Archives

You are currently viewing archive for 2023
Date: 2023/1230 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリーのアキコ・フリーマンさんが公益社団法人「大日本農会」から令和5年度の農事功労者として緑白綬有効章を授与されました。

フリーマン

大日本農会は1881年に設立された歴史ある団体で、現在は秋篠宮殿下が総裁を務められています。表彰も100年を超える歴史があります。令和5年の表彰者は63人で、アキコさんは国外では唯一の表彰者となります。また、海外在住の女性として、初の受賞者となります。

大日本農会によると受賞理由は「2001 年に夫とともにワイナリーを設立。当初は原料を購入していたが、2006 年と 07 年に農地を購入しブドウを植栽。土の改良から始め、クローバー植栽のほか工夫を重ね、現在は有機栽培のブドウでワインを醸造している。ワイナリー売り上げの一部を寄付、困窮者への食事提供等を継続的に実施している」とのこと。また曽根在ロサンゼルス日本国総領事は、「フリーマン氏のワインは、駐日米国大使の公邸でも使われるなど、日米親善にも貢献頂いています。」と述べています。

また、アキコさんは「このような栄誉にあずかり、たいへん光栄に思います。これも私たちのワインを愛してくださる方々、ともに働く仲間たちの支えがあってのことです。国外での緑白綬有功章は私が女性第一号と聞きました。私の受章が、若い日系女性のワインメーカーの方々の励みになれればとても嬉しいです」とコメントしています。
Date: 2023/1227 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパヴァレー・ヴィントナーズ・ジャパンのインスタグラムでは、ナパのワインを紹介するシリーズをやっています。山田琢馬君担当と私の担当とありますが、両方紹介していきましょう。

一つのワイナリーについて、ワイナリー紹介とワインの試飲コメントと2回構成になっています。

まずはフリーマーク・アビー(Freemark Abbey)。パリスの審判に唯一赤と白と両方で出た名門ワイナリーですね。




次はダリオッシュ。ダリオッシュは今秋オーナーが来日したイベントの紹介記事も書いています。
ダリオッシュ、8年ぶりにオーナーが来日してのセミナー試飲会




次はトレフェッセン。自社畑のブドウだけを使ってワインを作るこだわりの生産者です。ナパでは珍しいリースリングを紹介しています。



ガーギッチ・ヒルズ。先日惜しくもマイク・ガーギッチさんが100歳でなくなりました。奇しくもその前の週には生産者イベントにも参加する機会がありました。
マイク・ガーギッチ、100歳で大往生
ガーギッチ・ヒルズ、パリスの審判の栄光にとどまらず進化を続ける




ナパセラーズです。ナパの中では比較的カジュアルに飲めるワイン。テイスティング・コメントではペアリングについても書くのですが個人的には結構一番の難関です。ただ、このナパセラーズのときは、たまたまケンタッキーフライドチキンで飲んだのが美味しく印象的だったので、そのまま載せてしまいました。




The Viceは比較的新しいワイナリーですが、ナパでも注目されているワイナリーの一つです。オーナーがモロッコ出身というのも珍しいですね。



最新はケークブレッド・セラーズ。今年創設50周年です。



まだまだ続きますのでお楽しみに。ナパヴァレー・ヴィントナーズ・ジャパンのインスタアカウントフォローをよろしくお願いします(ついでに私のアカウントも)。
Napa Valley Vintners Japan(@napavintnersjapan) • Instagram写真と動画
Andy Matsubara(@andyma) • Instagram写真と動画
Date: 2023/1226 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパヴァレー・ヴィントナーズのYoutubeチャンネルに、入門動画3本上がっています。日本語の動画はちょっと埋もれてしまうので、ここで挙げておきます。


1本目は山本香奈さんと私でナパの魅力を中心にお伝えしています。我ながらわりと分かりやすく面白く伝えられているのではないかと思います。


2本目は「ワイナリーを知ろう」ということで、香奈さんと山田琢馬君の動画です。ナパの歴史を築いてきたワイナリーを中心に魅力的なワインを紹介しています。


3本目はナパヴァレー・ヴィントナーズの小枝絵麻さんと山田琢馬君、私の3人でペアリングの話をしています。絵麻さんによる「ブリッジ食材」と、それでワインの味がどのように変わって感じられたかをお話ししています。ブリッジ食材をうまく使うとペアリングのレベルが上がるので、これはナパのワインに限らず見た方がいいです。なお、琢馬君はさすがにソムリエらしく、すばらしくポイントをついたコメントをしておりますが、私のコメントはほぼおまけです(笑)。これだけ40分とちょっと長いのですが白ワイン編と赤ワイン編、中身は分かれておりますので、前半20分、後半20分、わけてみてもらっても大丈夫です。

インスタでもいろいろワイン紹介しているので別の記事で取り上げますね。
Date: 2023/1225 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパヴァレー・ヴィントナーズ主催で「Napa Valley Wine Expert」をお持ちのワイン講師の方にお集まりいただいたネットワーキング会を開催しました。

ワイン講師だけの会というのは、アカデミー・デュ・ヴァンの講師会くらいしか参加したことがないので、どうなるのか、そもそも人が集まるのか心配でしたが結果的には5人の講師の方に参加いただきました。それぞれ、立場や教えている環境、経歴も異なり、私も勉強になり、刺激を受けました。

私からは今年のヴィンテージの話や、注目の品種、オーガニックやサスティナブルの進展といったことをプレゼンさせていただきました。少しはお役に立てたかな?

なんで紙を丸めて持っているのでしょう? 自分でもわからない。

この後、各講師の方から教えている内容や悩みなどの話があり、授業で心がけていることなど、講師会らしい雑談が繰り広げられました。授業そのものの話って、なかなか他の講師の方とする機会がないのでとても興味深かったです。

ワインはNVVからは次の5本を提供。
Cakebread Cellars / 2021 Chardonnay, Napa Valley / Jeroboam
Silenus Winery / 2021 OKD Chardonnay / ADV
Materra | Cunat Family Vineyards / 2019 Right Bank / Bonilli
Arkenstone / 2018 NVD Cabernet Sauvignon, Napa Valley / CWC
Aloft Wines / 2017 Howell Mountain Cabernet Sauvignon / CWX



Cakebreadはかなりエレガントな作り。Silenusはオーク・ノールのブドウでCakebreadと比べると、やはりちょっと温かさを感じます。


Materraはオーナーの奥さんが日本人で日本とのつながりもあるワイナリー。ワインメーカーはハイジ・バレットの娘のチェルシー・バレット。ハイジもメルローを得意としていますが、MaterraのRight Bankもメルロー主体でまろやかな味わい。



ArkenstoneとAloftはハウエルマウンテンのワイナリー。ArkenstoneのNVDはハウエルマウンテンAVA外ですが、ナパの東側の山カベという意味では共通しています。Aloftはロバート・モンダヴィの弟ピーターの孫娘姉妹によるワイナリー。

このあたりのワインはまたインスタなどでも詳しく紹介していく予定ですのでお楽しみに。

さて、実はこの日の白眉はこれらのワインではなくレコール・デュ・ヴァンの谷口慎一郎先生が差し入れてくださった。Robert Mondavi Fume Blanc To-Kalon I-Block 2000です。なかなか20年以上熟成したソーヴィニヨン・ブランを飲む機会なんてないですよね。しかもTo-Kaon I-Blockといえば、北米最古のソーヴィニヨン・ブランの畑であり、近年では多くの樹が病気に侵されて生産量も激減していると聞きます。

ボトルも今とは違うデザイン。とてもきれいに熟成していて素晴らしかったです。山本香奈さんにブラインド出題したら、熟成したソーヴィニヨン・ブランと答えられたのは見事でした。


この日のもう一つの白眉は「ブリッジ食材」。NVVの小枝さんがワインに合わせたブリッジ食材を用意してくださいました。白ワインに合わせる「塩ゆず」も美味しかったのですが、カベルネ・フランやカベルネソーヴィニヨンに「ゆかり」が合うというのもとても面白かったです。ワイナリーへのお土産に持っていくという話も面白かったです。


Date: 2023/1219 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Larkmead
ナパのカリストガにある歴史あるワイナリー「ラークミード(Larkmead)」がカリフォルニア州の有機栽培の認証CCOFを取得しました。

ラークミードは1895年に設立されたナパでも古い歴史のあるワイナリー。現在はソラリ-ベーカー家が所有しています。

有機栽培には2016年から取り組んでいます。115エーカーある自社畑の多くはボルドー品種が植えられていますが、ごく一部だけ100歳を超える樹齢のトカイフリウラーノが残っているそうです。

CCOFの認証を得るのは有機栽培への取り組みの一つの大きなゴールでした。
2019年からラークミードに在籍しているワインメーカーのエイブリー・ヒーランは、当初からCCOFステータス取得を常に強く支持してきた。「私たちは常に技術を学び、改善し続けており、認証を取得することで、責任ある農業へのコミットメントを示すことができます」と語っています。
Date: 2023/1218 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
クリスマスや正月はいいワイン開けたいですよね。とはいえ、無制限にお金はかけられませんから、飲んでみたいワインをなんでも買うというわけにはいきません。

個人的経験からすると、1万円を超えるとやはりワインのランクは上がると思います。2万、3万となっていくと今度はより嗜好性が強くなる面もあります。そこでこの記事では1万円以下で、オーバー1万円の満足感が得られると思うワインを紹介します。

いきなり大本命から紹介します。
カベルネ系ではナパのファヴィアやマヤカマスのワインメーカーで、かつてはスクリーミング・イーグルやダラ・ヴァレのワインメーカーも務めていたアンディ・エリクソンが作るリヴァイアサン。彼がナパに限らずベスト・サイトからのブドウを使って作るワインで、このクオリティで8000円台で買えるのはちょっと驚きです。

しあわせワイン俱楽部です


ピノ・ノワールではカレラのド・ヴィリエ。カレラがマウント・ハーランに作った6つのピノ・ノワールの畑の中では5番目に植樹した畑です。場所はジェンセンの隣で、やや骨太の味わいはジェンセンに通じるところがあります。故ジョシュ・ジェンセンが一番苦労した畑でもあり、非常にタンニンが強いことからそれをコントロールするのが難しく、ここだけは全房の比率を下げて作っています。このワイン、米国で80ドル台なのが現状国内は8000円台で購入可能です。おそらく来年には1万円を大きく超えてしまう可能性が高いです。ド・ヴィリエに限らずカレラのワインは今のうちに買い込んでおくのが吉だと思います。

Cave de L Naotakaです。


ピノ・ノワールをもう一つ挙げると、オー・ボン・クリマのイザベルは7000円台で買えます。ここは故ジム・クレンデネンが値上げしないことをポリシーとして持っていたので、今でも価格はかなり抑えられています。フラッグシップで1万円切るのはここくらいでしょう。

ショップはウメムラです。


冷涼系ピノからアントヒル・ファームズのコンプチ・リッジを紹介します。ワイン・アドヴォケイトでは94点の高得点。ここはおしなべてコスパ高いです。


ジンファンデルではベッドロックのオールド・ヒル・ランチを紹介しておきましょう。1850年代に植樹された現存する最も古いジンファンデルの畑の一つです。カリフォルニアの宝と言っていいでしょう。
ショップはトスカニーです。


シラーではまだまだ無名の生産者レッジ(Ledge)のMCAキュベ。ワイン・アドヴォケイトで95+、ヴィナスで94点、ローヌ系を得意とするジェブ・ダナックで95点という高評価ワインです。なんとパソ・ロブレスの銘醸畑ジェームズ・ベリーと、サンタ・バーバラのビエン・ナシードのブドウをブレンドしています。むちゃくちゃバランスもよく、ものすごく芳醇。7000円台のレベルではありません。
Yanagiyaです。


シャルドネでは「シャルドネの魔術師」と言われたレイミーのワイン。単一畑ものは1万円超えますが、AVAものは1万円切ります。ところがフォートロス・シーヴューのAVAものは実はマルティネリの単一畑だというからわけがわかりません。むちゃうまです。
カリフォルニアワインあとりえです。


サンタ・クルーズ・マウンテンズのマウント・エデンも素晴らしいシャルドネの生産者。安定感抜群でいつ何を飲んでも美味しいです。
ココスです。


タリー(Talley)も素晴らしいシャルドネの生産者ですが、サン・ルイス・オビスポというマイナー生産地のせいか、あまり話題に上がりません。リンコンとローズマリーという2大自社畑のワインは常にトップクラスの一つです。個人的にもすごく心躍る生産者の一つ。

Date: 2023/1217 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
大谷翔平選手のLAドジャーズ移籍が決まりましたね。個人的にはやはりカリフォルニアにいてほしかったので、ドジャーズでよかったです。

MLBには球団公認のワインがあり、ドジャーズのものも売られています。この数日で売っているショップが急減したので、だいぶ売れているのでしょう。買うなら躊躇しない方がいいと思います。


大谷選手の出身校、花巻東のある花巻市にはエーデルワインというワイナリーがあります。主力は甘口のワインのようですが、本格的なワインも作っています。


最後に、愛犬の名前が「デコピン」だと明かされました。英語名はデコイだそうです。デコイといえば、やっぱりあれでしょう。ラベルは犬ではありませんが。リミテッド版は上級の味わい。


Date: 2023/1215 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Grgich
「パリスの審判」で1位になったシャトー・モンテレーナのシャルドネを作ったワインメーカーであり、ガーギッチ・ヒルズの創設者であるミレンコ“マイク”・ガーギッチが12月13日に亡くなりました。享年100歳。100歳まで生きるというのは、マイクの最後の夢であり、それを自ら叶えて亡くなりました。ご冥福をお祈りいたします。

ガーギッチ・ヒルズについては先日「ガーギッチ・ヒルズ、パリスの審判の栄光にとどまらず進化を続ける」という記事で詳しく解説しています。このとき来日したマヤ・ジェラメスさんは「今も週に2、3回はワイナリーに来ている」と話されていましたが、それからわずかの訃報に驚きました。

パリスの審判の翌年にガーギッチ・ヒルズを設立してシャトー・モンテレーナを離れてからは、モンテレーナ創設者のジム・バレットとの間に確執もありました。モンテレーナの話を中心にパリスの審判を描いた映画『ボトル・ドリーム(原題:Bottle Shock)』ではガーギッチに相当する人物は登場していません。

この確執もジム・バレットの葬儀にマイクが出席したことでわだかまりが解け、今年行われたマイクの100歳を祝うパーティにはジムの息子のボー・バレットが出席していました。

クロアチアの出身で、実家もワイン造りをしていた彼は、クロアチアがユーゴスラビアの一部になったことで、ユーゴスラビアのザグレブでワイン造りを学びます。ただ、共産主義の政府の下でワイン産業は縮退し、教授が「パラダイス」と呼んだカリフォルニアへの移住を夢見てクロアチアを脱出します。ただ、ビザもコネもなく米国に入国するまで4年間もかかりました。

カリフォルニアでの成功後はクロアチアのワイン産業立て直しにも寄与します。兄弟の孫にあたるイヴォ・ジェラメス(前述のマヤさんの父親)を呼び寄せ、共産主義政府が倒れてクロアチアに戻れるようになってからはGrgić Vinaというワイナリーを設立し、土着品種を使ったワインを作っています。クロアチアの若者が米国でワイン造りを学ぶための奨学金を提供したり、クロアチアを含む戦争で荒廃した国々で地雷を除去し、農業を復興させる組織「ルーツ・オブ・ピース」の熱烈な支援者にもなりました。

ガーギッチ・ヒルズのワイン、今のナパの中ではやや過小評価されているのではないかと思っています。完全自社畑への転換、有機栽培への転換など品質向上のための努力を惜しまないワイナリーでもあり、おしなべて高い品質の割には価格もそれほど高くありません。

もし、飲んだことがないという人がいたら、ぜひ飲んでみてください。個人的にはシャルドネやフュメ・ブラン(ソーヴィニヨン・ブラン)が特におすすめです。100歳の記念ラベルのワインもすばらしく美味しいのですが、まだ販売はされていないようです。

リカータイムです。


リカータイムです。

Date: 2023/1214 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
来年は辰年です。不肖私も年男です。十二支の中で辰(龍)だけが架空の生き物なのが何か面白いですね。

ワインでもドラゴンをラベルに描いたものはいくつかあります。来年は区切りの年でもあり、私もドラゴン・ラベルのワイン、飲もうと思っています。

お薦めの一つはトレフェッセン(Trefethen)のドラゴンズ・トゥース(Dragon’s Tooth)。トレフェッセンの創設者であるユージン・トレフェッセンの奥さんのキャサリンさんがウェールズの出身で、ウェールズの象徴である「Y Ddraig Goch(ア・ズライグ・ゴーッホ)」という赤い龍をラベルに描いています。ワインはマルベックとプティ・ヴェルド、カベルネ・ソーヴィニヨンのブレンドというユニークな構成。ブドウはすべてナパのオークノールにある自社畑のものを使っています。エレガントなトレフェッセンのワインの中では一番パワフルなスタイルのワインですが、品のよさはさすがです。個人的にも大好きなワイン。

ショップはトスカニーです。


シュレーダーのダブル・ダイヤモンドは昨年、ワイン・スペクテーターのワイン・オブ・ザ・イヤーに選ばれて話題を呼びました。ワインもあっという間に売り切れました。そのときのラベルは二つのダイヤモンドが重なり合ったデザインでしたが、2021年のヴィンテージからはラベルの右下にドラゴンがあしらわれるようになりました。ドラゴンが大々的に描かれた化粧箱入りのものもありますので、プレゼントにもいいですね。

ショップはWassy’sです。


箱なしでよければこちら。しあわせワイン俱楽部です。


最後は同じくシュレーダーから、フラッグシップの「オールド・スパーキー」。ナパのオークヴィルにある銘醸畑中の銘醸畑ベクストファー・ト・カロンのブドウを使い、その中でもベストのものを選りすぐって作るワインです。しかもマグナムボトルしかありません。カベルネ好きなら一度は飲みたいワイン。

ショップはヴァミリオンです。木箱入り。


私へのプレゼントも大歓迎です(笑)。
Date: 2023/1213 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
null
先日、2023年の収穫について簡単な記事を書きましたが、一言でいえば「全く問題の起こらなかったヴィンテージ」というのが印象でした。ナパヴァレー・ヴィントナーズの最近のプレスリリースによると、さらに踏み込んで「一生に一度のヴィンテージ」と評価する人も少なからずいるようです。

カリフォルニアワイン協会のハーヴェスト・レポートを読んでも、問題があった地域はほぼゼロです。「例外的に素晴らしい」といった言葉が並びます。あえて欠点らしきところを拾うとすると、全体に気温の低いヴィンテージだったので、ワインはエレガントなできになる傾向がありそうです。ボールドな味わいを求める人にとってはちょっと物足りないということもあるかもしれません。

あと、懸念点としては前年までが干ばつで収穫量が少ない状態が続いていたので、水が豊富で豊作な今年に収穫を増やしてしまうと品質が意外と上がらないというケースもあるかもしれません。例えば2012年は豊作で良年と言われていましたが、前年の2011年が不作で量が少なく、それを取り戻すために収穫量を増やしすぎたワイナリーは、期待ほどの品質に達しなかったということがありました。近年は、ワイン余りの問題が取りざたされていますので、むやみに収穫を増やすワイナリーはあまりないだろうと思いますが。

ともかく、2023年は私にとっても思い出に残る年。そのワインを開ける日を楽しみに待ちたいと思います。
Date: 2023/1212 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
null
米国で9番目に大きなワイナリーで年間600万ケースのワインを販売しているジャクソン・ファミリー・ワインがサスティナビリティの会計上でのメリットについて公表しました。

ジャクソン・ファミリー・ワインズで企業社会責任担当上級副社長のケイティ・ジャクソン氏は、オンラインインタビューで次のように語っています。「2015年以来、当社はワイン会社全体の持続可能性プログラムとインフラストラクチャに1900万ドル以上を投資してきました。これらすべての投資のおかげで、再生可能エネルギーと効率化の取り組み、ガラスボトルの軽量化により、2600万ドル以上の節約を実現しました。その結果、約400万ドルの投資収益率が得られます」

null
この取り組みの中心になるのが「Rooted for Good」と名付けたプログラムです。4つのカテゴリーについて具体的な方法を詰めていっています。

#1) 水管理– ジャクソン・ファミリーでは雨水の回収、水のリサイクル、水を地元の流域に戻すなど、水を節約するための複数の方法を採用しています。節水促進のための従業員インセンティブプログラムも開始しました。年間2800 万ガロン以上の水を節約し、運営コストとして約 170 万ドルの節約を達成しました。

#2) 気候変動対策と温室効果ガス排出– サスティナビリティの利益の大部分は太陽光発電とボトルの軽量化から得られています。米国のワイン企業の中で最大の太陽光発電システムを備えており、多くのワイナリーの屋根に太陽光パネルが設置されているほか、風力タービンや一部の電気自動車などの他の再生可能エネルギー源も設置されています。エネルギーの 30% 以上が再生可能であり、これまでに約 1200 万ドルの経済的節約をもたらしており、これは毎年 1033 台の車を道路から外すことに相当します。

ワインボトルの軽量化では、これまでにワイン ​4ブランドで重量が 5%削減され、排出量が 2 ~ 3% 削減されました。これらの努力により、推定 650 万ドルの節約が達成されました。

#3) 土地の保全と農業- 2030 年までに自社畑をすべてを再生可能型有機農業に移行するという目標を掲げています。JFW はすでにナパバレーのすべてのブドウ園で有機認証を取得しており、他のエステートのブドウ園も持続可能な認定を受けています。しかし、再生農業はさらに進んでおり、被覆作物や堆肥化などの他の有機的で持続可能な実践とともに、CO2ガスが放出されないように土壌を低耕耘または不耕起することが求められます。

#4) 社会的責任– ジャクソン・ファミリー は、地域社会の繁栄を支援しながら、より多様で公平かつ包括的な ( DEI ) 労働力を構築するという目標を作成しました。例としては、包括的な政策を策定するためのIDEA Allianceと呼ばれる従業員主導のタスクフォースの創設、黒人歴史月間などの年間を通じて多様な文化月間を祝うこと、インターンシップやボランティアの機会の創出などが挙げられます。

ジャクソン・ファミリーは2030年までに二酸化炭素排出を半分に減らし、2050年には排出量よりも吸収量の方が多い「ポジティブ」を達成することを目標にしています。カリフォルニアのワイナリーの中でも環境保全に多くの力を注いでいるワイナリーです。
Date: 2023/1211 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパのワイントレインが、新しいエンジン搭載車両を導入しました。ワイントレインはディーゼルエンジンを使っており、今回は米国環境保護庁(EPA)のTier 4という基準に適合するようになりました。Tier 4は一番厳しい基準で「この Tier 4 基準がどれほど厳しいものかを理解していただくために説明すると、米国の多くの場所では、Tier 4 適合エンジンの排ガスは、エンジンが取り込む空気よりもきれいになっているのです!」(EPA Tier 4 とは?)ということです。

ワイントレインでは2024年末までに3基のエンジンを追加で導入し、2025年からはすべてTier 4対応にするということです。

ナパの鉄道は1864年に「Napa Valley Railroad」として始まりました。今回の車両はそれを記念して1864号と名付けられています。

「機関車に対する最も厳しい空気品質基準を満たしているこの投資は、ナパバレー・ワイントレインの未来への取り組みを示すと同時に、ナパの名高い過去に敬意を表している」とワイントレイン関係者は述べています。
Date: 2023/1208 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
楽天スーパーセールで見つけた、お薦めカリフォルニアワインをまとめておきます。

ドラジェではロバート・モンダヴィのカベルネ・ソーヴィニヨン ナパヴァレー 2019が6380円。ほかでは7700円以上です。ワイナリー価格は50ドル。スペクテーターで91点を取っています。半分くらいはモンダヴィのお膝元オークヴィルのブドウを使っており、その他もスタッグスリープ、オークノール、ラザフォード、ヨントヴィルといったAVAのブドウです。ナパのベンチマーク的カベルネ・ソーヴィニヨンです。


「業務用酒販 ふじまつ」でパインリッジのシュナン・ブランとヴィオニエのブレンド。これ、もともとコスパ高いのですが1386円は現地価格よりもだいぶ安いです。華やかでチャーミング、個人的にも好きなワインです。


リカオーでシャンドン・カリフォルニアのロゼ・スパークリングが2249円。瓶内二次発酵のちゃんとしたロゼ・スパークリングがこの値段は貴重です。クリスマスにぜひ。


シュラムスバーグのブランドブラン、ブランドノワールが4119円。ショップは「赤坂ワインストア エラベル」。ほかのショップで3000円台のを見つけて「これは!」と思ったらハーフボトルだったのですが、これはフルボトルです。格下のミラベルも3000円台後半ですから、それならこちらがお薦め。個人的にはブランドノワールが好きです。



おまけで、セール価格ではないですが、ヴィノスやまざきの「匿名ワイン」3本セット。畑名を出さないことを条件に安く仕入れているワインでナパのセミヨン、プティ・ヴェルド、シラーというマニアックな3本。1本3000円台です。セミヨンはオークヴィル、プティ・ヴェルドはハウエル・マウンテン。ネタとしても面白いと思います。
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

匿名ワイン3本セット
価格:11,880円(税込、送料別) (2023/12/8時点)




Date: 2023/1205 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
楽天のスーパーSALEが始まっていますが、しあわせワイン倶楽部のセール品に驚きました。

30%セール品リスト

上のリンクの30%セール品ですが、まずどのワインも品質的にお薦めできるというか、むっちゃ美味しいのばかりと言っても過言ではありません。そして安い。

一番驚いたのはザ・ヒルト(スクリーミング・イーグルオーナーがサンタ・バーバラで作るピノシャルブランド)が3000円台ということ。今年初めの値上げ以降5000円以下で売っているのを初めて見かけました。ザ・ヒルトのセカンドにあたるザ・ペアリングも今は4000円台だから、むちゃくちゃ安いです。



アーサー・セラーズのKRランチは4510円。同じ畑でフェイラだったら7000円以上、コスタ・ブラウンだったら2万円ちかくします。


クインテッサのイルミネーション(ソーヴィニヨン・ブラン)も4000円台。ほかの店は6000円以上です。先日のクインテッサのディナーでも飲みましたが、個人的にも大好きなソーヴィニヨン・ブラン。


ヘスのライオンシリーズのシャルドネ「パンテラ」6160円も激安。ほかの店は9000円以上。9月の都光さんの試飲会でもむちゃくちゃ人気だったシャルドネです。リッチ系シャルドネが好きなら絶対にはまる味です。


デコイ・リミテッドのカベルネが3080円というのは、普通のデコイとほぼ同じ価格です。このワインもともとすごいコスパがいいもので、「ダックホーンに近い品質で、価格はデコイ寄り」と、私はいつも言っていますが、価格がほぼデコイなので、もう選ばない理由がないくらいです。


689セラーズの「キラー・ドロップ」は大人気689の上級版。これも689と変わらないくらいの価格です。


ボーリュー(BV)のジョルジュ・ドゥ・ラトゥール プライベートリザーブ カベルネ・ソーヴィニヨン2018も超おすすめ。ほかの店より1万円くらい安いです。このヴィンテージからの新しいワインメーカーで品質も急上昇、2019年はジェームズ・サックリングが世界一に選んでいます。この2018はWine Advocateの評価では2019よりも上になっています。ナパの名門中の名門の一つです。



Date: 2023/1202 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパのガーギッチ・ヒルズ・エステート(Grgich Hills Estate)から、現ワインメーカーの娘であるマヤ・ジェラメス氏が来日。ランチイベントに参加してきました。



ガーギッチ・ヒルズの創設者はマイク・ガーギッチ。パリスの審判で白ワインの1位になったシャトー・モンテレーナで、そのワインを作ったワインメーカーです。サンフランシスコでコーヒー会社を営んでいたオースティン・ヒルズという人に見染められてパートナーシップを組んでワイナリーを立ち上げました。

オースティン・ヒルズは出資はするが口は出さないという素晴らしい人で、今も半分の権利を持っていますが、ワイナリーの経営自体はガーギッチの家族で行っています。今年100歳になったマイクは引退していますが今も週に2、3回はワイナリーに来るそうです。現在はマイクの娘のヴィクトリアが社長兼CEOで、マイクの甥でマヤさんの父親であるイヴォ・ジェラメスがワインメーカーと栽培を担当しています。

2008年にはすべてのワインを自社畑のブドウから作る「エステート」になりました。現在はナパヴァレーの5か所に計148ヘクタールの畑を持っています。栽培ではオーガニックからビオディナミ(バイオダイナミクス)に移行し、さらに2023年には環境再生型有機栽培(リジェネレーティブ・オーガニック)の認証「ROC」を受けています。この認証を受けたワイナリーは世界中で12しかありません。

通常、農業では地面を耕すのが基本になりますが、ROCでは耕さない方が基本になります。地中の二酸化炭素を排出させないというのと、耕すことによって土壌にスペースができ地中に雨がしみこみやすくなるのを避けるといった意味合いがあります。ROCではこのほか動物の福祉や社会的公正といったことも審査の対象になります。

有機栽培は、一般にコスト高と言われていますが、ガーギッチ・ヒルズの試算では1エーカー当たりの栽培の費用は11000ドル。ナパの平均は14000~15000ドルだそうで、それよりもコストがかかっていないそうです。




ワインは6本。
まずは
2020 フュメ・ブラン エステート・グロウン ナパ・ヴァレー
(「エステート・グロウン ナパヴァレー」は当然ながらどのワインにも付きます)
フュメ・ブランはロバート・モンダヴィが設立して間もないころにソーヴィニヨン・ブランのワインにつけた名前として知られています。当時のソーヴィニヨン・ブランは甘口がほとんどでした。モンダヴィも最初はソーヴィニヨン・ブランという名前で辛口かつ樽を使ったものを出したのですが、それではほとんど売れず、フュメ・ブランと名前を変えたところ大ヒットしたという経歴があります。モンダヴィがソーヴィニヨン・ブランを作ったのは熟成が必要なく、ワインの現金化が一番早くできるからという面もあり、ガーギッチも同じように最初にソーヴィニヨン・ブランを作りました。マイクは最初の「フュメ・ブラン」をモンダヴィで作ったワインメーカーであり、モンダヴィに敬意を表してこの名前を使い続けています。ただ、現在ではフュメ・ブランを知っている人の方が少なくなってしまったため、ソーヴィニヨン・ブランという品種名も書かれています。樽は旧樽で1500ガロンの大樽を80%使っています。畑はカーネロスとアメリカン・キャニオンでアメリカン・キャニオンが中心です。なお、アメリカン・キャニオンはAVAではなく、町の名前(AVAではナパ・ヴァレーだけになります)で、ナパの中でも一番サンパブロ湾に近いところです。
柑橘類に、熟しすぎていないネクタリンの風味。青さは感じませんがトロピカルフルーツまでの熟度はありません。ちょっとクリーミーなテクスチャ。後味にミネラル感。品よく美味しいです。ブラインドで飲んだらソーヴィニヨン・ブランとは思わないかもしれません。

2本目は
2020 シャルドネ エステート・グロウン ナパヴァレー
同じくカーネロスとアメリカン・キャニオンの畑ですがカーネロスが中心になります。2020年は干ばつの影響で例年の半分くらいしか作れなかったそうです。ソーヴィニヨン・ブランとは逆で8割が小樽、2割が大樽の発酵・熟成。新樽も4割使っています。
ヴァニラが上品に香ります。ピーチやマンゴーの香り、フレッシュな酸味があり余韻も長い。美味しいです。

3本目は今回特別に輸入されたもので「パリス・テイスティング・コメモラティブ」という名前の付いたシャルドネです。ヴィンテージは2020。
マイクが90歳になった2013年に始めたワインで、ガーギッチの畑の中でも樹齢の高い1989年に植樹されたウェンテ・クローンのブロックのみを使っています。畑はカーネロス。800~1000ケースという少量しか作っていません。なお、2020年はラベルも特別で、今年100歳になったマイクを祝ってマイク自身の絵が描かれています。
マンゴー、白桃のまろやかでやわらかい風味、キャラメルのような風味もあります。なめらかなテクスチャーは舌にまとわりつくようで、ついついグラスが進みます。後味にきれいな酸が残るのも好印象。すばらしいシャルドネです。

4本目はジンファンデル。ヴィンテージは2018。
ジンファンデルはマイクの故郷であるクロアチアが起源であることがUCデーヴィスのキャロル・メレディス博士によって明らかになっていますが、実はこの解明にはマイク自身が大きくかかわっています。マイクはカリフォルニアに来てジンファンデルを見たときに、クロアチアの主要品種である「プラディッツ・マリ」に似ていると思いました。クロアチアでもジンファンデルとプラディッツ・マリは同じだとする本も出ており、その話をキャロル・メレディス博士に紹介しました。クロアチアからプラディッツ・マリを取り寄せて調べたのですが、結局は違う品種であることがわかり、ただ近い品種であることもわかりました。博士はクロアチアに調べに行きたいと思い、現地の研究者とマイクを介して連絡を取りながら最終的にクロアチアで様々なサンプルを入手し、起源の解明につながったのでした。そういった意味でもガーギッチ・ヒルズにおいて大事な品種の一つとなっています。
ジンファンデルは非常にアルコール度数が高くドライフルーツのような風味が顕著なワインになることがよくあります。これはジンファンデルが不均一に成熟するという特徴から来ているもので、房のすべての実が熟すまで待つとどうしてもレーズン化してしまうブドウも出てきてしまうのです。そこでガーギッチ・ヒルズではなるべくブドウが均一に熟すよう、栽培途中でブドウの房の「肩」の部分の実を切り取り、房の中まで日が当たるようにしているとのことです。一般的にやられている方法なのか聞いたところ、ガーギッチ独自の方法とのことでした。
レッド・チェリー、プラムに熟したトマト、スパイスの風味を感じます。ジンファンデルとしてはタイトなスタイルでエレガント。

5本目は2018年のカベルネ・ソーヴィニヨン。
ヨントヴィルの自社畑のブドウを中心に、ラザフォードとカリストガのブドウをブレンドしています。カベルネ・ソーヴィニヨン80%、カベルネ・フラン7%、メルロー6.5%、プティ・ヴェルド6.5%。15000ケースほどの生産量のうち800ケースは毎年ライブラリとして保管し、5年あるいは10年後などに少しずつリリースしています。
青から黒果実の味わい。ローズマリー、フォレストフロア。酸の高さがヨントヴィルらしい感じです。かっちりとしたタンニン。熟成に向いたタイプのカベルネ・ソーヴィニヨンです。

最後は2019年の「ヨントヴィル・オールド・ヴァイン」カベルネ・ソーヴィニヨン。
これも限定品で、今回は特別に日本に入荷しています。シャルドネの「2020パリス・テイスティング・コメモラティブ」と同様、このヴィンテージはマイクが描かれたラベルになっています。
1959年に植樹された畑でイングルヌックのクローンが植わっています。ナパでは2番目に古いカベルネ・ソーヴィニヨン(一番はスケアクロウの畑)。イングルヌックから引き継がれたドミナスやレイルの畑もすぐ近くなので、おそらくかつてはイングルヌックにブドウを供給していた畑なのではないかと思います(スケアクロウも同様)。ちゃんと質問しておけばよかった。
レギュラーのカベルネ・ソーヴィニヨンと比べて赤果実を感じます。タンニンのきめ細かさが秀逸。果実味と酸がきれいで、杉やスパイスの風味。きわめてなめらかなテクスチャー。これも素晴らしいワインです。

ガーギッチ・ヒルズのワインは総じてソフトでなめらかな口当たりが特徴です。栽培によるものなのか、醸造によるものなのかはわかりませんが。パリスの審判でモンテレーナが1位になったことは多くの人が知っていても、マイク・ガーギッチがワインメーカーだったことは意外とそれほど知られていないような気がします。そういう意味ではもっと知られていいワイナリーですし、その歴史にあぐらをかくわけでなく(他の1位のワイナリーももちろんそうですが)、環境再生型農業にいち早く取り組むなど進化を続けていることも立派だと思います。

ランチの店は銀座のウルフギャング・ステーキハウスTeppan。熟成肉を鉄板焼きでいただけます。鉄板焼きで焼く分、さっぱりと味わえます。



Date: 2023/1202 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
今年の収穫のまとめをしないとと思いつつさぼっていたのですが、その理由の一つとして、特に書かなければいけないことが思い浮かばないほど順調すぎるヴィンテージだったことがあります。

2023年は冬の間に、それまで6年ほどの干ばつを補うかのようによく雨が降りました。春先まで気温が低い日が多く、芽吹きから遅れが目立つようになります。

平年と比べると3週遅れぐらいで、その後も推移します。これだけ収穫が遅くなると、雨のリスクも上がるのが普通ですが、今年はそういった問題もおこりませんでした。

久しぶりに土が水を多く含んでいる状態だったのでブドウの成長もよく、収穫量も多くなりました。畑によっては、収穫量があまりに多く、全部を収穫しなかったところもあるそうです。

結果として、高級ワインはもちろんのこと、安ワインでも品質が上がることになりそうです。
Date: 2023/1130 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパのオークヴィルにあるワイナリー「ダラ・ヴァレ(Dalla Valle)」のセミナーに参加してきました。かつてのカルト・ワインの一つと目されたフラッグシップの「マヤ(Maya)」が有名なワイナリーで、神戸生まれの日本人ナオコさんがオーナーであることも知られています。ナオコさんはあまり人前に出たがらない人で、以前は日本だけでなく米国でもインタビューなどに登場するのは稀でした。マヤさんがワインメーカーに就任してからは、メディアへの露出も増え、今回も初めての日本でのセミナーとなりました。

私自身も、4月にナパでマヤさんにお会いしていますが、ナオコさんにお目にかかるのは今回が初めてでした。

米国で育ったマヤさんはもちろん、ナオコさんも米国暮らしが長く英語の方が楽だとのことで、セミナーも大部分は英語でした。



ナオコさんが米国に渡ったのは1982年。それまではカリブ海のマスティク島というところにいました。なお、ナオコさんのご主人のグスタフ・ダラ・ヴァレはスキューバダイビング用品で知られるスキューバプロの創設者です(私もスキューバプロのBCジャケットを持っています)。ダラ・ヴァレのロゴはグスタフ氏が地中海のダイビングで発見したアンフォラ(ワイン醸造に使った古代の壺)を模しています。

米国に来たときにはワイナリーをするつもりはなく、レストランとホテルをすることを考えていたそうです。ただ、オークヴィルの東側に買った土地に2エーカーのブドウ畑があって人生が変わったとナオコさんは語ります。

当初ブドウは近隣のケイマスに売っていましたが、グスタフ氏は自分で作ることに決めました。ただ2エーカーのブドウ畑だけでは商売にならないので、畑をもっと増やすことになりました。増やした土地は、近隣の人から車との物々交換で得たそうで、「これまでの最良の取引だった」とナオコさん。

1986年に最初のカベルネ・ソーヴィニヨンを作りました。その後、この場所でカベルネ・フランのいいものができるのではないかということでカベルネ・フランを植えていきました。

そうして作るようになったのが、娘さんの名前を冠したマヤです。最初のヴィンテージは1988年でカベルネ・フランが45%という、当時としてはカベルネ・フランの比率が非常に高いワインでした。そのワインがロバート・パーカーに評価され、1992年のマヤが米国のワインとしては2本目の100点を得ました(1本目は1985年のGrothのカベルネ・ソーヴィニヨン・リザーブ)。ただ、グスタフ氏はこの発表の少し前に亡くなっており、この100点を知ることはありませんでした。ナオコさんに取っては夫を失って途方に暮れていたときに100点を取ったことはビジネスを続ける勇気になったそうです。

ダラ・ヴァレは代々すばらしいワインメーカーがワインを作ってきました。最初はジョー・カファーロ(Joe Cafaro、シャペレーなど)、2人目のハイジ・バレット(Heide Barrett)が100点のマヤを作りました。その後もトニー・ソーター(Tony Soter)とその弟子のミア・クライン(Mia Klein)が10年にわたってワインを作り、フィリップ・メルカ(Philipe Melka)、アンディ・エリクソン(Andy Ericson)とつながります。2004年からはミシェル・ロランもコンサルタントとしてチームに加わりました。

マヤさんはボルドー大学でワイン造りの修士を取り、ナパで2年間インターンをした後、イタリア・トスカーナのボルゲリでオルネライアやボルドーのペトリュス、ラトゥールといったそうそうたるワイナリーで修行。2017年にダラ・ヴァレに戻ってきました。ナオコさんに言わせると、最初から十分すぎるくらいの経験と資格を持っていました。2021年からワインメーカーになり、アンディ・エリクソンはコンサルタントとしてチームに残っています。

ここからの解説はマヤさんにバトンタッチです。

ダラ・ヴァレの畑があるのはオークヴィルの東側で西に向いた斜面です。標高は150mくらいあり、サンパブロ湾からの涼しい風も届きます。夏は涼しく冬は暖かい恵まれた環境です。土壌は火山性の鉄分の多いものが中心ですが、4億年前の地滑りでさまざまな土壌が混じりあっています。広さは20エーカー。2007年からオーガニック、2019年からはビオディナミ(バイオダイナミクス)で栽培しています。



このマップは地質の学者として注目を集めているブレナ・キグリー(「デカンター誌のライジング・スターに注目の地質学者が選ばれる」参照)によるものです。18個のブロックを4種類の土壌に分けています。カベルネ・フランは30%程度、プティ・ヴェルドは0.5エーカーだけあります。

4種類の土壌は次のようになっています。
Zone1 ダークでリッチなソイル。水はけ良く根が深く。カベルネ・フランのベスト、カベルネ・ソーヴィニヨンのベストでもあります。華やかでフォーカスがあり、カベルネ・ソーヴィニヨンは酸が高くなります。
Zone2 マヤのコアになることが多いゾーンです。粘土が多く、石もあります。保水力が比較的あるところです。
Zone3とZone4 ごろごろとした石が多く、タンニンとパワーがワインに出ます。Zone 3は赤がかったオレンジ色、Zone 4は黄色がかったオレンジ色です。

植えているクローンはマサルセレクションのものなど、さまざまで台木も多様、斜面の向きも一様ではないため、パラメーターは多種多様です。例えばZone2は南向き斜面、3と4は西向きです。そのためブロックごとに収穫して醸造しています。ワイン造りの決まった方程式はなく毎日様子を見ながら決めているとのことです。ワインは基本的に22カ月熟成で一部はアンフォラを使っています。


試飲に移ります。コメントはナパヴァレー・ベスト・ソムリエ・アンバサダーの山田琢馬君にお願いしました。

Pietre Rosse 2018
古いファンなら、以前ダラ・ヴァレがこの名前のサンジョヴェーゼを作っていたことをご存じかもしれません。サンジョヴェーゼの樹は病気で引き抜かれてしまい、作られなくなったワインですが、ラベルを気に入っていたマヤさんがこのヴィンテージから復活させました。外部から調達したカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フラン、プティ・ヴェルドのブレンドで、一部アンフォラを使って熟成させています。レストラン専用のワインとなっています。
【琢馬コメント】フレッシュ赤黒いフルーツのトーン、程よく感じる樽の香りと土っぽいトーン。高い酸味によるリフト感と瑞々しさ、質感のハッキリしたタンニンによるエッジ、を感じるフィニッシュ。
【アンディコメント】赤果実、ちょっと土っぽさ。酸きれい。軽めの飲み口だがタンニンもしっかりあってグリップが効いている。

Collina 2020
ナオコさんが2007年に始めたワインで若い木を使ったものです。2020年は8月と9月末に2回の大きな山火事があった年です。煙の影響でワインを作らなかったワイナリーも数多くあります。ダラ・ヴァレでは1回目の火事のあと、醸造してテストしました(煙の影響があるかどうかは醸造してみないとわからないそうです)。結果としては煙の影響は感じられていない。熟成中も何度も試飲してチェックしました。いろいろな困難があった年ですが自信をもって送り出せるものができたことに誇りを持っているとマヤさん。
【琢馬コメント】Pietre Rosseに比べるとより緻密で凝縮された印象。熟れたアメリカンチェリー、ヴァニラ、わずかに感じるフレッシュハーブのタッチ。なめらかなエントリー、メリハリのある酸味とコンパクトなタンニンのストラクチャーから飲み心地の良い印象。
【アンディコメント】ブルーベリーなど青い果実の印象。華やかな香りで酸高く飲みやすい。ストラクチャーもある。

Colina 2019
トラブルのない良年でゆっくりとした収穫でした。
【琢馬コメント】2019年の方がより余韻の詰まり方や奥行きを感じるテイスト。2020年の方がより軽やかで熟度を感じながらもデリケートな印象。
【アンディコメント】2019年の方が赤果実系の明るさを感じる。プティ・ヴェルドのようなストラクチャーがあってパワフル。とても美味しい。

カベルネ・ソーヴィニヨン 2019と2018
【琢馬コメント】赤黒いフルーツのトーン、ハーブや黒鉛のようなタッチ、樽からくる甘やかなアクセント。総じて突出した香りというよりはそれぞれの要素が溶け込んだ香りの印象ながら、ほどよく抑制も効いている。
2019はスムースなエントリー、緻密でシームレスなテクスチャーが印象的。バランスを取る質の高い酸味とやや丸みを帯びたタンニン、今飲んでも楽しめるスタイル。
2018年は香りの方向性は同じながら、ややミネラルドリブンな印象。味わいはスムースでいて酸がより強く、タンニンによるグリップ感を感じ、熟成のポテンシャルを感じるテイスト。
【アンディコメント】
2019は酸が豊かできれい。ハーブやフォレストフロアなどのニュアンスもある。
2018年は緻密でパワフル。カシスや黒鉛の印象。熟成させて飲みたい。

ちなみに2019年はバイオダイナミクスに変えた年なので、ヴィンテージの違いだけでなく、栽培の違いも影響しているとマヤさん。ワインの重みが変わった。エナジーのシフト。フルーツフォワードになるわけではなく、味わいがリッチになったとのこと。なお、2019年からは酵母も完全に天然酵母にしたそうです。

DVO 2019
ダラ・ヴァレがオルネライアと共同で作るワイン。2019年は2ヴィンテージ目です(最初のヴィンテージについては「ダラ・ヴァレとオルネライアの新プロジェクトが日本上陸、貴重なワインを試飲」参照)。
マウント・ヴィーダー(35%)、クームズヴィル(15%)、オークヴィル(50%)の畑のブドウを使っています。オークヴィルはヴァイン・ヒル・ランチ(VHR)とオークヴィル・ランチ。VHRはダラ・ヴァレと反対側のオークヴィル西側の沖積扇状地にある銘醸畑です。オールドワールドのスタイルだけどナパの自由さを持ったワインだとのこと。
【琢馬コメント】まさかのコメントし忘れてました。味わいと香りののボリューム感が他のワインとは明確に違いましたね!より凝縮していて力強い印象を受けました。
【アンディコメント】青から黒系果実の風味。洗練されたきめの細かいタンニン。モンダヴィのト・カロンなどオークヴィル西側の扇状地の畑らしい緻密さを持っている。ベイキングスパイスやフォレストフロアのニュアンスも。

Maya 2019
【琢馬コメント】デリケートながらコアの強さ、華やかさを奥に感じる香りの印象。フレッシュなダークチェリーやラベンダー、セージ、ココアパウダーのような樽のアクセント、岩っぽいミネラルのトーンなど、香りの立ち上がりかたに気品と強さを感じる。
タイトでまっすぐな味わいの印象。瑞々しい酸味としなやかなタンニン。抑制されつつもハッキリと主張する個性。
【アンディコメント】リッチで華やかな味わい。青~赤果実。シルキーなテクスチャ。

何人かの方にどれが一番美味しかったか聞かれましたが、難しいですね。Maya 2019はまだ熟成が必要な感じがします。今飲むならカベルネ・ソーヴィニヨン 2019がいいかなと思います。ピエトレ・ロッセも個性的でまた飲みたい味わい。

このほか、いくつかの質問への回答を最後に載せておきます。
Q. オプティカル・ソーターは使っていないのか?
A. 使っていない。手作業で選果している。もともとのブドウの品質がいいのと、オプティカル・ソーターを使うと全部が均一になってしまって面白くないと思う。ナオコさんが選果台のリーダーをしている。

Q. メルローは作らないのか?
A. メルローは1エーカー作っていたが1993年にやめた

Q. マヤはカベルネ・フラン比率が高いワインだが、それでもカベルネ・ソーヴィニヨンが半分を超えている。もっとカベルネ・フラン比率が高いものを作るつもりはないのか。
A. カベルネ・ソーヴィニヨンの方が熟成には向いていると思うので、カベルネ・フランがメインのものは作っていない(ナオコさん)。私はカベルネ・フラン・メインのもやってみたいと思っており、そこは母と意見が分かれている(マヤさん)。1989年のMayaはカベルネ・フランが55%でこれまでで一番比率が高い。ナパに帰ったらそれを飲んで相談しようかと思う(ナオコさん)。

Q. 栽培面でカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランの違いは?
A. カベルネ・ソーヴィニヨンはいろいろなところに植えられる。多様性がある。カベルネ・フランは土壌や気候の適性がある。収穫量を増やすとグリーンノートが出やすいので注意が必要だ。

Q. 気候変動への対応でやっていることはあるか?
A. 灌漑に使う水を最小限にしている。例えば葉を絞って圧力をかけてその数値で見たり、ソイルモイスチャーを見て、灌漑の必要性を判断している。栽培では日陰を作るようにしている。バイオダイナミクスでモイスチャーはより保持できる。このほかソーラーパネルや排水の活用もしている。

Q. 2023年のヴィンテージはどうか?
A. 2023年は2018年と19年の中間的な感じで非常にいい。

null

お招きいただいたJALUXさん、ありがとうございました。
ダラ・ヴァレのワインを複数並べて飲むこと自体、初めての経験であり、大変勉強になりました。
Date: 2023/1128 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
すでにいろいろなところで記事になっていますが、私もちょっとだけ関係している話なので改めて書いておきます。

UCデーヴィスの研究で、赤ワインがなぜ頭痛を引き起こしやすいのか、その原因物質の可能性が高いものが判明しました。

この研究については2022年2月に記事を書いております(赤ワインが頭痛を引き起こす真の原因は何か? UCデーヴィスがクラウドファンディングを開始)。
Davis
研究費の調達が大変とのことで、クラウドファンディングをしていたのですが、結局約4000ドルと目標の6分の1程度しか集まらなかったようです。その中で、私はささやかな額ではありますが寄付をしており、今回の研究成果についてもDavisからメールでお知らせをもらっています。これだけ話題にする人が多いのなら、もうちょっと寄付する人も多くてもいいのでは、とは思うのですが…。なお、今回の研究発表のプレスリリースの最後には「この初期調査の資金は、2022クラウドファンディングUCデイヴィスを通じてプロジェクトを支援した人々から寄せられた」と記されております。

それはさておき、今回の研究成果を簡単に説明します。

まず、アルコールを摂取すると頭痛を起こしやすいことは知られていますが、大きく関係しているのがアセトアルデヒドです。体内に入ったアルコールは2段階のプロセスで分解されます。まず、アルコール脱水素酵素(ADH)によってアセトアルデヒドに変換されます。次に生成したアセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によってアセテートに変換されます。この中間生成物であるアセトアルデヒドが頭痛などの副作用を引き起こします。

様々なアルコール飲料の中でも赤ワインは頭痛を引き起こしやすいことが分かっています。赤ワイン頭痛(RWH)は、ワインを1~2杯飲んだだけでも、30分~3時間後に誘発されます。その主な誘因として明確に関与している化学成分はなく、頭痛を誘発するメカニズムも分かっていない。それが今回の研究で明らかにしたかったところです。

赤ワインにはフェノール類が多く含まれ、特にフラボノイドと呼ばれるポリフェノールが多く含まれます。さまざまなポリフェノールの中で、アセトアルデヒドを分解するためのアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)を生成しにくくするものがあるのではないかと考え、それを実験で調べた結果が次の表です。
null

この結果からケルセチン-グルクロニドという物質が、アセトアルデヒドを分解するための酵素の生成を他のフラボノイドよりもかなり大きく阻害しているということがわかりました。ケルセチン-グルクロニドはケルセチンをアルコールと一緒に摂取したときにできる物質です。赤ワインを飲むとその中のケルセチンのせいでアセトアルデヒドが分解されにくくなって、その結果頭痛を起こしているという仮説が有力となりました。

今回は、試験管内の実験ですが、今後は人間の被験者を使ってケルセチンの含有量が違うワインで臨床試験を行っていくとのことです。

ちなみに、ワインに含まれるケルセチンの量は、太陽の光をよく浴びたブドウで多くなることが判明しています。ある研究では大量生産のカベルネ・ソーヴィニヨンと比べてウルトラプレミアムなカベルネ・ソーヴィニヨンは4倍ものフラボノイドを含んでいるそうです。ということは安ワインを飲む方が頭痛を起こしにくいのかもしれません。

クラウドファンディングは終了していますが、今後も寄付は受け付けるとのことですので、ご興味ある方はぜひ。
Date: 2023/1125 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
シックス・クローヴズ(Six Cloves)のブランドで、カリフォルニアでワインを作る平林園枝さん。4年ぶりに日本でのセミナーが開催されました。

前回はこちら
平林園枝さんの第2作を改めて試飲、やっぱりこれは美味しい



今回は、コロナ禍のころの話などをうかがい、最新ヴィンテージの2021年など4種のワインを試飲しました。
これまで、ニュージーランドのKusuda Wine。チリのMontsecano、カリフォルニアのLittoraiなどを含む様々なワイナリーで働いてきた園枝さん、今年はソノマのフリーマン(Freeman)で醸造を手伝いながら自分のワインも作ったそうです。フリーマンといえば、アキコさんがワインメーカーとして知られていますが、今年からはナパのシレノスなどで働いていた赤星さんもチームに加わりました(ちなみに赤星さんは「ブドウ王」と呼ばれた長沢鼎の弟の末裔です)。

2020年はコロナ禍もありましたが、ナパやソノマでは山火事の影響が大きかった年でもあります。園枝さんも赤ワインは全く作れず、スティーブ・マサイアソンのリンダ・ヴィスタの畑のシャルドネだけが作れました。
一方、2021年は山火事はなかったものの、干ばつ続きで収穫量が少なかった畑も多く、2020年とは逆にリンダ・ヴィスタのブドウは手に入らなかったそうです。
その代わりに、2021年はメンドシーノのアルダー・スプリングスのシャルドネとピノ・ノワールが手に入りました。
Alder Springs
メンドシーノというとアンダーソン・ヴァレーを思い浮かべる人が多いと思いますが、アルダー・スプリングスはアンダーソン・ヴァレーよりもはるかに北に位置しています。私の知る限り、周囲数十kmの範囲では著名なブドウ畑はないと思います。サンフランシスコから車で3時間はかかるという、たどり着くだけでも大変そうなところ。ちなみに一般の見学は受け入れていないのでワイナリー関係者だけがその畑を訪れることができます。ブドウの販売先にはパッツ&ホールやリース(Rhys)、アルノー・ロバーツ、ベッドロックなどそうそうたる名前が並んでいます。園枝さんは、日系人ワインメーカーのバイロン・コスゲさん(かつてセインツベリーでワインメーカーをしていた人です)の紹介で訪れることができたそうです。2020年にグルナッシュやシラー、ムールヴェードル(GSM)を欲しいと思っていたそうですが、火事による煙の被害で入手できなかったとのこと。

アルダー・スプリングスの最初からの顧客で、この畑の名前を世に知らしめたのがパッツ&ホールですが、私は以前パッツ&ホールのメーリングリストに入っており、そこでこの畑を知ったのでした。パッツ&ホールのワインの中でも長熟タイプで異彩を放っており、私が同ワイナリーの中で一番好きなワインがこの畑のものでした。そんなこともあり、個人的にはアルダー・スプリングスと聞くと、それだけでわくわくしてしまいます。


試飲は2020年のシャルドネ、リンダ・ヴィスタからです。ナパのオークノールにあるスティーブ・マサイアソンの畑でオーガニックで栽培されています。園枝さんは、現在はオーガニック栽培の畑のブドウだけを使いたいとしています。醸造中に酸化還元電位というPHの指標となる値を計測するのですが、この畑のワインはその数値が非常に安定しているそうです。この値が安定していることは熟成のポテンシャルの目安になるとのことでした。
ミネラル感強く、花梨やかんきつの香り。白い花。エレガントです。新樽を29%使っているのですが、かなりライトトーストなものを使っており樽感はあまり感じません(時間がたって温度が上がってきたらちょっとずつヴァニラの風味がでてきました)。ちなみにステンレスタンクの発酵は還元的な味になるので、樽発酵の方がなじみがいいとのことでした。

次は2021年のシャルドネ、アルダー・スプリングスです。クローンはシャンパーニュ由来だというクローン95と、コート・ドールから来たらしいクローン76の二つを使っています。
香りが華やかです。オレンジやヴァニラ、クリームブリュレも感じます。リンダ・ヴィスタと比べてパワフルでエネルギーを感じるワイン。こちらは旧樽しか使っていないのですが、意外にもリンダ・ヴィスタよりも樽感を感じました。ここは標高が高く霧がかからないため、ブドウの皮が厚く、それで味わいも強くなるようです。

次は2021年のピノ・ノワール、アルダー・スプリングス。クローン459というクローンを使っています。栽培が難しく、色づきがあまりよくないというなかなか気難しいクローンのようです。園枝さんは「フランスぽい」とおっしゃっていました。全房を50%使っています。
赤果実ですが、ザクロなど熟度の高さを感じます。一方で酸も強い。全房らしい複雑さがあり、全体的にはエレガントですが、うちに秘めたパワーがあるワインです。天ぷらとかに合わせてみたい。

パッツ&ホールのアルダー・スプリングスは、若いときはちょっと気難しく、4~5年経つとそのエネルギーが出てくるような印象でしたが、園枝さんのアルダー・スプリングスは気難しくなく、園枝さんらしいエレガントさがある一方で、秘めたエネルギーという点ではアルダー・スプリングスらしさが出ているような気がしました。ともかく、個人的には「萌える」畑の一つなので、こういった形で世に出るのはとてもうれしいです。

最後は2019年のマグノリア・レッド・ブレンド。このワインは以前も試飲したことがあります。
ソノマのカーネロスで作るカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローという非常にユニークなワイン。赤果実と黒果実がありトマトのような風味。血液や杉など少しだけ熟成感もでてきているようです。以前飲んだときはもっと堅さがありましたが、4年たってこなれた味になっています。会席料理など幅広い和食に合わせたい味わいです。

今回のワイン、園枝さんらしいエレガントさがあるのはいつも通りですが、それとアルダー・スプリングスのパワーとのぶつかり合いが特に面白いと思いました。単独で飲んでももちろん美味しいですが、アルダー・スプリングスの他のワインと飲み比べたりしてみるとさらに興味がわきそうです。

Wassy'sです。



Date: 2023/1124 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
クインテッサ(Quintessa)などの輸出担当ディレクターであるディエゴ・ギャーレイ氏が来日し、クインテッサとファヴィア(Favia)のディナー会が催されました。

クインテッサとファヴィア、一見関係なさそうな2つのワイナリーですが、実は深い関係にあります。
アンディ・エリクソン夫妻のファヴィア、オーパス・ワンの隣に畑を取得」という記事に詳しく書いていますが、ファヴィアは今年、オーパス・ワンの裏側にある元スワンソンの畑を入手しています。実はこの畑はクインテッサのオーナーであるフネイアス(チリのコンチャイトロなどのオーナー会社。正しい発音はフネウスだそうです)が所有している畑で、ファヴィアはフネイアスから独占使用権を得た形で使うことになっています。

また、ファヴィアは2022年からワインの一部をボルドーの流通システムであるラ・プラス・ド・ボルドーを使って輸出しています。クインテッサも2019年からラ・プラスを使っており、フネイアスがファヴィアの輸出も手伝う形になっています。

一方で、ワイナリーとしてはクインテッサとファヴィアはナパのワイナリーの中でも対照的なところにあります。クインテッサは少量のソーヴィニヨン・ブランを作っているほかは、「クインテッサ」のボルドー系ブレンドワインの一つだけを作っていて、セカンドワインに相当するものもありません。畑はラザフォードの自社畑だけを使っています(ソーヴィニヨン・ブランはソノマのブドウも使っています)。

なお、クインテッサの説明については「進化を遂げつつあるナパの隠れた自然派「クインテッサ」の魅力」をご覧ください。

一方で、ファヴィアは自社畑だけでなく、ブドウを購入している畑も含めて単一畑や単一AVAのワインを複数作るスタイルです。どちらかというとブルゴーニュのスタイルに近いといってもいいかもしれません。品種もボルドー系中心ですがカベルネ・フラン主体のものなどもあります。

今回は、赤坂の「ロウリーズ」でプライムリブをいただきながら、以下のワインを飲みました。
Illumination 2022
Quintessa 2020
Quintessa 2015
Favia Coombsville 2020
Favia Cerro Sur 2014

なお、日本ではイルミネーション(クインテッサのソーヴィニヨン・ブラン)だけはファインズが輸入しています。輸入量は80ケースとかなり限られています(イルミネーション全体の生産量は2000ケース程度)。

イルミネーションはソーヴィニヨン・ムスク(ソーヴィニヨン・ブランの中でも香りの豊かさで知られるクローン)が50%、ソーヴィニヨン・ブラン33%、セミヨン17%の構成。果実の風味がとてもきれいで、リッチだけどすっきりした味わい。

前菜のサーモンともいいペアリングでした。

クインテッサは2020年と2015年。2020年は山火事の影響で、生産量は例年の3分の1程度しかありませんでした。ワインを作らなかったワイナリーも多くありましたが、クインテッサではコンサルタントのミシェル・ロラン氏が、どんな年でもそれを経験することが大事だというアドバイスをしたことで、この年もワイン造りをしています。

やや温暖な年で、ワインからも暖かさを感じます。ブラックチェリーにプラム、バラ、コーヒー、トフィーなどの味わい。
なお、2022年のイルミネーションと2020年のクインテッサについては「災難の年2020、クインテッサのできはどうだったか?」でも試飲コメントを掲載しています。

クインテッサでは2020年の生産量が少ないため、ラ・プラスには2020年を300ケース出したほか、2015年と2014年を200ケースずつ出したそうです。今回はそのうちの一つである2015年も飲みました。熟成による腐葉土やマッシュルームの香りが出てきています。まだまだ果実味も豊かでリッチな味わい。今飲むならこちらが美味しいですね。

ファヴィアは2020年のクームズヴィル・カベルネ・ソーヴィニヨンから。こちらはクームズヴィルの3つの畑のブドウをブレンドしています。クームズヴィルはナパのAVAの中ではカーネロスに次いで海から近く冷涼ですが、盆地型の地形でカベルネ・ソーヴィニヨンも熟します。土壌はヴァカ山脈系の火山性の土壌と沖積土壌の混じったもので、気候と相まってタイトなスタイルのワインを生み出す注目の生産地です。

2020年は前述のように難しいヴィンテージでしたが、クームズヴィルは火事からある程度距離があったので、比較的無事にワインが作れたようです。

ワインは非常に緻密な味わい。果実のフレッシュさと緊張感ある味わいが素晴らしいバランスです。クラシックな複雑さを身上とするクインテッサとはだいぶ違ったスタイルで、これも美味しい。

最後は2014年のセロ・スール(Cerro Sur)。これはカベルネ・フランを主体としたブレンドでクームズヴィルの北東方面にあるランチョ・チミレスという、ネスティッドAVAには含まれていない地域の畑のブドウを使っています。

赤果実系の味わいにタイトで緻密なタンニン、スケールも大きく超絶美味しいです。個人的にはこの日のナンバーワン。素晴らしかったです。今年の7月にセミナーでセロ・スールの2018年を試飲しましたが、そのときはパワフルすぎるのと若すぎるので、まだ飲み頃は先の印象でした。やはり10年くらい経つとだいぶこなれてくるのでしょう。


ロウリーズのプライムリブは何度も食べていますが、いつ行っても美味しく楽しいレストランです。


なお、プライムリブ自体はペロッと食べられてしまいますが、付け合わせのコーンやマッシュポテトは生クリームたっぷりでかなりボリュームがあるので、こちらをたくさん食べてしまうとプライムリブが食べきらない人もいるかもしれません(僕はどちらも完食ですが)。


デザートまで堪能しました。

ところで、冒頭の話に戻って、ラ・プラス・ド・ボルドーを使うことのメリットとデメリットについてディエゴ氏にうかがいました。

クインテッサの場合はラ・プラスを使う前は米国外への輸出はごく少量でした(日本には入っていましたが)。それがこれまで全く輸出していなかった国でも飲まれるようになったことは大きなメリットだったといいます。一方で、これまで輸出されていた国では、インポーターがマーケティングをしていたわけですが、ラ・プラスを使うとそれが期待できなくなります(どのインポーターも輸入できるので)。そのリスクは認識しつつ、少しずつ進めていくようにしているとのことです。ファヴィアの場合は初年はマグダレーナとオークヴィルの二つのワイン、今年はそれにセロ・スールとクームズヴィルを追加します。

日本はしっかりしたインポーターが多いので、今のところデメリットの方が目立つ場合も多いように感じています。ラ・プラス利用が今後どうなっていくのかは気になるところです。
Date: 2023/1123 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ジェイソン・パルメイヤー(Jayson Pahlmeyer)がパルメイヤー・ワイナリーをE&J.ガロに売却したのが2019年のこと。同社のニコラス・パリスMWが来日し、オーナーが代わってからの初のセミナーを開催しました。

ニコラスさんは2014年に米国で34人目のマスター・オブ・ワインを取得した人。さらにマスター・ソムリエにも挑戦していて、あと一つの試験に受かればいいというところにまで来ているという才人です。ちなみに両方取得した人はこれまで4人いるとのこと。



創設者のジェイソン・パルメイヤーはもともと弁護士をしていた人。弁護士の友人とナパのクームズヴィルに55エーカーの畑を購入し、ワイン造りを始めます。ちなみにこの畑はその友人が所有者となり、現在はCaldwell Vineyardとなっています。

ジェイソンは、ナパでボルドーの1級ワインに匹敵するワインを作りたいと考えていました。そのためにはいいクローンを手に入れることが大事だと思い、ボルドーから各品種のクローンを持ち込んだそうです。今でいうスーツケース・クローンです。当時もそれは法に触れることでしたが、カナダ経由で輸入することでなんとか入手できたそうです。

1981年に入手した樹を植樹しました。するとハウエル・マウンテンの著名なヴィントナーであるランディ・ダンが来て、ブドウを買わせてほしいと来たそうです。そこでジェイソンは「自分の名前が付いたワインを作ってくれるのならいいよ」と返答し、彼が最初のワインメーカーになりました。1986年に作った最初のワインがワイン・アドヴォケイトで94点を取り、一躍注目されるようになりました。さらに1992年には映画『ディスクロージャー』でストーリーのキーになる小物としてパルメイヤーのシャルドネが使われ、一般の知名度も急上昇しました。実はジェイソンは最初は映画にワインが使われることをためらっていたそうです、

1993年には当時、数々の「カルト・ワイン「を作って注目を集めていたヘレン・ターリーがワインメーカーになりました。収穫したブドウの中で柔らかな味わいのものなどは、分けてセカンド・ラベルに使うことにしました。こうしてできたのが「Jayson」ブランドですが、現在はセカンドではなく別ブランドという位置づけに変わっています。

1998年にはアトラス・ピークにWaters Ranchという畑を作りました。David Abreuが植樹と栽培管理を担当しました。これが今もパルメイヤーの主要な畑となっています。このほか、アトラス・ピークのステージコーチ(Stagecoach)の畑も主要な畑をして使っています。ステージコーチも現在はガロの畑ですので、買収後も使い続けています。

パルメイヤーというとビッグでボールドなワインスタイルで知られており、なんとなくヴァレー・フロアのブドウを使っているイメージがありましたが、実は山のブドウにこだわりを持っているワイナリーです。

自社畑は標高400~700mくらい。アトラスピークの一番端にあります。シャルドネとメルローは西向きの標高高いところに植わっています。

山の畑は涼しい気候で、生育期間を長くのばせます。酸をキープするブドウが作れます。また、霧の高さよりも高いところにあるので、日照時間は長くなります。ただ、表土は浅く雨で流れてしまうという弱点もあります。ヴァレーフロアであれば1エーカーあたり5~6トン取れるところが山では1トンから2トンしか取れないそうです。山ではブドウの樹が生き延びるのが大変であり根を伸ばすのと同時にブドウの粒が小さくなります。ブドウの色は濃く。酸とのバランスが良いワインが作れます。さらにパルメイヤーでは樹勢があまり強くならないような台木を使っています。また、ワインにエレガンスさを持たせるためにブドウの実に強い日照をあてないように工夫しています。

現在のワインメーカーはケイティ・ヴォート(Katie Vogt)という人。ブドウ醸造の研究でUC Davisに並び立つCal Polyで学び、2016年からアシスタント・ワインメーカーになりました。2019年にガロが買収してからワインメーカーに就任しています。

テイスティングに移ります。
null

2022 Jayson Sauvignon Blanc
ソーヴィニヨン・ブランはガロが買収してから始めたもの。2021年が最初のヴィンテージでこれが2回目のヴィンテージとなっています。パルメイヤー自身はソーヴィニヨン・ブランの畑を持っていないので、ワインメーカーがナパをいろいろ回ってブドウを調達しているとのこと。生産量は少なく日本にも未輸入です。醸造では100%樽発酵しています。
パッションフルーツやグアバなど熟度の高い果実。オイリーなニュアンスとハーブの風味もあります。ちょっと甘やかさがあり、一方で酸もきれいで強く、バランスが取れています。フレッシュな味わいで、果実の明るさとなめらかなテクスチャを感じます。ナパらしさを感じるソーヴィニヨン・ブランです。

2021 Pahlmeyer Chardonnay
2021年は乾燥して雨が少なく収量が少なかった年です。
色は濃いめです。香りにミネラル感があり、白桃やナシ、かんきつの風味。バターやヴァニラ、ナツメグなどの風味もありリッチな味わいです。クリーミーで柔らかなテクスチャーです。余韻も素晴らしく長い。
パルメイヤーでは房が小さく凝縮した味わいになるオールド・ウェンテのクローンを使っており、その良さがよく表れています。
ニコラスさんは「ナットシャイ(控えめではない)」ワインと表現されていましたが、パルメイヤーのイメージそのままのワイン。基本的にワインスタイルは買収後も変えていないそうです。

2013 Pahlmeyer Chardonnay
麦わらや穀物の香り。リッチでかんきつやバター、フルーツケーキ。熟成からくるマッシュルームやベイキングスパイス、ナッツの風味。10年熟成でしっかりと熟成感が表れてきています。これが悪いわけではないですが、個人的には果実味がストレートに伝わってくる若いヴィンテージの方がこのワイナリーらしさがより感じられるような気がしました。

2020Jayson Cabernet Sauvignon
2020年は山火事でナパの多くのワイナリーが苦労した年。パルメイヤーでは「パルメイヤー」ブランドでの赤ワインはあきらめ、赤はジェイソンのカベルネ・ソーヴィニヨンだけを作りました。
Pope ValleyやSilverado Bench(ガロ傘下のWilliam Hillの畑)を使っています。山のブドウにこだわるパルメイヤーブランドとは異なり、ベンチランドにある畑も使っています。100%カベルネ・ソーヴィニヨンは、このブランドでは珍しいです。
非常に濃い。杉、ハーブ、カシス、ブラックベリー、アメリカン・チェリー。濃いですがフレッシュさもありバランス良いです。タンニンもしっかり。テクスチャは柔らかく緻密な味わい。

最後のワインは
2008 Pahlmeyer Proprietary Red
2008年は春先に霜の被害があり夏にはヒートスパイクも起こりました。収穫はだいぶ減ったそうです。9月上旬に熱波が来たので、そのお前にメルローやカベルネ・フランは収穫しました。カベルネ・ソーヴィニヨンは熱波を越えてから収穫し、生育期間が長くなりました。
腐葉土、マッシュルーム、カシス、レッドチェリー、チョコレート、ココア、コーヒー、グラファイト。アルコール度数は高いですが、重さを感じず、素晴らしく長い余韻があります。
ちょっと低めの温度でサーブされたのも抑制が効いた味わいになり、素晴らしかったです。

さて、表題につけた「オーナーが代わって得たもの失ったもの」ですが、基本的には畑のソースも変わっておらず、ワインメーカーも交代はしていますがこれまでを引き継いでいます。逆に得たものとしては、ガロ傘下の畑からの調達が確実になったことがあります。また新たに作ったソーヴィニヨン・ブランもかなり美味しく、これも得たものと言っていいでしょう。いい意味で「変わらないこと」に安心しました。

現在インポーター在庫があるのは2020ジェイソン・カベルネだけだそうです。

Date: 2023/1119 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ilovecalwineの海老原さんが急死されたのが7月のこと。同社の扱いワイナリーのうち、ピゾーニ(Pisoni)とルシア(ルチア、Lucia)は中川ワインが引き継ぐことが明らかになっていましたが、新たに6ワイナリーをアイコニックワイン ジャパンが引き継ぐことが発表されました。

引き継ぐのは
オーガスト・ウェスト (August West Wine)
サンドラー ワインカンパニー(Sandler Wines Co.)
コブ ワインズ (Cobb Wines)
ロアー ワインズ (Roar Wines )
カーボニスト (Carboniste Wines)
ジョージ(George)
の6ワイナリー。入荷待ちのジョージ以外は11月21日から販売します。

null

ilovecalwineのワインの中でも故人の思い入れが一番強かったのがオーガスト・ウェストだと思います。オーガスト・ウェスト(後にサンドラーも)のワインメーカーのエド・カーツマンさんに、インポーターを始めたいと話して、自分のワインを扱っていいよと言ってもらったのが開業のきっかけでしたから。
3月のカリフォルニアワインの試飲会(私はそのときが海老原さんにお会いした最後でした)のときもエド・カーツマンさんは来日してブースに立っておられました。

私もオーガスト・ウェストは思い出深いワイナリーであり(日本から注文したのは私が初めてでした)、どうなるか気になっていたのでよかったです。

ちなみにアイコニックワイン ジャパンとilovecalwineは、廃業してしまったソノマワイン商会と3社で一緒に試飲会をやっていた時期もある、仲の良いインポーターですので、海老原さんも安心していると思います。
Date: 2023/1118 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパのダックホーンの親会社であるダックホーン・ポートフォリオは11月16日、ソノマの人気ワイナリー「ソノマ・カトラー(Sonoma-Cutrer)をブラウン・フォーマンから買収したと発表しました。買収金額は約4憶ドルで、株式と現金を組み合わせて支払います。
sonoma cutrer
ソノマ・カトラーは1973年に設立。1990年ごろにはシャルドネの人気ブランドとして一世を風靡しました。ちなみに、「広すぎる」と言われてきたソノマ・コーストAVAは、ソノマ・カトラーの自社畑を全部AVA内に入れるために、エリアを広くしたと言われています。畑はロシアン・リバー・ヴァレーとソノマ・コーストを合わせて1121エーカーに達します。

ブラウン・フォーマンは1999年にソノマ・カトラーを取得、ソノマ・カトラーを高級シャルドネで最大のブランドとして成長させてきました。

ダックホーン・ポートフォリオにはダックホーンやゴールデンアイなど、もともとのグループワイナリーに加え、カレラやコスタ・ブラウンなどを所有しています。シャルドネの高級ブランドはこれまで欠けていた分野であり、それが今回買収した理由のようです。


