)のワインがSNS上でバズっているそうです。
きっかけになったのが、X(旧Twitter)におけるこの投稿。



この投稿、今では1700を超える「いいね」と2000を超える「リポスト」がされ、2000万回以上のビューがあります。訳すと「ステラ&ベアフットを放っておいて、大人になれと言い続けるつもりはない」(by DeepL)となります。ここで「Stella」と「Barefoot」はポピュラーな安い甘口ワインのブランドです。手ごろな価格帯のドライなワインのお薦めの代表として「Josh」を取り上げた、そんな投稿です。

この投稿に対して最初はほかのドライなワインのお薦めなどが返信されていましたが、次第にJoshそれ自体をジョークとして使うような投稿が増えていったそうです。


これは4万以上の「いいね」と2000を超えるリポストがされています。


これは3万以上の「いいね」と2000を超えるリポスト。


5000を超える「いいね」。


どうやら、Joshの名前とラベルが広がる中で、「Josh」というありふれた名前が、ちょっと高級感のあるラベルと字体で描かれているというところに面白みを感じている人が多いようです。

ついにはJosh Cellarsの公式Xもこんな投稿をしています。



このアカウント、2019年から休眠状態でしたが、今回の「バズ」で復活してきたようです。インスタのアカウントではこんな投稿もしています。



なかなかこのあたりのジョーク感覚が日本人にはわかりにくいところですが、SNSでワインの名前がバズるのはこれが初めてでは、と言われております。

狙ってできる「バズ」ではないですが、何がどうはやるのか、興味深いものがあります。
Date: 2024/0121 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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アカデミー・デュ・ヴァンのレストラン講座としてピーター・ルーガー・ステーキハウスでのワインディナーを開催しました。

料理が美味しかったのはもちろん、サービスも素晴らしく、思い出に残るディナーとなりました。


今回のワインはナパヴァレーからすべて選びました。

1. Schramsberg Blanc de Blancs 2019
2. Grgich Hills Fume Blanc 2020
3. Rombauer Chardonnay 2021
4. Far Niente Chardonnay 2021
5. Hudson Phoenix 2020
6. Shafer Relentless 2018
7. The Mascot 2018
8. Vine Hill Ranch Cabernet Sauvignon 2018
9. Bond Vecina 2004
10. Bond Melbury 2004
追加
11. Bond Pluribus 2004
12. Bond St.Eden 2004

白ワインの3本はいずれも樽を利かした(といってもGrgichはかなり上品ですが)ものを選びました。

前菜のベーコンのスモーキーさに、特に樽の効いたシャルドネが合うだろうと思ったのですが、その意図を伝えるのを忘れていたので、シャルドネが出たときに、もうベーコンを食べきっていた人が多かったのはちょっと誤算でした。


前菜の後はチキンの丸焼き。これも皮の香ばしさが素晴らしい。シャルドネも合いましたし、そのあとのハドソンのフェニックス(メルローベース)にも合いました。ハドソンのフェニックスは冷涼さのあるメルローでとてもよかったです。

次のワインはシェーファーのリレントレス(シラー)。ナパのシラー、作っているところは少ないですが、品質はどれも素晴らしいです。今回も「初めて飲んだけど美味しい」という感想をいただきました。

7本目からはカベルネ系が続きます。一応、ここもストーリーはあって、メインのボンドにつながる構成にしています。7番目のザ・マスコットはハーランやボンドなどのファーストワインを選んだ後のワインをブレンドしたもの。ハーランにはメイデン、ボンドにはメイトリアークというセカンドがあるので、一応これはサードという位置づけになると思います。とはいえ、非常に高い品質で、いいワインです。これが一番好きという方もいらっしゃいました。

8本目はヴァイン・ヒル・ランチ(VHR)。ヴァイン・ヒル・ランチはオークヴィルにある畑で、実はボンドのヴァシーナ(Vecina)はこの畑のブドウを使っています。畑つながりで選びました。濃厚ながらも上品さのあるワインでこれもよかったです。