Date: 2023/1117 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパヴァレーのサステナビリティ認証プログラム「Napa Green」が合成除草剤の使用を完全に禁止する意向を発表しました。
null
代表的な除草剤として広く使われているのがモンサント社の「ラウンドアップ」。その成分であるグリホサートはリンパ腫などの発がん性を持つという説があります。現状では、その確固たる証拠はなく、発がん性物質を含むといった表示なしに一般的に使用が許可されていますが、議論や訴訟などが続いているところです。

米国における調査によると、大人の80%、子どもの87%の尿からグリホサートの痕跡が検出されたとのことで、それだけ広く使われている薬剤です。

今回、Napa Greenはラウンドアップの使用を2026年までに、その他の合成除草剤の使用を2028年までに禁止することをプログラムに盛り込む予定です。

除草剤を使用しない場合、物理的に草を刈ったり、トラクターで耕したり、羊などに食べてもらうなど、別の対策が必要になりますが、騒音や二酸化炭素の排出増につながり、コストも増加します。40年以上前から除草剤の使用を止めているという著名な栽培家フィル・コトゥーリによると、除草剤を使用しないことによるコスト増は1エーカーあたり800ドル程度になるとのことです。

プログラムに除草剤禁止を盛り込むことで、認証から離れる生産者が出てくる可能性もありますが、ナパは世界をリードする立場であるとの認識から禁止に踏み込む意向です。
Date: 2023/1116 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ワインの偽造によって2012年に逮捕されたルディ・クルニアワン。彼が作った偽造ワインはいまだに数百憶円相当分が市場に出回っているとも言われています。

(彼の事件については「世界を揺るがす大ワイン偽造事件のまとめ」「3分でわかるルディ・クルニアワン「ワイン偽造」事件」をご覧ください)
偽造ワイン
2014年に10年の懲役の判決が出て、エルパソの刑務所に収監されていましたが、2020年11月に釈放されました。

その後、米国から故郷であるインドネシアに送還されたことは判明していますが、それ以降の行方は杳として知れませんでした。それが、最近になって再び活動を始めたという話が伝わってきています。Wine Fraudというサイトを主宰するモーリーン・ダウニーという人が、ルディ・クルニアワンに依頼して偽造ワインを作ってもらい、それを自身のワイン会において同じワインの本物と一緒に提供したというのです。

ゲストの多くは本物よりもルディによる偽造ワインを好んだとのことで、あるゲストは「我々はルディのワインに関する知識、イマジネーション、そして技巧のマジックを再び体験するためにここに来た」「ルディ・クルニアワン氏はワインの天才である」と書いていたそうです。

報じられているワイン会は2回あり、それぞれ1990年のロマネコンティとペトリュス、1990年のジャック・フレデリック・ミュニエ ミュジニィ、1982年のシュヴァルブランが偽造されたとのことです。

今回のワインについては法に触れる部分はないと考えられますが、また本格的にワイン偽造ビジネスに入っていくのではないかという見方も出ています。

ちなみに、クルニアワインがいない時代もワイン偽造はむしろ増えており、偽造防止用のシールでさえ偽造してしまうといったことが起こっています。また、高級ワインだけでなくイエローテイルの偽造ワインも見つかっているそうです。

ワインだけでなく蒸留酒でも偽造は増えており、今はむしろワインよりもそちらが中心になっているという見方もあります。
Date: 2023/1115 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ダリオッシュ(Darioush)のオーナーのダリオッシュ・ハレディ氏が8年ぶりに来日し、セミナー兼試飲会が開かれました。私は今回は通訳として参加させていただきました。


null
ワインがずらっと並んでおります。1時間弱で11種類を試飲するというセミナー形式を3回行うという結構忙しいスケジュールです。

私は合間に試飲をしたので、詳しいメモは取っておらず、今回は一通り簡単に紹介します。

DARIOUSH SIGNATURE VIOGNIER NAPA VALLEY
ダリオッシュ シグネチャー ヴィオニエ ナパヴァレー 2022  
ナパでヴィオニエ自体がかなり珍しいです。ダリオッシュさんによるとナパ全体で100エーカーほどしかなく、ダリオッシュは約4エーカーのヴィオニエの畑をオークノールに持っています。すごくきれいで華やか、繊細さもあるいいヴィオニエ。ダリオッシュさんは、スパークリングの代わりに乾杯ワインとして使うとのこと。

DARIOUSH SIGNATURE CHARDONNAY NAPA VALLEY 
ダリオッシュ シグネチャー シャルドネ ナパヴァレー 2021
カーネロスの畑のブドウを中心にしており、きれい系のシャルドネです。新樽率50%、100%マロラクティック発酵しています。果実味豊かでフレッシュな味わい。

DARIOUSH SIGNATURE PINOT NOIR RUSSIAN RIVER 
ダリオッシュ シグネチャー ピノノワール ロシアン リヴァー 2021 
これだけはナパではなくソノマのロシアン・リバー・ヴァレーのブドウを使っています。ロシアン・リバー・ヴァレーの中でも、ミドルリーチと呼ばれるあたりに畑があるようです。赤果実の芳醇な味わい、イチゴジャムのような甘やかさがあります。全房も使っているとのことで、やや骨太でカリフォルニアらしいピノ・ノワールです。

DARIOUSH SIGNATURE MERLOT NAPA VALLEY
ダリオッシュ シグネチャー メルロー ナパヴァレー 2018 
メルローは基本的にはカベルネ・ソーヴィニヨンへのブレンド用に作っていますが、できのいい年だけ単独でボトリングしています。これは果実味と酸がきれいで、メルローとしては珍しいほど緊張感のある味わい。おいしくて驚きました。

DARIOUSH SIGNATURE CABERNET FRANC NAPA VALLEY
ダリオッシュ シグネチャー カベルネ・フラン ナパヴァレー 2019 
カベルネ・フランも基本はブレンド用に作っています。青っぽさはありませんが、スパイス感とちょっと土っぽさがあり、メルローとはちょっと対照的な味わい。これもいいです。

DARIOUSH SIGNATURE SHIRAZ NAPA VALLEY
ダリオッシュ シグネチャー シラーズ ナパヴァレー 2019
ダリオッシュ氏の出身地であるイランには「SHIRAZ」という町があります。ここで見つかった7000年前の壺の底の残存物からワインの痕跡が見つかったそうで、ダリオッシュ氏に言わせると最古のワインではないかとのことです。というわけでカリフォルニアでは珍しくシラーズと名乗っています。シラーズらしい陽性の味わいとスパイスの風味があります。

DARIOUSH SIGNATURE RED WINE NAPA VALLEY 
ダリオッシュ シグネチャー レッド ワイン ナパヴァレー 2019
カベルネ・ソーヴィニヨン32% メルロー23% プティ・ヴェルド22% カベルネ・フラン17% シラーズ6%という構成。このワインはまだ数ヴィンテージしか作っていません。果実の風味と酸がきれいでバランスよく、パワフルさもあるワイン。初めて飲みましたがこれもすごくいいです。

DARIOUSH SIGNATURE CABERNET SAUVIGNON NAPA VALLEY 
ダリオッシュ シグネチャー カベルネ ソーヴィニヨン ナパヴァレー 2019
こちらのワインは別途レビューしますが、2018年と2019年は例外的にカベルネ・ソーヴィニヨン100%で作られました。スケールの大きなワイン。

DARIOUSH SAGE VINEYARD MOUNT VEEDER CABERNET SAUVIGNON NAPA VALLEY 
ダリオッシュ セージ ヴィンヤード マウントヴィーダー カベルネ ソーヴィニヨン ナパヴァレー 2019
セージ・ヴィンヤードはナパの西側、マウント・ヴィーダーにある畑。マウント・ヴィーダーの著名ワイナリーであるマヤカマスの近隣にあります。標高600メートルとかなりの高さです。山らしいしっかりとしたタンニンとストラクチャーがあり、素晴らしいワイン。


DARIOUSH DARIUS I I CABERNET SAUVIGNON NAPA VALLEY 
ダリオッシュ ダリウス I I カベルネ ソーヴィニヨン ナパヴァレー 2019
毎年一番いい樽を18~20だけ選んで作るという「お宝」のワイン。甘やかで華やか。重厚な味わい。
ラベルはロンドンのヴィクトリア&アルバート・ミュージアムにあるペルシャの織物のコレクションから画像を送ってもらって、作っているとのこと。毎年変わります。


CARAVAN RED BLEND NAPA VALLEY 
キャラバン レッドブレンド ナパヴァレー 2018
キャラバンは若木のブドウを使ったワイン。味わいも重厚感ではなくはつらつとした印象でした。

ダリオッシュのワイン、オークノールやマウント・ヴィーダーといった、ナパの中では冷涼な地域の畑のブドウを使っています。それを生かした冷涼感あるメルローやレッド・ブレンドが今回発見でした。また、個人的には4月にナパでこのセージ・ヴィンヤードのワインを飲んで非常に素晴らしい印象だったので、それが今回輸入されるようになったことがうれしかったです。
Date: 2023/1114 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパヴァレー・ヴィントナーズのYouTubeチャンネルで入門の講座が公開されました。20分くらいで簡単にまとめています。上手に編集していただき、いい感じです。


「いいね」もよろしくお願いします。
Date: 2023/1110 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
スティーブ・キスラーの作るオキシデンタル(オクシデンタル)のピノ・ノワールの中でエントリーレベルになる「フリーストーン・オキシデンタル2021」が2023年のワインスペクテーター年間2位に入りました。

古巣のキスラーのワインでも、ざっと調べた範囲では年間6位が最高で、もちろんスティーブ・キスラーとしても最高順位になります。レイティングは94点。

日本にも同ヴィンテージが入っています。瞬殺案件になる可能性が高いのでお早めに。

なお、5位にはロバート・モンダヴィの孫のカルロとダンテが作るレイン(Raen)のピノ・ノワールが入りましたが、残念ながら国内は2ヴィンテージ前しかありません。









Date: 2023/1107 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパで初めての「マイクロ・ワイナリー」の認可が下りました。

「マイクロ・ワイナリー」は2022年5月に生まれた新しいワイナリーの認可制度で、201ガロンから5000ガロン(4樽~100樽程度に相当)の醸造設備を持つワイナリーが対象になります。カスタム・クラッシュなどを使って醸造を行うワイナリーは対象になりません(そもそも醸造設備の許可を取る必要がありません)。

通常のワイナリーはナパ郡のプランニング・コミッションで設立の許可を取らないといけませんが、時間が長くかかり、最初の申請からさまざまな修正を強いられるなど、大きなハードルになっています。マイクロ・ワイナリーは、地域分けのアドミニストレーターの許可だけでよく、今回はわずか15分のヒアリングで許可が下りました。

認可されたワイナリーは、カーネロスにあるGoel Estate Winery。ミズーリ州セントルイスに住むDharam Goel and Myrto Frangosの二人が申請していました。2020年に土地を購入し、今年3月にワイナリーの設立申請を出したとのことです。

20エーカーの土地の中で12エーカーがブドウ畑。ワイナリーはかつてマッシュルーム栽培をしていた納屋のところに作るとのこと。テイスティング・ルームもあり予約のみで1日最大10人のビジターを迎えられます。このほか、駐車場が6台分あり、うち1つは電動車の充電設備になっています。こういったもろもろのことがすべて設立条件に入っています。

Date: 2023/1103 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ジェームズ・ブライアント・ヒルのピノ・ノワールが柳屋としあわせワイン倶楽部で安く出ています。

ジェームズ・ブライアント・ヒルはモントレーで「コスパ王」と個人的に読んでいるシャイド・ファミリーのワイン。シャイドはモントレーに多くの畑を持っており、サスティナブルの認証も受けています。さらには有機栽培にも取り組んでいます。

シャイドといえばランチ32のシャルドネやカベルネ・ソーヴィニョン、あるいはプティ・シラー系のブレンド「Odd Lot」などが人気です。モントレーにありながら意外とピノノワールはそんなに有名ではなかったかもしれません。

ジェームズ・ブライアント・ヒルは以前別のヴィンテージのものを飲みましたが、酸がきれいでバランス良く、お手本のようないいワインでしたお。











Date: 2023/1102 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
もう1か月も前のことで恐縮ですが(先月はいろいろ忙しくてニュース系がほとんど置き去りでブックマークだけがたまっています)、デカンター誌が今年の「ライジング・スター」を二人発表しています。一人はダーク・ニーポート(Dirk Niepoort)というポルトガルのワインメーカー、もう一人がブレナ・キグリー(Brenna Quigley)という地質学者です。

Brenna
ブレナ・キグリーはカリフォルニアの地質学者で、様々なワイナリーが畑のテロワールを理解するために彼女と契約をしています。契約しているワイナリーにはナパのクインテッサ(Quintessa)、ソノマのレイン(Raen、ティム・モンダヴィの2人の息子によるワイナリー)、サンタ・バーバラのドメーヌ・ド・ラ・コート(Domaine de la Cote)などがあります。また、ブルゴーニュの生産者からも招聘されています。

彼女の活動については半年ほど前から注目しているのですが、音声コンテンツが多く、なかなかゆっくり聴く時間が取れていません。ともかく、「テロワール」とワインの味わいの説明について、現状最も頼りになる一人として認識されているのは間違いありません。

おそらく、これから記事で登場する頻度も上がるのではないかと思います。地質や土壌に興味がある方はウオッチしておいた方がいい人です。
Date: 2023/1101 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
パソ・ロブレスの人気ワイナリー「ダオ(DAOU)」をオーストラリアをベースにする大手会社トレジャリー・ワイン・エステートが買収すると発表しました。買収にはDAOUとDAOU傘下のブランド、ワイナリー、ホスピタリティ・センター、畑が含まれています。買収額は9億ドルの契約一時金と最大1億ドルの追加アーンアウトとなっています。

ダオはレバノン出身のジョージとダニエルのダオ兄弟が2007年にパソ・ロブレスのアデレーダ・ディストリクトに設立したワイナリー。パソ・ロブレスの中では冷涼な地域に畑を持っています。カベルネ・ソーヴィニョンなどボルドー系品種のワインを得意とし、ダオ・ブランドではワイン・アドヴォケイトで最高97+、パトリモニー(Patrimony)ブランドでは同じく最高99点という高い評価を得てきました。買収以降もダオ兄弟はワイナリーに残ってワイン造りを担当します。

トレジャリーはオーストラリアのペンフォールズやウルフブラスなどを擁する大手メーカー。カリフォルニアではベリンジャー、エチュード、BV、スターリング、スタッグス・リープ・ワイナリーを保有しています。これらはいずれもナパのワイナリーであり、パソ・ロブレスのワイナリー取得は初めてになります。

今回の買収はトレジャリーにとってはラグジュアリー・ブランドの拡充の狙いがあります。また、ダオにとっては、これまでのパソ・ロブレスのローカルなワイナリーというイメージから世界レベルのブランドへの飛躍といった意味合いがありそうです。

ダオのワインは国内ではナニワ商会(新橋のワイン蔵Tokyo)が輸入しており、ダオの中でもラグジュアリー系のパトリモニーは中川ワインが輸入しています。これらが今後どうなるかは不明ですが、トレジャリーは日本支社もあることから、将来はそちらへの移管が行われる可能性もありそうです。
Date: 2023/1031 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments

ナパの大人気ワイナリー「シルヴァー・オーク(Silver Oak)」から創設者の息子で現CEOのデイビッド・ダンカンさんが初来日し、新ヴィンテージなどの試飲セミナーを開きました。「ファミリーの作ったワインを共有できてうれしい」とダンカン氏。

シルヴァー・オークは1972年創設、ナパヴァレーとソノマのアレキサンダー・ヴァレーの二つのカベルネ・ソーヴィニョンに注力し「Life is a Cabernet!」のスローガンでも知られています。創設者の故レイ・ダンカンには4人の息子がおり、共同で所有していますが、デイビッドは実は一番年下です。

1999年に、カベルネ・ソーヴィニョン以外の品種にチャレンジするためにTwomey Cellarsを設立。Twomeyというのは、デイビッドの祖母の旧姓から取った名前です。

デイビッドはシルヴァー・オークのフィロソフィーについても語りました。第1のフィロソフィーはエクセレンス。最上のものを作ることを目的とし大量生産ではないワインを作ります。

第2のフィロソフィーはサスティナビリティ。畑における環境保護やワイナリーにおける電力や水などの節約はもちろんのこと、そこで働く人がサスティナビリティにコミットしていることが大事だといいます。

そして3番目のフィロソフィーは信頼。信頼のあるワインを作り続けたいといいます。重要なのは「まだ最高のワインを作っていない。もっとよくしていけるはずだ」と信じ、畑や醸造など高みにのぼれるようにがんばっているとのことです。

ワインは、自分の大切な人とおいしい食事をシェアしたり、お祝いをしたりといった特別な瞬間のためにある。その素敵な瞬間をいいものにするためにいいワインを作ろうとしている。評論家のスコアのような特定の一人の意見で評価されるのではなく、みんなに喜ばれるワインを作りたいと語りました。

試飲に移ります。

Twomeyからはソーヴィニヨン・ブラン 2022とピノ・ノワールが2種類。 アレキサンダー・ヴァレー 2020とロシアン・リバー・ヴァレー2020です。Twomeyはソノマのロシアン・リバー・ヴァレー、メンドシーノ、そしてオレゴンと3つのワイナリーを保持しています。それぞれワインメーカーも別になっています。アレキサンダー・ヴァレーのワイナリーは2019年にできた新しいものです。なお、Twomeyの最初のワインはメルローでしたが、現在はメルローはラインアップから外れています。

ソーヴィニヨン・ブラン 2022はナパとソノマの2つずつの自社畑のブドウを中心に作っています。ハーヴの香りや黄色い花の香、ピーチ、アーモンドなどがあり豊かな酸と厚みのある味わいが楽しめます、

醸造ではステンレスタンクのほか、ステンレスの樽、オークの旧樽を使っています。ステンレスのタンクはやわらかな口当たり、ステンレスタンクは酸の豊かさに貢献しています。

Twomeyピノ・ノワール アレキサンダー・ヴァレー2020は、腐葉土やマッシュルームといった熟成系の風味や、ザクロなど赤系の果実にちょっとブラックベリーなど黒系のダークな果実味が混じります。甘草のような甘やかさもあり、口当たりがやわらかです。酸はやや高め、複雑味があります。

Twomeyピノ・ノワール ロシアン・リバー・ヴァレー2020は、より果実味が豊かでカリフォルニアの太陽を感じるワイン。ラズベリー、カシス、ベーキングスパイスなどの風味。アレキサンダー・ヴァレーと比べ、なめらかで落ち着いた酸味があります。

ちなみにどちらも100%除梗で作られています。年によっては10数パーセント除梗する場合もあるとのこと。

Twomeyの次は、グループの中でも新しいワイナリーであるタイムレス(Timeless)です。シルヴァー・オークはナパ市の東側のソーダ・キャニオンと呼ばれるエリアに113エーカーという大きな畑を持っています(AVAはナパヴァレーになります)。シルヴァー・オークのナパヴァレーではこの畑のブドウに、契約栽培家のブドウなどを加えて醸造していますが、もっとこの畑のテロワールを表現するワインを作りたいとして始めたのがTimelessです。2017年が最初のヴィンテージです。シルヴァー・オークが1万ケースを超えるくらいの量を作っているのに対し、Timelessは2000ケース程度と少量です。

ちなみに、Timelessという名前はデイビッドが父親のレイ・ダンカン(創設者)のために作った曲の名前だそうです。2015年の誕生日(奇しくもデイビッドもレイも同じ10/23生まれでした)に披露するつもりだったのが、誕生日の2週間前に亡くなってしまい、この曲にちなんだワインを作ることにしたそうです。

Timelessではボルドー系の品種カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、カベルネ・フラン、プティヴェルドをブレンドします。その年を表現するロットを選ぶのですが、今回試飲した2019と2020はどちらもメルローが半分くらい使っているそうです(ブレンド比率は公表されていません)。2023年は2/3くらいカベルネ・ソーヴィニョンになりそうとのことでした。

ちなみに、シルヴァー・オークはアメリカン・オークの樽だけを使うことで知られており、ミズーリ州に樽のメーカーを持っているくらい力を入れていますが、Timelessではフレンチオークを使っています。

試飲に移ります。
Timeless2020は赤果実に青果実の風味。腐葉土。コンポートのような甘やかさ。しっかりしたタンニンがありパワフル、余韻の長いワインです。

Timeless2019は2020よりもタンニンが強く、よりパワフルです。赤果実にカシス、花の香がありますが、2020よりもちょっと閉じているように感じました。

最後にシルヴァー・オークの試飲です。シルヴァー・オークの2014年からのワインメーカーはネイト・ワイズという人。50年の歴史の中で3代目のワインメーカーという、長期間務めるのも特徴です。

シルヴァー・オークの試飲では、現行ヴィンテージに加えて2012年という約10年たったヴィンテージも合わせて試飲しました。
シルヴァー・オーク アレキサンダー・ヴァレー カベルネ・ソーヴィニョン 2019は腐葉土や杉、ココナツ、ザクロ、ブルーベリーなどの風味。酸が比較的高く、柔らかさとしなやかさがあります。

シルヴァー・オーク アレキサンダー・ヴァレー カベルネ・ソーヴィニョン 2012はマッシュルーム、杉、甘草。まだタンニン強くパワフルなワイン、

シルヴァー・オーク ナパヴァレー カベルネ・ソーヴィニョン 2018はやや固さを感じます。黒鉛、カシス、ブラックベリー、ココナツ。タニックですがバランスいいワイン。

シルヴァー・オーク ナパヴァレー カベルネ・ソーヴィニョン 2012はまだまだ芳醇な果実味が残っています。それに加えてマッシュルーム、杉、アニス、甘草などの風味が感じられます。複雑さがあり美味しい。

ところで、シルヴァー・オークのナパヴァレーはこの2018年からラベル・デザインを変更しました。これまではボトルにエッチングを施したものだったのを、通常の紙のラベルに変更したのです。これまでのエッチングは、カナダのメーカーにボトルを送って作ってもらっていたのですが、ボトルの運搬やエッチングなどサスティナブルではないと判断したのが理由です。

質疑応答では、アルコール度数が高いのにバランスが悪くないのはどうしてか、といった質問がありました。デイビッド・ダンカン氏によると、それは収穫のタイミングを見極めて収穫しているからだろうとのことです。最適なタイミングは24時間くらいしかなく、そこで収穫をするのが大事。そのため、ナパでは自社の収穫部隊がいて、多くの畑で最適なタイミングで収穫しています。各地に畑があるため1日200マイルも移動することがあるとのことです。

最後に感想をまとめます。
Twomeyは、堅実にいいワインをいつも作っているのが印象的です。特にソーヴィニヨン・ブランは個人的にも好きなワインの一つで、きれいな酸に加えて果実の厚みが感じられ宇ところがカリフォルニアらしいと思います。
Timelessはまだ4ヴィンテージめということで、シルヴァー・オークのような確固としたスタイルを築くところまでは行っていないような気がしますが、志があるワインなので、まだまだ良くなっていくだろうと思います。難しいヴィンテージと言われる2020年も、みじんもネガティブさを感じませんでした。
シルヴァー・オークは、これまで何回飲んだかわからないくらい飲んでいますが、いつ飲んでも安定した味わいがさすがです。シルヴァー・オークらしさを持ちつつ、改善を怠らない姿勢にも感銘を受けます。やはりナパのリーダー的ワイナリーの一つだと言えます。
貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました。

あと、シルヴァー・オークにはOvidというワイナリーもあります。これは買い取ったワイナリーで一から育てた他のブランドとは位置づけが違うのでしょうけど、個人的にはそちらも試飲できるとうれしいです(と書いておこう)。特にOvidにはHexameterというカベルネ・フランの名作がありますから、私のあこがれのブランドの一つです。


Date: 2023/1030 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
maya
ダラ・ヴァレのナオコさんとマヤさん親子に10の質問をするというインタビュー記事が出ていました(Napa mother daughter wine team leads Dalla Valle Vineyards)。

あまりメディアに出ることがないナオコさんの回答では特に興味深い回答がいくつかありました。

例えば、昔日本舞踊を習っており、もしずっと日本にいたなら日本舞踊を教えていただろうとか、20年ほど前に畑に大きなトラブルが起き、ほとんどワインを作れなくなったこととか(2007年に植え替えが終わってようやく復帰できたと同時に、有機栽培に転換したとのこと)。ご主人が1995年に亡くなって後を継いだときから、いつかはマヤさんが引き継いでくれることをひそかに期待していたとか。

行政への期待として、二人そろってファミリービジネスと大企業を分けてほしいことを挙げていたのも興味深く、またナオコさんが、ナパに公共交通機関がほしいと言っているのにも共感しました。

馬術
ところで、マヤさんは「人が知ったら驚きそうなこと」として馬場馬術の選手であることを挙げていましたが、インスタグラムへの投稿によると、ケンタッキー州で行われる米国選手権に出場することが決まったそうです。すごいですね。
Date: 2023/1029 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Sterling
ナパのカリストガにある人気ワイナリー「スターリング(Sterling)」が2020年のグラス・ファイアーの被害から再建し、ようやく再オープンにこぎつけました。丘の上に建つワイナリーまで麓から客を運ぶゴンドラも新しくなって再オープンしています。

スターリングはグラス・ファイアーの直撃を受け、ワイナリーやホスピタリティ・センターの内部が大きなダメージを受けました。醸造は今も外部(セント・ヘレナのベリンジャー)で行われており2024年から戻ってくる予定です。

ゴンドラは、リプレースが危ぶまれたものの、元の製造会社が現存だったことから、新しいより輸送力の高いものに変わりました。

Date: 2023/1028 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパのダリオッシュなどを輸入するデプト・プランニングの試飲会から美味しかったワインを紹介します。カリフォルニアがメインのインポーターですが、ニュージーランドやスペインのワインもあります。


ニュージーランドのクルクルというかわいい名前のワイナリーのピノ・グリです。ピノ・グリ、そんなに好きな品種ではないのですが、これはおいしい。うまみがあるのと同時に酸もきれいです。後味の苦みがグリップ感となって味わいを引き締めます。


スペインのクロ・ポン・フロックスというワイナリーのカバです。レゼルバのブリュットとロゼ・ブリュット。レゼルバが3000円でロゼは3300円とかなりのコスパです。


ソノマの注目ワイナリー「アパーチャー・セラーズ」のカベルネ・ソーヴィニョンです。リッチでふくよかな味わい。きめの細かいタンニンが高級感を感じさせます。


ベンジャミン・シルバーの「724レディック・ストリート」というワイン。2010年と2011年をブレンドしたというノン・ヴィンテージのワイン。レッド・ブレンドです。これは初めて飲みましたがリッチで酸もあり、バランスよく美味しい。これが6000円はかなりのバーゲンです。
49%サンジョヴェーゼ、31%カベルネ・ソーヴィニョンなどをブレンドしています。


C.G.ディアーリのシエラフットヒルズのジンファンデル。豊かな果実味で美味しい。多くの人がイメージするカリフォルニアのジンファンデルの形といってもいいでしょう。


ダリオッシュのカベルネ・ソーヴィニョン。モダン系カベルネ・ソーヴィニョンのお手本のようないいカベルネです。素晴らしい。


デリンガーのピノ・ノワールとシャルドネ。シャルドネは樽もしっかり効かせたクラシックなスタイル。ピノ・ノワールは酸のきれいさが際立っています。


ダックスープ(Duxoup)というワイナリーも知りませんでしたが、シャルボノのワインが輸入されていることも知りませんでした。シャルボノは超マイナー品種で、カリフォルニアではごくわずかしか栽培されていません(絶滅寸前、シャルボノに惹かれる人たち)。私もシャルボノメインのワインは初めて飲みましたが、濃厚でタンニンも酸もしっかりあり、濃いワイン好きの方にはぜひ飲んでほしいワインです。


ジラソーレは9月のAmerican Wine Dayで試飲したときも印象の良かったワイン。メンドシーノで有機栽培で作られているワインです。親しみやすい味わいですが上品さもあり、いいワインです。


もう一つメンドシーノからエノトリアというワイナリーのドルチェット。ドルチェットもカリフォルニアではあまり見かけない品種です。これもかなりタンニンのしっかりしたワインですが、ふくよかさもあっておいしいです。


ナパの一等地であるオークヴィルで作るハイランズのジンファンデル。パワフルで果実味豊か。複雑さもあり美味しいです。


私市友宏さんの幻ワイナリーのロゼスパークリング。新商品です。リッチさがありますがテクスチャは極めてスムーズ。泡のきめこまかさも上質さを物語ります。


マルドナードのシャルドネは、高級感あふれる上質な味わい。カーネロスの自社畑のブドウを使っています。


ニコルスのオーナーのキース・ニコルスさんはもうワイン造りからは手を引いているそうなので、今残っているものがなくなればニコルスも終わることになりそうです。古いヴィンテージのものばかりでボトル差もあると思いますが、今回試飲した中ではこのジンファンデルがよかったです。リッチですがテクスチャはスムーズ。まだまだ若さを感じます。


プライドはナパとソノマにまたがって畑を持つワイナリー。スプリング・マウンテンの山のワイナリーとして名を馳せています。このカベルネ・ソーヴィニョンもかなりタニックでまだがちがちですが、山のストラクチャがあり山カベ好きにおすすめです。


ロス(Roth)のソーヴィニョン・ブランはバランスのいい味わい。コスパ高いです。


シルバー・ストーンのメルローはリッチな味わいですが、ストラクチャーもあり、秀逸なメルローです3000円はお値打ち。


テラ・ヴァレンタインはナパのスプリング・マウンテンにあるワイナリー。ラベルはいかにもヴァレンタインというラブリーな雰囲気ですが、ワインの味わいは山ならではのストロング・スタイル。プライドと並んで山カベ好きにおすすめです。プティ・シラーの方はさらにパワフル。濃厚ワインが飲みたいという方におすすめです。

Date: 2023/1027 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
米国の農務省が農産物の輸出を増やすため、23憶ドルを拠出すると発表しました(USDA Bolsters Investments in International Trade and Food Aid | USDA)。

このうち10憶ドルは、世界的な飢餓の解消のために充てられ、13憶ドルが地域的な農産物のプロモーション・プログラムに充てられます。カリフォルニアワインもその対象に入っており、カリフォルニアワイン協会が今回の拠出を歓迎するむね発表しています。
Date: 2023/1027 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
例年であればもうほとんど終わりが近い収穫時期ですが、2023年はまだ収穫が終わっていないワイナリーが多数あります。非常に素晴らしいヴィンテージになる可能性がある中、秋の深まりとともに腐敗のリスクも高まり、ワインメーカーはぎりぎりの選択を迫られそうです(Weather has Napa winemakers walking fine line between spectacular vintage and rot with late harvest)。

JaMセラーズなどで知られるジョン・アンソニー・ファミリー・ワインズのジョン・アンソニー・トルシャードによると、例年であれば11月には5~10%程度しか収穫が残っていないのに対し、今年は15~20%も収穫が11月にずれこみそうだと言います。

これまでちょっとした雨は2回ほど降っていますが、問題になるようなレベルではなく、順調な生育となっていますが、秋の深まりとともに気温が急に下がって霜が発生し、腐敗につながってしまうといったリスクが上がってきています。

フレーバーの成熟をどこまで持たせるか、ワインメーカーの判断が難しくなっており、場合によってはぎりぎりの判断を迫られることもありそうだといいます。

干ばつが続いた時期は収量も落ちていましたが、今年は豊富な収穫となっており、このまま順調に終われば質量ともに素晴らしいヴィンテージになりそうです。
Date: 2023/1026 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ケンダル・ジャクソンなど数多くのブランドを所有し、環境に先進的なワイナリーとしても知られているジャクソン・ファミリーがナパに所有する15の自社畑でカリフォルニアの有機認証CCOFを取得しました(Jackson Family Wines Achieves Certified California Organic Farmers (CCOF) Certification For Napa Valley Estate Vineyards)。
null
今回認証を得た畑の作付面積は480エーカーに及びます。AVAではオークヴィル、ラザフォード、マウント・ヴィーダー、ハウエル・マウンテン、スプリング・マウンテン、ダイヤモンド・マウンテンと様々であり、カーディナルやフリーマーク・アビー、ロコヤ、ラ・ホタ、マウント・ブレーブ、カラダンといったグループの一流ワイナリーで使われています。

ジャクソン・ファミリーでは2030年までに自社畑のすべてを再生可能型農法に転換することを目標にしており、有機認証はそこに至るプロセスの一部となっています。すでに多くの畑では再生可能型の農法を取り入れています(再生可能型農法では二酸化炭素の排出を減らすため、畑をなるべく耕さないなどの取り組みを行います)。
Date: 2023/1025 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ギネス記録にもいろいろありますが、頭の上にワイングラスを何個載せられるかといった記録もあるそうです。キプロスのAristotelis Valaoritisという人が新記録の319個を載せた動画がX(Twitter)に出ていました。

最後まで見てくださいね。

こっちのウエイトレスもすごい。
Date: 2023/1024 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ワイン・エンスージアスト誌が2020年のナパやソノマのカベルネ・ソーヴィニョンを総括する記事を上げています(Don’t Be Afraid of Napa and Sonoma’s ‘Smoke Vintage’ | Wine Enthusiast Magazine)。

2020年は二つの山火事によって煙の被害が出て、多くのワイナリーがワイン造りをあきらめた年。8月17日に発生したLNU Lightning Complex Fireはナパやソノマ、ソラノ郡などで雷から同時多発的に発生した火事で、特にナパの東部やソノマの西部で広い範囲が火事になりました。さらに9月27日に発生したGlass Fireはスプリングマウンテンなどナパとソノマの間で大きな火事になり、いくつかのワイナリーやブドウ畑、ホテルも焼失し煙の広がりも大きくなりました。こちらが特に多くのワイナリーが煙被害でワイン造りをやめた理由になっています。

結論としては97本のナパとソノマのカベルネ・ソーヴィニョンを試飲した結果、煙の影響が感じられたワインはほとんどありませんでした。ただ、ワインの数自体が例年よりずっと少ないため、2020年のワインを見つける機会はあまり多くないかもしれません。また、ヴィンテージ評価は88点と2011年以来初めて90点を下回りました。とはいえ難しかった2011年(あるいはこれも難しい年として知られている1998年も)は、熟成するときれいに飲みやすいという評価もあり、ヴィンテージ評価をうのみにする必要もないかもしれません。

評価の高かったワインの一つがコリソン(Corison)。セント・ヘレナの西側にあるワイナリーです。コリソンは他のワイナリーよりも早摘みの傾向があることと、セント・ヘレナのそのあたりが比較的煙の影響が少なかったことなどにより、問題なくワインが作れたといいます。同じセント・ヘレナ西部にあるスポッツウッドも他の評価誌で高く評価されていることから、セント・ヘレナは2020年のねらい目かもしれません。

また、2020年は掘り出し物が見つかる可能性もあります。例えば通常ならリザーブとして高く売るものも通常のボトリングにするなどワインの種類を減らしたワイナリーも多く、通常版のクオリティが上がっているケースもありそうです。Precision Wineは、主に買いブドウでコスパの高いワインを作るワイナリーですが、2020年はワイン造りをあきらめたワイナリーから多くのブドウを購入しています。そこから煙の影響を調べ、問題なかったものをワインにしています。結果として2020年のナパのワインの1割がPrecisionによるものだという試算があるというから驚きです。

白ワインも収穫の早さと、醸造時に皮を使わないことから煙の影響はほとんどありません。

2020年のワイン、少なくとも避けて通る必要はなさそうです。
Date: 2023/1014 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
シュレーダー(Schrader)とダブル・ダイヤモンド(Double Diamond)が2021年ヴィンテージのお披露目イベントを世界各地で開催。ニューヨークの次に開かれたという東京のイベントに参加しました。


紹介するのはコンステレーション・ブランズでシュレーダーのジェネラル・マネージャーを務めるジェイソン・スミスMS。27歳のときにマスターソムリエを取ったという才人で、チャーリー・トロッターやベラージオ、MGMグランドといったそうそうたる経歴を経てシュレーダーのGMになりました。

これまでシュレーダーは、こういったお披露目イベントをやっていませんでした。「創設者のフレッド・シュレーダーは『飲みたかったらまずボトルを買いな』というスタンスだった、それに対して自分はワインを皆とシェアするスタンスだ」と冗談まじりに語るジェイソン・スミス氏(まじめなイベントですが、ちょいちょいこういうジョークが混じります)。

ちなみに、コンステレーション・ブランズのラグジュアリー・ブランドのワイナリーにはシュレーダー、ダブル・ダイヤモンドのほか、マウント・ヴィーダー(Mount Veeder)、ト・カロン・ヴィンヤード・カンパニー(To Kalon Vineyard Company)、オレゴンのリンガ・フランカ(Lingua Franca)が入っているそうで、これらもお披露目イベントを開きたいという話でした。

さて、今回は2021年ヴィンテージのお披露目ですが、2020年はシュレーダー、ダブル・ダイヤモンドともにワインをリリースしませんでした。言うまでもなく山火事の影響で「大災難だった」とジェイソン・スミス氏。それに対して2021年は干ばつは続いたものの素晴らしいヴィンテージで凝縮感のあるブドウができ、シュレーダーのワインメーカーであるトーマス・リヴァース・ブラウンも、ト・カロン・ヴィンヤード・カンパニーの2022年までのワインメーカーだったアンディ・エリクソンもとても喜んでいたそうです。近年でも非常にいいヴィンテージの一つだった2018年と似ているとのこと。

ちなみに2023年は、巷間言われているように3週間ほど収穫が遅く、例年なら9月中旬に始まるところが先週末(10月上旬)に始まったとのこと。品質は「計り知れないほどだ」と絶賛しています。

ダブル・ダイヤモンドの説明と試飲に入っていきます。
ダブル・ダイヤモンドは日本に入ってきたのはここ数年だと思いますが、実は2000年から作っているワインだとのこと。シュレーダーは熟成に時間がかかりますが、ダブル・ダイヤモンドはすぐに楽しめるようなスタイルになっています。ブドウはすべてオークヴィル産で75%がト・カロンですが、ト・カロンよりも東側のナパ川に近いところの畑も使っているそうです。また、ダブル・ダイヤモンドは唯一、モンダヴィ(コンステレーション)のト・カロンとベクストファー・ト・カロンの両方のブドウが入ったワインですが、比率的にはモンダヴィのト・カロンの方がだいぶ多いようです(具体的な数字は不明)。モンダヴィのト・カロンの方がベクストファー・ト・カロンの4倍ほども面積があること。ダブル・ダイヤモンドは若木のブドウを中心に使いますが、モンダヴィのト・カロンの方が若木の比率が高いことが背景にあります。
null
ダブル・ダイヤモンドは2021年からラベルが変わりました。従来は赤いダイヤモンドが二つ絡み合うように描かれていましたが、文字がメインになりました。書体もシュレーダーのラベルで使われているものに合わせています。また、よく見るとラベルの下の方にドラゴンが描かれています。これはシュレーダーのフラッグシップであるオールド・スパーキーのラベルに描かれるラベルに合わせています。ドラゴンを意匠に使うのは火を噴いているイメージがシュレーダーのワインに合っているとフレッドの奥さんが選んだのだそうです。


ダブル・ダイヤモンドのワインのスタイルは果実味が前に出ているのと同時にタンニンが秘められているとジェイソン・スミス氏。トーマスのワインはすべてバランスがよいのが特徴だと言っていました。樽は半分が新樽。残りはシュレーダーからのおさがりだそうです。

若木の話が出たのでもう一つ。モンダヴィのト・カロンは木の植え替えをコンスタントに行っているとのこと。ブロックがおとに全体を植え替えるのではなく、生産量が落ちてしまった木ごとに植え替えているとのこと。クローンの比率が変わらないように、前に植わっていたのと同じクローンを植えるそうです。ト・カロンの現在植わっている木の平均樹齢は20年以下だそうで、結構植え替えはやっているようです。ちなみにト・カロンの中でも有名なIブロックにはカリフォルニア最古と言われる古いソーヴィニヨン・ブランが植わっています。

ダブルダイヤモンドでは樹齢5~10年の木を使っているとのこと。

ダブル・ダイヤモンドでは2021ヴィンテージから赤のブレンドのワインも出しています。2021年の品種比率はカベルネ・ソーヴィニョン50%、メルロー25%、カベルネ・フラン25%。カベルネ・ソーヴィニョンはト・カロンと「オークヴィル・ステーション」という畑から。カベルネ・フランはマウント・ヴィーダーのものも入っているそうです。

2021 Double Diamond Cabernet Sauvignon
色はやや赤みが強いようです。カシスやブルーベリーに加えて赤果実の風味もあります。皮革、甘草…。酸はやや強くタンニンも強いです。全体としては暖かさと丸みを感じるワインでした。

2021 Double Diamond Red Wine
ミントのような清涼感のある香り、ちょっと香ばしいアーモンドの風味。青や黒の果実よりも赤果実の風味が顕著に強く感じます。カベルネ・ソーヴィニョンよりも酸高く、しっかりしたタンニン、長い余韻。

どちらもかなり美味しく、1万円台のワインとしては秀逸なできでした。個人的には冷涼感あるレッド・ブレンドがよかったです。

シュレーダーの話に移ります。シュレーダーの最初のヴィンテージは1998年。2000年にベクストファー・ト・カロンと契約し、トーマス・リヴァース・ブラウンをワインメーカーに据えました。そして今は傘下に入ったコンステレーションから「ト・カロン」の名称を巡って提訴されたなんてこともありました(もちろん今回の発表会ではそのあたりはスルーですが)。98年、99年にだれがどんなワインを作っていたのかは不明だったのですが、スプリングマウンテンの畑のカベルネ・ソーヴィニョンだったそうです。その後、ワイン・アドヴォケイトなどで100点ワインを連発して注目を集めたシュレーダーですが、なんとこれまで通算の「100点」の回数は37回だそうです。これまでのヴィンテージの数の1.5倍くらいあるわけで。毎年数回100点を取っている計算になります。

シュレーダーのユニークなのは、畑名のカベルネ・ソーヴィニョンだけでなく、その中のクローン別のワインも作ったこと。ほかにもクローン別のワインを作っていたワイナリーはありますが、そのどれもが高い評価を得たことで注目を集めたのはシュレーダーくらいだと思います。さらに、コンステレーション傘下に入ってからは、ト・カロンのブロック別のワインも作るようになり、さらにラインアップが充実しました。現在は10種類のカベルネ・ソーヴィニョンを作っています。

シュレーダーのワインはどれもフルボディでパワフル、アルコール度数も15度を超えるものが珍しくありませんが、それでもバランスが取れていることがポイントで、いわゆる高いアルコール度数による「熱」のような感じはめったに受けません。発酵は天然酵母、清澄、濾過などはしない、ある意味かなりシンプルなワイン造りです。

トーマス・リヴァース・ブラウンが重視しているのは二つのことで「いつ収穫するか」「いつスキンコンタクトを終えるか」だそうです。後者は風味の抽出とタンニンの強さがトレードオフになっており、そこの見極めがポイントになるとのこと。

このあと、ト・カロンの畑の歴史などの説明がありましたが、長くなるのでここでは割愛します(知りたい方は「トカロン・ヴィンヤードの謎を解く【保存版】」をごらんください)。

試飲に移ります。

2021 Schrader RBS Cabernet Sauvignon
RBSはベクストファー・ト・カロンでクローン337だけを使ったワイン。ダブル・ダイヤモンドと比べると色が濃く、赤というより黒みが強く感じます。濃厚で芳醇な果実味でやや甘やかさを感じます、黒鉛、杉、オリエンタルスパイス。酸はダブル・ダイヤモンドより低く、きめの細かいタンニン。緻密な味わいですが、全体としては硬質というよりやわらかさを感じます。
なおクローン337はナパを代表するようなクローンで、果実がルースにつき、収量が少ないのが特徴とのこと。



2021 Schrader Heritage Clone Cabernet Sauvignon
今回一番驚いたワインがこれ。Heritage Cloneは上の図にあるように、モンダヴィ側のト・カロンのブロック。ここはClone 31というト・カロンを最初に作ったハミルトン・ウォーカー・クラブが初期に植えたのではないかと言われているクローンが植わっています。このクローン、とにかく房が驚くほど小さいのです。手のひらの3分の1くらいのサイズ(写真を撮り損ねたのが悔やまれます)。畑を歩いていてこのブロックに来ると、感覚がおかしくなるとか。
味わいはシュレーダーの中では例外的なほど酸が豊かでタンニンも強くあります。赤果実感もとても強い。カベルネ・フランと言われたら信じそうな味わい。モンダヴィのト・カロン・リザーブにも通じるところがあります。シュレーダーらしくはないかもしれませんが個人的にはすごく好きです。

2021 Schrader Old Sparky Cabernet Sauvignon
2021年のワインの最後はオールド・スパーキー。名前はフレッド・シュレーダーのニックネームから取っており、マグナムだけが作られます。このワインはポジティブ・セレクションで、ベクストファー・ト・カロンの中から一番できのいいものを集めて作られます。そのためクローン4、6、337がブレンドされています。
RBS以上に緻密でパワフルな味わい。旨味も感じます。タンニンは高めで長熟向きです。酸もRBSより高い。
タンニンH、酸M+、旨味強い、緻密パワフル
ちなみにクローン4は、別名メンドーサクローンともいわれアルゼンチンから渡ってきたクローン。当初はマルベックと思われたそうです。緻密でミネラルも強いのが特徴。
クローン6はかなり貴重で、なかなか手に入らないクローンとのこと。

さて、最後にシュレーダーの熟成力を見るため2012年のRBSの試飲がありました。

2012 Schrader RBS Cabernet Sauvignon
色はややにごりを感じます。ちょっとアルコール感と赤果実の風味。タンニンはまだかなり強く、酸豊か。

まだまだ熟成の途中といったワインで、個人的にはもう数年前か10年くらい後に飲んだ方がよりおいしいのではないかという気もしました。

ところで、ロバート・モンダヴィ・ワイナリーは現在大規模改修中で、テイスティング・ルームもナパ市内に移転していますが、2024年にはシュレーダーやト・カロン・ヴィンヤード・カンパニーなどのラグジュアリー・ブランド専用の醸造設備ができるそうです。シュレーダーは実は自前の醸造設備を持っておらず、これまでトーマスがワインメーカーを務めるアウトポストでワインを作っていましたが、ようやく自社の設備になります。



Date: 2023/1012 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
2017年のヴィンテージから続いているクインテッサ(Quintessa)の新ヴィンテージリリースの試飲。2020年のものはどうなるか心配していましたが、4月に現地でジェネラルマネージャーのロドリゴ・ソト氏に会ったときに、「今年もちゃんと出るから楽しみにしていて」との言葉をいただきました。その言葉の通り、今年もサンプルをいただき、試飲とインタビューをしました。


昨年までの記事はこちら。
クインテッサ2019は傑作2018を超える!?
クラシックスタイルのトップ級、さらに進化するクインテッサ
進化を遂げつつあるナパの隠れた自然派「クインテッサ」の魅力

まずはクインテッサについて基本情報を記しておきます。
クインテッサはチリのコンチャイトロのCEOだったアグスティン・ヒューネウス(Agustin Huuneus)がナパのラザフォードに設立したワイナリー。設立以来、オーガニックで栽培をしており、現在はデメターからバイオダイナミクス(ビオディナミ)の認証も受けています。畑を切り開いた最初から有機栽培であり、土地に農薬が一度も使われていないという価値があります。

場所はラザフォードの東北部。ちょうどナパ・ヴァレーがぐんと幅を狭くしていくあたりです。西側はナパ・リヴァー、東側はシルバラード・トレイルに挟まれた200エーカーを超える広大な畑を持っています。ヴァレー・フロアではありますが畑の中に丘や池などがあり、5種類の斜面からなり、土壌などもかなり変化に富んだ畑です。

ブドウ品種はカベルネ・ソーヴィニヨンを中心に、カベルネ・フランやメルロー、プティ・ヴェルドなど。珍しいところではチリの固有品種であるカルメネール(正確にはボルドーから持ち込まれた品種ですが、現在ではほとんどチリだけで作られています)を一部植えています。

ワインはボルドー系ブレンドのクインテッサのほか、ソーヴィニョン・ブランのイルミネーションの二つだけを作っています。セカンドワインもありません。

クインテッサのワインのスタイルはクラシック。ナパのボルドー系ブレンドの中でもオーパス・ワンと並んでエレガントな作りです。


写真はクインテッサの畑を映したものです。南から北側を映しています、中央にため池があり、その両側も畑。東側はシルバラード・トレイル、西側はナパ川が区切りとなっています。

この写真からもわかるように、クインテッサの畑は斜面の向きや土壌の種類など、かなり多様性に富んでいます。数あるナパのワイナリーの中でもこれだけ多様な土地を持っているところはほとんどないのではないかと思います。ラザフォードの北部でナパヴァレーの谷幅が狭くなるあたり。東の山からの火山性の土壌とナパ川による退席性の土壌がどちらも畑の中にあります。クインテッサでは近年は土壌の専門家を招聘し、最適な品種や仕立てなどを追求しています。

今回のインタビューにおいても、ロドリゴ氏は多様性の維持が大事だと言っており、それがワインにもたらす要素を大事にしています。例えばため池の西側は石が多く、ストラクチャーの強いワインができます。そのためストラクチャーの元となるカベルネ・ソーヴィニョンを植えています。シルヴァラード・トレイルに沿ったところは火山由来の灰が多く、ワインにもチョーキーなニュアンスが出ます。ここにはカベルネ・フランを植えています。逆に川に近いところはちょっと重い土壌でワインは柔らかくなります。ここはメルローです。

このほかクインテッサの特徴としてはカルメネールがありますが、これもメルロー同様川に近いところがいいようです。

土壌の話が長くなりましたが、生物多様性も重視しており、多様な動物がいられる環境を作っています。これは地球温暖化や干ばつへの対策にもなると考えています。

ワイン造りでは新樽の比率を年々減らしており60%減ったとのことでした。ワインのピュアさを大事にしていくそうです。


ワインの試飲は2022年のイルミネーションから始めました。ソーヴィニヨン・ブランとセミヨンのブレンドで、セミヨンは外部のブドウも使っています。具体的にはナパのカリストガ、ソノマはベネット・ヴァレーから調達しているそうです。発酵は古樽とコンクリートを使っています。
グレープフルーツにややトロピカルなグアバの印象。樽からくるヴァニラはかなり控えめ、アカシアの花、シナモン、貝殻など香り豊かで多彩。酸はやや豊か、ボディも比較的しっかりしており長い余韻を持っています。とてもいいソーヴィニヨン・ブランです。
なお、クインテッサはボルドー経由で日本に入ってきますが、イルミネーションはファインズの扱いになっています。

次にいよいよ2020年のクインテッサです。
2020年は9月下旬にグラス・ファイアーの火災が起き、ナパのスプリングマウンテンからセントヘレナにかけて延焼していきました。クインテッサのあるラザフォードもかなり近い地域です。温暖で収穫が早めに始まり、火事の前に収穫できたものがワインになっています。
香りは例年に比べるとソフトで温かい印象。ヴィンテージの温暖さが表れているようです。ブラックチェリーにプラム、バラ、生肉、白コショウ、トマトの葉などの香りを感じました。個人的にはより緊張感のある仕上がりだった2019年や2018年に比べると少し落ちるとは思いますが、十分にいいワインです。

最後に2023年について伺いました。今年は冬から春先に雨が多く、それで土壌の状態がかなり改善されたといいます。前の年と比べると5倍ほどの降水があったようです。そういったことから、ブドウに新鮮さと明るさがあるとのこと。素晴らしいできで9月26日から収穫を始めたそうです。

来年以降がまた楽しみになるクインテッサです。
Date: 2023/1010 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
今年春に「カリフォルニア、カベルネ・フランの真髄」という記事で、ハーランのカベルネ・フランなどカベルネ・フランの超貴重ワインばかりのワイン会の話を紹介しました。同じ方から今度はメルロー会をやりましょうとのことで参加してきました。



メルローにこだわったというこの会、乾杯のスパークリングもメルローです。北海道余市のリタファーム&ワイナリーが作るペットナットのメルロー。レッドベリーの風味がチャーミング。


この会、料理も凝りに凝ったものが登場します。まずはすり身にイカ墨を合わせたトースト。見た目もおしゃれです。


ワインはいきなりお宝中のお宝です。なんとスタッグス・リープ・ワイン・セラーズの1974年のメルローです。かのパリスの審判のワインの次の年のメルローです。

50年近く熟成したワインですが、まだ赤果実の風味が残っています。とにかくきれいでエレガント。酸もほどよくあり染み入るような味わい。酸化した風味もなく最高の熟成状態です。


こちらの料理はシラスに、1週間ホエイに漬けて発酵させた玉露を混ぜたもの。これも素晴らしい風味。ワインが酸化していたら、これにレモン風味を付ける予定だったそうですが、まったくその必要はありませんでした。


次のワインはポール・ホブスのマイケル・ブラック・ヴィンヤード2003。マイケル・ブラック・ヴィンヤードはナパのクームズヴィルにある畑。今はCohoというワイナリーがメルローを作っているようです。
こちらはマッシュルームやトリュフのようなキノコの風味や腐葉土など、熟成香が素晴らしい。メルローが熟成するともっと獣系の香りが出てくるのかと思っていましたが、植物系の熟成香が中心でした。ブラックベリーなどの果実味もあり、多少甘やかな味わいがカリフォルニアらしさを感じさせます。


これに合わせた料理がまたすごい。和牛のハラミを白味噌の汁に仕立て、グリーンカレーの風味を少しだけつけています。肉の旨味、汁の出汁、白味噌の甘味をグリーンカレーのスパイスが引き締めて、これがポール・ホブスに素晴らしく合いました。ペアリングの妙ということではこの日の一番だったかもしれません。


次はなんとメルローで作った白ワイン。長野の塩尻にあるヴォータノのメルロー・ブランです。ちょっとオレンジっぽい風味。酸がきれいでさわやかなワイン。


料理もさわやかに魚介のサラダ仕立て。緑黄野菜と長谷川農産ホワイトマッシュルーム、壱岐穴子の一夜干し、ヒラメの昆布締め、明石蛸、大ハマグリのサフランジュレがけ。
素材がどれも素晴らしく美味しいです。


ワインはダックホーンのメルロー、スリー・パームス・ヴィンヤード1988。スリー・パームスのメルローを飲んだことある方は結構いらっしゃると思いますが、1988年となるとほとんどいないだろうと思います。
ちょっとミンティな風味を感じます。果実味もきれいに残りエレガント。今回、メルローがこんなにきれいに熟成するのを初めて知りました。旨味もあり美味しい。


料理は牛すじ出汁と金針菜の煮込み。カイケム(アヒルの塩漬け玉子)と腐乳のソース。肉の旨味と出汁がむちゃくちゃ美味しい。今日の料理は基本的に和食の仕立てです。


次のワインはプライド・マウンテン。スプリング・マウンテンの山のメルローで一世を風靡したワイナリーです。ナパとソノマの境にワイナリーがあり、どちらのワインも作っている(ナパとソノマの両方のAVAがついたワインもあります)というのもユニークなワイナリーですが、今回のワインはソノマ側の畑のようです。Vintner’s Selectというキュベでワインメーカーのロバート・フォーリーの好きなロットも加えているとのこと。またカベルネ・ソーヴィニョンを20%入れています。
この日のワインでは一番リッチで濃厚なワイン。スパイシーでプルーンのような熟した果実の風味。酸もタンニンもしっかりしているところが山らしい。


これに合わせた料理がまた面白い。米ナスのナスの含め煮のキャラメリゼ。どんこ椎茸とジュンサイのゼリー掛け。ゼリーを含めて完全にヴィーガンな料理です。キャラメリゼの甘味がプライドの熟した果実感によく合います。


次のワインはブラインドで飲んだのですがまったくわかりませんでした。色はまあまあ濃く、果実味も結構あるのですが、香りはかなり熟成感があります。酸の強さもあり、90年代のメルローかと思ったのですが、実際には2012年のワイン。しかもフィリップ・メルカがボルドーのサンテミリオンで作ったワイン。カベルネ・フランが3分の2、メルローが3分の1です。いわれてみるとなるほどという感じ。ただ、果実味が強いところなど、ボルドーよりナパっぽい感じもします。


料理はこの日のゲストシェフの浅倉鼓太郎さん(銀座・鼓門)によるサーモンと黄韮のアンチョビソース。イクラはゆっくりと熱を入れて半熟卵状態になっており、ソースはそのイクラをさらに裏ごししたものという凝った料理。サーモンのかりかりの皮も美味しい。柑橘の風味がワインによく合います。


さて、豪華な会もついに最後のメルローです。コルギンのメルロー、ジュビレーション2002。コルギンは最近、ジュビレーションの名前でセカンドワインを作っていますが、これはセカンドではないジュビレーション。というか、そもそもコルギンがメルローを作っていたのも知らなかったです。2002年は自社畑IX(ナンバーナイン)エステートの最初のヴィンテージですが、そこのブドウなのかどうかもわかりません。
このワイン、素晴らしかったです。とにかく緻密でスムーズなテクスチャー。赤系・黒系の果実もまだしっかりしています。タンニンも極めてシルキー。「テクスチャーはごまかしが効かない」という話を今年だれかから聞いたのですが、それを思い出しました(誰が言っていたのか覚えている人教えてください)。


この日のもう一人のゲストシェフ古賀哲司さんによるブリスケのステーキ。火の入れ方がすばらしく、ブリスケを柔らかくうまみたっぷりに仕上げています。

これでワインは終了の予定でしたが…
もう1本くらい何か飲みましょうかというホストのありがたいお言葉で、セラーからワインを探します。コングスガードのメルローが2本あったので、メルローつながりでそれにしようかというところだったのですが、コングスガードならジャッジもありますよ、ということでセラーに2本あったザ・ジャッジの2004年をありがたくいただきました。


やや酸は低めですが、とろけるようなハチミツの風味がまるでデザートワインのよう(ワイン自体はドライです)。
デザートがゴルゴンゾーラの杏仁豆腐だったのですが、これともすごくよく合いました。

料理もワインもどれもすばらしく、めったに飲むことのできない熟成したメルローを堪能しました。カリフォルニアのメルローがこんなにきれいに熟成するというのも驚きでした。
メルローはカベルネ・ソーヴィニョンの陰にかくれて、なかなか位置付けが難しいブドウになっているところもありますが、メルローはメルローとしての良さがあることも改めて認識しました。
貴重な会に参加させていただき、ありがとうございました。
Date: 2023/1009 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
これまで紹介したワインは
ピゾーニファミリーの輸入元は中川ワインに
中川ワインの試飲会で美味しかったワイン(2023年秋)前半
中川ワインの試飲会で美味しかったワイン(2023年秋)中盤
をご覧ください。

最後は「特別試飲コーナー」という高額ワインばかりが並ぶコーナーです。
まずはコーナー最初の3つのシャルドネがどれも素晴らしかった。



トアー(Tor)とリリックス(Lyrix)はどちらもナパのカーネロスの畑。トアーはリッチでボリューム豊かなスタイル。リリックスはかつてセインツベリーで名を馳せたブラウン・ランチのブドウで、ワインメーカーはトーマス・リヴァース・ブラウン。2016年はデビュー・ヴィンテージで、今回2016~2018のワインが入荷しているようです。こちらは豊かな果実味と同時に酸もきれいでバランスが秀逸。ちなみに、このワイナリーは2023年以降、名前を変更するようです。
三つ目のシブミ・ノールはロシアン・リバー・ヴァレーのワイン。上記2つと比べると酸がより引き立った味わい。これも素晴らしい。


次は再びトアーからオークヴィルのカベルネ・ソーヴィニョン。4月に訪問したオークヴィルのTierra Rojaの畑のブドウを中心に使っています。ダラ・ヴァレの畑の真下にある畑。ワインはバランスが素晴らしい。1万8000円はこのクオリティでは安いでしょう。


ハーラン・エステートやプロモントリーの若木を使ったザ・マスコット。ハーランのメイデンや、ボンドのメイトリアークといった秀逸なセカンドワインがほぼ日本に入ってこなくなってしまった今、ハーラン系の廉価版はこれだけです。ハーランともプロモントリーとも違ったスタイルですが、リッチな果実味の説得力が圧倒的。美味しいです。


オークヴィルの銘醸畑ヴァイン・ヒル・ランチ(VHR)。ワイナリーとしてはやや地味な存在ですが、ここのワインはもっと高く評価されていいと思います。これもオークヴィルらしい緻密な果実味があり、バランスがいい。爆発的なワインではないですが、落ち着きを感じるワイン。


アミューズ・ヴーシュのレッドワインはメルロー主体のワインの中ではナパの最高峰と言っていいでしょう。秀逸な果実味に酸がきれいです。スケールの大きなワイン。


ト・カロン・ヴィンヤード・カンパニーのカベルネ・フランブレンド「エライザズ・キュベ」。カベルネ・フラン中心のワインです。カベルネ・フラン主体のワインとしては、ややリッチ方向に偏っている感じもありますが、それも含めて個人的には好きなワイン。

長くかかってしまいましたが、中川ワインの試飲会からの今回の紹介はここまでです。
Date: 2023/1007 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
中川ワインの試飲会から後半です。なお、ピゾーニのワインについては「ピゾーニファミリーの輸入元は中川ワインに」をご覧ください。


まずはジンファンデルから、ペドロンチェリ・ジンファンデル・ブッシュネル・ヴィンヤード2021。ペドロンチェリは以前から中川ワインが輸入していますが、今回ラベルが変わりました。ワインもこれまでより少し高級ワインをめざしているようです。このジンファンデルもかなりタニックでパワフル、複雑味があります。


ベッドロックのオールド・ヴァイン・ジンファンデルは個人的にも大好きなワイン。今回の2021年はテクスチャもよく、ジューシーで旨味にあふれています。


ジャム・セラーズのバターといえばシャルドネのイメージですが、カベルネ・ソーヴィニョンもあります。バターの名に恥じないリッチ系の味わいですごく美味しい。カベルネ・ソーヴィニヨンの入門として飲んでほしいワイン。


デコイの上級版リミテッド・シリーズのカベルネ・ソーヴィニョンは5000円以下カベルネ・ソーヴィニヨンの中でトップクラスの味わい。


シャルドネでも紹介した新入荷のリンカーン・セラーズのカベルネ・ソーヴィニョン。ナパのヨントヴィルのブドウを使っており、ヨントヴィルらしい酸の高さと複雑味があります。


これも新入荷のナパのティストリアというワイナリー。リンカーン・セラーズがヨントヴィルの中心部のブドウを使っているのに対し、こちらはヨントヴィルの西側。ドミナスなどのある方面です。非常にバランスよく複雑さもあり美味しい。リンカーンとどちらがいいかは迷いますが個人的にはこちらに軍配を上げます。


ホーニッグのカベルネ・ソーヴィニョンはナパのカベルネ・ソーヴィニョンの中でも定番といっていいでしょう・ラザフォードの自社畑のブドウを中心にしています。黒鉛のような緻密な風味。複雑さがあって美味しい。


2010年代にナパで急成長したカベルネ・ソーヴィニョンの一つがテイクン(Taken)でした。モダンなラベルと価格を上回る品質で一躍人気ブランドになりましたが、それを始めたのがジョシュ・フェルプス。ドミナスなどでワインメーカーを務めたクリス・フェルプスの子供です。テイクンはトリンチェロと一緒に始めたのですが、2017年に持ち分をトリンチェロに売却。新たに自身のワイナリーとして始めたのがグラウンデッド(Grounded)です。写真のワインはそのグラウンデッドのステディ・ステートというカベルネ・ソーヴィニョン。ナパ各地のブドウをブレンドしており、バランスよく美味しい。


今回は、これまでやや手薄に感じられていた5000円から1万円未満のカベルネ・ソーヴィニョンが非常に充実しています。新入荷のものも多く、大変勉強になりましたが、このキャッターウォウル(Caterwaul)がその真打かもしれません。なんとワインメーカーはトーマス・リヴァース・ブラウン。彼が作るカベルネ・ソーヴィニョンの中では最安ではないでしょうか。このブランドは彼がナパで6世代目の農家を継いだマット・ハーディンと組んで作るもの。キャッターウォウルというのは猫のギャアギャア鳴く声のことですが、二人の言い合う姿からこの名前を取ったそうです。それだけ真剣に取り組んでいるということなのでしょう。ブドウはハーディンの管理するポープ・ヴァレーやスタッグスリープなどの畑のものを使っています。トーマス・リヴァース・ブラウンらしい濃密な果実味ときれいな酸がありレベルが高い。彼のワインの入門としてもお薦めです。


そのトーマス・リヴァース・ブラウンといえばシュレーダーで名を馳せたわけですが、シュレーダーの廉価版で昨年はワイン・スペクテーターで年間1位を取って話題を呼んだのがダブル・ダイヤモンド。新入荷の2021年からはラベルが変わりました。相変わらずリッチで濃厚な味わい。世界で唯一モンダヴィ(コンステレーション)のト・カロンとベクストファー・ト・カロンの両方のブドウを使った贅沢なワイン。


スタッグリンからは今回営業のアンバー・ミーナさんが来日。別ブースでの試飲でした。スタッグリンはナパのラザフォードを代表するワイナリーの一つ。カベルネ・ソーヴィニョンとシャルドネをファーストとセカンド(サルース)の2つだけ作るというシンプルな製品構成。どれもナパらしい素晴らしい果実味を持ち、洗練さも感じさせる味わいです。今回知ったのはシャルドネはサルースとスタッグリンで使っているクローンが違うとのこと。サルースはマウント・エデンなどのカリフォルニアで使われているクローン、スタッグリンはムルソー由来のクローンだそうです。どちらもMLFはなし。リッチでパワフルですがきれいな味わいなのはそのためでしょう。


スタッグリンのカベルネ・ソーヴィニョンは洗練された味わいが特徴。ラザフォードのマヤカマス側のいわゆるラザフォード・ベンチのワインとしてトップの一つでしょう。おそらくライバルはイングルヌックのルビコンだと思いますが、ルビコンがボルドースタイルのクラシックな味わいなのに対してスタッグリンはモダンナパ系の味わい。セカンドのサルースもファーストほどの複雑さはないものの素晴らしいワインです。

今日の記事で最後までいくつもりでしたが、寝る時間がなくなりそうなので、残りは次の記事で!
Date: 2023/1006 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
試飲会レポート4連続の最後は中川ワインです。こちらは品種別に並んでいます。


マックマニスのヴィオニエはヴィオニエという割と難しい品種を1000円台でうまくまとめたワイン。ヴィオニエらしさもちゃんとあり、美味しいです。


アルマ・デ・カトレアのソーヴィニョン・ブランはワインスペクテーターの年間トップ100にも入ったことがあるワイン。エレガントで旨味もあります。素晴らしい。


アルマ・デ・カトレアを作っているビビアナ・ゴンザレス・レーヴの上位品がこちらのシェアード・ノーツ。ソーヴィニョン・ブランではトップクラスの生産者です。ボルドータイプのこちらはセミヨンが20%ブレンドされています。リッチ感がありながらも極めてエレガント。新樽100%なのに樽の風味を最小限にしか感じないのもすごいワインです。


新入荷のナパのワイナリー「リンカーン・セラーズ」。シャルドネはリッチ系の味わい。4000円台とは思えないほどの高級感があります。瓶熟を4年間してから出荷するというユニークなワイナリー。ほどよい熟成が高級感につながっています。


ハドソンのシャルドネは今年になってから6回くらい飲んでいますが、いつ飲んでもすばらしいワイン。リッチでクリーミーですが下品さの一切ないワイン。カリフォルニアのシャルドネのすばらしさを体現しているワインの一つだと思います。


オー・ボン・クリマの「ミッション・ラベル」ピノ・ノワール2021。ミッション・ラベルはオー・ボン・クリマが中川ワイン用に特別に作っているワインで、実は銘醸畑ビエン・ナシードのブドウを100%使っているという価格に見合わないワイン。きれいでバランスがいいです。


アルマ・デ・カトレアのピノ・ノワール。チャーミングな味わいで果実味のおいしさが半端ないです。


オー・ボン・クリマの「ノックス・アレキサンダー」ピノ・ノワール2019。先ほどのミッションラベルと同じビエン・ナシードのワインですが、こちらは比較的ボールドな味わい。酸もきれいです。


ウエスト・ソノマ・コーストの北端にあるアストンのセカンドのピノ・ノワール。タンニンもあり複雑できれい。ウエスト・ソノマ・コーストの一つの「らしさ」を体現しているワインです。


先ほどのノックス・アレキサンダーと並ぶオー・ボン・クリマのフラッグシップ「イザベル」。さまざまな畑のブレンドなので「カリフォルニア」になります。バランスよい味わい。


アストンのファースト・ワイン2018年。以前飲んだときはセカンドとの差があまりなく感じたのですが、今回は瓶熟が進んだためか劇的に美味。素晴らしいです。


バークレーに新たにワイナリーを作ったというノリアの新作はロシアン・リバー・ヴァレーの「ウミノ」という畑。バランスよく酸がきれいで果実味もほどよくあります。

前半はここまで。
後半では濃い系の赤を中心にお届けします。
Date: 2023/1005 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments

試飲会レポート第3弾は都光です。都光の試飲会ではカリフォルニアワインのブースが机2つ分あったのですが、実はそのワインの説明役として、私自身がサーブ差し上げました。ワインの説明をしながら、空になりそうなボトルがあったら次のを抜栓しておいておいたり、なかなか忙しくも充実した時間を過ごさせていただきました。

ということで、今回は美味しかったワインではなく、私が担当した範囲のワイン全般を紹介する形にします。

写真の左から順に行きます。

まずはヘス。都光といえばヘスを思い出すくらい定番アイテムになっています。ヘスの中でもいくつかのブランドに分かれていますが、最初はシャーテイル・ランチ。レストラン向けに作られたという、コスパの高さに加えて、食事にオールマイティに合わせやすい中庸さを持ったワインです。

・ヘス・シャーテイル・ランチス カベルネ・ソーヴィニョン(4500円)
果実味の豊かさが印象的なワイン。バランスよく飲みやすい。

・ヘス・シャーテイル・ランチス ピノ・ノワール(4500円)
今回私が担当した範囲ではピノ・ノワールはこれ1本。ちょっと甘やかさのある果実味豊かなタイプ。

・ヘス・シャーテイル・ランチス シャルドネ(3800円)
バランスよくエレガントさもあるシャルドネ。樽も比較的しっかりきいたおいしいシャルドネです。

ここからはヘスの本拠地であるナパヴァレーのワインです。

・ヘス・アローミ・カベルネ・ソーヴィニヨン(8500円)
ヘスはナパ・ヴァレーのマウント・ヴィーダーに自社畑があり、このほかナパの北東地域にも、畑があります。アローミは後者のワインでややリッチなスタイル。

・ヘス・ナパヴァレー・シャルドネ(6500円)
結構きれいな作りです。樽も利いています。おいしい

・ヘス・マウント・ヴィーダー・カベルネ・ソーヴィニョン(25000円)
ヘスを代表するワインといっていいでしょう。山のワインらしくしっかりしたタンニンとストラクチャーがあるワイン素晴らしいです。

・ヘス・アイロン・コーラル・カベルネ・ソーヴィニョン(18000円)
マウント・ヴィーダーの畑とヘスのアローミで使っている平地のブドウをブレンドしたもの。味わいもリッチさと複雑さがほどよくあっていい感じです。

次はヘスの「ライオン」シリーズ。ライオン・シリーズはスケアクロウなどのワインメーカーとして知られるセリア・ウェルチがコンサルタントとして入っており、洗練された味わいが特徴になっています。

・ヘス・ライオン・テイマー・カベルネ・ソーヴィニヨン(15000円)
このカベルネ・ソーヴィニョンはちょっとだけマルベックがアクセントになっているワイン。こなれたタンニンやチョコレートのような風味が印象に残ります。

・ヘス・パンテラ・シャルドネ(12000円)
ライオン・シリーズのシャルドネの中では下位(といっても1万円超えます)のワイン。リッチでスムーズ、酸もきれい。バランスよく余韻長く素晴らしい。個人的にはこの日のベストといってもいいくらい美味しいワインでした。

・ヘス・ライオン・カベルネ・ソーヴィニヨン(60000円)
6万円という、今回の担当範囲では一番高額なワイン。これを目当てに試飲にくる方もたくさんいらっしゃいます。なので少しずつ注がせていただきました。マルベックが16%くらい入っています。なんといっても緻密で滑らかなテクスチャが素晴らしいワイン。濃厚ですが重さを感じない。余韻も長いです。さすがの美味しさでした。

・ヘス・ライオネス・シャルドネ(25000円)
とてもリッチで果実味豊かなシャルドネ。風味の強さはさすがです。

次は新入荷のワイナリーでバージェス(Burgess)とインク・グレード(Ink Grade)。どちらも同じグループのワイナリーで、ハイツ・セラーなどと同様、カールトン・マッコイが率いています。ナパでも注目されているグループのワイナリー。

バージェスはハウエル・マウンテンの山沿いに畑があります(ハウエル・マウンテンAVAには入っていません)。斜度最大29度というナパではかなりの急斜面に作られたソレンソンズ・ヴィンヤードが中心になっています。前身となったワイナリーがスーヴェランで、ここは1960年代に、のちにパリスの審判で脚光を浴びることになるウォーレン・ウィニアルスキーやマイク・ガーギッチがともに修業したワイナリーでした。現在のワインメーカーはメーガン・ゾベックという人で、スクリーミング・イーグルでアシスタントをしていたそうです。

・バージェス・コンタディナ・カベルネ・ソーヴィニヨン(15000円)
バージェスの中ではエントリー・レベルになるカベルネ・ソーヴィニヨン。ストラクチャがあり、ハーブの風味などエレガント系の味わいが山らしさになっています。

・バージェス・ソレンソンズ・リザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨン(40000円)。
ハウエル・マウンテンの山沿いの畑の中でも古い樹齢(1979年植樹)のブドウを使ったワイン。山のワインとしては滑らかさを感じます。

・バージェス・ヒルサイド・ヴィンヤーズ・カベルネ・ソーヴィニヨン(38000円)
最も山らしいストラクチャーと力強さ、エレガントな風味を持ったワイン。ヘスのマウント・ヴィーダーと比べると熟した果実の力強さをより感じます。

インク・グレードもナパのハウエル・マウンテン(こちらはAVAに含まれています)に畑を持つワイナリー。ラベルもおしゃれです。

・インク・グレード ナパ・ヴァレー アンドソル(20000円)
ジンファンデルにカベルネ・ソーヴィニョンをブレンドしたユニークなワイン。ジンファンデルの芳醇さにカベルネ・ソーヴィニョンの力強さがほどよくマッチしています。

・インク・グレード ナパ・ヴァレー カベルネソーヴィニヨン(30000円)
とても複雑味のあるカベルネ・ソーヴィニヨン。ヴァレーフロアにハウエル・マウンテンのブドウをブレンドしています。

・インク・グレード ハウエル・マウンテン カベルネソーヴィニヨン(50000円)
ハウエル・マウンテンらしい果実の濃密さとタンニンを持つすばらしいカベルネソーヴィニヨン。

私の担当はここまででしたが、隣にあったパルマッツのワインも少し試飲させていただきました。
・セダル・クノール・カベルネ・ソーヴィニヨン(18000円)
パルマッツではセカンドに相当するワインですが、非常にバランスよくよくできたワインでセカンド感が皆無です。

・パルマッツ アマリア シャルドネ(19000円)
ナパらしいふくよかさと、エレガントさを併せ持ったシャルドネ。そこはかとなくクラシックな味わいがあります。

・パルマッツ・カベルネ・ソーヴィニヨン2019(38000円)
以前飲んだときにはまだまだ固いなあと感じたワインですが、やっと本領を発揮してきた感があります。クームズヴィルというナパでは比較的涼しく、またヴァカ山脈系の鉄分の多い土壌の流れもひくというユニークなテロワールを感じさせるワイン。
Date: 2023/1004 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
布袋ワインズの試飲会から美味しかった、気になったワインを報告します。

基本的には品種別に並んでいます。まずはソーヴィニョン・ブランから。

新入荷のワイナリーShannon Family of Winesから「Shannon Ridge(シャノンリッジ)」と「Clay Shannon(クレイ・シャノン)」の2つのブランドのソーヴィニヨン・ブランです。このワイナリーはナパの北東にあるレイク・カウンティに1000エーカーもの有機栽培の自社畑を所有しています。レイク・カウンティはナパよりも内陸なので海の影響はほとんど受けませんが、標高が高いところが多く、冷涼感も得られます。ナパの開発が年々難しくなる中で、ナパを補完する存在としてのレイク・カウンティの重要さはこれからかなり増してくるだろうと思っています。Shannon Ridgeのブランドは標高が高いところの畑、Clay Shannonの方はトップレベルという位置付けのようです。Shannon Ridgeのソーヴィニヨン・ブランはリッチ感あり、Clay Shannonはさらにリッチ。あっさり系のソーヴィニヨン・ブランではなく、ナパのスタイルに近いソーヴィニヨン・ブランです。


続いて同じくクレイ・シャノンのシャルドネ。複雑さがあり、高級感ある味わいです。3900円は安い。


ジョーダンはカベルネ・ソーヴィニョンとシャルドネ1種ずつだけを作ってきたワイナリーです。かなり濃い系のイメージがありましたが、実際には相当エレガント。おいしいです。


フラワーズのシャルドネ。バランスの良さが光ります。


コスタ・ブラウンのダン・コスタが新たに始めたワイナリー。このピノ・ノワールはリッチなスタイルでロシアン・リバー・ヴァレーらしい味わい。


ザンダー・ソーレンのワインについては「カリフォルニアのピノの粋を表現する新ワイナリー、ザンダー・ソーレン」で紹介していますが、改めて試飲。このユーキ・ヴィンヤードはフリーマンの持つ畑。外部にブドウを供給するのはこれが初めてです。非常に得れたんとで香りが広がります。ウエスト・ソノマ・コーストらしさもある素晴らしいピノ・ノワール


キャッスル・ロックのピノ・ノワールはコスパ抜群。このメンドシーノのピノ・ノワールはバランスの良さが光ります。


平林園枝さんが作るシックス・クローヴズのピノ・ノワール アルダー・スプリングズ・ヴィンヤード。アルダー・スプリングズはメンドシーノの北方にある素晴らしい畑。畑のエネルギーを感じるワイン。


フラワーズのピノ・ノワールはウエスト・ソノマ・コーストの中でもフォート・ロス シーヴューにあるシー・ヴュー・リッジなどのブドウをブレンドしたもの。酸のきれいさ、力強さなど総合力がすばらしい。


シャノン・リッジのカベルネ・ソーヴィニョン。芳醇でテクスチャもあり、2000円台とは思えないハイレベル。


こちらの「OVIS」もシャノン・リッジと同じワイナリーのブランド。ラテン語で羊の意味で、サスティナブルな栽培のために活躍する羊へのオマージュ。リッチな味わいの高級カベルネ・ソーヴィニョン。


ファーディナンドはコングスガードのジェネラル・マネジャによるワイナリー。スペインなどの品種を中心に宇t食っています。このテンプラニーリョは3ヴィンテージのワインをブレンドし、NVとして販売。タンニンも酸もレベルが高いワイン。

最後はライブラリー・ワインとして熟成したものを提供するワインです。

レイミーのクラレット2008。クラシックな作り。美味しいです。


実はシルヴァー・オークを布袋さんが扱っていたのを知りませんでした。20年熟成したアレキサンダー・ヴァレーのワインは予想以上にバランスよく美味しい。

今回は特にシャノン・リッジのグループのコスパが目立ちました。お薦めです。
Date: 2023/1003 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
アイコニックワイン・ジャパンの試飲会からよかったワインを紹介します。

地域別に並んでおり、サンタ・バーバラから開始です。

まずは新入荷のワイン。

サンタ・バーバラの銘醸畑ビエン・ナシードのオーナーが持つ、もう一つの銘醸畑がソロモン・ヒルズ。ビエン・ナシードよりも海に近い冷涼なところにあります。ワインの味わいも、シャルドネ、ピノ・ノワールともにビエン・ナシードのエステート以上に酸のきれいさが目立ちます。リッチさも求めるならビエン・ナシード、酸のきれいさを重視するならソロモン・ヒルズをお薦めします。


メルヴィルというとピノ・ノワールのイメージが強いと思いますが、今回はシャルドネとシラーがよかったです。シャルドネはきれいでエレガント。シラーも旨味あり、高級感を感じます。

サンタ・バーバラに移ります。

写真がぼけていてすみませんが、ユニオン・サクレ(Union Sacre)のオレンジワイン。品種はゲヴェルツトラミネールです。うまみたっぷりで美味しい。癖はないので自然派が苦手な人にもおすすめです。


これも写真がぼけぼけですみません。リアルな動物の絵のラベルが特徴的なファブリスト(Fableist)のメルローとカベルネ・ソーヴィニョン。メルローはやわらかさがあり酸もきれい、カベルネ・ソーヴィニョンはジューシーでテクスチャーも魅力的です。


写真がひどすぎて嫌になりますが、フィールド・レコーディングスの新作フィクション(Fiction)。ジンファンデル40%、シャルボノ20%、アリカンテ14%、シラー11%、カベルネ・ソーヴィニョン8%、カベルネ・フラン7%というユニークなブレンド。ブレンドから味わいが想像できないと思いますが、ジューシーでバランスよい味わい。


もう写真は雰囲気ということでお願いします。グランドワーク(Groundwork)のグルナッシュ・ブラン。華やかな味わいで美味しい。


パソ・ロブレスの老舗ワイナリー「エバレー(Eberle)」のシラー、スタインベック・ヴィンヤード。5900円は安くはないですが、パソの良質なシラーの代表格だと思います。リッチでタンニンもしっかり。グリップ感のあるシラー。


ピーチー・キャニオン(Peachy Canyon)のインクレディブル・レッド(Incredible Red)もパソを代表するコスパワインと言っていいでしょう。ジンファンデルベースですが濃い甘ではなく、ジューシーな味わいとバランスの良さが目立ちます。


レッジ(Ledge)はまだまだ知られていないと思いますが、パソ・ロブレスのシラー生産者の大注目株です。このMCAキュベは、ちょっと驚くようなワイン。なんとパソ・ロブレスの銘醸畑ジェームズ・ベリーと、サンタ・バーバラのビエン・ナシードのブドウをブレンドしています。カベルネに例えて言うならナパのト・カロンと、サンタ・クルーズ・マウンテンズのリッジのモンテ・ベッロをブレンドしたようなものといえばいいでしょうか。むちゃくちゃバランスもよく、ものすごく芳醇。7500円のレベルではありません。ローヌを得意とするJeb Dunnackも95点をつけています。


お次はモントレー。新入荷のモントーヤ(Montoya)。ピノ・ノワールはモントレーの中では比較的温暖なアロヨ・セコ産のブドウを使っていますが、ジューシーできれいな味わい。3200円はコスパ高いです。

最後はナパです。

カモミ(Ca'momi)はナパのコスパワインとして定番ですが、シャルドネとメルローが特によかったです。シャルドネはリッチ系で果実感爆発。メルローはまろやかな味わいでバランスよく美味しいです。


人気ブランド689セラーズが作る「ラッキー・ドロー」カベルネ・ソーヴィニョン。3300円はコスパいいです。リッチでタニック。


これもナパとソノマ有数のコスパワイナリー「マイケル・ポーザン(Michael Pozzan)」が作るジアポーザ(Giapoza)。このカベルネ・ソーヴィニョンはソノマのアレキサンダー・ヴァレーのブドウを30%使用しているとのこと。ラベルはすっきりしたイメージですが、味わいはストラクチャーがしっかりした本格派。


新入荷のプロヴィナンス(Provenance)。ナパで1999年に創設されたワイナリーで現在のオーナーはローダイをベースにするロンバルディ家。カベルネ・ソーヴィニョンとメルローと入っていますが、個人的にはメルローが特に好印象でした。芳醇でストラクチャーもしっかりあります。2017年はジェームズ・サックリングが94点、2018年は同じく93点をつけています。


こちらも新入荷のライド&リドゥン(Ride & Ridden)。大人気のスラムダンクと同じ会社が作っています。こちらはナパのカベルネ・ソーヴィニョンでロデオの写真が印象的です。味わいもクラシックでスラムダンクとは対照的、面白いワインです。


最後のワインも驚きました。ドミナスなどがあるナパのヨントヴィルのワインで5900円。ブドウの出所を明かさないことなどを条件に作っているワインとのことでバーマイスター(Burmeister)というワイナリーの情報もほぼ不明です。ヨントヴィルらしく、少し冷涼感のある味わいがとてもいいです。


Date: 2023/0927 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments

ilovecalwineの海老原さんが亡くなったことで、実質一人でやられていた同社もなくなり、同社が輸入していたワインの輸入元も宙に浮いた状態になっていましたが、ピゾーニ(Pisoni)ファミリーのワイナリーについては中川ワインが輸入することが判明しました。

扱うのはピゾーニブランドのほか、ピゾーニ・ヴィンヤード以外のワインのブランド「ルチア(Lucia)」、ピノやシャルドネ以外の買いブドウで作る「ルーシー(Lucy)」です。なお、ilovecalwineではLuciaを現地の発音に合わせて「ルシア」としていましたが、中川ワインでは「ルチア」名にしたようです。

今回、ピゾーニのピノ・ノワール以上にレアで、ごくたまにしか入荷しないピゾーニのシャルドネも入っています。

輸入アイテムは
ルーシー ピコ・ブランコ2022(ピノグリとピノブランのブレンド)5200円
ルーシー ロゼ・オブ・ピノ・ノワール2022 4900円
ルーシー ガメイ・ノワール2022 5900円
ルチア ピノ・ノワール エステート2021 10000円
ルチア ピノ・ノワール ソベラネス2021 12400円
ルチア ピノ・ノワール ゲイリーズ2021 14000円
ルチア シラー ソベラネス2021 11000円
ピゾーニ シャルドネ2021 17000円
ピゾーニ ピノ・ノワール2021 20000円

私の試飲結果からお薦めのものを挙げていくと、まずロゼ・オブ・ピノ・ノワール。ピノ・ノワールのジューシーな果実味を持ち、とてもきれいな味わいのロゼ。満足感高いです。

ルチアのエステート・ピノ・ノワールはエントリーレベルのピノ・ノワールになりますが、非常に複雑さもある作り。味わい的には上級品に負けません。

ルチアのゲイリーズは、試飲会の他のワインを含めてもトップに感じた素晴らしいワイン。ゲイリーズは、これまでピゾーニに似た味わいだけどピゾーニほどの洗練さがないと思うことや、ややボールドな味わいに行き過ぎに感じることもありましたが、2021は酸もきれいで味わいの深みも抜群。素晴らしい仕上がりになっています。

ピゾーニのシャルドネはリッチ系でクリーミーな味わいですが、酸もよくバランス取れて素晴らしい味わい。
ピゾーニのピノ・ノワールもピゾーニのイメージとは少し違うかもしれませんが、バランスの良さが光ります。ただ、やはりこれは少し熟成させた方がいいのではないかと思います。

柳屋では期せずしてお薦めピノが3つセットになっています。真似したみたいでちょっと悔しいですが、お薦めです。



Date: 2023/0922 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
Comments
ナパのシェーファー(Shafer)が2022年2月に韓国の新世界百貨店のグループの会社に買収されて約1年半。これまでワイナリーを率いてきたシェーファー家のダグ・シェーファーもワイナリーを離れ、新体制が動き始めました。

とはいえ、ワインメーカーのイライアス・フェルナンデスは40年間シェーファー一筋でワインを作っており、今後も続ける予定です。ワイン造り自体が根本的に変わることはありません。

先週、ジェネラルマネージャーのマシュー・シャープ氏が初来日し、ランチで話を伺いました。店は銀座のWolfgang’s Steakhouse Teppan。熟成肉で知られるウルフギャング・ステーキハウスが手掛ける鉄板焼きスタイルのレストランです。


シェーファーのマシュー・シャープGM。シェーファーのワインについては「飲んだときにバランスを見てほしい。ニューワールドの味わいとオールドワールドのフィニッシュを両立させている」と語りました。


新オーナーに代わってもワイン造りは変わらないと書きましたが、実際には変わったところもあります。醸造設備を増強し、畑も購入しました。それだけ聞くと、生産量を増やしてお金儲けしたいだけ、と思うかもしれませんが目的はだいぶ異なります。

ナパでは2017年、2020年と大きな火事の影響を受けました。シェーファーは2017年の火事ではワイナリーのすぐ近くまで火が押し寄せ、ブドウ畑が防火帯になることでようやく難を逃れました(レンタルハウスが一つ燃えましたが)。2020年は火事からの煙の影響で赤ワインの生産をすべてやめました。それだけでなく温暖化の影響で、極端な熱波が押し寄せる危険なども増えており、収穫時期がそれらの影響で大きく変わることがあり得ます。熱波が来るからその前に収穫をしたい、となってもワイナリーの醸造設備は収穫時期にフル回転(発酵はステンレスタンクで行い、その後熟成で樽に移します)していますから、収穫したブドウを発酵させるタンクが足りないといったことになります。

醸造設備の増強はそういった状況に対応するためのことで、例えばすべてのブドウの収穫がわずか1週間の間に行われたとしても対応できるようにしたとのことです。また、ブドウの選果に使うオプティカルソーティングの機械(ベルトコンベアの上にブドウの実を流し、光を当てて未熟な実やゴミなどを発見しはじき飛ばす)もいいものに変え、選果のプロセスも早く済むようにしています。シェーファーでは温暖化の影響としては今のところ収穫時期が一番大きいとしており、今回の増強に踏み切りました。

また、畑については2022年8月にスタッグス・リープの自社畑「ホームランチ」に隣接する「Woldfoote」という9ヘクタールの畑を買収しており、今年2月にはアトラス・ピークで「Altimeter」という4ヘクタールの畑を購入しています。どちらもカベルネ・ソーヴィニョンの畑です。「Woldfoote」は「ホームランチ」自体の拡張ということで極めて貴重な畑を手に入れた形です。元の持ち主はスクリーミング・イーグルの創設者のジーン・フィリップスとのこと。イライアスは今年2月の畑の買収時に「ワインメーカーとしてトップの畑から一番いいブドウだけを選べるというのは夢みたいなことだ。今回の購入で、どんなヴィネテージでも最高の状態のカベルネ・ソーヴィニヨンを手に入れられる。この買収の意味は品質に尽きる」と語っています。

また、畑は樹齢は平均20年くらいとのことで、樹齢が高く収量がエーカーあたり0.5トンなど極端に減ってしまうものは植え替えていきます。植え替えると数年はワインに使えませんから一度に畑全体を植え替えるのではなくローテーションしていく形をとります。今回ホームランチが拡張されたことで、そのローテーションがよりやりやすくなったと言っていました。

シェーファーの畑は全体で250エーカーあり、うち70エーカーがホームランチということになります。

そろそろワインの話に移りましょう。

ランチの最初のワインはシャルドネのレッド・ショルダー・ランチ2021(希望小売価格1万1000円)です。レッド・ショルダー・ランチというのはカーネロスにある畑の名前で「レッド・ショルダー・ホーク」(日本名はカタアカノスリ)というタカの一種が住んでいることから名づけられたそうです。タカは1日にモグラ1匹とネズミ3匹を捕まえると言われており、これら根をかじる動物から畑を守る役割をしています。サスティナブルな栽培をする畑の多くが猛禽類を使っています。

このシャルドネ、マロラクティック発酵なしでずっと作られてきており、フルーツ感と生き生きした酸味を特徴としています。私もナパのシャルドネの中で大好きなもののひとつです。ただ、ワイン造りはここ5年くらいで変わったところもあります。以前は熟成を新樽のみで行っていたのですが、2015年からだんだん新樽率を下げていって、現在は新樽率40%程度になっています。

新樽率が下がったためか、より果実味がくっきりと感じられるようになった感じがあります。オレンジなどの熟度の高い柑橘の風味、酸は高く味わいが口中に広がります。長い余韻。樽の風味は前面に出てこず、背後を支えている印象です。なお、ブドウの収穫時期はBrix24くらいを見極めているとのことでした。それを超えていくとバランスが崩れ、ワインの熟成もあまりしなくなるとのことです。



次のワインはTD-9 2021(1万5000円)。実は今回一番変わったのがこのワイン。品種表示がカベルネ・ソーヴィニョンになったのです。

元々TD-9はメルローの代わりに作られたワインでした。シェーファーのメルローはナパのメルローの中でも人気が高かったのですが、シェーファーにとっては頭痛の種でした。自社畑はあるのですが、収量が安定せず、購入したブドウも合わせて作られており、品質を保つのに苦労していたのです。そこでメルローという縛りをなくして「とにかく美味しいブレンドを」として作ったのがTD-9。名前はシェーファー家がナパに来て最初に買ったトラクターから来ています。

2015年の登場時期はメルローが半分以上入っていましたが、よい品質のワインを突き詰めた結果、次第にカベルネ・ソーヴィニョンの比率が上がり、ついに今回品種名を書くことになりました。これでシェーファーのカベルネソーヴィニヨンは3種類になり、そのエントリーレベルの位置付けです。ワインは8週間前に瓶詰めされたばかりで日本が最初のお披露目です。

セパージュはカベルネ・ソーヴィニヨン76%、メルロー11%、プティ・ヴェルド10%、マルベック3%。

ブラックベリー、カシスの果実味、カベルネ・ソーヴィニョンが増えたせいか黒鉛ぽさが増しています。ちょっと柔らかさがあるのは、これまでのTD-9を彷彿とさせます。やや強めのタンニンがありますが、非常にこなれています。フルボディでシェーファーらしい味わい。なお熟成は12カ月。新樽100%でアリエルとトロンセという2種類の樽を使っています。




次はワンポイントファイブ2021。セカンドの位置付けのカベルネ・ソーヴィニョンです。ボーダーラインと呼んでいるスタッグス・リープ・ディストリクトの境界線のごくわずか南にある畑のブドウとホームランチのブドウを使っています。実はこの畑も少し拡張しています。ナパでは土砂の流出を防ぐため、斜面の畑の開発はほぼ許可が得られなくなっています。ただ、この畑の敷地の中でこれまでブドウ畑になっていなかったところが2017年の火事で焼けてしまい、植栽がなくなってしまったので、その部分を新たな畑としてブドウを植えられるようになったそうです。なお、今後はアトラス・ピークの畑もワンポイントファイブに加わっていく予定です。

20カ月新樽熟成。セパージュは94%カベルネ・ソーヴィニョン、3%プティ・ヴェルド、 2%メルロー、1%マルベック。7月に瓶詰めしたばかりです。

果実の風味はTD-9に似ていますが、より黒鉛のニュアンスが増えているのと、酸味が強いこと、タンニンがよりきめこまかいのが特徴です。非常に良質のカベルネ・ソーヴィニョン。



最後はフラッグシップのヒルサイドセレクト2018(7万2000円)。値段がまた上がってしまいましたが「オーパス・ワンより25%安いくらいを目指している」とのこと。

ヒルサイドセレクトはホームランチのブドウを100%使っており、セパージュもカベルネ・ソーヴィニョン100%を毎年続けています。このワインを飲むたびに思うのは、「カベルネ・ソーヴィニョンというブドウの美味しさを最高の形で分からせてくれるワイン」だということです。ボルドーのワインはもちろんのこと、ナパの最高級のカベルネ・ソーヴィニョンも多くは複数品種をブレンドしています。それは味わいの安定性(ヴィンテージごとの差異を減らす)ことや、複雑味を出すことなど、目的があってしていることですが、カベルネ・ソーヴィニョンはそれ単体でも素晴らしい味わいなのです。ヒルサイドセレクトはその最高傑作の一つです。

ワンポイントファイブも十分美味しいのですが、ヒルサイドセレクトは香りのレベルが違います。酸もよりしっかりし、完璧なストラクチャーとテクスチャーを持っています。酸が強いのはスタッグスリープの火山性の土壌が寄与しているとのことでした。いつもながら素晴らしいワインです。

なお32カ月新樽熟成し、その後瓶熟1年を経ています。

お肉も堪能しました。




カベルネ・ソーヴィニョン100%の質実剛健な味わいには脂たっぷりの料理よりも、これくらい研ぎ澄まされたシンプルなステーキの方が合うのかもしれないと感じました。

布袋ワインズさん、ありがとうございました。

Date: 2023/0921 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
9月15日に東京・大手町のパレスホテル東京グランドキッチンで開催された「ABC of Napa Valley」イベントに参加してきました。

「ABC」とはAnything But ChardonnayあるいはAnything But Cabernet Sauvignonの略。1980年代から90年代にかけて、濃厚で画一的なスタイルのシャルドネやカベルネ・ソーヴィニョンばかりが増えたことへのアンチテーゼとして使われるようになった言葉です。

今回は、ナパヴァレーワイン・ベスト・ソムリエ・アンバサダー2023の山田琢馬ソムリエが選んだシャルドネとカベルネ・ソーヴィニョン以外のナパワイン5種をペアリング・ディナーで楽しむという趣向です。琢馬君はソムリエとしての技量はもちろん、ペアリングにも秀でており、2月の試験ではペアリングの賞を獲得しています。普段のグランドキッチンのメニューを合わせるのではなく、今回のワインのためにシェフと特別メニューを考案してくれました。


挨拶をするナパヴァレー・ヴィントナーズの若下さんと琢馬君

写真を撮るのを忘れましたが、乾杯のワインはスティーブ・マサイアソンのロゼ。グルナッシュやバルベーラ、クノワーズなどをブレンドしています。僭越ながら乾杯の挨拶は私がさせていただきました。


ペアリング・ディナーの1本目はフロッグス・リープのソーヴィニヨン・ブラン。フロッグス・リープといえばナパの有機栽培のワイナリーの先駆けとして知られています。ラザフォードの畑などのソーヴィニヨン・ブランを使っており、樽は不使用。ステンレスタンクで発酵していますが、2%だけはコンクリートエッグを使っています。樽を使っていないスタイルですが、果実味も豊かでナパらしい良さを持った、ニュージーランドともロワールともスタイルの異なるソーヴィニヨン・ブランです。

合わせた料理はこちら。「スモールアペタイザー」とあります。フィンガーフードですが緑色に見えているのはワカモレ。アボカド・ベースのメキシカンなディップですが、メキシカンで食べるものほどスパイシーではありません。ちょっとひねりが効いているのが上にちょっと粗塩かかっていること。ライムの酸味と粗塩のミネラル感がソーヴィニヨン・ブランの酸味やミネラル感に合います。アボカド好きとしてはとてもよかったのですが、唯一の難点は一口でなくなってしまうこと。もうちょっとボリュームがあると言うことないのですが。


2本目はロゼ。ハイジ・バレットが作るアミューズ・ブーシュの「Prêt à Boire Rosé」2022

このロゼ、むちゃくちゃ美味しいです。今まで飲んだロゼの中でベストかもしれません。フレッシュ感を保ちながら味わいの深みも感じます。品種はグルナッシュとシラー。南仏的なダイレクトプレスだということですが、それにしては色も濃いです。ワインの名前の意味は「Ready to drink」だとのこと。

料理は「マグロのカルパッチョ ビーツのマリネ 赤紫蘇のヴィネグレット」
ペアリングのポイントは以下の4点とのこと。
・ワインの持つ真っ直ぐでフレッシュな酸× 酸の効いた赤紫蘇のヴィネグレット
・黒ブドウからくる厚みと余韻のほろ苦さ× マグロの厚みと脂質・粗く削った塩の塩味
・わずかに感じるタンニン× マグロの鉄分
・ワインの清涼感× マグロのハーバルなトーン
同じ品種のロゼでも乾杯のマサイアソンはもっと爽やかさが目立つスタイル。それだとこの料理には合わなかったかもしれません。素晴らしい。


3本目のワインはマサイアソンの「リボッラ・ジャッラ」。白ワインですがスキンコンタクトによって色を引き出した「オレンジ・ワイン」になっています。オレンジ・ワインらしいちょっとグリップの効いた味わいはそのまま飲むよりも料理を求めています。


料理はこちらです。「的鯛のカダイフ 牛蒡のブルーテ」

ポイントは
・ワインの滋味深いニュアンス× 牛蒡の土っぽさ
・ワイン全体を支える綺麗な酸× ソースの持つ酸味
・長いスキンコンタクトからくるタンニン× カダイフの塩気や的鯛の質感
だそうです。ちなみに「カダイフ」とは魚を包んでいる細い麺状の衣。ブルーテは「ホワイトルー(小麦粉とバターを焦げ色がつかないように炒めたもの)をフォンで溶きのばし、煮詰めて作ったソース」だそうです。

個人的にはこのペアリングが一番気に入りました。特に牛蒡のソースが、オレンジワインのスキンコンタクトからくる苦味をきれいにくるんでくれます。カダイフの食感もちょっとグリップ感のある味わいにマッチしています。

最後の赤ワイン2本はブラインドで来場者にセパージュを当ててもらうという趣向。選択式だったのでかなり正解率は高かったもようです。


4本目はマルベック、ワイナリーは「ザ・ヴァイス」です。クームズヴィルの畑。ナパでマルベック単体のワイン自体、それほど見かけませんが、特にクームズヴィルのマルベックを飲んだのはたぶん初めてだと思います。どちらかというともっと温暖な地域でチョコレートのような濃厚な果実味を持つものが多いイメージですが、これは冷涼感もあって面白い。マルベックも多様化が進んでいるのでしょうか。


5本目はカベルネ・フラン。ワイナリーは「アッシュ&ダイヤモンド」。ナパでも先進的なワインを作るワイナリーの一つで、最近では「SO2不使用」のワインを作ったなどの話題があります。実はこのワインもワインメーカーはスティーブ・マサイアソン。このワイナリーはワインメーカーが二人いてワインによって変えるというユニークなことをしています。ナパのカベルネ・フランとしてはエレガントなスタイルで、ちょっとピラジン香も感じます。


料理は「日南鶏のグリル 栗とキノコ モーレ ネグロソース」
・Malbec の厚みと引き締まったタンニン× 日南鶏の脂質
・Cabernet Franc の品種由来スパイシーさと熟成感× 栗とキノコの旨味
・2つのワインの樽由来の香ばしさ× モーレソースのスパイシーさ
ということで両方のワインを生かしたペアリングになっています。

というか、この鶏自体がとても旨味があって美味しいです。ソースも本当によく合って美味しかったです。

この後デザートも堪能してこの日のディナーは終わりました。ワインも多様でしたがお客さんも多彩な方々でとても面白かったです。
琢馬君のペアリングの才にも改めて感心しました。

ということで、今度は9月30日に琢馬君とナパヴァレー・ヴィントナーズの小枝絵麻さんによるフードペアリングの料理教室が開かれます。小枝さんは様々なレストランのメニュー開発などをしてきた料理のスペシャリスト。特にペアリングには天才的な感覚を持っています。夜の部はもう満席ですが昼はまだ席があるようです。
詳しくはこちら
Food Pairing Workshop with Ema & Taku | Peatix
Date: 2023/0916 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Tapestry
大手ワイン会社のトレジャリー・ワイン・エステートがパソ・ロブレスで「タペストリー(Tapestry)」ブランドのワインを始めました。最初のワインはレッド・ブレンドでカベルネ・ソーヴィニョン、シラー、プティ・シラーをブレンドしています。希望小売価格は24.99ドルです。

タペストリーといえば、ナパの名門ボーリュー・ヴィンヤード(Beaulieu Vineyard=BV)の高級レッド・ブレンドで使われているブランド。あれっと思ったのですが、実はトレジャリーはBVの親会社でもあり、このワインのワインメーカーであるミーガン・トゥイッツェルはBVのアシスタント・ワインメーカーも務めています。今回のタペストリーは、ナパのタペストリーが表現してきたブレンドによる複雑さなどをパソ・ロブレスでも表現したいという宣言のようです。

2024年春にはソーヴィニヨン・ブランも投入予定です。
null
Date: 2023/0914 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Meet Napa's Newest and Biggest Organic Vineyard Owner, Jackson Family Wines, and Its Organic Napa Estates」によると、ナパで有機栽培の認証を得た畑を一番持っているのはジャクソン・ファミリー・ワインズです。この1年で大躍進を果たしました。2022年11月以降663エーカーの有機栽培畑の認証を取っています。

特に多いのは「山」の畑でマウント・ヴィーダーで274エーカー(ポテールなど)、ハウエルマウンテンで150エーカー、スプリングマウンテンで51エーカーなどとなっています。山では特に大規模な畑が多く。マウント・ヴィーダーのポテールが202エーカー、ハウエルマウンテンのキーズが109エーカー、マウント・ヴィーダーのヴィーダーが61エーカーなどとなっています。

GROUP 1 - MOUNTAIN AVAS

---Mount Veeder AVA - 274 Acres

Potelle, Mount Veeder AVA | 202 acres

Veeder, Mount Veeder AVA | 61 acres

Ho, Mount Veeder AVA | 11 acres



---Howell Mountain AVA - 150 Acres

Keyes, Howell Mountain AVA | 109 acres

La Jota, Howell Mountain AVA | 41 acres


---Spring Mountain AVA - 51 Acres

Wurtele, Spring Mountain AVA | 27 acres

Lokoya, Spring Mountain AVA | 24 acres


---Diamond Mountain AVA - 10 Acres

Wallis, Diamond Mountain AVA | 10 acres


---Calistoga AVA - 39 Acres (Hillsides)

Rhyolite Ride, Calistoga AVA (?) | 39

GROUP 2 - VALLEY PROPERTIES



---Oakville AVA - 80 Acres
Cardinale, Oakville AVA | 80 acres

---St. Helena AVA - 25 Acres
Wilson, St. Helena AVA | 14 acres
VanZ, St. Helena AVA | 5 acres
Ahern in St. Helena AVA | 4 acres (at Freemark Abbey)
Freemark Abbey, St. Helena AVA | 2 acres

---Calistoga AVA - 30 Acres (Valley)
Atalon, Calistoga AVA | 30 acres

ジャクソン・ファミリーは環境問題でも先進的なワイナリーとして知られており、カーボン・ニュートラルを目標に頑張っているところであり、有機栽培もその一環として進めているのだろうと思います。
Date: 2023/0913 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパのハウエル・マウンテン(Howell Mountain)AVAが今年策定から40年を迎えます。現地では記念したセミナーが開かれました。

今年はカーネロスも40周年を祝っています
ナパではハウエル・マウンテンがカーネロスの次に策定された2番目のサブAVAとなっています。実はAVAの策定はナパよりもソノマの方がかなりペースが早く、カーネロスより前にドライ・クリーク・ヴァレーが策定されており、カーネロスとハウエル・マウンテンの間にもナイツ・ヴァレー、チョーク・ヒル、ロシアン・リバー・ヴァレー、グリーン・ヴァレーが決まっています。

Napa Valley 1981/1/28
Sonoma Valley 1981/12/4
Dry Creek Valley 1983/8/4
Carneros 1983/8/18
Knights Valley 1983/10/21
Chalk Hill 1983/10/21
Russian River Valley 1983/10/21
Green Valley 1983/11/21
Howell Mountain 1983/12/30

実はハウエル・マウンテンのあともソノマの方がサブAVA策定は早く、ナパとソノマで1980年代に決まったサブAVAは以下のようになっています。

Alexander Valley 1984/10/24
Sonoma Mountain 1985/1/23
Northern Sonoma 1985/5/17
Sonoma Coast 1987/6/11
Wild Horse Valley 1988/11/30
Stags Leap District 1989/1/27

ハウエル・マウンテン
記念イベントでは、AVA策定のきっかけになったのはハウエル・マウンテン・ヴィンヤーズというワイナリーを興したマイク・ビーティという人がこのワイナリーにあった温泉でランディ・ダンらと話をしたことだったと明らかにされています。

また、ラ・ホタ(La Jota)のクリス・カーペンター氏はハウエル・マウンテンから得られるものは「ミネラル成分を伴う深みのあるダークフルーツであり、ワインにはカリフォルニアの果実を伴うボルドーのような底流があり、ナパバレーでは勝てないテクスチャー成分がある」と語っています。

ハウエル・マウンテンはナパでは標高によって定義された初めてのサブAVAで1400フィート(約420m)より上の地域となっています。一番標高が高い畑のブラック・シアーズは2500フィート(約750m)の標高になります。カリフォルニアではリッジのモンテベロの畑やカレラのマウント・ハーランの畑などがこれくらいの標高にあります。

Date: 2023/0912 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
今年制定されたカリフォルニアワインの日にカリフォルニアワイン協会が主催する用賀倶楽部でのイベントに参加してきました。

用賀倶楽部、初めて行きましたが田園都市線の用賀駅から5分ほど。沿線住民としては近くてうれしい(徒歩5分という方もいらっしゃいましたが)。
このイベント、参加費は7000円ですが、リーデルのグラスと2000円分のワインチケットが付いていて料理もビュッフェスタイルでふんだんにふるまわれました。

リーデルのグラスは何だろうと思ったらステムなし「オー」のソーヴィニヨン・ブラン/リースリングにカリフォルニアワイン協会のロゴが入ったものでした。オーのこのグラスは同じ形のものを以前から持っているのですが、白ワイン用にとても使い勝手がよく、よほどいい白を飲むとき以外は基本このグラスです。嬉しい。


用賀倶楽部さん、料理もとても美味しかった。手前の分厚いステーキ。赤身主体で柔らかくうまみもあってむちゃくちゃ美味しい。これだけで200gくらいは食べたかもしれません。


手前の細長いパンは、この日のイベント用に特別に作ったものだそうで(用賀倶楽部さんはパン屋もやっています)、イベリコ豚のベーコンを巻き込んでいて、食べるとベーコンのうまみが口に広がり、無限にワインが飲めます。これも5本くらいは食べたはず。
その奥の揚げ物のところに入っていたハラペーニョとチーズのフリットも、個人的には大好きな味。いくつ食べたかは秘密です。
あと、写真に入り損ねていますが、タコスもよかった。パクチーがいい感じに利いていて、これも無限リピート味。この日のためにだいぶ研究して作ったそうです。

食べ物の話ばかり書いてしまいましたが、もちろんワインも充実しています。2000円でチケット5枚が付くのですが、ワインによってチケット枚数が決まっています。チケットは1枚から5枚まで。1枚でも3000円とか4000円くらいのワインがありますし、2枚なら7000円とか8000円くらいのワインも飲めます。5枚だと1本3万円以上のロバート・モンダヴィのト・カロン・リザーブとか、ケイマスのスペシャル・セレクションとか。コスパ的に言ったら5枚が一番かも。


チケット5枚軍団(笑)。



レイミーのシラーがチケット2枚はお得感高かったです。

チケットは足りなくなったら2000円で追加できます。追加して飲んでいたらちょっと飲みすぎました。最後には無料でデザートワインのふるまいもありました。


同じ時間帯に北は青森の八戸、南は兵庫の三田まで様々なレストランでイベントが開かれており、そこともオンラインでつながっていました。途中では全会場でビンゴ大会も。

カリフォルニアワインらしい、楽しいイベントでとてもよかったです。協会の扇谷さん手島さん、司会の山本香奈さんなどお疲れ様でした。
Date: 2023/0911 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
American Wine Dayの試飲会で美味しかったワインを紹介する後編です。
前編はこちら。


キューナット・ファミリー・ヴィンヤーズはブライアン・キューナットが2007年にナパのオーク・ノールで始めたワイナリー。ハイジ・バレットの娘のチェルシー・バレットがワインメーカー、ジェネラル・マネージャーは娘婿でハイツ創業者の家系のハリー・ハイツというナパの名門の構成で、マテッラ(Materra)というブランドが主軸です。写真はキューナットの妻の美紀が曾祖父のゆかりの吉野の山にインスパイアされて作るジャパン・シリーズ。和食との相性も考えているそうです。ナパのワインとしては主張が控えめでバランスのいい味わい。ラベルも素敵です。インポーターはボニリジャパン。


クレイ・シャノンはレイク郡で有機栽培の畑を持つワイナリー。レイク郡といってもイメージがわかないかもしれませんが、ナパの北側にあたります。畑を増やすのが難しくなったナパを補完するような役割で、レイク郡からブドウを調達するワイナリーは年々増えており、レイク郡自体への注目も今後上がっていくと思います。試飲会ではソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニョンが出ていましたが、どれもレベル高くバランスのいい味わいで価格も抑えめです。今回の掘り出し物の一つ。インポーターは布袋ワインズ。


ジャファーズのシラー。リッチタイプのシラーです。コスパよし。インポーターは布袋ワインズ。


リッジのメルロー2013。価格は1万円です。いい感じに熟成が進んでいます。このレベルの熟成メルローが1万円は安いです。インポーターは大塚食品。


ナパのワイナリー「ザ・ヴァイス」のオレンジワイン。品種はゲヴェルツトラミネールです。うまみ強くリッチですがさわやかさもあります。インポーターはオルカ・インターナショナル。


同じくザ・ヴァイスの「ザ・ハウス」カベルネ・ソーヴィニョン。テクスチャーがしっかりしていておいしい。


今年春のカリフォルニアワイン協会による試飲会ではウエスト・ソノマ・コーストがフィーチャーされ、セミナーも開催されましたが、そこに来ていたワイナリーの一つがアーネスト。当時はインポーターが決まっていませんでしたが、富士インダストリーズが輸入を始めました。そのときのウエスト・ソノマ・コースト・コーナーに出ていたワインの中でも一番エレガントなスタイルだったのがアーネスト。美味しいけど高いワインが多い同地区の中では比較的買いやすい価格もありがたいです。


ソノマのアレキサンダー・ヴァレーの標高が高い山麓にあるストーンストリート。パワフルな山カベスタイルです。インポーターは富士インダストリーズ。


古くからのジンファンデル好きには知られていたリメリック・レーンが日本市場に帰ってきました。インポーターはリエゾン。アウトポストも輸入が始まったし、ジンファンデルのラインアップが増えるのを期待しています。


日本初輸入のブリック&モルタル。バランスよく美味しいです。インポーターはリエゾン。ピノ・ノワールもお薦め。


pureCru Sangio Vettaは珍しいナパのサンジョヴェーゼ。ボディとスパイス感に加え、酸がきれいなのが素晴らしい。価格は6700円。インポーターはGrape Off。


ワイン・トゥ・スタイルは今回かなりいいワインを持ってきていました。ラシーヌとザ・ヒルトのピノ・ノワールはどちらもサンタ・リタ・ヒルズを代表するワインの一つと言っていいでしょう。ラシーヌは全体的にクオリティの高さを感じさせる仕上がり、ザ・ヒルトはうまみを強く感じました。


ボーンシェーカーのオールド・ヴァイン・ジンファンデル。リッチで芳醇。美味しいです。インポーターはワイン・トゥ・スタイル。



Date: 2023/0910 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
これまで大阪で10年近く開催されてきて、今年初めて東京で開催されたAmerican Wine Day。カリフォルニアだけでなく、オレゴンやワシントン、ニューヨークのワインなども出展されていました。ほぼすべてのワインを試飲して美味しかったワインを紹介します。


ニューヨークのカベルネ・フラン100%のロゼ。さっぱりしていますがうまみも感じます。インポーターはGo-to Wine


さわやかでジューシー。夏のロゼというイメージにぴったりです。これもGo-to Wine


冷涼なエドナ・ヴァレーのアルバリーニョ。鮮烈な酸とハーブのニュアンス。海っぽさもあって魚介に合いそうです。インポーターはワインライフ。


ポール・ラトーとワインライフの杉本夫婦が作る「心」シリーズのピノ・ノワールとシラー/グルナッシュ。ピノ・ノワールはかなりパワフルなタイプ。シラー/グルナッシュもリッチな味わい。うまみもすごい。


ベリンジャーのナパ・シャルドネ。定番アイテムだが安定して美味しい。今となっては3600円は安い。インポーターはサントリー


ヘンドリーのナパ産アルバリーニョ。暑いのでさわやかな白には甘くなりますね。これも酸がきれいです。インポーターはヴィレッジ・セラーズ



モントレーのコスパ王「シャイド・ファミリー」によるライダーとディストリクト7の2つのピノ・ノワール。ライダーの方が濃くてパワフルなスタイル。ディストリクト7の方はややエレガント。どちらもコスパ高いですが、スタイルがはっきりわかってよかったです。こちらもヴィレッジ・セラーズ。


ナパのワイナリー「マッケンジー=ミューラー」のカベルネ・ソーヴィニョン。日本限定のワイン。ナパらしいリッチさに、少しピーマン系の青さが入ります。ナパのワイナリーですから、もっとリッチな味わいに作ることも可能ですが差別化のためにあえて青っぽさを出しているのだそう。これもヴィレッジ・セラーズ


メンドシーノでオーガニックなブドウ作りをしているジラソーレのピノ・ノワール、ジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニョン。・ほどよい濃さとバランスの良さで美味しいです。個人的には特にジンファンデルがよかったです。インポーターはデプト・プランニング


ナパのカーネロスのシャルドネ。左の2020年もリッチで樽感もしっかりあり、高級感ありますが、右の2015年のものはさらにリッチで美味しい。オーベールとかが好きな人ならぜひ。これもデプト・プランニングです。
Date: 2023/0909 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Winters Highlands
カリフォルニアに新しいAVA「ウインターズ・ハイランズ(Winters Highlands)」が誕生しました。ソラノ郡とヨロ郡にまたがっており、サクラメント・ヴァレーの西端の東斜面にあるAVAです。

標高は100~400フィートで、プチ・シラー、シラー、テンプラニーリョ、マルベック、グルナッシュ、ソーヴィニヨン・ブラン、アルバリーニョなどが栽培されています。土壌は濃い赤土の粘土質土壌の上に、水はけの良い砂利質のローム層が重なっています。

現在活動しているワイナリーはBerryessa Gap Vineyards、Turkovich Family Wines、Collina de Bella WineryでBarryessa Gapが中心になってAVAを申請しました。

近隣にあるWintersは美食の街としての認知が進んでいるそうで、地元産の食材を使った料理が評判で、地元ワインとのペアリングも期待できそうです。
Date: 2023/0908 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
今やカリフォルニアのピノ・ノワールの中でもレア・アイテムになっているのがドメーヌ・ド・ラ・コート(Domaine de la Cote)。そのワイナリーを持っているのがラジャ・パーとサシ・ムーアマンです。

ラジャ・パーの名前を有名にしたのが2011年に始めたIPOB(In Pursuit of Balance)。カリフォルニアワインに低アルコール化の流れを作る機運を作りました。それまでもサンフランシスコの著名レストラン「ルビコン」のソムリエに始まり、マイケル・ミーナという著名レストラン・グループでのワイン・ディレクターなどを勤め、ソムリエの世界では知られていましたが、IPOBでカリフォルニアワインの先導役の一人としての地位も確立しました。

ドメーヌ・ド・ラ・コート、サンディ(Sandhi)とサンタ・リタ・ヒルズに2つのワイナリーを持ち(ドメーヌ・ド・ラ・コートは自社畑、サンディは購入ブドウ中心)、オレゴンでも有名ソムリエのラリー・ストーンと、ブルゴーニュのコント・ラフォンが始めたイヴニング・ランドを買収し、オレゴン・トップクラスのワイナリーに仕立てました。

このラジャ・パーの4番目のワイナリーがフェラン・ファーム(Phelan Farm)です(ラジャ・パー4つ目のワイナリーはマイナー品種に特化の自然派)。

フェラン・ファームは2022年にAVAになったSLOコーストにあり、太平洋からわずか5㎞と大変冷涼な地域にあります。1851年にフェラン家が作った農場で1100エーカーの農場の中でわずか11.5エーカーだけがブドウ畑になっています。グレッグ・フェランが2007年に自根で植えたシャルドネとピノ・ノワールがありました。

このブドウ畑をリースしたラジャ・パーの当初の計画は、土地の耕起をしない再生型農業でなるべく自然のままでブドウを育てようというものでした。ラジャ・パーを含めたわずか3人のチームで畑仕事を全部賄い、収穫時も3人だけピッカーを雇うという最小の人員でのオペレーションを志しています。ちなみに、フェラン・ファームにおけるラジャ・パーの肩書は「ファーマー」となっています。ワインメーカーはおらずアンナ・パレーズという人が「セラー・マスター」をしています。

ブドウ畑の健康を強化するためにイラクサ、ヤナギの樹皮、ルーピンなど、自生する植物から作った発酵スプレーを散布しています。さらに、「ターメリックやニームオイルのプレップ(調合剤)は、海の水を使って作っています」とアーユルヴェーダ的なタッチを加えます。

2017年から2018年にかけては、接ぎ木によってフランスのジュラとかサヴォワ地区原産の15種類のブドウを植えました。植えた品種はモンデュース(Mondeuse)、サヴァニャン・ヴェール(Savagnin Vert)、サヴァニャン・ジョーヌ(Savganin Jaune)、プルサール(Poulsard)、アルテス(Altesse)、トゥルソー(Trousseau)、ガメイ・ノワール(Gamay Noir)など。また、サイダー用にハーフエーカーだけりんごも植えました。

ワインはすべて除梗なしで天然酵母を使って発酵、ニュートラルな樽で熟成します。SO2は添加しません。複数品種を使う場合は発酵時から混ぜて発酵する混醸をします。

要はいわゆる自然派、それもかなり徹底したものになっています。このフェラン・ファームのワインを10種類飲むワイン会に参加してきました。

裏側



裏側



裏側


ワインの資料は裏ラベルと、サイトに載っている資料があるのですが、実は一致していないところが結構あります。私はサイトに載っている方が正しい説(ラベルは1回印刷してしまうと修正するのが大変だから)を唱えているのですが、実際のところはどうなのでしょうね。

ということで、基本的にはサイトの資料をベースに説明および感想を書いていきます。

2020 サヴァニャン&シャルドネ。
サヴァニャンはフランスのジュラ地方の品種で「ヴァン・ジョーヌ」に使われていることで知られています。自然派らしいちょっと癖のある味わい。SO2なしですが、酸化のニュアンスは特に感じませんでした。ユニークな味わいですが、美味しいかといわれると難しいところ。実はこの時点でこの日はテイスティングノートを書くのをやめてしまいました。

2020 Misturado
2021 Misturado
Misturadoはスペインのガリシア地方にインスパイアされたメンシア(75%)とトゥルソー(25%)のブレンド。ワインの写真を撮っていませんが、実は2020年はかなり淡い色合いで、2021年はかなり濃くなっています。アルコール度数も2020は11.0%と低く、2021は12.5%となっています。品種比率は2021年のものを記していますが、2020年はトゥルソー比率がだいぶ高いのかもしれません。悪くはないですが、余韻や深みはあまりないというのが正直なところ。

また、裏ラベルによると2020年はサンタ・リタ・ヒルズのサンディで醸造されているようですが、2021年はSLOコーストのカンブリアにある「パー・ワインズ」で醸造されています。

2021 モンデュース
モンデュースはフランス、サヴォワ地方の品種。あまり記憶にありません。

2021 Leon
ジュラにインスパイアされたブレンドとのことで、トゥルソー、プルサード、ピンク・シャルドネ、サヴァニャン、シャルドネ、ピノ・ノワールが入っています。赤ちゃんの顔が印象的なラベル

2021 Autrement
サヴォワにインスパイアされたピノ・ノワールとガメイとモンデュースのブレンド。

最後は4種類の単一品種もの。いずれもヴィンテージは2021年。
2021 トゥルソー
2021 メンシア
2021 ガメイ・ノワール
2021 モンデュース

個人的にはこの中で一番可能性を感じたのはトゥルソーでした。チャーミングな味わいで酸がきれいに出ています。メンシアやモンデュース、ガメイ・ノワールはどういう味わいを表現したいのか、まだ中途半端な印象。これからヴィンテージを重ねていくと変わっていくのでしょうか。例えばサンディやドメーヌ・ド・ラ・コートのピノ・ノワールの味わい深さに達するのかというと、個人的にはちょっと疑問符がついてしまいます。とはいえジェイミー・グッドはかなりの高評価を与えているので、私の修業が足りないだけなのかもしれません(Rajat Parr Wines: Phelan Farm and Scythian Wine Company – wineanorak.com)。

ところで、この日のレストランは西馬込のイル・ド・コリンヌでした。これまで何度もうかがっていますが、この日のメニューはいつもとだいぶ違っていました。ワインに合わせて変えてくれたようです。

Date: 2023/0907 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
楽天スーパーセールで安くなっているカリフォルニアワインを調べました。一部ワシントンも入っているのでタイトルは米国としています。

いきなり、一番の目玉から紹介します。ソノマのアリシアン(Alysian)のロキオリ・ピノ・ノワールとナパのカリストガにあるケネフィック・ランチ(Kenefick Ranch)のカベルネ・フランのセットが13200円で送料無料。ヴィンテージが書いてありませんが、輸入元のアグリのページを見るとアリシアンのロキオリは2012年、ケネフィック・ランチは2013年が出ているのでおそらくそのヴィンテージです。アリシアンの2012年は、創設者ゲーリー・ファレルの最後のヴィンテージ。その意味でも貴重です。ケネフィック・ランチの方はあまり情報を持っていませんが、2014年のカベルネ・フランはワイン・アドヴォケイトで93点を取っています。カリストガでアイズリーに隣接しているとのこと。アリシアンの方だけでも1万円の価値はあります。


次はボンドのメイトリアーク2014年。これは特別に安いというよりも、もう日本の市場に入ってこなくなってしまったワインです。1年ほど前から中川ワインのページからも消えています。日本で買うなら今のうちというか、楽天でもここでしか売っていないと思います。


シュラムスバーグのブラン・ド・ブラン、ブラン・ド・ノワールが4119円というのは赤坂エラベル。1ランク下のミラヴェルの価格帯です。



以前、3000円以下のピノ・ノワール対決の会に参加したときに、持ってこられた方がいたのがパリ(Pali)ワイン・カンパニーのハンティントン・ピノ・ノワール。3000円以下で入手できたのにびっくりしたのですが、今回のセールで2970円になっています。というか、このワインも日本輸入がなくなってしまったようなので、今の在庫が貴重です。この価格帯では素晴らしいワインだと思います。


同じショップ(ヴァミリオン)ではビビアナ・ゴンザレス・レーヴが作るアルマ・デ・カトレアのソーヴィニヨン・ブランもセールになっています。ワインスペクテーターの年間トップ100で上位に入ったワイン。ビビアナは「カトレア」ブランドではシャルドネとピノ・ノワールを作っており、夫のジェフ・ピゾーニと作る「シェアード・ノーツ」ではロワールとボルドータイプの2種類のソーヴィニヨン・ブランを作っています。このソーヴィニヨン・ブランはよりカリフォルニアのスタイルのソーヴィニヨン・ブラン。美味しいです。


リカオーでは今回はカリフォルニアではそれほど目立ったものはなかったのですが、ワシントンのチャールズ・スミスのロゼとシャルドネとメルローが1899円と安くなっています。




しあわせワイン俱楽部も基本的に全品10%オフになっています。なのでどれが目玉、というのは出しにくいですが、ブレッド・アンド・バターのリザーブ版シャルドネは入手しておく価値がありそうです。とりあえず限定入荷の状態と聞いています。



Date: 2023/0906 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
楽天のワインショップ「ドラジェ」がカリフォルニアワイン協会のスプリング・プロモーションで「ベスト・ニュー・カマー賞」(同プロモーションに初参加の店舗に限られる賞)を受賞し、9月5日から19日の正午までセールを開催しています。

セールワインの一覧はこちら

しかも買い物が一定の条件を満たした人、3名にスターレーン(Star Lane)のワイン「カベルネ・ソーヴィニョン アストラル 2012」が当たります。
null

スターレーンのカベルネはレギュラー版も秀逸ですが、こちらは市場価格1万円を超える高級版。ジェブ・ダナックが92点をつけて、飲みごろは2036年までとした長熟型のワインです。

一定の条件というのは購入したセール対象のカリフォルニアワインの商品合計金額が税込み1万円以上
および下の2つのワインのいずれかを購入した人、ということになります。



こちらのワイン、私は飲んだことなく情報もあまりないのですが、モントレー産のシャルドネとピノ・ノワールです。コスパに優れた地域ですから期待できると思います。Vivinoを見た感じでは、どちらも結構しっかり樽の効いたタイプのようです。

そのほかのワインからいくつかお薦め紹介します。

ナパの名門クロ・デュ・ヴァルが作るお値打ちワインです。


オー・ボン・クリマのピノ・ノワール「ノックス・アレキサンダー」などに使われているサンタ・バーバラきっての銘醸畑「ビエン・ナシード」の自社畑ピノ・ノワールです。


モンダヴィ・オークヴィルのカベルネ・ソーヴィニョンは実質To-Kalonという超豪華版です。米国90ドルが日本で1万円以下というのもありがたいです。


何はともあれのウェンテ・モーニング・フォグです。何買うか迷ったらとりあえずこれを何本か買ったらいいと思います。個人的「推し」ワインの一つですのでよろしく。
Date: 2023/0904 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
ブレッド&バターのシャルドネにリザーブが登場しています。限定入荷とのことですが、そもそも本家のサイトにも未掲載のワインです。

2019年のリザーブ・シャルドネはナパヴァレー産だったようですが、今回入荷した2021年はソノマ・コースト産。

また、ブレッド&バターといえば強烈な樽の風味が特徴の一つですが、新樽率は35%ということで、通常版よりもエレガントな方向に振っているようです。

価格は税込み4000円ちょっとですから、通常版より1000円高い程度と割とリーズナブル(ちなみにリザーブのカベルネは7000円程度、ピノ・ノワールは8000円程度です)。これは気になりますね。


Date: 2023/0903 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
E&J. ガロがナパのワイナリー「マシカン(Massican)」を買収したと発表しました。8月29日にロンバウアー(Rombauer)を買収したばかりであり、わずか2日後の新たなワイナリー獲得となりました。

ただ、その買収内容は大きく異なっています。ロンバウアーは3カ所の醸造設備、2カ所のテイスティング・ルーム、ナパを中心に700エーカーに及ぶ畑を持っており、それらをすべて買収した形となりました。それに対してマシカンは醸造設備も畑も持っておらず、ブランドと在庫のワイン(2022年の生産量で7500ケース)しかありません。

マシカンは2009年にダン・ペトロスキ(Dan Petroski)が設立。ナパにありながら白ワインだけを作っています。
マシカン

特に、イタリアなど地中海の品種を好んで作っており、酸高くアルコール度数は低い、ロンバウアーとは対照的なスタイルを持っています。
ガロ傘下のワイナリーというと、どちらかというとロンバウアーのような味わいのはっきりしたタイプのワインを作るところが多いイメージを持っていましたので、マシカンのようなワイナリーを買収したのには驚きました。

なお、ダン・ペトロスキは今後5年以上、ワインメーカーにとどまることが買収条件に入っています。
Date: 2023/0902 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
9月9日は今年からカリフォルニアワインの日として記念日協会に登録されました。次のように書かれています。
カリフォルニアワイン協会が制定。カリフォルニアワイン協会(本部・サンフランシスコ)は1000社を超えるカリフォルニアのワイナリーやワイン関連企業から構成される非営利団体で、世界30か国以上でマーケティング活動を行っている。多様な公認産地(AVA)を誇り、プレミアムワインとして世界中で認知されているカリフォルニアワインを、日本でもさらに知ってもらうことが目的。日付はカリフォルニアがアメリカ合衆国の31番目の州として編入された1850年9月9日から。
当日はイベントも開かれます(9月9日はカリフォルニアワインの日、イベントも開催)。

もちろんイベントに参加いただくのもいいですが、近くでイベントがないという場合や、そこまでカリフォルニアワインに思い入れがないし、という人も多いでしょう(というかそういう人が圧倒的でしょう)。普段カリフォルニアワインをあまり飲まないという人も、この日にはカリフォルニアワインを試して、その魅力を感じていただけたらと思っています。

ということで、この記事では品種ごとにお薦めのカリフォルニアワインを紹介します。3000円以下と3000円超6000円以下の2つの価格帯からのチョイスです。できたら両方の価格帯のものを飲んでいただけると、いいものの良さを分かっていただけるのではないかと思います。

赤から行きます。まずはカベルネ・ソーヴィニョンから。3000円以下というのが簡単そうで難しい分野です。もちろん美味しいものはたくさんありますが、突出したものは意外と見つけにくい。また、近年はこの価格帯はやや甘めの作りのレッド・ブレンドが主流になりつつあり、カベルネ・ソーヴィニョンとしての良さがあるワインがやや減っているような気もします。

その中で選んだのは「ランチ32」。モントレーのコスパ王「シャイド・ファミリー」というワイナリーが持つブランドの一つです。3000円までとしながら、ほぼその半額のものを選んだのはコスパ感のすばらしさとバランスの良さから。

ショップはしあわせワイン俱楽部です。以下、ショップ名が書いていないときはこのショップです。


次はピノ・ノワールで「キャッスル・ロック」のモントレーを選びました。2000円台のピノ・ノワールの中ではバランスの秀逸さが際立つワイン。同じワイナリーでメンドシーノのピノ・ノワールもあり、そちらの方がよりエレガントな作り。



ジンファンデルでは文句なくマリエッタを選びました。ここはノン・ヴィンテージで年に2~3回新しいロットを作ってロット番号を付けるというユニークなことをしています。現行のOVR(Old Vine Red)Lot73はこの価格帯でパーカー95点というワイン。ジンファンデルは単に「濃くて甘い」と思っている人にはぜひ飲んでほしいワイン。


赤ワインでもう一つブレンドものから「スラムダンク」を。ちょうどバスケットボールのワールドカップをやっていますしね。これもバランスよくスパイシー感もあっておいしいワイン。ジンファンデルなどのブレンドです。このワイン嫌いな人はいないよね、という味。


白ワインに行きましょう。
シャルドネではウェンテの「モーニング・フォグ」。個人的に大好きなワインです。程よい樽感と酸味、果実味がありバランスが秀逸(だいたい私のセレクションはバランス重視です)。ウェンテはカリフォルニアのシャルドネのふるさとと言っていいようなワイナリー。カリフォルニアのシャルドネの7割がここのクローンをベースにしているという話もあります。みんな大好きキスラーも「うちはウェンテ・クローンの畑しか使わない」と明言しています。


ソーヴィニヨン・ブランは「ジョエル・ゴット」を選びました。樽を使わないすっきり系のソーヴィニヨン・ブランで和食にも合わせやすい。ワイン・スペクテーターの上位評価常連です。


白の最後はヴィオニエ。某大手スーパーのバイヤーさんも一押しと言っていたマックマニスのヴィオニエを選びました。というかこの価格帯でのヴィオニエならこれが一択でしょう。

ショップはココスです。



スパークリングではラック&リドル。カスタム・クラッシュといって、他のワイナリーから製造委託を受けてワインを作る業態があるのですが、ここはそのスパークリングの第一人者。豊富な経験とコネクションから作った自社ブランドですからコスパ抜群です。エレガント系のブラン・ド・ブランを選びましたが、より飲みごたえがあるブリュットやブラン・ド・ノワールもあります。


ここからは3000円超6000円までの価格帯に移ります。

この価格帯のカベルネ・ソーヴィニョンはより取り見取り。大激戦区で外れもほとんどないところです。その中で選んだのはなんと3000円台で買えるデコイ リミテッド カベルネ・ソーヴィニョン。デコイはナパの有名ワイナリーで、特にメルローではトップクラスに君臨するダックホーンの下位ブランド。普通のデコイは3000円前後で買えますが、「リミテッド」は1ランク上。クオリティ的にはダックホーンのカベルネにも迫りますが、価格は普通のデコイより1000円ほど高いだけ。コスパ抜群です。


次はちょっとマイナーですがカベルネ・フランでトレフェッセンのものです。カベルネ・フランは個人的一押しの品種です。このワインふつうは7000円以上するのですが、5000円台で売っているところを見つけてしまいました。

ショップは「酒楽ショップ」


ピノ・ノワールではオーガスト・ウエストのサンタ・ルシア・ハイランズを選びました。7月に亡くなられたインポーターの海老原卓也さんがインポーターを始めるきっかけになったワインがこれ。この美味しいピノを日本人に飲んでもらいたいと脱サラしたのでした。カリフォルニアらしいチャーミングな果実味を持つワイン。

ショップはWassy’s。


ジンファンデルはベッドロックのオールド・ヴァイン・ジンファンデル。ベッドロックのオーナーのモーガン・トゥエイン・ピーターソンはマスター・オブ・ワインを持っており、100年以上の樹齢がある古木の畑の第一人者。彼が古木のワインの入門用としてサービス価格で販売しているのがこのワインです。



赤の最後はシラー。シラーを得意とするストルプマンのワインです。ちょっと珍しいのは、発酵時に「炭酸ガス浸漬法」(カルボニック・マセレーション)を使っていること。ボージョレ・ヌーヴォーで使われている手法で、果実のフレッシュさを出すのに役立っています」。シラーが苦手という人にも飲んでほしいワイン。


白ワインに移ります。シャルドネはタリーのエステート。カリフォルニアの沿岸地域でも特に冷涼な地域のブドウを使っています。涼しいところのシャルドネなので酸のきれいさが素晴らしいワイン。


ソーヴィニヨン・ブランはナパのホーニッグのリザーブ。ナパの一等地にある自社畑のブドウを使っています。新樽も使ってリッチな味わい。


ヴィオニエではカレラ。カレラはピノ・ノワールで有名ですが、創設者のジョシュ・ジェンセンはDRCで収穫を手伝いにいったときに、マダム・ルロワに嫌われて追い出され、その後コンドリューで収穫の手伝いをしたということがありました。そういった由来でヴィオニエにも思い入れがあり、カリフォルニアではかなり早くからヴィオニエの栽培に取り組んでいます。


最後、スパークリングは価格帯オーバーですがドメーヌ・カーネロスのル・レーヴを紹介します。米国で125ドルするのが日本では1万円を切るという不思議価格で何年も販売されていましたが、このほど価格改定で一気に2万円ちかくになってしまいます。現在ショップにある在庫がなくなったらその価格なので、今買わなきゃいけないワインです。テタンジェの系列であり品質的にもカリフォルニアのトップクラス。


Date: 2023/0901 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
山田琢馬ソムリエ
ナパのワインというと、カベルネ・ソーヴィニヨンと誰もが思うでしょう。白ならシャルドネ。確かにカベルネ・ソーヴィニヨンでもシャルドネでも世界トップクラスのワインが作られているナパですが、実はそれ以外にも魅力あるワインがたくさんあるのです。そういったワインとペアリング・ディナーを楽しめるイベントが9月15日にパレスホテル東京で開かれます。

ワインを選ぶのはNapa Valley Wine Best Sommelier Ambassadorの山田琢馬ソムリエ。

カリフォルニアワインには、濃厚で樽が効いたシャルドネばかりの時代に「シャルドネ以外の何かが飲みたい」と「Anything but Chardonnay(ABC)」という言葉が生まれたことがありました。同様に、カベルネ・ソーヴィニヨン以外の何かという意味でも「ABC」という言葉が使われました。今回のイベントタイトルはそれを逆手にとって「ABC of Napa Valley」となっています。ナパの多様性が楽しめると思います。

会場のパレスホテル東京「グランドキッチン」は先日訪問して「パレスホテル「グランドキッチン」でカリフォルニアワインと料理を堪能」という記事に書いていますが、料理もトラディショナルをベースにした、美味しいものを出しています。今回はペアリング・ディナーですから、どういう料理が出るのか楽しみです。ちなみに山田琢馬ソムリエはNapa Valley Expertの2次試験のペアリングで1位を取っています。

私は今回は主催者側ではなく、普通にお客さんとして参加します。ワインや料理の内容も聞いておらず、楽しみにしています。

<ABC of Napa Valley with Takuma Yamada>
日時:2023年9月15日(金)19:00-21:00(受付18:30〜)
会場:パレスホテル東京 グランドキッチン(1F)
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1丁目1−1
担当:NAPA VALLEY WINE BEST SOMMELIER AMBASSADOR 2023 山田琢馬さん
イベント内容:着席形式の解説つきペアリングディナー
会費:一般 22,000円(税込)、NAPA VALLEY WINE EXPERT認定者 20,000円(税込)

申込みはこちらから

問い合わせ先:Japan@napavintners.com
Date: 2023/0831 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパのロンバウアー(Rombauer)を、世界最大のワイナリーであるE&Jガロが買収しました。買収額は明らかになっていません。ロンバウアーは1980年に設立され、濃厚でクラシカルなスタイルのシャルドネの人気で知られています。

買収にはロンバウアーのブランドのほか3カ所の醸造設備、2カ所のテイスティング・ルーム、ナパを中心に700エーカーに及ぶ畑を含んでいます。

ガロはこの6月にはモントレーのハーンのブランドを買収していますが、そのときには畑を含んでいませんでした。今回は畑を含んだ買収ということで、より深いコミットメントになっています。ロンバウアーのワインメーカーはそのまま職務を続ける見込みです。

一方、ロンバウアーはこの5月に初めてのピノ・ノワールを発売するなど、積極的に事業を行っており、今回なぜ買収に応じたのかは疑問もあります。

ガロが高級ワインブランドの買収を始めたのは2015年から。ソノマのJ、モントレーのタルボット、ナパのパルメイヤーとステージコーチ・ヴィンヤード、オリン・スイフト、上記のハーンなどを買収しています。
Date: 2023/0830 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
サンディ(Sandhi)が作る異例のワイン「ロマンス(Romance)」が日本に入荷しています。異例というのは、他のサンディのワインとはブドウの出所が違うからです。

サンディとドメーヌ・ド・ラ・コート(Domaine de la Cote)はどちらもラジャ・パーとサシ・ムーアマンによるワイナリー。ドメーヌ・ド・ラ・コートがサンタ・リタ・ヒルズの西端にある超冷涼な自社畑のブドウを使っているのに対し、サンディはサンフォード・ベネディクトなどサンタ・リタ・ヒルズの他社の銘醸畑のブドウを使っています。ところが、このロマンスの畑の持ち主はドメーヌ・ド・ラ・コート。つまり実質自社畑のブドウなのです。ドメーヌ・ド・ラ・コートは基本的にはピノ・ノワールだけなので、その白版がこのロマンスとも言えます。

ロマンス・シャルドネ2020は、いきなりワイン・アドヴォケイトで98点。今回入荷した2021年もジェームズ・サックリングで97点。また、どちらもワイン・スペクテーターでは95点でセントラル・コーストのシャルドネとしてはトップに立っています。私は5月のセミナーで試飲しており(全房発酵のあれこれなどを、サシ・ムーアマンに聞く)、それ以来いつ入荷になるのかずっと気になっていたワインです。税込み1万6000円台と価格は張りますが、米国でも100ドルなので国内価格は高くありません。

なお、同時にロマンスのピノ・ノワールというのも入荷しています。こちらは畑も含めて資料がなく、謎のワイン。

Wassy’sです。


トスカニーです。

こちらがピノ・ノワール。

Date: 2023/0826 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
米国政府による「USDA Organic Integrity Database」に登録された有機栽培認証のブドウ畑は過去1年間に1774エーカー増加したそうです(Organic Wines Uncorked: California)。

興味深いのはこのうちの77%にあたる1370エーカーが大規模なワイナリーによるものだったことです。

例えばソノマでは732.95エーカー増加しましたが、このうち664エーカーはジャクソン・ファミリー傘下の畑でした。

ナパでは430エーカーのうちコンステレーション・ブランズが所有するト・カロンの331エーカーが寄与しました。

パソ・ロブレスでは260エーカー中、ハルター・ランチ(Halter Ranch)が200エーカーに寄与、サンタ・バーバラでは198.5エーカー中、ストルプマンが174エーカーに寄与しました。

ちなみにモントレーのシャイド・ファミリーは3000エーカーを有機栽培に転換中であり、これまで666エーカーで認証を得ています。
Date: 2023/0825 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ilovecalwineの海老原卓也さんが亡くなって1カ月ちょっとが経ちました(参考「ilovecalwine海老原卓也さんを偲ぶ」)。

海老原さんが日本に紹介したワインの代表格の一つであるポール・ラトー・ワインズのポール・ラトー氏が全世界のメーリング・リスト・メンバー向けのメールで、卓也さんに言及し、その死を悼みました。

「海老原卓也さんが、『心』ワインの最初のヴィンテージを試飲するためだけに、わざわざ日本から飛来してくれたことを今でも鮮烈に覚えています。彼はカリフォルニアワインへの真のパッションを持っており、それをユニークな日本流の方法で表現していました。彼は輸入会社の名前を『I love California wines』と名付けたのです。卓也さんは1カ月前に急死され、私はこのヴィンテージの『心』ワインを彼の思い出と彼が生涯をかけて日本でカリフォルニアワインの宣伝してくれたことに捧げたいと思います」

ポール・ラトー

ポール・ラトー氏にとっては、日本に輸出しなくても、米国内の需要だけで余裕でまかなえるでしょう。日本に輸出をしたのは海老原さんの情熱に打たれたからではないかと思います。このようにわざわざ言及してくれるのは嬉しいですね。

そういえば、最後にお会いしたときに、ポール・ラトーからカベルネが出る話をうかがったと思います。

なお、ポール・ラトー氏の記憶違いがあったのかもしれませんが、ポール・ラトーのワインの中で「心」だけはワインライフの杉本夫妻と共同で開発しており、現在もワインライフが国内で取り扱っております。



「心」は現在柳屋でセールになっています。


Date: 2023/0824 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
シェーファー・ヴィンヤーズを昨年、韓国資本の会社に売却した前社長のダグ・シェーファーがワイン・サーチャーのインタビューに答えています(Napa Legend on Life After Shafer | Wine-Searcher News & Features)。

内容の大部分はシェーファーのこれまでの歩みの話であり、いろいろなところに書かれてきたことですが、最後にシェーファーをやめた後、何をするか質問しています。

ワイン・ライターになろうか、なんていう冗談も言っていますが、まずは休みを取り、米国各地に住んでいる4人の孫のところを回りたいとしています。そんなにお孫さんがいるのは知らなかったです。後はチャリティ活動にも取り組んでいるとのことで、しばらくは今までできなかったことをゆっくりやるような生活のようです。
Date: 2023/0823 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Aviana
C.K.モンダヴィ・ワイナリーを率いる5人の女性が新しいブランド「Aviana」を立ち上げました。ラベルにはひいおばあさんで、米国に移住した初代であるローザ・モンダヴィをあしらい、女性の強さ、冒険、創意工夫を称えるとしています。

「この新しいコレクションは、ワインそのものよりも、友人たちとのつながりから生まれるエネルギーと創造性、そして旅行や居心地の良い場所から抜け出すときに生まれる新しいアイデアを刺激したかったのです。ワインはそれぞれ気分や考え方を表しており、その全てに恩返しへの献身が込められています」と四女のジョヴァンナ・モンダヴィは語っています。

ワインはカリフォルニアではなく世界各地から優秀なブドウを選んだもので、スペインのベルデホを使った白ワイン、ポルトガル産のブドウを使ったレッド・ブレンド、フランスのカベルネ・ソーヴィニヨンの3種類からなります。

また、ラベルにはQRコードが書かれており、それを使って拡張現実を体験することもできます。

第1~第2世代
アップデート
Date: 2023/0822 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ハリケーン・ヒラリーがカリフォルニアを襲い、南カリフォルニアを中心に洪水などの被害が出ています。ハリケーンがカリフォルニアを襲うのは1939年以来84年ぶりのことです。

収穫時期の雨ですから、ワイン業界にも影響はゼロではありません。特にサンタ・バーバラとロスアンゼルスの間にあるマリブ・コーストAVAでは、被害がある程度出ていそうだといいます。
マリブコースト

ただ、今年はヴェレゾンの進行が平年よりも1~2週間、場所によっては1カ月近くも遅れていることもあり、まだ急いで収穫しないといけないブドウは多くありません。雨で湿気が増えることでベト病やうどんこ病といった病気が広がる恐れはありますが、キャノピーの管理を適切に行っていれば、それほど大きな問題にはならないだろうと見られています。

ナパやソノマでもこれまでの雨は「お湿り」程度であり、大きな問題にはならないというのが大方の予想ですが、雨が長く続くようだと被害が広がる可能性もあるため、天気予報を注視しているという状況です。
Date: 2023/0821 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
カベルネ・フラン好きを自称しており、ナパのカベルネ・フランだけのセミナーを開催したこともあるアンディです。(「ナパのカベルネ・フラン、その魅力と実力は?」で紹介しています)

カベルネ・フランのブームをより広く捉えた記事があったので内容を紹介します(Cabernet Franc: Red-Hot Red | Wine-Searcher News & Features)。

まずカベルネ・フランの畑の面積ですが、カリフォルニアでは2014年の2852エーカーから2022年の3414エーカーへと2割近く増加しています。オレゴンでは2011年の120エーカーから2022年の344エーカーと3倍近くにもなっています。また、米国内ではニューヨーク州とヴァージニア州で一番多く植えられている赤ワイン用品種となっています。

もっと増えているのはアルゼンチンで1990年の188エーカーから2021年の3877エーカーと30年で20倍にも増加しています。カリフォルニアよりも多くなっているのはちょっと驚きました。

また、カリフォルニアではカベルネ・フランは最も販売価格の高いブドウになっています。ワシントン州でも2021年は3位だったのが、1位になっています。

ワイナリーにおける販売も伸びています。消費者に直接販売するDtC(Direct to Consumer)の分野では2023年上期の数字が前年より販売額で87.3%、販売量は56.9%伸びています。順位も16位から7位に上がりました。

ナパで1996年からカベルネ・フランを軸に据えているラング&リードでは過去18カ月で販売額が25%増加しています。

リバモアにあるスティーブン・ケント・ワイナリーはCabFranc-a-Paloozaというカベルネ・フランのイベントを始めました。イベントの参加者は2021年の150人から2022年は600人に増えました。またワイナリーでは5種類のカベルネ・フランを作っており、過去2年は倍倍で増えています。一番の問題は需要に対して供給が全く追いついていないことだとしています。ちなみにパソ・ロブレスでも「カベルネ・フラン・デー」が行われているとのことです。

オンラインでレアワインを販売しているベンチマーク・ワイン・グループのデヴィッド・パーカーCEOも供給が需要を上回っているといいます。また、ロワールのカベルネ・フランがクラシックな味わいを続けているのに対して、米国のカベルネ・フランを求める人は違ったスタイルを好んでいるといいます。

ニューヨークのドクター・コンスタンティン・フランクのミーガン・フランクは、ピーマン香をもたらすメトキシピラジンは、ワインのスタイルとして敢えて入れるのでなければ減らすかなくすかしないといけないとしています。栽培の工夫でフィンガー・レイクスでもよりよりカベルネ・フランが作られるようになっているとのことです。

若い世代がカベルネ・フランを好んでいるという話もあります。彼らは親世代が子供の頃から飲んできたカベルネ・ソーヴィニヨンには興味がなく、違うものとしてフランへの興味を持っているそうです。

間違いなくカベルネ・フランへの注目は今後も続きそうです。ちなみにアルゼンチンでは20ドルのカベルネ・フランもあるそうで、高価格が敷居の高さにつながっている日本の現状では、そういったものが輸入されるのも期待したいところです。
Date: 2023/0818 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパのサン・スペリー(St. Supéry)が8月16日に自社畑「ダラーハイド」のソーヴィニヨン・ブランの収穫を始めました。今年のナパの収穫の皮切りになります。
サンスペリー