メインはもちろんT-ボーン・ステーキ。表面のかりかり感と香ばしさ、肉の旨味の三重奏です。こう見てくるとピーター・ルーガーの料理のポイントは香りかなあと改めて思います。ナパのワインによく合うのもその香りとの相性の良さによるのでしょう。T-ボーンはサーロインとヒレと両方を楽しめますが、サーロインのところも和牛のサーロインとは全く違って脂はほとんどなく赤身のような味わい。ただうまみはすごいです。肉とワインが進みすぎるのが難点。

というところでメインの2つのワイン。どちらもヴィンテージは2004年。ヴァシーナは前述のようにヴァイン・ヒル・ランチのブドウ。オークヴィルの西側の沖積扇状地というと、かの有名なト・カロンもそうですし、ハーランの畑も近くです。緻密な黒果実の味わいが身上。ボンドの他のワインが知られざる畑を発掘したものなのに対し、ヴァイン・ヒル・ランチという定評ある畑のブドウを使った点は個人的には面白みにかけると思ってしまうときもありますが、やはり美味しいものは美味しい。個人的にはこの日のベストでした。

メルベリー(Melbury)はセント・ヘレナの東側、コン・ヴァレー(Conn Valley)と呼ばれる地域にあります。ナパの東側では珍しい粘土の土壌もあり、ボンドの全ワインの中でも一番エレガント。赤系果実の風味がひかります。

ここまでで本当は終わりなのですが、万が一ワインが足りなかったときに備えて、同じヴィンテージのボンドのセント・エデンとプルリバスを予備に持ってきていました。もちろん実費はいただくのですが、それでもいいかと聞いたところ皆さんぜひ飲みたいとのことで、そちらも追加することになりました(ちなみにこのボンドは格安で入手したので、この追加分はかなりお得だったと思います)。期せずしてボンド2004年の4畑を飲み比べすることになってしまいました。

プルリバス(Pluribus)はナパの西側、スプリングマウンテンの畑です。ボンドの中ではやや果実味に乏しいタイプだったからか、みなさんの人気はもう一つでした。

最後はセント・エデン(St. Eden)。オークヴィルの東側のヴァレーフロアにある畑。スクリーミング・イーグルの畑からもちょっとしか離れていません。これもヴァシーナと甲乙つけがたいワインでした。皆さんの人気はこれが一番。

最後にたっぷりのチーズケーキをいただいておなかいっぱいになりました。
Date: 2024/0119 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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UCデーヴィスが中心となる国際的な研究チームが北米産ブドウ9種類の「パンゲノム」(遺伝子全体の情報)を解析しました。

A super-pangenome of the North American wild grape species | Genome Biology | Full Text

北米産ブドウは、ワインにしたときの味わいの点ではヴィティス・ヴェニフェラと呼ばれる欧州産のブドウに劣りますが、病気に強く、より幅広い環境で生育できるという特徴があります。北米産ブドウの方が生育環境が幅広いのがその理由ですが、その様々な耐性を遺伝子のどの部分が担っているかといったことが、今回の研究で分かるようになります。

例えば、塩分の多い土壌に対応できる台木を選ぶ際などに、この情報が使われていくことになります。

研究にはE&Jガロなどが出資しています。
Date: 2024/0118 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ELEMENTAL
ボーグルは従来のガラス瓶と同じ750mlのアルミボトルを使った新しいワインシリーズ「Element[AL](エレメンタル) Wines」を1月17日に発表しました。ワインの種類はシャルドネ、ピノ・グリジオ、ロゼとピノ・ノワールの4種類。

アルミボトルの最大のメリットは軽量であること。ワインの栽培から流通までの二酸化炭素排出量を考えたとき、最大の排出要因はガラス瓶です。製造においてもかなりの排出があり、その重さから流通における排出量も大きくなります。ガラス瓶が平均500gするのに対し、今回のアルミボトルは90gで済みます。ガラス瓶と同じ本数をトラックに積載するとすると重量は5000㎏も少なくなります。また、サイズも少し小さくなるため、実際にトラックに積載できる本数は43%増え、それでも3%軽くなります。