実はナパのワイナリーで最初の収穫を始めたのはサン・スペリーではなくマサイアソン(Matthiasson)でした。ただ、畑はナパではなくナパの北東にある「ヨロ郡」のもので、ロゼに使うシラーやグルナッシュでした。

サン・スペリーではいわゆるナイト・ハーヴェストを行っており、8月15日の深夜近くに畑の周りにクルーが集まり、夜のうちに3つのブロックの収穫を行ってワイナリーに運び込みました。

収穫とは無関係ですが、サン・スペリーのソーヴィニヨン・ブランについてもうひとつ発表が出ていたので紹介します。ロング・メドウ・ランチ(Long Meadow Ranch)がラザフォードに持つソーヴィニヨン・ブランの畑48エーカーをサン・スペリーが買収しました。価格は1億4800万ドルと見られています。

近年、ソーヴィニヨン・ブランの人気は上昇していますが、ナパの中での調達は年々難しくなっています。例えばスポッツウッド(Spottswoode)やトゥーミー(Twomey)はソノマのソーヴィニヨン・ブランとのブレンドに切り替えています。

サン・スペリーは自社畑のブドウだけを使っているので、より調達は難しくラザフォードの一等地にある畑の取得は大きな意味を持ちそうです。なお、サン・スペリーは現状でもナパのソーヴィニヨン・ブランの栽培の8%を占めています。ロング・メドウ・ランチもこの畑のソーヴィニヨン・ブランをしばらく使っていくとのことです。

サン・スペリーはナパのソーヴィニヨン・ブランの約8%をダラーハイドの畑で栽培しています。サン・スペリーは自社畑のブドウのみを使っていますが、
Date: 2023/0817 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Calwineday
2023年、「カリフォルニアワインの日」が決まりました。カリフォルニアがアメリカ合衆国に州として編入した9月9日です。以前から9月はカリフォルニアワインマンスとして、いろいろなイベントが行われていましたが、今年はカリフォルニアワインの日のお祝いとして「カリフォルニアワインパーティ」も開催されます。

9月9日(土)11:30~14:30
GRILL&DINING用賀倶楽部
参加費:7000円

場所は東京・世田谷のGRILL&DINING用賀倶楽部。田園都市線の用賀駅から徒歩6分ほどのところです。パーティは20種類以上のカリフォルニアワイン、スペシャルビュッフェ、オリジナルリーデルグラスのプレゼント、抽選会と充実した内容。
ワインはグラス400円からで、参加費に2000円分のワインチケットが含まれており、追加のワインチケットも購入できます。

それ以外にも各地で9月9日のランチイベントが開催されます。抽選会も含まれています。

八戸パークホテル
青森県八戸市吹上1丁目15-90
0178-43-1111

Ile de colline
東京都大田区西馬込2丁目14-23
03-6429-7062

olivino
東京都目黒区三田2丁目8-6
03-5721-9335

ワインショップうめや
東京都大田区蒲田2丁目55-3
03-6873-4002

レストラン カリストガ
神奈川県鎌倉市七里ガ浜東3-1-14
050-5600-6557

Griddle me Local
兵庫県 有馬町1021-1A
078-587-2223

Rogue Hill
東京都中央区日本橋本町4-5-1 LINX日本橋 1FRogue Hill
03-6262-0974

9月はこの日以外にも、スプリングプロモーションで優秀店となった店がプロモーションを開催予定です。
いろいろ楽しみですね。私は用賀のパーティに参加予定です。
Date: 2023/0816 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
エルンスト

ドイツ・モーゼルで200年以上の歴史を持つ名生産者「ドクター・ローゼン」。その現当主であり、デカンター誌のマン・オブ・ザ・イヤーにも選ばれたことがあるエルンスト・ローゼンがオレゴンのウィラメット・ヴァレーでワインを作っています。10年以上の歳月を経たそのワインがようやくリリースされました。

ワイナリーの名前はアパッショナータ(Appassionata=熱情)。ベートーベンのピアノ・ソナタから取ったタイトルです。

エルンスト・ローゼンはピノ・ノワールのファンでブルゴーニュにも地所を持っています。1999年にシャトー・サン・ミシェルと始めた「エロイカ・リースリング」のプロジェクトでしばしばワシントン州を訪れ、オレゴンにも立ち寄るようになったとのことです。そして2005年に「ジェイ・クリストファー」ワイナリーのオーナーのジェイ・ソマーズと共同で少量のピノ・ノワールを作り始めました。

その後、チェハレム・マウンテンズに畑を購入し、アパッショナータの畑としました(AVAはダンディー・ヒルズ)。2010年からワインを作り始めていますが、当初はソマーズが、エルンストの希望を汲んだ形で醸造を担当しました。ただ、エルンストはトップ・レベルのピノ・ノワールを造るとし、しかもそれを単一畑ではなくバレル・セレクションによるブレンドで造ると期待していました。ソマーズはその方針に反対し、2010年、2011年は単一畑でワインを作り、2012年からようやくエルンストの思う形でのブレンドになっていきました。

また、エルンストはワインを熟成して最高の状態で出荷すると考え、このほどようやく2012年のワインの出荷を始めたのです(同時に2017年、2019年もリリースしています)。2012年にはフォルティシモ、2017年はアンダンテ、2019年はアレグロと名付けられています。2012年は175ドルという価格が付いています。

また、エルンストはジェイ・クリストファーのオーナーにもなり、2019年にはジェイ・ソマーズと喧嘩別れしています。ソマーズは現在は「J.C.ソマーズ・ヴィントナー」というプロジェクトで一人でワインを造っており、彼の思う単一畑で小ロットのピノ・ノワールにこだわっています。

ワイン・サーチャーでW.ブレイク・グレイが書いた記事では3つのワインのテイスティング・ノートも書かれています。共通するのは3つともテクスチャーがよいということ。一方でやや複雑さに欠けるともしています。特に2012年のものについては「これは『Wow』とか「ホー」とか思うワインではなく「う~む」と思うようなワインだ」と、やや厳しい評価をしています。
Date: 2023/0815 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
スプリング・マウンテン
ナパのスプリング・マウンテンAVAにあるスプリング・マウンテン・ヴィンヤードは2020年のグラス・ファイアーの後、経営危機に陥り、2022年9月に民事再生(チャプター11)を申請していました。その後、投資グループのMGGインベストメント・グループが経営権を取得し、再建計画が発表されています。

200エーカーを超えるブドウ畑は植え替えられる予定で。70エーカーの畑の追加を申請する予定です。また22,000平方フィートの地下カーヴを新しいホスピタリティセンターとして改修します。また灌漑用の新しい池を造る承認も求める予定です。

スプリング・マウンテン・ヴィンヤードは4つのワイナリーが融合してできたワイナリー。1992年にミラヴァル(Miravalle)エステートからスプリング・マウンテン・ヴィンヤードに名称を変えました。1980年代には「ファルコン・クレスト」というテレビ番組のロケ地として使われたことでも有名です。

2020年のグラス・ファイアーで畑の28%のブドウをや16個の建物、ワイナリー設備などが失われました。そこからの再建を図っていましたが、コロナ禍なども影響して思うように立ち直れず、山火事の補償金を巡る保険会社との裁判に負けたことで(3500万ドルの補償を求めたが、1000万ドル上限という条項が付されていた)、チャプター11申請に至っていました。

山カベの雄としての復活を期待しています。
Date: 2023/0814 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
アルノー・ロバーツはニュー・カリフォルニアと呼ばれる自然派の中でも人気が高い生産者です。冷涼系の畑にこだわり、醸造ではごく少量のSO2を添加するほかは、土着酵母で旧樽を使い、赤ワインでは全房発酵を行うといった作りをしています。幼なじみのダンカン・アルノーとネイサン・ロバーツによるワイナリーで、ネイサン・ロバーツはロバート・モンダヴィの妻だったマルグリットの孫ということでも知られています。ラベルの絵はマルグリットによるものです。

人気の高いのはトゥルッソーなどですが、個人的には以前からここのシラーには注目していました。5年ほど前の試飲会で飲んだのが初めてだったと思いますが、それまで飲んだカリフォルニアのシラーはパソ・ロブレスやナパ、ソノマの温暖な地域のものが中心で、ソノマ・コーストのシラー自体が初めてでした。そのエレガントで凜とした味わいに驚き、それがきっかけで冷涼系シラーが好きになりました。

そのアルノー・ロバーツがウエスト・ソノマ・コーストにあるQue(ケイ)という畑で作る2021年のシラーがヴィナスで100点を取っています。ケイの畑はシャルドネで有名なThieriot(リトライ、リヴァース・マリー、センシーズなど)、リヴァース・マリーの自社畑のSummaのすぐ近くであり、太平洋からは8km程度。先日紹介したOccidentalの畑があるあたりと比べても丘1つ分ほど海に近い本当に冷涼な地域です。アントニオ・ガッローニはレビューの最後に「It's a magical wine that will thrill readers lucky enough to find it.」と書いており、この貴重なワインが日本で買えること自体ラッキーです。

ただ、飲み頃は2025年からとなっていますので、2年間は我慢して置いておいてください。

なお、アルノー・ロバーツのソノマ・コーストのシラーにも一部この畑のブドウが使われています。ちょっと前のヴィンテージなら5000円台で売っているところもあり、かなりお買い得だと思います。

ショップはしあわせワイン倶楽部です。


同じくしあわせワイン倶楽部のAVAものですが、こちらはインポーター直送品なので上と同梱はできないと思います。ただ、送料やクール便の料金は1つ分でいいようです(【楽天市場】直送、お取り寄せワインについて:しあわせワイン倶楽部)。


もう1つの単一畑「クラリー・ランチ」のシラー。こちらはペタルマ・ギャップの畑です。ヴィナス97点。ショップはしあわせワイン倶楽部。


ショップはトスカニーです。


ショップはリカータイムです。

Date: 2023/0811 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Veraison
上の写真はナパのカベルネの写真で左が昨年、右が今年の同じ日に、同じ樹を写したものです。明らかにヴェレゾンの進み具合が違うのがわかります。おおむね3週間くらい進行が違うとコメントされています(Side by side with last year’s vintage – same vine, same date | Harvest Napa Valley)。

ソノマも今年の収穫予想についてリリースを出しています(Sonoma County Anticipating the Start of Winegrape Harvest - Sonoma County Winegrowers)。ナパと同様、昨年と比べると3週間ほど遅い進行だそうです。ただ、昨年が干ばつの影響で収穫が早かった年であり、平年との比較では1~2週間遅れだとしています。

遅れの主な理由は今年前半の低温です。収穫量については昨秋から冬にかけて雨が多かったため、平年並みに戻ることが期待されています。
Date: 2023/0810 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
Comments
アーサー
日本人のワインメーカー桃井隆宏さんが造るアーサー・セラーズのディナーに参加してきました。アーサー・セラーズのワインと六本木「Modanism」のモダンな和食とを組み合わせたワイン会です。

ワインリストは以下の通り
1. Veuve Cliequot NV Brut
2. Arthur Chardonnay Russian River Valley 2019
3. Arthur Pinot Noir Russian River Valley 2021
4. Arthur Pinot Noir Cherry Ridge Vineyard 2021
5. Arthur Pinot Noir Spring Hill Vineyard 2018
6. Arthur Pinot Noir KR Ranch 2019
7. Arthur Pinot Noir Gloria Vineyard 2018
乾杯のスパークリングとシャルドネ1つ以外は5つピノ・ノワールが並びました。



2. Arthur Chardonnay Russian River Valley 2019
シャルドネについては「シャバシャバしたワインは作りたくない」と桃井さんのコメント。フィルターなしでボトリングされています。少し温かさを感じるワイン。中程度の酸味。白桃、塩っぽさも少しあります。ロシアン・リバー・ヴァレーというイメージに合っているワインだと思います。

3. Arthur Pinot Noir Russian River Valley 2021
2020年は山火事とそこからの煙の影響でワインを造るのを断念した桃井さん。ナパの被害の大きさが目立ちますが2020年はソノマも相当程度被害がありました。打って変わって2021年は非常にいいヴィンテージと評価されています。ただ、収量は少なく、ブドウの調達には苦労した面もあったそうです。
ロシアン・リバー・ヴァレーのピノ・ノワールは「楽しいワインをきちんと作りたい」と思って作ったワインだとの桃井さんのコメント。ロシアン・リバー・ヴァレーらしいリッチなピノ・ノワール。ジューシーな赤果実の風味で飲むと幸せになるワイン。

4. Arthur Pinot Noir Cherry Ridge Vineyard 2021
Cherry Ridgeは近年ワインメーカーとしての評価をめきめきと上げているRoss Cobbが栽培している畑。冷涼なグリーン・ヴァレーにあります。Arthurでこの畑のワインを造るのがこれが最初です。3番と比べるとエレガントですが、キメの細かいタンニンがあり、グリップ感を感じます。複雑さもあり、個人的にはこの日のベストワインでした。

5. Arthur Pinot Noir Spring Hill Vineyard 2018
Spring Hillはペタルマ・ギャップにある畑。風が強くブドウには過酷な環境です。果皮が厚く、タンニンもしっかりしています。Pommartクローンということもあるのか、アメリカン・チェリーのようなダークな果実味を感じます。4番が軽やかさに腰を据えた感じがするのに対して、こちらは最初からずっしりとした感じ。

6. Arthur Pinot Noir KR Ranch 2019
スイス・クローンを使っているという話。同席した方から教わったことによるとスイス・クローンは果実がやや大きめになるとのこと。そのせいか一番赤果実系の味わいを感じます。桃井さんいわく「どの料理にも寄り添うワイン」。バランスよく総合的によくできたワインです。

7. Arthur Pinot Noir Gloria Vineyard 2018
GloriaはFreemanの畑。Freemanのアキコさんと桃井さんとは共にエド・カーツマンにワイン造りを教わった兄妹弟子の関係です。
これは3と同様、やや温かさを感じるワイン。リッチな果実味が美味しいです。うなぎのタレとのマッチングが良かったです。

ワインはもちろんのこと、料理も美味しく堪能しました。






Date: 2023/0809 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ワシントン州最大のワイナリーであるシャトー・サン・ミシェル(Chateau Ste. Michelle、会社名はサン・ミシェル・ワイン・エステーツ)が向こう5年間、購入するブドウを4割カットすると表明し、ワシントンのワイン業界に激震となっています。

シャトー・サン・ミシェルは一時はワシントン州の7割のワインを生産していたほどの大ワイナリー。米国全体で見てもトップ10に入る規模であり、現在もワシントン州の約半分を生産しています。また、オレゴンでもAtoZやErathなどのワイナリーを保持しており、オレゴン最大のワイナリーでもあります。

ただ、自社畑は少なく、ワシントンで2400エーカー、オレゴンで190エーカーとなっており、ほとんどが契約栽培者からの購入となっています。ワシントン州ではそれが3万エーカーにも及びます。今回の発表は、その3万エーカーを1万8000エーカーにまで減らすということになります。契約農家からの買い取りを一律4割減らすのか、契約農家によって完全に切ったりそのままだったりするのかは公表されていません。

サン・ミシェルは10ドル弱の価格帯を得意としており、コロンビア・クレストなどの有力ブランドを抱えています。ただ、この価格帯の市場は減少傾向にあり、よりプレミアムな価格帯のワインに移行する動きがあります。例えば2020年のコンステレーション・ブランズからガロへの大量ブランド売却(シミやレイヴンズウッド、フランシスカンなど)も低価格帯ブランドを減らすためでした。

そういう意味ではサン・ミシェルは業界の変化についていくのに失敗したという見方もあります。

また、サン・ミシェルの親会社は2021年に投資会社のシカモア・パートナーズに変わっていますが、そのことと今回の動きにはほとんど関係なく、それ以前からの価格帯シフトの失敗が重要だったという見方が主流です。

ワシントン州では1万エーカー以上の畑のブドウが行き場を失うことになり、他のワイナリーによるブドウの契約なおdにも影響がでてくるのは間違いないでしょう。ブドウ価格も下落することが予想され、栽培家にとっては非常に厳しい状況になりそうです。
Date: 2023/0805 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ピーター・ルーガー
8月6日からアカデミー・デュ・ヴァンで秋冬講座の募集が始まります。今回はナパヴァレー・ワイン・ベスト・エデュケーターとしてナパの講座を3つ募集します。

カリフォルニア・ナパ・ヴァレー・ベーシック
11月1日から始まる6回のコースです。ナパヴァレーの全AVAを網羅して学ぶ講座。1年後になりますが、次のナパヴァレー・ワイン・エキスパートを受験する人のための勉強や、すでにナパヴァレー・ワイン・エキスパートは受かったけど、AVAの知識など自信がないという人に向く内容です。公式テキストブック付属。

カリフォルニア・ナパヴァレーの名門ワイナリー
こちらは、もう一歩先を勉強したい人のための講座。
第1回 「パリスの審判」で1位になったスタッグス・リープ・ワイン・セラーズとシャトー・モンテレーナ
第2回 復活した古豪、イングルヌックとボーリュー・ヴィンヤード
第3回 ナパ・シャルドネの両雄、ハイドとハドソン
第4回 クラシックとモダンスタイル、アンディ・エリクソンが作るマヤカマスとファヴィア
第5回 独自スタイルを貫くシルバー・オークとジョセフ・フェルプス
第6回 銘醸畑が生み出す最高のカベルネ、ドミナスとシェーファー

あれ、モンダヴィとかオーパス・ワンはないの? と思われるかもしれませんが、別の先生がモンダヴィとオーパス・ワンの単発講座を開きますので内容がかぶらないようにしました。
ワインの物語を紐解く「ロバート・モンダヴィ」編 ワインへの情熱とフランス・イタリアの巨匠たち

さて、3つ目の講座は2024年1月19日に開催する予定の「ピーター・ルーガーで熟成肉ステーキと最上級ナパワインを味わう」です。
予約困難なステーキ・ハウス「ピーター・ルーガー」で熟成肉とナパのワインを味わう講座。目玉は2004年のBondの単一畑2本です(VecinaとMelburyを予定)。どちらも普通にレストランで飲んだら1本20万円はくだらないでしょう。

今期のラインアップを見ていたら、布袋ワインズの社長を退任された川上さんが大阪校でやるカリフォルニアワインの講座もあります。
カリフォルニアワインの新たな時代  =甘くて濃いワインだと思っていませんか?=
歴史を刻む古樹齢の深い味わいの世界   =カリフォルニアを中心に各産地を比較する=
どちらも単発の講座で、参加しやすいと思います。カリフォルニアワインの講座が増えるのは嬉しいことです。
Date: 2023/0804 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
最近はブルピノファンも狙っているというドメーヌ・ド・ラ・コートの2021年のピノ・ノワールが再入荷しています。生産量が元々少ないため、日本への割当もあまりもらえないというワイン。再入荷も奇跡かもしれません。エレガント系ピノ・ノワールのファンならばマスト案件でしょう。

余談ですが、自サイトを検索していたら、ドメーヌ・ド・ラ・コートのエステートが5000円台という記事を見つけて、その頃に買っておくんだったなあと改めて思いましたです。

レア物ではハドソンのスポット入荷ものも一部にあります。カベルネ・フラン・ベースのオールド・マスターは5年以上寝かせたらむちゃくちゃ美味しくなると思います。

以下の3本はいずれもWassy's。個人的お薦めはブルームズ・フィールドですが、エステートはコスパ高いです。

アサヒやワインセラーはブルームズ・フィールドはありませんが、値段は少し安い。

タカムラワインハウスも同様。

ハドソンのオールド・マスター。リンク先はココスです。

「コシュ・デュリより美味しい」と言った人もいたハドソンのリトル・ビット。超限定品です。しあわせワイン倶楽部。
Date: 2023/0803 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Occidental
先日「オクシデンタル2020年を全部飲む」という記事で、スティーブ・キスラーのオクシデンタル(Occidental、オキシデンタル)のワインの記事を書きました。

その後、期せずしてオクシデンタル関連の記事が2つ続けて公開されました。一つはVinfolioのブログで、スティーブ・キスラーがオクシデンタルを始め、一方でキスラーでは元ハドソンのジェイソン・ケスナーを育てて退いていった話、オクシデンタルのこれからの話しなどが書かれています(In Pursuit of Sonoma’s True Identity: Kistler and Occidental - Vinfolio Blog)。もう一つは、元ワイン・アドヴォケイトのリサ・ペロッティ・ブラウンの新サイト「ザ・ワイン・インディペンデント」の記事で、こちらはオクシデンタルに絞った話を書いています。

2つの記事に共通する部分として、オクシデンタルが新しい畑を開発しているという話が出ています。また、ケイト(キュヴェ・キャサリンのキャサリン)が、父親と一緒にワイナリーの仕事をしており、それを徐々に引き継いでいるという話もあります。ちなみにケイトが卒業した大学はハーバード。スティーブのスタンフォードとは異なりますが、米国の東西を代表する大学を親子で卒業しているというのも興味深いところです。オクシデンタルの新しい畑は、ケイトが最初から責任者として開発をしているとのことで、ここからオクシデンタルの第2章が始まることを予感させます。

この2本の記事、偶然同じ時期に出たというよりも、スティーブがケイトへの禅譲を世間に印象付けるために取材させたのではないかという気もしています(スティーブはメディアの取材をあまり受けない人として知られています)

なお、蛇足ですがスティーブ・キスラーがオクシデンタルを始めたときの記事、このブログがたぶん世界で最初に取り上げています(キスラー謎のオーナー変更とスティーブ・キスラーの新ワイナリ)。このときはスティーブ・キスラーがキスラーをやめて完全にオクシデンタルだけになるとは予測できませんでしたが。
Date: 2023/0801 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
オレゴンという地名からマルベックを想像する人も、マルベックという品種からオレゴンを想像する人もほとんどいないと思いますが、オレゴンの南部でマルベックが密かに広がってきています(The New Frontier for American Malbec)。
oregon

オレゴンというと広大なウィラメット・ヴァレーが有名ですが、その南にあるアンプクア・ヴァレー(Umpqua Valley)や、オレゴンの最南部にあたるローグ・ヴァレー(Roque Valley)がその地域。

マルベックが最初に植えられたのは1960年代。単一品種としてワインに使われるようになったのは1990年代終わり頃からです。現在オレゴン全体で300エーカーほどのマルベックがあり、うち170エーカーほどがオレゴン南部にあります。ちなみにカリフォルニアでは3万トン台の収穫がありますから数千エーカーのマルベックの畑があると推測できます。それに比べるとかなり少ないのは事実です。

オレゴンのマルベックはアルゼンチンのものなどと比べるとエレガントな作りになるようです。「ピノ愛好家とカベルネ愛好家の両方にアピールします。オレゴンのマルベックは、メンドーサのマルベックでは味わえない、赤いベリー、ダークベリー、プラム、野生の花、スミレが何層にも重なった複雑な味わいです。そしてその濃い色と口当たりはカベルネに似ています。オレゴン州にとっては自然のブドウなのです」。ヴァルカン・セラーズのオーナーのJPヴァロット氏はこのように語っています。

今後どう成長していくかわかりませんが、興味深い品種です。
Date: 2023/0731 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
昨年の春に「ドルーアンが造る高評価のオレゴンピノが格安」という記事で紹介したドルーアンがオレゴンで作るピノ・ノワール「ローズロック」。2019年はワイン・アドヴォケイトでピノ・ノワールが97点、シャルドネはなんと99点という高評価。国内でも税込み5000円強という安さで、一瞬にして売り切れました。

2021年はアドヴォケイトの評価はまだ出ていませんが、ピノ・ノワールはワイン・エンスージアストで94点(エディターズチョイス)、シャルドネはジェームズ・サックリングで94点と、上記ほどではないにしろ、十分に高い評価が出ています。

何よりも、この値上げラッシュの中でピノ・ノワールがまだ5000円台半ば、シャルドネは4000円台というのはありがたい限り。ワイナリー価格はどちらも42ドルなので、1万円近い値段がついても全然不思議ではないところです。

ちなみにドルーアンは元々ドメーヌ・ドルーアンという名前でオレゴンのダンディー・ヒルズのパイオニアの一つとしてオレゴンのワインを切り開いてきました。ローズロックは、近年注目が高まっているエオラ・アミティ・ヒルズに新たに作った畑のブドウを使ったブランドで、ドメーヌ・ドルーアンとは並び立つ関係にあります。



こちらはWassy'sです。
Date: 2023/0728 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments

ナパでいま、注目されている品種の一つがカベルネ・フランです。カベルネ・ソーヴィニヨンから植え替えているという話も結構あるそうですし、ブレンド品種としてだけでなく、75%以上カベルネ・フランを使ったヴァラエタル・ワインとしても存在感が増しています。

カベルネ・ソーヴィニヨンと比べると生産量は1桁違いますが、実はブドウの価格が一番高いのはカベルネ・フラン。近年の人気で引く手あまたになっています。

一方で、ヴィナスのアントニオ・ガッローニは「青臭く、薄く、品種の表現力に乏しく、説得力に欠け、時間を費やす価値のないワインも多く味わった」と書いており、水準に達していないワインも珍しくないようです。カベルネ・フランはカベルネ・ソーヴィニヨンと比べて栽培が難しく、栽培適地もまだ試行錯誤の面があります。ガッローニは「フランはピノ・ノワールのようなものだ。良いときは本当に良い。しかし、悪いときは本当に悪い」とも書いています。

先日、アカデミー・デュ・ヴァンで、私としては初めてカベルネ・フランだけのクラスを行いました。ナパで買ってきたワインが大半であり、初めて飲むワインも多く、凶と出るか吉と出るか、私自身もちょっとどきどきしながらの講座でした。

最初の2本はトルシャード(Truchard)のカベルネ・フランとハドソン(Hudson)のカベルネ・フラン・ブレンド「オールド・マスター」。どちらも冷涼なカーネロスのワインです。冷涼な地域の中でもこの2つのワイナリーはやや丘になった畑も多く、海からの冷気を多少なりとも防ぐことができます。ハドソンはカベルネ・フランやシラーの評価も非常に高く、トルシャードはカベルネ・ソーヴィニヨンやジンファンデルも作っています。

トルシャードのカベルネ・フランは、一番冷涼感があり、エレガント系の味わい。一方、ハドソンは非常に複雑味のあるワインですが、とにかくまだ若くて固い(ヴィンテージはどちらも2020)。ポテンシャルはむちゃくちゃ感じましたが、もう5年は寝かしたいワインでした。人気も2分でしたが、暑い日でもあり今日のむならトルシャード、というのが私の選択。ちなみにトルシャードのカベルネ・フランは定価45ドルでオールドマスター(150ドル)の3分の1以下の価格。この日のワインの中ではダントツの安さでしたがよくできていました。

次の2本はヴァカ山脈系の山のワインであるファヴィア(Favia)のセロ・スール(Cerro Sur)とマヤカマス系のスプリング・マウンテンにあるキーナン(Keenan)の対決。Faviaはこの日のワインの中で一番濃厚。ヴァカ山脈系らしい日当たりを感じるワイン。一方、キーナンはマヤカマス系らしい緻密なタンニンを感じます。これも甲乙つけ難いワインでしたが、個人的にはセロ・スールの力強さに軍配を上げたい気がしました。

最後の日本はヴァレー・フロア系。ダックホーン(Duckhorn)とデタート(Detert)です。ダックホーンのカベルネ・フランは、カベルネ・フランらしさがあるかどうかちょっと心配でしたが予想以上に美味しく驚きました。

デタートは、かのト・カロン・ヴィンヤードのオリジナルのエリアにある畑。1943年にマーティン・ステリングという人がオリジナルのト・カロンの大部分を取得し、そこの一部に1949年にカベルネ・フランを植えました。これがカリフォルニアで一番古いカベルネ・フランと言われています。マーティン・ステリングが亡くなった後、未亡人が一部をデタート家に売却したのが、現在のデタートとマクドナルドの畑になっています。歴史的にはト・カロンと名乗れる場所ですが、商標の都合でその名前は使えません。
デタートのカベルネ・フランは。その一番古いカベルネ・フランと、より新しいブロックのカベルネ・フランを使っています。深みとエレガントさと両立して素晴らしいワインでした。それでもダックホーンと人気はほぼ2分。ダックホーンも大いに健闘しました。

なお、全体を通して一番好きなワインを挙げてもらったところ、そこではデタートが一番人気でした(私もデタートが1位)。

ところで、カベルネ・フランというと「ピーマン香」と思っている人が多いでしょうが、この日のワイン、冷涼なトルシャードを含めてピーマン香は見当たりませんでした。リースリングのペトロール香と同様、品種の特徴というより、特定の環境で育ったその品種で出やすい一種の欠陥香と言っていいと思います。

カベルネ・フラン好きといってもなかなかこれだけまとめてカベルネ・フランを試飲できる機会はないので、私にとっても勉強になりましたし、とても楽しい試飲でした。「世界が広がった」という感想もいただき、受講生にも喜んでもらえてよかったです。
Date: 2023/0727 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ワイン・エンスージアスト誌が2022年11月から2023年7月の間にテイスティングした3000以上のカリフォルニアワインの中からトップ10を発表しています(We Tasted Over 3,000 California Wines. Here Are 10 Standouts. | Wine Enthusiast Magazine)。

Ramey 2020 Hyde Vineyard Chardonnay (Carneros-Napa Valley) 99pts
Chappellet 2019 Pritchard Hill Cabernet Sauvignon (Napa Valley) 98pts
Far Niente 2019 Estate Bottled Cabernet Sauvignon (Oakville) 98pts
Samuel Louis Smith 2021 Pelio Vineyard Pinot Noir (Monterey County) 98pts
Epoch 2019 Block B Syrah (Paso Robles Willow Creek District) 98pts
Schramsberg 2004 Reserve Late Disgorged Sparkling Blend (North Coast) 98pts
Ramey 2020 Rochioli Vineyard Chardonnay (Russian River Valley) 98pts
Ramey 2020 Woolsey Road Vineyard Chardonnay (Russian River Valley) 98pts
Scar of the Sea 2021 Bassi Ranch Syrah (San Luis Obispo County)  97pts
Eden Rift 2019 Lansdale Slope Pinot Noir (Cienega Valley)  96pts

なんといっても目立つのはシャルドネの魔術師とも呼ばれるレイミーのシャルドネが3本も入っていることです。2020年のハイドとロキオリ、ウールジー・ロード。ハイドとロキオリは、この前のヴィンテージのものは少量日本にも入っていましたが、このヴィンテージのは見かけていないような気がします。AVAものは8000円くらいで買えて相当美味しいので、もしレイミーのシャルドネを飲んだことがないという人がいたらお薦めです(個人的にはキスラーのジュヴナイルに1万円以上出すんだったら、レイミーのAVAもの買う方が絶対にいいと思っています)。でもハイド飲みたい(笑)。


4番目に入っているサミュエル・ルイス・スミスというワイナリーは初めて知りました。モントレーのピノ・ノワールです。気になりますね。

シュラムスバーグのスパークリングは「J.Schram」がフラッグシップと思われていますが、実はリザーヴというのもあります。しかもこれは50周年記念ということで作られた特別なものですね。飲んでみたいです。

ピノ・ノワールではサミュエル・ルイス・スミスのほか「エデン・リフト」が入っています。シエネガ・ヴァレーというAVAは知らない人が多いと思いますが、カレラのあるマウント・ハーランの麓にあたります。結構古い畑が残っていたりして興味深い地域です。エデン・リフトのワインはいくつか日本にも入っていますが、このピノ・ノワールはなさそうで残念。

Scar of the Seaはナチュラル系の生産者。このワインはラベルがかわいい。日本に入らないですかねえ。


最後にナパのカベルネからはシャペレーのプリチャード・ヒルとファー・ニエンテが入っています。シャペレーのプリチャード・ヒルは唯一「プリチャード・ヒル」の名前を冠したワイン。日本にも少量入ってきますがこのヴィンテージはなさそう。ファー・ニエンテはなんとなく「昔人気だったワイン」くらいに思われていそうですが、カベルネもシャルドネも美味しいと思います。昔はちょっと割高かなあという感じもありましたが、あまり価格は変わっていないので、今はコスパも悪くない(安くはないですが)です。
Date: 2023/0725 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
3月に「ラック&リドル、シャルマ方式のスパークリング製造設備を導入」という記事でソノマのラック&リドルがコッポラの親会社であるデリカートからシャルマ方式のスパークリングワイン醸造設備を購入した話を書きました。このサービスが正式に開始しています。

この設備は元々コッポラの「ソフィア」スパークリングの醸造で使われていたもので、ラック&リドルはソフィアの醸造も担当することになりました。

スパークリング・ワイン専業のカスタム・クラッシュ(委託醸造)として有名なラック&リドルですが、これまでは瓶内二次発酵方式しかありませんでした。もちろん高品質なスパークリング・ワインを作るには瓶内二次発酵が必要ですが、手間も日数もかかります。シャルマ方式(タンク内で2次発酵を行う)であれば、平均で30~45日でスパークリング・ワインが作れるというメリットがあります。

実際、シャルマ方式を基本とするイタリアのプロセッコは近年大人気で米国での輸入も急増しています。ライトなスパークリング・ワインを求める層にアピールできます。

新しいボトリングの設備ではガラス瓶だけでなく、缶のラインもできるそうです。カジュアルなラインのスパークリングが増えてくるかもしれないですね。

ラック&リドル自身にもシャルマのワインのラインアップが増えるのでしょうか。
こちらはブリュット。非常にコスパ高いスパークリング・ワインです。

個人的にはオールマイティなブラン・ド・ノワール、大好きです。ショップはどちらもしあわせワイン倶楽部。
Date: 2023/0724 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments

オクシデンタル(Occidental、オキシデンタルと読むのとどっちがいいのかはいつも悩んでます)の2020年を水平で全部飲む会があるというのが、参加してきました。これまで1、2本を飲むことはあっても水平で全部というのは初めてです。
主催者のYuta Kanzawaさんがまとめられた資料の一部がこれ。リッジで「オクシデンタル」という畑を使っていたのは私も初めて知りました。
スティーヴ・キスラーと2つのワイナリーの歴史 History of Steve Kistler & two wineries|Yuta Kanzawa
このほかにも畑の資料など大変詳しいものを作っていただいていました。

オクシデンタルの持っている畑の多くはウエスト・ソノマ・コーストに入っています。ウエスト・ソノマ・コーストの中でも比較的標高が低く、ペタルマ・ギャップの方向に冷たい風が入ってくる地域。冷涼地域の中でも冷涼感の強いところです。

最初はラック&リドルのブラン・ド・ノワールで乾杯。これはいつ飲んでも美味しい。

オクシデンタルの1本目は「フリーストーン-オクシデンタル」で複数の畑のブドウを使ったオクシデンタルでは唯一広域の指定のもの。ほかと比べるとちょっとハーブ感がありました。

2本目はオクシデンタル・ステーション。ここはオクシデンタルの畑の中では最も内陸。グリーン・ヴァレーに入ります。確かに味わいもやや青系のフルーツ感が入っています。

3本目のボデガ・リッジと4本目のランニング・フェンス キュヴェ・キャサリンはボデガ・リッジ地域の畑・ボデガ・リッジ・ヴィンヤードの方が標高が高く、ランニング・フェンスの方が低くなっています。標高が高い方が霧の影響が少なく、少し気温も高いと思われます。確かにボデガ・リッジの方がリッチな味わい。

5本目はボデガ・ヘッドランズ キュヴェ・エリザベス。メモがいい加減すぎますが「エレガント」と書いています。ちょっと調子に乗って飲みすすぎたかもしれません。

最後はSWKヴィンヤード。スティーヴ・キスラー氏の頭文字を取った畑です。オクシデンタルの畑の中でも一番涼しいところにあります。オクシデンタルのワインの中でも一番レアで入手も難しいワイン。結果的には味もこれが一つ抜けて美味しかったです。娘の名前をつけたワインより自分の名前のワインの方が美味しいというのは、ちょっとずるい(笑)。

貴重な経験をさせていただきました。
Date: 2023/0723 Category: グルメ
Posted by: Andy
Comments
ナパヴァレー・ワイン・ベスト・ソムリエ・アンバサダーの山田琢馬君がソムリエをしているパレスホテルの「グランドキッチン」に行ってきました。

その前にイベントで行ったことはありますが、ちゃんと食事をするのは初めて。歴史あるホテルで「トラディショナルメニュー」という50年以上前から作られているメニューもあります。

ワインは1本だけ持ち込み、後はグラスでいろいろ出してもらいました。

まずはシャンパーニュ。



2009年のHdVのシャルドネ。10年以上経っているとは思えないほどのフレッシュさもあり、美味しい。驚きました。




このトリュフ入りのフレンチフライは絶品。行ったら絶対食べるべきです。



アミューズを色々出していただき、楽しくおいしかったです。


僕が選んだメインは「香川産オリーブ豚ロース肉のプランチャ」。豚肉がジューシーで美味しい。


持ち込んだワインはこれ。1997年のViaderです。


「国産牛フィレ肉のグリル」。牛肉やわらかくて美味しい。


トラディショナルメニューの「ローストビーフ」。これが絶品でむちゃくちゃ美味しい。見た目以上に厚みもあってボリュームもたっぷり。


トラディショナルメニューの「マロンシャンティイ」。これは絶対に食べようと決めていました。美味しい。


ラテアートも琢馬君作成。いろいろありがとうございました。

ホテルにしては価格もリーズナブルですし、料理はどれも安心できる味わい。また行きます。
Date: 2023/0722 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
「Blind Wine Tasting」のYouTubeチャンネルでスリーのジンファンデルが出題されていました。
最初の方では熟度の高さとか、ジンファンデルかなみたいな意見も出ていました。ドライフルーツぽいけど黒系じゃなくて赤系という分析はさすがだと思います。ただ、意外とタンニンがしっかりしていてストラクチャーがあるあたりでジンファンデルを候補から外してしまう人が多かったのかなと思いました。また、色調がそこまで濃くない(誤解されている人が多いですが、ジンファンデル自体はそれほど色が濃くないブドウです)ので、いろいろと迷った人が多いようでした。「ガリーグ」(野生のハーブ類)という印象を持った人が多かったのも興味深かったです。

イタリアのプリミティーボという意見も出ていましたが、最終的にはグルナッシュ二人に、コルヴィーナ(アマローネ)ということで3人とも旧世界の方に行ってしまいました。また、価格は6000円台とか7000円台と、実際の価格(3400円)の倍近くで考えた人が多かったのが面白かったです。

意外と美味しいジンファンデルを飲んでいる人って少なくて安いジンファンデルのイメージしか持っていないと、なかなか難しいかもしれないですね。それにしてもスリーのコスパはすごいと思います。

しあわせワイン倶楽部です。

トスカニーです。

Date: 2023/0721 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
近年ナパのワインメーカーたちを悩ませている問題の一つがブドウの色が落ちてしまうこと。

ニュートンのワインメーカーは華氏105度(摂氏40.5度)の気温が10日間続いた後、かなりの色落ちがあることに気づきました。ドミナスのトッド・モステーロは116度(摂氏46.6度)に達した後、ブドウの中の色素のコンポーネントが半減したと推測しています。

ワインの中の色素でいちばん重要な要素はアントシアニンです。アントシアニンが減ってしまうと、単に色が薄くなるだけでなく、タンニンをより強く感じさせるようになります。アントシアニンはタンニンと結びついて、それがスムーズに感じられるようにする効果があるためです。

ヒートウェーブが毎年のように来るようになると、濃厚さで知られるナパのワインの色も落ちてしまうかもしれませんし、品質にも影響が出てくる可能性があります。
Date: 2023/0718 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
トップレス
ナパのラザフォードにあるワイナリー「ホーニッグ(Honig)」がボトルのネック部分に巻くフォイルを撤廃しました。これに合わせて、顧客に送るポストカードにプールサイドでカメラに背を向け、ビキニ・トップを上に掲げた女性たちの写真を採用して目を引きました。
null

ホーニッグはサスティナビリティに力を入れているワイナリーの一つで、最近ではボトルの軽量化にも取り組んでいます。

ボトルのフォイルはかつてはコルクをカビなどから守るために意味があるとされてきましたが、現在では単なる飾り以上の意味はありません。多くのワイナリーにとってはロゴを入れるなどブランディングのために使われているのが実情です。

また、ワイナリーにとってはフォイルを撤廃することで、ワイン1本あたり1ドル程度の節約にもなるといいます。

一方で、ワインの美的イメージを損なうのではないかという懸念もありましたが、少なくともホーニッグでは海外のインポーター1社から否定的な反応があっただけで、あとは良好だといいます。

フォイルもないのが当たり前の日が近づいているかもしれません。
Date: 2023/0715 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
「Sebastopol Hills(セバストポール・ヒルズ)」という新しいAVAが7月12日にTTB(アルコール・タバコ税貿易管理局)に申請されました。
sebastopol hills
このAVAは現在のロシアン・リバー・ヴァレー(Russian River Valley)の一部で、ウエスト・ソノマ・コースト(West Sonoma Coast)やペタルマ・ギャップ(Petaluma Gap)AVAに接する領域になっています。セバストポールの街の南方で、一部はグリーン・ヴァレー(Green Valley of Russian River Valley)と重なっています。また、ここはWest Sonoma Coastがその一部に加えたいとしていた地域でもあります。

ロシアン・リバー・ヴァレーでは近年「ネイバーフッズ」としてその中を6つの地域に分けてその地域の特徴を打ち出すマーケティングを行っていますが、セバストポール・ヒルズはその一つにもなっています。

Hillsと名が付いている通り、少し標高が高くなっています。気候的にはペタルマ・ギャップに吹き抜ける風の通り道になっており。ロシアン・リバーからの霧も上がってくることから非常に冷涼です。

また、周りの地域と異なる点としては、土壌がほぼGoldridge Soil(ゴールドリッジ・ソイル)という砂に粘土が混じった非常に水はけがよく栄養分の少ない土壌である点。土地に栄養分が少ないため、栽培のコントロールがしやすいといいます。

以前、リトライのテッド・レモンに話を聞いたときに、Sebastopol Hillsは比較的早くAVAになるだろうと言っていましたが、彼自身、この申請の中心人物であり、AVA化を推進しています。

おそらくはこれも将来のWest Sonoma Coastの拡張への一歩と考えているのではないかと思います。

土壌や地形、気候など、かなり特徴的な地域なので、AVAが認められる可能性は非常に高いと思います。
Date: 2023/0714 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
null
訃報が続きます。サンタ・リタヒルズの銘醸畑サンフォード&ベネディクトで知られるマイケル・ベネディクトが先週、がんで亡くなりました。

マイケル・ベネディクトは植物学を勉強し、UCサンタバーバラで海洋の植物への影響を研究するためサンタ・バーバラ沖のサンタ・クルーズ島に駐在していました。ここは19世紀にワイン作りで栄えていた島だったのですが、そこからインスピレーションを得てワインのブドウを育てるための冷涼な地域を探して、旧友のリチャード・サンフォードとバハ・カリフォルニアからカナダまでを回りました。最終的に見つけたのが最も近いサンタ・バーバラの冷涼な丘でした。

1971年に植樹、当初は51エーカーにカベルネ・ソーヴィニヨンとリースリングを植樹しましたが、うまく行かずピノ・ノワールで成功しました。現在のサンタ・リタ・ヒルズにおける最初のブドウ畑となったのです。

1980年にサンフォードとベネディクトは袂を分かち、サンフォードは自身のワイナリーを設立、マイケルは畑の管理を続けましたが後に売却。以来二人が一緒にワインを作ることはなかったのですが、現在のSanfordのオーナーのTerlato家が畑の権利も買い戻し、マイケルとも良好な関係を持つようになり、再びワインシーンに戻ってきました。その後はいくつかのワイナリーでコンサルティングをしていたようです。

マイケルが亡くなった後、リチャードもその死を悼むコメントをしています。

安らかにお眠りください。
Date: 2023/0713 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
20140818-ebihara.jpg

今週、ピゾーニやポール・ラトーなどのインポーターとして知られるilovecalwineの海老原卓也さんがご自宅で亡くなっているのが発見されました。しばらく前から体調が悪いのはご本人のFacebookの投稿で拝見してはいたものの、まさかそこまでとは思っておらず、大変ショックを受けております。

海老原さんと知り合ったのは多分ちょうど20年前くらいだと思います。私がブログで書いたAugust Westの記事に反応してメールをくださったような気がします(古いメールを調べましたが、このころはまだHotmailを使っていて、Hotmailでは10年前くらいまでしかメールが残っていないようです)。当時は海老原さんもまだサラリーマンで、カリフォルニアワイン好きの1人としてCWFC(カリフォルニアワインのファンクラブ)などでご一緒させていただきました。また、海老原さんが個人輸入したPisoniを分けていただいたり、私が個人輸入したRoarやLoringをおわけしたりという間柄でした。

海老原さんは私よりもどんどんのめりこみ、特にピノ・ノワールについてはカリフォルニアのほとんどを制覇したのではないかと思うほど、詳しくなられました。そして脱サラしてインポーターを始められました。

ちなみに、そのあたりのことは「神様が背中を押してくれているような気がしました――ilovecalwine 海老原卓也社長」でインタビューしております。


元々理系で、曲がったことが嫌い。必要最低限のことしかしゃべらないような方だったので、営業トークができるのか、多くの方が心配したと思います。それでも地道に販路が増えていったのは、海老原さんが輸入するワインのクオリティがみなに評価されるものだったからだでしょう。

正直に言いますと、海老原さんとは疎遠だった期間もありました。インポーターを始められてからは、私のブログのスタンスに文句を言われたこともあります。近年はわだかまりも解け、試飲会にも伺うようになりましたが、一緒にワインを飲んで語り合うところまでは戻れませんでした。そんな私でも、もっとああしていれば、こうしていればと悔やむことはあります。より近かった人はさぞかし悔しかろうと思います。人に甘えない、頼らない、そういう方でした。

天国では少し人に甘えてリラックスしてください。
Date: 2023/0709 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
サンタ・クルーズ・マウンテンズ(SCM)にあるワイナリー「Rhys(リース)」のワインメーカー、ジェフ・ブリンクマンとマーケティング担当副社長のジョン・カプラノポーラスが来日し、セミナーが開かれました。コロナ前の2019年以来のRhysのセミナーでした。

以前のものは
カリピノを極めた? リース(Rhys)高品質の秘訣を探る
リースのシャルドネ、ピノ・ノワール その魅力は?

Rhysの本拠地はSCM。アンダーソン・ヴァレーにもベアワロー(Bearwallow)という畑があり、ワイナリー(醸造設備)も持っていますが、メインはSCMになります。

SCM
今回のプレゼンの最初のコンテンツがこの画像。SCMのマップですが色分けは土壌の違いを表しています。ある意味これがRhysを象徴するものと言えるでしょう。

北西から南東方向にかけて中央付近に斜めの線が見えます。これがサンアンドレアス断層です。北米大陸の「北アメリカプレート」に西から来た「太平洋プレート」がぶつかることによってできた断層です。

図からわかるように断層付近は土壌が入り組んだ形になっています。プレートのぶつかり合いで、沈み込んだりめくり上がったりするところがあり、下の方にあるはずの古い土壌が表面に出てきたり、逆に新しい土壌が表面を覆ったりといったおとが起こっているからです。

これによってSCMの中では様々な土壌が見られます。そのテロワールを大事に表現しようというのがRhysのワインの根幹にあります。

Rhysの畑はいずれも1から自社で開梱したところ。その場所を選ぶために表土の種類やその厚さ、その下の母岩について詳しく調査するそうです。重要なのは表土が浅いことで、そのために標高が高く斜度が大きいところを選んでいます。多くのブドウ畑が作られる沖積扇状地などの堆積土壌は表土が深くなり、Rhysが求めるブドウはできないといいます。

カリフォルニアは地中海性気候でブドウの生育期間に雨はほとんど降りません。太陽光は有り余るくらいたくさんあります。Rhysではワインにエレガントさや精妙さを出したいと考えているので、そのためには痩せた土地が必要なわけです。SCMは標高、土壌、斜度、水はけのよさが備わっています。土壌ではカルシウムを含んだシェールや、一部には石灰石もあります。そして表土には粘土があることも大事だといいます。Rhysではなるべく灌漑なしの栽培を行おうとしており、保水力がある粘土の層がそれを助けてくれます。

こういった条件を満たす畑で、Rhysはクローンや台木など同じものを使い、密植など栽培もほぼ共通の仕様で作っています。テロワールだけの違いがワインの違いになるようにするためです。なお、木は1ヘクタールあたり1万~1万7000本とかなりの密植で、機械が入れられないため、すべて手作業が必要になるといいます。

醸造もどの畑も基本的には同じ方法で、人の介入も最小限です。
例えばシャルドネの場合、夜に収穫し、梗が付いたままプレス、1日空気に触れたあと樽に入れます。樽は15%新樽でライトトーストのTonnellerie Dany樽。天然酵母で発酵し、1年樽熟成。その間バトナージュはしません。カリフォルニアのワインは十分リッチなのでバトナージュの必要がないと考えています。それからステンレススティールのタンクに移して6~8カ月熟成してボトリングします。なお、マロラクティック発酵は100%行います。酸が高いので全部マロラクティック発酵してもPHは3.5程度までしか上がらないそうです。

Rhysは発酵期間が長いのも特徴です。とはいえ、天然酵母で樽発酵ですから温度管理を特にしているわけではなく、室温自体が12~13℃とかなり低く、発酵が非常にゆっくり進み、ときには断続的に行われるからだそうです。発酵期間が長くなることがワインにどのような影響を与えているかについてははっきりしたことはわかっていませんが、ジェフによると。これまでいいと思ったヴィンテージはどれも発酵期間が長かったときのものだそうです。

ピノ・ノワールの醸造についでです。
ブロックごとにわけて発酵します。梗を残すかどうか、どれくらい残すかはソーティング時に決めます。発酵は1トンの小さなタンクで行います。SCMはすぐワインが濃くなってしまうのでそれが起こらないよう注意するため。パンチダウンはせずに足で踏んで落とします。粒をつぶさずに落とせる。そうです。シャルドネとは異なり、新樽の比率は畑によって違っています。新樽は樽香を移すというよりもタンニンをソフトにするために使っています。斜面の上の方のブドウなど、タンニンが強くなるところで新樽比率が高くなります。1年後に1回タンクに移し、ブレンドを決めてからもう一度樽に入れて5カ月くらい熟成する。


null
これがピノ・ノワール用の発酵タンクで100個以上あります。

シャルドネもピノ・ノワールも単一畑のほかにSCMのAVAものを作っています。これは比較的早飲みに向いたブレンドで、少し酸を抑えめにしています。ただ、AVAものは単一畑のワインをセレクトした後に残りのワインから作るので、完成するのは一番最後になるそうです。
SCM
畑の位置を表したマップです。

畑の話をまとめておきます。
null
これはアンダーソン・ヴァレーにあるベアワローの畑のマップです。アンダーソン・ヴァレーの中でも海に近い冷涼な地域にあります。ピノ・ノワールはクランベリーの味わいがあって、タンニンはやや低くなります。

null
SCMのマウント・パハーロ(Mt. Pajaro)。海から4.2kmと近く標高300m。ちょっと窪地。モントレー湾からの風で霧が溜まらないところです。「ストレートにびしっとしたワイン」ができるとのこと。

null
null
Rhysのワインの中でもフラッグシップと見られているのがアルパインとホースシューの畑でしょう。この2つの畑、距離的には400mくらいしか離れておらず、斜面の向きもほぼ同じ。両者の一番大きな違いは土壌。アルパインは400万年前と比較的新しい土壌です。若いシェールの岩で、、とてももろく、鉄分も入っています。
一方、ホースシューは1500万年の土壌で、古いシェールのところです。非常に硬い土壌です。
アルパインは灌漑なしで栽培できますが、ホースシューは保水力が少ないためか、灌漑が必要になります。これが関係しているのか、ホースシューの場合はピノ・ノワールで梗を入れずに作るという判断につながります。一方、アルパインは25%ほど全房発酵を使っています。

さて、後はワインのテイスティングコメントと行きたいのですが、実はこの日のテイスティングノートが全部消えてしまいました。久しぶりにこれを思い出しました。orz

というわけで、ここまでで今回のレポートは終わりです。ワインは大変おいしかったです。ただ。今回は畑ごとの違いがどう出ているかという微妙なところが問題になるので、テイスティングノートがないとちょっと厳しいです。いろいろ便宜を図っていただいた中川ワイン様、に感謝と陳謝です。



Date: 2023/0707 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
OVR
Old Vine Registry」という世界の古木の畑のデータベース・サイトが誕生しました。これは元々ジャンシス・ロビンソンが中心となって、Excelのデータとしてまとめていたものですが、そこに登録されている畑が1800を超え、もっと使いやすいものにしたいということで誕生しました。サイトの設計やデータの登録などでワインブログVinographyの著者でジャンシス・ロビンソンのサイトのライターでもあるアルダー・ヤロー(Alder Yarrow)がボランティアで携わっており、記事を書いています(Introducing the Old Vine Registry : Vinography)。

登録の条件は35年以上の樹齢の畑となっています。これはオーストラリアのバロッサ・ヴァレーの「Old Vine Charter」や、南アフリカの「Old Vine Project」の基準であり、「The Old Vine Conference」という古木の畑の会議もこれに倣っています。カリフォルニアのHistoric Vineyard Societyは50年を基準にしているので、それよりもだいぶ多くの畑が登録される可能性があります。

畑の登録はボランティア・ベースで行われており、誰でもサイト上で登録申請できます。現状はフランスなどの情報はかなり不足しており、協力が求められています。

また、面白いのは畑の情報が検索できるだけでなく、そこから「Wine-Searcher」を呼び出してその畑のブドウを使ったワインを検索できることです。
null
例えば「Old Hill Ranch」から呼び出すとこのように、Old Hill Ranchのワインの一覧が表示できます。Cabernet Sauvignonがあるのはこれを見て初めて知りました。

畑のデータは「Creative Commons」のライセンスで公開されており、誰でも無償で利用できます。

志の高いプロジェクトですが、ボランティアベースで運営されているのでいろいろ大変なこともありそうです。協力できる、協力したいという方はぜひ参加してみるといいのではないかと思います。
Date: 2023/0706 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
American Wine Day
これまで関西だけで開いていた米国産ワインのイベント「American Wine Day」が初めて東京で開かれます。

日時:2023年8月30日(水) 19:00~21:00
場所:パレスホテル東京 4F 山吹
チケット:1万3000円(税込み)、1000円のクーポンを含む
   7月31日までは早割で1万2000円(税込み、1000円クーポン込み)
   チケットは前売りのみで当日販売はなし

過去には業界向けのカリフォルニアワイン試飲会で終了後に一般客を有料で入れたことはありましたが(近年はやっていません)、一般向けでこれだけ大きな米国産ワインのイベントはほかにはありません。インポーター19社が出展し、試飲できるワインは200種類を超えます。なお、一部の高級ワインは別料金での試飲となっています。

出展インポーター(五十音順)
ヴィレッジ・セラーズ㈱
大塚食品㈱
オルカ・インターナショナル㈱
Grape Off㈱
(同) 謙 美
GO-TO WINE
サッポロビール㈱
㈱ジリオン
㈱デプトプランニング
㈱中川ワイン
同)NEW YORK WINE TRADERS
ヒースウィック・ジャパン(同)
㈱富士インダストリーズ
布袋ワインズ㈱
ボニリジャパン㈱
㈱リエゾン
WINE TO STYLE㈱
ワインピープル
ワインライフ㈱

米国産ワインですからカリフォルニアワインに強いインポーターはもちろん。オレゴンやワシントンに強いオルカ・インターナショナルや、ニューヨークに強いGO-TO WINEなども出展予定です。

イベントTシャツも販売しています(1枚4000円)
null

お申し込みはこちらから。
American Wine Day 2023 Tokyo チケット購入 Tickets Purchase
申し込み後に銀行口座に事前振り込みする形になります。クレジットカード決済などの対応はないのでご注意ください。


なお、業界関係者向けには13:00~17:00に試飲会があります。
Date: 2023/0705 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Science
人類はいつからブドウをワインや生食のために栽培するようになったのか。これまでは8000年ほど前に南コーカサス山脈、現在のジョージアのあたりで始まったというのが定説になっていました。ちょうど手元にあって最近読み直しているヒュー・ジョンソンの『ワイン物語』にも「ソ連のグルジア共和国」と、別の意味で歴史を感じさせる説明が載っています。

この定説を覆す研究がサイエンス誌の2023年3月号で発表されました。数ヶ月前の発表ですが、覚書の意味を含めて記しておきます。

この研究は中国の雲南農業大学など12カ国以上、89人の研究者による研究チームによるもので、栽培品種約2500と野生品種約1000のブドウのゲノムを分析することで起源を明らかにしようとしたものです。

この研究ではブドウの栽培は1万1000年前頃、南コーカサスと中東(現在のレバノン、イスラエル、シリア、ヨルダン)でほぼ同時に始まったとしています。どちらもヴィティス・ヴィニフェラの祖先にあたりヴィティス・シルヴェストリスに属していますが、氷河期前に分かれたもので、遺伝子的には明確に分離できたとのことです。

南コーカサスの方のブドウは黒海の北から欧州方向に多少広がりましたがその広がりは限定的でした。より広い地域に広がったのは中東原産のブドウでした。西ヨーロッパやアジア(ウズベキスタン、イラン、中国)にまで広がっていきました。ヨーロッパには野生の自生種もあったため、それらと交配して変化を遂げていったようです。特に、イタリアあたりでは野生種との交配による新種が現在の固有種につながっていると見られます。現在欧州で栽培されているブドウは基本的には中東原産のものから派生しているようです。例えばマスカット種は10500年前頃にトルコ辺りで生まれたと見られています。スペインのイベリア半島のブドウ種は7740年前頃に分かれたと見られます。

また、今回の研究ではワイン用の栽培の方が生食用の栽培よりも早く始まったという説も否定されています。

過去のブドウの栽培やワインの起源についての研究は、主に考古学的に行われてきました。例えば8000年前のジョージアという説はブドウの種の化石だったり、醸造に使われたカメの破片などから来ていました。今回は遺伝子によるアプローチで新たな光が照らされたと言えます。逆に言うと、ブドウの栽培やワインの醸造という文化がどう広がったかには、解答が得られていないわけであり、両方のアプローチによりまたワインの歴史がわかって来るのではないかと思います。

あと、確認ミスかもしれませんが、研究者の中に日本人らしい名前は見当たりませんでした。ちょっと残念。
Date: 2023/0704 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Blue Bin
ソノマのセバストポールにあるロン・ルービン・ワイナリー(Ron Rubin Winery)が750mlで100%リサイクル可能なボトルを使ったワイン「BLUE BIN」シリーズを発売しました。BLUE BINは米国でリサイクル可能なゴミを入れる青いゴミ箱のこと。

ガラスボトルはワインの製造・流通過程における二酸化炭素排出の30%を占め、一番大きな要素になっています。ロン・ルービン・ワイナリーはパッケージング大手のAmcor社と2年間研究してエコでプレミアム・ワインにも使えるボトルを開発しました。Plasmaxという薄いガラスの層をペットボトルの内側にコーティングする技術を使っているとのこと。

ロン・ルービン・ワイナリーは、社会や公益のために事業を行う企業を認証する「Bコーポレーション」に選ばれているワイナリー・世界で33ワイナリーしか認定を受けていません。

BLUE BINはロゼとソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・グリジオ、シャルドネの4種類。価格はいずれも15ドル。

null
Date: 2023/0702 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
前の記事で紹介した「ナパヴァレーの今」のイベントの翌日、今度はナパのワイナリー「ケール(Kale)」の生産者ディナーに参加しました。

創設者でオーナーのケール・アンダーソンはパルメイヤーでワインメーカーをしていたときに若くして「パーカー100点」のワインを作った才人。ケールでは、カベルネ・ソーヴィニヨンではなく、ローヌ系品種をメインに据えてワイン造りをしています。

4月のナパツアーではケールとの生産者ディナーがあり、そのワインに魅せられた人が続出。今回はその一人である八島さんのお店「焼きとりの八兵衛」六本木店でのディナーとなりました。私は残念ながらナパでは別グループだったのでケールのワインは今回が初めてです。


さらに、今回のディナーはケールのワイン+八兵衛の料理のペアリングに加えて、ナパヴァレー・ヴィントナーズ日本代表の小枝絵麻さんによる「ブリッジ食材」を使った一工夫が入っています。

最初のワインは2021 Kale Rose McGah Vineyard。これにゴマカンパチ。そしてブリッジ食材としてスイカと香味野菜を合わせます。ここでスイカを持ってくるという発想がすごいです。



McGahヴィンヤードはナパのラザフォードの畑。McGahファミリーは「スカーレット」というワイナリーもやっており、秀逸なワインを作っています。ケールはこの畑で0.5エーカーだけグルナッシュを作ってもらっており、それを使ったロゼです。カベルネ・ソーヴィニヨンだったら1本100ドルは軽く超えるようなワインができる場所での贅沢なワイン。ロゼはプレスする数時間だけスキンコンタクトして作っています。赤ワインを濃くするために途中で果汁を抜き取る「セニエ」ではなくロゼのためだけに作っていると強調していました。フレッシュな味わいでピーチやオレンジの風味。この有核果実的な風味がブリッジ食材のスイカによく合いました。

次はA-18ヴィンヤードという畑のシャルドネ2020年。アトラスピークの畑で以前はパルメイヤーがシャルドネに使っていたところですが、パルメイヤーの契約がなくなってケールで使えるようになったとのこと。ナパらしいリッチさときれいな酸があります。料理は手羽塩+レモン風味のからし味噌と、えんどう豆の串揚げ+スパイシーレモンマーマレード。ブリッジ食材はどちらもレモン風味ですが酸を利かしすぎるのではなく味噌やマーマレードといったまろやかな食材と混ぜているところがワインとの相性を引き立てます。



次は2017年のシラー「ハイド・ヴィンヤード」。畑には少量のヴィオニエも植えられていて混醸しているとのこと。料理は椎茸にピンクペッパーとイチゴ風味のゆかり、ラムチョップにチェリと赤しそのチャツネ。
シラーは冷涼なカーネロスのものだけあって、ナパのシラーとしてはとても酸が豊か。スパイスの風味もしっかりとあり、北ローヌ系の味わいです。うまい。

そして、まあこのラムチョップが絶品なのですよ。10本くらい食べたかった(笑)。美味しすぎてペアリングのことを忘れていました。




次のワインは2016年のケール「ヘリテージ」McGahヴィンヤード。グルナッシュ・メインのローヌ系ブレンドです。畑は前述のMcGah。料理は和牛串タレ+ほうじ茶と黒ごまのデュッカ、やきおにぎり+カリフォルニアポイントレーのチーズ。


ワインはハイドのシラーの硬質さと比べると柔らかさがありますが、赤果実ときれいな酸でバランスよく仕上がっています。そして焼きおにぎりも激うま。5個くらい食べたかった(笑)。



最後はアトラス・ピークの銘醸畑「ステージコーチ」のブドウを使ったシラーです。ローヌ系の赤が3つ続く中で。これが一番リッチな味わい。料理は「和牛すき焼き+黒七味」と「フォンダンショコラ+味噌、醤油、参照」で、ワインのリッチさとスパイシーさに合わせているのがわかります。


和牛すき焼き。食べなくても美味しいのわかりますね。食べたらもっと美味しいです。


フォンダンショコラ。

今回はケール・アンダーソン本人は残念ながら来日しなかったのですが、パートナーのトレイ・エップライトが参加して、テーブルを回ってワインの解説もしてくれました。ホスピタリティも素晴らしい。


最後の方はだいぶ酔っ払って記憶も怪しいですが、むちゃくちゃ楽しんでいたのは確かです。
Date: 2023/0701 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
6月7日にパレスホテルで「ナパヴァレーの今」というイベントをナパヴァレー・ヴィントナーズ主催で開催しました。今年のナパヴァレー・ワイン・ベスト・ソムリエ・アンバサダーの山田琢馬君と私とのパブリックには初めてのイベントです。参加者もナパヴァレー・ワイン・エキスパートの受験者で、合計30名に参加いただきました。

前半の1時間は琢馬君と私のプレゼンテーションで、4月のナパツアーの報告会。


プレゼンの基本的なところは私が作りましたが、どう掛け合いするかなどはほぼぶっつけ本番。それでもほぼ時間通りに前半が終了と、予想以上にうまくできたと思います。

後半はワインの試飲と食事。ワインも4月のツアーで印象に残ったものから選んでいます。

ウェルカムドリンクに選んだのはトルシャード(Truchard)のルーサンヌ。実は私達にとってもナパについて最初に飲んだワインで、そのフレッシュかつ柔らかみのある味わいに惚れて選んだものです。

白はこのほかTwomeyのソーヴィニヨン・ブランとガーギッチ・ヒルズのシャルドネ。Twomeyのソーヴィニヨン・ブランはナパとソノマ(ロシアン・リバー・ヴァレー)の自社畑のブドウを使っていてナパのリッチさとロシアン・リバー・ヴァレーのエレガントさを併せ持っています。青っぽさはあまりなく酸と果実味のバランスが秀逸です。

ガーギッチ・ヒルズのマイク・ガーギッチは今年で100歳。さすがに現役からは離れていますがまだお元気なようです。シャルドネはマロラクティック発酵なしでいきいきとした味わいがあります。

赤はトレ・サボレスのジンファンデルとシェーファーのカベルネ・ソーヴィニヨン「ワン・ポイント・ファイブ」。

トレ・サボレスはラザフォードで有機栽培の畑を持つワイナリー。ジンファンデルはかなりエレガントなスタイル。「ザクロやボイズンベリーのような赤黒いフルーツの香りに五香粉のようなエキゾチックなスパイスのアクセント」と琢馬君のコメント。

シェーファーは言わずとしれたスタッグす・リープの名門ワイナリー。「適熟したフルーツノートに樽由来のバニラやクローヴ、ハーバルなトーンやわずかに黒鉛のようなアクセント。広がりのあるスムースで緻密な口当たり、タンニンのまろやかさを感じる一本」(琢馬君コメント)。

このほか有料でハドソンのシャルドネとスポッツウッドのエステート・カベルネ・ソーヴィニヨン2010。スポッツウッドはパレスホテルのセラーにあった逸品です。私もお金払って飲みましたが、熟成具合もよく素晴らしい味わいでした。

「初めての共同作業」イベント、まあまあうまくいったのではないかと思っています。
Date: 2023/0630 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Paul Dolan
メンドシーノのフェッツァー(Fetzer、現Bonterra)で有機栽培やバイオダイナミクスの栽培などを立ち上げたワインメーカーのポール・ドーラン(Paul Dolan)が亡くなりました。長年、ガンで闘病していたとのことです。

ポール・ドーランは母方の先祖に、ソノマで19世紀から20世紀にかけて大きなワイン会社だった「イタリアン・スイス・コロニー」の創設者ピエトロ・カルロ・ロッシがいるという家系。本人は1976年にフレスノ大学で醸造の修士号を得ています。

そして、まだできたばっかりだったメンドシーノのフェッツァーにワインメーカーとして就職。有機栽培の認証制度ができる前の1980年代に有機栽培を始めています。

1992年にフェッツァーがブラウン・フォーマンに売却された後も副社長として残り、2004年まで同社にいました。

2002年にはサスティナビリティの活動を始め、サスティナビリティの最初の書籍『True to Your Roots: Fermenting a Business Revolution』を執筆しています。また、バイオダイナミクスの認証団体デメターの米国代表も務めました。

その後はポール・ドーラン・ワインを立ち上げるも、喧嘩別れしてしまいました。ソノマで始めた Truett-Hurst は今も続いておりバイオダイナミクスの先駆者となっています。

2018年にデメターをやめた後は「Regenerative Organic Alliance」で、ワイン業界からの唯一のボードメンバーとして貢献するなど、一貫して有機栽培などの先駆者としての活動を続けたまさにパイオニアの人生でした。

ご冥福をお祈りします。
Date: 2023/0628 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパのオーク・ノールにあるワイナリー「アッシュ&ダイヤモンド(Ashes & Diamonds)」がSO2を添加せず、天然酵母しか使わない「ゼロ-ゼロ」ワインを発売しました。ナパのワインとしては初めてと言われています。
null
null

ワインメーカーはスティーブ・マサイアソン。すでに自身のワイナリーで「Tendu」というブレンドワインを「ゼロ-ゼロ」で作っていました。

アッシュ&ダイヤモンドは以前にもゼロ-ゼロを試したことがありましたが、出荷後に瓶内で発酵が進んでしまい、ボトルが爆発するなどの事故が頻発したといいます。

今回「ゼローゼロ」にしたワインはシャルドネと「Rosa」というサンジョベーゼ、カベルネ・フラン、メルロー、シラーのブレンドです。Rosaの方はこれで3年めになるとのことですが、スキンコンタクトを5日だけで終わらせたロゼワインとなっています。シャルドネは2022年が最初のヴィンテージ。どちらも「クリーンな味わい」を保っているそうです。

シャルドネの方は、逆に通常行わないスキンコンタクトを4日間行うことで、グリップの効いた味わいになっているとのこと。通常のSO2を添加したシャルドネと比べると酸のきれいさなどはなくなり、そのかわりにナッツや花梨などの風味がますそうです。

ナパのワインは「ナチュラルワイン」のブームからは一線を画していますが、それが若いユーザーが入ってくるのを妨げている面も否定できません。今回のワインはそういった飲み手が少しでもナパのワインに馴染むきっかけになるかもしれませんん。
Date: 2023/0626 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments

久しぶりに自分主催でワイン会を開きました。セラー整理が一つの目的ですが、裏の目的として「コラヴァンで開けたワインはその後どうなったか」を検証したいというのもありました。

サンプルとしていただいたワインで1杯試飲してそのままセラーに入っているというワインが何本かあったのです。コロナ禍が始まった3年前に飲んだものもあり、さすがに大丈夫かちょっと不安でした(以前、アルゴンガスが使えなかったころに窒素ガスで試したときは2ヶ月後でも結構酸化してしまっていました)。

元々サンプルのワインですし、その分のワイン代はいただかない格安のワイン会、ただし状態悪かったらごめんね、という条件でお集まりいただきました。

特に不安だったのはシャルドネです。「どれもレベル高い、デュモルのシャルドネ・ピノ・カベルネ」の記事で試飲したもので記事が2020年5月27日公開ですから確実に3年は超えています。

以前、ある人に相談してみたら「1杯だけしか飲んでいないのだったら案外大丈夫かも」ということでおそるおそる飲んでみたら…

はい、なんの問題もありませんでした。以前飲んだときより樽の風味が少し強く感じましたが、少なくとも酸化のニュアンスは全くありませんでした。

ほかのワインも全く状態に問題なく、ほっとしました。

というわけで「コラヴァンで1杯だけ試飲したワイン、3年後も全く問題ない」というのが今回の結論です。すごいね。
Date: 2023/0624 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
何度か書いているドメーヌ・カーネロスのフラッグシップ・スパークリングの「ル・レーヴ」。輸入元の希望小売価格変更まであとわずかとなりました。現在の希望小売価格8,800円が7月からは17,800円(いずれも税別)と倍以上になります。それでも現地価格の125ドルと現在の為替を考えたら、かなり安い値付けになるのですが、さすがに現在のような7000円台や8000円台で手に入れることは無理になります。

しあわせワイン倶楽部はまだ在庫140本以上あるので、すぐには値段変わらないかもしれませんが、この在庫がなくなったら値上げです。


こちらのショップ「マリアージュ・ド・ケイ」は在庫1本のみ。


柳屋も在庫1本のようです。

Date: 2023/0623 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
今週は、アカデミー・デュ・ヴァンの講座「カリフォルニアの銘醸畑探訪」でナパのハイドとハドソンを扱いました。カリフォルニアのシャルドネのトップ・クラスを支える畑といって過言ではない両畑。どちらも緊張感ある素晴らしい味わいで、甲乙付けがたいワインばかりでした。


このときに、ワイナリーで購入したハドソンのシャルドネの限定版「リトル・ビット」を出したのですが、限定版のシャルドネ2種と、カベルネ・フランのブレンド「オールド・マスター」がごく少量、スポットで国内入荷しています。3月にリー・ハドソン夫妻が来日した際にこれらのワインがワイン会などで提供されており、インポーターからお願いして特別に出してもらったもののようです。
参考:絶妙なシャルドネにエレガントな赤、ハドソン・ヴィンヤーズ

実はハドソンのワインでパーカーポイントが一番高いのが、この限定版シャルドネ2種です。ワイナリーでリトルビットを飲んだ際にも「コシュデュリのムルソーより美味しい」と言っていた人もいました。
null

ともかく、次にいつ入荷するかは全くわからないワインです。特にトップクラスのシャルドネを確保したい人にはお薦めです。
ショップはカリフォルニアワインあとりえです。




Date: 2023/0622 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパワインクイズの3回目です。今回はあまりひねらずストレートな質問です。

Quiz
Quiz
Quiz
Quiz

ちょっと簡単すぎかもしれないけど、そういう問題も必要だよね。
次はちょっと難し目になると思います。
Date: 2023/0621 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Hahn
E.J&ガロがモントレーのハーン・ファミリーのワイン・ブランドを買収しました(E. & J. Gallo Expands its Premium Wine Portfolio With Acquisition of the Hahn Family Wines Collection of Brands)。金額は明らかになっていません。

買収したブランドはHahn、Hahn SLHのほかSmith & Hookも含まれます。Smith & Hookでは、パソロブレスなどのブドウでカベルネ・ソーヴィニヨンやボルドー系のブレンドワインを作っています。

ただし、この買収にはHahn家の所有する畑は含まれていません。Hahnはサンタ・ルシア・ハイランズに650エーカー、アロヨ・セコに450エーカーとかなりの畑を持っています。

このニュースはかなり驚きました。ハーンは家族経営でその名前のブランドを手放すと思っていなかったし、ワインもいいものをコスパ良く作っており安定しているブランドに感じていたからです。背景の理由が気になります。

また、今回の買収には畑が含まれないとのことで、買収後のガロによるHahn、特に高級価格帯に入るHahn SLHのブランドの品質が維持できるのかどうかも気になります。Hahn家からガロにブドウを供給することになるのか、それともHahn家が新たなブランドを立ち上げるのか、いろいろと疑問が尽きません。
Date: 2023/0618 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパのラザフォードにあるワイナリー「Peju Provence(ペジュー・プロヴァンス)」の創設者であるトニー・ペジューが亡くなりました。85歳でした。

トニー・ペジューは1937年フランスの生まれ。1950年代に米国に移住しました。南カリフォルニアで花屋と苗木屋を営んでいましたが、ワイナリーを作りたいという気持ちを強く持ち、Calvin Straubという人のデザインによるブランドのロゴを携え1981年にナパに来ました。
Peju

1980年当時、カリフォルニアではブドウの生産者がワインを作って売ることが許されていましたが、ナパでは郡の法律によってそれが自由にできませんでした。トニーは裁判所に訴えそれに勝利したことで、ブドウの生産者がワイナリーになるという現在への道筋を開きました。

このほか、現在のDtC(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)の先駆けとして、ワインの大部分をワイナリーのお客さんなど消費者に直接販売するモデルを築きました。

ワインメーカーとしては正式な教育を受けたことはありませんが近所のワインメーカーとの協力などによって美しいカベルネ・ソーヴィニヨンを作り、1988年にはワイン・スペクテーターでトップ15のカベルネ・ソーヴィニヨンに選ばれるほどになりました。

また、1987年には白ワインと赤ワインをブレンドしたユニークなロゼワイン「プロヴァンス」を作りました。当時、シャルドネを中心とする白ワインの人気が高く、赤ワインは苦手という人が多く、そういった人に赤ワインへの「橋渡し」になることを狙ったワインでした。冷やして飲むスタイルのロゼワインで非常に人気を博し、現在に至ります。

null
2003年には当初から描いていたタワーが実際に完成し、夢がかないました。

Pejuは妻のハータ(Herta)が引き継いでいます。

安らかにお眠りください。
Date: 2023/0617 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパのスタッグス・リープ・ディストリクトにあるロバート・シンスキー(Robert Sinskey)が6月18日でテイスティング・ルームの営業を終了します。