また、アルミボトルはリサイクルのしやすさもガラス瓶を上回ります。アルミに組むはリサイクルによる品質の低下がほとんどなく、リサイクルの比率も高くなります。

「Element[AL]は、単なる新しいワインブランドの立ち上げではなく、ワイン業界の新しい考え方の始まりです。私たちは、既存のガラス瓶を軽量化する方法を模索することから始めましたが、その結果、消費者が受け入れる準備が整っていると感じる、より急進的なアプローチにたどり着きました」とボーグルのコンシューマー・リレーションの副社長であるジョディ・ボーグルは語っています。

Date: 2024/0117 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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sunny

低アルコールやノーアルコールの「ベター・フォー・ユー」と呼ばれるカテゴリーが成長を続けています。ニールセンの調査によると2023年の売上高は2年前と比べて35%増となっています。Z世代とミレニアル世代は、「ソーバー(sober)」と呼ばれるアルコール摂取を控えるライフスタイルへの傾倒が強く、こうした増加はさらに拡大すると予想されます。

米国でこの分野をリードするのがシャイド・ファミリーの「サニー・ウィズ・ア・チャンス・オブ・フラワーズ(略称サニーワイン)」。2020年にソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワール、シャルドネを発売し、2022年にはロゼとカベルネ・ソーヴィニヨンを追加しています。2023年初めにはスパークリングのロゼを発売しました。米国では唯一の糖分ゼロ・低アルコールの発泡ロゼとなっています。

サニーのブランドは年々急成長を遂げており、2020年の出荷量1万1000ケースから、2023年には10万ケース近くまで拡大しています。さらに、サニーはこのカテゴリーで最も評価の高いワインであり、90点以上のスコアを数多く獲得しています。10ドル以上の「ベター・フォー・ユー」米国ブランドでは、サニー・ウィズ・ア・チャンス・オブ・フラワーズが総合トップ3に入ってます。

日本でもオルカ・インターナショナルが初期から輸入しています。私も何回か飲んでいますが、普通においしく飲めるワインです。

ショップは「ワインと地酒の店 かたやま」です。
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

サニー ウィズ ア チャンス オブ フラワーズ シャルドネ
価格:1,760円(税込、送料別) (2024/1/17時点)



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サニー ウィズ ア チャンス オブ フラワーズ ピノノワール
価格:1,760円(税込、送料別) (2024/1/17時点)



Date: 2024/0115 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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ワイン・スペクテーターが2023年のコスパワイントップ10を発表しました。40ドル以下で評価90点以上、一定以上の生産量の中からさらに選んだとのこと。

その中で1位に選ばれたのがラ・クレマのピノ・ノワール・ソノマ・コースト2021。米国で28ドルですが、日本でも3000円台で買えますので、日本のコスパで見てもなかなかだと思います。

ラ・クレマはケンダル・ジャクソンなどで知られるジャクソン・ファミリーのブランド。ジャクソン・ファミリーはソノマを中心に多くのブランドや畑を持っています。ソノマ・コーストのピノ・ノワールは、従来はソノマ・コーストといいつつ、実際にはやや温和なロシアンリバー・ヴァレーのブドウを半分くらい使っていました(ロシアンリバー・ヴァレーの大半がソノマ・コーストに含まれているので、もちろん嘘をついているわけであはありませんが)。

2021年のヴィンテージからはより冷涼地域のブドウが中心になりました。ロシアンリバー・ヴァレーに含まれるブドウは3分の1以下になり、ソノマ・コーストの北端で極めて冷涼なアナポリスの近くの畑や、強風で知られるペタルマ・ギャップの畑などが加わりました。さらに収穫もこれまでと比べて1週間ほど早くすることで、より冷涼感のあるブレンドになったようです。

ピノ・ノワールは大量生産には向かないブドウ品種と言われていますが、ラ・クレマは様々な個性を持つブドウをブレンドすることで、20万ケースという量で一定以上のクオリティをなしとげていること、素晴らしいと思います。

ちなみに、ラ・クレマはエノテカが輸入していますが、エノテカで定価で買うよりほかのショップで買う方が安くなります。

酒宝庫 MASHIMOです。


トスカニーです。


WINE NATIONです。

Date: 2024/0112 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ダラ・ヴァレ(Dalla Valle)でThe Wine Independentのリサ・ペロッティ・ブラウンが全ヴィンテージのMayaを試飲し、合わせて歴代のワインメーカーが集まり、その写真がインスタグラムに出ていました。