ロバート・シンスキーは2022年12月にザ・ワンダフル・カンパニー(The Wonderful Company)にワイナリーを売却しました。ザ・ワンダフル・カンパニーはFIJIブランドの水やナパのルイス・セラーズ、ソノマのランドマークなどを保有しています。テイスティング・ルームの閉鎖は新オーナーの意向です。

テイスティング・ルームを閉じた後を何に使うかはまだ発表されていません。また、ロバート・シンスキーのブランド自体は継続するため、醸造場所を変えて今後も作り続けます。

ナパでは珍しくピノ・ノワールをメインとするワイナリー(畑はカーネロスにあります)で、テイスティング・ルームでは料理とのペアリングに早い時期から力を入れるなど、個性的で魅力のある場所でした。閉鎖はちょっと残念な気がします。
Date: 2023/0616 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ソノマはLGBTQ+の人々が過ごしやすく、オアシスのような場所になっています(Here’s how Sonoma County became an LGBTQ wine oasis)。

アウト・イン・ザ・ヴィンヤードというLGBTQ+の人々向けのワインカントリーツアー会社を2008年に立ち上げたゲイリー・セイパースタイン氏は2000年初頭からワイン・カントリーを訪れるゲイなどの人が年々増えていることに気づいていました。

それに対して迎える側が冷たすぎるとも感じていたのですが、いろいろな人に話を聞いた結果、冷たいのではなくマーケティングの対象として認識されていないだけなことが判明しました。そこで専用の旅行会社を立ち上げて今にいたるわけです。

元々サンフランシスコはLGBTQ+の人たちが多いことで知られており、人口の6.2%がLGBTQ+という統計もあります。アウト・イン・ザ・ヴィンヤードはそういった人がワイン・カントリーまで足を伸ばすことにつながっているだけでなく、受け入れ側がLGBTQ+の人に目を向けることにもつながっています。

アウト・イン・ザ・ヴィンヤードはイベントも年に数回開催しており、一番大きな「ゲイ・ワイン・ウイークエンド」は3日間のイベントで700人が参加します。
null

6月はプライド月間であり、ちょうど上記のゲイ・ワイン・ウイークエンドも14日から16日に開催されているところです。
Date: 2023/0615 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパヴァレーのワインクイズNo.2です。第1回に続き、AVA関連の出題です。
Quiz
ちょっとひねりを入れてみました。

hint
これは頻出なので、必ず覚えておきましょう。

answer


地図で実際のAVAを見て覚えましょう。
map1
map2
Date: 2023/0614 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパの南東に接しているソラノ(Solano)郡。ケイマスが進出したサスーン・ヴァレーなどを含み、近年注目が高まっています。私も4月にナパに行った際、空き時間に訪問してきました。

参考:ナパツアー初日ーーお隣のサスーン・ヴァレーに寄り道

ソラノ郡の一部はかつてナパヴァレーに属していたという話もあるのですが、まだまだマイナーであり、高級ワインの生産地としては認められていないと感じている地元の人も多いようです。例えば、カリフォルニアのブドウ収穫や価格の統計である「Crush Report」ではソラノ郡が属する「ディストリクト5」のブドウ価格は、大量生産地域であるセントラル・ヴァレーに近いレベルにとどまっています。

その状況を払拭しようという動きが出ています。具体的には上記の地域分類を変更し、ディストリクト5の領域を狭くしようとしています。
ソラノ
ソラノ
上の地図がDisrrict5と隣接するDistrict17、そして境界変更案を示しています。下は境界変更しようとしている部分の拡大です。

Ryer Islandという地域がDistrict 5から外そうとしているところですが、ここは温暖で水が豊富、肥沃な土地で大量生産向けのワインが作られています。これによってDistrict 5のブドウ価格が統計上上がることが期待でき、ソラノ郡全体のワインのイメージアップにもつながるとのことです。栽培家にとってはこれまでよりも高い価格でブドウを売れることが期待されます。

North Bay Business Journalの記事「Effort to elevate prestige of Solano County wine grapes nears key stage」によると、8月11日にサクラメントでこの変更案に対する公聴会が行われるとのこと。まだどう決着するかはわかりませんが、大きな前進になりそうです。
Date: 2023/0613 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ロス・カーネロスのソノマ側にあるワイナリー「ドナム(Donum)」がアンダーソン・ヴァレーにあるサヴォイ(Savoy)ヴィンヤードを買い取りました。Savoyのこれまでのオーナーはナパのクリフ・レイディで、Felというブランドでサヴォイのワインを作っていました。Felのブランドは2022年で終了する予定です。Savoyの畑のシャルドネとピノ・ノワールは高品質で知られており、リトライ(Littorai)などが使っています。アンダーソン・ヴァレーで最も有名な畑といっても過言ではないでしょう。また、今後も他のワイナリーとの協業は続けていくとのことです。

サヴォイの畑は有機栽培の認証を得ており、今後はリジェネレーティブへと発展させる予定。

一方、ナパのスタッグス・リープ・ディストリクトにあるシェーファーは、アトラス・ピークAVAにある4ヘクタールの畑「Altimeter」を買収しました。すべてカベルネ・ソーヴィニヨンが植えられています。

AltimeterはAileronというワイナリーのオーナーであるシャノン・オショネシー(ナパのオショネシーの家族の一員)が2019年に購入した畑。Aileronはフィリップ・メルカやメイヤン・コスチスキーが参画しているワイナリー。まだ購入してから4年しか経っていない畑を手放すというのはなにか事情があるのでしょうか。

シェーファーにとっては昨年8月にワイナリーのすぐ脇にある9ヘクタールの「Woldfoote」ヴィンヤードを買収して以来、半年で2件目の畑の購入となります。

ワインメーカーのイライアス・フェルナンデスは「ワインメーカーとしてトップの畑から一番いいブドウだけを選べるというのは夢みたいなことだ。今回の購入で、どんなヴィネテージでも最高の状態のカベルネ・ソーヴィニヨンを手に入れられる。この買収の意味は品質に尽きる」と語っています。
Date: 2023/0612 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments

ジンファンデルの雄「ターリー・ワイン・セラーズ(Turley Wine Cellars)」から創設者ラリー・ターリーの娘のクリスティーナ・ターリーが来日、日本で初めてというセミナーを開きました。

1993年に設立されたターリーは今年創設30周年。古木の畑のジンファンデルにこだわりを持ち、30を超える単一畑のジンファンデルを作っています。
ロゴ
セミナーの前半はジンファンデルについての解説が中心。ジンファンデルはクロアチアのCrljenak Kaštelanski(クルリェナク・カステランスキ)が起源となっており、イタリアでは1799年からプリミティーボとして栽培され、米国には19世紀に渡ってきました。1820年代のニューヨークのカタログで初めて「Zinfandel」という記載があったようです。

19世紀なかばには「クラレット」に似たワインを作る品種として農務省が栽培を推奨し、広く広がります。その後、禁酒法の時代にワイナリーは激減しますが、ジンファンデルは自家製ワイン用のブドウとして人気があり、生きながらえて、新たな畑が作られることにもなりました。

1970年代にはサター・ホームが「ホワイト・ジンファンデル」を作って大ヒットしました。「アメリカ文化への貢献」としてスミソニアン博物館に所蔵されている数少ないワインの1つだということです。ホワイト・ジンファンデル用にジンファンデルのニーズが高まったことで、古い畑が引き抜かれずに維持できたという面もあります。

2011年にヒストリック・ヴィンヤード・ソサイアティが設立され、樹齢50年以上の畑が登録されるようになりました。ターリーの現在のワインメーカーであるティーガン・パサラクアはその発起人の一人として貢献しています。

ターリーの創設者のラリー・ターリーはERの医師として20年以上働いた後、1981年にジョン・ウィリアムズとともにフロッグス・リープを立ち上げました。ERの経験から「どんな患者(古い樹)でも命をとりとめる」と冗談でよく言うそうです。「古いブドウ畑のすべてを愛する」と公言しており、1993年にターリー・ワイン・セラーズを立ち上げてからは古木の畑からの単一畑ワインを積極的に作っています。

現在のワインメーカーのティーガン・パサラクアは2003年に収穫のインターンとして働き、ニュージーランドやローヌなどでも経験を積んでいます。2015年には「ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれています。また2009年からは自身の「サンドランズ」というワイナリーをやっており、ローダイにキルシェンマンという畑を持っています。


試飲のワインに入っていきましょう。

最初は2021年のホワイト・ジンファンデル・ロゼです。ナパのエステート・ヴィンヤードとアマドールのバック・コブ(Buck Cobb)ヴィンヤード、パソ・ロブレスのアマデオズ(Amadeo's)・ヴィンヤードのブレンド。19Brixというかなり低めの糖度で収穫し、6時間果皮に漬け込んだ後、ステンレスタンクで天然酵母発酵します。その後フレンチオークの樽で半年ほど熟成して瓶詰めします。サター・ホームのとは違いドライなスタイルのロゼです。酸は豊かですが柑橘系というより、白桃などストーンフルーツの風味やローズペタルを感じます。コクが有りちょっとグリップ感もあります。美味しい。

次は2020年のリナルディ(Rinaldi)ヴィンヤード・ジンファンデル。シエラ・フット・ヒルズのフィドルタウンAVAにある畑です。1910年植樹の畑ですが、一部には1860年に植えられた樹もあるそうです。ジンファンデルのほかミッションやカリニャン、グルナッシュ、サンソーもフィールドブレンドで植えられています。土壌は鉄分の多い花崗岩の砕けたもの。接ぎ木なしで植えられており、灌漑もありません。

醸造は天然酵母で、熟成はフレンチオーク80%、アメリカンオーク20%。新樽率は20%。樽で15カ月熟成してフィルターや清澄なしで瓶詰めしています。このあたりの醸造のスペックはすべての赤ワイン共通であり、テロワールの違いだけが味に出てきます。

レッド・チェリーやザクロといった赤系果実に加えてブルーベリーのニュアンスもあります。甘草の甘やかさも。酸は中程度、ボディも中程度ですが、タンニンはジンファンデルにしてはかなりしっかりあり、ストラクチャーも感じます。このあたりは冬に雪も降る寒いところであり、タンニンの強さはその寒さから来ているのではないかという話でした。

3本目は2021年のペセンティ(Pesenti)ヴィンヤード・ジンファンデル。パソ・ロブレスのウィロー・クリークAVAの畑です。石灰質の土壌で畑には白い石がごろごろしています。1000万~1500万年前のクジラの化石が出たこともあるそうです。植樹は1922~24年ですからちょうど100年くらいの樹齢。無灌漑で有機認定の畑です。品種はジンファンデルのほかカリニャンとグルナッシュ。

前のワインより色濃くスパイシー。ミントのような清涼感もあります。赤黒系果実の風味。酸豊かでフルボディ。うまいねえ。

4本目は2021年のキルシェンマン(Kirschenmann)ヴィンヤード・ジンファンデル。ローダイのモクレム・リバーAVAの畑です。前述のようにワインメーカーのティーガンが自身で持っている畑。温暖なローダイですが川が近くにあることで冷涼感がもたらされているとのこと。1915年に植樹され、自根の畑です。ここも無灌漑。土壌は4ftほどは砂ですがその下は石灰岩だそうです。品種はジンファンデルのほかモンドゥーズ・ノワール、サンソー、カリニャン。

ブルーベリーや甘草、オリエンタルスパイス。シルキーなテクスチャを感じます。クリスティーナによると「いいワインはテクスチャに現れる」とのこと。ここだけは誤魔化しが効かないそうです。濃厚ですがタンニンはそれほど強くないので、飲みやすい。

5本目はナパのハウエル・マウンテンにある自社畑のドラゴン(Dragon)ヴィンヤード。2021年のジンファンデルです。畑の標高2250ftというのはハウエル・マウンテンの中でもかなり高い方(ハウエルマウンテンは1400~2500ftくらいの標高)。ちなみに隣にはターリーのラトルスネイク・ヴィンヤードがあり、すぐ近くにBlack Sears(トーマス・リヴァース・ブラウンが醸造を手掛けるワイナリー)があります。ドラゴンは東向き、ラトルスネイクは西向きの斜面なので、ラトルスネイクの方がより温暖だそうです。栽培はオーガニックですが無灌漑ではありません。

ハウエルマウンテンは火山性土壌で表土が薄く、基本的に霧がかからないので太陽が当たる時間も長く、パワフルでタニックなワインになります。そういう意味ではブラインドで飲んでも一番認識しやすいとのこと。

確かに青黒系果実の風味が濃厚でスパイス感も強くあります。タンニンも強くフルボディで余韻も長い。すみれの花の香り。チューイーなテクスチャがあります。ラリー・ターリーはこのワインが一番好きだとのこと。

最後はライブラリーワインで2012年のエステート・ヴィンヤード プティ・シラー。プティ・シラーは濃厚なワインを作るブドウで長期熟成にも向いています。1996年の2011年に植樹された畑。

プティ・シラーらしくタンニン強く、フルボディで余韻も長いですが、果実味は意外と赤果実系も感じます。マッシュルームや森の下草など熟成の風味もあります。

エステート
ところで、上はナパのセントヘレナにあるターリーのエステート・ヴィンヤードのブロック図。品種の後ろに「HT」と描いてあるのはヘッド・トレインド(Head Trained)、ゴブレットやヘッド・プルーンなどとも言われる仕立て方です。それ以外のところはいわゆる垣根仕立て。

ターリーの畑の中でドラゴンとエステートは灌漑を行っているのですが、その理由を聞いたところ、垣根仕立ての畑では灌漑が必要だとのこと。エステートでもヘッド・トレインドのブロックは灌漑していません。そこで、ターリーではエステートの畑は今後全部ヘッド・トレインドに変えて無灌漑にするとのこと。カベルネ・ソーヴィニヨンもジンファンデルの畑に変えていく予定です。フィールドブレンドでカリニャンやトゥルソー・ノワールも植えられるとのことで、これからどうなっていくのか楽しみです。

ただ、ドラゴンの畑は、畑を入手したときにすべて垣根仕立てになっていたので、しばらくはそのままでいくことになりそうでう。

ヘッド・トレインドにすることで、剪定や収穫の手間は増えますし、生産量は減ります。それでもワインの複雑味は増し、品質が高くなるので、やっていく意味は大きいと考えているそうです。

最後にターリーのボトルにまつわる話を2つ。ターリーのボトルはユニークな形状をしていますが、なぜその形になったのかという質問がありました。実はこのボトルはラリー・ターリーが自身でデザインしたもの。ボルドー系やブルゴーニュ系のワインにはそれぞれボトルのデザインがあるのにジンファンデルにはない。それでオリジナルの形を作ろうとしたそうです。また、ラリーのおばさんがブルゴーニュのワインの輸入をしていたので、どちらかというとブルゴーニュに近いようなデザインにしたのではないかとのことでした。

null

もう一つはボトルのキャップに描かれている4つの★。これはターリーの4姉妹を表しているそうです。実はボトルの底にも★のデザインがあります。こちらは幼くして亡くなった弟を表しているものだそうです。こんなところに家族の絆が入っていたことも初めて知りました。
Date: 2023/0611 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
バレルオークション
Photo by Steven Chester Cooley

6月初頭にナパのオークション「コレクティブ・ナパヴァレー」が開かれました。落札額は380万ドルに達し、若者にメンタルヘルスのために寄付されます。

コレクティブ・ナパヴァレーはコロナ前まで開催されていたオークション・ナパヴァレーの後継となるイベント。オークション・ナパヴァレーはワインのオークションというよりも旅行やワイナリーでのディナーなどのパッケージがメインになり、年々派手になっていましたが、それらを落ち着かせてよりワインのイベントになっています。

今回はライブ・オークションとバレル・オークションが行われ、ライブ・オークションの方では上記のようなパッケージも出ていました。最高額で落札されたのはアフリカの旅行を含んだスタッグリンのロットで50万ドルでした。ライブ・オークションは全部で10ロットとロット数はかなり絞られていました。

今回の中心はバレル・オークションで82のワイナリーが10ケースのワインを出展しました。ビッダーは1ケース単位で入札し、最終的に上位10名のビッダーが落札することになります。入札数が少ない場合、かなり安く落札できる可能性が出ます。今回のバレル・オークションでは実際に1ケース200ドルで落札されたロットもありました。

オークションの入札はオンラインでもできるので、次回以降トライしてみる価値があるかもしれません。


Date: 2023/0610 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
11日の1:59分まで開催されている楽天スーパーセールで、かなりお得になっているカリフォルニアワインの情報をまとめます。
楽天スーパーセールで大割引! お薦めワイン
で拾いきれなかったものですので併せて見ていただけるといいと思います。

赤坂ワインストア エラベルではスクライブのリースリングが3000円台。米国でも30ドル台ですからだいぶ安いです。ナチュラル系の生産者でこれも自社のオーガニックの畑。天然酵母で3カ月かけて発酵させています。コンクリートタンクとコンクリートエッグを使用。


この店ではコッポラがアカデミー賞の授賞式用に作った金ピカボトルのシャルドネも4割引のセール。ほかでは1万3000円以上します。


前の記事でも紹介したリカオーのセールに、ドメーヌ・シャンドンのロゼ・スパークリングがありました。昔はカリフォルニアのシャンドン輸入されていましたが、近年はオーストラリアのものしか見かけていなかったような。これはおそらく並行輸入品なのでしょう。ともかく2000円ちょっとの値段は安いです。米国でも20ドルするワイン。


同じくリカオーでカレラのマウント・ハーランのシャルドネもセールになっていました。他の店より1000円安いくらいなので、この店の他のセール品と比べると安さの驚きは少ないですが、クラシックなスタイルのシャルドネが好きな人ならお薦めです。そして、カレラのヴィオニエもセールになっているので合わせ買いもいいと思います。



「業務用酒販 ふじまつ」ではファーディナンドのガルナッチャ・ブランカが2508円という劇安です。この価格帯でほかのショップより1000円近く安いです。ファーディナンドはコングスガードのGMのプライベート・ブランドで、彼が一番作りたかったという品種がガルナッチャ・ブランカ。ようやく探し当てて手に入れられるようになったワインです。


Date: 2023/0608 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ロバート・モンダヴィの親会社であるコンステレーション・ブランズが、最高の銘醸畑ト・カロンで最高のワインを作るというト・カロン・ヴィンヤード・カンパニーを始めたのが2016年。元スクリーミング・イーグルのワインメーカーで、ファヴィアやマヤカマスなどのワインメーカーを務めているアンディ・エリクソンがワインメーカーとなっていました。

その2代目のワインメーカーとしてトニー・ビアージ(Tony Biagi)が2023年6月2日付けで就任しました。トニー・ビアージはUCデーヴィスを卒業し、25年以上もナパでワインメーカーをしています。これまで携わったワイナリーはプランプジャックやアワーグラス、ダックホーン、アミーチ・セラーズなど。2020年にはヴィナスでワインメーカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれています。
トニー・ビアージ

トニーは就任後も自身のPatriaやアワーグラスなどのワインメーカーを続けます。また、当面はアンディ・エリクソンからの引き継ぎ期間として共同で働きます。

ワインメーカーが変わってワインの造りがどうなっていくのかも気になるところです。
Date: 2023/0607 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Twitter Spaceを使ったトーク配信も4回を重ねました。一応「ナパワイントーク」と銘打っていますが、ナパの話はそのときどきで、ガッツリ話したり、ちょっとだけ出てきたりといった感じです。個人的にはバラエティに富んだ方に出ていただいてなかなか面白いと自賛しています。

録音データはポッドキャストに載せて聴きやすくしようと思っているのですが、なかなか作業時間が取れず、データだけが溜まっています。とりあえずTwitterの上ではログオンしなくても聴けますので、そちらで聴いていただけたらと思います。

第1回は5月15日。ゲストはナパヴァレー・ワイン・ベスト・ソムリエ・アンバサダーの山田琢馬君。4月の旅行の感想などを語り合いました。

琢馬君とはこの後インスタライブも1回やっており、Youtubeでも見られるようにしています


第2回は5月22日。ゲストは「カツミ」さん。ナパを舞台にした映画「サイドウェイズ日本語版」や「ボトル・ドリーム」の話をしました。ボトル・ドリームで出てきたワインの茶変は、別のヴィンテージですが実際にシャトー・モンテレーナのワインで起こったことだそうです。


第3回は5月31日。「ますたや」さんがゲスト。「ワ活」と称してワインの様々な活動をしており、最近は同人誌も発行しました。私も寄稿しています。「ワ旅」でぜひナパに行ってほしいと思います。



第4回は6月5日で「ワイン商えいじ」さんがゲスト。ボルドーのネゴシアンやシャトー・ラフィットのアンバサダーなどで働いている方です。今のボルドーの話などを中心に伺いました。ボルドーも新しい動きがいろいろあるようで興味深いです。ナパとしても学ぶことはあるように思います。


ゲスト候補(と勝手に思っている人)はまだ10数人いるので、日程さえあえばしばらくこんな感じで続けていきたいと思っています。
ゲストの自薦他薦も大歓迎です。よろしくお願いします。
Date: 2023/0606 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
楽天スーパーセールで割引になっているおすすめワインを紹介します。

まずはこれ。是非物といってもいいです。デコイのセルツァー4本セットが半額。しあわせワイン倶楽部です。
半額なだけじゃなくて、送料無料。しかも同梱ワイン11本まで送料無料になります。送料分も考えたら無茶苦茶お得だし、逆に言うと、合わせ買いが必須です。



合わせ買いとしては、まずはこれは必須ですね。7月からは希望小売価格2万円近くになってしまうというドメーヌ・カーネロスのル・レーヴ。


バリュー系シャルドネとして人気の高い「Foxglove」も2割引になっています。


リカオーも楽天スーパーセールで大胆な割引をするショップです。前回も大幅安だったモンダヴィのナパ・シャルドネやBVのタペストリー・リザーブは今回も安いです。モンダヴィのナパ・シャルドネは「のー」さんが5月に飲んだワインベスト3に挙げてくださいました。
5月に飲んだワインBEST3!! | 『のー』のワイン日記



そして、高級ワインになりますが、クインテッサの2017年が1万円台! これは世界一安い価格だと思います。ボルドースタイルのエレガントなカベルネ・ソーヴィニヨンが飲みたい人には太鼓判付きでお薦めします。


写真ないですが、カレラのヴィオニエ。自社畑のワインがこの価格はすごい。ほかの店より1000円以上安いです。

Date: 2023/0605 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
リカータイムで楽天スーパーセール期間中、ドメーヌ・カーネロスのロゼ・スパークリングが10%引きになっています。そうでなくてもほかの店よりも安いくらいなのですが、ほかよりも500円から1000円ほども安いです。7月にはほぼ倍額になるのでマストバイです。いくつか系列の店があって、微妙に価格が変わります。

先日紹介した米国の半額のレーヴも、もう市中在庫だけだとか。
こちらでご覧ください。
米国の半額という価格バグった高級スパークリング、ついに値上げへ

リカータイム


2号店


ハードリカー


ハードリカー2号店


Date: 2023/0602 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
サンタ・バーバラのドメーヌ・ド・ラ・コートとサンディ、ピエドラ・サッシ、オレゴンのイヴニングランドでワインメーカーを務めるサシ・ムーアマンが5月に来日し、セミナーに参加しました。

今回の来日の目的はサシの母親の「モーマン行世」さんが、春の叙勲で旭日章を受けたこと。行世さんは米国の公立高校で40年近く日本語教育に携わっており、その功績が称えられました。サシはその付添として来日しました。短い滞在時間の中でのセミナーであり、彼のワインを輸入している2つのインポーター、中川ワインとWine to Styleの共同開催という珍しい形態になっています。



セミナーで試飲したワインは上の4本。左から
イヴニングランド ピノ・ノワール ラ・スルス 2019
サンディ シャルドネ ロマンス 2021
ドメーヌ・ド・ラ・コート ピノ・ノワール ラ・コート 2021
ピエドラ・サッシ シラー リムロック・ヴィンヤード 2020
いずれも各ワイナリーのトップと言っていいワインです。



4つのワイナリーのうちイヴニングランドとドメーヌ・ド・ラコートは自社畑のブドウからワインを作るドメーヌタイプのワイナリーで、サンディとピエドラ・サッシは買いブドウで作るネゴシアンタイプのワイナリーです。その中でも今回は自社で栽培も手掛けているワインを試飲します。それぞれのブランドを象徴するスタイルのワインとなっています。

サシ・ムーアマンによると、共通しているのは醸造で人の介入を少なくしている点。SO2の添加も非常に少ないレベルです。SO2を減らすと、ワインの表現がより強く出るようになります。香りも味わいも強くなるとのこと。SO2を添加することが悪いというわけではなく、ワインが若い段階では少ない方がよりわかりやすいという意味だそうです。基本的には醸造時にはSO2を加えず瓶詰めのときだけわずかに加えています。

栽培も手掛ける2つのワイナリーのうちイヴニングランドはビオディナミで、ドメーヌ・ド・ラ・コートはオーガニックで栽培しています。イヴニングランドがビオディナミなのは創設者であるコント・ラフォンがビオディナミに取り組んで認証まで受けたため、それを引き継いでいる形です。サシの考えではビオディナミかオーガニックかの違いはそれほど大きくなく、それよりもこれらの栽培方法で認められているボルドー液を撒くか撒かないかが大事だといいます。ボルドー液には硫酸銅が含まれています。それ自体が人体に害を及ぼすわけではないといいますが、土壌のためには良くないと考えています。

ちょっと脱線しましたが、イヴニングランドの土地は全部で85エーカーあり、ブドウ以外の果樹の植樹も増やしています。他の果樹を加えることでブドウの健康が維持でき、ワインも良くなります。イヴニングランドの畑は森や小川にも囲まれており、動物も多く、生物多様性が保たれています。

サンディとドメーヌ・ド・ラ・コートはどちらもサンタ・バーバラにあり、サンディは基本買いブドウ、ドメーヌ・ド・ラ・コートは自社畑のみという棲み分けがありますが、今回のロマンス・ヴィンヤードは実はドメーヌ・ド・ラ・コートの畑であり、自社畑という位置づけになります。2015年に植樹した畑で、ドメーヌ・ド・ラ・コートの畑の中でも一番海に近い西側の端にあり、シャルドネの一番寒い畑となっています。アルコール低く、凝縮感強いワインができるとのこと。エネルギーとフレッシュさが両立する畑です。

ピエドラサッシはサシ夫妻とワシントンDCでイタリアン・レストランのシェフをしているピーター・パスタン夫妻によるワイナリー。冷涼な地区の畑から、北ローヌのスタイルのシラーをメインで作っています。温暖化によってローヌではアルコール度数14%以下は非常に難しいと言いますが、ピエドラサッシではアルコール度数が低く、スパイシーで冷涼感のあるシラーを作っています。ここも基本は買いブドウですが、今回の「リム・ロック・ヴィンヤード」は栽培をピエドラ・サッシが任されているとのこと。実質的には自社畑です。


イヴニングランドのスルス2019は3分の1、全房発酵を使っています。発酵時にはパンチングダウンを1回、ポンプオーバーを2回くらいとごくごくわずかしか果帽の管理もやっていません。オレゴンの方がタンニンが多く、丁寧に作ることが必要になります。ブルゴーニュに例えるとボーヌのようなところで、土壌は粘土質が多く、果実味が前面に出てきます。赤い果実の風味がイヴニングランドの特徴だといいます。

クランベリーやレッド・チェリーの風味。酸はやや強く。ボディもタンニンも比較的高い、かなりしっかりとしたピノ・ノワールです。果実味からくるふくよかさや全房から来たと思われるちょっと青い風味もあり、リッチで複雑さもある素晴らしいピノ・ノワールでした。

サンディのシャルドネはエネルギーを感じるワイン。酸は高いがそれよりも果実の凝縮感が第一印象としては強いです。ミネラル感や蜜の香りなどを感じます。シャルドネは土壌に粘土が多いと重い味わいになるので、砂利質の土壌を選んでいます。

ラ・コートはドメーヌ・ド・ラ・コートでは新しい世代の畑。2007年に植樹しており密植のスタイルです。非常に冷涼で糖の上がるのが遅いところです。今ではブルゴーニュより涼しいといいます。

100%全房発酵。サンタ・リタ・ヒルズのシグニチャーとも言える、ちょっと塩味を感じるワインです。全房発酵らしい、ちょっと青臭さを感じるような味わい。イヴニングランドと比べてよりボディを強く感じます。

ピエドラサッシの今回のシラーの畑はアロヨ・グランデ・ヴァレーの非常に冷涼なところにあります。海から5kmほど。元々シャルドネが自根で植わっていました。そこにシラーを接ぎ木しています。アルコール度数は12.8%と非常に低いです。エレガンスはワインの最重要要素だと考えています。100%全房発酵です。

シラーとしては珍しいほど酸が高く、タンニンも強いワイン。黒鉛やクランベリー、カシスなど噛みしめるような味わい。非常にエレガントですが力強さもあります。

Q&Aでは全房発酵についての話が多くでました。最近はブルゴーニュでも全房発酵するところが増えているとのこと。従来使っていなかたワイナリーでも増えています。一般論としてはコート・ド・ニュイではステムを入れるところが多く、コート・ド・ボーヌでは少なくなります。砂利の土壌ではブドウの茎が細くなるため、全房にしやすいとのこと。
全房発酵は魔法のレシピではなく、いいところと悪いところがあります。悪いのは酸が低くなること。いいのはアルコール度数が低くなることだそうです。

最後にフリー試飲で、上記以外の様々なワインを試飲しました。
印象に残ったワインを名前だけ載せておきます。
2019 イヴニングランド スルス シャルドネ
2019 イヴニングランド スマム ピノ・ノワール
2020 サンディ シャルドネ セントラル・コースト
2021 サンディ ピノ・ノワール サンタ・リタ・ヒルズ
2021 ドメーヌ・ド・ラ・コート ブルムーズ・フィールド ピノ・ノワール
2020 ピエドラ・サッシ シラー サンタ・バーバラ
どれも非常にレベル高く、またテロワールを感じさせるワインでした。
ドメーヌ・ド・ラ・コートは先日の記事でも書きましたが、生産量少なく、最近はブルゴーニュファンも探すワインになってきているので、市場から消える早さがどんどん高まっています。

カリフォルニアワインあとりえです。


柳屋です。


Wassy'sです。なんとブルームズ・フィールドもあります。



Date: 2023/0601 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
5月29日に、ナパヴァレー・ベスト・ソムリエ・アンバサダーの山田琢馬君とインスタライブをしました。

Youtubeにもアップしたのでこちらからどうぞ。

今回はナパのベーシックな話と、お薦めワインを琢馬君と私からいくつか紹介しました。
そこで取り上げたお薦めワインをあげておきます。

琢馬君が紹介したのは
シルヴァラード ソーヴィニヨン・ブラン
ニュートン・シャルドネ・アンフィルタード
デコイ・リミテッド・カベルネ・ソーヴィニヨン・ナパ・ヴァレー

私が紹介したのは
シックス・エイト・ナイン(689)セラーズ レッド・ワイン ナパ・ヴァレー
シックス・エイト・ナイン(689)セラーズ ホワイト・ワイン ナパ・ヴァレー
ナパ・ハイランズ カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー
トレフェッセン エシュコル シャルドネ オーク・ノール・ディストリクト

シルヴァラードのソーヴィニヨン・ブランはロワールのソーヴィニヨン・ブランとニュージーランドの中間的な味わい。これからの暑い季節にぴったりのワインです。


ニュートンのアンフィルタード・シャルドネはフィルターを使わないことによる旨味のあるシャルドネ。最近流行りのあっさりしたタイプではなくしっかりと樽も効かせたクラシックな味わいです。


デコイはダックホーンのカジュアルラインですが、「リミテッド」のシリーズはその中でも高級版。ダックホーンに近い品質をデコイに近い価格で提供しているコスパ高いワインです。普通のデコイは「カリフォルニア」ですが、リミテッドのカベルネ・ソーヴィニヨンはナパのブドウでできています。


689(シックス・エイト・ナイン)は赤も白もまろやかで飲みやすい味わいが特徴。ナパのワインの入門に最適です。



ナパ・ハイランズはナパのカベルネ・ソーヴィニヨンの定番。この価格でこの品質は驚きます。酸やタンニンもしっかりあってバランスもものすごくいい。


トレフェッセンのエシュコル・シャルドネはセカンドラベルでありながらすべて自社畑のブドウを使ったコスパ高いワイン。トレフェッセンはシャルドネ世界一になったこともあるワイナリーです。


このほか、「推しAVA」として私はクームズヴィル、琢馬君はマウント・ヴィーダーを挙げていました。
琢馬君とのインスタライブは月1くらいで続けていくつもりです。
よろしくお願いします。
Date: 2023/0531 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
6月8日にナパの「ケール・ワインズ(Kale Wines)」の方が来日され、六本木でペアリング・ディナーが開かれます。

ケールの創設者のケール・アンダーソンは、元パルメイヤーのワインメーカーで、パルメイヤー初の「パーカー100点」ワインを作った人。「パーカー100点」ワインのワインメーカーとしては最も若い一人だといいます。2016年にパルメイヤーをやめ、自身のワイナリーに専念しています。ナパをベースにしながら、カベルネ・ソーヴィニヨンはつくらず、ローヌ系品種の赤とシャルドネ、そして甲州も作っているそうです。奥さんは日系人のランコさんで、日本で英語を教えていたこともあります。

今回は残念ながらケールは来日できないのですが、ワイナリー共同オーナーのトレイが来日します。

店は「焼きとりの八兵衛」六本木店。ミッドタウンからすぐのところにあります。オーナーの八島さんは先日のナパのツアーにいらっしゃっていて、そこでケールのワインに感動したのでした(私は別グループだったのでそのときはケール飲めませんでした)。

今回はナパヴァレー・ヴィントナーズの小枝絵麻さんが料理をアレンジしてペアリング・ディナーとして提供します。私も少しですがお手伝いさせていただきます。

まだ若干名席がありますので、よろしかったらご参加いただけると嬉しいです。

Kale Wines 来日イベント | Peatix
Date: 2023/0530 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
米国で買うよりも日本で買った方が安いカリフォルニアワインというのはいくつかあるのですが、その中でも日本で買うほうが圧倒的に安く、しかもその状態が何年も続いているのがドメーヌ・カーネロスのスパークリング・ワインです。しかし、ついにこの夏から大幅値上げになってしまうようです。残念ですが、今までの価格は明らかにおかしかったのでしょうがないと思うしかないでしょう。セラーの空きがあったら買いだめ大推奨です。

ドメーヌ・カーネロスのスパークリングは、基本どれも安すぎるのですが、中でも極端なのがフラッグシップのル・レーヴです。ワイナリー価格が120ドルで、米国の市場価格でも税抜きで100ドルは超えています。今のレートで考えたら税込みでは1万5000円を確実に超えます。それが国内では7000円台で買えるのですからほぼ半額です。

品質が悪いわけではなく、現行ヴィンテージの2014年はワインスペクテーターで94点。2022年12月の米国産スパークリングの記事ではアイアン・ホースのブリュットLDの95点に次ぐ評価となっています。そもそもドメーヌ・カーネロスはシャンパーニュハウスのテタンジュによるワイナリーですから品質が低いはずはありません。

ショップはWINE NATION。


ショップは「代官山ワインサロンLe・Luxe」


ショップは「酒宝庫 MASHIMO」


しあわせワイン倶楽部


個人的にはロゼもおすすめです。米国で税抜き40ドル台が税込み4000円~5000円台なので、これもだいぶ国内の方が安いですが、ル・レーヴほどの衝撃はないかもしれません。

うきうきワインの玉手箱


酒宝庫 MASHIMO


代官山ワインサロン Le・Luxe


WINE NATION 楽天市場店


しあわせワイン倶楽部

Date: 2023/0529 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ロバート・モンダヴィ、ワイナリーのリノベーションでテイスティングルームをナパ市に移転」という記事を1月に掲載していますが、ワイナリー改築中の新しいテイスティング・ルームがこの夏遅くにオープンすることが正式発表されました。



これは4月に行ったときに撮った、テイスティング・ルームになるビルの写真ですが、予想よりも小さな建物で、駐車スペースも10台くらいしかありません。ナパのダウンタウンからすぐなので、ダウンタウンあたりに駐車して歩いて行く感じになるのでしょうか。それとも近くに駐車場を確保するのか、そのあたりはわかりません。

新しいテイスティングルームではグラスワインと軽食のペアリングも楽しめるそうで、ナパのダウンタウンのアトラクションになりそうです。

現在のワイナリーでのテイスティングは7月中旬までとのことで、夏休みにナパに行く人はモンダヴィには行けなさそうな感じです。

Date: 2023/0528 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
著名なソムリエのラジャ・パーとワインメーカーのサシ・ムーアマンがサンタ・バーバラのサンタ・リタ・ヒルズで作るドメーヌ・ド・ラ・コートの2021年が日本に入荷してきています。とはいえ、どのショップも1本ずつくらいしか入れられないというごく少量。ブルゴーニュファンも探す銘柄になっており、一瞬でなくなる可能性が大です。

先日、サシ・ムーアマンのセミナーで試飲しましたが、レベルはどれも高いです。また、全房発酵の特徴がかなりはっきり出たワインになりますので、全房の味が苦手という人は避けた方がいいかもしれません。


Date: 2023/0526 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
カリフォルニアのバークレーにあるブロック・セラーズ(Broc Cellars)が初の自社畑を購入しました。SFクロニクルの記事を参考にお伝えします。

ブロック・セラーズの過去記事
「ニューカリフォルニア」の注目株、ブロック・セラーズの魅力
ユニークな都市型ワイナリー「ブロック・セラーズ」のロゼ

バークレーはサンフランシスコからベイブリッジを渡った対岸にある街。大学「UCバークレー」がある学生街であり、カリフォルニア料理の生みの親であるレストラン「シェ・パニーズ」がある文化的な発信地でもあるところです。ブロック・セラーズ以外にもいくつか街中にワイナリーがあり、いずれもナチュラル系のワインを手掛けています。

ブロック・セラーズは様々なマイナー品種のブドウから少量多品種でワインを作っています。これまではすべて購入したブドウでワインを作っていましたが、栽培まで手掛けたいという希望は常に持っていたそうです。

今回購入したFox Hill Vineyardは、ソノマのヒールズバーグにあるアイドルワイルド(Idlewild Wines)のオーナーで友人のサム・ビルブロから10年ほど前に紹介された畑とのこと。サムは前オーナーのストーンズ夫妻を説得して、シャルドネやリースリングを引き抜いて、コルテーゼ、ドルチェット、バルベーラなど25種のイタリア品種をに植え替えてもらいました。

ブロック・セラーズはRuth Lewandowski WinesやRyme Cellarsといった友人のワイナリーとFox Hillのブドウを購入し、いつかは畑を共同で購入することも視野に入れていました。ただ、サム・ビルブロがメンドシーノのヨークヴィル・ハイランズにLost Hills Ranchという畑を購入したことで、その計画からははずれてしまいました。

ストーンズ夫妻は3年ほど前に亡くなり、ブロック・セラーズが畑の管理を任されるようになりました。その間も遺族と交渉を続け、ようやく契約にこぎつけたわけです。

ブロック・セラーズは畑の購入後、Frapatto、Cataratto、Grilloといったシシリー島のブドウを植えたとのこと。今後も他のワイナリーにもブドウを売りつつ、自社ワインに使っていくようです。また、畑の脇に醸造設備を持つ(今は古い設備が置いてある)計画もあるようです。
null
Date: 2023/0525 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
NVV
ナパヴァレー・ヴィントナーズが主催する「ナパヴァレー・ヴィントナーズ・リーダーシップ・プログラム」の第3期が始まりました。これは大火やコロナという大きな災厄を迎えた後の2021年から始まったプログラムで9カ月間、カスタム・メイドで様々なプログラムに取り組んでいきます。

ナパヴァレー・ヴィントナーズのリンダ・リーフCEOは「ナパヴァレーの成功は、先見の明のあるリーダーたちのおかげです。2020年以降、私たちは団結し、未来に投資し、伝統を確実に継承する必要があると考えました。私たちはナパヴァレーを今日の姿にするのに貢献してきたコア・バリューを浸透させたいだけでなく、より広範で多様な関与とより深い行動を促し、私たちの象徴的なナパヴァレーの次の最高の章を書くことによってそれを超えていきたいと考えています」と語っています。

参加者のグループはプログアムが終わるまでに、共同のプロジェクトを立ち上げます。第2期のメンバーは、ナパヴァレーでの雇用を推進するためのDream.Work.Napaというプロジェクトを始めました。

今回の参加者は以下の12人です。
Kale Anderson, Kale Wines
Michael Baldacci, Baldacci Family Vineyards
Derek Baljeu, Knights Bridge Winery
Sally Johnson Blum, Tamber Bey
Kelly MacLeod, Hudson Vineyards
Shannon Muracchioli, Sequoia Grove Winery
Ryan Pass, Farella Vineyard
Mailynh Phan, RD Winery
Suhayl Ramirez, Trois Noix
Matthew Sharp, Shafer Vineyards
Molly Sheppard, Spottswoode Estate Vineyard & Winery
Wesley Steffens, Vineyard 7 & 8

地域の生産者団体がこのように人材の育成に取り組んでいるというのは、かなり画期的なものであり、すごいことだと思います。CEOのリンダ・リーフさんには4月にナパに行ったときにお目にかかりましたが、見るからに「切れる人」という感じを受けました。今回のプログラムに参加しているKale WinesのKale Andersonさんは来月日本に来ますので、このあたりの話も聞けたら面白いかなと思っています。
Date: 2023/0524 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
「パリスの審判」で白ワインの1位になったシャトー・モンテレーナのシャルドネを作ったマイク・ガーギッチ。その後、ガーギッチ・ヒルズを立ち上げて今に至ります。今年4月1日に100歳を迎え、先週記念のイベントが開かれました。
Mike Grgich

たまたま5月22日にTwitter Spaceでパリスの審判を描いた映画「ボトル・ドリーム」の話をしたのですが、映画の中で大きなポイントになっているのが、試飲会に出すつもりのワインが茶色に変わっていてワインを捨てかけたというエピソード。実はこの映画の原題は「Bottle Shock」となっていて、そこからもこのエピソードがポイントであることがわかります。

Spaceのトークはこちらから聞けます。

トークの中で、この茶変エピソードが本当にあったのか質問されたのですが、パリスの審判の本にはそういった話は出てこないので、実際に1位になったワインではないのではないかと回答しました。

冒頭に戻って、ガーギッチ100歳のイベントの中でパリスの審判のワインの前年の1972年シャトー・モンテレーナ・シャルドネが振る舞われたそうです(Mike Grgich Celebrates his Century in Style | Wine-Searcher News & Features)。そこで明かされたのが、そのワインが実際に茶変したことがあったという話。それが映画の制作者に伝わったのかどうかは不明ですが、完全に作ったエピソードというわけではなかったようです。

ところで、映画にはそもそもマイク・ガーギッチは登場しません。オーナーのジム・バレット、息子で後を引き継いだボー・バレット、アシスタント・ワインメーカーだったグスタヴォ・ブランビーラは実名で出てきたのに、です。

実はマイク・ガーギッチはジム・バレットと折り合いが悪く、特にパリスの審判で1位を取ってからは、その名誉をワイナリーのものとするジム・バレットと、自身の功績と主張するガーギッチとの間に大きな軋轢が生じ、それもあってガーギッチは独立したのでした。その確執は映画の撮影時にもなくなっておらず、映画には全く登場しなかったのでした。パリスの審判に関連した試飲会などでもモンテレーナかガーギッチのどちらかが出ることはあっても両方が出るということは一度もありませんでした。

ただ、2013年にジム・バレットが亡くなり、ガーギッチがサンタ・ローザの新聞「プレス・デモクラット」で彼を称賛したことで、実質的に和解した形になりました。今回のイベントにもボー・バレットが参加しています。さらに今回は、不仲で知られたマイケル・モンダヴィとティム・モンダヴィの兄弟もそろって出席し、昔話に花を咲かせるという異例の光景も見られたそうです。

ガーギッチ・ヒルズのシャルドネやフュメ・ブラン(ソーヴィニヨン・ブラン)はナパの白ワインの中でもトップクラスに入る高いクオリティのものです。改めて映画を見ながら、モンテレーナと飲み比べてみたりするのも面白いかもしれません。




[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

シャトー モンテレーナ ナパ ヴァレー シャルドネ 2019 No.103481
価格:11,880円(税込、送料別) (2023/5/24時点)


Date: 2023/0523 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Floraという極めてマイナーなブドウ品種の記事がSFクロニクルに出ていました。FloraはUCデーヴィスの有名な学者だった故ハロルド・オルモ氏がゲヴェルツトラミネールとセミヨンをかけあわせて作った品種。セミヨンの蜂蜜のような香りやゲヴェルツトラミネールの持つ花の香りを合わせもったようなブドウになることを目指して作ったものです。

元記事にはフローラを現在育てているのはナパのヨントヴィルにあるYount Mill Vineyardのみとなっていますが、2022年のクラッシュ・レポートによるとカリフォルニア全体で14.1トンのフローラの収穫があり、うち11.3トンがナパ産となっています。このほかサン・ルイス・オビスポ、サンタ・バーバラ、ヴェンチュラの3郡の中で1トン、シエラ・フット・ヒルズのあたりで1.8トンとごく少量作られています。

Yount Millの畑ではこの品種が発明された直後の1958年からFloraを植えているとのこと。最初の顧客はチャールズ・クリュッグだったそうです。

そして、1972年からこの品種を買っており、最大の顧客となっているのがシュラムスバーグ。この品種のアロマティックな性質が、デザートワインに向いていると考え、ドゥミセックのスパークリングに採用しています。
Flora
残念ながらこのワインは国内輸入がないようです。

このほかマサイアソンのヴェルモットでも使われています。日本でも販売されていた「No.4」という4回めに作ったヴェルモットでも80%がFloraです。ワインの説明には以下のように書かれています。

まず、私たちのベルモットは、ワインが主役です。ベースとなるワインは80%がフローラです。フローラという品種は、1950年代に伝説的なハロルド・オルモがUCデイヴィスで育てたものです。フローラはセミヨンとゲヴェルツトラミネールの交配種です。今となってはオルモに直接質問して私たちの説を確かめることはできませんが、彼が酒精強化ワインのために特別に作ったものだと確信しています。カリフォルニアのワイン産業は、この種のワインから遠ざかり、フローラは幻の存在になりました。しかし、ヨント・ミル・ヴィンヤードの有機農法で栽培されたフローラがまだ存在すると知り、私たちはすぐに果実の提供をお願いに行きました。通常、私たちはすべての果物を自家栽培していますが、この希少で歴史的な品種からワインを造るという誘惑には勝てませんでした。

このほかZDがロゼを作り、栽培家であるHoxsey-Onyskoが「Elizabeth Rose」というブランドで白ワインを作っています。

null

シュラムスバーグのクレマン・ドゥミセックはワイナリーの売上のわずか2%でしかありませんが、熱烈なファンが付いているそうです。また、これは非常に長熟なスパークリングにもなるとのこと。

マサイアソンのヴェルモットは試飲したことがあって、とても美味しかった記憶はありますが、こんなマニアックな品種を使っているとは知りませんでした。次に輸入されたらぜひ飲んでみたいと思います。
Date: 2023/0522 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
2023年春に、ナパのロンバウアーがついにピノ・ノワールを発売しました(Why Rombauer Vineyards Traveled To Monterey To Source Grapes For Its New Pinot Noir)。それにまつわる記事がFotbesに出ていたので内容を紹介します。

ついに、というのはロンバウアーといえば有名なのはシャルドネであり、シャルドネを作るワイナリーは合わせてピノ・ノワールを作ることも多いからです。

ロンバウアーはナパの一番南にあって冷涼なカーネロス地区にシャルドネの畑を数多く持っています。しかし、ピノ・ノワールはそれらの畑ではなく、南に3時間ほども離れたモントレーのサンタ・ルシア・ハイランズから調達しています。

ロンバウアーはピノ・ノワールを作り始めるにあたって北はオレゴンから南はサンタ・バーバラまで探して歩きました、その中でロンバウアーの顧客の反応が一番よかったのがサンタ・ルシア・ハイランズでした。

ピノ・ノワールを作り始めるにあたり、コンサルタントを依頼しました。シドゥーリ(現在はジャクソン・ファミリー傘下)のワインメーカーとしてピノ・ノワールで一世を風靡したワインメーカーです。彼のつてもあり、サンタ・ルシア・ハイランズの中でも人気の高いGarys'、Sierra Mar、Rosella's、SoberanesのGary Franscioni家が管理する4つの畑のブドウ、さらにSirra Marのすぐ近くにあるLemoravoの畑のブドウを使っています。

ブドウは夜のうちに収穫し、朝早くナパのワイナリーに運びこまれます。そこで選果をした後、醸造に移ります。ちなみにロンバウアーはカーネロスに白ワイン専用のワイナリー、シエラフットヒルズにジンファンデルなどのワイナリーも持っています。

冒頭に戻って、なぜカーネロスに多くの畑を持ちながらそこでピノを作らないのかということですが、ロンバウアーにとってはシャルドネが何よりも重要な品種になっています。それだけにカーネロスの畑はシャルドネに専心したいということです。
Date: 2023/0520 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments

ナパの最後のディナーで、オーパス・ワンのワインメーカーであるマイク・シラッチさんから聞いた話のメモを載せておきます。といいつつ、すでにうろ覚えですが(汗)。

マイク・シラッチさんがオーパス・ワンに入ったのは2001年。2004年にロバート・モンダヴィが経営破綻し、コンステレーション・ブランズに売却されます。それ以降、ワイン造りの指揮を取っています。2000年前後はワインの評価もあまり芳しくないときがありましたが、マイク・シラッチさんになってからは品質も安定し、評価もよくなっています。

このディナーのときに飲んだオーパス・ワンは2007年だったのですが、この年は初めて無灌漑に挑戦した年でした。その結果は収穫量は相当減ってしまい「災害一歩手前だった」とのことですが、ワインのでき自体は素晴らしいものでした。現在はどうかというと、「完全無灌漑ではやっていない」。畑のブロックによって状況に応じて灌漑はしているとのことです。

マイク・シラッチさんになって品質が上がったのはどうしてか、という不躾な質問をしてみました。ちょっと苦笑いをしながら答えてくれたのは畑のクルーが安定したのが理由ではないかとのこと。オーパス・ワンには畑のクルーが16人ほど常勤でいます。人手が必要なときには臨時のワーカーも入るそうですが、基本的には常勤のワーカーが畑を管理しています。剪定方法としては長梢剪定を採用していまう。理由は自由度が高いこと、カビ害などを防ぎやすいこと、ワーカーが樹を1本1本ケアできることを挙げていました。

オーパス・ワンの畑はワイナリーの周囲のほか、ハイウェイ29を渡ったト・カロン・ヴィンヤードの中に「ト・カロン・ノース」と「ト・カロン・サウス」の2つのブロックがあります。ノースの方はカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フラン、プティ・ヴェルド、サウスの方はカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロー、プティ・ヴェルドが植わっています。ワイナリーの周囲は6つのブロックに分かれており、ナパ・リヴァーに近い東の方はメルローが多いようでした。メルローは粘土質を好み、やや水はけで劣る東のブロックに向いているようです。逆にカベルネ・フランは石が多い土壌を好むとのことでした。

温暖化への対応をどう考えているか聞きました。それでシラッチさんが描いてくれたのが下の絵です。

ブドウを植える列の向きをこれまで南北方向だったのを34°傾けるとのこと(先日の配信では15°とか適当なことを言ってました、すみません)。これによって西日の当たり方を弱くするそうです。
また、列と列の間隔をこれまで1mだったのを1.8mと広くします。これは水不足に対応して樹のストレスを和らげるためです。

これらは今の樹を抜いて植え替えないと行けないので、一気に行うことはもちろんできず、少しずつやっていくのでしょうけど、普通のワイナリーではなかなかリスクが取れないのではないかとも思います。オーパス・ワンだからできることでもあるし、オーパス・ワンが常に挑戦を続けていることの証でもあるように思いました。

このほか、オーガニック栽培(オーパス・ワンはビオディナミを採用しています)の話なども質問しましたが、メモが読み取れないので、報告は以上です。
Date: 2023/0517 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
bliss
マイクロソフトのパソコン用OSとして2000年代に使われていた「Windows XP」。その標準の壁紙画像として使われていた草原の写真はカリフォルニアのロス・カーネロスで撮られたものでした。日本語版では「草原」というタイトルですが、英語版では「bliss=至福」というタイトル。一種夢のようなきれいな風景です。

Wikipediaには以下のように説明があります。
この写真は1996年6月24日に、元ナショナルジオグラフィックの写真家で、ナパ郡セントヘレナに在住するチャールズ・オレアによって撮影された。オレアによれば、この画像にはデジタルによる強調や修正は施されていない。この写真はカリフォルニア州道12号・121号沿いから中判カメラのマミヤRZ67で撮影された。撮影した位置は北緯38.248966度 西経122.410269度である。オレアはナパバレーにおけるワイン造りに関する写真を撮ろうとしていたが、当時この丘にはブドウの木は植えられていなかった。後に、この一帯はブドウ畑になった。
草原 (画像) - Wikipedia

この場所をGoogle Mapのストリートビューで見ると、ブドウ畑になっていることがわかります。丘の形などは変わっていないのも見て取れます。
Google Mapストリートビュー
null
ストリートビューの写真は撮られた時期で選べるようにもなっています。今の写真は春先で全体に茶色がかっていますが、もっとブドウの葉が茂った状態だとXPに近い感じもあります。

また、Google Mapには投稿写真も付いており、かなりXPの壁紙に近い雰囲気の写真もありました。
null

カーネロスはこのようになだらかな丘がいくつも重なりあうように並んでいます。「ローリング・ヒルズ」と呼んでいます。これによってブドウにも様々なマイクロクライメットが生じます。土壌も、粘土質を基調としながら火山性の土壌もあり、それによって適したブドウ品種も変わってくるようです。また、この場所はブドウ畑になりましたが、牧畜も盛んなので、草原のままのところもかなり残っています。
Date: 2023/0513 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
null
ナパのラザフォードにあるケークブレッド・セラーズ(Cakebread Cellars)が創業50周年を迎えました。

ケークブレッドは写真家だったJack Cakebreadが設立したワイナリー。「Cakebread」とは美味しそうな名前ですが、本名なのです。Jackは有名なAnsel Adamsの薫陶を受け、ナパに写真を取りに行ったところ、そこが気に入ってしまい、いつかはワインを作ろうと決意しました。それを、Rutherfordに住む知り合いに伝えたところ、その日のうちにその知り合いから電話がかかってきて、そこを買い取ることになりました。1972年のことで、翌1973年からワインを作り始めました。以来、家族経営を続けています。

50周年を記念して、いくつかの記念ワインを出していく予定です。最初のワインはシャルドネ。ワイナリーで最初に作ったのがシャルドネだったからです。ケークブレッドの持つカーネロスの4つの畑の単一畑ワインをセットにしました。ワイナリーおよび、ウェブサイトで購入できます。

Buy 50th Anniversary Chardonnay Selection | Cakebread Cellars
Date: 2023/0512 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
パソロブレスのワイン観光が勢いを増しています。2022年のパソロブレスの宿泊税収入は前年の40%増しであることがっ判明しました。2021年3月から2022年9月までの19カ月間、パソロブレスでは宿泊税が前月比で増加しました。その後、ペースは平準化していますが、2023年度は前年を上回るペースで推移しています。

2022年に郡全体の観光産業は8億6500万ドルの収益を上げました。郡内の旅行支出は21億5000万ドルに達し、1億1600万ドルの地方税収を生み出しました。コロナ前の約93%の水準に戻ったといいます。
マップ

さらに、2023年には60ページの「ワインカントリーガイド」を発行します。Wine Follyが2022年に作ったデジタルガイド(Paso Robles Wine Guide | Wine Folly)をベースに作られました。パソロブレス・ワイン・カントリー・アライアンスという業界団体に所属する約200のワイナリーすべての情報が入っています。5月15日以降、Pasowine.comおよびWinefolly.comで購入できます。
Date: 2023/0511 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
イタリアのマルケーゼ・アンティノリがナパのスタッグス・リープ・ワイン・セラーズの最大株主になりました(Marchesi Antinori to Take Over Full Ownership of Stag's Leap Wine Cellars)。
null

ウォーレン・ウィニアルスキが1970年に設立したスタッグス・リープ・ワイン・セラーズは1973年に作ったカベルネ・ソーヴィニヨンが1976年のパリ・テイスティングで1位になったことで、世界にその名が知られました。2007年にウィニアルスキが引退のため、ワシントンのシャトー・サン・ミシェルとマルケーゼ・アンティノリに売却しました。売却金額は1億8500万ドルと言われています。当時はアンティノリの持ち分は15%でした。

サン・ミシェルとアンティノリはワシントンのコル・ソラーレ(Col Solare)でもパートナーを組むなど、深い関係を持っています。

一方でサン・ミシェルは近年業績があまりよくなく、2021年には投資会社のシカモア・パートナーズに売却されました(ワシントンに激震!? シャトー・サン・ミシェルの売却)。なお、サン・ミシェル傘下のワインはワシントン州の2/3を占めるほど絶大な影響力を持っており、同社の業績が、ワシントン全体のワイン産業の浮沈につながっています。

その後、ワシントンの事業により注力するために今回の売却になったようです。アンティノリは元々スタッグス・リープ・ワイン・セラーズを購入したときのパートナーでしたから、自然な買い手だったとのこと。アンティノリはこれで85%を所有することになりました。

なお、アンティノリのカリフォルニアでの活動は、ナパのアトラス・ピークに始まり、現在はアンティノリ・ナパ・ヴァレーというワイナリーを保有しています。当初はサンジョヴェーゼの栽培を狙っていましたが、現在はカベルネ・ソーヴィニヨンなどを作っています。


Date: 2023/0510 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ダックホーンの親会社であるダックホーン・ポートフォリオが、ソノマのアレキサンダー・ヴァレーにあるワイナリーとブドウ畑を購入したと5月4日に発表しました(The Duckhorn Portfolio, Inc. (NAPA) Acquires North Coast Winery and Vineyards)。

畑は7エーカー超でカベルネ・ソーヴィニヨンが植えられています。買収のメインはワイナリーで、最先端のワイン醸造の設備を備えており、他社への醸造や保管、瓶詰めの委託を減らすことができるとのことです。買収額は5500万ドルと発表されています。

売り主はE & J Galloで、以前はクロ・デュ・ボワ(Clos du Bois)の施設だったところです。2021年に完了したコンステレーション・ブランズからガロへのブランド移管によって、ガロのものとなっていました。
Date: 2023/0509 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパツアーの記事のおまけです。今回、約20名の方々と一緒にツアーに参加しました。以前からよく知っている方もいらっしゃいましたし、今回初めてお会いする方もたくさんいました。

思い起こしてみると、2016年にもこのExperience Napa Valleyのツアーに参加させていただき、同じように20人近くの方とご一緒しました。そのときは知っている方もほとんどおらず、かなりドキドキでの参加でしたが、ここで知り合った方との結びつきは今でもとても大きなものになっています。

例えば立花峰夫さんと知り合ったことがきっかけでアカデミー・デュ・ヴァンで講師をするようになりました。講師をしていなかったら、今年ベスト・エデュケーターに選ばれることもなかったわけで、改めてそういった縁のおかげと思っています。

今回ご一緒した方々とも、これから先、いろいろな縁が続いていくだろうと思います。ツアー自体の素晴らしさはもちろんのこと、人との関わりという点でも意味の大きなツアー参加でした。

それから、ナパヴァレー・ヴィントナーズの方々の様々な努力にも改めて感謝します。若下さんとは前回のツアーでも一緒でしたが、今回は初めて小枝絵麻さんとも長い時間を共にして、二人が名コンビであることがよくわかりましたし、米国側の担当者であるコナーには、細かな気遣いなど、ちょっと惚れちゃいました(笑)。

もう一つ、今回はナパヴァレー・ベスト・エデュケーターとしての参加で、同じくベスト・ソムリエ・アンバサダーに選ばれた山田琢馬君とも初めて長い時間を共に過ごしました。すごく勉強熱心で、気持ちのいい青年。しゃべりも上手です。親子ほども年齢は違いますが、なかなかいいコンビになれると思います。

下はコナーからのメッセージカード。最後の日にホテルの部屋に届けられていたものです。印刷された「Matsubara-san」をわざわざ「Andy」と書き換えてくれるところにも気配りを感じたのでした。
Date: 2023/0507 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Date: 2023/0507 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
もりだくさんのイベントもいよいよ最後のディナーです。最後は「ナパヴァレー・ライブラリー・ワイン・ディナー」と称し、オーパス・ワン(Opus One)やコルギン(Colgin)などナパを代表する名ワインが振る舞われるディナーです。しかも各ワイナリーからワインメーカーなどが直々に列席し、話を聞けるというこの上ない贅沢なものです。

会場となったのはクインテッサ(Quintessa)です。ラザフォードに広大な自社畑を有し、貯水池まで持っています。

もう、この美しさだけですごいですよね。今回は建物の中はほとんど見られなかったのですが、テイスティング・ルームなどもとてもいいそうです。またゆっくり来たい。

で、ウェルカムワインがQuintessaのソーヴィニヨン・ブランIlluminationの2021年だったのですがこれがまたきれいで美味しいのです。今回ウェルカムワインでソーヴィニヨン・ブランを何回もいただきましたが、その中でも特筆できる美味しさでした。

ワインとディナーにいらっしゃった方を紹介しておきましょう。
コルギンは2006年のIX Estateです。マスター・ソムリエで共同CEOのポール・ロバーツさんが来場予定でしたが、急な事情で今回はダニエルさんという方の参加となりました。


ダラ・ヴァッレ(Dalla Valle)は2013年のマヤ(Maya)。いらしたのは今のワインメーカーのマヤさん御本人です。これまでオンラインミーティングでしゃべっているところを拝見することはありましたが、言葉を交わすのは初めてです。ちょっとクールですが、予想以上に気さくな方でした。日本にも実は毎年2回くらい来ているそうです。お母様の実家の神戸やスキーで北海道などに。

自分と一緒の写真を撮ってもらうことは少ないのですが、今回は例外です。

次はグレース・ファミリー(Grace Family)。ワインは2006年のグレース・ファミリー。いらっしゃったのはワインメーカーのヘレン・ケプリンガーさん。ヘレンさんももちろん会うのは初めて。来年くらいには日本に来たいそうです。席が遠くてあまりお話はできませんでしたがエレガントで素敵な方でした。


オーパス・ワンからは2007年のオーパス・ワン。いらっしゃったのはワインメーカーのマイケル・シラッチさんです。

2007年は初めて無灌漑での栽培に挑戦した年だったとのこと。ただ、無灌漑はいろいろ大変で収穫量も減り、今ではやっていないそうです。マイケル・シラッチさん、紙の名刺は持たず、オンラインの名刺にアクセスするQRコードを見せてくれるというなかなかユニークな方。料理の写真もスマホで撮っていましたし、意外とネット好きなのかもしれません。大物で最初はちょっと取っつきにくい感じもありましたが、細かい質問も嫌がらずに丁寧に教えてくださいました。

クインテッサからは2014年のクインテッサ。そして2016年のイルミネーションも供されました。出席されたのはワインメーカーのレベッカ・ワインバーグさん。珍しくちょっとシャイな感じの方でした。クインテッサからはジェネラルマネージャーのロドリゴ・ソトさんも。オンラインミーティングでは何回かお会いしていたのですが、リアルに会うのは初めてで、今回とても会いたかった人の一人だったので嬉しかったです(その割に写真撮るの忘れましたが)。


シェーファー(Shafer)は2012年のヒルサイド・セレクト。いらっしゃったのはワインメーカーのイライアス・フェルナンデスさん。ダグ・シェーファーさんとは何度もお会いしていますがイライアスさんとは初めて。あまり表に出て来ないのは人付き合いが好きじゃないのかと思っていたのですが、むしろ真逆でした。うるさいほどに(笑)よくしゃべる人。面白かったです。


最後にスポッツウッド(Spottswoode)からは、あえて難しい年だった2011年のスポッツウッド。いらっしゃったのはワインメーカーでヴィンヤード・マネージャーでもあるアーロン・ワインカウフさん。ご挨拶くらいしかできなかったのがちょっと残念でした。


料理ももちろん美味しかったのですが、ワインに圧倒されてあまり記憶にありません。




ワインの説明や感想を記していきます。

クインテッサのソーヴィニヨン・ブラン、イルミネーションはウェルカム・ドリンクの2021年のほか、2016年のワインが食事のときに供されたのですが、これがまた2021年を超えて美味しかったのです。熟成によって、酸は少し落ち、オレンジのような風味に白い花の香り、濡れた石や草のニュアンスも少しあります。ナッツの風味も加わり複雑さは倍増です。私がこれまで経験したソーヴィニヨン・ブランの中では間違いなくトップクラスの味わいでした。

2006年のグレース・ファミリーは何よりもエレガントさが際立っていました。重さを感じないワイン。赤黒果実に熟成によるハーブやきのこの風味も。

2006年のコルギンIX(ナンバーナイン)エステートも、リッチでグリップのある味わいですが、こちらも重くなくきれいなワイン。香りが素晴らしく、ミネラル感も感じます。

2007年のオーパス・ワンは前述のように灌漑なしに挑戦した年でしたが「災害一歩手前」だったそうです。翌2008年も収量少なく、現在は灌漑なしはやめています。この年のもう一つの特徴がプティ・ヴェルドをカベルネ・ソーヴィニヨンと一緒に発酵させるようになったこと。互いにいいところを引き立て合うようになったそうです。2001年からオーパス・ワンで働いているマイケル・シラッチさん、「誰のためにワインを作っているのか?」と聞かれたときには「2人いる。ロバート・モンダヴィとロスチャイルドだ」と答えたそうです。これには感動している人が多くいました。
ワインの味わいは、バランスの良さがともかく秀逸。どこをどうとってもよくできているワインです。本当に素晴らしい。熟成したオーパス・ワンは久しぶりでしたが、感服しました。

スポッツウッドはあえて難しい年の2011年でした。アーロン・ワインカウフさんがワインメーカーになって初めて作ったワインとして持ってこられました。非常に香り高く、これもきれいなワイン。シェーファーのイライアスさんは、自分のスピーチのときにまず最初に「彼がワインメーカーとしての最初の年が、この困難な年で、これだけ素晴らしいワインを作ったことを称えたい」と言ったほどです。

そのシェーファーは2011年の次の年の2012年。別の意味で難しい年で、収量が非常に増えてしまい、結果としてクオリティが伴わなかったワイナリーが多く出てしまいました。2011年が非常に収量が少なかったので、それを補おうという面もあったと思います。シェーファーではかなり収量を切り詰めることでクオリティを維持しています。1984年にシェーファーに入り、今年でもう40年目になるというイライアスならではの安定したワイン造りが伺えました。タバコやスパイスなどの複雑な風味がでてきてよかったです。

ダラ・ヴァッレのマヤはカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランのブレンドで、カベルネ・フランが40%程度入ります。ナパのカベルネ・フランの可能性を示した最初のワインとも言われており、ロバート・パーカーが100点を付けた2つ目のカリフォルニアワインとしても知られています。2013年は前のワインメーカーのアンディ・エリクソンの時代のもの。これも香りの豊かさとエレガントさが際立っていました。

クインテッサは2014年のワイン。ここは前述のようにかなり広い畑を持っており、土壌の要素も場所によって様々に分かれています。それらをブレンドすることですばらしいワインを生み出しています。非常に複雑味のあるいいワインでした。


最後に参加者一同から列席した方々や、すべてのアレンジをしてくれたナパヴァレー・ヴィントナーズの方々に感謝を述べて、お開きになりました。
Date: 2023/0505 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ヴィノテラスワインスクールがやっている、ブラインドテイスティングのYoutubeが面白いです。3人の一流テイスターが、銘柄を伏せたワインを試飲し、品種、生産国、ヴィンテージ、価格を予想します。ぴったり当てれば2点(品種は3点)、近ければ1点、はずれれば0点で点数を加算していく形になります。
Blind Wine Tasting - YouTube

登場しているのはこの3人。日本ソムリエ協会のブラインドテイスティングコンクールで2回優勝している大蔵野さん、Youtubeチャンネル「ソムリンTV」の浦川哲也さんと小野塚悠也さん。小野塚さんは昨年の上記コンクールで決勝進出などさまざまな大会に出ています。
おおくらの
null
null

この3人がワインを試飲しながらワインを表現し、品種や国名などを理由を含めて推測していきます。普通のブラインドテイスティングの大会では考えている過程はわからず結果だけが提示されますが、この動画ではどう考えているかを明らかにしているのが面白いところです。しかも、その最終回答を含めてしゃべった内容は自分だけでなく他の2人にも聞かれるので、ある意味カンニングありみたいな形になります。

2回目の動画ではオー・ボン・クリマのサンタ・バーバラのピノ・ノワールが登場。
null

さすがに品種は全員正解。面白かったのが価格のところで、このワインの定価3900円に対して3人の回答は6000円、5600円、7500円。1.5倍から2倍近くの価格の予想となりました。それだけオー・ボン・クリマのピノ・ノワールのレベルが高いということですね。カリフォルニアワインファンとしては嬉しいところです。





ちなみに、国内市場では、このサンタ・バーバラ・カウンティものよりも「ツバキ・ラベル」や「ミッション・ラベル」の方がよく見かけると思います。どちらも日本向け専用のキュヴェで日本食に合うような味わいになっています。ツバキ・ラベルの方はJALUXが輸入しており、ミッション・ラベルは中川ワイン。ツバキ・ラベルは上記ワインと同様サンタ・バーバラ・カウンティ表記になりますが、ミッション・ラベルの方はラベルには記載していないものの中身はビエン・ナシードの単一畑とかなり高級です。価格もちょっとだけ高くなります。


Date: 2023/0504 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
最終日のランチはセント・ヘレナにあるPRESS Napa Valley。2023年1月にミシュラン一つ星を獲得したレストランです。ナパのワインのコレクションでは世界一とのこと。ワイナリー「Rudd」が設立したレストランで、かつてはステーキハウスだったのをモダンな料理のレストランに変化させています。


今回はこのレストランを我々のグループで貸し切りです。というのはなんと、厨房に入れてもらって、シェフ自ら料理教室をしてくれるというのです。これには驚きました。シェフはフィリップ・テシエ。ボギューズ・ドールという世界最高の料理コンクールで2015年に2位に輝いています。

教えてくれるのは、ここの代表的なメニューの一つであるヌーディ(Gnudi)。Gnudiを検索するとイタリアではラビオリの中身だけといった料理のようですが、ここのヌーディは一種のパスタ。材料は特別なものではありませんが、手間暇かけて素晴らしい料理に仕上げます。

材料は自家製のレモン風味リコッタチーズとパルメザンチーズ、卵黄、タピオカ粉、乳製品ベースの粉、色止めの酸、塩です。基本的にはこれをミキサーでミックスし、ピンポン玉大に丸めて指の腹でつぶし、小麦粉の中に入れて丸1日冷蔵庫で保存します。最初は柔らかかったのが、これでゴムのような弾力になり、周りの粉をきれいに取ったら完成です。

難しいところはないですが、ひびが入らないようにきれいに丸めるには打ち粉を付けすぎないようにする、きれいに粉を払うなど、気を使うところはいくつかあります。また何より1日寝かせるため時間はかかります。これを1日200個くらい作るそうです。

レストランで実際に料理として供するときは、これを3分蒸して、季節ごとのアレンジで提供します。下ごしらえは手間がかかりますが、料理を出すときは3分で用意できる手軽さもレストランにとってはいいとのこと。春から秋はカボチャ系の花でくるんだようなアレンジをするそうですが、今年は寒くて遅れているので冬から続いているマッシュルームのアレンジです。マッシュルームの出汁を取り、トリュフで風味を付けます。Gnudiの上には飾りで薄切りのマッシュルームを載せ、マッシュルームとトリュフのソースは客席でかけます。このようにシンプルな食材で手間を掛けて少しだけ高級なものを使ってほかとは違う料理にするのがこのレストランの趣向だそうです。

グループに分かれてワイワイとGnudiを作ります。混ぜる人、粉をはたく人と分担して楽しく料理(のマネごと)をしました。

料理教室の後はセラーの見学です。
ここの初代のソムリエは前の日の「レジェンドワインメーカーたちが語るナパカベの歴史」でモデレーターを務めていたケリ・ホワイトさん。「Napa Valley Now & Then」という大著の著者でもあります。彼女がナパでもナンバーワンのワインリストを作り、現在はマスター・ソムリエのヴィンセント・モローさんが引き継いでいます。ワイン・スペクテーターのグランド・アワードという最高の賞も受賞しています。



セラーは3カ所に分かれていて、2600本を超えるコレクションがあります。

これは1935年のSIMIのワイン。9500ドル。

一番高価なワインはこれ。「パリスの審判」で1位になったスタッグス・リープ・ワイン・セラーズの1973年のカベルネ・ソーヴィニヨン。35000ドルです。

ここのワインリストはこちらで見られます。
View Wine List

セラー見学の後はいよいよ食事です。

料理では先程のGnudiも。もちろん我々が作ったのではありません(シェフは明日お店で出すとジョークを言っていましたが、おそらくスタッフの口に入ったのではないかと)。食感が面白く、トリュフマッシュルームのソースも絶品でした。

それ以外にはTruffle Glazed Chickenという名物料理もとても美味しかったです。

シンプルな鶏の胸肉のローストのように見えますが、実は身と皮の間に旨味の多いチキンの脚などを使ったペーストが挟まれており、見た目と比べて遥かに複雑な味わいでボリュームもあります。これも準備に2日間くらいかかるという手の込んだ逸品。Gnudi同様、シンプルな食材に手間をかけて少し高級な食材でアクセントを付けた料理になっています。

もちろん、今回もすばらしいワイナリーの代表者やワインも一緒です。今回のワイナリーはダリオッシュ(Darioush)、パイン・リッジ(Pine Ridge)、ラッド(Rudd)、シルバーオーク/トゥミー(Silver Oak/Twomey)の4つです。


今回のツアーでは白はオープニングの立ち話をしながらの談笑時間に飲むことが多く、あまりちゃんとコメントが書けていないのですが、このランチではRuddとTwomeyのソーヴィニヨン・ブランが対照的で面白かったです。Ruddの方はMt. Veederのブドウを使っておりフレッシュ感とミネラル感があり、Twomeyはナパとソノマのブドウをブレンドすることで、豊かな酸とリッチな味わいを持っています。どちらも美味しい。
ナパでヴィオニエのイメージはあまりないと思いますが、今回はシャペレーで素晴らしいヴィオニエを飲み、このランチでもDarioushのヴィオニエとPine Ridgeのヴィオニエとシュナン・ブランのブレンドを飲みました。Darioushはとにかく華やか。白い花の香りやトロピカル・フルーツの香りで「アロマティック」という言葉そのままに感じます。Pine Ridgeのヴィオニエ+シュナン・ブランは以前から好きなワイン。日本でも安いところでは1000円台というコスパの良さも抜群です。



赤はまずはシルバーオークのカベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー2018。説明不要かと思うくらい有名で人気のあるワインですが、長年スタイルを保ちつつ進化もしているのが素晴らしいと思います。シルバーオークはアメリカンオークの樽を使うことで知られており樽のメーカーも持っているほど力を入れていますが、決して樽香が強すぎるわけではなく、ボディも酸もきれいなレベルでまとめています。また、このヴィンテージからはラベルを変更しています。

以前はボトルにエッチングを施していたのですが、カーボンフットプリントの観点からはあまり良くないと考え、シンプルな紙のラベルに変えたのです。シルバーオークは環境保全への取り組みでも先進的であり、その姿勢がここにも現れています。

Pine Ridgeは、前回のナパ訪問のときにワイナリーにも行っていますが、スタッグス・リープ・ディストリクト(SLD)に4つの自社畑を持っています。今回はそのSLDのカベルネ・ソーヴィニヨン2019です。ドライプルーンなど青系の完熟した果実の風味やリコリスなど、やや甘やかさがあります。完熟した果実の風味というのはSLDの特徴とも言えるでしょう。かなり強いタンニンがありますが、非常にこなれています。これもSLDの特徴の一つで「鉄の拳を持った貴婦人」などと称されています。総じてSLDらしさの出た美味しいワインでした。このワインはこれまで輸出には出していなかったのですが、今後日本に入ってくることになりそうです。

Ruddからは2019年のSamantha's Cabernet Sauvignon。オークヴィルにある自社畑からのセレクションで、若いうちから飲みやすいスタイルに仕上げています。ナパらしい果実を前面に出したスタイルを目指し、新樽率は51%、エレガントで複雑さも持つワインに仕立てています。果実味が非常にきれいなのが特徴でリッチで洗練された雰囲気がいかにもオークヴィルです。

DarioushからはMt.VeederにあるSage Vineyardという自社畑の赤ブレンド。良年しか作られないワインで、これは2019年です。75%カベルネ・ソーヴィニヨン、15%カベルネ・フラン、10%メルロー。山カベらしいしっかりとしたストラクチャーが出たワイン。

4ワイナリーそれぞれの特徴やAVAの特徴も出た素晴らしいワインばかりでした。料理もワインも堪能。
この後はホテルに戻って1時間半ほど自由時間の後、いよいよクライマックスのディナーを迎えます。
豪華なランチを食べたばかりで、今度はディナー? と思われそうですが、そうなのです。強靭な胃袋が必要です。
Date: 2023/0503 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
SLD Collabo
ナパのスタッグス・リープ・ディストリクトにおける生産者団体「The Stags Leap District Winegrowers Association(以下ではSLDワイングロワーズ)」は2023年10月に「2021 STAGS LEAP DISTRICT CABERNET SAUVIGNON: A COLLABORATION」というワインをリリースすると発表しました。

これはSLDワイングロワーズによる初めての試みで、加盟する16ワイナリーすべてがワインを持ち寄り、それをブレンドして作るというスペシャルなワインです。シェーファーやクリフ・レイディ、スタッグス・リープ・ワイン・セラーズなどももちろんその中に含まれています。

ブレンディングを担当したのは以下の5人のワインメーカーです。
Michael Baldacci | Baldacci Family Vineyards
Robbie Meyer | Malk Family Vineyards
Robert Smith | Quixote Winery
Elizabeth Vianna | Chimney Rock Winery
Josh Widaman | Pine Ridge Vineyards

Pine RidgeのJosh Widamanは先日ナパでお会いした方の一人でもあります。

ラベルには木の枝のところに16個の番号が振られ、番号ごとにワイナリーの名前も記載されています。

チムニー・ロックのワインメーカーであるエリザベス・ヴィアンナは、「ワインメーカーとしての私の個人的な目標は、常に場所と時間の物語を語ることです。テロワール主導のワインを造るという哲学は私たち全員が共有していると思うので、スタッグス・リープ・ディストリクトの快楽的な質感、カベルネのフィネスと熟成感、2021年ヴィンテージのアロマと酸の圧倒的な美しさを強調する、ショーアップしたワインを造ることが目標でした」と語っています。

ワインはオンラインのみで販売され、1本275ドル。3本と6本のセットがあります。
Stags Leap District Winegrowers Association | Cabernet Collaboration
Date: 2023/0502 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
充実したナパツアーもいよいよ最終日です。この日の午前中はスタッグス・リープにあるシルヴァラード・ヴィンヤードでのテイスティングとセミナーです。

まず、最初に30分ほど「ディスカヴァー・プルミエ・ナパヴァレー・テイスティング」として、毎年2月に開催される業界向けのオークション「プルミエ・ナパヴァレー」についての説明と試飲がありました。説明をしてくれるのはなんと贅沢なことにアンディ・エリクソン。ナパヴァレー・ヴィントナーズの会長様です。


試飲したワインは2つ。どちらもプルミエ・ナパヴァレーに出したワインで5ケースしか作られていない超限定ワインです。

アンディ・エリクソンのFaviaからは2018年のリザーヴ・カベルネ・ソーヴィニヨンです。深い味わいで、旨味があります。産地のクームズヴィルは風化した火山性土壌が中心で、灰や粘土がミックスされており水はけがいいとのこと。ナパの中では比較的涼しく、それがワインにも現れているようです。
もう1本はシルヴァラードから。2021年のワインなので、ちょうど今年2月に出展したものです。これもクームズヴィルから。実はシルヴァラードはワイナリーのあるスタッグス・リープだけでなくクームズヴィルにも畑を持っています。このワインはカベルネ・ソーヴィニヨン70%にメルローを30%ブレンドしています。ボルドー右岸のワインをイメージして作ったとのこと。
このワインが実際に落札者に渡るのは、秋以降なので、これはいわゆるバレルサンプルです。若いワインだけあってかなりタニックですが、とにかく香りが素晴らしい。普通のシルヴァラードのワインと一風異なるものを試飲できました。
プルミエ・ナパヴァレーは、業界向けなので一般人は参加できませんが、だからこその特別なワインが素晴らしかったです。

セラーでの試飲の後は部屋に移動してセミナーです。今回のツアーで最後のセミナー形式でした。テーマは土壌とつなげて理解するカベルネ・ソーヴィニヨンということで、ナパの5つの地域のワイナリーからワインメーカーが参加しています。

まず、クームズヴィルからFaviaのアンディ・エリクソン、スタッグス・リープ・ディストリクトからはシルヴァラード・ヴィンヤーズのアリソン・ロドリゲス、オークヴィルのグロス(Groth)からはテッド・ヘンリー、セント・ヘレナのガリカ(Gallica)からはローズマリー・ケークブレッド、プリチャード・ヒルのブランド(BRAND)からマット・ジョンソン。そうそうたるメンバーです。モデレーターはマスターソムリエのデズモンド・エチャヴァリー。


5つのカベルネ・ソーヴィニヨンをテイスティングしながら、パネルディスカッション形式で話が進みます。
ワインは以下の5つ。
Favia Cabernet Sauvignon Coombsville 2018
Silverado SOLO Cabernet Sauvignon Stags Leap District 2018
Groth Reserve Cabernet Sauvignon Oakville 2018
Gallica Estate Cabernet Sauvignon St. Helena 2018
BRAND Napa Valley Cabernet Sauvignon 2019 (AVAではないがPritchard Hill)

最初の質問は「土壌の色とそれがワインのフレーバーにどのように出るか?」でした。

Faviaはクームズヴィルの3つの区画の畑からブレンドしています。土壌は鉄分が多い赤い土壌が中心ですが、圧縮された沖積土壌や白い火山灰、川が運んできた土壌もあります。クームズヴィルはカルデラであり溶岩に火山灰がミックスされていて涼しさと凝縮さがワインにあらわれています。

Silveradoのカベルネ・ソーヴィニヨン「SOLO」の畑はスタッグス・リープ・ディストリクトの北の方に位置しています。ヒルサイドと小さな谷があり、扇状地の部分はナパリヴァーの沖積物が中心となりますが花崗岩が風化した土壌もあります。ここから豊穣さとシルキーなテクスチャーが生まれ、標高の高さからパワーが生まれるとのこと。

Grothのオークヴィルは多様性がある土地ですが、Grothはヴァレーフロアと呼ばれる中央部に100エーカーの畑を持っています。沖積系の土壌が中心ですが、粘土質、砂質、チャートなどが見られます。ソーヴィニョン・ブランは粘土質のところに植えており、カベルネ・ソーヴィニヨンは粘土のないところに植えています。化石からのミネラル感が見られるとのこと。また、Grothのリザーブはヴァカ山系で鉄分が多い土壌で育てられ、フレッシュ・フルーツの風味があるとのことでした。

Gallicaはセント・ヘレナで沖積系で小石の多い土壌の畑です。扇状地に見られるコルティナと呼ばれる水はけの良い土壌です。セント・ヘレナは温かい地区であり台木が重要だとのことでした。Gallicaではセントジョージと10Rを使っているとのこと。

BRANDのあるプリチャードヒルはオークヴィルの東側の山地で火山性の土壌です。鉄分が多い赤い土壌で岩がゴロゴロしています。表土が薄く水はけがいい土地です。岩の割れ目に根が張り、ブドウの実は小さく凝縮したものになります。ワインはいきいきとした酸味やミネラル感が特徴です。

次の質問は各地区の温度に関するもの。日較差やそのワインに与える影響を聞いていました。

Faviaのアンディ・エリクソンによるとナパの北部のカリストガがFaviaのあるクームズヴィルでは夏の日中の気温が華氏4~5度(摂氏2~3度)違うとのこと。2022年の場合、オークヴィルの畑とは収穫が6週間も違ったとのことです。この涼しさは色やアロマティクスに影響しており、ハーブなどフルーツ以外の要素が大きくなるとのことです。

Silveradoのあるスタッグス・リープ・ディストリクトでは海からの冷却効果によって日較差が大きくなります。この4月だと最低気温が摂氏2度で昼間は20度くらい、夏だと10度から33度くらいまでと日較差がとても大きな地区です。特にこれは成熟期に重要で、夜にブドウが休憩できることが昼間の光合成にも影響し、長い生育期間になります。

Grothのあるオークヴィルはちょっと涼しさもありますが、昼間は暖かくなります。日較差によって酸味とフレッシュ感が保たれるとのことです。

Gallicaのあるセント・ヘレナでも朝は霧が入ってきますが10時ころまでには晴れてきます。午後からは風が強くなります。オークヴィルと比べると10~12日収穫が早いとのこと。

BRANDのあるプリチャードヒルは丘で標高が高いため、夜は温暖で昼は涼しくなります。いわゆるフォグラインより少し上なので霧の影響はありません。穏やかな気候が続きます。ブドウはよく成熟し、タンニンもあり色調は濃くなります。

次の質問はワインメイキングとワインのスタイルについてでした。

BRANDは果実が小さく凝縮感ある。ワイン造りではたくさんのことを施さない。ストラクチャーを出したいと考えている。新樽率は60~65%で樽のニュアンスは溶け込ませたいとのことでした。50エーカーの畑で台木とクローンの組み合わせを13種も試しているそうです。

Gallicaのローズマリー・ケークブレッドはスポッツウッドなどで計40年の経験を持っています。いかに素晴らしいブドウをワインにするかが問題でワインメイキングでは手を入れないようにしています。新樽は使っていません。

Grothのリザーヴのブロックはタンニンが高くフレーバーのいきいき感があります。Gallicaとは対称的にこちらは100%新樽使用。抽出も長めに取っています。

Silveradoは、土壌がすばらしく果汁のPHや酸のバランスがよく、ワインメーカーができることは少ないとのこと。

Faviaのアンディ・エリクソンには、クームズヴィルとオークヴィルなど様々な地区のワインを作る上で、ニュアンスの違いをどのようにしてきたか、という違う質問が投げかけられました。

アンディ・エリクソンの答えは、サイトの個性を出したいとのこと。それをどう表現するか何を語りたいかを考えます。例えばマヤカマスのあるマウント・ヴィーダーはほかとは全く違います。素朴なスタイルでタンニンを表現したいと考えて作っています。オークヴィルは洗練されたスタイルでやわらかさを出したい、アトラスピークは黒系アロマ、クームズヴィルは酸とタンニンのバランスとのことでした。





Date: 2023/0430 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
今回の記事はナパヴァレー・ベスト・ソムリエ・アンバサダーの山田琢馬君に書いてもらいました。琢馬君、ありがとう!


午後からはフリーマークアビーにて"ナパ・ヴァレーワインの歴史と未来"というテーマのパネルディスカッションへ。ホストでもあるフリーマーク・アビー(Freemark Abbey)を長年ワインメーカーとして支えてきたテッド・エドワーズ(Ted Edwards)。


ナパ・ヴァレーにおける女性醸造家の先駆け的な存在キャシー・コリソン(Cathy Corison)。


マスター・ソムリエでハイツセラーズ(Heitz Cellar)などの複数のワイナリーを手掛けるカールトン・マコイ(Carlton McCoy)。


そして1895年創業の老舗ワイナリー、ラークミード(Larkmead)のエイブリー・ヒーラン(Avery Heelan)。


モデレーターは重さ10kgを超える大著"Napa Valley, Then & Now"の著者で、ナパ・ヴァレー屈指のエデュケーター、ケリ・ホワイト(Kelli White)を迎えて進行するという、超豪華なメンバーにひたすら目を輝かせていました(笑)


冒頭の30分はケリ・ホワイトによる、ナパにおけるカベルネの歴史とスタイルの変遷の話でした。ナパにおいてカベルネにスポットが当たり始めたのは禁酒法が終わってしばらくしての事で、それ以前はジンファンデルやリースングで造られるワインが人気だったようです。また禁酒法の最中、ワイン製造自体は禁止されていなかったため、自宅でワイン製造する人が急増し、ブドウ栽培農家への需要が集中したという面白い現象についても語っていました。

1961年のハイツ・セラーズ(Heitz Cellar)や1966年のロバート・モンダヴィワイナリー(Robert Mondavi Winery)などの創業を皮切りにナパにおけるカベルネの黄金期に入ったとの事で、当時は強いタンニンながら早摘みによって酸を残し、アルコール度数が抑えられたスタイルが一般的だったようです。

パリスの審判(Judgement of Paris)でのナパワインへの注目や、名だたる評価メディアの誕生(Wine SpectatorやWine Advocateなど)によって大きく躍進した1970年代、より食事に寄うために酸の残ったエレガントなワイン造りが主流となった1980年代、密植の流行・評価メディアで評価されやすいワイン造りが主流になり、97年に経験した長いハングタイムによって濃厚でリッチなスタイルが確立された1990年代、現在のクラシックへの回帰など、カベルネ一つとってもかなり激動の時代を歩んできた事が分かりやすく語られました。

ケリの話の中で特に印象的だった事は、流行りに乗るためにクラシックに回帰したというよりは、干ばつや熱波、山火事などの気候変動に対応するための自然かつ最善の方法がクラシックへの回帰だったという事です。

さて、テイスティングでは4種類のカベルネベースのワインをテイスティングしました。


まずはFreemark Abbey Bosche Vineyard 2002。
カベルネをベースとしたブレンド。マグナムボトルで供されました。黒系フルーツの香りに黒鉛、レザーや腐葉土のような熟成のトーンが相まって非常に複雑な香りですが、未だに若々しさすら感じます。綺麗な酸と丸みのあるタンニンによって非常しなやかな質感となっていました。

続いてCorison Cabernet Sauvignon2011。ここ30年で最も難しいビンテージだったという2011年。雨が多く冷涼な年だったという事で、果実の乗り方こそ穏やかでしたが、未熟なニュアンスは一切なく、瑞々しい酸と穏やかなタンニンを纏ったエレガントなテイストでした。

3杯目はLarkmead Solari Vineyard 2013。日本未輸入、長い歴史を持つカリストガのワイナリーの単一畑です。2013年は干ばつが始まった年との事で、香りと味わいともに凝縮感とボリュームを感じさせる印象でした。しかし全体を支える酸も豊富に感じる事が出来たため、重々しさはほとんど感じませんでした。

ラストはカールトン・マコイが持つブランドの一つ、バージェス(Burgess)のハウエル・マウンテン(Howell Mountain)にある標高300mの単一畑Sorenson Vineyard 2021を。赤黒いフレッシュなフルーツの香りに黒鉛やハーバルなトーン、生き生きした酸と口中を掴むようなグリップを感じるタンニンによって引き締まった印象を受ける、まさに"山カベ"といった洗練されたテイストでした。

全てのワインに精通して感じた事は、重々しい雰囲気はなく、そのどれもに一定の"清涼感"と"瑞々しさ"を持っているという事でした。

これこそまさにナパ・ヴァレーのクラシックな味わいである事を再確認できた素晴らしい機会となりました。

=====琢馬君の記事はここまで====
さすがソムリエ。ワインの表現は素晴らしいですね。琢馬君はナパの2次試験のペアリングコンテストでも1
位になっており、僕にないものをいろいろ持っています。また機会があったら書いてもらおうと虎視眈々、狙っています(笑)。

なお、この後は趣向を変えて、日本のナパワイン事情について、レストランやホテル、小売店などの立場から説明するという逆向きのセッションもありました。私も少しお話させていただきました。

Date: 2023/0427 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
アンディ・エリクソンが畑や産地に縛られずに作るコスパ高級ワイン「リヴァイアサン」」で紹介したワイン「リヴァイアサン(Leviathan)」2020が国内に入荷しています。

著名なワインメーカーであるアンディ・エリクソンが地元のナパにこだわらず、良質なブドウを求めて作るワイン。ソノマやレイク郡などのブドウを使っています。2020年は 56% Cabernet Sauvignon、15% Merlot、 13% Petite Sirah、 7% Syrah、 5% Petite Verdot、4% Cabernet Francという構成です。

私のテイスティングコメントは以下のものでした。
青果実、黒果実、赤果実いずれの風味も感じます。シラー由来かブラックペッパーのようなスパイシーさやチョコレート感も。アルコール度数はやや高めの14.9%で若干重さは感じますが、フルーツの味に軽さがあるのでバランスは取れています。

これだけのクオリティのワインがいまどき1万円切るのはかなりお買い得です。前回の記事ではあえて「コスパ」という言葉を使っています。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

リヴァイアサン [2020] ≪ 赤ワイン カリフォルニアワイン ≫
価格:9,504円(税込、送料別) (2023/4/27時点)



Date: 2023/0426 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
長かったこの日の最後のプログラム(前回の記事との間にもう二つプログラムがありましたが、後日報告します)は「生産者と受賞レストランディナー」。様々な賞を受賞したレストランに、生産者と行くプログラムです。これも小グループに分かれます。

私のグループはロング・メドウ・ランチ(Long Meadow Ranch)。ランチと名の付く通り、ブドウ畑だけでなく、牧場や果樹、菜園などを兼ね備えたワイナリーです。そしてディナーを取るレストランは「Farmstead」というロング・メドウ・ランチが持っているところ。ミシュラン星付きではないですが、ミシュランのサイトにも掲載されているレストランです。レストランの周りにも菜園があり、そこで取れた野菜などを出しているという地産地消のレストランです。

まずはロング・メドウ・ランチの見学です。ここはラザフォードのヴァレーフロアに畑を持っているほか、マヤカマスの山中にワイナリーや畑があり、メンドシーノのアレキサンダー・ヴァレーにも畑を持っています。


Long Meadow Ranchのワイナリー、案内してくれたのは販売担当のVP、Brad Groperさん

Highway 29からホワイトホール・レーン(Whitehall Lane)という道(この道の入口の近くにホワイトホール・レーン・ワイナリーがあります)を入って山道を上がっていきます。車がすれ違えないような細い道をどんどん上がっていくとロング・メドウ・ランチです。眼下にはセント・ヘレナからラザフォードあたりの景色が広がります。


道に置いてあるのは、かつて大砲として使っていたという金属の筒。それを霜対策のヒーター用に再利用しています。

ワイナリーの建物は漆喰のような壁があります。ここは山をくり抜いたケーブになっているのですが、ケーブを掘ったときに出た土に少量のセメントを混ぜて壁にしています。保温性など高いそうですが、洗うことはできないそうで、出来てから数十年一度も洗っていないとのことでした。

ワイナリー部分はケーブではなく入って左側の建物になります。屋根が高く、温かい空気が下にたまらないようになっています。また、外光を取り入れる工夫があり、照明を使うことはあまりないとのこと。このように一つ一つが省エネを考えて作られています。


珍しいのはワイナリーの中にオリーブオイルを作る設備もあること。敷地内にオリーブの木があることから、オリーブ・オイルを作る設備も導入したのだそう。


一通りワイナリーを見学したらいよいよFarmsteadのレストランです。ここでもまず菜園などレストランの周りを一周してみました。



レストランでは前菜などをいろいろ取って最後にメインを食べる形。


写真残っていないものもいろいろありますが、特筆したいのがアスパラガス。今回シーズンでもありアスパラガスは何度も食べましたが、ここのアスパラガスが一番でした。美味しい。

アーティチョークを久しぶりに食べられたのも嬉しかったです。

メインはポークチョップを頼みましたが、400gくらいありそうなボリュームにびっくりしました。味も良かったです。

デザートにはベニエを頼みました。これはニューオーリンズで食べられている揚げドーナツのようなもの。以前フードトラックの映画で見て美味しそうと思っていたのでした。

ワインはナパのものだけでなくアンダーソン・ヴァレーのブドウを使ったものも含めてロング・メドウ・ランチのワインをいただきました。ピノ・ノワールのロゼはフレッシュでなかなか美味しかったです。ピノ・ノワールの赤などアンダーソン・ヴァレーのワインはよかったです。





もちろんナパのワインも良かった。ロング・メドウ・ランチのワインは単体で飲んで美味しいというよりも食事に寄り添うワイン。特にここのレストランの料理とはさすがに相性が良かったです。

もりだくさんなプログラムですが、気がついたら残り1日、ちょっと寂しいような気もしてきました。
Date: 2023/0425 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
四日目(ナパでは三日目)の午前は、小グループに分かれて畑の作業を学びました。グループによって少しずつ内容が違っていたようですが、私はティエラ・ロハ(Tierra Roja、スペイン語で赤土という意味)というワイナリーのグループでした。

ティエラ・ロハはリンダ・ニール(Linda Neal)の小さなワイナリー。オークヴィルの東のヒルサイド、ジョセフ・フェルプスのバッカス・ヴィンヤードのすぐそばに畑を持っています。丘を上った先はダラ・ヴァレ、Silverado Trailを渡って100メートルほど行けばボンドのセント・エデン、スクリーミング・イーグルも数百メートル先に見えるという超一等地です。


リンダはブドウ畑を管理する会社を20年もやってきた業界の大ベテラン。会社をやめて今は自身のワイナリーでの栽培に専念しています。ワイナリーでは醸造は委託。2019年まではトアー(Tor)のワインメーカーでもあるジェフ・エイムス(Jeff Ames)、2021年からはレアム(Realm)やティーター・トッター(Teeter-Totter)のブノワ・トケ(Benoit Toque)という素晴らしいワインメーカーに依頼しています。Tierra Rojaのワインはフレンチ・ランドリーにもリストされています。

今回は、彼女から剪定などを教わるのがメインです。彼女自身の畑ではなく他の畑で作業します。

最初に向かったのはカーネロスの畑。そこで「芽かき」の作業をします。

ヴィンヤード・ワーカーに最初に必要なのは「帽子」だとのことでティエラ・ロハのキャップをいただきました。帽子が似合わないことには自信があるのですが、かぶって作業しました。

今回の畑は、いわゆる短梢剪定、コルドンのタイプの剪定をしている畑です。樹の幹が地面から1メートルくらいの高さまで伸び、そこから左右に分かれていきます。

今回の畑の作業で一番の基本となるのは「ブドウの実を付けるのは、その年に新しく伸びた枝(シュート)だけである」ということと、「枝が出てくるのは、昨年1年めの枝だった梢からだけである」ということです。昨年の枝を長く残して、そこからシュートを出すのが「長梢剪定(ケイン・プルーニング)」です。



今回の短梢剪定((スパー・プルーニング)では、コルドンのところどころに短いスパーが残されている形になります。このスパーから芽が出てくるわけですが、基本的には一つのスパー当たり2つの芽を残して後は取ってしまいます。これが芽かきです。また、芽は幹から直接出てくることもありますが、こういった芽が伸びて枝になってもあまり実を付けないのでそういった芽も取ってしまいます。

と、これだけ書けば簡単そうですが、実際にはスパーから出ているのか幹から出ているのか、ちょうど間で判別が難しいことも多々あります。また1カ所から2つの芽が出ているときもあり、そういったときはどちらを残すか判断しないといけません。ブドウの房になるところがもう出ている方の芽を残したり、まっすぐ上に出ている芽を残したりといったことが基準になるそうですが、リンダさんは最終的には自分の好き嫌いで決めているようで、素人の我々には「どっちを選んだらいいの?」というのがかなり悩ましかったです。わずか数十分の作業でしたが、とても楽しく作業しました。


その次は、ラザフォードにあるリンダさんの知り合いが趣味で持っている小さな畑に行って剪定作業を学びました。本当はもう剪定は終わっていないといけない時期ですが、本業が忙しくてほったらかしになっていたそうです。我々にとってはラッキーなことでした。



この畑も短梢剪定(こちらの方が比較的易しいようです)を使っています。剪定作業は昨年実を付けた枝をカットして、今年の芽が出る場所を決めてあげることになります。枝の中で節のようになっているところから芽が出るので、1本に付き2カ所それを残した形でカットしていきます。また、1カ所から2つ枝が出ているところもあるので、そういったところは片方を根元からカットします。


それから垣に沿ってワイヤーが這っていますが、幹がない部分もあります。そういったところには幹を伸ばしていく必要があります。具体的には、昨年の枝を将来の幹にするために育てていくのですが、そのためには幹に育てる枝を選んで、それだけは短くカットしないといった判断も必要になります。

ここは同じ短梢剪定といっても、1本の樹についてコルドンが4つずつある形です。片側だけの作業では終わらないのがちょっと面倒(な気がする)、

今回はハサミを持った作業なので怪我をしない・させないように注意も必要です。エプロンも付けて鞘に入ったハサミをポケットに入れます。砥石ももらい、最初はハサミを研ぐところからです。

研いでいても、枝をカットするのはかなり力が要ります。片手では難しいこともしばしばありました。特に根元からカットするときは幹の部分まで切り取ることになるのでさらに力が必要です。リンダさんもぐりぐりハサミを回しながら切っていたので、それを真似て作業しました。

根元からカットするのはかなり力が必要です。男性でも両手を使わないと難しいですが、リンダさんは片手で切っていきます。

最初はジャングルのようだった畑が剪定をしていくうちにきれいになっていくのはかなり気持ちいいです。すっきりしてくると、カットした枝を引き抜くのも楽になります。短い時間で全部できなかったのがみんな残念だったようで、時間を伸ばせないか聞いてみましたが、それは無理でした。

剪定してすっきりするとかなり気持ちがいいです

あと、もう一つ細かい作業をしました。先程、幹に育てる枝を残すと書きましたが、この枝がちゃんとワイヤーに沿って横に伸びるようにテープでくくりつけるという作業です。これもなかなか楽しい。

こうしてあっという間に畑の作業は終わってしまいました。予想以上に楽しく、またやりたいと思ったのは私だけではなかったと思います。


メキシカンスーパー

その後はメキシカンのスーパーに行ってランチをピックアップし、ティエラ・ロハ(つまりはリンダの自宅)にいきます。グループによってはちゃんとしたメキシカンのレストランでテイクアウトしたところもあったようですが、私のグループはメキシコ人の労働者が実際に毎日のように食べている食事です。食事に合わせるのもビール。この日はまだワイン飲んでいません(笑)。

ランチはかなりのボリュームです

食べたのはまずブリトー。何はなくともこれがあれば食事になるオールインワンの食べ物です。日本人にとってのおにぎりのような感じでしょうね。ただしかなりでかい。多分一つでコンビニおにぎり3つか4つ分くらいの分量があると思います。
それから「タマーレ」。これはトウモロコシの粉を蒸して、ひき肉と混ぜて皮に包んでさらに蒸したようなもの。日本でいうとちまきみたいな感じです。大きさはこれもちまき2つ分(笑)。
それからカサディーヤ。薄いトルティーヤにチーズを挟んだようなものですが、日本で食べるのの倍くらいの厚みがあります。
そしてタコス。これだけは普通サイズ(笑)。
最後に、豚の皮を揚げたもの。皮までちゃんと食べるというのはサスティナブルです。見るからに高カロリー。日本人にとっての鶏の唐揚げみたいな感じなのでしょう。カリカリでビールが進みます。残さず食べたらかなりお腹いっぱい。さすがにちょっと食べすぎました。

ランチの後は少しだけ時間があったので、ティエラ・ロハの畑を見学します。ここも短梢剪定でしたが、病気になった樹を植え替えたところがあったり、上を切って接ぎ木をしたところがあったりと、やはり実地で見るのは面白いです。

上を切って接ぎ木した木

ここの畑は前述のようにオークヴィルの東側のヒルサイド。プリチャード・ヒルから降りてきたところで、プリチャード・ヒルと同じ、鉄分が多く、石だらけの赤い土があります。これも頭では知っていましたが、実際に見るとまさしくそのとおりで納得しました。

そして残り時間10分くらいでようやくティエラ・ロハのワインの試飲です。ヴィンテージは2019。ジェフ・エイムスの作ったもの。これがワイナリーでの最後の在庫(生産量は多くて250ケースというごく少量のワイナリーです)。


果実味しっかりあって、濃厚なワインですが、重くない。今回たくさんカベルネ・ソーヴィニヨンを試飲して感じましたが、やはり素晴らしいワインは重くない。おそらく酸などとのバランスやさまざまな複雑な風味によるものなのでしょう。それは多くのワインに共通していたと思います。

このワイン、買いたかったなあと思ったのに在庫がなくて残念だったのですが、最後の最後にサプライズ。バックヴィンテージのワインを一人1本プレゼントいただいたのです。これには感激しました。

そして時間がないところでもう一つ、倉庫にいってルートストック(台木)を見せてくれました。これはセント・ジョージという台木で、ここの斜面にはこの台木が必要なのだそうです。樹勢が強く、根をしっかり張るので、ここの斜面でも根付くとのこと。ほかの台木だと根付くことが難しいのだそう。逆に肥沃な土地ではセント・ジョージは樹勢が強すぎてあまり良くないと言っていました。そして、これは苗木屋で売っている時点ですでにカベルネ・ソーヴィニヨンが接ぎ木した状態になっています。このまま植えればいいとのこと。


リンダはカーナビ付けながらもしょっちゅう道を間違えるし、ハラハラしながらもとってもチャーミングで面白く、また畑の管理のことについてはとても真面目なのがよくわかって(車の中では、ヴィンヤードワーカーの管理や確保などいろいろな話を聞きましたが、ここでは省略します)とても素敵な人でした。ちなみに寒いのが苦手なので、カーネロスには午前中の早い時間しか行かないそうです(10時くらいをすぎると風がだんだん出てきて寒くなるそうです)。そういったお茶目なところも魅力的でした。

Date: 2023/0423 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
カリストガの山麓を後にし、ヴァレーに戻ってカリストガのフィッシャー(Fisher)でディナーです。この日のディナーのテーマは家族経営の小規模生産者による珠玉のワイン。

実はナパの生産者の92%は家族経営で、生産量も1万ケースに満たないところが大半です。実際この日に回ったワイナリーも前日に回ったワイナリーもすべて家族経営のところでした。生産量も1万ケースに達していないところが多いと思います。

今回はフィッシャーのほかにクロスビー・ローマン(Crosby Roamann)、マッケンジー-ミューラー(McKenzie-Mueller)、スタッグリン・ファミリー(Staglin Family)、スチュワート・セラーズ(Stewart Cellars)の4つのワイナリーがディナーに参加していました。この中でクロスビー・ローマンはSWIRL、マッケンジー-ミューラーはヴィレッジ・セラーズが、スタッグリン・ファミリーは中川ワインが、スチュワート・セラーズはセンチュリートレーディングカンパニーが日本に輸入しています。



会場となったフィシャーは1973年に設立されたワイナリーです。当初はマヤカマス山脈のソノマ側にありました。おそらくいちばん有名なのはナパではなくソノマにある「ウェディング・ヴィンヤード」の畑で作るカベルネ・ソーヴィニヨン。1975年からナパでもワインを作り始め、今回のワイナリーは2019年に作られた新しい建物です。ナパのワインではフラッグシップのコーチ・インシグニア(Coach Insignia、ジョセフ・フェルプスのインシグニアとは別のワインなので注意)というカベルネが有名です。今回はLamb Vineyardという単一畑のワインが供されました。
ヴィンテージは206年。予想以上に酸のしっかりしたカベルネ・ソーヴィニヨンでした。

マッケンジー-ミューラーはボブ・ミューラーが妻のカレン・マッケンジーと1989年にカーネロスで作ったワイナリー。カーネロスとオークノールに畑があります。今回はカベルネ・フラン 2018でした。生産量全体で2000ケースという小さなワイナリーでカベルネ・フランは250ケースほどです。オークノールの畑は1970年代の樹もまだ残っているとのこと。このワインは80%カベルネ・フランでマルベック、メルローもブレンドされています。
飲んだ感想としては、ハーブやレッド・チェリー、ザクロなどの赤果実などカベルネ・フランらしい風味が前面に出ています。カカオやタバコの風味もあります。カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランの違いを典型的に表現しているいいワインだと思います。

クロスビー・ローマンからは2018年のメルロー。80%メルローで15%がカベルネ・ソーヴィニヨン、残りがカベルネ・フランです。樽発酵樽熟成しており、発酵には20日間と比較的ながくかけています。生産量600ケースのワイン。
飲んだ感想としては赤と黒の果実の風味。メルローとしてはかなりタンニンを強く感じ、ストラクチャーもしっかりしています。

スタッグリン・ファミリーはラザフォードのマヤカマス側のベンチ(山麓)にあるワイナリー。ボーリュー・ヴィンヤード(BV)が持っていた畑を自社畑として使っています。この畑からはフィネスのあるワインが作られるとのことです。ワインはカベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネ、および「Salus」というセカンドのカベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネの4つをメインに作っています。
今回のワインはカベルネ・ソーヴィニヨン 2014。ラザフォードの素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨンの典型のようなワインです。肉厚なボディに黒系の果実の風味。黒鉛のような芯の通った風味もあります。きめ細かいタンニン。個人的にはこのディナーのベストでした。


スチュワート・セラーズはヨントヴィルにあるワイナリー。2000年に設立されています。ベクストファーのト・カロン、ドクター・クレーン、ミズーリ・ホッパー、ジョージIIIといった素晴らしい畑とも契約してワインを作っています。今回のワインは2019年のリザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨンでHannah Vineyard80%、Juliana Vineyard20%という構成。
スタッグリンと比べるとより果実味が強く芳醇な味わい。果実味が好きな人はこれが合うと思います。

最後にスペシャル・ワインとして1996年のフィッシャーのカベルネ・ソーヴィニヨンを出していただきました。まだまだ濃厚でリッチな味わいのカベルネ・ソーヴィニヨン。貴重なワインをありがとうございます。




ディナーは昨日もそうでしたが豪華な食事というよりも、食材の美味しさをシンプルに引き出したものが中心です。野菜のグリルにチキンやビーフのローストを取り分ける形でのディナーでした。特にポテトやピーマン、アスパラガスといった野菜のグリルは美味しく、カリフォルニアはやはり野菜が美味しいと再確認しました。なお、取り分ける形になっていたのは少食な人も大食いな人も自分に合わせて取れるようにというNVVの気遣いからのものでした。



Date: 2023/0423 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ランチの後はカリストガまで行き、山腹にあるジェリコ・キャニオン(Jerico Canyon)を訪問しました。

ナパに詳しい人はわかると思いますが、午前中のカーネロス(ハドソン)から昼のラザフォード(トレ・サボレス)、午後のジェリコ・キャニオンと、だんだん北上していっています。一般的にはナパでは北に行くほど暖かくなりますが、この日は最高気温12度くらいとかなり寒く、それほど気温差は大きくありませんでした。ただその中でもラザフォードはさすがに少し暖かく、日向にいればポカポカとした感じがありました。

カリストガの中でもかなり深いところにあるジェリコ・キャニオンではラザフォードよりも風の冷たさを強く感じます。このときは西から風が吹いてきていたので、「チョーク・ヒル・ギャップ」と呼ばれるソノマの太平洋側に向けての谷間から流れてくる冷たい空気が入ってきていたようです。セント・ヘレナあたりが一番気温が高く、カリストガにいくと少し気温が下がるというのは、これまで聞いていたものの、実際に体験するとそれがよく理解できます。

ジェリコ・キャニオンはカリストガの中で北東方面にある畑。マウント・セントヘレナの南側の山麓になります。元々この地域がジェリコ・キャニオンという名前で呼ばれており、その名前をワイナリー名として使っています。ここ自体がキャニオンという名の通り、峡谷のように両側に丘があります。大まかにいうと、東向きの斜面と西向きの斜面があり、それぞれにブドウが植えられています。火山性の安山岩を中心にした土壌で石がごろごろしているのも特徴です。ナパの火山性の土壌というと鉄分の多い赤い土のところが目立ちますが、安山岩は比較的黒い色の火山岩です。ここはカルデラになっていて溶岩が流れ出た後に圧力で隆起したとのこと。圧力による変成で、石の一部にクリスタルのようなきらきら光る部分があります。
http://res.cloudinary.com/http-californiawine-jp/image/upload/f_auto,q_auto/v1/ENV2023-2/DSC05245_bnfqlz.jpg?_i=AL
ケーブはこの石の丘をくり抜いて作ってあるので、相当大変だったのではないかと想像します。ケーブの奥にはその石が見られるようになっているところもありました。

ちなみにケーブの中には樽が並んでいるのですが、通常の樽のサイズのもの以外に大きな樽や小さな樽もありました。その役割を聞いたところ、大きな樽は発酵用に使っていて、小さな樽は、樽の中身が蒸発して減ったときの補充用に使っているとのことでした。

大きい樽


ワイナリーは1989年に設立。そのときに植えたカベルネ・ソーヴィニヨンが今も少し残っています。地所が350エーカーくらいある中で40エーカーほどがブドウ畑になっています。

畑に出ます。一番低いところは標高60メートルほど。高いところでは180メートルほどになります。フォグラインと呼ばれる霧のかかる高さよりは低いところになるので、霧の影響は大きくなります。暑い時期には10時くらいには霧が晴れますが、涼しくなると昼過ぎまで霧がかかることもあります。夏場だと最低気温は10度を少し超えるくらい、最高気温は40度を超えることも珍しくなく、30度という大きな日較差になります。夜にブドウが冷やされることで、ブドウの酸が保たれ、フェノール類がゆっくりと蓄積して長い熟成期間になります。

東向き斜面のところから西向き斜面を望む

まずは東向きの斜面から。こちらの方が標高は少し低くなります。斜面のせいで昼過ぎには太陽が隠れてしまいます。斜度は35度くらいと、かなり急ですが、反対側の西向き斜面では斜度65度くらいのところもあるそうです。急な斜面のため、収量は1エーカーあたり1.5トン程度とかなり少ないです。樹が若くても凝縮した果実が取れるのが特徴です。

また、斜面の上と下では4~5度くらい気温が変わるとのことです。そのため収穫も1カ月半くらい変わってきます。マイクロクライメットが様々あり、畑全体では65もの区画に分けています。

今年は例年より気温が低いこともあり、まだカベルネ・ソーヴィニヨンはほとんど芽が出ていませんでした。


ここの畑ではカバークロップは1列おきに植えています。マスタードなどを使っており、栄養の循環を主な目的にしています。

ワインは最初にケーブで説明を聞きながらソーヴィニョン・ブランを味わいました。濃厚でねっとりとしたグリセリンを感じる味わい。酸もあり、濃い系のソーヴィニョン・ブランが好きな人にはたまらない味でしょう。かなり妖艶な雰囲気もあります。

畑では東向きの斜面でEast Elevationという、この斜面のカベルネ・ソーヴィニヨンで作ったワインを、西向きの斜面ではWest Wallというその斜面のカベルネ・ソーヴィニヨンを試飲しました。どちらもヴィンテージは2018年です。

East Elevationは濃厚ですが、旨味やスパイス、酸も強く感じます。エレガント系なカベルネ・ソーヴィニヨンです。West Wallは濃厚でパワフル、ジューシー。どっしりとした重みがあります。太陽の当たり方による違いをよく感じられました。もちろんどちらがいい悪いではなく好みの問題であり、どちらも素晴らしいワインでした。

Date: 2023/0423 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパツアー3日目その1ーーsナパのラザフォードにある小さなワイナリー「トレサボレス(Tres Sabores)」でナパにおけるサスティナビリティやオーガニック栽培について学びました。

畑はラザフォードの西側。いわゆるラザフォード・ベンチと呼ばれる山麓にあります。畑のすぐ上からはかなり急な傾斜になっています。1987年に購入した畑ですが、最初はフロッグス・リープで使うためだったそうです。10エーカー(約4ヘクタール)というこじんまりとした畑で、当初はすべてジンファンデルを植えていました。1989年に一部カベルネ・ソーヴィニヨンに植え替えています。敷地の中には150本のザクロの木もあり、オリーブも植わっています。オリーブの木の中には1890年代からの古いものもあるそうです。畑はカリフォルニアのオーガニック認証を得ています。


このほか、羊や山羊を飼っていたり、豆類など様々なものを植えていたりしており、広く深く多様性に溢れています。
ミツバチの巣箱も2つあり、ミツバチを管理する専門の会社の人を雇っています。ハチは受粉を助けてくれます。この季節はちょうど新しい女王蜂が巣を作る時期であり、私達が見た巣箱は、ハチの子供を育てているところとのことで、外に出ているハチはほとんどいませんでした。ちなみにこの時期の巣箱の中は華氏94度(摂氏35度超)を維持する必要があるそうです。

ブルーバードの巣箱もあります。鳥は害虫を食べてくれる大事な役割があります。

生産物をゴミにするのではなく、自然に戻していくという活動も行っています。例えば木を切ったものは細かいチップにして通路などに使っています。羊や山羊の糞、ブドウの種などはコンポストにして肥料として使います。

畑のカバークロップではマメ科の植物を中心に植えています。マメ科の植物は空気中の窒素を吸収して「根瘤」という根のコブに蓄えます。これで窒素を地中に戻すことができるわけです。カバークロップを刈り取っても根の部分は残りますから役割は果たせます。カバークロップはそれによって水分を保持するという役割もあります。ワイナリーによっては、カバークロップが水分を使うことでブドウに行く水分を少なくすることを期待しているところもあります。カバークロップに使う植物の種類によってもその役割は変わるので、なかなか理解するのが難しいところです。ここでは、カバークロップを使うことで灌漑なしのドライ・ファーミングを行っているとのことです。


ジュリーは、ナパ・グリーンというナパにおけるサスティナビリティの認証プログラムをリードする役割も担っています。ナパ・グリーンには2020年頃までに90%を超えるワイナリーが参加して認証を受けていましたが、その後、認証の基準を大幅に厳しくし、それまでの認証はリセットするという大きな変革を行いました。新しい認証基準では特に人を大事にすることなどソーシャル・レスポンシビリティ(社会的責任)における基準が厳しくなっています。このあたりからもナパのサスティナビリティの取り組みに対する真剣さが伝わってきます。

ワインはまずプティ・シラーとジンファンデルのロゼを飲みました。糖度20というかなり糖度が低い状態で収穫し、プレスした後、90分だけ果汁と果皮を接触させています。風味の強いブドウ品種だけあって、これだけの接触でもちゃんとロゼとしてしっかりした味が出ていました。

その次は樹齢51年のジンファンデルです。かなりエレガントで美味しい。ラザフォードのジンファンデルというイメージとはだいぶ違っています。7エーカーという小さな畑ですが、土壌の違いなどにより、収穫は4回に分けて行います。30%新樽で22カ月樽熟して出荷しているとのことです。

最後にTres Saboresというワイナリーの名前ですが、メキシコ人などがよく歌う「Sabora Me」という歌から影響を受けているそうです。ラテン系の人は考え方が明るく、それに共鳴しているそうです。また、ワインには品種、土壌、そして一緒に飲んでいる人たちという3つのフレーバーがあるということもかけているとのこと。

ワイナリーの説明の後はバーベキューランチです。スペアリブを長時間スモークしたテキサス系のバーベキューで、堪能しました。サラダにはこのワイナリーのザクロを使ったソースがかかっていたり、食後のアイスクリームにここで取れた蜂蜜をかけて食べたりと、地産地消を地で行く食事でもありました。

また、食事のときにはClos Pagese、Girard、Materra、Monticello、Pejuの人も来てそのワインを紹介しました。Clos PegaseやGirardは日本でも定番のワインです。それ以外のワインの中では、かなりエレガントなMonticelloのシラー、おまけで出してもらったPejuのカベルネ・フランが良かったです。

Date: 2023/0420 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパのカーネロスにあるハドソンの畑を見学に行きました。

ハドソンは今月「絶妙なシャルドネにエレガントな赤、ハドソン・ヴィンヤーズ」という記事を書いているので、そちらも合わせて読んでいただけるとありがたいです。というか、試飲したワインは基本的には同じラインアップ(カベルネ・フラン・ブレンドのオールド・マスターだけは違うヴィンテージ)で、今回は畑の見学で歩きながらの試飲でしたから、前回の記事の方が、ワインに関してはきちんと書けていると思います。

一応、簡単に書いておくとエステート・シャルドネはむちゃくちゃ美味しく、リトルビットのシャルドネはさらに美味しいです。「コシュデリ以上」との声も聞かれました。赤ワインのフェニックスはリッチで深い味わい、オールド・マスターは赤果実の風味と香りが素晴らしいです。この旅で、カベルネ・フランにさらに興味がわいたのでオールド・マスター購入しました。あ、リトルビットもです。

CEOのピーター

Old Masterはラベルの色が変わってかっこいい


ということで、今回は畑について実際に見学した話を書いていきます。
Hudson
見て回ったのは★のマークの建物から南に行って、「Old Master」のブロック、それからここでは「Ed」と書いてあるシャルドネのブロック(今回の話では「Eブロック」と言っていました)、もう一つ南の「Little Bit」のシャルドネのブロックです。

Old Masterはカベルネ・フランとメルローのブロック。「Phoenix」「Old Master」2つの赤ブレンドで使われています。Phoenixはメルロー中心のブレンドで、ほかにもいくつかのブロックのブドウを使っています。「Old Master」はカベルネ・フラン中心のブレンドです。

ハドソンのあるカーネロスは粘土質の土壌が多いところ。粘土質のやや水はけが悪い土壌は、水を多くほしがるメルローに合っているとされており、冷涼な地域でありながら実際にシャルドネとピノ・ノワールの次に多いのはメルローです。ただ、ハドソンの畑はパッチワークのように違う土壌があり、石の多い火山性土壌のところもあります。しかも不思議なことに、海に近い標高の低いところに火山性土壌が見られるそうです。オールド・マスターのブロックではオフィスに近い北部分が粘土質で、オフィスから遠い南側が火山性の土壌になります。この土壌はカベルネ・フランに向いており、メルローには不向きです。

実はこのブロックのところは1980年代にピノ・ノワールを植えたことがあったのですが、うまくいかず、2003年にカベルネ・フランとメルローに植え替えたのだそうです。

そのため、ここではブロックの列の途中で品種を切り替えるという珍しい形になっています。品種だけでなくルートストック(台木)も変えているそうですが、それは見た目ではわかりませんでした。

ハドソンの畑では基本的に「ケーン・プルーニング」を行っています。「長梢剪定」と呼ばれる方式です。太い樹の幹は垂直部分だけで、そこから2年目の枝を「ケーン」として針金に添わせて左右に広げるのが基本です。そのケーンから出た「シュート」が上に伸びていって実をつけます。この方式だと樹勢に応じてケーンの数を変えるなど、比較的臨機応変な対応が可能になります。そういった点が冷涼な寄稿にむいているのだそうです。以前は太い幹を左右にも広げる「コルドン」を使っていましたが、だんだんとケーンに切り替えています。



写真でも土壌の色の違いがわかると思います。火山性の土壌は鉄分が多く、赤っぽく見えます。

雑草を刈り取るトラクターの実演もしてもらいました。


ここはシャルドネの「Eブロック」でキスラー専用になっています。キスラーのリクエストで、通常樹と樹の間を4フィートにしているのに対してここは3フィートにしています。
ハドソンのシャルドネはすべて「オールドウェンテ」。正式なクローンの名前ではなく、カリフォルニアで代々受け継がれてきたクローンと言われています。ブドウの房は野球のボールくらい、ひどいときにはゴルフボールくらいにしか成長しないとのこと。また、房の中でも様々な大きさの実ができ、熟すペースもバラバラです。赤ワインでは困ってしまう特徴ですが、シャルドネの場合はそれが味わいに深みをもたらすとのことです。実が小さくて果皮の割合が高いのもフレーバーを強くするのに役立っています。


この、針金に結びつけてある茶色のビニールタイみたいなのがなにかわかるでしょうか?
これは虫対策でつけているフェロモンを出すものだそうです。ここから出るフェロモンで、メスは樹の周りにくっつき、オスは混乱して近寄れずに空中をうろうろするのだとか。

ところで、キスラーのブロックは粘土土壌、その先の「リトルビット」のブロックは火山性の土壌なのですが、どちらもシャルドネが植わっています。シャルドネはあまり土壌の好き嫌いがない品種だそうで、「シャルドネって偉いやつ」と思いました。

Date: 2023/0419 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
この日も比較的ゆっくりしたスケジュールで、トルシャードの後はナパのホテルにチェックインし、1時間くらい自由時間がありました。その後はプリチャードヒル(Pritchard Hill)に向かいます。

お約束のナパヴァレーサインにも立ち寄りました。

今回のツアーはナパが初めてという人も多いので、バスの中でもところどころで見どころや地域の解説をしながら進みます。マヤカマス山脈とヴァカ山脈とか、ここがオーパス・ワンだとか。自分で言いだしたのですが、ぼうっとする暇もなく、なかなか忙しいです。

バスは山道に入り到着したのはシャペレー(Chappellet)です。プリチャードヒルという名前の商標はシャペレーが持っており、他のワイナリーはラベルなどに使えません。この地域がAVAになっていない理由です。

ここではディナーをいただくのですが、シャペレー以外に5つのワイナリーからワインメーカーが来ます。

まずは畑の前で白ワインを飲みながらそれぞれのワインメーカーから話を聞きます。
シャペレーからは珍しいシュナン・ブラン。プリチャードヒルではここにしかないそうです。爽やかで美味しい。


ここのシュナン・ブランはこのように両側の枝を平行に2つずつ伸ばした形でプルーニングされています。その話などを聞いていたらいつのまにかグラスを持っていかれてしまってほかのワインはほとんど飲めませんでした。申し訳ない。


ディナーは屋内のセラーでいただきます。この建物、天井が高くかなりかっこいい。オーナーが考えたものだそうですが、「カテドラルみたい」と言われたこともあるそうです。




ワインはトレフェッセン(Trefethen)のドラゴンズ・トゥース(Dragon's Tooth)2019からです。珍しいマルベックとプティ・ヴェルドのブレンド。どちらもかなり濃いワインになるブドウですが、マルベックはブルーベリー的なフレーバー、プティ・ヴェルドはしっかりしたタンニンによるストラクチャーが特徴的です。このワインはその2つの要素があり、産地であるオークノールの冷涼さからくると思われるしっかりとした酸があるので、ただ濃いだけでないバランスの取れたワインになっています。早い話が美味しいです。


次はシレノス(Silenus)のメルロー。これが意外にヒットでした。赤果実を中心とした明るい味わいで前のドラゴンズ・トゥースとは対照的な軽さがあります。タンニンもありボディはしっかりしています。これもオークノールのブドウでありほどよい酸味が味を引き締めます。メルローの良さがあって適度にしっかりしたワインは意外と見つかりにくいのでこれは良かったです。
ちなみにシレノスからは日本人の赤星映司さんが参加していました。感想を伝えたらとても喜んでいただけました。


3本目はシニョレッロ(Signorello)のPadroneカベルネ・ソーヴィニヨン 2007。シニョレッロは2017年の火事でワイナリーが焼失してしまうという大きな損害を受けました。この古いヴィンテージのワインは別の倉庫に保存してあったので難を逃れたものです。もう16年たっているワインですががっしりとしたタンニンがあり、とてもパワフルなワイン。果実味もブルーベリーやカシスなどかなり濃厚な味わいです。


セコイア・グローヴ(Sequoia Grove)のCambiumレッドブレンド2016です。ほどよい酸味と豊穣さがあり、やや強めのタンニンがあります。これも美味しい。


次はスタッグス・リープ・ワイン・セラーズ(Stag's Leap Wine Cellars)のFAYカベルネ・ソーヴィニヨン 2019です。パリスの審判の1位になったワインを生んだSLV(Stag's Leap Vineyard)と並んだ位置にある銘醸畑です。もともと創設者のウォーレン・ウィニアルスキがFAYのワインを飲んで感銘を受けて隣の地所を買ったというのがきっかけになっています。その後FAYの畑の持ち主のネイサン・フェイが畑を売りに出して購入しました。
ハーブや腐葉土、マッシュルームなど果実以外の要素を強く感じます。さすがにきれいで美味しいカベルネです。
ワインメーカーにはSLVとの違いを聞いてみました。FAYとSLVはならんでいますが土壌は結構違うそうです。FAYの畑は畑の上にある巨大な崖から崩れたものが中心の土壌です。FAYとSLVの間には小川があるのでこれはSLVには行きません。その結果、FAYは表土が6~8フィートあるのに、SLVは1.5フィートくらいしかありません。灌漑もFAYは1年で4回くらいで済むのにSLVは8回は必要だそうです。
味わい的にはFAYがきめ細かいタンニンを持つのに対し、SLVはパワフルでスパイシーな風味になるそうです。


最後はシャペレーのプリチャードヒル・カベルネ・ソーヴィニヨン2019。非常にパワフルなワイン。スパイシーでシルキー。果実味も強いですがそれ以上にストラクチャーを感じます。カベルネ系の中ではFAYとこれが双璧でした。

このワイン、これから海外のディストリビューションはボルドーのネゴシアン・システム「ラ・プラス・ド・ボルドー」を通すことになります(シャペレー、トップの2ワインを「ラ・プラス・ドゥ・ボルドー」で販売)。このシステムを使うことにはいろいろ是非もあります(ボルドーネゴシアン経由のワイン流通は成功の方程式か?)。そのあたりを率直に聞いてみました。

もちろん、これらの事象は分かった上でのアプローチです。メリットとデメリット両方ありますが、今のままでは輸出を増やすのが難しいため、デメリットを受け入れた上でメリットを訴求していく考えだとか。実際に輸出が始まるのはこれからなので、現在は様々な策を考えているところのようです。

このあたりは日本におけるワインの流通や価格にも大きく影響するので、これからも注目していきたいと思っています。

ともあれ、美味しいディナーとワイン。そしてワインメーカーたちとの話はとても楽しく、ためになりました。
Date: 2023/0418 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパツアー二日目、といっても初日はナパには行っていないので実質初日です。まずはゴールデンゲートブリッジを通って、カーネロスのトルシャードに向かいます。

トルシャードはカーネロスに260エーカーの畑を持つワイナリー。創設者のトニーとジョアンのトルシャード夫妻はテキサスの出身。トニーは陸軍の軍医でいろいろなところに行っていましたがカリフォルニアでの任務をきっかけにブドウ畑を始めることを考えました。テキサスと比べると土地が高く、比較的安価だったカーネロスは、専門家に意見を求めたところ「ブドウを育てるには涼しすぎる」と否定されました。それでも、カーネロス初期のワイナリーであったカーネロス・クリークから「シャルドネとピノ・ノワールを買い取る」とか「畑作業の人を出す」などの好条件をもらってブドウ畑を始めました。今から50年前の話です。

写真はジョアン。現在は息子のアンソニーが引き継いでいます。

当初は週末だけナパに来るような生活でしたが1989年に完全移住し、ワイナリーも始めました。
栽培はシャルドネとピノ・ノワールとカベルネ・ソーヴィニヨンが中心。ルーサンヌやテンプラニーリョ、プティ・ヴェルド、ジンファンデルといったブドウも作っています。最初にルーサンヌをいただきましたが、イキイキとした酸とやわらかな果実味があってとても美味しかったです。ちなみにルーサンヌはかなり小さな畑だそうですが、成熟が不均一なので収穫は3、4回に分けないといけないそうです。数の多いシャルドネよりもその点では手間がかかります。

ちなみに、カベルネ・ソーヴィニヨンやジンファンデルといった温かいところに向くブドウをカーネロスで育てるのは難しくないか聞いたところ、ジンファンデルの畑などは標高400フィートの小高いところにあって、ほかよりも温かいのだそうです。

このほか貯水池が7つあって、灌漑に使っているとか、1973年の最初のときからドリップイリゲーション(点滴灌漑)のシステムを入れていたといった話を伺いました。

シャルドネの畑は既に芽吹いていますが、向かいにあるカベルネ・ソーヴィニヨンはまだ芽吹いていません。3週間くらい違いがあるそうです。
若い枝(ケイン)を伸ばす、いわゆる長梢剪定(ギヨ)の方式を使っています。樹齢などによって一つの木から2~4本伸ばすとのこと。この剪定はこのように木によって伸ばす本数を変えられるのがメリットと行っていました。

畑を見た後はランチです。この日は、ナパの様々なワイナリーのシャルドネを飲み比べるという形でした。

まずはトルシャードのシャルドネの話から。ここは濃厚になりすぎない、食事に合うようなワインを作ることをモットーにしています。シャルドネでは樽発酵樽熟成を使っていますが、新樽は30%と控えめ。マロラクティック発酵も25%に抑えています。なお、ステンレスタンクの発酵よりも樽発酵・樽熟成の方が樽香の付き方が柔らかくなります。発酵の温度を12、13℃程度と低めに保って過度の抽出を防いでいます。

左から3番めがトルシャード。果実味がきれいで優しい味わい。ほっとするワインです。このシャルドネ、H・W・ブッシュ元大統領の奥さんだったバーバラ・ブッシュさんのお気に入りだったとか。

一番左はアミーチ・セラーズ(Amici Cellars)。ベクストファー・ト・カロンなどナパの銘醸畑のブドウを使って近年注目されつつあるワイナリーです。このシャルドネもナパのハイド・ヴィンヤードのもの。濃厚ですがやりすぎず、うまみを感じる作り。「コシュデリよりうまい」という感想もきかれました。

2番めはガーギッチ・ヒルズ(Grgich Hills)。この4月1日にマイク・ガーギッチが100歳になったのを祝って、スペシャルラベルになっています。

かなり濃くパワフルな作り。樽香も比較的出ています。ミネラル感もあり多くの人に好まれそうな味わい。

4番目のカンパイ・ワインズ(Kanpai Wines)はスティーブ・マサイアソンがワインメーカーを務めるワイナリー。最初はロゼだけを作っていましたが、ラインアップを拡大しているようです。なお、以前は日本への輸入がありましたが、今はありません。
参考:トレンドマイクロの危機対策? 火災の副産物で生まれたロゼ
これもオークノールの自社畑のブドウによるもの。かなりリーンな作り。スティーブ・マサイアソンらしいワインではありますが、個人的にはあまり響きませんでした。

5番目のトロワ・ノワ(Troix Noix)は、かつてアラウホ(Araujo、現アイズリー・ヴィンヤード)を持っていたアラウホ夫妻の娘であるジェイミー・アラウホのワイナリー。シャルドネはMuir Hannaという畑ですが情報がほとんどありません。John Muirというナチュラリストの植物学者の娘がやっているようです。以前はワインも作っていたようですが、現在は畑だけと思われます。ナパ市なのでサブAVAには属していないかもしれません。
ところがこのワイン、個人的にはこの日のトップでした。酸がしっかりしており旨味もあります。バランスよくとても美味しい。

最後はMonne Tsaiというワイナリーのシャルドネ。美味しかったですが、実は畑がソノマだったので略します。

このほかトルシャードのピノ・ノワールもいただきました。赤果実がチャーミングでこれも良かったです。

Date: 2023/0418 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
サンセット・セラーズの後、「ナパを脱出する? ケイマスの新たな挑戦」で書いたケイマスがサスーン・ヴァレーに開いた新しいテイスティング・ルームに伺いました。

このテイスティング・ルーム、かなりの人気のようで、予約はなかなかとれないそうです。今回も予約はいっぱいだったのをサンセット・セラーズから「日本のすごいブロガーが来る」(笑)と交渉していただいて席を用意していただいたとのこと。



全面ガラス張りで美しさがひかります。アップルストアと同じ人が設計しているとのことに、なるほどと感じました。

このサスーン・ヴァレーは西風が強く吹き付けるところ。テイスティング・ルームはその風をうまく通したりブロックしたり、コントロールできるようになっています。空調やライトなどもインテリジェントにコントロールされています。


外光を取り入れる工夫もあります。


ケイマスはヤシの木をトレードマークにしていて、ケイマスにブドウを提供している畑には周囲にヤシの木が植えられています。テイスティングルームも「本山」としてヤシの木が立ち並んでいます。




ここで作っているワインは現在のところこの2種。Grand Durifと呼ぶプティ・シラーと、Walking Foolという名のジンファンデルとプティ・シラーのブレンドです。サスーン・ヴァレーにあるケイマスの畑では、気候変動に耐える品種を試すという面もあり、ヴァルディギエなど多様な品種を実験的に植えていますが、製品として作っているのはこの2つだけです。Walking Foolというのは変わった名前ですが、ケイマスのワグナー家にちなんだエピソードが裏ラベルにかかれています。ワグナー家の当主であるチャック・ワグナーはサスーン・ヴァレーの出身ということで、家族としてのアイデンティティをここに求めているという印象を持ちました。

ワインはモントレーのサンタ・ルシア・ハイランズで作っているメル・ソレイユ(Mer Soleil)などワグナー家のワイナリーの様々なワイン10種ほどを試飲させていただきました。

ワインの中ではサスーン・ヴァレーの2つのワイン、メル・ソレイユのシルバー(樽を使わないシャルドネ)と、リザーブ・シャルドネがよく出来ていました。サスーン・ヴァレーの2つのワインは果実味が濃厚で大柄なワイン。爆発的な果実味は多くの人にアピールできそうです。前の記事でも書きましたが、やっぱりプティ・シラーは面白い。個人的に探究したいテーマになってきました。
メル・ソレイユの2つのワインは対照的。シルバーはマロラクティック発酵もなく、柔らかくリンゴやカリンの風味。酸もほどよくあります。リザーブのシャルドネはバター感もありますが、バランスよくできています。どちらも作りの上手さを感じます。

ナパのケイマスも作りの上手さを感じますが、どのヴィンテージも安定した味わいすぎて、面白みはちょっと少ないかもしれません。ケイマスの味が好きという人にはもちろん、それがいいのだと思いますが。
Date: 2023/0418 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパヴァレー・ヴィントナーズのナパツアーに来ています。初日はサンフランシスコで自由行動ということで、ナパの隣のソラノ・カウンティで日本人が持っているワイナリー「サンセット・セラーズ(Sunset Cellars)」に遊びにいってきました。AVAでいうとグリーン・ヴァレー(Green Valley、ソノマだけでなくソラノにもあるのです。ソノマは正確にはグリーン・ヴァレー・オブ・ロシアンリバー・ヴァレーといいます)やサスーン・ヴァレー(Suisun Valley、発音はススーンという方が近いようですが、カタカナ表記ではサスーンとすることが多いようです)になります。ここには昨年ケイマスも進出(「ナパを脱出する? ケイマスの新たな挑戦」)しており、新しい畑を作るのが難しいナパをサポートする地域としても注目が高まっています。




この看板も井上恭輔(きょろ)さんが設計して作ってもらったのだとか。DIYでいろいろ作っていてとてもおもしろいところです。

こちらは足湯。アメリカ人も大好きらしいです。

もちろんワインも試飲しました。

ジンファンデルのスパークリング。チャーミングな香りに、ちょっとグリップ感もあってジンファンデルらしさも残した美味しいスパークリングです。

Moonlightというシャルドネ。柔らかな味わい。青りんごの風味。
このワイン、ラベルがむちゃくちゃきれいでおしゃれです。ワイナリーから見える山の稜線をかたどっているのですが、このラベルは米国で作るのは難しく、日本で作ってもらったのだとか。
今度はこれと対になる「Sunrise」というのを作ってとお願いしてきました。


で、これは実はSunriseと書かれた「ビール」です。製造を委託したHereticというブルワリーはクラフトビール好きにはよく知られているところなのだとか。いちごの香りがするけれどフルーツビールのように甘くはなくボーンドライ。面白くて癖になりそうです。

プチ・シラーです。パワフルで濃厚な果実味。プチ・シラーらしい味わいですがバランスもよい。プチ・シラーの人気をもっと高めたいという話で盛り上がりました。

このワイナリーのシグニチャーであるバルベーラ。2014年は前オーナーの時代に作られたもの。今もそのレシピを引き継いでいます。ポートのような濃厚な味わい。バルベーラのがっちりとした酸があってのものでしょう。

とても楽しく試飲させていただきました。ケイマスの話は次の記事で。
Date: 2023/0415 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
Comments
もう1カ月ほど前になりますが、カベルネ・フランの会に参加しました。

ことの発端は、私がFacebookでカベルネ・フランが好きだという話を書いていたのに何人もの方からコメントをいただき、カベルネ・フラン会をやりましょうということになったのですが、最初は持ち寄りでと思っていたところ、カリフォルニアワインの日本でも有数のコレクターの方から、うちでやりませんかというありがたいお声をいただき、プロ並みの料理(というか普通にお金を取ったら大変なことになりそうな高級食材を使ったすごいもの)と合わせて催していただいたのでした。

レアワインのオンパレードとなったこの会のワインを紹介します(というか私の備忘録として書き留めておきます)。



表のラベルを撮り忘れましたが、冒頭の写真の左から2番めです。コリソン(Corison)のSunbasket Vineyardのカベルネ・フラン2014です。普通のコリソンのラベルとは全く違うラベルなので、コリソンと言われなければわからなそうです。カベルネ・フラン100%。

年数的には10年以下ですが、それ以上に熟成を感じます。ハーブやスパイスの風味がここちよく、果実味はレッドチェリーなど赤果実系。温暖なセント・ヘレナの畑ですがカベルネ・ソーヴィニヨンのような重さは全くありません。美味しいなあ…



その次はラ・ホタ(La Jota)のハウエル・マウンテンのカベルネ・フランでヴィンテージはなんと1990年。むちゃくちゃエレガントで品種をきかなかったらピノ・ノワールと思ったかも。さすがにもう強さはなくはかなげな雰囲気ですが、劣化は全くなくとてもきれいな味わいです。こんなワインが飲めて感謝しかありません。

次はこれまたレアなシー・スモーク(Sea Smoke)のスパークリング(開けるときに噴いてしまいました。ほかの人もシー・スモークのスパークリングで同じ経験をしたとのことなので噴きやすいのかも)。ブラン・ド・ノワールです。


次はこの日のハイライトと言っていいでしょう。ハーラン・エステートが「プルミエ・ナパ・ヴァレー」オークション向けに作ったカベルネ・フラン100%のワインです。プルミエ・ナパ・ヴァレーは毎年2月に開催される業界向けのオークション。参加するワイナリーは、最大60本のオークション専用のワインを作ります。ラベルはすべてのワイナリーが共通のものを使います。このワインは1999年の同オークションに出品された「一度限りの」ワインです。

香りが素晴らしいです。ハーラン・エステートと比べると、フランボワーズやザクロのような赤果実の香りをより強く感じます。味わいは濃厚ですが、カベルネ・ソーヴィニヨンのようなずっしりとした重さではなく、軽やかさを感じます。すっきりとした酸もありとてもきれいなワイン。

当初はもう2本、カベルネ・フランを開ける予定でしたが、ハーランの満足感も高く、フランは後1本にしました。Vineyard 29のカベルネ・フラン2014です。この日のフランの中では一番濃厚で黒系果実の風味が強くあります。ただ、やっぱりカベルネ・ソーヴィニヨンとは違う酸の高さがあり、カベルネ・ソーヴィニヨンよりもエレガントな味わいです。

これで一通り終了…だったはずですが、もう一つ違うものを開けましょうとのことでセラー(ウォークインタイプで3方の壁にラックが据えられており所狭しとワインが並んでいます)を物色。お宝ばかりで大興奮(待っていた人たちはいつになったら帰ってくるんだろうt思っていたらしい)しました。その中で、選ばせていただいたのがなんとダイヤモンドクリークの中でも超レアなレイク「Lake」です。ヴィンテージは1987年。同じワインが2本あり、1本ラベルが少し破損していたのでそれをありがたく飲ませていただきました。


超緊張して抜栓する人(笑)。

アルコール度数は12.5%と今の水準では考えられないほど。これもとてもきれいです。もちろん熟成は相当進んでいます。マッシュルームなどの熟成の風味もたっぷり。黒果実がかすかに残っています。この日はエレガントなフランが続いた後だったので、カベルネ・ソーヴィニヨンらしい強さも感じましたが、逆にカベルネ・ソーヴィニヨンがたくさんある中でこれを飲んだらスーパーエレガントに感じたと思います。

この日の料理はカベルネ・フランに合わせて、和食が中心。牛肉もありましたが塩釜焼きで桜の風味がつけてあり、和の要素が強いものでした。

ナパのカベルネ・フラン、数は少なく日本に入っているものも限られており、価格も高いものが中心にはなってしまいますが、カベルネ・ソーヴィニヨンとは違う魅力があります。特にカベルネ・ソーヴィニヨンは飲み疲れてしまう、と思っている人はぜひ試してほしいです。

カベルネ・フランは青臭いワインというイメージをお持ちの方も多いですが、この日のワインで青臭さを感じたことは全くありませんでした。もっとこの魅力を多くの人に知ってほしいです。
Date: 2023/0414 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパヴァレー・ヴィントナーズは山火事対策のための防火道路などに210万ドルを投資すると発表しました(Napa Valley Vintners Gives $2.1 Million for Wildfire Resiliency)。

2022年には消防隊のための通信設備に250万ドル、山火事のモニタリングシステムに330万ドルを投資しており、今回と合わせると790万ドル、日本円で10億以上を山火事対策にかけていることになります。

今回の投資は100マイル(約160km)の防火用道路の確立などに充てられます。この道路は消防隊が火事の現場になるべく早く着けるようにすることや、延焼を食い止めるための緩衝帯になることを目的としています。

このほか、山火事のリスクを軽減し、生態学的利益を最大化するための、最大 300 エーカーの生息地を作ることや、 土地所有者と住民計400人に、森林の健全性と山火事への回復力に関するリソースと教育を提供することにも使われます。

2022年秋の「コレクティブ・ナパヴァレー」における募金が今回の資金に充てられるとのことです。
Date: 2023/0413 Category: ワイン本
Posted by: Andy
Comments
3000円台のワインをこよなく愛する「3000円ワインの民 │ますたや」さんが編纂するエッセイ集「わたしとワイン」に寄稿しました。






お買い求めは5月21日に東京流通センターで開かれる文学フリマ東京にますたやさんが出展するブースで買っていただくか、Booth(「わたしとワイン」エッセイアンソロジー - 3000円ワインの民|ますたや - BOOTH)で買っていただくかになります。また、水天宮前の「アフリカー」に行くと立ち読みできるようになるそうです(販売はしていません)。

私も自分の原稿以外はタイトルしか見ていないので、他の方のエッセイを読むのが楽しみです。

Date: 2023/0412 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
Comments
ザンダー・ソーレン(Xander Soren)氏の立ち上げたワイナリー「ザンダー・ソーレン」の世界ローンチ・イベントが新宿のパークハイアット東京で開かれ、参加してきました。


ザンダー・ソーレン氏は元アップルのエグゼクティブでiPodやGarageBandなど音楽系の製品開発に長く携わった人。ワイン造りは10年ほど前から始めていましたが、このほど会社を辞め、ワイナリーに専念することになりました。その世界発表の場となったのが東京です。お披露目では、和食のコースにワインを合わせていました。


ワインのラベルも家紋を模したもの(米国西部に咲くフルセラという花にザンダー氏の頭文字の「X」を組み合わせたデザイン)で、ザンダー氏の日本への思い入れの深さがうかがえます。
null

日本市場に投入されるのは2019年のヴィンテージからになるようですが、お披露目では2012年のワインなど、これまで作ってきたバックヴィンテージのワインもいただきました。なお、ワインはすべてピノ・ノワールです。

ブドウ畑は南はサンタ・バーバラから北はウエスト・ソノマ・コーストまで、カリフォルニアのピノ・ノワールの銘醸地から厳選された、いずれ劣らぬ銘醸畑ばかりです。例えばサンタ・バーバラではサンフォード&ベネディクトやラ・エンカンターダ、サンタ・ルシア・ハイランズではシエラ・マーやロゼラズ、ソノマではオリヴェット・レーンやユーキ・ヴィンヤードのブドウを使っています。ユーキ・ヴィンヤードはフリーマンがウエスト・ソノマ・コーストに持つ畑で、外部のワイナリーに出すのはザンダー・ソーレンが初めてとのことです。

ワインは食事とのペアリングで出されたので、順番はバラバラでしたが、ここではヴィンテージ順に簡単に紹介します。

2012年セントラル・コースト:畑はサンタ・ルシア・ハイランズのシエラ・マーとサンタ・バーバラ(サンタ・リタ・ヒルズ)のエンカンターダ。10年が過ぎて、熟成による旨味や漬物のような味わいも出てきています。カリフォルニアでは果実味が強いせいか熟成しても漬物感があまり出てこないことが多いですが、これはきれいに熟成しています。果実味もほどよく残っていて飲み頃でしょう。

2013年セントラル・コースト:1年の違いですが、レッド・チェリーやザクロのような果実味がより強く残っています。合鴨によく合いました。

2015年セントラル・コースト:ザクロやフランボワーズのやわらかな果実味。ほどよい酸味。腐葉土やマッシュルームのニュアンス。

2019年セントラル・コースト:サンタ・ルシア・ハイランズのロゼラズのブドウも入っている。フランボワーズなどの赤果実に、カシスのような黒果実の風味も加わり、ちょっとダークな味わい。

2019年ユーキ・ヴィンヤード:赤果実の風味が主体で、複雑味もある。数年熟成させるととても良くなりそう。

2019年オリヴェット・レーン:ロシアンリバー・ヴァレーらしい芳醇な味わい。比較的タンニン強く、ボディがしっかりしている。

2020年オリヴェット・レーン:2019年と似ているが、よりタンニンを感じ、グリップ感がある。

2020年Ludeon:Ludeonはフラッグシップの位置づけで、ほかのラベルが白地なのに対してこれだけは黒字になっています。ほかのワインがかなりエレガントな作りであるのに対して、これはかなりボディが強く、濃い味わい。青さを感じたので全房を使っているのかと思ったらそうではないとのこと。おそらくまだワインが若すぎるのだと思います。もう2、3年たってから飲んだほうが良さそうなワイン。


ワインメーカーはウイリアムズ・セリエムやロアーなどで働いていたShalini Sekhar (シャリニ・セイカ ル)という人。どのワインもそれぞれの地域らしさも出たきれいなワインで、とても優秀なワインメーカーだと思います。

生産量は毎年トータルで600ケースくらいというからかなり少なく、日本に入ってくる量もかなり限られていそうですが、探して飲む価値のあるピノ・ノワールだと思います。

日本では布袋ワインズが輸入元になります。
ザンダー・ソーレン : Hotei Wines







パークハイアット東京の和食レストラン「梢」の料理も実に素晴らしかったです。
Date: 2023/0408 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments



ナパヴァレー・ヴィントナーズのインスタグラムでロンバウアーのシャルドネ2021を紹介しました。樽の効いたリッチなシャルドネといえばロンバウアーですから、もちろん何度も飲んだことがあります。
テイスティングしてみても、樽由来のヴァニラとかシナモンの香りが印象的です。マロラクティック発酵を100%しているので、酸味も柔らかくなっていますが、ブレッド&バターほどのバター感はなく、意外とエレガントに感じられます。酸がきれいにあるからでしょうか。