左からトニー・ソーター、ナオコさん、ミア・クライン、マヤさん、アンディ・エリクソンです。

トニー・ソーターは90年代にアラウホやスポッツウッド、ダラ・ヴァレなどで名を馳せ、自身のエチュードでも素晴らしいワインを作っていましたが、ピノ・ノワールへの夢を絶ちがたく、2000年代にはオレゴンに移住してSoter Vineyardsを立ち上げ、今もそこでワインを作っています。

ミア・クラインはキャシー・コリソンやトニー・ソーターに師事し、中でもトニー・ソーターとは多くのワイナリーで一緒にワイン造りを手掛けました。現在は自身のSelene(セレーヌ、オレゴンのDomaine Sereneと間違いやすいので注意)をナパに持つほか、ナパのブレスラーやパルマッツでのワインメーカー、コンサルタントを続けています。

アンディ・エリクソンは現在もコンサルタントとして残っているほか自身のファヴィアやマヤカマスなどでワインを作り、2023年にはナパヴァレー・ヴィントナーズのチェアマンになるなど、今はナパの顔とも言っていい存在です。

トニー・ソーターの90年代のワインは大好きでした。オレゴンでもいいワインを作っていますが、最近は動静を聞くことがあまりなかったので懐かしいです。
Date: 2024/0111 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ソノマで2番目に古いワイナリーで、家族経営ワイナリーとしては一番古いガンロック・バンシュー(Gundlack Bundschu)の親会社だるブンシュー・カンパニーが再生可能型有機認証(Regenerative Organic Certification=ROC)を取得しました。ROCは最先端の有機認証として注目されており、カリフォルニアではタブラス・クリーク、ボンテラ、ニール・ファミリー、ガーギッチ・ヒルズ、ドナム・エステートなどが取得しています。
ROC
この認証を取るためにはまずCCOFなどの公的な有機認証を得ている必要があり、その上で土壌の健康や動物の福祉、社会的公正といった従来はサスティナブルな認証に含まれていて有機栽培では取り入れられていなかった概念を取り込んでいます。有機栽培とサスティナブルが合体したような認証となっています。

バンシュー・カンパニーの社長兼CEOであるジェフ・バンシューは、「再生可能型有機認証がどういうものかを知ったとき、それが農法だけでなく生態系全体に広がり、炭素隔離率をさらに高めるという事実が、私にとって本当に魅力的でした。ROCは、将来の土地と気候の保全に焦点を当てながら、私たちが過去165年間ここでやろうとしてきたことを正式にしたもので、私たちにとって傾注すべき枠組みとなっています」と語っています。
Date: 2024/0106 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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オークションや個人売買などの2次マーケットは、株式市場などと同様に資産形成に使われるケースもあります。2次マーケットの価格指標を公表しているLiv-exが100の代表的ワインの価格からなる「Liv-ex 100」(株式でいえば日経平均のようなものです)の2023年末の指標を公開しました(Liv-ex 100 closes 2023 down 14.1%  - Liv-ex)。

Liv-ex

これによると2023年12月には指標が1.1%下落、2023年全体では14.1%下落しています。Liv-ex100は20年の歴史があり、その最初と比較すると285.5%増となります。これは年利にすると平均6.98%に相当しますから、少なくとも銀行預金などと比べると相当効率のいい資産増になっていました。また、過去5年で見ると15.5%増ということになります。これは年利2.92%に相当します。

Liv-ex Fine Wine 1000という世界の1000のワインからなる指標では12月の下落幅は0.7%とやや小さくなります。Fine Wine 1000のサブセットのインデックスの中ではItaly 100が12月も0.4%上昇となっています。

単体のワインで見ると、ギガルのラ・トゥルク2018が12月に11.4%と最大の上昇幅であり、年間通しても4.8%上昇しました。

日本では2次マーケットの市場はだいぶ小さく、資産形成に使っている例も少なさそうですが、ショップなどで売られているワインの中にも2次マーケットで仕入れたものが入っているケースもあるだろうと思います。ワイン全体の価格動向にも影響しています。
Date: 2024/0105 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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米国でワインの研究に費やされている資金はどれだけあるのでしょうか。