ちょっと高めのシャルドネですが、安心して飲める銘柄なので、ちょっといいシチュエーションで飲みたいワインです。



Date: 2023/0406 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパで最高のワインメーカーの一人として知られるアンディ・エリクソン。元スクリーミング・イーグルのワインメーカーであり、現在はマヤカマスやト・カロン・ヴィンヤード・カンパニー、ダラ・ヴァレなどでコンサルタントを務めています。また妻のアニー・ファヴィアとともにクームズヴィルにファヴィアを設立、直近ではオークヴィルに畑を購入しています。

そのアンディ・エリクソンが「アペレーションに縛られることなく、カリフォルニア中の特筆すべきヴィンヤードで造られたブドウを使⽤し『ヴィンテージごとに最⾼の⾚ワインを造る』という、唯⼀の⽬的のため、設⽴されたプレミアムワイナリー」がリヴァイアサン(Liviathan)です。2004年から毎年赤ワイン1つだけを作っており、2020年のヴィンテージからJALUXが輸入を始めました。プレミアムではありますが、希望小売価格は9600円と、アンディ・エリクソンが作る赤ワインの中では最安の部類に入ります。クオリティの高さを考えるとプレミアムワインの中では非常にコスパの高いワインです。今回は古いヴィンテージのものを含めて飲ませていただきました。


2004年に始めたときはわずか400ケースだったリヴァイアサンですが、毎年北カリフォルニアのいろいろなところを回って素晴らしいブドウを作る畑を探して今に至ります。リリースしてすぐでもおいしく長熟も可能で緻密な味を目指しているとのこと。

近年はカベルネ・ソーヴィニヨンがベースになっています。ほかにはメルロー、カベルネ・フラン、シラーやプティ・シラーが定番になっています。カベルネ・ソーヴィニヨンは黒果実やストラクチャーの要素を与え、メルローはブルーベリーの風味やジューシーさ、カベルネ・フランはスパイスやアロマ、シラーやプティ・シラーはチョコレートやリッチな味わいの要素をプラスしているといいます。また、畑はカベルネ・ソーヴィニヨンについては岩の多く標高の高いところ、メルローは粘土質でやや涼しいところ、シラーやプティ・シラーは岩があって少し暖かいところを選んでいます。

リヴァイアサンで使っている畑のマップです。ナパ・ソノマのほかレイク郡やシエラ・フットヒルズの畑もあります。ソノマでも個人的注目のムーン・マウンテンや、ちょっとマイナーなファウンテングローヴの畑を使っているというのも面白いところ。

試飲したのは2020、2019、2017、2011年です。
まずは2020年。青果実、黒果実、赤果実いずれの風味も感じます。シラー由来かブラックペッパーのようなスパイシーさやチョコレート感も。アルコール度数はやや高めの14.9%で若干重さは感じますが、フルーツの味に軽さがあるのでバランスは取れています。
2020年は山火事が多く、ナパやソノマでは醸造を諦めたワイナリーも数多くあります。リヴァイアサンでも畑の一部しか収穫できなかったところなどがあり収量は減ったそうですが、品質自体は素晴らしいとのことです。

2019年はクラシックなヴィンテージ。2020年よりも青果実のトーンを強く感じ、パワフルで濃厚。チョコレートやモカ、黒鉛のニュアンスも強くなっています。

2017年は熟成の要素が少しでてきています。杉の木やスパイス、赤果実の要素が多く、リッチですが2019ほどのパワフルさではありません。血液やタバコも感じます。

2011年は冷涼な年で、ナパでもブドウが完熟しない畑が多くありました。結果として果実味よりもセイバリーと言っているようなハーブや杉のニュアンスがより強くなっています。赤果実も強く、ボルドーの赤ワインのような感じです。リヴァイアサンの熟成力はかなりあると思いました。



今回はホテルオークラの桃花林という中華のレストランでの食事に合わせました。ワインに合うようシェフが工夫してくれたそうで、非常に素晴らしい食事でした。


Date: 2023/0405 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ハドソンの記事を書いたので、続いてハドソンの生産者ランチの報告をしておきましょう。今回は創設者のリー・ハドソンさんが奥さんのクリスティーナさんと10年ぶりの来日。プライベートな旅行がメインだったそうですが、東京ではイルドコリンヌでランチが開かれました。ちなみにクリスティーナさんは中学生のときに愛知県に、大学生のときには慶応に留学経験があり、日本語も上手です。



ハドソンの創設者のリー・ハドソンは子供の頃から農業に興味を持っていて、大学でも園芸を学びました。1975年から76年にかけてはブルゴーニュのドメーヌ・デュジャックで収穫の手伝いをしました。後にテッド・レモンが米国人としては初のワインメーカーになるワイナリーですが、リーはデュジャックで働いた最初の米国人だったそうです。ここで土地の個性をワインに表現することや、卓越したものを達成するための姿勢などに共感して、ワイン造りを志します。77年にUCデーヴィスで栽培や醸造を学び、81年に29歳のときに、まだ土地が安かったナパのカーネロスに土地を購入しました。全く何もない土地を切り開いて畑や牧場にしていきました。現在では200エーカーのぶどう畑があり、14種類の品種が植わっています。

現在ではキスラーやコングスガード、オーベールといった超一流の生産者がハドソンのブドウ、特にシャルドネを購入し、トップクラスのワインを作っています。ハドソンのブドウを買っているワイナリーは30にもなるとのことです。一部はハドソン自身でワインを作っています。

今回はハドソン自身のワインを日本未輸入のものを含め6種類いただきました。


ハドソンはカーネロスの中でもナパとソノマとの郡境に近いところのナパ側にあります。上に畑のマップを載せましたが、かなり広大な土地で、畑も海に近い南側と、やや山に近い北側と大きく2つに分かれています。シャルドネの生産量が4割くらいあり、北側の畑がやや多いですが、南側にもシャルドネの畑があります。シャルドネは「ヘリテージ・クローン」(UCデーヴィスなどで管理しているクローンではなく代々受け継がれてきたクローン)の一つであるショット・ウェンテというクローンが植えられています。非常に小ぶりの房をつけるシャルドネで、果実も小さいのが特徴です。果皮の比率が高くなるためワインに奥行きが出るとのことです。

ワインはまずはエステートのシャルドネ 2020からです。これはシャルドネの各畑のブレンドで、ハドソンを代表するワインと言っていいでしょう。ハドソンの中ではエントリー的な位置づけで、新樽率は25%と抑えめ。樽熟成は11カ月。黄金色といってもいいくらいの見るからに果実感のある色合いで、白桃やスイカズラ、はちみつ、ナッツ、ミネラルなどを感じます。酸はやわらかく、きれいでするすると飲めてしまうワイン。美味しくていくらでも飲んでしまいそうで危険です(私はそんなに強くない方ですが、この日は思わずおかわりしてしまいました)。
ちなみに、2020年は山火事でワインを作るのをやめたワイナリーも少なくない年ですが、カーネロスは火事の地域からやや距離があり、上空は煙が見られたそうですが、ワインへの悪影響は避けられたとのことです。

次に日本未輸入のシャルドネ2つ。リトル・ビットとレディバグの2020年です。畑の名前は3年前に付けたとのことですが、家族のニックネームを使っています。リトル・ビットはお孫さん、レディバグは奥さんのクリスティーナのニックネームです。地図でわかるようにリトル・ビットは南の標高が低く海に近いところ、レディバグは北の山に近く標高が高いところなのですが、土壌はリトル・ビットが火山性でレディバグは砂地なのだそうです。海に近い方が砂なのかと思ったらそうではないとのこと。難しいですね。この2つのワインはどちらも新樽率が80%と高く、樽熟も22カ月と長くなっています。とはいえどちらも樽の印象が強いわけではなく、溶け込んでスムーズな味わいです。
どちらもむちゃくちゃ美味しい。最初のワインと比べるとややリッチな味わいでふくよかさが印象的ですが、その中でもリトル・ビットの方が酸がより感じられて個人的には好きでした。

白の4本目は当初の予定にはなかったワインですが、飛び入り参加です。この前の週にカベルネ・フランのワイン会をある方の自宅で開催し、イルドコリンヌの山本香奈さんも私も参加していたのですが(後日報告予定)、その方がハドソンのワイン会をするならと提供してくださったワインです。ホワイトスタディという限定品でラベルも真っ白。ビートルズのホワイトアルバムを意識したデザインだとか。ブドウ品種はトカイ・フリウラーノにリボッラ・ジャッラ、それに少しシャルドネが加わっています。スキンコンタクトなし、マロラクティック発酵なし、新樽なしの作り。スイカズラや白桃のピュアな味わい。優しい味です。アルコール度数も12.1%とかなり低め。

赤はフェニックスというメルロー中心のレッド・ブレンドの2020年と、オールド・マスターというカベルネ・フラン中心のレッド・ブレンドの2016年。フェニックスはボルドー右岸のポムロール、オールド・マスターはシュヴァル・ブランを意識しているそうです。
フェニックスはザクロやレッド・チェリーなどの赤果実に、黒鉛のようなしっかりとした風味が重なります。ちなみにこの名前は2016年の同ワインが2017年の山火事のときに奇跡的に難を逃れたことから付けられたとのこと。
オールド・マスターはフェニックスよりもさらに引き締まった風味。ミネラル感を感じます。個人的には非常に好きな味わい。名前はルネッサンス時代の芸術家に敬意を評したものだとのこと。

ハドソンの畑は前述のようにシャルドネが約4割。他の品種は多い順にメルロー、シラー、カベルネ・フラン、ソーヴィニョン・ブラン、グルナッシュ、アリアティコ、リボッラ・ジャッラ、トカイ・フリウラーノ、アルバリーニョ。カーネロスにあって意外なことにピノ・ノワールはありません。どうしてピノ・ノワールを作らないのか聞いたところ、「ビジネスとして成り立たないものはやりたくない。ピノ・ノワールは収量が非常に少なく儲からないんだ」とのこと。それでもリボッラ・ジャッラなどと比べたらずっと高い値段でブドウも売れると思うのですが、「そんなこともないんだ。リボッラ・ジャッラは1エーカーあたり6トンくらい収穫できるが、ピノ・ノワールはこのあたりだと1.5トンくらいしか収穫できない。安くてもリボッラ・ジャッラの方がお金になるんだ」とのことでした。




ハドソンの畑は今月ナパのツアーでも訪問するのですが、実際に畑を見てみるのが楽しみです。ただ、訪問する日はご夫妻はまだ日本でナパではお会いできないのが残念です。



Date: 2023/0404 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
近年、自然派ワインが人気だと聞きます。自然派とは何かというややこしい問題は置いておいて、ナチュラルなものに傾倒する人が多くなっているのは実感します。カリフォルニアでも有機栽培(オーガニック)に取り組む生産者は着実に増えています。昨年にはナパを代表する銘醸畑であるト・カロンが有機栽培の認証を受けました。天然酵母で発酵するワイナリーも多く、SO2の添加量も規定よりはるかに少なく抑えているワイナリーが多々あり、事実上「自然派」といっていいワインはかなりの数になるでしょう。

一方で、サスティナブルに取り組む生産者も増えており、こちらはもはや当たり前のようになってきています。

では、コンシューマーから見て、オーガニックとサスティナブルってどうですか? 
オーガニックは、まあまあ分かりやすいですよね。農薬を使わず自然に優しい農法で作っていて、好感度高いと思う人が多いのではないでしょうか。自然派ワインとしてオーガニックなものしか飲まないという人もいると思います。
一方、サスティナブルはちょっとわかりにくいですよね。農法においては農薬を減らすことは規定していても、全く使わないとまでは決めていません。オーガニックに向かう途中の人たちにも都合がいいようなものなんじゃない、などと思っている人もいるのではないでしょうか。「このワインはオーガニックだよ」というのと「このワイナリーはサスティナブルだよ」というのだと、オーガニックを選びたくなる人の方が多いだろうと思います。

先日、ナパのハドソン(Hudson)のオーナーのリー・ハドソンさんに「オーガニックについてはどう考えているのか」と聞いてみました。ハドソンはサスティナブルの認証は受けていますが、オーガニックとは言っていません。


「もちろん、オーガニックで栽培できる部分はそうしているけど、オーガニックかどうかは自分にとって最大の問題ではないんだ」とリー・ハドソン。
「それよりも大事なのはハドソンで働く従業員だ。50数人いる従業員にちゃんと給料を払って、家に住めるようにして、子供に教育ができる。そういった環境を続けていくことの方がオーガニックにこだわることよりも優先度が高いんだ」
つまり、農薬を全く使わないと決めてそれに縛られるよりも、ちゃんと作物ができて病気などでやられないようにする、そういった持続性をより大事にしているわけです。
オーガニックは農法だけを扱っていますが、サスティナブルは企業として持続していくことも含んでいます。そっちの方が大事だというのは言われてみれば当たり前ですが、気が付きにくいところです。

ただ、企業として持続していくことはワインの味とは無関係では? そういう意見もあるでしょう。確かに従業員の生活はワインの味に直結しないかもしれませんが、従業員をちゃんと守る会社とそうでない会社のどちらのワインを飲みたいと思うか。SDGsの考えも浸透してきていますから、従業員を守る会社のワインを選ぶというのは十分にあり得ることです。また、長期的に見たら、従業員が満足して働いている会社の方が、品質のいい製品を生み出していくだろうと思います。

この話は日本ワインの在り方についての話などにもつながっていくと考えており、ここ数日で何人かの私よりワイン業界の様々なことに詳しい方々ともお話させていただきました。その話もしたいところですが、長くなったし私の専門でもないので、割愛させていただきます。

個人的にはオーガニックよりサスティナブルが大事。そう考えるようになりました。
あなたはこの問題、どう考えますか?

こちらも合わせてお読みください。
絶妙なシャルドネにエレガントな赤、ハドソン・ヴィンヤーズ
Date: 2023/0403 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
ハンドレッド・エーカーのジェイソン・ウッドブリッジが作る新しいブランド「フォーチュネイト・サン」のワインが限定入荷しています。フォーチュネイト・サンという名前の付いたワインは以前はハンドレッド・エーカーのフォーチュネイト・サンとして2013年まで作られていたようですが、2018年から改めて別ブランドとして立ち上げ、2021年からはワイナリーも新たに構築してワインを作ります。

フォーチュネイト・サンのコンセプトはナパの古い畑を引き継ぎ、ハンドレッド・エーカーのワイン造りで新たに世に出すこと。ハンドレッド・エーカーが自社畑のブドウだけなのに対し、こちらは契約畑がメインとなります(一部自社畑のブドウも使っているようです)。

ワインはザ・ドリーマーとザ・ディプロマット、ザ・ウォリアーの3つ。いずれもカベルネ・ソーヴィニヨン中心のブレンドです。ザ・ドリーマーはカリストガにあるハンドレッド・エーカーのFar and Betweenという畑の近くにあり、85~90年の樹齢という古い木も残っている畑のワイン。92%はカベルネ・ソーヴィニヨンですが、品種の分からないブドウも混植されているそうです。試飲しましたが、古木の複雑さを味わうというよりは、モダンでリッチな味わいで、ハンドレッド・エーカーの味に通じるものがあります。希望小売価格は2万3500円と、10万円を超すハンドレッド・エーカーの4分の1以下。この価格でハンドレッド・エーカーの雰囲気を味わえるのはお得です。
* 品種はカベルネ・ソーヴィニヨン100%だそうです。92%というのはWine Advocateにあった数字ですが、それ自体が誤りだったようです。





ザ・ディプロマットはインポーター資料には「独裁者や愚か者を嘲笑いながらウィンストン・チャーチルが飲んでいそうな、そんなワインです。色も味わいも非常に濃厚なので、臆病者向きのワインではありません」とあります。カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローのほか、プティ・シラーも入っているようです。希望小売価格は3万3000円。




ザ・ウォリアーは100%カベルネ・ソーヴィニヨン。こちらは価格も72000円とハンドレッド・エーカーに迫ります。

どれも限定数の入荷とのことです。ハンドレッド・エーカーのスタイルを味わってみたい方にお薦めします。
Date: 2023/0401 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
しあわせワイン倶楽部が2022年に開催された『ナパワイン・アンコールフェア 2022』で小売店1位になりました。このフェアで期間中に売れたワインが22,246本だったのですが、そのうち9,388本がしあわせワイン倶楽部だったとのことでなんと4割以上を1店舗で売ったことになります。

こちらで買ったことがある方はご存知かと思いますが、私も毎月カリフォルニアワインのニュースを寄稿させていただいています。クリスタルガイザーが付いてきたり、テイスティングノートが入っていたりといった地道なサービスがリピーターに評価されている結果でしょうね。

その1位の記念に特別セットが発売されました。2本と4本と6本があり、いずれも送料無料です。

2本セットは
アナベラのカベルネ・ソーヴィニヨンとマイケル・ポザーンのジンファンデルというオークヴィルの2本で7700円

4本セットは
ナパ・ハイランズのカベルネ・ソーヴィニヨン、シックス・エイト・ナイン、カモミのメルロー、クラシファイドの4本で12870円

6本セットは4本セットの4本と
アナベラのカベルネ・ソーヴィニヨン、ナパ・バイ・ナパのカベルネ・ソーヴィニヨンで19800円

となっています。
個人的なお薦めは2本セット、または4本セット+2本セットです。
貴重なオークヴィルのジンファンデルが入っているのが2本セットだけというのがポイントで、また2本セットと6本セットだとアナベラが重なるので、4本セットと組み合わせるのがいいと思います。

4月1日限定で400円引きクーポンも出ています。




Date: 2023/0331 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパのワイナリー「ガーギッチ・ヒルズ(Grgich Hills)」は3月24日、環境再生型有機認証(Regenerative Organic Certification=ROC)を獲得したと発表しました。カリフォルニアではタブラス・クリーク、フェッツァー、ニール・ファミリーに次ぐ4番目の認証です。

環境再生型有機認証は、従来の有機栽培の認証に加えて健康な土壌の構築、生物多様性の促進、動物福祉と社会的公正などを盛り込んだ包括的な認証です。有機認証やビオディナミの認証が栽培だけに関わるのに対して、より環境や公正さといったことに踏み込んだSDGsに近い考えのものになっています。



ワインメーカーで、ブドウ畑と生産の副社長であるイヴォ・ジェラマズ(創設者マイク・ガーギッチのおい)は「再生型農業の原則は本当に新しいものではありません。実際、叔父のマイク・ガーギッチと私はブドウ園で働き、原産地のクロアチアで多くのブドウを使ってワインを作っていたので、それは私にとって「バック・トゥ・ザ・フューチャー」です」と語っています。

ちなみにマイク・ガーギッチさん、4月1日で100歳におなりです。言うまでもないと思いますが、パリスの審判で白ワイン1位になったシャトー・モンテレーナの当時のワインメーカーです。

こちらも合わせて読んでいただくといいと思います。
テッド・レモン大先生のスイッチを入れてしまったある質問
Date: 2023/0330 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
カリフォルニアワイン協会が4月1日から5月31日にワインが当たるキャンペーンを開催します。


応募方法は以下の通りです。
Step.1:カリフォルニアワインを料飲店で注文、またはオンラインショップや小売店で購入し、そのワインを楽しんでいる素敵な写真を撮影してください。
Step.2:カリフォルニアワイン協会の公式インスタグラム(@calwinesjp)をフォローしてください。
Step.3:指定ハッシュタグ「#カリフォルニアワインを楽しもう」を付けて、「@calwinesjp」をタグ付けし、購入した店舗の位置情報(または店舗名をキャプション内)に入力して投稿してください。投稿は通常の投稿とストーリーズ投稿、どちらも対象となります。
※アカウントを非公開設定にしている方は、公開設定にしてからご応募ください。

店舗で飲むだけでなく、買ったワインを飲む場合でも応募できるのはいいですね。
まずはともかくインスタアカウントをフォローしておきましょう。
カリフォルニアワイン協会(@calwinesjp) • Instagram写真と動画

応募は何回でもできます。たくさん応募すると有利になるのかどうかはわかりませんが、おそらく抽選に当たる確率は高くなるのではないかと思っています(私は関係者ではないので適当です)。なお、当選は一人最大1本です。

キャンペーン参加の飲食店はこちら。同じページの下の方に小売店やオンラインショップのリストもあります。
参加店一覧|カリフォルニアワイン・スプリングプロモーション2023


どさくさ紛れに私のインスタも宣伝しておきます。フォローしていただけると嬉しいです。
Andy Matsubara(@andyma) • Instagram写真と動画
Date: 2023/0329 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
昨年、合併して欧州ワインも扱うようになった新生Wine to Styleの試飲会に行ってきました。とはいっても時間制限があったので、米国ワインのブースを回るので精一杯でした。早速いってみましょう。


ファー・ニエンテの新ブランド「ポスト&ビーム」のカベルネ・ソーヴィニヨン2020(9500円、税抜き希望小売価格、以下同様)。ナパらしい果実味とエレガントさが同居して1万円以下の価格にちょっとびっくりしました。調べたら2021年の試飲会でもおすすめに挙げていたようです。


NBAの八村塁選手がプロデュースしたワイン「ブラックサムライ」のカベルネ・ソーヴィニヨン2019(26000円)。醸造はファー・ニエンテ系のニッケル&ニッケルのワインメーカーであるジョー・ハーデン氏が担当しています。リッチで果実味が爆発するようなカベルネ・ソーヴィニヨン。


ファー・ニエンテのシャルドネ2020(14500円)。クラシックな銘柄で、リッチな味わいも確かにクラシックですが、マロラクティック発酵なしなので、くどくなくきれいな味わいを持っているところが好きです。最近はあまり話題に上がらないワインですがもっと評価されていいと思います。


アイズリーのカベルネ・ソーヴィニヨン2019(120000円)。もう一つクラシックなワインが続きます。12万円はもちろんとてもお高いですが、リッチさだけでなくエレガントさが際立っており、本当に素晴らしいワイン。ワイン・アドヴォケイトで100点とのこと。


トゥエンティ・ロウズのリザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨン2020(4200円)。実売では税込み3000円台半ばから売っているワイン。ちょっと甘やかさが強いですがリッチなカベルネ・ソーヴィニヨンとしてお薦めできます。


安いものと高いものが混在しておりますが、今度はまた高い方でコンティニュアムの2019年(45000円)。ゴージャスでバランスの良さが素晴らしいです。コンティニュアムとしてはややタニックなので、しばらく置いておいた方がよさそうです。


ホールのソーヴィニョン・ブラン2021(4300円)。果実味が豊かなソーヴィニョン・ブラン。ナパのソーヴィニョン・ブランのベンチマーク的なワインになりそうです。よくできています。


ハーンのシャルドネ2021(2850円)。樽の効いたリッチなシャルドネ。2000円台は安いです。


中央はOZVのロゼ・オブ・プリミティーボ2020(2550円)。ジンファンデルで人気のワイナリーのロゼ。果実味がフレッシュで美味しい。左は同じワイナリーが作る「3 Girls」というブランドのカベルネ・ソーヴィニヨン2019(2450円)。リッチなスタイルのカベルネ・ソーヴィニヨンです。かなりよく出来ています。


ニュージーランドで岡田さんが作るフォリウムのピノ・ノワール2020(4200円)。すなおに美味しい。4200円はバーゲンです。


サイクルズ・グラディエーターのソーヴィニョン・ブラン2021(2100円)。引き締まった感じもありコスパ高い。


ここ数年でカリフォルニアのコスパ系の定番になったベンド。シャルドネは樽の効いたリッチなスタイル。


ボー・リヴァージュ シュナン・ブラン 2019(3900円)。ワイン・アドヴォケイトでブルゴーニュなどを担当するウィリアム・ケリーが作るワイン。ローダイの北のクラークスバーグのシュナン・ブランを使っているそうです。酸がきれいでうまみもあり、とても美味しいです。ここのワインは初めて飲んだような気がしますが、美味しさに驚きました。


ウルトラヴァイオレットのカベルネ・ソーヴィニヨン2021(2900円)。ここのワインは毎回紹介しているような気がしますが、いつ飲んでもコスパにびっくりします。エレガントですが適度な凝縮感もあり、やわらかな味わいでおいしい。


レインのロイヤル・セント・ロバート・キュベ ピノ・ノワール2019(10500円)うまみ強く美味しい。とてもいいです。


サンディのシャルドネ セントラル・コースト 2020(4600円)。サンディのAVAもの。クラシックな味わいでコスパ高いです。


スコリウム・プロジェクトのワインメーカーが独立して作ったワイナリーがメートル・ド・シェ。スコリウムは結構ファンキーな味のワインも多いので個人的にはちょっと苦手としていますが、メートル・ド・シェはきれいな味わいでおいしい。ロゼ2021が4800円、レッド・テーブル・ワイン2021が4700円。グルナッシュが主体でうまみがあってしっかりしています。ジンファンデル2020はきれい系(5300円)。どれもいいです。


アイ・ブランド&ファミリーもニューカリフォルニア系でコスパ高くきれいなワインを作るワイナリー。ル・プティ・ペイザン シャルドネ2019(3800円)はうまみあってとても良いです。ル・ペティ・ペイザン オールド・ヴァイン カベルネ・ソーヴィニヨン2020(3800円)は樹齢60年と45年の畑のブレンド。エレガントでミネラル感のあるカベルネ・ソーヴィニヨン。


ブルゴーニュ・ファンにも支持されているラシーヌのシャルドネ2019(9500円)とピノ・ノワール2019(10000円)。エレガントで美味しい。個人的には特にピノ・ノワールが好きでした。


セバスティアーニのシャルドネ バターフィールド・ステーション 2020(3000円)。ブレッド・アンド・バター系の味わいかと思いましたが、意外とバター感は強くなくすなおに美味しいです。


ザ・ペアリングはこれまで何度も記事で紹介していますが改めて。シャルドネ2020(4500円)、ピノ・ノワール2020(4500円)、レッド・ワイン2017(4500円)。ちょっと値段は高くなりましたがそれでもコスパ高いです。個人的にはピノ・ノワールがエレガントで特に好きでした。


最後はザ・ペアリングの上位になるザ・ヒルト。エステート・シャルドネ2019(6500円)、エステート・ピノ・ノワール2019(6500円)。最近まではシャルドネとピノ・ノワールのセットで1万円を切るショップもありましたが、さすがにもう厳しいでしょうね。ワインはどちらもきれいな作りでとてもいいです。
Date: 2023/0328 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments

ソノマでスパークリング・ワインのカスタム・クラッシュ(委託醸造)を行うラック&リドルがシャルマ方式のスパークリング・ワインを作るための設備を導入しました。コッポラ・ブランドのオーナーであるデリカート・ファミリーから、コッポラのソフィア・スパークリングに使っている設備をリースし、ソフィアの醸造をラック&リドルが請け負います。また、ラック&リドルは設備を増強して他のワイナリーからの依頼にも応える予定です。

従来の瓶内二次発酵方式では、一次発酵によって作られたワインを瓶に詰め、そこに糖と酵母を追加して二次発酵を行います。シャルマ方式では、一次発酵によって作られたワインを密閉タンクに入れ、糖と酵母を追加して二次発酵させます。瓶内二次発酵よりもコストがかからず、期間も短くなります。具体的には瓶内二次発酵で1~2年かかるところが45~60日程度で済むとのこと。また、ワインが空気に触れないため、より果実のフレッシュさが残るとも言われています。近年、需要が急速に伸びているイタリアのプロセッコで使われている方式です。

ソフィアの設備は米国で最大規模のシャルマ方式の製造設備と言われています。ラック&リドルとしては従来の瓶内二次発酵に加え、シャルマ方式をカスタム・クラッシュのメニューに加えられそうです。
Date: 2023/0327 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
ヘンドリー「ブロック8」と聞いて心ときめかすのは、オールドファンではないかと思いますが、ヘンドリーのカベルネ・ソーヴィニヨン2018が、実質ブロック8のワインになっています。この「ブロック8」、1980年代から1990年代にかけてはオーパス・ワンやロバート・モンダヴィのリザーブの主要コンポーネントとして使われていたブドウなのです。

ヘンドリー

ヘンドリーの畑はオーク・ノールAVAにあります。オーパス・ワンやモンダヴィのあるオークヴィルと比べるとマイナーなイメージですが、そこの丘の上の畑になっており、中でもブロック8のブドウは前述のようにモンダヴィやオーパス・ワンに認められていました。現在のオーパス・ワンは自社畑だけになり、ヘンドリー自身も基本的に自社のワイナリーでの使用に変わっています。ただ、モンダヴィでチーフ・ワインメーカーを務めるジュヌヴィエーヴ・ジャンセンズ氏のプライベート・ブランド「ポートフォリオ」では、現在もブロック8をメインのブドウとして使い続けています。このことからも、ブロック8への高い信頼がわかります。

以前は、ヘンドリーとして「ブロック8」のカベルネ・ソーヴィニヨンがあったのですが、現在はブロック名称のないカベルネ・ソーヴィニヨンだけになっています。ただ、2018ヴィンテージについてはブロック8の中のBとDとFという3つのセクションしか使っていないとワイナリーのサイトには書いてあります。このうち、DとFは1974年に植えられたセクションでBだけは2006年と新しいセクションになっています。

昔に比べると高くなった感はありますがそれでもまだ1万円台半ば、オーパス・ワンやモンダヴィのリザーブと比べたらずっとリーズナブルな価格です。



Date: 2023/0326 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments

2月末に開かれたカリフォルニアワイン協会の「Alive」テイスティングで気になったワイン、美味しかったワインを報告します。


ピゾーニが作るピノ・ノワールのロゼ「ルーシーロゼオブピノ・ノワール2021」(4840円、価格は税込みの希望小売価格、以下同)です。ロゼとしてはやや高価ですが、ピュアな果実味がきれいでピノ・ノワールらしさもしっかりあり、とてもいいロゼです。輸入はilovecalwine。


同じくilovecalwine輸入でサンドラーとオーガスト・ウエストのピノ・ノワールとシャルドネ。7700円はこのレベルにしては安いです。特に一つ選ぶならばオーガスト・ウエストのロシアン・リバー・ヴァレー ピノ・ノワール 2021。


バークレーの有名レストラン「シェ・パニーズ」のハウスワインとして使われていることで知られているグリーン&レッドのジンファンデル。3種類出ていましたが、私のベストはチャイルズ・ミル・ヴィンヤード2017(7700円)。生産者と撮っていただきました。


ヴィノスやまざきが輸入を始めたアレキサンダー・ヴァレー・ヴィンヤーズ。レッドブレンドとジンファンデルが5500円でカベルネ・ソーヴィニヨンが6380円。ヴィノスやまざき輸入のワインは芳醇でふくよかなものが多い印象がありますが、これは果実味豊かで酸もしっかりあってとてもバランスが良いタイプ。アレキサンダー・ヴァレーのワインの中でもこのバランスの良さは秀逸でしょう。


もう一つヴィノスやまざきからウォーターストーンのメルロー2018(5500円)。メルローらしさが出ていてコストパフォーマンスもいいと思います。


パソ・ロブレスで注目のダオ(Daou)が作るもう一つのブランドPatrimony。今回未輸入ワインということで参加していましたが、中川ワインが扱うようです。カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フラン、プロプライエタリのカーヴ・デ・リオンの3つが出ていました。どれも濃厚でパワフル。個人的にはカベルネ・ソーヴィニヨンがバランス的に良かったです。



リッジのエステート・カベルネ・ソーヴィニヨン2016(14850円)。リッジのフラッグシップで、パリスの審判30周年の再戦で1位になったモンテベッロと畑は同じカベルネ・ソーヴィニヨン。モンテベッロとの違いは、モンテベッロが超熟型で最低10年は経たないと本領を発揮してこないのに対し、エステートのカベルネ・ソーヴィニヨンはリリース直後から飲みやすくできていること。下級品ではありません。価格は半額以下ですが。とはいえこれも7年熟成でこなれた感じは出ています。とても美味しい。いろいろ高値になっている中で、価格が変わっていないこのワインはむしろ割安感が出てきています。


もう一つパリスの審判銘柄で、スタッグス・リープ・ワイン・セラーズの「アルテミス」カベルネ・ソーヴィニヨン2019(11000円)。こちらはセカンドの位置づけ。とてもバランスよくまとまっています。インポーターはファインズ。


シャルドネの人気が高いジャム・セラーズの「Butter」からのカベルネ・ソーヴィニヨン2018(4290円)。バターの名前が似合うリッチでまろやかな味わい。4000円台だとちょっと高く感じられますが、実売だと3000円強といったところで納得感が出ます。ちなみに、JaMカベルネという赤いラベルのカベルネもあります。中川ワイン。


美味しいメルローを探すのは美味しいカベルネを探すのより10倍くらい難しく感じます。ナパ・ハイランズのメルロー2020(5280円)とリザーブ・メルロー(7700円)はその中で納得できるクオリティと価格のワイン。個人的にはレギュラークラスが特にバランスもよく、うまくまとまっている感じがしました。こちらも中川ワイン。


桃井隆宏さんが作るアーサー・セラーズのチェリーリッジ・ピノ・ノワール2021(6820円)とロシアンリバー・ヴァレー・ピノ・ノワール2021(5720円)。
2つともアーサー・セラーズの新作ですが、多くのワインの中に埋もれてしまうかもしれないこの記事に書くのはちょっともったいないかもしれないワインです。チェリーリッジはロシアンリバー・ヴァレーの中でも冷涼なグリーン・ヴァレーにある畑ですが、なんと栽培を手掛けているのはコブ・ワインズのロス・コブ氏。2021年は、全域的にブドウの収量が少なく、調達に苦労していたという桃井さんが、たまたま縁があってこの畑のブドウを手に入れられたとのこと。アーサー・セラーズのワインはピュアな果実味が特徴的ですが、これはその中にさらにエレガンスが加わって、これまでのアーサーのワインとも一味違う出来になっています。一方、ロシアンリバー・ヴァレーのAVAものは、アーサーらしい果実味豊かで陽性な味わいが前面に出たワイン。飲んでいると美味しくて思わず微笑んでしまうようなワイン。どちらもこの価格はとても安いです。


レイモンドのリザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨン2019(左、8800円)とリザーブ・メルロー(右、4620円)。このワイン、まずラベルが面白いです。ベルベットのような手触りの紙が使われています。さすがJCBという感じです(詳しくは「レイモンドの強烈な世界に皆ノックアウトされる」を参照)。ラベルが面白いだけでなく、味わいも本格派です。どちらもコスパの良さが際立ちますが、特にメルローは、ぎゅっと引き締まった感じもあって美味しかったです。インポーターはアサヒビール。


上の方に挙げたPatrimonyと同じくダオ(Daou)兄弟が作るワイナリー。Soul of a Lion2019(30800円)はDaouブランドでのフラッグシップ。シルキーなテクサチャーで素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨンです。ナパのワインに例えるならば、PatrimonyはHundred Acre、Soul of a LionはHarlanといった感じです。インポーターはナニワ商会。新橋のワインバー「ワイン蔵」の会社です。


個人的注目のエドナ・ヴァレーのタンジェント・ワインズによるソーヴィニョン・ブラン・パラゴン・ヴィンヤード2019(3850円)。冷涼産地のソーヴィニョン・ブラン、すばらしいです。輸入元はワインライフ。


平林園枝さんが作るシックス・クローヴズのシャルドネ・リンダ・ヴィスタ2020(8140円)、ピノ・ノワール・アルダー・スプリングス(9900円)、マグノリア・レッド・ブレンド2019(7700円)。シャルドネのリンダ・ヴィスタはナパでスティーブ・マサイアソンが栽培する畑です。エレガントで旨味があります。ピノ・ノワールのアルダー・スプリングスはメンドシーノの北のほうにある孤高の畑。深みのある味わいがすばらしい。マグノリア・レッド・ブレンドは冷涼感があってバランスよくできています。園枝さんの作るワインはどれもとてもエレガント。従来のカリフォルニアワインのイメージで飲むとちょっと違うかもしれませんが、エレガント好きな人にはたまらないと思います。インポーターは布袋ワインズ。


ナパのマルドナド・ヴィンヤーズのシャルドネ・ロス・オリヴォス・ヴィンヤード2020(価格未定)。畑はカーネロスにあります。リッチで美味しいシャルドネ。インポーターはデプト・プランニング。


オー・ボン・クリマの別ブランドであるクレンデネン・ファミリーのプティ・ヴェルド2013(6600円)。畑はなんとビエンナシードです。冷涼なビエンナシードのプティ・ヴェルドなんて、際物のように思うかもしれませんが、これがエレガントでむちゃくちゃ美味しいです。10年熟成で角が取れているのもいいのかもしれません。驚きました。インポーターはJALUX。


オルカ・インターナショナルが最近輸入を始めたザ・ヴァイスのカベルネ・ソーヴィニヨン「ザ・ハウス」2020(7480円)、カベルネ・ソーヴィニヨン オークノール 2020(10780円)、カベルネ・ソーヴィニヨン スタッグス・リープ2019(16500円)。どれもよくできています。「ザ・ハウス」は入門的な位置づけだと思いますが、やはりバランスよくまとまっています。カベルネ・ソーヴィニヨンのオークノールはエレガンスがあります。最近はナパのカベルネでもオークノールやクームズヴィルといった少し冷涼な地域でエレガンスを持ったワインが人気が上がっている感じがします。一方、スタッグス・リープは、期待にそむかない濃厚さ。三様で美味しいです。

Date: 2023/0321 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
カリン・セラーズ(Kalin Cellars)の創設者でワインメーカーであるテリー・ライトン氏が3月9日、亡くなりました。78歳でした。テリーとフランシスの夫妻がワイナリーを始めたのは1977年のこと。二人とも微生物の博士号を持っています。

カリン・セラーズは十分熟成したワインだけを出荷するというユニークなワイナリーで、これまでリリースした最も若いヴィンテージのワインで2001年です(この年が最後という説もあります)。ワイナリーのサイトには「Kalin Cellars - Wines With The Fifth Taste」とあり、旨味を重視したワイン造りになっています。

本業は大学の教授で微生物学を教えtいたそうです。2002 年に名誉教授を辞任し、その後もChildren’s Hospital Oakland Research Instituteで研究を続けました。また微生物学の基礎研究と応用研究も続けていました。

日本には布袋ワインズを通して輸入されています。布袋ワインズに今後について聞いたところ、まだ在庫は持っているようなので、今後もリリースは続いていく見込みだとのこと。ただ、元々テリー・ライトン氏は、何がどれだけあるといった情報を全く出していなかったので、いつまでワインがあるかといったことは全くわからないそうです。

ジム・クレンデネン、ショーン・サッカリー、ジョシュ・ジェンセン、テリー・ライトンと個性的なヴィントナーが次々と亡くなり、寂しいです。

ご冥福をお祈りします。
Date: 2023/0320 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
フランシス・フォード・コッポラのワインの日本におけるインポーターがWine to Styleからエノテカに変わりました(Enoteca Japan Awarded Exclusive Japan Distribution Rights for Delicato Family Wines' Prestigious Francis Ford Coppola Wine Portfolio)。


対象になるのはロッソ・エ・ビアンコやディレクターズ・カット、ソフィアなど写真に上がっているブランド。ナパの高級ブランド「イングルヌック」は対象に入っていません。

だいぶ驚きましたが、たしかに先日のWine to Styleの試飲会にはコッポラのワイン、出ていませんでした、現在サイト上では「3月末取り扱い終了」となっています。
Date: 2023/0319 Category: グルメ
Posted by: Andy
Comments
今週いっぱいくらいまで、いろいろ忙しくてブログ更新が滞りそうです。試飲会レポートとか忘れないうちに早く書きたいのですが…

先週はTaste of Californiaというイベントに参加しました。カリフォルニア州副知事も登場するというなかなか気合いの入ったイベントで、コロナ禍明けの観光客を呼び込みたいという熱意が伝わってきました。



ワインもかなりいいものが出ていてどれも美味しかったです。久しぶりにアイアン・ホースのスパークリングも飲みました。



ワインとペアリングする料理もいろいろ出ていました。監修はナパヴァレー・ヴィントナーズの小枝さんです。



なかでも絶妙なマリアージュだったのがこれ。ココナッツサブレにブルーチーズが塗ってあって上にダイスカットしたメロン。さらにトッピングできゅうりとディルを刻んだものがかけてあります。

これに合わせたのがナパのケークブレッド・セラーズのソーヴィニヨン・ブラン。冷涼な地区と温暖な地区のソーヴィニヨン・ブランをブレンドしています。爽やかさと柔らかな果実味が共存して美味しいのですが、このカナッペと合わせると、特にメロンとワインの甘やかな部分、トッピングとワインの爽やかな部分がマッチして、どちらもとても美味しく感じられました。思わずおかわりももらってしまいました。

ペアリングにはこれまで割と無頓着でしたが、ちょっと考えないといけないなと思っていむす。
Date: 2023/0317 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
2月28日に東京、3月2日に大阪、その後は韓国・ソウルでカリフォルニアワイン協会による「アライブ」テイスティングが開催されました。東京は710名、大阪は335名、ソウルは610名の参加者を集め、非常に盛況でした。

米国からのワインの輸出も増加傾向にあります。2022年には日本への輸出は前年比28.3%増と大幅に増えて1億900万ドルに達しました。ここ数年の統計データが確認できていないのですが、1億ドルを超えたのはおそらく2013年以来ではないかと思います。なお、米国のワイン輸出の95%はカリフォルニアワインです。

韓国への輸出も9000万ドル近くに達しました。人口が日本の半分以下であることを考えると、かなりの額になります。冒頭に書いた試飲会での610名の参加というのも、韓国のワイン業界では過去最多ということで、カリフォルニアワインへの注目が高まっているようです。
Date: 2023/0314 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ワイン業界にも激震、シリコンバレー銀行破綻の影響は?」の続報です。ナパにワイナリー専門のオフィスを持ち、ワイナリーの顧客も多いシリコンバレーバンクが3月10日に経営破綻し、米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に入りました。

預金者は法律で保護されるのは25万ドルまで。特に、シリコンバレーのIT企業では給与支払いなどの資金繰りへの影響が懸念されていましたが、米政府が預金の全額保証を発表したため、パニック的状況が起こることは避けられたようです。

ただし、今後については予断を許さないところもあります。今後シリコンバレーバンクのアセットは他の銀行などに売却されていくことになります。それによって、今後の融資などがどうなるか。ワイナリービジネスに理解のある担当者がいないと、これまで融資されていたような案件でも融資が難しくなるかもしれません。

また、ワイン業界にとって最大の関心事は毎年2月に発表される「Stete of the Industry Report」が来年以降どうなるか、です。同レポートの執筆者であり、シリコンバレーバンクのワイン部門のエグゼクティブ・バイス・プレジデントだったロブ・マクミラン氏のところにも同様の問い合わせが多数来ているそうです。

レポートの執筆者は一人ですが、動画などさまざまな面を含めると数十人のスタッフが関わっているというプロジェクトであり、これまでは無償でレポートを公開してきたわけですが、かなりの費用がかかっています。スポンサーの申し出などもあるようなので、何らかの形で継続していく可能性が高そうですが、ロブ・マクミラン氏自身の今後が決まっていないので不透明な部分も多いです。

また、もう一つ近年作っていたDtC(direct-to-consumer)のレポートは今年は作れないだろうとのことです。
Date: 2023/0313 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
2月28日には東京で、3月2日には大阪でカリフォルニアワイン協会の試飲会とセミナーが開かれました。3年ぶりに現地からも大勢が来日、活気のある試飲会でした。

カリフォルニアワイン協会では毎年「テーマ産地」を設定していますが、今年のテーマは「ウエスト・ソノマ・コースト」。2022年にAVAが認められたばかりのまさに今売り出し中の産地です。4月から5月にかけてはこの地域をテーマにしたプロモーションも行われ、インスタグラムではワインプレゼント企画も開催されるとのことです。

セミナーのテーマも「ウエスト・ソノマ・コースト」。現地の生産者団体から9つのワイナリーの代表者が来日して地域の解説をしました。生産者団体に属するワイナリーは28ですからおよそ3分の1のワイナリーが参加したことになります。

ブルゴーニュ品種の新潮流、ウエスト・ソノマ・コーストのコア・メンバーが来日
真のテロワールワイン -West Sonoma Coast AVA- 【特別無料公開】
と既に詳細なレポートも出ているので、ここでは私なりの感想を記していきます。

West Sonoma Coastの話をする前にそもそもSonoma Coastとは何なのかということを知っておく必要があると思います。

Sonoma Coastは上のマップで赤線で囲んだ、ソノマのほぼ半分を占めるような広域のAVAです。Coastと言いながら、比較的内陸のロシアンリバー・ヴァレーも大部分が含まれており、かなり温暖な産地であるチョークヒルも半分くらいが含まれています。また、太平洋だけでなくサン・パブロ湾に面したカーネロス(のソノマ側)も全域が含まれています。北の端から南の端までは100kmほどもあります。

なぜ、このような広域を占めているのかというと、Sonoma Coast AVA設立時(1987年)にSonoma Cutrerというワイナリーが、自社の畑を全部含むように領域を申請し、それが認められてしまったからです。Sonoma Cutrerは当時シャルドネ専業のワイナリーで、かなりの人気を誇っていました。そこがSonoma CoastというAVA名に加えてEstateという100%自社畑で100%そのAVAに入っていないと認められない表記を入れたいと思ったがための広域の申請でした。実は、こういったマーケティング的経緯でできたAVAはSonoma Coastだけではありません。その2年前にNorthern SonomaというAVAをGalloが主導して設立したときもGalloの畑を全部入れるために広域になったというのがありました。

ちなみに、Northern SonomaのAVAを冠したワインは現在ではGalloも作らなくなり、私の知る限りGallo以外で唯一使っていたRodney Strongもやめてしまっています。ほぼ有名無実なAVAになりました(上のマップにも実は含まれていません)。

一方、Sonoma Coastの方も当初から「無駄に広い」と言われ続けていましたが、ワインのラベルに表記されているという意味ではどんどん存在感を増しています。

カリフォルニアのピノ・ノワールのブームが本格化したのは2004年の映画「サイドウェイズ」以降と言われていますが、その頃は酸味を苦手とする人が多いアメリカ人の舌に合わせて、濃厚で甘やかなスタイルのピノ・ノワールが人気でした。ピノ・ノワールの産地としてはやや温暖なロシアンリバー・ヴァレーはそういったピノ・ノワールを作るのにぴったりで、ロシアンリバー・ヴァレーのピノ・ノワールがもてはやされました。「シラーみたいなピノ」と呼ばれることもしばしばありました。

2010年代になって、よりバランスのいいワインやエレガントなワインを求める人も増えていきました。IPOBやニュー・カリフォルニア・ワインのムーブメントがそれを後押しし、冷涼産地がもてはやされるようになってきました。そこで一気にロシアンリバー・ヴァレーからソノマ・コーストへのシフトが始まりました。とはいえ、ロシアンリバー・ヴァレーも実際にはほぼソノマ・コーストに含まれていますから、ロシアンリバー・ヴァレー産のブドウを使い続けて、ラベルだけソノマ・コーストに変えるといったことも可能なわけです。実際にどれくらいそういうことが起こっているのかはわかりませんが、例えばキスラーのWebサイトには一時期「キスラーはソノマ・コーストのワイナリー」といったことが書いてありました(キスラーのワイナリーはロシアンリバー・ヴァレーの中央部にあります)。

このほか、2011年にはFort Ross-Seaview(現在のWest Sonoma Coastに完全に含まれています)AVAも誕生しました。このAVAにはFlowersやHirsch、Marcassinなど重要なワイナリーが含まれていますが、AVAの名称としてはソノマ・コーストのようなわかりやすい冷涼感を表現するには力不足だった感じがします。Fort Ross-SeaviewのワインであってもSonoma Coastとして売られているケースが今でも主流だと思います。

West Sonoma Coastは、上記のようなAVAとしての一体感を無視して作られたSonoma Coastへのアンチテーゼとして90年代くらいから作ろうという動きが始まったようですが、実際にTTBへの申請という形で動きが本格化したのは2010年代に入ってからです。当初は「True Sonoma Coast」という案がありましたが、「True」というのはAVAの名称としては穏当ではないということで「West」に変えたという経緯があります。
null

そのとき申請した領域は、上のマップの全域になります。
ところが、このころTTBではかつての無節操なAVA認定への反省から「AVAが他のAVAを完全に包含するのはOKだけど、部分的に重なっているのは認めない」という方針が打ち出されました。申請した領域の中でロシアンリバー・ヴァレーと重なっているところがあることから、門前払いになってしまいました。

そこで、上のマップの右下の色の薄い部分を外して申請をし、ようやく認められたわけです。

というところでようやく、今回のWest Sonoma Coast AVAの話に入っていくのですが、このマップを見ても、本当はここまで申請したかった、という思いが伝わってくるような気がします。実際に、将来はここまで広げたいという希望は今も捨てていないようですが、上記の理由により、そのためにはロシアンリバー・ヴァレーAVAの領域を狭くしなければいけないということになります。ロシアンリバー・ヴァレー側が簡単に承諾するとは思えないので、現実にはなかなか難しいだろうと思います。そんなことは当事者が一番わかっていることですが、それでもあえて、現在のAVAに含まれていないところまでマップに含めたことが、その10数年のバトル?の重さを感じさせます。


気候の説明で面白いと思ったのは「冷涼な海洋性気候」という言い方をしていたところです。通常、カリフォルニアの沿岸の気候は地中海性気候と言われています。実際に気候区分としては地中海性気候に入ります。海洋性気候というのは気候区分ではなく、海に近いところで、気温や湿度など海からの影響を強く受けているということで矛盾はしていないのですが、今までこういう説明の仕方は聞いたことがなかったのでなるほどと思いました。ちょうどソノマ・コーストのセミナーがこの後あったので、この説明、さっそく採用させていただきました。

ここでポイントになるのは、ただの海洋性気候ではなく「冷涼な」というのが着くところです。ワインの世界で海洋性気候の代表的産地というとボルドーを思い浮かべる人が多いと思います。ボルドーの場合は比較的緯度が高い地域にもかかわらず、暖流の影響で温暖な気候になるわけですが、ウエスト・ソノマ・コーストの場合は、雨が少なく日照も多いのに、昼も夜も冷涼にするというのがポイントです。


この、地中海性気候+冷たい海洋性気候がウエスト・ソノマ・コーストのワインの特性の多くを決めていると思います。日照が多いので、畑によってはアルコール度数は高めになることもありますが、酸の高さとピュアな果実味、フェノール類の発達による複雑な風味が特にピノ・ノワールでは典型的なウエスト・ソノマ・コーストの味わいになっています。


レッドウッドについても、これまであまり考えてこなかったところでした。ウエスト・ソノマ・コーストの畑の多くはレッドウッドの林を切り開いて作られており、今でも周囲はレッドウッドに囲まれているところが多くあります。冒頭のマップを見ると、ウエスト・ソノマ・コーストの大半は丘陵地帯になります。畑を作るのが容易な平地はほとんどありません。周囲のレッドウッドによって湿度が保てたり、風をブロックしてくれたり、フレーバーへの影響もあるそうです。

土壌はソノマの中でも多様で複雑です。ウエスト・ソノマ・コーストにはサンアンドレアス断層という巨大な断層が走っています。これは3つのプレートの衝突でできたもので、結果として堆積岩や海洋性の砂岩など様々な土壌がまじりあっています。あまり多くはありませんが火山性の土壌も一部混じっています(火山性だけというより火山由来の土壌と海洋性の土壌が混じり合ったものなど)。共通するのは、多くの土壌が栄養分に乏しく水はけがいいこと。ワイン用のブドウに適した性質と言われています。

リトライのテッド・レモンさんによると、どんな植物が生えているかを見るだけで、土壌は大体わかるとか。さすがです。

このほか、歴史の話などもありましたが、長くなったのでちょっと割愛して試飲に入ります。

Ernest Vineyards Joyce Vineyard Chardonnay 2020
Senses Wines B.A. Thieriot Chardonnay 2021
Alma Fria Holtermann Vineyard Pinot Noir 2021
Littorai The Pivot Vineyard Pinot Noir 2019
Hirsch Vineyards ‘Raschen Ridge’ Estate Pinot Noir 2019
Wayfarer The Estate Pinot Noir 2019

今回はこの6種類です。
シャルドネはアーネストとセンシーズの好対照の2つ。アーネストは、かなり自然派な作り手です。ワインの熟成には500リットルの大きな樽を使っています。アルコール度数12%とかなり低め。新樽を使っていないため、樽感はなく香りの第一印象ではややおとなしいワインかと思ったのですが、飲んでみると予想以上にリッチさがあります。酸がかなり高くレモンやカリンの風味。とてもきれいな味わい。

センシーズは幼馴染の若者3人によるワイナリー。著名な畑B.A. Thieriotのオーナーの息子のマックス・ティエリオット(彼は俳優としても有名です)もその一人で、ティエリオットのブドウを使っている一人だった著名ワインメーカーのトーマス・リヴァース・ブラウンが、自ら申し出てワインメーカーをしています(私の知る限り、トーマス・ブラウンが自分から申し出てワインメーカーをしているのはここだけです)。こちらはアルコール度数が14.2%あり、味わいに厚みを感じます。オレンジオイルやグリセリン。アルコール度数は高いですがバランスよく、酸もしっかりしています。

ピノ・ノワールの最初の試飲のアルマ・フリアはあまり知らないワイナリーでしたが、人気ワイナリーのレッド・カーのワインメーカーだったキャロル・ケンプが作ったワイナリーだとのこと。レッド・カーは2017年に売却してしまったようです。これもかなり自然派の傾向の強いワイナリー。キャロル・ケンプは「不介入型」だと称しています。レッドチェリーやストロベリーの風味。酸はきつくなく柔らかい味わい。マッシュルームやドライハーブといった熟成的なフレーバーもかなりあります。全房15%、10%新樽で14カ月熟成とのこと。

リトライはビオディナミの実践で知られていますが、契約畑も多いため、ビオディナミかどうかは畑によって変わります。これは自社畑のピヴォットなのでビオディナミです。とても旨味感の強いワイン。マッシュルームやハーブ、皮革も感じます。果実味もきれい。

ハーシュはウエスト・ソノマ・コーストでも最も古い時期に作られた畑の一つ。当初は栽培だけで、いくつかのワイナリーにブドウをおろしていましたが、1994年に大きな転機が訪れます。リトライのテッド・レモン、ウィリアムズ・セリエムのバート・ウィリアムズ、キスラーのスティーブ・キスラーという3つのワイナリーから相次いでブドウを買いたいという電話がきたのです。実はこの3人は同じ低スティグ・グループで試飲をしていて、それでハーシュのブドウに同時に興味を持ったのでした。特に当時から有名だったキスラーやウィリアムズ・セリエムで採用されたことで一気にその名前が広がりました。2002年からワイナリーを始め、今ではそちらがメインになっているとのこと。2011年からビオディナミになっています。
ワインはレッド・チェリーやマッシュルームの風味。味わいの広がりが素晴らしいです。非常にやわらかくまとまりのある味。アルコール度数は13.4%

最後はウェイフェアラー。ナパの人気ワイナリー「パルメイヤー」の創設者が始めたワイナリーですが、現在はナパのブランドは売却してしまったのでウェイフェアラーだけをやっています。マーカッシンのヘレン・ターリーに「ソノマ・コーストのラ・ターシュになる」と薦められた土地を買って始めたという経緯があります。
ピノ4つの中でこれが一番外交的なワイン。果実味豊かで味もこの中では濃いめです。ベリーや甘草の風味。

テイスティング・コメントだけではよくわからないと思いますが、予想以上に個性がありしかもどれも非常にハイレベルです。ウエスト・ソノマ・コーストの中でも冷涼感の強い北部、標高が高く霧の影響が比較的少なく味わいも強くなる中部(Fort Ross-Seaviewエリア)、海からの距離はちょっと離れますが標高が低く、霧のかかり冷気が滞留する時間が長いためワインも一番エレガントになる南部と、地域差が結構あることもだんだん分かってきました。このあたりはもっと勉強が必要だと思っていますが。

このAVAはまだ誕生したばかりで、実際に「West Sonoma Coast」とラベルに記されているワインはほとんど存在していません。もしかするとWest Sonoma Coastに属してもマーケティングなどさまざまな理由でSonoma Coast表記を選ぶワイナリーもあるかもしれません。今回取り上げたワイナリーもWest Sonoma Coastのワインしか作っていないわけではありません。そういう意味ではまだ消費者にとってはわかりにくいところの多いAVAですが、まずはここで挙げたワイナリーや、以下のWest Sonoma Coastの団体に含まれるワイナリーのワインを、試してみるのがいいでしょう。どれも水準をはるかに超えたワインであること、それは保証していいと思います。
Date: 2023/0312 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
米国のシリコンバレーバンク(SVB)が3月10日に経営破綻し、米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に入りました。リーマンショック時のワシントン・ミューチュアルの破綻に次ぐ規模だと言われています。
SVB

シリコンバレーのIT企業への投資で知られるSVBですが、ワイン業界でも極めて存在感が大きな銀行です。ナパに「プレミアム・ワイン」部門を持ち35人もの専門家を抱えています。また、年に1回公開される「State of the Industry Report」はカリフォルニアのワイン業界の状況を分析したもので、業界では必須の資料となっています。現在も400を超えるワイナリーやワイン関連企業がSVBから融資を受けています。有名なワイナリーではシャトー・モンテリーナ、ハーシュ、ダリオッシュ、トレフェッセンなどがSVBの顧客に含まれています。

SVBの破綻によって、今すぐワイナリーの経営が傾くといったことはなさそうですが、当面25万ドルまでしか預金を引き出せないということになっており、ワイナリーによっては運転資金の確保が問題になるケースは出てきそうです。また、開発中のワイナリーやブドウ畑などは開発が止まってしまう可能性がありそうです。運転資金を確保するために古い在庫を投げ売りするようなワイナリーもあるかもしれません。

SVBのワイン部門の創設者であるロブ・マクミランは、現時点ではコメントできないと問い合わせに対して返答しているとのことです。
Date: 2023/0311 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
サスティナブルに非常に力を入れているワイナリーの一つがパソ・ロブレスのタブラス・クリーク。2010年から軽量ボトルを採用しています。このほど、それから14年でいくらの節約になったのか、試算結果を公表しています。



ワイン作りにおける二酸化炭素の排出量で一番大きな要素をしめるがガラス瓶です。製造時の二酸化炭素排出量が大きいだけでなく、輸送時にも多くの二酸化炭素を使用します。タブラス・クリークでは2010年に23オンス(約650g)のガラス瓶から16オンスのガラス瓶に変更しました。今回は、それによる二酸化炭素排出量の削減ではなく、純粋にワイナリーとしてどれだけコスト削減につながったかを計算しています。

今回の試算ではボトルの価格と、FedExなどによるう送料だけを計算しています。タブラス・クリークではそれまで2割の高級ワインには背が高くて重みもあるガラス瓶を使っていました。軽量のボトルはそれよりもボトルあたり60セント安く、それまでの普通のボトルよりも6セント安い計算になります。これだけで年間6万3200ドルの節約になります。

送料の計算は簡単ではありませんが、それまでのボトルの重さは軽量ボトルより5%ほど重いので、送料も5%増える、重量級のボトルでは16%も重くなるので、送料も16%増えると想定して、重いボトルを使い続けた場合のコスト増を考えました。

それが年間9万6539ドルに相当します。これと先程の6万3200ドルを足した約16万ドルが年間のコスト低下分ということになります。14年に換算すると実に223万6346ドル節約したことになります。

実際にはボトルの値段が上がっており、価格の差分ももっと大きかった可能性があります。また、大きくて重いボトルは箱のサイズも大きくなり、トラックなどの台数も増えた可能性がありますが、それも計算に入っていません。

「重くて背の高いボトルに入れるのが高級ワイン」というのはもはや幻想です。消費者も重いボトルを褒める風潮をやめるべきです。

ワイナリーにとってもこれだけのコストメリットは大きいはず。軽量ボトルはだれから見てもメリットになるはずです。
Date: 2023/0310 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
いろいろ忙しくて楽天スーパーセールもあまりチェックできていなかったのですが、カリフォルニアワインでかなりお買い得になっているものもいくつかありました。11日の午前1:59までの限定価格です。

「赤坂ワインストア エラベル」ではサンタ・バーバラのザ・ペアリングのシャルドネとピノ・ノワールが激安です。ザ・ペアリングはスクリーミング・イーグルのオーナーがサンタ・バーバラに持つホナタ(Jonata)とヒルト(Hilt)の2つのワイナリーのセカンドワインとなるブランド。昨年はNHKの番組でソーヴィニョン・ブランが取り上げられて一時品薄になるなど、人気も高く、通常価格の3000~4000円台でも十分お買い得なワインです。それが今回はピノ・ノワールとシャルドネが税込み2706円と、他店より1000円以上も安くなっています。どちらも残り1桁なのでお早めに。ソーヴィニョン・ブランは売り切れです。




ペアリングの安さも驚きましたが、もっと驚いたのが「リカオー」。ボーリュー・ヴィンヤードのカベルネ・ソーヴィニヨン タペストリー・リザーブ2015がなんと税込み5849円。ほかの店より3000円以上安く、ワンランク下のナパ・ヴァレーのカベルネよりも安い価格。現地価格よりも安いです。よほど評価低いのかと調べてみましたがワイン・アドヴォケイトもヴィナスも92点と、むしろ高評価のヴィンテージ。


このショップではロバート・モンダヴィも激安。シャルドネもピノ・ノワールも2000円台。「値段そんなもんじゃないの?」と思う人もいるかもしれませんが、これはロバート・モンダヴィでもカリフォルニア全域のブドウから作る「プライベート・セレクション」ではなく、ナパ・ヴァレーのブドウで作る「ロバート・モンダヴィ・ワイナリー」のもの。この2つの違いはとても大きく、ロバート・モンダヴィ・ワイナリーのサイトにはプライベート・セレクションの情報は全く載っていません。本当の意味でロバート・モンダヴィのワインと呼んでいいのはロバート・モンダヴィ・ワイナリーのものなのです。ほかのショップでは4000円台後半からですから2000円程度も安くなっています。



Date: 2023/0307 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
デコイのリミテッド・カベルネ・ソーヴィニヨン2019を飲みました。ナパ・ヴァレーらしい芳醇な果実味と力強さを持ち、花の香りが華やかさ、しなやかなタンニンがストラクチャーを与え、きれいな酸が全体をバランスよくまとめています。期待以上の美味しさにちょっと驚きました。

インポーター資料には
Cabernet Sauvignon 92%, Merlot 8% ラザフォード、ヨントヴィル、アトラス・ピーク、スタッグス・リープ、セント・ヘレナの自社畑及び契約畑のブドウを使用。仏産樽で14カ月熟成(新樽40%)

とあります。ちなみに、ダックホーンのナパヴァレー・カベルネ・ソーヴィニヨンは

Cabernet Sauvignon 83%, Merlot 13%, Cabernet Franc 2%, Petit Verdot 2% 仏産樽16ヶ月熟成(新樽50%) ナパ・ヴァレー各地にある自社畑を中心に、長期契約を結ぶ信頼関係のある栽培農家からの葡萄をブレンド。

新樽率や樽熟成の期間は少し違いますが、どちらも自社畑と契約畑のブドウをブレンドしています(もちろんその比率も違うでしょうけど)。ほぼダックホーンのナパカベのエントリー版と呼んでもいいようなワインです。

価格はダックホーンのナパカベが安い店で税込み8000円超なのに対し、デコイ・リミテッドは3000円台の店もあり、ほぼ半額。かなりお買い得なワインです。本格的なカベルネ・ソーヴィニヨンの入門編としてもふさわしい、いいワインです。

ココスです。


しあわせワイン倶楽部です。


フェリシティーです。


デコイとは全く関係ありませんが、もう一つ楽天スーパーセールで激安になっているワインを紹介。
先日、世界一になった最新ヴィンテージを紹介したBV(ボーリュー)のジョルジュ・ド・ラ・トゥール・プライベート・リザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨンの2017年です。今のワインメーカーの最初のヴィンテージ。
米国のセール価格よりもまだ2、3割安い激安価格です。ショップは勝田商店。レアワインの専門店ですね。

Date: 2023/0306 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
しあわせワイン倶楽部でボドキン(Bodkin)の ”ジ・アルビノ” スキンファーメンテッド ソーヴィニヨンブラン ドライクリークヴァレー 2014が特価で出ています。ワイナリーに訪問した際に紹介されて在庫全量を買い取ったことでの特価なのでほかでは買えないワインです。

ボドキンはクリストファー・クリステンセンという人がソーヴィニョン・ブラン専業として立ち上げたマイクロワイナリー。SFクロニクルの注目のワインメーカーに選ばれるなど、米国でも注目されています。

米国で近年ソーヴィニョン・ブランの人気が上がっており、ブドウが争奪戦になっているという話を先日書きましたが、その中でもソーヴィニョン・ブラン専業でやっているのはこことシェアード・ノーツ(元ウェイフェアラーのビビアナ・ゴンザレス・レーヴとピゾーニのジェフ・ピゾーニ夫妻によるワイナリー)くらいしか知りません。シェアード・ノーツがボルドースタイル、ロワールスタイルとトラディショナルなスタイルのソーヴィニョン・ブランとして極めているのと対象的にボドキンはスパークリングやデザートワインも作るなど、ソーヴィニョン・ブランの可能性を広げている点でも注目です。このオレンジワインもそんな一つと言っていいでしょう。

ワイナリーでのリリース価格は42ドルだったそうですが、今回は在庫一括による特価でそれよりもずっと安い税込み3960円を実現しています。


Date: 2023/0304 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ソノマのサンジャコモ・ヴィンヤードの創設者の1人であるアンジェロ・サンジャコモが2月27日、亡くなりました。92歳でした。ご冥福をお祈りします。


サンジャコモ家はソノマで果樹園を営んでいましたが、1960年代にアンジェロが中心となってブドウ栽培を始めました。現在ではカーネロスを中心に1600エーカー(約650ヘクタール)の広大な畑を持っています。ワイナリーのクライアントは80に及び、2016年からは自社のワイナリーも始めています。現在はアンジェロの3人の子供が経営しています。

サンジャコモといえば、ベッドロックのモーガン・トゥエイン・ピーターソンとのエピソードも忘れられません。モーガンもアンジェロの死を悼んで、そのエピソードを投稿しています。

モーガンがまだ5歳のとき、父のジョエル・ピーターソンに「ピノ・ノワールを作りたい」と言ったところ、ジョエルが「どこからブドウを調達するのか」と聞きました。モーガンの返事は「アンジェロ。彼はたくさんピノ・ノワールを作っている」。
それで自転車で5分くらいのところにあるアンジェロの家に行って、質問攻めにしたところ、アンジェロはていねいに一つずつモーガンの質問に答えてくれたそうです。それでピノ・ノワールを買えるかどうかとモーガンが聞いたところ、500kgのブドウが家に届きました。しかも請求書もなく。モーガンはそれでピノ・ノワールを作り、地元のレストランに納入しました。この関係はモーガンが大学に入って家を離れるまで続きました。請求書は一度も来なかったそうです。

彼のような寛大な精神を皆が持てば世界はより良くなるのにとモーガンは書いています。
RIP


先日のセミナーで1番人気だったサンジャコモのピノ・ノワール。生産者はノリア(中村セラーズ)。

Date: 2023/0303 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
楽天の「大人の至高屋」で売っている11本のワインセットがとてもおトクです。11本で税込み2万5990円なので1本2300円程度になりますが、1本で買ったら3000円以上するブレッド&バターのシャルドネや、個人的にお薦めのピーチ-・キャニオンのインクレディブル・レッド、689の上位版「キラー・ドロップ」、デコイのメルロー、個人的注目のワイナリー「ファブリスト」のカベルネ・ソーヴィニヨンなど、私が水準以上と思うワインが数多く入っています。

ただ、11本セットって半端ですよね。ここも理由があって、実は2万2000円以上このショップで購入すると、名ソムリエ「ラリー・ストーン」のかつてのワイナリー「シリタ」のワインが1本プレゼントされて、合わせて12本になるのです。ということは実質1本2100円台でシリタまで入ってしまうということです。

シリタのワインは選べるようですが、個人的にはカベルネ・フランがお薦めと言っておきましょう。熟成ワインなのでボトル差もあるとは思いますが、先日試飲しあ中ではカベルネ・フランが一番好みでした。

一つだけ大事な注意があります。タイトルで書いたように楽天スーパーセールに入る前に買ってください(終わった後でもいいですが)。スーパーセール期間中はシリタのおまけはありません。

Date: 2023/0302 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments

今週、リトライ(Littorai)のテッド・レモンさんとランチをする機会がありました。もちろんリトライのワインは素晴らしかったし、一緒に食べた大手町「今よし」さんの寿司も美味しく、またワインにも合ったのですが、軽い気持ちで投げかけた質問の答えがあまりにも深くて、さすがテッド・レモンさんと思った話だけ、とりあえず書いてみます。

リトライのWebサイトを見ると「Generative Agriculture」というページがあります。「最近は『リジェネレーティブ』というのがちょっとバズワードになっているけど…」といったことが書いてあります。
null
「リジェネレーティブ」については前に「有機栽培の最高峰認証、ナパのニール・ファミリーがナパで初の取得」という記事で取り上げています。土壌を改善して環境を修復するといった目的があり、地面を極力耕さないなどの特徴があります。また、従業員や動物の福祉といったところも審査対象になっているのも興味深いところです。要はサスティナブルのもう一歩先を行く概念という感じで使われています。

それで「ジェネレーティブとリジェネレーティブはどう違うのか?」と軽い気持ちで聞いたところ、「それは簡単ではないので後で答えよう」と後回しにされてしまいました。食事も終わりに近づいたところであらためて「さっきの質問に戻っていいでしょうか」と聞いたところ、「これはとても難しい質問だ」として、10分間くらいも、その心の説明をしてもらうことになったのでした。内容もとても深く、単なる農法というよりは哲学や生きることそのもののような話で、改めてビオディナミの実践で多くの人の模範になっていることを感じさせられました。

で、肝心の質問への答えの内容ですが、正直私の英語力では完全に理解できておりません。英語が分かってもその精神にまでたどり着くのは難しいとも思いました。

ポイントをいくつか挙げると
・リジェネレートという言葉が流行っているが、例えば1700年代の自然を再生できるのか。
・チャレンジが大きすぎて単純に過去に戻ることはできないし、戻れば十分というものではない。
・気候変動はそれ自体が「病気」なのではなく、病気から現れる「症状」である。
・ジェネレーティブ(生成)は、人間が自然との新しい関係を築いていくことにある。
・その中には例えば従業員をちゃんと面倒見るといったこともある(従業員は全員フルタイムで、保険も年金もちゃんとカバーして安全に暮らせるようにしている)
・畑で動物を飼うということもとても大事だ。動物を飼うというのは動物とリレーションシップを持つということ。動物を飼うようになって従業員全員の意識が変わった。
・おおよそこういうことがジェネレーティブ(生成的)なのだ。


と、かいつまむとこんなことだったと理解しております。
ひとしきり話をうかがったところで、ほかの参加者(大橋健一MWも隣の席にいらっしゃいました)と「深いねえ」「スイッチ入れちゃったねえ」と感想を述べあったのでした。
なかなか、普通のセミナーではこういうことまでは聞けないので、貴重な機会となりました。
Date: 2023/0301 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
TwitterやYoutubeを拝見している「Nagi@ドイツでワイン醸造家(@Gensyo)さん / Twitter」さんが一時帰国中にアカデミー・デュ・ヴァンでセミナーを開くというので受講してきました。タイトルは「1日醸造家体験:ワインと添加剤」です。

このセミナーは、ワインに添加することがEUの規定で認められている添加剤について、EU規定量を添加するとどれくらい味が変わるのかを実際に実験して確かめるというもの。添加剤はメタ酒石酸、アラビアガム(アカシア)、アスコルビン酸、二酸化硫黄(SO2)の4種類です。なお、ベースにするワインは市販の酸化防止剤無添加のものでした。

メタ酒石酸は、酒石が析出するのを防ぐための添加剤。日本では使われておらず、代わりにカルボキシメチルセルロース(CMC)が使われることがあるそうです。なお、酒石は析出してもワインの品質が悪くなるわけではないので、どうしても必要な添加剤というわけではありません。最大2年間の効果とか、気温が高いと効果が薄れてしまうとか、なかなか使いにくそうですが、安ワインでは結構使われているようです。

EUにおける添加の上限は1000リットルあたり10gとなっています。これに相当する濃さになるようにグラスにスポイトでワインや添加剤を入れます。

こんなの簡単にわかるだろうと思っていたのですが、意外にもほとんど違いがわかりません。レモン系の香りがちょっと減ったような気がしたのですが、それも気のせいかも。これ、単独で味わってみると名前に「酸」が入っているように、結構酸味を感じます。でも意外なほどワインに入れてしまうと、ちょっと変わったかなあというくらいで、比較しなければわかりません。

2番めはアラビアガム(アカシア)。安ワインでは安定化剤としてしばしば使われており、これの味が嫌いといった投稿も見かけます。金属製の化合物が沈殿するのを防ぐ効果があります。なお、EUでは上限の規制がないそうです。

これ単独で匂いをかぐと「アラビアガム」という名前の通り、ちょっと焼けるようなゴムの匂いがします。ワインに入れたときの味わいも微妙にゴムっぽく変化した感じがあります。ただ、これも予想以上にわからなかったです。

3番めは「アスコルビン酸」、いわゆるビタミンCです。酸化防止剤として使われています。EUでは1リットルあたり250mgまで添加できます。

これはビタミンCですから、単独で味わうとかなりシャープな酸を感じます。ワインにいれたときも少し酸が増えた感覚がありました。一番わかりやすいですが、酸好きな人ならむしろ入れたほうが美味しいと思うケースもありそうです。

最後は二酸化硫黄=SO2です。何かと評判の悪いやつですね。酸化防止剤ですが、それだけでなく酵母を含む微生物の活動を抑えるためにも使われています。その両方の働きをする添加剤はほかにないそうです。ワインに添加するときはガスを直接タンクの中に添加する方法と、「メタカリ」と呼ばれるカリウムと結合させた粉を少量の水などに溶かして加える方法があるそうです。今回は後者の方法を取っています。

なおEUにおける添加上限は1リットルあたり400mg。今回は「遊離SO2」が30mgくらい残るような形で準備いただいています。

ワインに入れる前に水溶液を単体で臭ってみると、刺激臭を感じます。温泉ぽい感じもしましたが、ナギさんには「気のせいでしょう」と一笑に付されてしまいました。ワインに入れてみると、意外なほど違いがわかりません。多めに入れてみるとなるほどなあという感じがしましたが、EU規定ではほぼわかりませんでした。

いずれも添加剤として認められているものですから、それほど味に影響がないのは当然かもしれませんが、もっと簡単にわかるだろうと思っていたので、かなり予想外で面白い結果でした。

セミナー後半ではナギさんのワインを試飲しました。口直しというかなんというか、前半の実験ではベースワインそのものが、それほどおいしいものではなかったので、とにかく美味しかったです(語彙力!)。

来年の一時帰国ではさらにパワーアップした実験を考えているというのでまた楽しみです。
Date: 2023/0228 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments

27回目となるプルミエ・ナパヴァレー・オークションが2月25日に開催され、総額340万ドルの落札額となりました。2022年の270万ドルと比べて2割も上がっています。

Wine-Searcherの記事(Napa Cabs go Big at Auction | Wine-Searcher News & Features)によると、1本あたりの平均落札額は286ドルで、2015年の実績に並ぶ高さだったとのこと。また、いくつかの超高額落札によって平均が上がったのではなく全体の底上げがあったようです。例えば1000ドルを超えたワインは3つだけでしたが、2014年には12、2020年にも5本ありました。500ドルを超えたワインも154ロット中16本しかなかったとのことです。大半のワインが300ドル近辺で落札されたことになります。

プルミエ・ナパヴァレーはプロ向けのオークションで、このオークション専用に作られたワインだけがオークションにかけられます。一般向けのオークションのように旅行や食事などがセットになったロットはありません。

落札額のトップ3は以下のワインでした。
1. Brand Napa Valley See Clone Cabernet Sauvignon 2021, $1667
2. Tor The Centennial Beckstoffer To Kalon Oakville Cabernet Sauvignon 2021, $1333
3. Shafer Vineyards John's Upper Seven Napa Valley Cabernet Sauvignon 2021, $1000

オークションからも、ようやくコロナの時代が終わって新たな時代が始まりつつあることを感じます。
Date: 2023/0227 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
荒天の多いカリフォルニアの今年の冬ですが、2月24日から25日には各地で雪が積もり、ぶどう畑も一面雪に埋もれたところが多数出ました。水曜日頃まで雪や雨、嵐に注意が必要とのことです。カリフォルニアの南北をつなぐインターステート5も積雪で通行止めになり、ロスアンゼルス周辺では洪水で通行止めになっているところもあります。


写真はナパのハウエルマウンテン。Pina Vineyard Managementという畑の管理会社がアップした写真です。


ソノマのナイツヴァレーにあるピーター・マイケルの畑も雪に埋もれています。


カレラです。

サンタ・クルーズ・マウンテンズのリッジも雪です。


温暖なパソ・ロブレスでも、少し積もったようです。


サンタ・バーバラではさすがに降らなかったようですが、山の方は積もっています。

Date: 2023/0225 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
仏ボルドーのワイン流通システム「ラ・プラス・ドゥ・ボルドー」を経由して輸出するワイナリーが少しずつ増えています。ただ、ラ・プラスを使えば成功が約束されているかというとそういうわけではなく、戦略が必要だという記事が出ていました(What does it take for non-Bordeaux wines to succeed on La Place? - The Drinks Business)。

私が把握している、ラ・プラスを使って輸出しているカリフォルニアワインは30種程度。このほかオレゴンのボー・フレールもラ・プラスで出しています。
ラプラス

ワイナリーがラ・プラスを使って輸出するのは、世界中のワインコレクターにリーチできる能力に期待するのと、取引するワインに与えられる名声を利用したいという2つの理由があります。ですが、すべてのワインがうまくいくわけではなく2021年秋にラ・プラスを利用するようになった非ボルドーワイン12種のうち4つはうまくいった(取引価格が上昇した)ものの、4つは変わらず、4つは取引価格が下がってしまったといいます。ちなみに取引価格が下がった4つの中にはオレゴンのボー・フレールと、カリフォルニアのピーター・マイケル・レ・パヴォも含まれています。

うまくいくワインにはいくつかの条件があるようです。例えばボルドーとの親和性。オーパス・ワンのようにボルドー資本が入っているワイナリーは受け入れられやすいようです。希少性も求められるケースがあるようです。例えばペンフォールズは有名なグランジではなくBin 169というクナワラ産のワインをラ・プラスで出しています。シャンパーニュ・フィリポナの単一畑のキュヴェのトリオ、クロ・デ・ゴワス、クロ・デ・ゴワス「ジュスト・ロゼ」、クロ・デ・ゴワスLV(ロング・ヴィエリスマン)といったワインも希少性が売り物のようです。

ワイナリーによるサポートも重要です。チリのチャドウィックとセーニャは10年ほどラ・プラスを使っており、うまく行っています。「私たちは、世界中で最も有名で独占的な高級ワインのテイスティング、見本市、イベントに常に参加しています」と、その戦略を説明しています。こうやってプレゼンスをアピールすることがラ・プラスで取引されたり、その後の輸出先でワインが売られるには必要です。

前にも記事で書きましたが、日本のインポーターにとっては、ラ・プラスで輸入するワインについてマーケティング費用をかけて宣伝するモチベーションはあまりありません。独占的にそのワインを輸入するわけではないので、マーケティング費用を使っても他社を利するだけかもしれないからです。ワイナリー側がそこまでの覚悟を持って取り組んでいるのかどうかは気になるところです。
Date: 2023/0224 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
ナパヴァレーの歴史を学ぶときに必ず登場するのがボーリュー・ヴィンヤード(Beaulieu Vineyards)、略してBV。特にロシアから1938年にワインメーカーとしてやってきたアンドレ・チェリチェフは1960年代から70年代のカリフォルニアワインの勃興期に、ナパのほとんどのワインメーカーにとってメンター的存在として、その成長を支えました。

2000年ころまではナパでもトップクラスのワイナリーとして君臨してきましたが、その後は決して落ちぶれたわけではないのですが、多くの新興ワイナリーの影に隠れて「昔の名前で出ています」的なあまり目立たないワイナリーになってしまっていました。

この状態を変えたのが2017年にワインメーカーに就任したトレヴァー・ダーリング。約120年のBVの歴史の中でわずか5人目のワインメーカーです。2018年にはフラッグシップのジョルジュ・ド・ラ・トゥール・プライベート・リザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨンがヴィナスで98点を取るなど早くも頭角を表していましたが、2019年の同ワインはジェームズ・サックリングが100点を付け、年間のトップワインとしました。さらにはナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨン2019がワインスペクテーターの2022年のコスパワイン1位を取るなど急速に注目を集める存在になっています。

2019年のジョルジュ・ド・ラ・トゥール・プライベート・リザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨンは一部に樽発酵を使うというのがユニークなところ。赤ワインで樽発酵はかなり珍しいと思います。プティ・ヴェルドが9%入るにも珍しいです。後の91%はカベルネ・ソーヴィニヨン。

このレベルのワインとしては2万円台で買えるのも嬉しいところ。

ウメムラです。


柳屋です。


Date: 2023/0221 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパヴァレー・ヴィントナーズが日本ソムリエ協会の協力で開催したNAPA VALLEY WINE EXPERTの2次試験が行われました。エデュケーター部門で2次試験に進んでいたのですが、幸いにもNAPA VALLEY WINE BEST EDUCATOR 2023に選ばれました。これから2年間、ナパヴァレー・ヴィントナーズの教育・普及活動に携わります(本業はそのままです、念のため)。



2次試験は午前11時から午後3時半ころまでとかなりの長丁場でブラインド・テイスティングや面談、ディスカッション、筆記試験、ペアリング・ワークと様々な課題をこなしました。なかなかハードでした。

ソムリエ部門ではパレスホテル東京の山田琢馬さんがNAPA VALLEY WINE BEST SOMMELIER AMBASSADOR 2023に選ばれました。山田さんはペアリング・ワーク(課題のワインに合うカナッペを用意されている数十の食材や調味料を使い、さらに与えられたテーマに合う形で作る)でも1位を取って見事2冠となりました。

また、1次試験の成績最優秀者としてエデュケーター部門に参加されていた日原靖之さんが表彰されました。


せっかくだからナパのスパークリングで乾杯したいと思い、会場からほど近い柳屋でドメーヌ・カーネロスのBrutを購入、副賞としていただいたマグナムボトルのワインや額入りの賞状とえっちらおっちら持ち帰りました。

このサイトをご覧いただいた皆様、試飲会やセミナーなどで貴重な経験をいつもいただくインポーターの方々、セミナーを受講していただいた方々、SNSでお相手していただいている方々、皆様のおかげで取れたものだと思います。引き続きよろしくお願いします。
Date: 2023/0220 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ワイン評論家によるナパの2020年のレポートが相次いで発表されています。発表された中で購読しているのはVinousだけなので、Vinousのアントニオ・ガッローニによる評価と、短いレポートを公開しているジェームズ・サックリングの記事(Finding Clairity in Napa Valley's 2020 Vintage)を参考に、2020年のナパ(のカベルネ・ソーヴィニヨンやそのブレンド)を評論家がどう見ているかを簡単にまとめたいと思います。
Andy Ericsson
写真はナパ・ヴァレー・ヴィントナーズの会長に就任したアンディ・エリクソン

先日、オーパス・ワンが2020年を発売しないという記事を書きました。2020年9月27日に発生した「グラス・ファイアー」という山火事の影響で、多くのブドウを収穫できなかったのが理由です。

コルギンやシェーファーなど、その前から2020年を作らないと公表していたワイナリーも少なからずあります。また、今回のレポートを読むと、ワインは作ったけど、販売を見送るという判断をしたワイナリーも結構あるようです。例えばクインテッサは昨年私が聞いたときには2020年のワインも作っているという話でしたが、今回のレポートでは「火事の影響で販売しない」だけ書かれていました。先日紹介した新生ベラ・オークスのワインメーカーであるナイジェル・キンズマンも、いくつかのワインを醸造したが販売できるクオリティではないと判断した(おそらくこれは自身のキンズマン・イーズについて語ったものです)としています。

特に、ナパの東側、ヴァカ山脈側は煙の被害が大きく、プリチャード・ヒルやスタッグス・リープの2020年のカベルネはほぼゼロと言ってもいいくらいだとのこと。ナパ全体では少なくとも数百のブランドが2020年を販売しないことにしたようです。

2021年2月に発表されたクラッシュ・レポートによると2020年のナパのカベルネ・ソーヴィニヨンの収穫は前年より43%も減っていました。醸造しても販売を行わないことにしたものがかなりありそうなことを考えると半分以下に減っていることも考えられるかもしれません。

一方、2020年を売ることを選んだワイナリーももちろんたくさんあるわけです。有名どころでいうとスクリーミング・イーグルやハーラン・エステートは2020年を発売します。

特に興味深いのがハーラン・エステートの動きです。ハーラン・エステートが2020年のワインを作った、あるいは作れたのは収穫時期を大幅に前倒ししたからでした。ナパのカベルネ・ソーヴィニヨンは9月中旬くらいから10月末くらいの間に収穫するのが普通です。オーパス・ワンなど1カ月以上かけて収穫を行いますし、いいワイナリーほど、収穫期間を長く持つ傾向があります。

ハーランは2017年(これも火事の影響が大きかった年でした)以降、収穫時期を早める傾向が出ており8月から収穫を始めることもあるそうです。2020年は火事のために通常よりもさらに早く収穫したわけですが、結果としてワインによりフレッシュさが出たことに満足して2021年以降も早い時期での収穫を行っているそうです。

ハーラン、ボンド、プロモントリーのハーラン・ファミリーのジェームズ・サックリングによる2020年の評価は「ほとんどが99か98点」だったとのこと。ヴィナスでの評価は例年と比べると低いようですが、これがどのように熟成して将来の評価がどうなるかは、現時点ではだれもわからないというのが本音のようです。ヴィナスでの評価が将来上ブレしたり、逆に下ったりする可能性もないとは言えません。

他の2020年を発売する決断をしたワイナリーの中にも、収穫時期を早めにしたところはかなりありそうです。逆に、早めに収穫したから火事の被害を少なく抑えられたといった方がいいのかもしれません。

ヴィナスでの2020年のワインの評価は全体として例年より低めであることは否めないと思います。ワインのフレッシュなスタイルが低めの評価につながったという面もあるかもしれません。

思い出すのは1998年のヴィンテージで、大豊作でクオリティも高いとされた97年に対し、98年はエルニーニョの影響で涼しく雨も多く、ナパでは珍しくブドウが完熟しない年でした。評論家の評価もかなり低く抑えられましたが、現在ではむしろ98年の方が97年よりも熟成すると美味しいという評価もあります。2020年のフレッシュなスタイルが将来どう評価されるかはわからないというのが正直なところで、98年のように評価が変わる可能性もあるでしょう。

いろいろ書きましたが、まとめると
・2020年のナパのカベルネは、おそらく半分くらいに減っている
・作られたカベルネは、やや軽いスタイルのものが多いかもしれない
・熟成したときにこのヴィンテージがどう評価されるかは神のみぞ知る
というのが現在の私の見方です。まだ実際に自分で飲んでいるわけではないので、あくまで評論家の評価を参考にしてということですが。
Date: 2023/0217 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
柳屋でハロウ・リッジのプティ・シラー2015が1000円台で出ています。

プティ・シラーは最近気になっている品種の一つ。カリフォルニア「固有」の品種というと、「ジンファンデル」と考えるのが一般的だと思いますし、実際「ヘリテージ・グレープ」といった言われ方もします。ただ、ジンファンデルはイタリアのプリミティーボと同一品種であることが分かっていますから、カリフォルニアでないと飲めない品種かというと、そんなことはないですよね。もちろん、カリフォルニアの古木のジンファンデルやフィールド・ブレンドのワインなどはイタリアのプリミティーボとだいぶ違うオリジナルのワインといっていいと思っていますが。

一方、プティ・シラーはシラーとプルールサンという品種のかけ合わせで、1880年代に南仏のデュリフ博士が作った品種であることが判明しています。品種の正式名はデュリフ(Durif)です。ちなみに米国でのつづりはPetite Sirahで、プティトゥ・シラーと発音しますが、日本ではプティ・シラーと書くことが多くなっています。Sirahの綴はSyrahともShirazとも違うのでややこしいですね。

さて、この品種が米国に渡ったのは1884年と開発されてすぐのことですが、本国のフランスではほとんど造られていない品種となっています。オーストラリアではそこそこの量が植えられているようですが、ジンファンデル以上に米国以外ではほとんど造られていない品種となっています。一方、知名度ということでは、ジンファンデルはカリフォルニアワインファンでなくても聞いたことはある人が多いと思いますが、プティ・シラーはほとんど知られていません。そういう意味ではもっと知られてほしいと思っています。

余談ですが、米国におけるプティ・シラーの普及団体は「PS I love you」という名前です。自分的には「PS I love you」といえばビートルズなのですが、宮本浩次さんなども同じタイトルの曲を出しているようですね。

前置きが長くなりました。このハロウ・リッジというワイナリーについては全然知らなかったのですが、Two Buck Chuckなどと同じブロンコ・ワインのグループが作っているワインです。コスパワインでは定評のあるグループです。日本だとカルディで売っている「レッドウッド」を作っているところというとわかりやすいでしょうか。

プティ・シラーはとても濃厚な味わいが特徴で、強固なタンニンを持っています。そのためジンファンデルなどに少量ブレンドする形で使われるのが主流です(ジンファンデルはそれ自体は色づきはあまりよくないので、プティ・シラーを入れることでワインの色を濃くする狙いがあります)。

というわけで米国でもメジャーとはいえない品種であり、プティ・シラー単体で飲みやすいワインというとなかなか見つからない、しかも若いヴィンテージ以外のプティ・シラーはそもそもほとんど見つからないというのが現状です。

そういう意味でもこのワイン、1000円台でちょっと熟成した2015年のワインというのはなかなか貴重な位置付けです。

柳屋のセールでは2022年の桜・アワードで「ダイヤモンド・トロフィ」を受賞したスミス・アンド・フックの「プロプライエタリー・レッド」(プティ・シラーが37%で一番多い)もあるので、飲み比べてみるのもいいでしょう。

あるいはオッドロット(モントレーのコスパ王シャイドのブランドの一つです)のレッド・ブレンドもプティ・シラーを使って、実においしく、コスパも高く作っているので、そちらとの比較もいいと思います。




Date: 2023/0216 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
Comments
いつもお世話になっているしあわせワイン倶楽部の木之下夫妻と、しあわせワイン倶楽部に寄稿している山本香奈さん、私で食事に行きました。かれこれ2年近く寄稿していますが、こうやって4人で会うのは初めてです。

スパークリングは私のリクエストで、飲んだことがなかったウルトラマリンを持ってきていただきました。しかもロゼ。ヴィンテージは2011年です。

ロゼのスパークリングとしても、かなり濃い色です。香りはいちごジャムのよう。甘やかで蠱惑的な香りが広がります。泡の出方も素晴らしい。飲んでみると、意外と甘やかさは感じず、むしろスッキリと後味に爽やかな余韻が残るほど。これは素晴らしいですね。スパークリング・ワインにはそれほど思い入れを持っていない方なのですが、これは本当に魅力的なワインでした。そして食事とのペアという点でもオールマイティ感があります。中華の前菜や北京ダックにもしっかりと合ってきました。

ちなみにVinousによるとドサージュは6g/リットルだそうです。香奈さんによるとドサージュの甘みは余韻の最後まで甘さとして残るそうですが、果実の甘味はそれがないそうです。たしかにこのウルトラマリンも香りの甘やかさに対して余韻はとてもすっきりしていました。これもまた勉強になりました。


デゴルジュマンは2015年。同じ2011年のスパークリングでももっと最近にデゴルジュマンしたものもあるようです。。


コングスガードのセカンドワイン「キングス・ファーム」のシャルドネ2011年。キングス・ファームは赤しか飲んだことはなく白は初めてでした。ややまったり系のシャルドネで、コングスガードっぽさは意外と感じられなかったですが、いいシャルドネでした。


私が持っていったのはブリュワー・クリフトンのピノ・ノワール「メルヴィル」2001。自宅セラーの湿気が多いためラベルがむちゃくちゃ年季入っています。

これもきれいに熟成していていいピノ・ノワールでした。アルコール度数が15.6%もあるのですが、それを感じさせないバランスの良さ。美味しくてずっと飲んでいたいピノ・ノワール。


最後はナパのダン1994。ナパ・ヴァレーものですが、大部分がハウエル・マウンテンのブドウです。最近はちょっと作りが変わってきているという話もありますが、このダンも良かったです。バカ山脈のカベルネらしい酸の豊かさと果実味がまだ感じられます。

本当に素晴らしいワインばかりで堪能しました。
Date: 2023/0214 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
アイコニックワイン・ジャパンの試飲会から美味しかったワイン、コスパの高いワインを紹介します。


フィールド・レコーディングスはパソ・ロブレスなどセントラル・コーストの様々な畑からコスパの高いワインを作っているナチュラル系の生産者。写真の「サラダ・デイズ」はシャルドネ、シュナン・ブラン、コロンバールからなるペット・ナットタイプのスパークリング。アルコール度数は9.9%とかなり低くなっています。さっぱりとしてフレッシュな味わいはサラダの名前がぴったりです。希望小売価格2800円(税抜き、以下同)。


ナパでコスパの高いワインを作るカモミのソーヴィニヨン・ブラン(2700円)。フレッシュでほの甘さがあります。


モントレーのモーガンの「ダブルLヴィンヤード」リースリング(4400円)。いやこれ、むちゃうまです。値段はちょっと高いですが。オフドライくらいの甘み。アルコール度数11%。ダブルLはモントレー地区で最初に有機栽培の認証を得た畑。


グラウンドワークのグルナッシュ・ブラン(3300円)。これもすごくいいです。酸がとてもきれいで旨味が乗っています。グルナッシュ・ブランというややマイナーな品種ですが侮れません。是非試してほしいワイン。


老舗ワイナリー「ファイアーストーン」のシャルドネ。バランスよくコスパ抜群です。2200円。


ジアポーザのシャルドネ(3200円)。これも非常にバランスよく美味しいです。


フィールド・レコーディングスの「スキンズ」(3200円)は米国で一番売れているオレンジワイン。オレンジワインというとファンキーな味わいのものを想像するかもしれませんが、これはとてもきれいな作りで旨味があります。非常にいいです。


サンタ・バーバラの銘醸畑ビエン・ナシードのオーナーによる「バラード・レーン」のピノ・ノワール。フルボディでパワフル系のピノ・ノワールなので好き嫌いは分かれるかもしれませんが、これはこれで魅力的です。2400円は格安。


ストルプマンがカーボニック・マセレーション(ボージョレ・ヌーヴォーの発酵で使われる方法)で作るフレッシュな味わいのワイン3つです。一番右の「ラブ・ユー・バンチ」はサンジョベーゼ、中央の「GGT(Grenache Gamay Trousseau)」はその名の通り3種のブドウのブレンド、左の「クランチー・ロースティ・レインボー」はシラー中心でヴィオニエが少し入っています。いずれも4400円。フレッシュさはラブ・ユー・バンチ、こくうまはGGT、パワフルさではクランチー・ロースティ・レインボーがいいです。


グラウンドワークのムールヴェードル。4000円は高く感じるかもしれませんが、実際にはかなりコスパの高いワイン。それだけの品質です。ミネラル感と味わいの深みがすばらしい。


ファブリストはフィールド・レコーディングスとグラウンドワークのオーナーがタッグを組んで作るブランド。どれもフレッシュな味わいで今どきなタイプですが、その中でもこのジンファンデルは素晴らしいです。ジンファンデルの概念を覆すようなワイン。3200円。


大人気の「689」のワイナリーが作るレッドブレンド「キラードロップ」(4200円)。カリフォルニアワインらしい果実味の豊かさに複雑さもあって文句なく美味しいワイン。


注目のワイナリー「レッジ」のシラーブレンド「MCAキュヴェ」。パワフルでフルボディのシラー。とてもいいです。7500円は格安。


グラウンドワークのシラー(4000円)。落ち着いた味わいで美味しいです。


ストルプマンのカーボニック・マセレーションによるシラー「パラマリア」。前に紹介したラブ・ユー・バンチなどはフレッシュでいかにも今風の味わいですが、こちらは果実味のきれいさはありますが、言われないとカーボニック・マセレーションだとは気が付かないかもしれません。よくできたシラー(4200円)。


カモミのメルロー(3100円)。100%ナパ・ヴァレーのブドウを使用。柔らかくメルローの良さが出たワイン。とてもいいです。


ジアポーザのカベルネ・ソーヴィニヨン(3200円)。バランスよくコスパ高いです。


ファブリストのカベルネ・ソーヴィニヨン。すばらしくエレガントで味わいに深みもあります(3600円)。


ナパの開拓が始まった年にちなんだ「Napa 1847」のカベルネ・ソーヴィニヨン。オークヴィルらしい果実の濃厚さと深みを持つ素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨン。5500円。


上の1847がオークヴィルなのに対し、こちらの「ラザフォード・ロード」はナパのラザフォードのブドウを使ったカベルネ・ソーヴィニヨン。「ラザフォード・ダスト」と言われるようなラザフォードのちょっと土臭いような味わい(それが何なのかは常に議論になるところではありますが)を感じられるワイン。洗練のオークヴィルに対して、無骨なラザフォード。どちらもいいワインです。




Date: 2023/0212 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
「クラッシュ・レポート」と呼ばれるカリフォルニアのブドウ収穫量や価格のレポートの暫定版が発表されました。2022年の収穫量は335 万トン。2021年の360 万トンから約7% 減少し、2011年以降で最少だった2020年より約1.5% 減少しています。昨年8月時点の予想では350万トンであり、それを少し下回りました。


過去のレポート
カリフォルニアのブドウ収穫、2021年は前年より増加
カリフォルニアのブドウ収穫、2020年は大幅減少し過去10年で最少
カリフォルニアワイン、供給過剰で2019年は収穫量減少
2018年のカリフォルニアのワイン用ブドウ収穫量は過去最高
2017年の収穫量は2016年から微増
2年ぶりに400万トンを超えた2016年の収穫

赤ワインの品種は、2021 年から7.2% 減の 188万5875トンで、白ワインの品種は、2021 年から8.6%減少し、合計 146万3787トンでした。


赤ワイン用ブドウの平均価格は1,150.58ドルで、2021年から7.2%上昇しました。白ワイン用ブドウの平均価格は682.07ドルで、2021年から1%上昇しました。2022 年の全品種の平均価格は910.80 ドルで、2021年から 5.7% 上昇しました。

ナパではカベルネ・ソーヴィニヨンの平均価格は、1トンあたり8900ドルを超えました。収穫量も増えています。パソ・ロブレスのカベルネ・ソーヴィニヨンの価格も上昇し、1トンあたり平均212 ドル上がって1800ドルに達しました。

セントラル バレーの収穫量は6年連続で減少しており、かつて約 210 万トンのワイン用ブドウを生産していましたが、現在は 150 万トン近くになっています。

2022年は干ばつの影響や春先の霜の影響で収穫量が減ったのが大きな理由ですが、カリフォルニアワイン業界全体の高価格帯へのシフトも長期的には影響しているように思えます。


品種別の収穫量では、ついにカベルネ・ソーヴィニヨンがシャルドネを抜いて1位になりました。ピノ・ノワールは0.7ポイント下がって、収穫量ではフレンチ・コロンバールに抜かれました。

このほか、カベルネ・ソーヴィニヨンの価格は州全体で9%上昇し、ソーヴィニヨン・ブランの価格は州全体で8.8%上昇しました。ソノマの価格は6.89%上昇し、ナパの全体的な価格は12.5%上昇しました。ソノマでは、ソーヴィニヨン・ブランが11.6%上昇しました。カベルネはソノマで8.8%上昇しました。ナパのカベルネの価格は平均で 11.6% 上昇し、8947 ドルに達しました。ナパで一番高価だったのはカベルネ・フランで1万830ドルでした。

カリフォルニアワインの需要は2020年からやや停滞しており、収穫量の少なさは在庫調節の意味合いも含んでいると考えられています。
Date: 2023/0211 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
クインテッサの2019年が柳屋で格安になっています。

参考:クインテッサ2019は傑作2018を超える!? « カリフォルニアワインのお勝手口

クインテッサは2017年からリリース時に試飲していますが、2018年2019年は甲乙つけがたい大傑作。実際ジェームズ・サックリングはどちらも99点を付けています。ワイン・エンスージアストでは2019年が100点と、同誌では6本目の満点となりました。

もちろん。2018、2019ともによいヴィンテージというのもありますが、ワイナリー自身の努力も見逃せません。今のGMのロドリゴ・ソト氏になってから、26区画ある土壌の特徴や栽培への影響をよく調べて灌漑の方法を変えたり、剪定の専門家を読んで剪定を変えたりと、毎年改善を繰り返しています。

この図でもわかるように、クインテッサの畑は斜面の向きもさまざまで土壌も違うナパの畑の中でも多様性が高い畑であり、それを最大限に生かそうとしているのがよくわかります。

クインテッサのワインのスタイルはエレガントでクラシック。もちろんナパらしい果実味はありますが、タンニンもきめ細かいですがかなりしっかりしていますし、スパイスの風味やきれいな酸もあり、ストラクチャーのあるワインです。オーパス・ワンにも通じるところはありますが、よりエレガントと言っていいでしょう。

ほかに似たスタイルというとアイズリーが思い浮かびます。ビオディナミを実践しているという点でもアイズリーと共通しています。ただ、クインテッサは開墾以来オーガニックですから一度も農薬を使っていないという点ではアイズリーを上回りますし、価格はアイズリーの半額程度です。オーパス・ワンとくらべても2万円以上安いです。このクオリティとスタイルで3万円台は貴重なワインです。

なお、クインテッサの創設者・オーナーは、チリのコンチャ・イ・トロの元CEO。チリ出身のこだわりとして毎年少しですがカルメネールをブレンドしているのも面白いところです。


Date: 2023/0210 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
SFクロニクルにカベルネ・フランの記事が掲載されていました。
ナパのトレンディな人気ワイナリーであるアッシュ&ダイヤモンド(Ashes and Diamonds)によると、調達するカベルネ・フランの価格はこの2年間で30%もねあげされたとのこと。ワインの価格も75ドルから80ドルに上げざるを得なくなりましたが、それでも完売を続けているそうです。

カベルネ・フランは遺伝的にはカベルネ・ソーヴィニヨンの親になりますが、育てるのが難しいブドウでもあります。ナパのブドウ価格でいうと、実はカベルネ・ソーヴィニヨンよりも平均価格は高く、一番高額で取引されるブドウになっています。

ナパのラング&リード(Lang and Reed)は1993年の設立時に、他のワイナリーと違うことをやりたいと思い、カベルネ・フランをメインに据えることにしました。今でも45ドルから250ドルまでのカベルネ・フランを作っており、カベルネ・フランのトッププロデューサーと目されています。

ナパでカベルネ・フランを最初に使ったのはジョセフ・フェルプスのインシグニアだったそうです。ボルドー系ブレンドの走りであり、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体とするものの、カベルネ・フランなど他のボルドー系品種も加わっていました。とはいえ、少しだけブレンドするというのがほとんどでしたが、1990年代に大ヒットしたダラ・ヴァレのマヤは4割近くカベルネ・フランを入れるという画期的なワインでした。

カベルネ・フランは気難しいブドウであり、正しい土壌に植わっていないとピーマン香の元になる「ピラジン」という物質も増えて青臭さが増してしまいます。そういった面からもなかなか量が増えないといった要素があるようです。

このほか著名ワインメーカーのアンディ・エリクソンもカベルネ・フランに力を入れている一人。自身のファヴィア(Favia)や、コンサルティングをしているアリエッタでカベルネ・フラン主体のワインを作っています。コンステレーション・ブランズ傘下のト・カロン・ヴィンヤード・カンパニーでもカベルネ・フランの比率を高めた「エリザズ・キュヴェ」をリリースしました。

自然派プロデューサーであるブロック・セラーズ、Lo-Fi、フィールド・レコーディングスもカベルネ・フラン人気の高まりに貢献しています。フィールド・レコーディングスはラベルに「Franc」と入れたワインを作っており、ブロック・セラーズはあえてカベルネ・フランという言葉を避けて「KouKou」という名前のワインで売っています。

それなりに歴史と実績を持つカベルネ・フランですが、まだ適地や栽培方など、まだ進行形な部分も多々あります。これからのカベルネ・フランの成長にますます期待がかかります。



Date: 2023/0208 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
しあわせワイン倶楽部でピーチー・キャニオンのインクレディブル・レッドが税抜きだと1000円台という特価になっています。輸入元の希望小売価格から27%引き。

ピーチー・キャニオンはパソ・ロブレスの老舗ワイナリー。パソ・ロブレスの秀逸なワインはハイウェイ101より西側で作られると言われていますが、ピーチー・キャニオンの自社畑は101より西のウィロウ・クリーク、 アデレーダ、 テンプルトン・ギャップの3つのAVAにすべて含まれています。このインクレディブル・レッドも大半のブドウが自社畑。ピーチー・キャニオンの中ではエントリー的なワインですが、作りに手抜きはありません。

2019ヴィンテージはジンファンデル75%、プティ・シラー13%、アリカンテ・ブシェ9%、クーノワーズ3%。カシスやブラックベリーの黒果実の風味にラズベリーやレッド・チェリーといった赤果実も加わります。スパイシーさもありやや濃い系の美味しいワインです。酸もきれいでバランスよくできています。

昨今、このレベルでこの価格はありがたいです。

Date: 2023/0206 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
ベラ・オークス(Bella Oaks)というと多くの人はハイツ・セラー(Heitz Cellar)のワインを思い浮かべると思いますが、ハイツが作っていたのは2009年まで。2010年にアート・ディレクターとして知られていたスザンヌ・ディール・ブースがこの畑を購入しました。

その後、ブースはデイビッド・エイブリューの指導で畑を4年かけて植え替えました。このころのブドウはスタッグリン(Staglin)に売られ、ブース・ベラ・オークスという畑名でボトル詰めされていました。

2015年にはブースは隣接する畑(以前はベラ・オークスの一部だった)を買収して、そこも植え替えをしています。

ブースは独立したワイナリーとしてベラ・オークスを再構築することにし、新進気鋭のワインメーカー、ナイジェル・キンズマンとコンサルティング・ワインメーカーのミシェル・ロランを雇いました。

2018年がそのデビュー・ヴィンテージとなりますが、ワイン・アドヴォケイトで当時担当していたリサ・ペロッティ・ブラウンは「顎が落ちる(jaw dropping)」と98+の高得点を献上、ヴィナスのアントニオ・ガッローニも「たまげた(mind blowing)」として98点を付けています。

日本にももちろん初上陸ですが、米国の価格の300ドルと比べたらほぼ為替プラスアルファくらいでお買い得です。
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

ベラ・オークス [2018]750ml (赤ワイン)
価格:43780円(税込、送料別) (2023/2/6時点)



Date: 2023/0204 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
Comments
インポーターWine Peopleの千葉さんが東京に来てワイン会を開くというので参加してきました。千葉さんがカリフォルニアで買ったセゲシオ(Seghesio)のバックヴィンテージを飲みましょうというのがメインです。



前哨戦として、シャルドネ2本。チャールズハインツのレイチェル シャルドネ2016とマルティネリのスリーシスターズ シャルドネ2008です。マルティネリは私の持参。

チャールズハインツはカリフォルニアで今一番手に入らないスパークリングワイン「ウルトラマリン」のブドウなどを提供している畑。ソノマコーストの冷涼な地域にあります。2016年と、まだそんなに年数は経っていませんが、意外に熟成感が出ています。
マルティネリのスリーシスターズはマーカッシンにもブドウを提供していた畑。2008年のワインですが、ちょっとピークを超えていたかもしれません。マルティネリらしいぎっしりとした果実味は残っていますが、酸がもっとほしいです。こういうワインは若いうちに飲んだ方がいいような気がしました。



白の後2本はなんとSine Qua Non。2011年のThe Momentと2010年のThe Monkeyです。ブルゴーニュ型のボトルの方がThe Monkey、いかり肩のボトルがThe Momentです。The Monkeyはルーサンヌ58%にヴィオニエ23%、シャルドネ19%。The Momentはルーサンヌ57%、プティマンサンが19%、シャルドネ17%、ヴィオニエ7%。

The Monkeyはルーサンヌの柔らかさにヴィオニエの華やかさがあります。The Momentはルーサンヌのまったりした感じに、プティマンサン由来でしょうか、酸がす~っと入ってきます。The Momentはすごく美味しい。やっぱり酸が通っているかどうかが熟成したときのバランスに大きく効いてくる感じがします。

さて、ジンファンデルは
2009年 ソノマ・カウンティ
2009年 オールド・ヴァインズ
2009年 コルティナ(Cortina) ドライ・クリーク・ヴァレー
2006年 ホーム・ランチ アレキサンダー・ヴァレー
2009年 サン・ロレンゾ ブロック8 アレキサンダー・ヴァレー
というラインアップ。セゲシオはドライ・クリーク・ヴァレーとアレキサンダー・ヴァレーに多くの古木の畑を持っていて、今回のワインも自社畑のブドウを使ったものがメインです。

ソノマ・カウンティとオールド・ヴァインズはどちらもまだかなりフレッシュ感があって驚きました。おそらくリリースしたときはもっと甘やかさがあったのではないかと思いますが、落ち着いた雰囲気になり、美味しいです。オールド・ヴァインズの方が、やはり複雑さがあっていいです。この2つはセゲシオのジンファンデルの中では比較的エントリーになると思いますが、それでもこれだけの実力があるのはさすがです。最近は輸入がなくなってしまって残念ですが、「いいジンファンデル」のお手本的なワイナリーなので、機会があったら飲んでみることをお薦めします。

コルティナは、個人的にはこの日のベスト。ふくよかさと複雑さ、バランスよく深みもあります。ロバート・パーカーはかつて「ジンファンデルは熟成しない」と言って、リッジのポール・ドレイパーがそれに反論して熟成したリッジを飲ませたという話もありましたが、このコルティナを飲んでもやはりジンファンデルもちゃんと熟成すると思います。

最後はアレキサンダー・ヴァレーから。ホームランチは1895年に植えられたセゲシオの中でも古い畑です。コルティナのダークなフルーツの感じに対して、こちらはもっとレッドベリーを感じます。サン・ロレンゾ ブロック8も味わいの系統はよく似ていますが、個人的にはこちらが少し上。あくまで相対的にはということであり、どちらもとても美味しかったです。

最近思っているのは、美味しいジンファンデルが知られていないなあということ。どうしても安いジンファンデルの甘いイメージを持っている人が多いようで…もっといいジンファンデルが知られてほしいと思います。

ところで、この日のワイン会のもう1つのハイライトはマジック。
テーブルにマジシャンの方が来て、カードマジックなどを披露してくれたのですが、間近で見ているのに全くわかりませんでした。特にワイン会メンバーの手の中に入れたカード一式がプラスチックの板に変わっていたのは驚きました。

かなり有名な方だったようです。
ビッグワールド|魔耶一星
Date: 2023/0203 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ヘス・コレクション(Hess Collection、現ヘス・パーソン・エステート=Hess Persson Estates)の創設者であるドナルド・ヘスが1月30日、86歳で亡くなりました。



ドナルド・ヘスはスイスの生まれ、1970年代にナパ・ヴァレーに来ました。1983年にワイナリーを創設、1989年にマウント・ヴィーダーにテイスティングルームや美術館のある建物を作りました。美術館はドナルドの元々の趣味であったアート作品を飾っており、ナパの観光名所の1つになっています。

1990年代には南米にわたり、アルゼンチンでBodega Coloméというワイナリーの復興に尽力しました。

サスティナブルの先駆者でもあり、1990年代初めにナパで最初のサスティナブルに関する農業シンポジウムを開催したり、サスティナブルの認証制度確立に貢献しました。

ご冥福をお祈りします。
Date: 2023/0201 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
SFクロニクルに「なぜ、ソノマの最高のワイナリーの1つがワインを作ったことのないワインメーカーを雇ったのか」という記事が出ていました。どういうことかというと、ハーシュ・ヴィンヤーズのオーナーであるジャスミン・ハーシュが自らワインメーカーになったという話でした。2019年のヴィンテージからというからもう3ヴィンテージ作っています。

ハーシュはこれまでロス・コブを含め、優秀なワインメーカーを雇ってきましたが、5年くらいでやめてしまうことが続いていたそうです。2018年に前のワインメーカーがやめた後、ほかのワインメーカーを探すのをやめてジャスミン自身がワインメーカーになる決意をしました。

その理由はハーシュ・ヴィンヤーズの畑の複雑さです。ハーシュのプロパティは1000エーカー(約4平方キロ)もありますが、うちブドウが植わっているのはわずか72エーカー。面積は少ないですが、サンアンドレアス断層の上にあるため、土壌タイプは多く、これを60区画に分けて管理しています。それぞれの区画の特徴を学ぶのが大変で、数年でワインメーカーが交代してしまうのだと、やっとわかってきたくらいで代わってしまうような形になってしまいます。そこで彼女自身がワインを作ることにしたわけです。

とはいえ、ワインメーカーとしては1から勉強です。幸いなことに、ジャスミン・ハーシュのパートナーは、SFクロニクルのワインメーカー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれたことがあるクルーズワインのマイケル・クルーズであり、彼が教え込む形で徐々に勉強していったそうです。

彼女がワインメーカーになってから2つの新しいワインを始めました。1つは「Maritime」というピノ・ノワール。かつてWilliams-Selyemが使っていたブロックのワインだそうです。もう1つはロゼ。プロバンス風の薄いロゼではなく、濃厚で風味豊かなタイプだとのこと。

彼女のワイン、期待したいものです。



Date: 2023/0131 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
Twitterで教えてもらったのですが、エイブリュー・ヴィンヤーズ(Abreu Vineyards)のワイン「トレヴィロス(Thorevilos)」の畑が別の畑になっているそうです。

トレヴィロスはセント・ヘレナの東側の丘(セント・ヘレナAVA圏外)の畑。元々デイヴィッド・エイブリューとリック・フォーマンという2人の著名ヴィントナーが長期契約で借りていた畑です。この長期契約が切れたところ、エイブリューは契約を更新する代わりに、その隣に新たな畑を作って、そこをトレヴィロスという名前にしてしまったとのこと。Vinousのレビューによると2019年のワインからそちらのブドウを使っているようです。名前の権利はエイブリューが持っているということなのでしょうが、ちょっと驚きました。エイブリューが新しく作った畑は以前アーンズ(Arns)というワイナリーが持っていたところだとのことです。Vinousによるセント・ヘレナの畑マップにも載っていないので、よくわかりませんが。

元のトレヴィロスの畑はエコトーン(Ecotone)という名前に変えて、エイブリュー以外のワイナリーにブドウを売るようになりました。エコトーンのブドウはアチェンド(Accendo、アラウホ家がアイズリーを売却した後に始めたワイナリー)、ヴァイス・ヴァーサ(Vice Versa)といった高級ワインを作るワイナリーが購入しているようです。Twitter投稿にある「001 Vintners」は新しいワイナリーで、マクドナルド・ヴィンヤーズのグリーム・マクドナルドがワインメーカーを務めます。
Date: 2023/0130 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
しあわせワイン倶楽部でロバート・モンダヴィのオークヴィル カベルネ・ソーヴィニヨン 2018が税抜きだったら9900円と1万円を切る安値になっています。2019年の同ワインはワイン・スペクテーターで6位を取りましたが、その評価の94点に対して、これも93点とかなり高い評価です。

そして、何よりもポイントは、ブドウのほとんどはト・カロン・ヴィンヤードだということです。2022年のワイン・スペクテーター ワインオブ・ザ・イヤーに輝いたダブルダイヤモンド2019はモンダヴィのト・カロンとベクストファー・ト・カロンという2つのト・カロンのブレンドという唯一無二の属性が最大の魅力でしたが、これのほぼト・カロンというのも価格を考えたらすごいです。

味わい的には、ダブルダイヤモンドは柔らかく芳醇な味わい。一方、モンダヴィはカベルネ・ソーヴィニヨンらしいやや硬質な味わいが魅力。ちょっと方向性は違いますが、モンダヴィの方が好きという人も少なからずいるだろうと思います。


調べていたらもっと安い店もありました。これはむちゃくちゃ安いですね。ショップの保管状況とかがわからないので、いいワインを知らないショップで買うのはちょっと怖いですが。

Date: 2023/0128 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパのオーパス・ワンが2020年のオーパス・ワンを発売しないと発表しました。

2020年は「グラス・ファイアー」と呼ばれる山火事が9月27日に発生、ナパとソノマの間を煙が覆いました。約1カ月燃え続け、焼失面積は273平方キロに達しました。焼け落ちた建物も1500を超え、その中には三つ星レストラン「メドウッド」もありました。

白ワイン用のブドウの収穫は概ね9月中に終わりますが、赤ワイン、特にカベルネ・ソーヴィニヨンはちょうど収穫の真っ只中でした。結局ブドの実が煙に「汚染」されてしまったということになり、多くのワイナリーが発売をやめています。オーパス・ワンの収穫は、例年9月中旬から10月中旬あるいは下旬まで1カ月強かけて行われますが、2020年は火事の前に収穫できたブドウはわずかであり、できたワインもごく少量であることから、販売をやめました。

オーパス・ワン
オーパス・ワン

2024年9月に2021年のワインがリリースされるまでは、ワイナリーに予備で置いていた2018年と2019年のオーパス・ワンを出荷して需要に応えます。

既にシェーファーやコルギンなど、いくつものワイナリーが2020年のワイン、特に赤ワインを作るのをやめると発表しています。そういう意味ではオーパス・ワンがやめるというのも驚きはそれほどなく、発表時期が今になったのはなぜなのかが気になるていどです。

一方で、ハーランなどは2020年のワインを出す予定ですし、全部のワイナリーが2020年をやめたわけではありません。品質が非常に高いものもちゃんとあるようです。

オーパス・ワンがスキップしたことで「2020年のナパはダメ」なんて、決めつけないようにしましょうね。
Date: 2023/0127 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
カリフォルニアは昨年末から大雨が続き、洪水や地すべりで亡くなった方も20人を数えるなど、大きな被害が出ています。東京に雪が降るとすぐに交通が麻痺するように、雨が降るとすぐに洪水になってしまうのはカリフォルニアの常ではありますが、特に今回は「アトモスフェリック・リバー(大気の川)」と呼ばれる大量の水蒸気の塊が川のように次々と流れ込んでくる現象が繰り返し起こったことで異例の長雨になりました。

1年前からの干ばつの状況を見ると以下のようになっています。

1年前の1月は雨季中ですが、カリフォルニアの大部分はD2(深刻な干ばつ)の状況です。

昨年の乾季の終わり頃は、カリフォルニアの中央部は一番深刻な段階であるD4(例外的な干ばつ)、ロスアンゼルスから内陸のあたりはD3(極端な干ばつ)、ノースコーストやセントラル・コーストの大部分はD2になっていました。

昨年末はまだ今回の長雨の前で、LAあたりはD3からD2になっていますが、後は雨季前とそれほど変わりません。

1月17日にはノースコーストやセントラル・コーストの大部分、さらには内陸のローダイやシエラ・フットヒルズあたりはD1(中間的な干ばつ)、サンタ・バーバラからLAあたりはD0(異常な乾燥)と、だいぶ改善されています。

最新の1月24日は、セントラル・コーストの大部分はD0になっています。それでも乾燥している状況ではあるわけですが、少なくとも前回の干ばつが始まった2013年以降ではここまで全域の色が薄くなったのは初めて見たような気がします。

デカンター誌には、カリフォルニア各地の生産者にこの雨の功罪を聞いた記事が載っていました(California’s winter storms: water, water, everywhere - Decanter)。

サンタ・リタ・ヒルズにあるヒルトのワインメーカー、マット・ディーズは雨について「ひどいもんだよ」と言いつつ、貯水池などに水が溜まったのは良かったと言っています。また、海風からの塩分が地表にたまるサンタ・リタ・ヒルズでは、雨がふらないと土の塩分が濃くなりすぎてブドウの木に悪影響を与えるそうです。今回の雨で、塩が地中に染み込んだことでその問題も解消したとのことです。

ジョセフ・フェルプスがソノマ・コーストに持つフリーストーンのワインメーカー、ジャスティン・エニスは、今のところ今回の雨はすばらしいとしています。貯水池に水がたまり、地中にも水が蓄えられ、カバークロップにも好影響が出ているとのことです。

パソ・ロブレスのタブラス・クリークでジェネラル・マネージャーを務めるジャスティン・ハースは、ここ数年は干ばつで収量が大幅に落ちていたことを指摘して、この雨で持ち直してくれることを期待していると言っています。タブラス・クリークでの12月と1月の降水量は平年の3倍に達しています。

ナパではデーヴィス・エステートのマイク・デーヴィスが答えています。地下水脈が活性化したことを歓迎しているとのこと。また2020年のグラス・ファイアーの後、焼けた木を取り除いた結果、雨による侵食が心配されていましたが、木を除くときに根を残すことで大きな問題にならなかったとしています。

少なくともワインの視点からは今回の雨は被害よりもメリットを多くもたらしているのは間違いありません。

Date: 2023/0126 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
「ソーヴィ(Sauvy) B」って知ってますか? 実はこれソーヴィニヨン・ブランのこと。米国の若い世代の間で使われているニックネームだそうです。樽香ぷんぷんのシャルドネに辟易した若者世代で、軽快な味わいのソーヴィニヨン・ブランの人気が高まっているとか。

ソーヴィニヨン・ブランはシャルドネに次ぐ2番めの人気の白ワインでしたが、その人気は長期的には落ちており、生産量はピノ・グリにもわずかに抜かれてしまっています。しかし、ここ数年で人気が盛り返して来ているようです。

特にナパ・ヴァレーでは、より高価に売れるカベルネ・ソーヴィニヨンに植え替えが進んでしまった結果、多くのワイナリーがソーヴィニヨン・ブランの調達先に困るようになってきています。

例えば、ナパで高品質かつリーズナブルな価格のソーヴィニヨン・ブランを作ることで知られているホーニッグ(Honig)は、近年レイク・カウンティで同レベルの品質でしかも安いソーヴィニヨン・ブランを調達できるようになりましたが、ラベルにレイクの文字も入るようになってしまいます。そこで現在はワイナリーのあるAVAのラザフォードを冠した上級版と、ナパ、レイクの両方を記した普及版の2つのソーヴィニヨン・ブランを作るようになっています。ナパ・レイク版はステンレスタンク、ラザフォードは旧樽使用となっています。

ナパの高品質なソーヴィニヨン・ブランの代表格であるスポッツウッドも近年はソノマのブドウも使っており、ラベルにはナパとソノマの両方の名前が記されています。

ソーヴィニヨン・ブラン、ナパの文字にこだわりなく買ったほうがリーズナブルにいいものが手に入るかもしれません。

ナパ・レイク版です。ショップはノムリエ ザ・ネット
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

ホーニッグ ソーヴィニヨン ブラン ナパ / レイク 2021 750ml
価格:3080円(税込、送料別) (2023/1/26時点)



ラザフォード版です。現行ヴィンテージの2020だと6000円くらいしますから、これはかなり格安。ショップは同じくノムリエ ザ・ネット


スポッツウッドです。ショップは同じくノムリエ ザ・ネット。
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

スポッツウッド ソーヴィニヨンブラン 2019 750ml
価格:4950円(税込、送料別) (2023/1/26時点)



高級ソーヴィニヨン・ブランではこのクレッシェアが気になっています。レイルの「ジョージア」というナパでも最高品質かつ極めてレアなソーヴィニヨン・ブランを作ったフィリップ・メルカが初めてソノマで作るワイン。

Date: 2023/0125 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
Comments
すき焼きの老舗「人形町今半」が、毎年1月24日の牛肉記念日(明治天皇が初めて牛肉を食べた日だそうです)にすき焼きの食べ放題を行うイベントに行ってきました。店は永田町にある「紀尾井町ガーデンテラス店」。人形町今半の店の中には、お店の人が肉を焼いてくれる店と自分で焼く店がありますが、ここはお店の人が焼いてくれる店です。



この日は、すごい量の肉が消費されるので肉の産地も複数あるそうですが、今回は青森の肉だったそうです。

肉は3枚120gが通常の1人前。今回の価格(1万4300円、税込み)は大体1人前を食べたときの価格です。というわけで2人前以上食べれば元はしっかり取れる計算です。


事前にワインを持ち込めるか聞いたところ1本3000円で持ち込めるということだったので、1996年のエチュード(Etude)カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレーを持っていきました。その昔、ワイナリーで買ったワインです。個人的には非常に思い出深く、またワイナリーでテイスティングした中でも最も印象的だったワイン。もちろん、このころはまだトニー・ソーターが作っています。

ピークを過ぎていないかちょっと心配だったのですが、非常に素晴らしいです。まだ果実味もありますし、熟成によって革やマッシュルームの風味も出てきています。ボリューム感もほどよくあって牛肉に負けていません。ちょっと気が早すぎますが、今年のベストワインと言っても過言ではなさそう。

さて、肝心の牛肉ですが、結局4人で36枚ほどを食べました。私は11~12枚、4人前近くを食べたようです。途中から、くずだれとスダチでさっぱりいただいたので、そこそこ食べられました(最高20枚食べた人もいるそうです)。肉を食べるのが中心だったので、ワインは1本でちょうど足りました。

席を取るのはかなり大変なこの日ですが、がんばった甲斐がありました。
Date: 2023/0124 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
インスタに週1ペース(今のところ)でアップしているお薦めワインシリーズ。3回めはナパ・ハイランズを取り上げてみました。2月のナパの二次試験まではナパ中心に行こうかなと思っています。定番のワインですが、改めてこうやって書いてみるのは自分にとっても発見があります。

ナパ・ハイランズ
ナパ・ハイランズ
ナパ・ハイランズ
ナパ・ハイランズ

インスタはこちら

以下のショップはいずれもしあわせワイン倶楽部さんです。



Date: 2023/0123 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
Comments
アルノー・ロバーツ(Arnot-Roberts)はダンカン・アルノー・メイヤーズ(Duncan Arnot Meyers)とネイサン・リー・ロバーツ(Nathan Lee Roberts)が2001年に設立したワイナリです。2人はナパで育った幼なじみ。ネイサンは父親が樽の製造業者を営んでおり、祖母が故ロバート・モンダヴィの夫人だった故マルグリット・モンダヴィというワイン関係の家系。一方ダンカンは父親が弁護士というワインとは関係のない家庭で育ち、一時はプロの自転車乗りを目指していました。後にCaymus、Groth、Acacia、Kongsgaardといったナパのワイナリで働いていました。

2001年に共にワインを作り始めましたが、最初は1樽と、ごくごく趣味的なレベルでした。2002年には1万ドルを集め4樽醸造。だんだんと商業レベルになっていきました。転機になったのが2005年。この年は気温が低く、ブドウがそれまでの年よりも熟成していない状態でした。ところがシラーのできが非常に良かったことから、その後も収穫時期を早くしてバランスの取れたワイン・スタイルを目指すようになりました。

その後、ジョン・ボネによる「ニュー・カリフォルニア・ワイン」の冒頭で大きく取り上げられるなどで注目されるようになりました。

今回は
2019 ロゼ(トゥリガ・ナショナル100%)
2013 シャルドネ ワトソン・ランチ
2014 シャルドネ ワトソン・ランチ
2018 ジンファンデル キルシェンマン・ヴィンヤード
2019 ジンファンデル キルシェンマン・ヴィンヤード
2017 トゥルソー
2021 トゥルソー-ピノ・ノワール
2013 ピノ・ノワール ピーター・マーティン・レイ サンタ・クルーズ・マウンテンズ
2014 ピノ・ノワール ピーター・マーティン・レイ サンタ・クルーズ・マウンテンズ
2013 ピノ・ノワール リーガン・ヴィンヤード サンタ・クルーズ・マウンテンズ
2014 ピノ・ノワール リーガン・ヴィンヤード サンタ・クルーズ・マウンテンズ
というラインアップ。同じワインのヴィンテージ違いなどを中心に味わいました。日本に輸入が始まったのが2015年ヴィンテージからなので、日本未輸入のものが大半です。



2013と2014の比較が3種類のワインでありました。一般的には2013年の方が暑い年となっていますが、ワインを飲んでみると意外と2013の方が酸がしっかりしていることもあります。収穫時期による影響もありそうですが、あまり細かい資料はないのでよくわかりません。
最初のロゼはトゥリガ・ナショナル100%というもの。花の香りがチャーミング。
シャルドネのワトソン・ランチはナパの最南部アメリカン・キャニオンにある畑。涼しいと言われるカーネロスよりも南東にあたり、かなり冷涼なところと想像できます。特に2013のシャルドネはレモンを絞ったようなキリッとした酸があり、個人的には非常に好印象でした。2014の方がややまったりとした味わいです。
ジンファンデルはローダイのキルシェンマン・ヴィンヤードのもの。この畑はターリー・ワイン・セラーズのワインメーカーであるティーガン・パサラクアが個人として所有している畑です。1915年植樹でカリニャン、サンソー、モンデュース・ノワールがフィールドブレンドで少量植わっています。2018も2019もおそらく95%くらいの人はジンファンデルとは思わないだろうというくらいのエレガントさ。その中でも2018は少し甘やかさがあって時間とともにじわじわジンファンデルらしさも出てきました。2019はややタンニンもありちょっとむずかしいワインという印象。
トゥルソーはアルノー・ロバーツの数あるワインの中でも人気の高いもの。2017年のトゥルソーは軽やかさと柔らかさを感じるワイン。こういうワインをどう表現したらいいのかはいまだによくわかっていませんが、アントニオ・ガッローニは「Dried cherry, wild flowers, rosewater, savory herbs」と書いていて、今から思うとなるほどなあという感じ。ワイルドフラワーとかローズウォーターとかテイスティング・コメントで使ったことなかったです。畑はレイク・カウンティの方にあるLuchsinger Vineyardだそうです。
2021年はトゥルソーとピノ・ノワールのブレンド(トゥルソーのみのものも作っているそうです)。よりチェリー感がましてチャーミングな味わい。ブラインドで品種を当てるのは無理でしょうね。あえていうなら、ヴァルディギエあたり?

最後はピノ・ノワール4本。ピーター・マーティン・レイ、リーガン(どちらもサンタ・クルーズ・マウンテンズ)の2013、2014という水平垂直です。サンタ・クルーズ・マウンテンズの中と言っても、畑の場所は結構違います。ピーター・マーティン・レイは名前の通り、伝説のワインメーカー「マーティン・レイ」が持っていた畑。マーティン・レイのワイナリーは現在マウント・エデンが引き継いでいますが、一部の畑を子孫が継いだようで、その畑です。場所もマウント・エデンの近くだと思いますが、サンタ・クルーズ・マウンテンズの中では一番サンフランシスコ・ベイよりのところ。おそらく山頂よりも内側なので、霧もあまりかからず、サンタ・クルーズ・マウンテンズの中では比較的温かいところだと思います。
一方、リーガンはサンタ・クルーズの街の東の方。こちらは太平洋からの霧がかなり早い時間からかかると思います。
ワインの味わいでもリーガンの方がやはりエレガント。ピーター・マーティン・レイの方が少しふくよかさがあります。特に2014年はよりまったりした印象。リーガンの冷たい感じはカリフォルニアのピノ・ノワールとしてはかなり稀でしょう。2013年のリーガンが一番好み。
アルノー・ロバーツのピノ・ノワールは意外とあまり飲んでことがなかったので、とても貴重な経験でした。

最後に料理の写真を上げておきます。お店はイルドコリンヌ。





Date: 2023/0121 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
カーネロス
ナパとソノマにまたがるAVA「ロス・カーネロス(Los Carneros)」の業界団体「カーネロス・ワイン・アライアンス」がAVA認定20年を祝いました。

カーネロスがAVAになったのは1983年8月18日、ナパではナパ・ヴァレーAVA(1981年1月28日)に次ぐ2番めのAVA、ソノマではソノマ・ヴァレー(1981年12月4日)、ドライ・クリーク・ヴァレー(1983年8月4日)に次ぐ3番めのAVAになります。2つの郡にまたがるAVAとしてはカリフォルニアで初めてのAVAです。また、気候によって境界が決められた初のAVAでもあります。

カーネロス・ワイン・アライアンスは1985年に活動を始めました。40周年に合わせてZDワインズのスコット・ビレッチとプラタ・ワイン・パートナーズのアリソン・クローが共同代表になることも発表されています。
Date: 2023/0120 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ナパのプリチャード・ヒルにあるワイナリー「シャペレー(Chappellet)」がワインの一部を、ボルドーの「ラ・プラス・ドゥ・ボルドー」経由で輸出すると発表しました。

シャペレーは、プリチャード・ヒルのパイオニアであり、プリチャード・ヒルの登録商標も保持しています。今回、ラ・プラスでの輸出に切り替えるのは「プリチャード・ヒル・カベルネ・ソーヴィニヨン」と「シグネチャー・カベルネ・ソーヴィニヨン」の2ワイン。

「プリチャード・ヒル・カベルネ・ソーヴィニヨン」はワイナリーのフラッグシップで3回の「パーカー100点」を誇ります。日本での価格は4万円以上というトップクラスのワインです。

シグネチャーは日本での価格が1万円台という、やや手に入れやすいワイン。50年以上作られているワイナリーの「顔」的なワインです。


ラ・プラス・ドゥ・ボルドーは1つの会社によるシステムではなく、様々な会社による集合体的なシステムです。日本など海外のインポーターは「ネゴシアン」と呼ばれる会社を通じてワインを輸入する形になります。一方、ワイナリーからネゴシアンにつなぐ役割の会社もあり「クリシェ」と呼ばれています。

シャペレーのワインを扱うクリシェは「Barre & Touton’s Les Vins d’Ailleurs」という会社。Barre & Toutonという有力なクリシェが新たに作った子会社で、ボルドー以外のワインを専門に扱います。そこからシャペレーのワインを下ろすネゴシアンは8社。CVBG、Diva、Duclot、Ginestet、Joanne、Twins、Ulysse Cazabonne、Vins &、Passions.となっています。

ラ・プラス・ドゥ・ボルドーを使うことにはメリットもデメリットもありますが、最大のメリットはこれまで届かなかった市場にも販売できる可能性が広がること。シャペレーもそこを重視してこの2ワインをラ・プラスでの流通に切り替えたようです。
Date: 2023/0118 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
mondavi
ナパのランドマークの1つであるロバート・モンダヴィ・ワイナリーが、2023年夏から約3年間、ワイナリーのリノベーションで工事を行う予定です。その間、テイスティング・ルームをナパ市内に移転する計画で、ナパ市のビルをリースしました。

新しいテイスティング・ルームはサード・ストリートとソスコル・アヴェニューの交差点にあるBorreoという歴史あるビルです。1877年に建てられたビルで、ナパの商用ビルディングとしては2番めの古さだとのこと。
borreo

ナパのダウンタウンには40のワイナリーのテイスティング・ルームがあり、そのほかに複数のワイナリーによる合同テイスティング・ルームもあります。3年間とは言え、モンダヴィがそれに加わることは大きなインパクトを与えそうです。

このビルには一時期ブリュワリーが入っていましたが、賃料の支払いの問題でもめて、現在は空になっているとのこと。

ワイナリーのリノベーションについては、今後詳しいことを発表していくそうです
Date: 2023/0116 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
年間ランキングは年末に出るのが普通ですが、ワインスペクテーターの2022年コスパワイントップ10は年始に発表されました。

1位はBV(Beaulieu Vineyard)のカベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー2019。私が米国にいたころ、このワインが好きで毎週のように飲んでいましたが、当時はスーパーで9.99ドルとかで売っていました。今回はコスパトップといいながら価格は33ドルと昔に比べるとずいぶん高くなったなあと思ってしまいましたが、それはほかのワインも同じことで、年寄りの愚痴でしかないですね。

BVは2022年のジェームズ・サックリングのワイン・オブ・ザ・イヤーにも2019年のジョルジュ・ド・ラ・トゥール プライベート・リザーブ カベルネ・ソーヴィニヨンが選ばれています。別のリストとはいえ、ワイン・オブ・ザ・イヤーとコスパのトップを同年に受賞するというのはすごい快挙だと思います。

国内ではどちらのワインも前のヴィンテージまでしか流通していないようです。

さて、話を戻してワイン・スペクテーターのコスパトップ10ですが、2位以下はこうなっています。

2. DECOY Limited Red Napa Valley 2019
3. ANTINORI Toscana Villa Antinori 2019
4. BODEGAS MARQUÉS DE MURRIETA Rioja Finca Ygay Reserva 2018 
5. JOEL GOTT Sauvignon Blanc California 2021
6. DOMAINE BOUSQUET Malbec Tupungato 2021
7. MUMM NAPA Brut Napa County Prestige NV
8. KENDALL-JACKSON Merlot Sonoma County Vintner’s Reserve 2019
9. MONTINORE Pinot Noir Willamette Valley Red Cap 2019
10. DROUHIN VAUDON Chablis 2020

2位のデコイ・リミテッド・シリーズは日本にも入っていますが、このレッドは残念ながらなし。ダックホーンが得意とするメルローを中心とするブレンドです。

と、ないものばかりでしたが、5位のジョエル・ゴット ソーヴィニヨン・ブラン 2021と8位のケンダル・ジャクソン ヴィントナーズ・リザーブ メルロー 2019は国内現行ヴィンテージです。どちらも言わずとしれた安心ブランドですね。特に、ジョエル・ゴットは国内価格も抑えめでコスパ感強いです。

ショップはトスカニーです。


ケンダル・ジャクソン・メルローはエノテカのサイトオンリーです。
ヴィントナーズ・リザーヴ・メルロ | エノテカ - ワイン通販
Date: 2023/0114 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ワイン・スペクテーターの記事によると、アンディ・エリクソンとアニー・ファヴィア夫妻のプライベート・ブランド「ファヴィア(Favia)」がオークヴィルに自社畑を取得し、ワイナリーもそこに作ることが明らかになりました。

ファヴィアは現在はクームズヴィルにあり、オークヴィルとクームズヴィルの契約畑から4種類のカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランのブレンドを中心に約2000ケースのワインを作っています。

新しい畑の場所はオーパス・ワンからナパ・リヴァーを隔てた反対側になります。以前スワンソン(Swanson)が持っていたもので、クインテッサ(Quintessa)のオーナーであるヒュネイアス家が2018年から所有しています。エリクソン夫妻はヒュネイアス家と旧知の仲であり、共同所有という形で独占的に利用することになりました。
ファヴィア
ヒュネイアスは畑の取得後、既存のブドウ樹をすべて引き抜いてリプラントを始めました。68エーカーの畑のうち、現在40エーカーが植樹済みです。

畑を担当するアニー・ファヴィアは、新しい畑では昔から使われている「カリフォルニア・スプロール」と呼ばれているようなワイヤーを使わない剪定を採用する方針です。温暖化に対抗するため、ブドウに日陰を与えることなどが目的と思われます。

また、栽培はバイオダイナミクス(ビオディナミ)にする見込みです。ヒュネイアスのクインテッサなどの畑が既に採用しており、それに倣うことになるでしょう。

なお、既存のブドウの契約も継続するとのことで、新たな畑の分ワインも増える形になりそうです。
Date: 2023/0113 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments

ナパに行った人のほとんどが写真を撮るのではないかと思われる「Welcome to Napa Valley」のサイン。実はハイウェイ29沿いの北と南に2つあるのですが、ヨントヴィルにある南側のサインを移転しようという動きが出ています。

現在のサインは、ハイウェイ29の西側にあります。サンフランシスコ方面から車でナパに来ると、ハイウェイ29の右側に停車して、ハイウェイを徒歩で横断してサインのところに行く形になります。交通量の多いハイウェイを横断するので危険が伴います。

ナパヴァレーでは、南から北まで徒歩や自転車で縦断できるような道「ヴァイン・トレイル」を整備しようという動きが進んでいます( Vine Trail Napa Valley)。現在はナパのケネディ・パークからヨントヴィルのヨントヴィル・クロス・ロードまでの約10kmの整備が終わっており、沿道には軽食が取れる場所などもあって、気軽に使えるようになっています。そこから北のプランを作成している過程で今回の移転の動きが出てきました。

候補となっているのはハイウェイ29とワシントン・ストリートとの交差点のところで、現在Caltrans(カリフォルニア交通局)がテージング エリアとして使用している三日月形の分岐点です。マーカムが所有している土地だそうです。


たぶん、このあたり

ヨントヴィルの市議会は、この案を全会一致で支持しており、今後Caltransやマーカムの同意が得られれば移転されることになりそうです。

ところで、今まで知らなかったのですが、このサインの所有者はロバート・モンダヴィ・ワイナリーだそうです。
Date: 2023/0112 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
昨日はアカデミー・デュ・ヴァンで「カリフォルニアワインを楽しもう」の第1回でした。テーマはナパ。初回は自己紹介を軽くしたり、カリフォルニア全体の話をしたりがどうしても入ってくるので、時間が足りなくなるのは毎度のことでちょっと反省ですが、試飲に入るまでの1時間強、かなり喋りまくりました。自分でも「よく喋るなあこいつ」と思うほどで、ちょっとおかしかったです。

スクールですから、お勉強的な話はもちろんしますが、受講者の方々が期待しているのはやっぱり試飲だと思うんですよね。なので、ワインリストを作るのは、講座準備の中で一番大事だし、面白いし、気を使う部分でもあります。

今回の場合12月の半ばにリストを作ったわけですが、ワインの値上がりで当初想定していたワインでは予算的に厳しい状況でした。入れたかったのにインポーターに在庫がなく諦めたものもありました。また、並行して行っているソノマの講座と両方受講される方もいらっしゃったので、同じワインが出ないようにする必要もありました(2回めのワインについて)。

いろいろ悩んだ結果、第1回目のワインがこちら。

null

どういうことを考えて選んだのか少し種明かしをします。
ワインは基本6本としています。高いのを入れるときは本数を減らすこともありますが、6本くらいが一番バランスがいいかと思っています。
この中で、講座中に出てくるトピックとなるべく連動する(今回であれば山のカベルネであるマウント・ヴィーダーと平地のカベルネであるホーニッグ)、有名ワイナリーや有名人の作ったワインを入れる(今回であれば、ガーギッチ・ヒルズのフュメ・ブラン)、こんなのもあるんだよというちょっと変化球のワインを入れる(今回であれば、マサイアソンのシャルドネやプティ・シラー、カベルネ・フラン)といったことを考えます。試飲するときは比較の要素を入れるとわかりやすいし興味も引きやすいので、そのあたりも考慮します。

とはいえ限られた本数と予算ですべてを満たすことはできない(例えば比較だけ考えたら、白は2つともシャルドネにした方がいい)ので、悩みはつきません。受講者のバックグラウンドもわからないのでそこも悩むところです(例えばカリフォルニアのことをほとんど全く知らない人だったら、典型的なスタイルのものを中心にします)。今回は、ワインエキスパートを取ったばかりくらいのイメージで受講者像を考えていたので、基本知識やティピカルなものは多少知っている前提で、少し変化球的なものを多めに入れてみました。また、試飲は銘柄や特徴を明かした上で、どのワインがどれかは伏せてテイスティングしてもらっています。

結果としては、白ワインは酸が効いてアルコール度数が低く、樽はあまり感じられないマサイアソンと、樽を使って、ソーヴィニヨン・ムスクの独特な香りのあるガーギッチ・ヒルズというのも意外と面白い組み合わせになりました。また、赤ワインではプティ・シラーは比較的わかりやすく、「濃いワインならプティ・シラー」というのを知ってもらえました。ちなみにプティ・シラーはジンファンデル以上にカリフォルニア固有感が強いと思って入れています。また、山カベと谷カベの比較はタンニンの性質をよく感じれば分かってくると思うのですが、そこにカベルネ・フランが加わることで、かなり惑わされる結果になりました(惑わされるのがいいということではないのですが)。

そして、今回の一番のポイントはカベルネ・フランでした。カベルネ・フランはナパでもそれほどメジャーな品種ではありません(畑の面積ではジンファンデルに次ぐ7番目)。ただ、個人的には好きな品種でカベルネ・ソーヴィニヨンの力強さにエレガントさが加わることで、すごく魅力的なワインになると思っています。多くの受講者にとってはカベルネ・フランというとロワールで、ちょっと青臭いと思っている人が多いと思います。ロワールのフランもいいですが、完熟したカベルネ・フランは、さらに魅力的なワインになるということを伝えたいというのが裏テーマみたいな感じでした。

今回選んだトレフェッセンのカベルネ・フランはカベルネ・フラン100%のワインで、ナパの中では比較的冷涼なオーク・ノールで作られています。少し青臭さはあるのですが、抜栓して1時間たったらそれもほとんど消えました。試飲では好きなワインを答えてもらうのですが、これとマウント・ヴィーダーのカベルネで答えがわかれ、ややカベルネ・フランがリードという結果でした。多くの受講生がカベルネ・フランの魅力に初めて気づいたようで、個人的には狙いがうまくはまった感じです。

受講者のレベルも想定とそれほどはずれていなかったと思いますし(時間がなくて聞いていませんが)、今回はうまくいったケースだと思います(もちろん、狙いがはずれてしまうこともあります)。振替で受講された方が、残りのも振替で参加したいと言ってくださったのが、すごく嬉しかったです(残念ながら2回とも予定が合わなかったようですが)。

そんなこんなで、ワイン講師としてもほそぼそと続けておりますので、機会がありましたらご受講いただけると嬉しいです。
Date: 2023/0111 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
V.sattui
カリフォルニアでは年末から悪天候が続いており、洪水の危険も増しています。ひどい干ばつが続いていましたから恵みの雨ではありますが、亡くなった方もおり、かなりの被害が出ているようです。

その中で、ナパの人気ワイナリーV.Sattuiで名物となっていた樹齢275年のオークツリーが雨と風で根こそぎ倒れてしまいました。

V.Sattuiはハイウェイ29号沿いでピクニックエリアがあり、ワイナリーのデリでワインとランチを買って食べる人でいつも賑わっています。その中でも、象徴的だった樹が倒れてしまったことで、ワイナリーは悲しみに包まれています。V.Sattuiではこの40年間、樹木医にこの樹を見てもらっていたとのことです。
Date: 2023/0107 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ト・カロン・ヴィンヤードが有機栽培に転換へ」で、ロバート・モンダヴィの親会社であるコンステレーション・ブランズがCCOF(California Certified Organic Farmers)に、ト・カロン・ヴィンヤードの有機栽培認証を申請したことを書きました。この認証が、1月5日に無事に完了しました。2023年のヴィンテージからラベルに「Made with Organic Grapes」と入れられるようになります。このために既に3年間有機栽培を行っています。

ト・カロン・ヴィンヤードのブドウは、ロバート・モンダヴィのほか、シュレーダー・セラーズ、昨年ワイン・スペクテーターのワイン・オブ・ザ・イヤーを獲得したダブル・ダイヤモンド、ト・カロン・ヴィンヤード・カンパニーのワインで使われています。なお、オーパス・ワンはト・カロン・ヴィンヤードの中で専用のブロックを持っており、そちらはすでに有機認証を得ています。また、ベクストファー・ト・カロン・ヴィンヤードは有機栽培認証を取っていません。

コンステレーション・ワイン&スピリッツのグローバルオペレーション担当上級副社長サム・グレイツァー氏は次のように述べています。「この重要な節目に向けて取り組んできたチームの協力と粘り強さを誇りに思う。私たちが土地や事業に対して行っている投資によって、世界最高のワインを生産し続けることができ、同時に、私たちの活動を可能にしている資源を保護、保全、強化できる」。

このワイン、めちゃめちゃ好きです。ショップはカリフォルニアワインあとりえ。

Date: 2023/0106 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
SFクロニクルに、2020年のナパのワインについての記事が掲載されていました。2020年は8月に北カリフォルニア各地で落雷から発生したLNUコンプレックス・ファイアーがあり、9月にはスプリング・マウンテンなどに大きな被害を出したグラス・ファイアーが発生しました。特に、グラス・ファイアーはナパのヴァレー・フロアを横断して東側の山麓にまで被害を広げました。

これらによってシェイファーなど、多くのワイナリーが醸造をあきらめました。その中でもアイズリー・ヴィンヤードやドミナスなどいくつかのトップクラスのワイナリーが2020年のワインをリリースすることに決めています。

とはいえトータルではナパで2020年のワイン(特にカベルネ・ソーヴィニヨン)を作らない決断をしたワイナリーは過半数に及ぶと推定されています。

煙で汚染されたブドウで作ったワインがどういう味わいになるか、どうすれば除去できるのか、といった問題はこれまで考えられてこなかったため、どのワイナリーも明確な答えを持たないまま、試行錯誤を重ねています。知見を集めるという意味でも2020年のワインを作ることには意味があったように思います。

少なくとも、クロニクルの記者エスター・モブリーが試飲した範囲では、煙汚染を感じたワインはなかったそうです。

2021年、2022年は幸いにしてワイン産地に影響を与えるような火事はありませんでした。ただ、これで最後ということはなく今後も同じような火事は必ず起こります。この教訓はどのように生かされるのでしょうか。
Date: 2023/0105 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
Comments
ローダイのサスティナビリティ認証プログラム「ローダイ・ルールズ」は、カリフォルニアで最初に作られたサスティナビリティのプログラム。ローダイだけでなくカリフォルニア全域で使われており、さらにはワシントン州、イスラエルでも認定プログラムとして使われています。認定された畑の面積で見れば、現在はローダイよりもローダイ以外の畑の方が大きくなっているほどです。
Lodi Rules
このローダイ・ルールズのバージョン4が2022年12月に公表されました。従来のものから30点ほど修正や追加の項目があります。

追加された項目の1つが「カーボン・サイクル」。「炭素循環」と呼ばれる二酸化炭素の循環する様子を教育することが加わりました。このほか、風による土壌の侵食作用、コミュニケーション・ミーティング、サスティナビリティのマーケティングといった項目も加わっています。
Date: 2023/0104 Category: おすすめワイン
Posted by: Andy
Comments
しあわせワイン倶楽部でカリフォルニアワインを中心とした福袋の販売が始まっています。注文は16日まで。19日から順次出荷します。6本で税込み14850円、送料無料です。

1本2500円弱ですが、輸入元の希望小売価格と比べると1万円以上安いとのこと。

何と言っても目玉はヘスのシャルドネ「パンテラ」。これだけで1万円近くで売られているワインです。あとのワインはおまけと考えてもいいくらいです。

ガーネットの熟成シャルドネも本来5000円してもおかしくないものが2000円台で売られているお得ワインだし、ヘスのシャーテイルランチもコスパ抜群です。