正式な統計があるわけではないので、正確な見積もりは難しいのですが、米国農務省によると2019年に2000万ドルだったといいます。また、2020年の山火事以降は煙害の研究に多くが咲かれており、年間500万ドルの助成金が出ています。

ただ、2020年の煙害だけでもワイン産業は約37憶ドルの被害を受けているとのことなので、被害の規模は大きく、今の研究費では全然足りない状況だそうです。

また、中国は米国以上に研究費を費やしており、学者は遅れを取ることを懸念しているようです。
2024年には5年間の米国農業法案が再承認される見込みであり、そこでの増額を期待する声が高まっています。

2000年ころのピアス氏病の問題のときもすぐにファンドが立ち上がりましたし、煙害についてもさまざまなプロジェクトが走っています。このあたりの動きはさすがに早いと感じていましたが、今のレベルでも足りないというのが研究者側の感覚のようです。日本の研究資金や体制はどうなのでしょう?

Date: 2024/0103 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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2024年1月1日からカリフォルニアの「ビバレッジ・コンテナ・リサイクリング・プログラム」が拡大され、ワインや蒸留酒のガラスボトルも対象に入りました。

新しいプログラムでは、消費者が空き瓶をリサイクルプログラムの施設に持ち込むことで5~10セントをもらえるようになります。これまで、対象は46オンス(約1360ml)以下の100%フルーツジュースと16オンス(約470ml)以下の100%野菜ジュースに限られていました。

2025年7月1日以降はラベルへの表示を義務付けられます。QRコードを付けるなど5種類のラベルオプションがあります。

新しい法律の目的の一つはリサイクルセンターの存続のためだといいます。カリフォルニアでは現在リサイクル率は70%ありますが、2018年の76%からは減少傾向にあります。また、リサイクルした材料の市場価格が下がっていることにより、リサイクルセンターは10年前の約半数に減っています。

ワイナリーは、この法律に対応するためCalRecycleという州のリサイクルのデータベースに登録する必要があります。また750mlのボトルの場合は消費者に償還する10セント/ボトルをCalRecycleに支払います。ワイナリーにとってはコストや手間など結構な負担になりかもしれません。
Date: 2024/0102 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
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しあわせワイン俱楽部で1月9日まで新春セールをしています。最大3割引きでラインアップは12月の楽天スーパーセールのときとほぼ同様。3割引きの商品も、「売れ残りだからセールに使おう」みたいな感じは全くなく、「こんな美味しいのがセールになってくれてありがとう」というものが並んでいます。

全部紹介したいですが、大変なので(笑)、ここでは鉄板の5本だけ書いておきます。
30%引きのフルリストはこちら

デコイ リミテッドのカベルネ・ソーヴィニヨンは年末にXのスペースで2023年に美味しかったおすすめワインでも紹介したコスパ抜群ワイン。ふだんの4000円くらいでも十分コスパ高いですが税込み3000円は安すぎます。


ヘスのパンテラ・シャルドネ2017。ブドウはロシアンリバー・ヴァレーのダットン・ランチが中心とのこと。リッチ系シャルドネですが、酸もきれいでバランスよく、むちゃうまいです。


クインテッサのイルミネーションはナパのソーヴィニヨン・ブランの中でも良質のもの。ナパ(+ソノマのベネット・ヴァレー)のソーヴィニヨン・ブランはほどよいリッチさがあって、ロワールのソーヴィニヨン・ブランともニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランとも違う魅力があります。


アーサー・セラーズのケー・アール・ランチ・ピノ・ノワール。KRランチというのは銘醸畑「キーファー・ランチ」なのですが、キーファーの権利をコスタ・ブラウンが買ってしまった関係で違う名前にしています。コスタ・ブラウンのキーファー・ランチだと2万円超えるのがこちらは4000円台という、利益があるのか心配なほどの安さです。


ナパの名門ボーリューのフラッグシップ「ジョルジュ・ド・ラトゥール」プライベートリザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨン2018。2019の同ワインがジェームズ・サックリングの年間トップに選ばれましたが、2018年もそれに近い評価。ナパのトップワインのセカンドでも2万円を超えるのが普通の今、フラッグシップで1万円台は安いです。